WHITE★CANDY
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#680 [ぎぶそん]
翌日からエリを中心に、文化祭のステージ発表に向けての練習が本格的に行われた。

戦ガーのライブDVDを全員で観ながら、一つ一つのダンスの振り付けを覚えていく。

15分の中で、三曲演ることになっている。

梅原春佳役の私には「恋はライフル」という曲の二番のAメロで、実際に彼女と同じ様にソロパートをこなすという役割が与えられた。

センターまで移動して、左手で髪をまくし立てながら歌う。終始流し目だが、最後に甘く切ない感じで正面に視線を送る。
女性としての色気を全面に出している。

⏰:11/05/18 16:17 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#681 [ぎぶそん]
練習を開始してから三日目。
放課後、ダンス練習を行う前に最初に話し合いが行われた。
内容は本番の衣装とその予算という、現実的な問題についてだった。

「衣装や小道具の件ですが、正規の値段で全部買い揃えようとするなら、高校生のお小遣じゃとても買えません。
かといって体操服姿だとせっかくの舞台も地味な感じになると思います…。
何かいいアイデアはありませんか?」

女子しかいない教室内で、教壇の上に立つエリが皆に問い掛ける。

⏰:11/05/18 16:31 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#682 [ぎぶそん]
「あの…」

高田さんという、普段は物静かな子が手を挙げた。

「上は黒のノースリーブシャツだけなら、皆何とかなるんじゃないかな?
下は体操服の長ズボンで。
ほら、戦ガーがそんな衣装してたじゃない?」

「高田さん、ナイスアイデア!」

エリが思わず目を見開く。
皆で彼女に歓声の拍手を送る。

こうして、ネット通販に詳しい古文の先生からの協力を元に、ノースリーブシャツを人数分だけ業者に発注してもらうことになった。一人ひとりの予算を千円以内に抑えられた。

⏰:11/05/18 16:47 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#683 [ぎぶそん]
「はあ…」

お風呂上がりに、部屋にある三面鏡の前でため息をつく。
額に吹き出物が幾つか出来ていた。
それらを人差し指で小さくなぞる。

高校に入学してから、おでこのニキビは出来たり治ったりを繰り返していた。

―思春期だし、これくらい仕方ないよね。

全く気にならない訳ではないが、自然に出来るものだし気にしてもしょうがない。
自分で自分を納得させ、三面鏡の扉を閉める。

⏰:11/05/18 16:55 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#684 [ぎぶそん]
麦茶を飲もうと一階まで下りた。

「あ、ドラマに梅原春佳が出てるぞ!」
リビングのソファーに腰掛けていた東吾兄が、私に注意を促すように伝える。

彼の言うとおり、彼女がドラマの中で女子高生役として出演していた。
髪型も制服もシワ一つない。高画質のテレビで観ても吹き出物一つない美しく白い肌。

これがアイドル。プロの世界なんだ。
私はおでこに出来たニキビたちを改めて触った。不快な感触だった。

―明日、薬局で薬用クリームを買おう…。

⏰:11/05/18 17:05 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#685 [ぎぶそん]
翌朝。

「おはよう!練習はどうだ?」

誰かが後ろから優しく肩を叩く。優平だった。
珍しく彼と玄関先で一緒になった。

「まあ、ぼちぼちかな。
優平たちのクラスの出し物は決まったの?」

「俺らは漫画『星くずロック』の劇やることになったよ。
知ってる?留年した高校生が一念発起にクラスメートとバンド始めるみたいな内容なんだけど。
それで俺が主人公、つまりギターボーカルやることになって…
今頑張って歌とギターの練習やってるんだ」

そう説明する彼の肩にはエレキギターが掛けられていた。

⏰:11/05/18 17:16 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#686 [ぎぶそん]
「へぇ、凄いじゃん!」

溢れ返る人だかりの中で思わずはしゃいだ。
しかし私は咄嗟に額全体を手の平で隠した。

―おでこのニキビ、優平に見られたかな!?

