WHITE★CANDY
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#401 [ぎぶそん]
風呂上がりに、パジャマ姿のままでリビングのベランダに出てみた。
見上げて見るお月様は、満月に近い形をしていた。

瞬く満天の星に、人はそれぞれどんなことを思うのだろう。

私は明日も明後日も夜を迎える度、こうして星たちを眺めていたいよ。

辛い時も、楽しい時も。
何事もなく終えた日でも。

自分の命が瞬き続ける限り、目の前にあるものを受け止めていく。

私はそう、生き続けたいんだ。

⏰:09/04/10 13:34 📱:SH705i 🆔:j.4ME3cQ


#402 [ぎぶそん]
弥生と町田の噂はたちまち他のクラスにも広まり、それ以降彼女に親しく声を掛ける者は少なくなっていった。

以前、町田と付き合っていた子に言い寄ってしまった男子が、その後町田に一発殴られたという。

その一件もあって、下手に彼女を近づいたり傷つけたりして、町田に因縁をつけられることを、皆は恐れているのだ。

そんな中、エリは変わらず転校してきた頃のように、積極的に彼女に話し掛けたりしていた。

町田との交際が噂された当初は驚いていたようだったが、少し経つとそのことにも気にも止めなくなったみたいだ。

移動教室の時は彼女も誘ったり、休み時間に勉強を教えてもらったりするエリは、楽しそうだった。

⏰:09/04/12 17:23 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#403 [ぎぶそん]
数日後の昼休み、私は優平と屋上に来ていた。

弥生が何か訳がありそうな雰囲気あり、それを私に伝えようとしていることを、優平に話してみることにした。

「きっと、村上さんは誰かに自分のことを理解して欲しいんじゃないかな。」

「理解?」

「うん。ずっと、寂しかったんだと思うよ。」

ああ、そうか。
彼女を初めて見た時、その瞳は孤独で淋しそうに見えたんだ。

⏰:09/04/12 17:31 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#404 [ぎぶそん]
放課後、トイレを済ませ教室に戻ろうとした時だった。

「真ー希ちゃんっ。」

弥生に後ろから肩を軽く叩かれた。

「F組の桜井くんだっけ?彼、奥手そうだね。
そういう男と付き合うと、後々じれったくて面倒になるわよ。
他の男に乗り換えたら?」

腕組みをしながら、私の隣を歩く。
身長はクラス内で低い方だが、どこか威圧感がある。

私と二人きりになると、彼女は少々毒舌になるようだ。
彼女自身が言う、『本性』といった所か。

⏰:09/04/12 17:46 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#405 [ぎぶそん]
「…弥生ちゃんは、町田くんのどんな所が良かったの!?」

「え?」

「私、知りたいな。弥生ちゃんのこと、色々と。」

嘘じゃない、全くの本心。

彼女が意表をつかれたという顔をしていると、教室から出て来たエリが「真希ー、遅い!帰るよー!」といいながらこっちに来たので、会話は中断した。

⏰:09/04/12 17:53 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#406 [ぎぶそん]
その後、いつものようにエリと一緒に帰る。

「ねえ真希、弥生ちゃんってどう思う?」

西洋を意識した通りに差し掛かった所で、エリが口を開いた。

「んー、正直、どこか陰のある子だなって。」

「私も思った!だからその分、色々と気になっちゃうんだよね。」

その後、無言で下を向くエリ。

⏰:09/04/12 18:04 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#407 [ぎぶそん]
「…真希たちには言ってなかったけどね、私中学の時にハブられてた時期があってね。
ほら私、気がついたらついついうるさくなるでしょ?
それで一部の子たちから、『調子乗ってる』って言われだして。」

突然、エリが辛かった過去を告げてきた。
私が黙ったままでいると、彼女は話を続ける。

「やっぱり、その時は全然楽しくなかったよ。学校に行きたくないって思った時もなかったし。
だから、一人ぼっちにしてる子とか、気になっちゃうんだよね。
『独りは寂しいでしょ?』って。」

⏰:09/04/12 18:14 📱:SH705i 🆔:UwxDzFUk


#408 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:09/04/15 07:49 📱:SH903i 🆔:geEztBOA


#409 [ぎぶそん]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

>匿名さん

アンカーありがとうございます!(*^-^*)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⏰:09/04/16 08:15 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#410 [ぎぶそん]
「エリには言ってなかったけどね、前元基が言ってたの。
"エリは優しくて可愛い子だ"って。
私もそう思う。エリの気持ちは、皆に届いてるよ。」

私はずっと、人付き合いとやらが苦手だった。

父親以外の人と接するのが億劫で、こんなことが一生続くのかと思ってた。

だからずっと、友達と呼べる人がいなかったんだ。

⏰:09/04/16 08:21 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#411 [ぎぶそん]
中2の時の担任の先生が、クラス初めてホームルームで、こんな言葉を贈ってくれたっけ。

『親と先生は裏切っても、友達は絶対に裏切るなよ。
孤独で寂しい人生になるから。』

正直、その時はイマイチ意味が分からなかったんだ。
トモダチという価値を見いだせなかった。

どんなに仲が良い者同士でも、女子は平気で相手の陰口を叩くし。

"友情は一生物"だなんて話を耳にすると、迷信を聞いた時の感覚に陥ってた。

⏰:09/04/16 08:32 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#412 [ぎぶそん]
でも、エリと出会って、自分の中で何かが変わったんだ。

私には分かる。
彼女はどんな時も、決して友達を見放したりはしないだろう。

彼女から話し掛けてくれた時、本当は嬉しかったんだ。
心の中ではずっと、孤独を感じていたのかも知れない。
"一人の方が好き"なんて、無意識に意地を張っていたんだ。

もし自分が将来学校の教員になり、教壇に立ったその時は、あの時の先生の言葉をそっくりそのまま引用させてもらうだろう。

⏰:09/04/16 08:41 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#413 [ぎぶそん]
そして、エリと出会っていなければ、私は優平のことをその存在も知らぬまま、高校生活が終わっていただろう。

そんなことをふと考えると、ぞっとしてしまう自分がいるんだ。

エリも、元基も、優平も、自分にとって、父親と同じ位なくてはならない存在。

そう、友達がいるだけで、友達を大切に思うだけで、こんなにも日常は幸せで溢れているんだ。

⏰:09/04/16 08:48 📱:SH705i 🆔:KQHVNB.U


#414 [ぎぶそん]
数日後の日曜日、父の提案で我が家で焼肉パーティーが開かれることになった。

転校生も是非連れて来なさいと言うことで、エリたちに加え、弥生も予め誘った。

彼女は嫌がる様子もなく、すんなりと承諾してくれた。

夕方の4時頃、エリたち参加メンバーが我が家にやって来た。

東吾兄もこの日はどこにも出掛けず、転校生見たさにパーティーの手伝いを積極的にやっていた。

⏰:09/04/20 12:31 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#415 [ぎぶそん]
子供たちで、リビングのテーブルに囲む。
父が台所で準備をしている間、皆で団欒をしていた。

「へぇ、エリちゃんと元基くんは付き合ってるんだ!
となると残りは…。」

東吾兄が私と優平の顔を、ニヤニヤとした表情で交互に見回す。

「真希ー、いつもの特製のタレも出来たぞー。」

反論をしようとしたら、大皿などを持った父が、ニヤニヤとした表情でこちらにやって来た。

⏰:09/04/20 12:46 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#416 [ぎぶそん]
「おじ様、特製のタレって?」

エリが興味津々に尋ねる。

「真希は辛口7:甘口3の配合で作るタレが好きなんだ。
でも自分で作ろうとすると失敗するから、おじさんがいつも作ってやってるんだ。」

「アハハ。雨宮さんもまだまだ子供だね。」

キャップを被ったままのますちゃんが笑う。

「うー、ますちゃんには言われたくない。」

私はそのキャップを取ってやった。

⏰:09/04/20 13:06 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#417 [ぎぶそん]
ホットプレートの上で焼かれる肉が、じゅうじゅうと香ばしい音を出す。

「さあ皆、遠慮せずどんどん焼いて食べて!
桜井くんもしっかり食べて栄養をつけて!」

父が優平の皿に、ピーマンばかりを次々放り込む。
優平は緑一色になった皿を見て、少し困っていた。

「ちょっとお父さん、こんなにピーマンばっかり食べられないでしょ?」

私は優平に変わって注意した。

「ああすまん、桜井くんが『緑マントのピーマンマン』に似てたもんで、つい。」

「意味不明!」

⏰:09/04/20 13:18 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#418 [ぎぶそん]
「城さん、桜田くんを『要注意人物』として見ているらしい。」

隣に座ってた東吾兄が、小声で話し掛けてきた。

「何それ?因みに桜井だから。早く覚えて。」

「マキロンに近づく男どもは、一刀両断だって。」

「何それ、呆れた…。」

それでこんな嫌がらせを?
『幸せになれ』って言ったのは、一体何処のどいつよ…―

⏰:09/04/20 13:24 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#419 [ぎぶそん]
「お父さん、お父さんにタレ作ってあげたよ。」

顔に笑みを浮かばせながら、父に新しく皿を渡す。

「おお!ありがたやありがたや。
真希が作ってくれたのなら、ご飯が何杯でも食えそうだ。」

父は早速焼いた肉を取り、そのタレに浸けて食べた。

「って、辛〜っ!!」

そのリアクションに、私は笑った。
父に渡したのは、辛口のタレに唐辛子を沢山投入したものだった。

優平のこといじめたら許さないんだから。

⏰:09/04/20 13:33 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#420 [ぎぶそん]
「弥生さん、新しい学校にはもう慣れたかな?」