「どうした?熱でもあるのか?」
彼の手がこちらに伸びてくる。

「何でもない!じゃあ私、先行くね!」
私はその手から逃げるようにして立ち去った。

―もっと話したかったのに…。
でも優平のギターボーカル楽しみだなあ。
それこそ正に「フェアオブフェアリー」じゃん。
ううん、優平の方がきっとかっこいい。
ファンの人には言えないけど。

⏰:11/05/18 17:28 📱:SH705i 🆔:nnGcJuEI


#687 [匿名ちゃん]
>>001-200
>>201-400
>>401-600
>>601-800
>>801-1000

⏰:12/03/13 18:15 📱:SH02A 🆔:v9x.paY2


#688 [ぎぶそん]
 
>匿名ちゃんさん
アンカー有難うございます!

携帯が変わりました。
更新がぼちぼちになると思いますが、続きを書いていこうと思います。

⏰:12/04/08 20:44 📱:Android 🆔:TuwR5MCY


#689 [ぎぶそん]
それから三日後。ニキビ用クリームの効き目もさほど実感出来ない中、文化祭に向けての準備は着々と進んでいた。

夜、部屋に入ると新品のノースリーブを机の上にそっと置く。
副委員長の寺川さんがネット通販で人数分を注文してくれた奴だ。

それから戦ガーのライヴDVDをひたすら鑑賞し続ける。
梅田春佳の存在を自然と目で追いかける。
汗で少し湿った身体が色っぽい。

彼女には今、恋人や好きな人はいるのかな。
普段はどんな生活をしているんだろう。
芸能界に入って、辛かったことはあるのかな。

彼女のことを考えるうちに、私は気がつけば彼女の人生を想っていた。

⏰:12/04/08 20:45 📱:Android 🆔:TuwR5MCY


#690 [ぎぶそん]
文化祭まで後三日と迫った頃。
校門を入ってすぐにある大きな看板、校舎内にあちこち貼られてあるポスター、
練習や準備で校舎内を駆け回る生徒たち、学校全体にお祭りムードが漂っていた。

私自身も、ダンスの振り付けは何も見ないで踊れるくらいにはなった。
放課後の練習も皆手慣れた感じでこなす。

「真希、手を出して」
休憩中、エリが駆け寄ってきた。

「え?」
「いいから」

半ば強引に彼女は私の手首に何かを身につけてきた。

⏰:12/04/08 21:02 📱:Android 🆔:TuwR5MCY


#691 [ぎぶそん]
それはミサンガだった。
赤と白と黒の三色が、互いを尊重するように艶(あで)やかなコントラストをなす。

「私が寺川さんに提案してみたの。
皆で同じもの着けてた方が、団結力が増すって」
エリがVサインをする。

皆の手首にも、私と同じようにミサンガが着けられていた。
彼女たちの顔は、自然と笑顔がほころんでいた。

ミサンガという古典的な装飾品は、地味な存在だけどどこか温かみがある。
紐が切れると願いが叶うというジンクスがあるが、長い間切れないで欲しいと願った。

⏰:12/04/08 21:22 📱:Android 🆔:TuwR5MCY


#692 [ぎぶそん]
―そして、文化祭本番。
一日目は主に一年生が行う出店や展示品を楽しむ日である。

昨夜、エリからこんなメールが送られてきていた。
「明日のことだけど、いつものように四人で行動するのも悪くないんだけど、せっかくの文化祭だしここはそれぞれ男女一組ずつにしない?
真希もいい加減優平との距離縮めなさいよ!
それじゃあ、明日二人がうまくいくよう元基と祈ってるから♪」

つまり、私は優平と一日行動を共にすることになったのだ。
嬉しい反面、周りの視線が怖い…。
F組の教師の前で、彼を待つ。

⏰:12/04/08 21:44 📱:Android 🆔:TuwR5MCY


#693 [ぎぶそん]
「お待たせ」
心臓の動悸もなりやまぬうちに、彼が現れた。
数日会わない間に、彼は少し髪にパーマを掛けたみたいだった。

二人で廊下に立っているだけで、女子からの視線をいくつも感じる。
皆、私たちが付き合っていると思うのだろうか?
もう前みたいに、女子からの非難に遭うのはごめんだ。
かといって、ただの友達ですよ、と言いふらす訳にもいかないし…。