コップの水を飲み干した後で、父が隣の弥生に質問をしてきた。
今日集まったのは、彼女との親睦をより深める為でもある。

「はい、おかげさまで。」
弥生が気品漂う感じで返事をする。

「そうかぁ、そりゃ良かった。何かあったら、皆を頼っていいからね。」

「はい。ありがとうございます。」

弥生がニッコリと微笑む。
彼女は食事にほとんど口をつけていなかった。

⏰:09/04/20 13:41 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#421 [ぎぶそん]
肉や野菜がほとんどなくなった頃、私はトイレへと向かった。

洗面所で手を洗い、リビングに戻ろうと振り返った所、弥生が腕組みをして立っていた。

「真希ちゃんは幸せ者だね。
かっこよくて優しくて、何よりも真希ちゃん思いのパパがいて。

今日アタシを誘ったのって、嫌味のつもりなのかしら?」

先程リビングで皆に見せていた時とは、似ても似つかないような顔をしていた。

⏰:09/04/20 13:51 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#422 [麗]
>>01-240
>>241-500

⏰:09/04/20 18:42 📱:SO905i 🆔:mUTX4e12


#423 [ぎぶそん]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

>麗さん

アンカーありがとうございます!(o^-^o)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⏰:09/04/20 19:39 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#424 [ぎぶそん]
「そんなつもりはないよ。
それに、弥生ちゃんにもお父さんがいるじゃない?」

「…アタシが少6の時だったわ。
つい魔が差してね、ある日本屋で万引きをしちゃったの。
でも、あっけなく店の人に補導されてね。

保護者として迎えに来た父は、必死こいて店員に謝ってた。

でも、帰り際に私に放った言葉は『何てことをしてくれたんだ。これが会社の人にバレたら大事だ』だったわ。
娘のことより、世間体の方が気になるみたいよ。」

⏰:09/04/20 19:50 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#425 [ぎぶそん]
「…若気の至りで、避妊もせずに快楽に走るから、私なんかが産まれたんでしょ!」

誰に言う訳でもなく怒鳴ると、弥生は再びリビングへと戻った。

初めて見た、彼女のヒステリックな表情。
彼女は実の父親を憎んでいるようだ。

私と弥生は家族構成は似ているが、家族環境はどうやら正反対のようだ。

幼い頃にぞんざいに扱われた経験が、彼女の心にひたすら闇と空虚さを生んだのかも知れない。

⏰:09/04/20 20:00 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#426 [ぎぶそん]
その日の夜、これまでの弥生とのやり取りを父に相談してみることにした。

「…今日彼女を呼んだのって、かえって逆効果だったのかなあ。」

クッションを抱き抱え、ソファーに座った。

「そんなに落ち込むことはないぞ。
逆に、皆に見せない顔を見せるってことは、それほど真希に心を開いてるってことじゃないか?」

父は私の前にしゃがみ込み、ポンッと軽く私の頭を叩いた。

⏰:09/04/20 20:47 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#427 [ぎぶそん]
「ありがとうお父さん。
私、弥生ちゃんの心に潜む影を取り除いてあげたい。」

「それでこそ我が娘だ。」
そう、この時はまだ、私は彼女の心の暗雲を知る由もなかったんだ。

私自身、生きるということが希望に満ち溢れていたから。

それと全く正反対の人がいるということを、理解していたようで出来ていなかったんだ。

この時から彼女は、生きるという希望を失っていたのかも知れない。

Chapter05 END.―

⏰:09/04/20 21:00 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#428 [ぎぶそん]
Chapter06
「真希のアタックNo.1」

⏰:09/04/20 21:06 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#429 [ぎぶそん]
私の通う学校では、年に一度、体育祭とはまた違う大きなスポーツイベントがある。

『クラス対抗スポーツ大会』
それぞれのクラスが一丸となり、様々なスポーツを用いて勝敗を競い合う。

優勝したクラスには、学校から長野のスキー旅行がプレゼントされる。
したがって、この業者を煙たがったりサボろうと思う者はほとんどいない。

そして、その季節が今年もやって来た。

⏰:09/04/20 21:16 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#430 [ぎぶそん]
スポーツ大会の日にちが決まった放課後、級長を中心に話し合いが行われた。

級長が、黒板に数種類の球技名を書く。

そして、これから友達と話し合う時間を設けるから、10分後のチーム決めの際、一番やりたいものに挙手をするようにと指示した。

「真希ー!一緒にバレーやろー!」

級長の話が終わると、エリが私の席に近づいてきた。

⏰:09/04/20 21:27 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#431 [ぎぶそん]
「エリって、卓球やバドミントンが好きじゃなかった?」

「最近全日本バレーで賑わってるじゃん。その影響。」

エリはバレーのトスの振り付けをしながら、ウキウキとしていた。

彼女は流行やその時の話題に敏感な子だった。
好きな芸能人も今注目を浴びている人だし、ケータイの着信音も今話題の曲だ。

彼女の胸ポケットからはみ出していたケータイのストラップも、今人気のキャラクターの物だった。

⏰:09/04/20 21:37 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#432 [ぎぶそん]
バレーか。体育の授業でしかやったことないけど、たまにはいいかも。
中学の時、バレー部に入ろうかと考えたこともあったしね。

「それに…D組の鈴川姉妹覚えてる?」

「去年、うちらがバドミントンの決勝で対戦した双子の姉妹?」

「そう!奴らは今年、再び姉妹揃って今度はバレーをやるって噂よ!」

⏰:09/04/20 21:45 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#433 [ぎぶそん]
「奴らのお陰で、去年はバドミントン女子一位を逃したのよ〜!
このまま黙って寝過ごすエリ様じゃないわ!真希、リベンジするよ!」

「え?私は何とも思ってないよ。
彼女たち強かった…」

「とにかーく!今年は真希と私の黄金コンビで、クラスを優勝に導くわよー!」

私が言い終わる前に、闘志に満ちたエリが私の肩を抱く。
半ば強制的に、私はエリの私情に飲み込まれた。

私には、彼女の額に"闘魂"の二文字が浮かび上がったように見えた。

⏰:09/04/20 21:57 📱:SH705i 🆔:L/GbGVZM


#434 [ぎぶそん]
「元基も優平もバスケにしたの?
へぇ、じゃあもしかしたら2人の対戦が見れるってことね。」

翌日の昼休み、いつもの4人でベランダに集まった。
話はスポーツ大会のことで盛り上がる。

「俺、サッカー以外のスポーツには自信がないよ。
公平さを求める為とかで、所属してる部活の種目には参加できないのが、この大会の決まりだからなぁ。」

優平が困ったように、髪の毛をワシャワシャと掻く。

⏰:09/04/21 13:12 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#435 [ぎぶそん]
「またまたそんなこと言ってー、去年ハンドボールで大活躍して、女子から黄色い声援を貰ってたくせに〜!」

「そうそう。元基のアホの失点を、上手くカバーしてくれたのよね〜。」

「ムッ…。そういうエリこそ、今年は真希の足手まといになるなよ!
去年の決勝、後半のミスが目立ったぞ。」

「ハァ…、そうなのよ。
でも、2人には悪いけど、今年は私と真希率いるB組が優勝なんだからね〜!」

エリが左手を腰に当て、右手でガッツポーズをする。
多分、彼女がクラスで一番張り切っているに違いない。

⏰:09/04/21 13:14 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#436 [ぎぶそん]
その週の日曜日、私とエリはとある小学校の体育館へと足を運んだ。

それは、ほんの数日前のことだった。

『元基のお母さんが、最近ママさんバレーにハマッてるんだって。
私たちも参加させてもらってさ、クラスマッチに向けて猛特訓しようよ!』

教室に入ると、朝一番にエリがこんなことを伝えに来た。

そして今、体育館シューズや体操着を持って、ママさんバレーとやらが行われている場所に向かっていった訳である。

⏰:09/04/21 13:22 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#437 [ぎぶそん]
体育館に入ると、沢山のお母さんたちで賑わっていた。

数人で座って談笑していたり、ウォーミングアップを始めていたり、試合前の自由な時間を過ごしていた。

『ママさんバレー』というネーミングだけれど、中年男性もちらほらいるのが見えた。

「私たちも、あっちでジャージに着替えよっかー。」

玄関先で体育館シューズに履き換えると、エリがステージ近くにある着替え室を指を差す。

⏰:09/04/21 13:30 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#438 [ぎぶそん]
体育館の左隅を一直線に、着替え室まで歩く。

「きゃあっ!」

その途中で、履いていたスカートをめくられる感触があった。

「こら栄基、ダメでしょう!」

エリが、走り回る小学生位の男の子の腕を掴んでいた。
どうやらこの子の仕業らしい。

「エリ、この子と知り合い?」

男の子を掴んで離さないエリに尋ねてみた。

⏰:09/04/21 13:40 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#439 [ぎぶそん]
「羽田栄基。元基の弟よ。」

「えっ、そうなの!?」

元基は3人兄弟の長男だったけ。
そう言われてみればこの子、元基に目元が似ている気がする。

「エリのブ〜ス。ペチャパイ。」

「何ですってー!!」

エリの腕を払いのけ、栄基は子供たちに人気の『ブレイブマン』の立ち去るポーズをしながら、私たちの元を走り去っていった。

⏰:09/04/21 13:47 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#440 [ぎぶそん]
「もー!相変わらず生意気なガキなんだから!」

「お母さんについて来たのかな!?」

「そっちでやってる、ちびっこバレーってのに参加してんのよ。
マセたガキのくせに、あれでもなかなか上手いらしいわよ。」

丁度私たちのいる真横では、子供たちがソフトバレーを楽しんでいた。
ネットの高さは大人たちの半分以下だった。

体育館を横半分に区切り、ステージ側のコートは子供たちの、後ろの玄関側のコートはお母さんたちのスペースとなっているそうな。

⏰:09/04/21 19:38 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#441 [ぎぶそん]
着替え室で、エリは水色のTシャツに紺色の短パン、私はピンク色のTシャツに黒色の長ズボンジャージに着替えた。

そして着替え室を出てから、お母さんたちの元へ駆け寄る。

「あなたが羽田さんの知り合いの娘さん?
うーん!やっぱ若い子がいると活気が溢れるわね〜!」

「いえいえ、おば様も十分若いですってー!」

「まー、お世辞が上手な子ねー!」

愛嬌のあるエリは、すぐにお母さんたちと打ち解けていた。

⏰:09/04/21 19:46 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#442 [ぎぶそん]
午前10時、ようやく最初の試合が始められることとなった。

チーム分けのじゃんけんの結果、私とエリは偶然にも同じチームになった。

試合は本格的なスタイルにこだわらず、前衛に3人、後衛に3人の形でローテーションをする。

最初の礼を済ませ、私は前衛のレフトに移動した。
エリはその隣のセンターに位置している。

試合開始は、私たちのチームからのサービスとなった。
試合の人が、笛を鳴らす。

⏰:09/04/21 19:56 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#443 [ぎぶそん]
「真希ー、いくよっ!」

「はいっ!真希っ!」

エリは試合中、回ってきたボールを必ず私の方に渡す。
どうやら彼女は、私にアタックを決めさせたいらしい(全日本バレーの影響をされすぎだ)。

身長はそこそこ高いが、バレーについては素人なので高度なプレーは無理だ。

それでも相手チームの穴となっている所にひょいと投げ込んで、次々と点数を入れていった。

⏰:09/04/21 20:03 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#444 [ぎぶそん]
「お嬢ちゃんたち、若いだけあってなかなかやるねぇ!」

相手チームに5点差をつけた所で、私の同じチームの中年男性が、私たち2人に声を掛けてきた。

「そうなんです!特にこの雨宮真希は、クラスの女子一足が速いんですよ!」

エリが私を名指し、自分のことのように得意げな顔をして話し始める。
それは関係あるのかと思いながら、私はバレーボールの楽しさを味わっていった。

⏰:09/04/21 20:11 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#445 [ぎぶそん]
審判の人が、ピーッ!と笛を長く吹いた。
24対16で、私のエリのママさんバレー初試合は、勝利を収めた。

10分後に他のチームたちが試合を始めたので、自販機でジュースを買って休もうとした。

そう思った時、エリがバレーボールを片手に、私の行く手を封鎖する。

「さあ真希、試合がない間は、2人でパスの練習をしましょう!」

「…。」

彼女に抜かりはなかった。

⏰:09/04/21 20:23 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#446 [ぎぶそん]
その後も試合を重ね、3勝1敗と、まずまずの試合成績を残した。
午後2時、ママさんバレーは終了した。

皆でコートの片付けを済ませ、お母さんたちに来週もまた来ることを約束した。
それから、再び着替え室へと向かっていった時だった。

「おい。そこのペチャパイ星人と白パンツ星人。」

元基の弟・栄基が私たちを指差してきた。
私は勝手に"白パンツ星人"とやらに命名されていた。

⏰:09/04/21 20:40 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#447 [ぎぶそん]
「何よ、何か用?このハナタレ小僧。」

バストアップの為、毎朝牛乳を飲んでいるエリは、胸のことを言われ、明らかに勘に触っているようだった。

「お前ら、俺たちと勝負しろ!俺たちに負けたら、皆にジュースを奢ること。」
栄基の周りを、5人の子供たちが囲っていた。

彼らも栄基に続くように、"勝負しろー!""勝負しろー!"と金切り声で叫ぶ。

⏰:09/04/21 20:47 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#448 [ぎぶそん]
「ハハーン。クソガキの分際で、このエリ様に盾突く訳ェ!?
いいわよ、その代わりあんたらが負けたら、すんなりとエリ様の配下になること!分かったわね!?」

エリが栄基たちの要求を飲み込む。
エリは半分キレ切み、半分ノリノリだった。

「ちょっとエリ、大丈夫なの?負けたら奢りだよ?」

「なーに弱気になってんのよ。私と真希の黄金コンビなら、こんなクソガキ共コテンパンにやっつけられるわよ。」

こうして、あっさりと子供たちと2対6の試合をすることとなった。

⏰:09/04/21 20:55 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#449 [ぎぶそん]
「ブレイブアタッーク!」

「うわっ!」

エリの放ったアタックを、栄基は受け止めることが出来ずに、ボールは次々遠くに飛んでいく。

「あらあら、最初の意気込みはどうしたのかしら、羽田栄基くん。」

「…くそっ…。」

本気と化したエリは、強くたくましくなっていた。
小学生相手と言えども、容赦しなかった。

⏰:09/04/21 21:03 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#450 [ぎぶそん]
「白パンツ星人、今度はお前だっ!」

「真希、ボール来たよっ!」

栄基はエリばかり狙うと油断していた時、栄基がボールをこちらに飛ばしてきた。

咄嗟に、エリにパスを出さず力強くアタックしてみた。
ソフトボールなので、通常のボールより威力を増す。

⏰:09/04/21 21:12 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#451 [ぎぶそん]
相手側のコートにボールが入ると、ボンッ!と激しい音がした。
栄基を狙ったつもりはなかったが、結果ボールは彼の顔面に直撃していた。

ぶつかった衝撃で、栄基は後ろへと倒れ込んでしまった。

「大丈夫!?」

硬いボールじゃなくて幸いだと思いつつ、私は倒れた栄基の元へと駆け寄った。

⏰:09/04/21 21:18 📱:SH705i 🆔:aLafzO6E


#452 [ぎぶそん]
「栄基、大丈夫かぁ!?」

栄基と同じチームの子供たちも、心配して近くまで寄る。

「痛ぇ〜…。」

栄基は表情を歪ませながら、頬に手を当てていた。

「ごめんね。立てる?」

私は彼の両手を掴み、上体を起こそうとした。

⏰:09/04/22 20:07 📱:SH705i 🆔:xn.vq7J.


#453 [ぎぶそん]
栄基は身体を立たすと、私にこんなことを問いただしてきた。

「…お前、強いな!もしかしてオーランド組織の者か!?」

「え!?」

「なーに訳のわかんないこと言ってんのよ。
真希は普通の高校に通う、普通の女子高生です〜!」
向こう側のコートにいるエリが、栄基の話に指摘を入れる。

⏰:09/04/22 20:11 📱:SH705i 🆔:xn.vq7J.


#454 [ぎぶそん]
「マキ…!?やっぱりお前…いや、貴方様はブレイブマンがこの世で最も尊敬する、マキロン隊長だな!?」

何を思ったのか、栄基が更に私を見る目を輝かせた。

偶然にもそれは、東吾兄が普段私を呼ぶ時の愛称と同じだった。
(もしかしたら、そこからあやかったのか?)

栄基の話に便乗して、子供たちが次々に"隊長""隊長"と、私の周りに集まってきた。

私は子供たちに、心身共に押し潰されそうになった。

⏰:09/04/22 20:15 📱:SH705i 🆔:xn.vq7J.


#455 [ぎぶそん]
「皆、この試合は中止だ!マキロン隊長、部下どものご無礼をお許し下さいませ〜!」

「申し訳ございませんでしたー!」

子供たち全員が、私に向かって敬礼する。
彼らは皆、アニメと現実の世界が交互に入り交じっているようだ。

私もこれくらいの頃は、机の引き出しから未来型ロボットがやって来るのを待ちわびていたものだ。

⏰:09/04/22 20:45 📱:SH705i 🆔:xn.vq7J.


#456 [ぎぶそん]
「因みに私は、ブレイブマンの恋人エリリン姫よ〜。」

「そんな人物登場しないぞ。」

栄基が怪訝そうな顔で、エリを見つめる。

「うるさーい!クソガキ共そこにひざまつけ。」

エリは半分キレ切み、半分ノリノリだった。

子供たちの注目は一気に私へと向けられ、試合は途中までて中止となった。

それでも私とエリの圧勝だった。

⏰:09/04/22 20:56 📱:SH705i 🆔:xn.vq7J.