「あれ?桜井君、一緒に行く人いないの?」
「だったら私たちと一緒にいかない?」

私の存在には目もくれず、F組の女子たちが彼を囲うように集まってきた。
彼女たちの身につけてる香水が、ツンと鼻を刺激する。

⏰:12/04/08 22:00 📱:Android 🆔:TuwR5MCY


#694 [ぎぶそん]
「いや、俺この子と回るから…」
彼が私の肩を強い力で引き寄せた。

「あぁ、確かB組の…」
「えー、つまんない」
不服そうな顔で彼に不満を述べる彼女たち。
一瞬私を見る目が嫌悪感そのものだった。

「ちょっと皆、桜井君の相手はこの子って決まってるんだから、二人に迷惑掛けないでよね」
教室から出て私たちの存在に気がついた竹下さんが、間に割って入ってくれた。

「いいから、早く行って」というような彼女にアイコンタクトを送られたので、私と彼は逃げるようにしてその場を去った。

⏰:12/04/11 22:02 📱:Android 🆔:mYqUAtI6


#695 [ぎぶそん]
「さっきは嫌な思いさせてごめんな。あの人たち、普段はそんな悪い人じゃないんだけど…」
息も落ち着いた頃、階段を下りながら彼が申し訳なさそうにいう。

「ううん全然。そういえば、パーマ掛けたんだね」
彼の髪の毛を指差す。

「ああ、『星くずロック』の主人公がパーマヘアでさ。でもパーマは校則違反だから、毎日先生たちにおっかない眼で睨まれてる気がするよ…ハハハ。
文化祭終わったら即効で落とさなきゃなー」
彼が髪を弄りながらため息をつく。

こんな髪型の彼はかなり新鮮だ。
普段のさらさらヘアーの方が好きだけど、こんな彼も悪くはないかな。

⏰:12/04/11 22:14 📱:Android 🆔:mYqUAtI6


#696 [ぎぶそん]
二人で玄関を出て校庭に行くと大勢の生徒でごった返しになっていて、たくさんの出店でどこもかしこも賑わっていた。

「いらっしゃいませー、いかがでしょうかー」
「今フライドポテトが大変お安くなっておりまーす」
はっぴを着た出店の店員の活気のいい声が、絶え間なく聞こえてくる。
それだけでこちらも陽気な気分になる。

焼きそば、お好み焼き、たこ焼き、フランクフルト、かき氷など。
いかにも『屋台』という感じのメニューの匂いが、こちらの食欲をそそる。

「何か食べたいものあったら言って。俺、奢るから」
彼がポケットから財布を手に取る。
「そんな、悪いよ。私もお金持ってるし」
私も鞄から財布を取り出した。
「いいからいいから。」
「う…それじゃあ、お好み焼き」
左斜め前の店を指差した。
「がっつり行くねー(笑)」
二人でその店の列に並ぶ。

⏰:12/04/11 22:36 📱:Android 🆔:mYqUAtI6


#697 [ぎぶそん]
「んー、美味しいー」
外の至るところに設置されてある休憩所に二人で腰掛け、購入したお好み焼きを食べる。
濃い目のソース味が食欲を増させ、どんどん箸が進む。

「はい、お茶。食べ物ばっかじゃ喉が渇くだろ?」
彼が自販機で買ったペットボトルのお茶を私に渡してくれた。
「有難う」
早速蓋を開け、イッキ飲みする私。

「優平はお好み焼き食べたことあるの?」
彼に質問をしてみた。お坊ちゃん育ちの彼があの豪華な家でお好み焼きを食べる姿が想像出来ない。

「あるよ。中学の修学旅行の時大阪で食べたし、たまにサッカーの練習試合の帰りに皆でお好み焼き屋に寄ることもあるから」
へえ、そうなんだ、と私は相槌をした。

⏰:12/04/14 22:43 📱:Android 🆔:SZG3Mcoo


#698 [ぎぶそん]
「よかったら、今度二人でそのお好み焼き屋に行かない?安くて美味いって評判いいしさ」
「うん」
お好み焼きを食べながら、私たちはお好み焼きを食べる約束をした。
以前ならエリと元基合わせて四人で行くだろうけど、段々二人だけで行動することが増えてきた。