#457 [ぎぶそん]
皆様お久しぶりです。
暫く入院して続きを書けずにいました。
読んでくれてる人はいないと思いますが、最後まで責任を持って書き上げていこうと思います。。

⏰:09/08/14 23:27 📱:SH705i 🆔:IFuzHb0U


#458 [ぎぶそん]
次の日、ベランダでいつもの4人で集まった。

「昨日、ママさんバレーに行ったら栄基にさんざんな目に遭わされたよ。
真希はスカートめくられるし。」

「な、何だってー!!」

優平がスカートの下りで過剰反応を示した。

「おーワリィワリィ。家できつく言っておくよ。」

アハハとへらついた表情で、あっけらかんとしている元基。
この兄にしてあの弟アリ…か。

⏰:09/08/14 23:31 📱:SH705i 🆔:IFuzHb0U


#459 [ぎぶそん]
「ん…。」

数日後、夢の中にいると誰かからのメールで起こされた。
時刻は朝の5時。

メールの相手はエリだった。

『体力作りの為、今日から早朝ジョギングするわよーん。』

もはや口にする言葉もなかった。

⏰:09/08/14 23:35 📱:SH705i 🆔:IFuzHb0U


#460 [ぎぶそん]
私たちはエリの家の近所にある小さな神社で鉢合った。
軽くストレッチをしてから、同じペースでジョグをすることにした。

コースは住宅地を大まかに一周するようにと決めた。

「…真希って、中学の時も帰宅部だったんだっけ!?」
「うん。家のことが気になるから。」

走り込みながら話をする。

⏰:09/08/14 23:44 📱:SH705i 🆔:IFuzHb0U


#461 [ぎぶそん]
「私もソフトテニス部だったけど、一年で辞めちゃった。」

私たちの走る音だけが、早朝の静けさ漂う街の中で響いている。

「私と真希ってさ、一緒の部活に入ってたとしても、きっといいコンビだったと思うなー!
インターハイも夢じゃなかったかもね!」

エリが夏に輝く太陽のように笑う。
何となく、元基が彼女を離さない気持ちが分かる気がした。

⏰:09/08/14 23:49 📱:SH705i 🆔:IFuzHb0U


#462 [ぎぶそん]
「ところでさ、エリってどうしてこの大会に毎年熱入れてるの?
体育の授業での試合なんかは、別に勝ち負けにこだわったりしてないじゃん。」
少々疑問に思っていたことを、彼女に伝えた。

「去年真希・元基・優平と同じクラスになって、絶対優勝してさ、皆でスキー旅行の思い出を作りたいと思ったの。
でも、叶わなかったでしょ?
だから今年こそは優勝して、真希と女だけの旅行に行ってやるんだって、固く決めてるの!」

⏰:09/08/14 23:56 📱:SH705i 🆔:IFuzHb0U


#463 [ぎぶそん]
初めて知ったエリの小さな想いに、胸に込み上げるものがあった。
私たちのグループの中で、私たちのことを一番考えてくれるのは間違いなく彼女。

「ほら、ペース上げるよ!
ちんたら走ってても体力はつかないよ!」

私は走る歩幅を上げ、彼女より少し前をリードしてみせた。

私も、この大会に賭けてみようと思った。
小さなことかも知れないけど、何か一つでも熱くなれるものがあるのって素敵なことだから。

そして何より、エリの気持ちに応えたい。

⏰:09/08/15 00:04 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#464 [ぎぶそん]
「ブレイブアターック!」

「痛っ。いきなり何?」

その晩、家にあったソフトボールを、
夢中になってTV番組を観ている東吾兄の頭部目掛けて打った。

「ひどくない?
あだ名の由来がアニメの登場人物だなんて。」

AB型の私は妙な所で根に持ったりするタイプだ。

⏰:09/08/15 20:50 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#465 [ぎぶそん]
「あ、気付いた?
でもマキロン隊長は神様みたいな存在なんだぞー。」
「はいはい。」

私はTVの近くに落ちたソフトボールを拾った。

「おっ真希、今度の大会のバレーに向けて練習かい?」

父が人数分のオレンジジュースを持ってやって来た。

⏰:09/08/15 20:55 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#466 [ぎぶそん]
「…お父さんって高校の時何か部活やってたっけ?」

「3年間ずっとバスケをやってて、3年の時にはキャプテンを勤めてたぞ!
エッヘン!」

得意げそうに、大きく胸を張る父。

父のその姿に目も暮れずに、東吾兄がジュースをごくごく飲む。

⏰:09/08/15 20:59 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#467 [ぎぶそん]
「元基と優平も、今度の大会でバスケするらしいよ。」

「んー、あの2人じゃ父さんの持つボールすら奪えないだろうな。
ハハハハハハ。」

「ブレイブアターック!」

「痛っ。」

私は父の顔面を的にソフトボールを撃った。
調子に乗るその口を塞いだ。

⏰:09/08/15 21:05 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#468 [ぎぶそん]
次の日の昼休み、大会のバレーのチーム全員で話し合いが行われることとなった。

事の発端は今朝のジョギング中、エリがふと口にしたことがきっかけだった。

『私たち2人が腕を上げてもさ、他の人が弱かったりチームワークが悪かったりしたらなーんにもならないじゃない。』

一理あるその発言に私たちは他のメンバーに呼びかけをし、こうして今使われていない空き教室に集まったのである。

⏰:09/08/15 21:17 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#469 [ぎぶそん]
「これから毎日、昼休みの時間を利用してバレーの練習をします。
帰宅部の人は、放課後出来るだけ屋上でやる練習に来て下さい。

日曜日は、私と真希が通っているママさんバレーに、皆も参加してもらいます。
何か意見のある人はいますか?」

皆の代表となってエリが話を進める。
その問い掛けに、「ないです」「ありません」の声が飛び交うと少しホッとした。

聞く所によると、大会の日程が決まってから、大半の人がやる気に満ち溢れ毎日の運動量を上げていたらしい。

このクラス、というかこの学校、勝負事になると本気で燃えるみたいだ。

⏰:09/08/15 21:27 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#470 [ぎぶそん]
放課後、さっそく屋上で練習が行われた。
集まったのは私とエリを含む4人。
他は部活生らしい。

私たちは2人組のペアを作り、パス練習をひたすら続けた。

「夕日をバックにバレー練習に打ち込む私…。
全ては勝利の為…。
うーん!これぞ正に青春って感じ〜!」

2人でパスを続けながら、何やら自分に酔いしれるエリ。

私たちの腕はみるみると破れた毛細血管によって、赤い斑点模様が浮かんでくる。
固いボールで打ち付けられることによる腕の痛みも、回数をこなす毎に慣れていたった。

⏰:09/08/15 21:39 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#471 [ぎぶそん]
同じ週の日曜日、バレーチームの皆でママさんバレーが行われている体育館へと向かった。

予めママさんバレーの代表の人にこれからこのチームで参加することを伝えると、快く歓迎してくれた。

毎週必ず都合が悪い人が出て来て、集まるメンバーが不揃いらしかったからだ。

そして若い子たちの活気で溢れる方が、試合をする意欲がもっと湧くと言ってくれた。

⏰:09/08/15 21:54 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#472 [ぎぶそん]
体育館に入ると、いつもと違う光景が視界に入った。

「真希、遅かったじゃないか!
父さん待ちくたびれてかれこれ30分はパス練習をしてたぞ!」

「お、お父さん!?それに東吾兄まで!」

私の視線の先に、見慣れた2人がパスをしていた。
その後ろにはいつかの東吾兄のバンドメンバーの人達もいるではないか。

朝2人共出掛けてると思ったら、先回りしてここに来てたという訳か。

⏰:09/08/15 22:02 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#473 [ぎぶそん]
「マキロン、今日は俺たちが試合相手になってあげるからな!」

私の知らない所で、2人は着々と今日の準備をしていたらしい。
わざわざバンドメンバーの皆さんまで巻き込んで。

「昨日、バレーサークルに乱入した甲斐があるかな〜。」

バンドメンバーのリーダーの、藤野さんがぽつりと言った。
意外と皆はママさんバレーの参加を楽しみにしていた。

⏰:09/08/15 22:07 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#474 [ぎぶそん]
「ふふふ。強い相手との勝負の方が燃えるってことよ。
じゃーん!昨日コレ買っちゃったー。」

男性陣との試合予定に、気持ちが高揚するエリ。
彼女の指差す両膝には、サポーターが当てられていた。

「ほら私、この中で一番身長が低いでしょ?
だから、率先してレシーバーに回ろうかと思って。
一番おいしいトコ(アタック)は真希の役目ね!」

⏰:09/08/15 22:14 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#475 [ぎぶそん]
10分後、私たちのチームと父と東吾兄率いるチームで試合が行われることとなった。

「俺たちは人数が1人少ないけど、男だらけというハンデってことでいいよ。」

最初に東吾が私たちにこんな説明をしてくれた。

そして、私と東吾兄でサービス権を決めるじゃんけんをした。
私が勝った。

⏰:09/08/15 22:20 📱:SH705i 🆔:BIENbVyI


#476 [ぎぶそん]
バシッ。バシッ。
ボールの叩きつけられる音が何度も床に鳴り響く。
敵チームのアタックが次々と決まる。

11対2。
試合が開始して間もないというのに、たちまち点を入れられ大きく差をつけられてしまった。

「ハハハ。父さんは可愛い愛娘にでも容赦しないぞ!」

向こうのコートで父が高らかに笑う。

⏰:09/08/17 23:09 📱:SH705i 🆔:Mg/GY9K.


#477 [ぎぶそん]
「皆、相手のペースにのまれちゃ駄目だよ!
声を出そう、声を!」

チーム内にどんよりとしたムードが差し迫った時、エリがチーム全体に大声で呼びかけた。
その前向きな指示に「うん!」と皆が意思表示をする。

自分達の未熟さと、体育館の蒸し暑さに気負いそうになる。
でも、一度やり始めたことを途中で投げ出したりしたくない。
私は額から落ちる汗を拳で拭った。

⏰:09/08/17 23:15 📱:SH705i 🆔:Mg/GY9K.


#478 [ぎぶそん]
24対11。

いよいよ相手チームのマッチポイントとなった。

佐々木さんの緩やかなサービスがこちらのコートに入る。
それを後衛のライトにいた林さんがレシーブをした。

次に、エリがそのボールの下に回って高くジャンプトスをする。

初日の頃はトスをすることすらままならなかったのに、見違えるほどにそれは上達していた。

⏰:09/08/17 23:21 📱:SH705i 🆔:Mg/GY9K.


#479 [ぎぶそん]
「真希!!」

私の名を呼ぶと同時に、後ろに数歩下がるエリ。
私が"打ち"やすいようにと、スペースを作ってくれたのだろう。

私は1歩、2歩と前衛の中央に上げられたボールに近づく。

そして3歩目と同時に勢いよくジャンプした。

―エリ、私にアタックを打たせる為に沢山練習したんだね。
この1球は外させない。

空中で右腕を後ろにやり、標的のボールに向かって回す。
手首を返す感じに振り、手の平にボールを当てた。

⏰:09/08/17 23:31 📱:SH705i 🆔:Mg/GY9K.


#480 [ぎぶそん]
―バシッ。
気持ちのよい音が私の頭上で生まれた。

両足が床に着くと、上手くバランスを取れず後ろに倒れ込む。
相手コートに向かったボールがどうなったのかは見えなかった。

その数秒後、ピッというホイッスルの甲高い音が鼓膜を一瞬刺激した。

「アウトっ!試合終了!」
次に、審判係のおじさんの太い声が聞こえる。

私が初めてやってみせたスパイクは、大きくラインを越えてしまっていたようだ。
試合が終了した。

⏰:09/08/17 23:45 📱:SH705i 🆔:Mg/GY9K.


#481 [ぎぶそん]
「皆、ごめんね。私のせいで負けちゃった。」

試合終了後の挨拶が終わってすぐ、私は皆に詫びを告げた。

「何言ってんのよ真希!
この試合は大きな収穫よ!

スパイクにおけるフォームは完成しつつあるみたい。
本番では正確なアタックが打てるようになるって!」

エリが興奮ぎみに、私の肩を叩きながら話す。

他の皆も「惜しかったね」とか「形が綺麗だったよ」などといった言葉を掛けてくれた。

⏰:09/08/17 23:52 📱:SH705i 🆔:Mg/GY9K.


#482 [我輩は匿名である]
>>200-300
>>301-400
>>401-500

⏰:09/08/18 00:24 📱:F01A 🆔:☆☆☆


#483 [ぎぶそん]
昼の12時を過ぎた所で、元基と優平がバスケの練習がてらに体育館にやって来た。

優平は黒のノースリーブに白いジャージズボン、灰色のヘアバンドを身につけていた。
腕についた程よい筋肉が、スポーツマンを感じさせた。

元基は白のノースリーブに白の短パンと、頭に白いタオルを巻いて、全身白で統一していた。

⏰:09/08/18 22:54 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#484 [ぎぶそん]
「ねえ2人共、今から1対1で勝負してみなさいよ!
先に相手ゴールにボールを入れた方が勝ちね。
私は優平が勝つに1票〜。」

エリが思いつきで2人にゲームを進める。

「ちょっと、俺の強さを見くびってるなぁ?
確かに優平はサッカー部のエースだけど。」

元基が持っていたバスケットボールを回し、人差し指だけで支える。

エリの一言で、ちょっとしたミニゲームが行われることとなった。

⏰:09/08/18 23:00 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#485 [ぎぶそん]
エリが審判係となり、ボールを高く上げる。
最初にボールを取ったのは優平だった。

その後、奪い奪われの接戦が続く。
元基がシュートを決めようとすると優平が上手く阻止し、優平がドリブルをしている途中で元基が素早くボールを取る。

日頃部活で身体を鍛えている2人だ。
少しやってみせただけで、バスケのコツを掴んだのだろう。
2人の動きの機敏さに、時々目が追い付かなかった。

私は男同士のバトルにくぎづけとなった。

⏰:09/08/18 23:10 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#486 [ぎぶそん]
優平がゴール目掛けてシュートを入れようとした時、

「ブレイブマン参上〜!!」

元基の弟・栄基率いる子供たちが優平のプレーの邪魔をしにやって来た。
優平は「うわっ。」と小さく叫ぶと、子供たちの波にのまれる。
ボールがコロコロと転がる。

その隙に元基がボールを取りに行き、急いで優平側のゴールにボールを入れた。

―パシュ。
ボールと網が擦れる音がした。

「イエーイ。俺の勝ち〜!」

⏰:09/08/18 23:19 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#487 [ぎぶそん]
「ちょっとぉ、今のは反則じゃない?
コラ栄基!お兄ちゃんたちのゲームの邪魔しない!」
栄基にげんこつをするエリ。
怒られた彼は膨れっ面をしている。

「いや、俺の負けでいいよ。
ハァ、疲れた。もう動けない。」

優平が床に倒れ込む。
息が荒く、全身汗だくだ。
元基も優平に続くように、息を切らしたままその場に座り込んだ。

私は自分たちの試合と同じくらい、男子バスケの本番がどうなるか楽しみになって来た。

⏰:09/08/18 23:26 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#488 [ぎぶそん]
月日は重なり、いよいよ大会前夜となったその日。
私は大会の日程が決まってからの、これまでの出来事を振り返ってみた。

全日本バレーの試合は欠かさずチェックした。

「アタック革命」というコミックも全巻読み上げた。

バレーの歴史についてもインターネットで調べてみた。

部活並の練習量も、ほぼ毎日こなしてきた。

とにかく毎日バレーのことばかりを考えた。

⏰:09/08/18 23:32 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#489 [ぎぶそん]
この日々を通して、私も部活をやっていたらまた違う人生だったのかなと思った。

夏の全国高校野球を毎年TVで観る度、勝利をひたすら追いかけ、
一試合一試合にチーム一丸となって真剣勝負を挑むことの素晴らしさを感じる。

青春で流す汗は一生ものだ。
少なくとも今だけは、帰宅部の私も彼らと同じ気持ちになれているかも知れない。

明日の勝敗は明日になってみないと分からないけど、きっと後悔はないだろう。
それほど毎日を駆け抜けたのだから。

⏰:09/08/18 23:41 📱:SH705i 🆔:OGl/Xc/o


#490 [ぎぶそん]
次の日。
天候に恵まれ、涼しい秋風に包まれながら大会は開催された。

最初に体育館で開会式が開かれ、準備体操や校長先生の挨拶などが淡々と順番どおりに行われた。

そして式の終わりに、体育の細野先生がステージ場に立つ。

ラグビー部の監督も務めている人で、真っ黒に焼かれた肌とプロテインでムキムキに鍛え上げた全身の筋肉が特徴的だ。
冬でもノースリーブ1枚で過ごす為、よく生徒からボディビルダーの真似をしてくれとせがまれる。

先生はステージの中央に立つと、スタンドマイクの高さを合わせる。

⏰:09/08/19 00:00 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#491 [ぎぶそん]
「皆、優勝したいかぁ〜!」

「オーッ!」

「長野のスキー旅行に行きたいかぁ〜!」

「オーッ!」


毎年お馴染みの、宗教じみた掛け合いが体育館の熱気を上げる。
私も抑揚のない表情で、周りと同じタイミングで拳を挙げる。

このやり取りをする度、昔こんなクイズ番組があったことを思い出す。

⏰:09/08/19 00:02 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#492 [ぎぶそん]
私たち女子バレーは、生徒会の説明により第2体育館で試合が設けられることとなった。

まず、A・B・E・F組が第1ブロックでそれぞれ他の3クラスと対戦をし、
C・D・G・H組が第2ブロックで同じように試合をする。

そして、各ブロックからそれぞれ白星の多かった2組が準決勝進出となる。

⏰:09/08/19 00:09 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#493 [ぎぶそん]
私たちB組の第1試合の対戦相手は、隣のA組であった。

相手チームは小柄な子が多く、おどおどと動く球を怖がる子ばかりだった。

多分、運動に自信のある子は他の種目に回って、余った子たちがバレーに寄せ集めといった感じになったのだろう。

勝敗が決まるのにそんなに時間は掛からず、私たちは25対10という圧倒的な形で最初の勝利を収めた。

⏰:09/08/19 00:15 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#494 [ぎぶそん]
続いて、優平のクラスのF組との試合。

最初の号令で1列になった時、相手のチームに竹下さんの姿があることが分かった。
私と目が合うと、彼女が"負けないわよ"と口を動かした。

そして、相手チームのサービスから試合が始まる。

4対6。
押しつ押されつつの試合が、初めは繰り広げられた。

⏰:09/08/19 00:24 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#495 [ぎぶそん]
22対25。
約30分後、試合が終わった。

ラストを決めたのは、F組のチームで1番背が高い子の後衛のライトに向かったレシーブだった。

F組の子たちは後ろのコートのラインぎりぎりにボールを落とすのが上手かった。
私たちがボールカットに間に合わないことで、敵チームに点を入れる結果に繋がってしまった。

私たちに最初の黒星がついた。
第2試合とまだまだ試合は始まったばかりだ。
皆の顔に不安が過ぎった。

⏰:09/08/19 00:34 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#496 [ぎぶそん]
「皆、暗い顔しない!
次の試合で勝てば準決勝に進めるんだし。

過ぎた試合のことなんか忘れましょ!」

試合終了後、エリが明るく皆に声を掛ける。

周りにじめじめとした空気が漂うと、彼女は率先してその空気を取り払う役に回る。

本心なのか頑張ってそうしているのかは分からないが、彼女はどんな時も落ち込んだりはしなかった。

彼女のあっけらかんとした性格が、これまで何度もチームの危機を救ってきた。

⏰:09/08/19 00:48 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#497 [ぎぶそん]
その後1試合空いて行われた、E組との第3試合。