「あ、でもやっぱり四人で行くか。
ほら真希、この前サッカーの試合観たいって言ってただろ?
ちょうど一ヶ月後にあるからさ。エリも元基の試合姿見たいだろうし、その帰りに四人で行こう」
「う、うん…」
と思ったが、やっぱりまたいつもの四人で行動することになった。
彼は天然か鈍感か、あるいはどちらともなのか…。
まあ、皆で和気あいあいと食べる方が美味しいか。

⏰:12/04/14 22:58 📱:Android 🆔:SZG3Mcoo


#699 [ぎぶそん]
この日、私たちは時間を忘れて学校の隅々まで回った。

射的屋ではハワイの実弾射撃訓練の成果が出たのか、次々と色んな商品をゲット出来た。

おばけ屋敷は私は終始怖がりもせず、彼の方がおどおどしていて私に抱きつく始末だった。

メイド喫茶では店員さんと同じ仕草や掛け声をやらされて、耳たぶが真っ赤になるほど二人で緊張した。

美術部や書道部の展示作品に、心を魅了された。

気がつけば夕方となり、ホームルームの時間となった。

「それじゃあまた」
彼が私のクラスまで送ってくれた。
「うん、今日は有難う」
特に今日一日進展した出来事もなく、私たちは解散した。

⏰:12/04/14 23:16 📱:Android 🆔:SZG3Mcoo


#700 [ぎぶそん]
いつもの形式的なホームルームが終わると、エリが私の席に一目散に駆け寄ってきた。
椅子に座る私の前に、私を威圧的に見下ろすエリの小柄な上半身が、大きく視界に映る。

「で、どうだった!?優平と今日一日回って。変わったことはあった?」
「へ!?特に何もなかったけど…」
彼女の話に注意を傾けながら、鞄に教科書を坦々と詰める。

「もー!せっかくのチャンスを無駄にしちゃったの!?」
興奮状態の彼女に両方の肩を掴まれた。
「別に楽しかったからいいよ」
その手を払わぬまま、鞄に教科書を詰め続ける私。

「あ、一ヶ月後にサッカーの練習試合があるから観に来ないかって。その後、美味しいお好み焼き屋さんに食べに行こうって」
「本当!?行く行くー!」
彼女がやっと手を離してくれた。

⏰:12/04/14 23:31 📱:Android 🆔:SZG3Mcoo


#701 [ぎぶそん]
「とにかく、もう明日に賭けるしかないわね。
明日のステージで梅原春佳を見事に演じきって、彼の心をズキュンと射止めるのよ!」

エリが手のひらで私の机を思い切り叩く。
その大きな物音に反応して、ますちゃん含むクラスの皆の視線が私たちに向く。

「スポーツ大会は優勝逃しちゃったから、明日こそ優勝旗を持って帰りたいわねー」
彼女が腕を組んで溜め息をつく。
「私は思い出作りが出来ればそれでいいかな」
荷物を入れ終えた鞄のファスナーを閉める。
「もうっ!真希はもっと向上心を持ちなさいよー!ほらっ、最後の練習に行くよ」
彼女に腕を引っ張られるまま、教室を飛び出した。

⏰:12/04/14 23:47 📱:Android 🆔:SZG3Mcoo


#702 [ぎぶそん]
文化祭の練習からの帰り、エリと談笑しながら歩いていると本屋が目に止まった。
「あ、ちょっと寄っていい?」
会話を中断して本屋を指差し、彼女に尋ねる。

本屋に入り漫画コーナーに入って、明日優平のクラスが演劇をするという「星くずロック」を探す。
ちょうど最近新巻が出たみたいで、最新巻のコーナーにいくつも詰まれていた。