25対13で私たちは第1ブロックで2勝1敗という成績を残した。

E組はA組同様、運動に自信のなさそうな子が多かったので、
相手チームのグタグタなプレーがそのまま彼女らの自滅を呼んだ。

A組が0勝3敗、E組は1勝2敗、F組は3勝0敗。

準決勝進出は、私たちB組と全勝したF組に決まった。

⏰:09/08/19 00:53 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#498 [ぎぶそん]
「皆、とりあえず準決勝進出おめでとう〜!」

昼休み、私たちのチームは教室の机を固め、皆で輪になって昼食を取ることにした。

「長谷部さんと雨宮さんの仲良し2人が息ピッタリで、こっちまでびっくりしちゃった!」

「正にあ・うんの呼吸だね!」

皆がこれまでの試合の内容を振り返りながら、弁当に手をつける。

⏰:09/08/19 01:01 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#499 [ぎぶそん]
「本当、雨宮さんって凄く頼りになる!
部活動やってないのに運動神経抜群だし。

午後からの試合でも活躍を期待してます。」

私の隣に座る高山さんが、私に向かって小さく微笑んだ。

彼女も同じ帰宅部で、放課後下駄箱で一緒になった時は、笑顔で挨拶してくれる印象がある。

ママさんバレーでの試合の時も、「雨宮さん凄いね!」などといった台詞を何度も言ってくれていた。

他人の良いと思う部分があれば、正直にそれを口にするタイプの人間なのだろう。

⏰:09/08/19 01:08 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#500 [ぎぶそん]
「準決勝までまだ時間があるわね。
真希、男子バスケの方観に行ってみようよ!」

昼休みが終わり、チーム皆で少し談笑した後、
私とエリは男子バスケの試合が行われている第1体育館へと足を運んだ。

ちょうど体育館はB組対C組の試合がやっていた。

私たちが2階の見やすい席に移動したと同時に、
ますちゃんが元基にボールを奪われ、そのままゴールを決められてしまっていた。

⏰:09/08/19 01:15 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#501 [ぎぶそん]
「ちょっと増山ぁ〜!何やってんのよ!」

エリが下に落ちそうな位柵から身を乗り出し、
下で試合をしているますちゃんに野次を飛ばす。

「ゴメン長谷部さん。羽田君すばしっこくて。」

「こりゃあ男子バスケの優勝は期待出来ないわね。

真希!私たち女子バレーがB組に最初の勝利を持って帰りましょうね!」

他の種目は当てに出来ないと、ますますエリの闘争心が湧いた。

⏰:09/08/19 01:21 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#502 [ぎぶそん]
それから30分後、女子バレー準決勝が始まった。

第1ブロックから勝ち進んだB組とF組、
第2ブロックから勝ち上がったD組とH組の4チームが激突する。

準決勝の仕組みは、別のブロックの1チームと1試合し、それぞれ勝った2チームがそのまま決勝に進出する。

つまり、負ければそこでベスト4止まりとなる。
たった1つの勝負が全ての鍵を握るのだ。

⏰:09/08/19 01:32 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#503 [ぎぶそん]
私たちの準決勝の相手は、くじの結果H組となった。

エリと私の宿敵(?)鈴川姉妹率いるD組とは、23対25と接戦だったらしい。
決して油断は出来ない相手だ。

注目すべきはバスケ部エースの中原由利。
ベリーショートの髪型に男盛りな性格の、ボーイッシュなクール美人だ。

身長177cmと運動選手としては恵まれた体格を持つ。
バスケ以外の運動も、すぐにコツを掴んで何なりとプレー出来るらしい。

⏰:09/08/19 01:39 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#504 [ぎぶそん]
相手チームのサービスから試合は始まった。

向こうのコートにレシーブでボールを返す。
前衛レフトにいた中原由利が、3回目でスパイクを決めにかかった。

前衛ライトにいる私は、身長を生かしブロックに回る。

しかし私の読みを外すように、中原はボールを強く打たなかった。
私がさっきまでいた空いたスペースに、ひょいとフェイントボールを入れた。

ピッ。
まずは相手チームに1点が入る。

⏰:09/08/19 01:50 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#505 [ぎぶそん]
6対0からやっとのことで1点得た所で、
私のサービスが回って来た。

トスもレシーブもスパイクも、数え切れない程練習したけれど、
一番練習したのはこのサービスかも知れない。

サーブミスが一番もったいないと思ったからだ。

ピッと笛が鳴った後、ボールを少しばかり上に上げ、
一瞬押し出すように手の平に当てる。

勢いを増したボールは、私から見て相手コートの後ろ左のラインに瞬時に落ちた。

よし、まずは1点。

⏰:09/08/19 02:00 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#506 [ぎぶそん]
相手チームは私のサーブが上手くカット出来ずに、立て続けにミスが続く。

私のサービスだけでチームは5点入手し、いよいよ同点になった。

「真希ー!その調子!」

「雨宮さん頑張れー!」

私がサーブコートに立つ度、味方の声援が色濃くなる。

⏰:09/08/19 02:08 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#507 [ぎぶそん]
そろそろ危機感を感じたのか、中原由利が後ろに下がり、私のサービスをそつなくカットする。

そして、2回目に上げられたボールをジャンプアタックした。

後衛ライトにいる林さんがレシーブをしようとしたが、間に合わなかった。

一瞬の出来事だった。


6対7。
結局、大きく差を開けずに相手チームにサービス権が渡った。

⏰:09/08/19 02:14 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#508 [ぎぶそん]
「ドンマイドンマイ!
真希、ナイスサーブだったよ!」

「雨宮さん差を縮めてくれて有り難うね。」

相手チームに点が入る度、私たちは声を出し合う。

それは先程の昼食の時に皆で決めたことだった。

弱った時こそ皆で声を掛け合ってその場を乗り切ろう、と。

その後、16対15と接戦が続く。

点差がそんなに開かなかったのは、中原由利以外の子がサーブが上手くなく、サーブミスが目立ったからだ。

サーブ練習に力を入れて正解だと思った。

⏰:09/08/19 02:20 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#509 [ぎぶそん]
19対17になった時、珍しくラリーが何度も続いた。

「真希っ!」

2回目でレシーブをしたエリが、私にパスを渡す。
スパイクが打ちやすい、綺麗なボールの上げ方だ。

相手コートの中原がブロックに回る。

私は強く打つと見せかけて、フェイントボールを投げ入れた。
最初に中原がやってみせたのを、見よう見真似でやってみた。

⏰:09/08/19 02:31 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#510 [ぎぶそん]
19対18。
フェイントボールは見事に決まった。

私に2回目のサービスが回って来た。

前衛にいた中原が下がる。
他の子たちも、どこからボールが飛んで来てもいいように構えをしている。

私のボールに注意することが、相手チームの暗黙のルールになったようだ。

⏰:09/08/19 02:35 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#511 [ぎぶそん]
しかし、私の放ったサービスは、ボールが味方コートのネットに引っ掛かり、
明らかなアウトになってしまった。

私は点差が開けるチャンスを、自ら逃してしまった。

そしてその後、3点連続で相手チームに点を入れられてしまう。

22対18。

「やっば〜い。どんどん点差が開いてる。」

流石のエリも、ネガティブな台詞をこぼすようになった。

⏰:09/08/19 02:40 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#512 [ぎぶそん]
―このままではマズイ。
何か相手チームの弱点となる部分はないか…。

私はこの試合の1つ1つを思い出してみた。
ふと、気にかかることが1つだけあった。

「エリ。ちょっと来て。」

私はエリを呼ぶと、ひそひそと耳元で私なりの作戦を彼女に打ち明けてみた。

⏰:09/08/19 14:10 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#513 [ぎぶそん]
「分かった。出来るだけそうなるようにやってみるよ。」

次のプレーが始まり、相手チームのサーブがやってくる。

私たちのチームは、1回目がエリと私以外の子、2回目がエリ、3回目が私という具合に、予めパスを渡す手順を決めている。
(場合によっては変わることもあるが。)

しかし今回エリは私にパスを渡さず、2回目で相手のコートに返した。

⏰:09/08/19 14:17 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#514 [ぎぶそん]
ボールは中原の右隣の子目掛けて落ちようとしていた。

その子がレシーブをしようと構える。
しかし中原も同時にレシーブしようと右隣に移動する。

2人は息が合わず、中原とその子はぶつかってしまった。

ボールがコートから弾かれたように出る。

22対19。
私は敵のウィークポイントに気づいた。

⏰:09/08/19 14:24 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#515 [ぎぶそん]
23対23。
相手のペースが乱れ、同点まで追い付いた。

デュースになったら面倒だ。
後2点で決着をつけたい、つける。

エリがサーブコートに立つ。
「行っきま〜す。」

エリのサービスは、ネットの上部に当たり、勢いを崩したボールは相手コートの真下に落ちる。
誰もそれを取ることは出来なかった。

23対24。
ほんの偶然が幸いを呼んだ。

⏰:09/08/19 14:35 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#516 [ぎぶそん]
「行っきま〜す。」

エリの放ったサービスは、又してもネット上部に引っ掛かった。
他の子では取れないと思ったのか、後衛にいた中原が援護に回る。

しかし、そのタイミングは約1秒程ズレていたようだった。

ボールは中原の手をかすめることなく、真下に落ちていった。

⏰:09/08/19 14:46 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#517 [ぎぶそん]
この試合におけるラッキーガールは、エリだったようだ