表紙を手に取り、中央にいる主人公らしき人物の顔を眺める。
「本当だ。パーマ掛けてる」
思わず独り言を呟いてしまった。

「真希が漫画読むなんて珍しいね」
エリがひょいと身を乗り出す。
「ううん、もういい。帰ろうか」
私は手にした漫画を元あった場所に置いた。 
漫画を購入して内容が知りたいところだけど、それは明日の優平の劇を観た後にしよう。何も情報が無くて観た方がワクワクするだろうし。

⏰:12/04/15 00:09 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#703 [ぎぶそん]
翌日。
ステージ発表は学校と同じ区域にある市民会館を借りて行われる為、朝のホームルームが終わった後全校生徒が速やかにそちらに移動させられた。

前日に各クラスの委員長を集めて行われた公平なくじ引きの結果、私たちのクラスの発表は三番目となっていた。
元基のいるC組は五番目、優平のいるF組は最後から二番目なので、好都合にも発表による移動時間などを気にせずじっくりと観ることが出来る。

市民会館に入り予めクラス毎に決められてある席に着くと、私は忘れ物がないか鞄の中を確認した。
学校に行く前やここに来る前も見たので、今日だけで五回は鞄の中身を確かめている。

ステージ発表に使う新品のノースリーブ、体操服のズボン、サブバッグの中には部屋に飾っておいたモデルガンのライフル、全てある。
何度見ても物があるのに何度も見てしまうのは、緊張状態で思わずじってしていられないから。

⏰:12/04/15 00:28 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#704 [ぎぶそん]
近くの席の子たちと今日についての話で盛り上がっていると、会場内の全ての照明がゆっくりと消えた。
場内全体でガヤガヤと聞こえていた生徒の話し声が徐々に静かになる。全校生徒の視線が正面のステージに向けられた。

そして、ブーッという開演の合図の音と共にステージの幕が上がった。
今学期新生徒会長に就任したばかりのD組の白川君が上座から現れ、手にマイクを持ってステージ中央に立つ。

「えー、これより文化祭二日目の始まりです」
白川君の少し緊張した様子の声が、会場内の音響を通して耳にする。

ステージ発表中は私語厳禁で、ステージ発表の審査は一年生と三年生による投票制など、大まかな彼の説明の後に十五分ほど各自休憩が入った。
その間にステージ発表一番目のD組の皆が、それぞれの荷物を持ちながら舞台裏へとぞろぞろと向かう。
観客席はクラス内でなら自由な席でいいとのことなので、エリが私の隣にやって来た。

⏰:12/04/15 02:48 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#705 [ぎぶそん]
再びブーッという効果音と共に、ステージの幕が上がる。
少しずつ幕が上がる途中で、大きな和太鼓が目に入った。
幕が全部上がると、D組のクラス全員が白いハチマキに黒いはっぴを着て両手にバチを持っているのが見えた。
彼らの出し物は和太鼓による演奏のようだ。

最前列の中央にいる生徒会長の白川君が「ハッ!」と右手を突き上げると同時に他の生徒も右手を上げ、和太鼓を軽快に叩き始めた。
白川君の両隣にそれぞれいる鈴川姉妹が後ろ向きで太鼓を叩いたりバチの数を増やしてお手玉みたいなパフォーマンスをしたり、一部始終プロ並の動きをする(この姉妹、一体何者なんだ)。
場内からは思わずオーっという歓声が上がったり、称賛の拍手も鳴ったりしていた。

素人目から見てもエンターテイメント性に長けていて、クラス全体の統率が上手くとれている感じだった。
スポーツ大会に引き続きこのステージ発表の優勝もD組で決まりなのかもと、私は少々怖じ気づいてしまった。

⏰:12/04/15 03:19 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#706 [ぎぶそん]
ドドンっ!と最前列の人たちが激しく太鼓を叩いた後、D組の全員が無言で一礼をする。
ステージの幕が下りるまで、会場内からの大きな拍手は湧いていた。

「皆さん、今から一列になって静かに舞台裏に回って下さい」
十分の休憩時間に入ると委員長の篠崎君が立ち上がり、私たちクラス全員に呼び掛ける。
文化祭は時間どおりに行われなければいけないので、次のE組のステージ発表の間にその次の私たちB組は舞台裏で着替えなどの準備をしなければならないのだ。