「勝ったぁ〜!!これで決勝進出よ〜!!」

試合終了のホイッスルが鳴ると、エリがはしゃぐ。

普段物静かな林さんや高山さんも、嬉しさのあまりその場で何度も跳びはねる。

23対25。
長く感じられた試合が終わった。

⏰:09/08/19 14:50 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#518 [ぎぶそん]
中原由利率いるH組は決して弱い相手ではなく、むしろ苦戦したのだが、
中原の周りに対する信頼のなさが敗因だったと思う。

団体戦においてお互い声を掛け合うことは、特別意味のないように見えて、本当は1番大切なことだと思う。

独りよがりのプレーは、本当の壁にぶち当たった時、大きく自分を見失ってしまう。

困難を乗り越えることが出来るのは、一緒に力を合わせて戦う友の声があるから。

⏰:09/08/19 14:58 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#519 [ぎぶそん]
試合が終わった後、私とエリは男子バスケの様子を見に行った。
第1体育館では、C組対F組の決勝戦が既に始まっていた。

「優平〜!!
元基のアホなんかけちょんけちょんにやっつけなさいよー!!」

「ちょっと、彼氏のこと応援しなくていいの?」

「元基の奴、『俺が優勝したらGSソフトを貸してくれ』ですって。
アイツの言いなりなんかになりたくないわ。
真希の方こそ、そこら中にライバルが散らばって大変そうね。」

⏰:09/08/19 15:04 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#520 [ぎぶそん]
「キャ〜!!
桜井くんカッコイイ〜!!」

エリの言うように、女子たちの黄色い声援が体育館を染めていた。

優平が、相手チームのゴールに向かって激しくドリブルをする。
そのボールを元基が瞬時にして奪う。

昨日のタイマンの続きを見ているようだった。

⏰:09/08/19 15:09 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#521 [ぎぶそん]
「優平、頑張れ!」

私は思わず声に出して言ってしまった。

その声が届いたのか、優平が再び元基からボールを奪い取る。
そして誰も追いつけないくらい相手コートまで走ると、ロングシュートを放った。

―パシュ。
そのシュートは見事に決まる。

ボールが入ったと同時に、笛が長くなる。
試合が終わったようだ。

⏰:09/08/19 15:15 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#522 [ぎぶそん]
試合終了のホイッスルが鳴り終わった後、優平がこちらに向かって手を振ってくれた。

女子たちの冷たい視線が気になったが、自分の存在に気づいてくれていたことが嬉しかった。

次は私たちの番だ。
全力を尽くさなきゃ。

⏰:09/08/19 15:19 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#523 [ぎぶそん]
女子バレー決勝戦。

対戦相手のD組は、私たちが負けたF組に、
先程の準決勝で25対19で勝利したらしい。

最後の砦となるのは、最強と謡われる双子の鈴川姉妹だろう。

陸上部所属の姉の美鈴(みれい)は、砲丸投げで大会に出る毎に記録を塗り替え、
水泳部所属の妹の可憐もまた、試合に出る度に新記録を更新している。

⏰:09/08/19 15:25 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#524 [ぎぶそん]
そして2人は華やかなネーミングとは対照的に、
女子とは思えないほど筋肉質な体格をしていて、全体的にごつごつしている。

肌も一年中こんがりと焼けていて、いうなれば開会式で最後にステージに立った細野先生ような感じなのだ。

中には陰で2人のことを「ゴリラ姉妹」や「細野先生の子供」などと呼ぶ男子もいる。

⏰:09/08/19 15:32 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#525 [ぎぶそん]
決勝戦は私たちのチームのサービスから始まった。

相手コートは2回目で可憐が小さくトスをする。

ピッ。
その後、何故か1点先取の笛が即座に鳴る。
状況は笛が鳴り終わってから把握した。

1対0。

可憐がボールを上げた瞬間に、姉の美鈴がスパイクを打った。
鈴川姉妹はいわゆる速攻という技を使ったのだ。

あまりの連携プレーの素早さに、私は恐ろしさを感じた。

⏰:09/08/19 15:42 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#526 [ぎぶそん]
「ちょっと〜!
あの2人どこであんな技覚えたのよ〜!?」

驚いた表情を見せるエリ。
確かに、先程のは素人の試合でなかなか見れる光景ではない。

ピッ。
サービス権があちらに回る。

可憐がボールを高く上げる。
空中でボールがくるくると回転する。
可憐がタイミングを計らって空中に浮く。

―まさか…。

⏰:09/08/19 15:48 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#527 [ぎぶそん]
―バシッ!

ボールがこちらに向かって来た。
それは、海中でサメに襲われ掛かっているほどの恐怖があった。

「きゃっ。」

その餌食になったのはエリだった。
レシーブには自信があった彼女も、流石にその強烈なサービスは受け止められなかったようだ。

可憐はジャンプサーブを決めてみせたのだ。
バランスを崩したエリは、そのまま床に倒れ込んだ。

⏰:09/08/19 15:54 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#528 [ぎぶそん]
「エリ、大丈夫!?」

彼女の元に駆け寄る私。

「私たちの努力もあの2人の前にすれば、塵みたいなものなのかしら…。
何だか悔しい。」

寝そべったまま、涙ぐむエリ。
練習や大会を通して初めて見た、彼女の弱気な姿。

「そんなことないよ。
努力は私たちを裏切らない。」

私は彼女の上体を起こした。
今度は私が彼女を支える番だ。

⏰:09/08/19 15:58 📱:SH705i 🆔:pzdb7g66


#529 [みき]
>>275-500

⏰:09/08/19 17:58 📱:N905i 🆔:T.gEztvQ


#530 [ぎぶそん]
5対1。

相手のちょっとしたミスで、ようやく最初の1点を得た。
ローテーションで私にサービス権が回る。

サーブコートに立つ私。
試合前から標的は決めていた。

後衛ライト目掛けてボールを打つ。
威力とスピードを増したボールは、可憐の右肩に激突した。

⏰:09/08/21 00:35 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#531 [ぎぶそん]
5対2。

決勝戦を見に集まった観客のどよめき声が響く。

大抵は出来るだけ鈴川姉妹のような人間にはボールを回さないようにするが、
私は敢えて逆の発想を取ることを選んだ。

少し動揺をしたのか、相手チームの空気が変わった。

私の読みが当たった。

⏰:09/08/21 00:39 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#532 [ぎぶそん]
将棋は王手を取るまで終わることの出来ないゲーム。

私は怪物・鈴川姉妹に積極的に勝負を挑んだ。

ここまで来るまでに、積み上げてきた努力がある。
姑息な手段で勝利しても、何にも嬉しくはない。

私には今、王将以外の駒は見えない。

⏰:09/08/21 00:49 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#533 [ぎぶそん]
その後、両チーム激動のプレーは続く。

鈴川姉妹のアタックも、目が慣れれば受け止め切れるようになった。
それが私たちの自信に繋がり、相手のペースにのまれることはなかった。

バレーはとにかく、どんなに不様な格好だろうがボールを地面に落とさなければいいのだ。

23対20。

必死になって食らいついた結果、点差はそこまで開かれずに済んでいた。

⏰:09/08/21 00:59 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#534 [ぎぶそん]
「真希、次ボールが来たら思い切り打ってみて!」

相手のサーブが向かってくる前、エリにこんなことを言われた。

「でも、失敗したら…。」
私はこの大会中、ずっとアタックを打つことを躊躇っていた。
1点のミスが大きな命取りに成り兼ねないと思っていたからだ。

したがって、まだ本格的なアタックを1度も打ったことはない。

⏰:09/08/21 01:07 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#535 [ぎぶそん]
「私たち、この日の為に毎日猛特訓したじゃない!?
今こそその成果を見せる時よ!」

「そうだよ、雨宮さんならきっと出来るって!
ここまでずっと引っ張ってくれたんだし、私たちは雨宮さんの判断に任せるよ。」

エリに続くように、皆が私の後を押す。

「逆転の可能性を秘めてるのは、もう真希のアタックしかないよ。」

エリの真っ直ぐな瞳が、私の全てを射止める。

⏰:09/08/21 01:11 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#536 [ぎぶそん]
相手チームの軽く投げられたサーブが来る。

「長谷部さんっ!」

後衛センターの伊東さんが、落ち着いてそれを上げる。

「真希っ!」

それを、セッター係のエリがもう1度上げた。

高く、美しいトスだ。

⏰:09/08/21 01:16 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#537 [ぎぶそん]
助走をつけ、宙に浮く私。

―迷いはない、"打つ"。

鈴川姉妹が2人がかりでブロックに回る。

私は空中で、叩くようにボールに衝撃を与えた。

姉妹のごつごつした手の平が、ネット上から顔を出す。

⏰:09/08/21 01:23 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#538 [ぎぶそん]
ボールが美鈴の右手に触れる。

角度を変えられたボールは、私たち側のコートに木葉のようにひらひらと落ちる。

24対20。
遂に相手チームのマッチポイントとなった。

一瞬にして私の視界は暗くなり、表情も青ざめてきた。

⏰:09/08/21 01:31 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#539 [ぎぶそん]
「ごめん、皆…。」

もう皆の顔すら見れなかった。
後悔でいっぱいだ。

「今のはたまたま奴らのブロックが決まっただけよ。
真希!もう1回やるよ!」
私の意表をつくように、エリがこんなことを言い出す。

「でも、また失敗したら…試合はそれで終わりだよ?」

体育館は"D組!""D組!"という声援が湧いている。
その盛り上がったムードだけで、気持ちが押されそうになる。

⏰:09/08/21 19:40 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#540 [ぎぶそん]
「たった1度の失敗で、何弱気になってるのよ。
次は決めればいいだけのことじゃない。」