私は必要な荷物を持って、自然に作られた列の中に並んだ。
「くー、いよいよだね」と、後ろにいたエリが小声で叫ぶ。

⏰:12/04/15 04:19 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#707 [ぎぶそん]
舞台裏にある準備室でまず男子が着替えることになり、その間女子は準備室の前で待つこととなった。
数分で男子が出てくると、ほとんどの女子が思わず彼らの着ている衣装を見て騒然となる。

「何この衣装ー!本格的じゃん!」
エリがますちゃんの衣装を指差す。
上下共にまばゆい銀色の光沢が張り巡らされていて、胸元には「2−B」と刺繍が施してあった。

「ああ、聞いてなかった?高田さんたちが作ってくれたんだ」
ますちゃんが答える。

私とエリはすかさず高田さんにどうやって男子の衣装を作ったのか尋ねてみた。
「私…、実はコスプレが趣味なんだ。衣装も手作りの方が安上がりだからよく作ってて、ターミナルの衣装を参考にして男子から集めた材料費で作ってみたの」

物静かな高田さんの意外な一面を知れた。
女子の衣装の時も真っ先に提案していたのは、こういった事実があったからなのか。

⏰:12/04/15 04:45 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#708 [ぎぶそん]
次に女子が準備室に入り、舞台衣装に着替える。
舞台衣装といってもノースリーブにズボンと、実にシンプルな格好だ。

「あ…、男子みたいに女子の分も作ったから、良かったら着ませんか…?」
全員がだいたい着替え終えた後高田さんが十畳ある畳の中央に立ち、皆に声を掛けた。
彼女が手にしていた紙袋から、ネイビー色の迷彩柄のパーカーを取り出す。

「高田さんそれも手作り!?すごいじゃん!」
興味津々に彼女の元へ寄るエリ。

「ううん、全然そんなことないよ。道子や絵美たちに手伝ってもらったお陰だよ…。
それに、迷彩柄の生地が大量に余ってて使い道に困ってたし」

女子皆が感激しながら、高田さんたちが作ったパーカーを羽織る。
袖のないパーカーのようで、戦ガーの代表曲「フルメタル・ラブ」の衣装に似ていた。

⏰:12/04/15 05:01 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#709 [ぎぶそん]
着替え終わった後も女子は準備室に居るまま、それぞれダンスや歌の練習に励んでいた。
私は自分のパートの振り付けを何度も確認した。

一時してドアをノックする音が聞こえたので、皆で声を合わせて「はい」と返事をした。
「B組の皆さん、そろそろ本番です。スタンバイして下さい」
一年生の生徒会役員の女の子が、準備室を開け一声掛けてきた。

私たち女子は最後にもう一度集まり、一つの大きな円になった。
副委員長の寺川さんの指示に従い皆でミサンガを着けた方の手をそれぞれ前に出し、合わせる。
「それじゃあ、皆の健闘を祈って。エイ、エイ、オー!」
寺川さんの元気のいい掛け声に続いて、私たちも掛け声を唱えた。

⏰:12/04/15 05:22 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


#710 [ぎぶそん]
私たちは舞台袖に移動すると、先にパフォーマンスをする男子たちにそれぞれ声援を送った。
暗がりの中、彼らがステージ上でスタンバイを始める。

「頼むよー、男子たち」
エリが祈るように両手を合わせる。
私も心の中で「頑張れ!」ともう一度彼らにエールを送る。

幕が全て上がったとそろで、ターミナルの「サマータイムウェーブ」という歌が流れ始めた。
イントロ部分でメンバー全員が横一列になって波打つようにウェーブをするが特徴で、ターミナルといえばこのパフォーマンスと連想する人も多い。

他二曲の「バーニングファイヤー」、「ドゥユーアンダースタンド?」も息の合ったダンスが繰り広げられて、あっという間に三曲が終わった。
彼らが踊り終わるとステージの照明が落ち、観客席から拍手が聞こえた。

遂に、私たち女子の出番になった。

⏰:12/04/15 05:43 📱:Android 🆔:qfyaBuEI


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