「でも…。もう無理だよ…。」

―エリ、私たちは今相手に4点も差がつけられてるんだよ!?
しかも向こうはマッチポイント。

アタックを打とうとしても、最強姉妹の2枚ブロックがついてくる。
私たちに勝ち目なんてない。

私たちの秋はここまでだったんだよ…。

⏰:09/08/21 19:49 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#541 [ぎぶそん]
私に諦めモードが差し掛かった時だった。

「真希!試合はまだ終わってない。
ここからが本当の始まりだ!」

たくさんの観客の中、誰かがコートにいる私に向かって声を張り上げて言った。
優平だった。

気づかなかっただけで、ずっと試合を見てくれていたらしい。

優平のその一声に驚いたのか、体育館が一気に静まり返る。

⏰:09/08/21 19:56 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#542 [ぎぶそん]
暗がりの中から、一筋の光が差し込んできた。
強気な気持ちを、もう1度取り戻す。


野球は9回ウラからが本当の試合だと言われている。

そうだよね。
何をメソメソすることがあるんだろう。
―まだ全てが終わった訳じゃない。

⏰:09/08/21 20:04 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#543 [ぎぶそん]
―ピッ。

エリが2回目で私にパスを渡す。
ここまではさっきのシチュエーションと全く同じだ。

鈴川姉妹の2枚ブロックがつく。

―こんな壁、怖くも何ともない。
ただ越えればいいだけなのだから。

「ブレイブ…アターック!」

今日の朝はカツ丼が食べたいと言っていたのに、
親子丼を作っていた憎き父の顔を私は浮かべた。

⏰:09/08/21 20:09 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#544 [ぎぶそん]
がむしゃらに打ったボールは、姉妹の間をすり抜ける。

姉妹の壁を越えたスパイクは、誰にも邪魔されることなく45度下に落ちていく。

24対21。

生まれて初めてアタックが決まった瞬間だった。
こんなに気持ちがいいものとは。

わああ!と観客の声が湧く。

⏰:09/08/21 23:52 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#545 [ぎぶそん]
次の回。

「真希!…と見せかけて、エイッ。」

ボールが返ってきた時、エリが2回目で、ネットぎりぎりにフェイントボールを入れた。
相手チームは意表をつかれたように立ち尽くしていた。

24対22。

「エリ、いつの間にそんな技を覚えたの?」

「準決勝での真希の受け売りよ。
私だって試合をする度に強くなってるんだから!」

いつものエリの笑顔がそこにはあった。

⏰:09/08/21 23:57 📱:SH705i 🆔:PkYNnKgo


#546 [ぎぶそん]
体育館はいつからか、"B組!"B組!"という観客の声が大きくなった。
さっきまでD組一色だった空気が、がらりと変わる。

そのムードに押されたのか、相手チームのサーブカットのミスが2回も続いた。

24対24。
連続4得点の末、同点にまで追い付いた。

「キャー!デュースに持ち越しよ〜!」

振り出しに戻った得点に、はしゃぐエリ。

⏰:09/08/22 00:15 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#547 [ぎぶそん]
その後、24対25、25対25と、
お互い1歩も譲らないまま試合が長引く。

そして、30対31。

私たちがまた、何度目かの1点リードを迎えた。

「皆、後1点で決めるよー!」

「オー!!」

気持ちが再び1つになる。
次で決着をつける、私は頑なに決意した。

⏰:09/08/22 00:23 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#548 [ぎぶそん]
「真希!」

プレーが再び始まり、機械的にトスを上げるエリ。

私はいつも東吾兄とゲームで対戦しても、後もう少しの所で負けてしまう。
その時の東吾兄の余裕の笑みを思い出す。

「ブレイブアターック!」

あの時の怒りを、今このスパイクにぶちまける。

鈴川姉妹の2枚ブロックがつく。
「うおりゃあ!」と雄叫びを上げ、可憐が右手で弾く。

⏰:09/08/22 19:16 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#549 [ぎぶそん]
しまった、と思った時だった。
予期していたかのように、高山さんが跳ね返されたボールの元へ素早く駆け寄り、それを拾う。

「ずっと雨宮さんたちに任せっぱなしでごめんね。
この球は絶対に落とさせない!」

2回目、エリがもう1度トスを上げる。

皆で必死になって繋いだボール。

今までのやり取りや日々が、走馬灯のように駆け巡る。
エリの大会に対する想い、毎日へとへとになるまで行われた練習。

⏰:09/08/22 19:21 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#550 [ぎぶそん]
ここまで来たんだ。
鈴川姉妹は、決して打ち負かすことが不可能な相手じゃない。

この試合、絶対に負けたくない。

「うおおぉぉおお〜!!」

全身を奮い立たせるように、再び飛び上がる。
右手に渾身の力を込めて、もう1度打つ。

この1球に全てを賭ける。
―これが、私の最後のアタックだ。

⏰:09/08/22 19:28 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#551 [ぎぶそん]
鈴川姉妹も負けじと再びブロックとなる。

しかし伸ばした手が数センチ届かず、ボールはそのまま後ろへ向かった。

相手チームのコート内で、ボールが勢いよくバウンドする。

そしてそのまま、息を静めたようにコート外へと転がった。

―ピッ。

30対32。

「キャアアアア〜!!」

私たちは我を忘れてコート内で叫んだ。
遂に、私たちは女子バレーで勝利を得たのだ。

⏰:09/08/22 19:37 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#552 [ぎぶそん]
「…ハァ。
総合1位は結局D組。私たちは3位。
コォラ増山に森川〜!!男子は何やってたのよー!」

放課後、怒りに暮れたエリが男子に罵声を浴びせる

「ちょっと、俺らだけのせいにしないでよ〜!
長谷部さんたちの努力を無駄にしたことは謝るけど。」

終わりの閉会式で告げられた結果発表の結果、私たちは総合優勝の座を手に入れることが出来なかった。

1位を獲得したのは女子バドミントンと女子バレーだけで、それ以外の種目はパッとしない成績だったそうな。

⏰:09/08/22 19:43 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#553 [ぎぶそん]
「まあまあ、そんなにムキにならないでよエリ。
私、大会までの間ずっと楽しかった。
それだけで満足だよ。」

毎日バレーばかりしてたから、体重も2キロ減った。エリ以外の女子とも親しくなれた。
また1つ、一生忘れることのない思い出が出来た。


それだけで十分だ。

⏰:09/08/22 19:47 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#554 [ぎぶそん]
その週の日曜日。
私は、優平とママさんバレーが行われている小学校の体育館に来ていた。

2人っきりの体育館で、バスケットボールを使って遊んでいた。

「それにしても…『ブレイブアターック』はないよなぁ〜。」

「ちょっと、馬鹿にしないでよ。
あの時は必死だったんだから。」

「でも、アタックしてる姿、本当にかっこよかったよ。
まるで全日本の試合を観てるようだった。」

⏰:09/08/22 19:55 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#555 [ぎぶそん]
「優平があの時、声援を送ってくれたおかげだよ。
あの声があったから、あの試合を諦めずに済んだんだよ。」

私が優平にそう伝え終えた時、バタバタと複数の駆け足の音が聞こえてきた。

「マキロン隊長〜!
いかがお過ごしでしょうか〜!」

栄基を中心とした子供たちが、私の元き走り寄って来た。
(本当にどこから沸いて来るのだろうか。)

「きゃあっ!」

栄基に背中を押された私は、躓くように前に倒れそうになった。

⏰:09/08/22 20:02 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#556 [ぎぶそん]
バランスを崩した私は、
そのまま目の前の優平の元へ飛び込んでしまった。

「うわっ。」

2人共、床へ倒れ込む。
私が、優平を押し倒した形になってしまった。
時間が止まる。

「…真希、よく頑張ったな。」

優平が、その両腕を私の腰に回し、きつく抱き寄せる。
体育館に、夕日の光が差し込む。

こうして、私の長かった秋が終わった。

Chapter06 END.―

⏰:09/08/22 20:09 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#557 [ぎぶそん]
Chapter07
「いざ、バイオハザードの世界へ!」

⏰:09/08/22 20:11 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#558 [ぎぶそん]
スポーツ大会の余韻がまだ残っている頃。

ある日、私・エリ・元基・優平の4人は高級ホテルの一室を借りて行われたパーティー会場に来ていた。

この度、優平の両親の会社と某有名ゲーム会社が提携して、近未来型ゲームとなるものを創ったそうな。

そして、優平と優平と親しい私たちは、本日行われるそのゲームの試供の第一人者として選ばれたのであった。

⏰:09/08/22 20:19 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#559 [ぎぶそん]
「真希、嬉しそうね。」

会場内でエリにそう言われた私は、食事も手につける余裕がない位、落ち着きがなくそわそわしている。

これから私たちが行うゲームは、バイオハザードに関する内容らしい。
かくいう私は、バイオハザード系の映画やゲームが大好きなのだ。

それの最新型が今から出来ると思うだけで、ワクワクする。

⏰:09/08/22 20:23 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#560 [ぎぶそん]
ゲーム会社の社長の講談などが終わり、いよいよゲームの試供の時となる。

ステージの幕が上げられた。
ステージには、マッサージチェアのようなイスが、人数分用意してあった。

「皆様、お好きな席に自由にお座り下さい。」

係の人の誘導で、私たちはそれぞれイスに座った。

次に、私たちは頭に機械のようなものを装置させられた。

⏰:09/08/22 20:33 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#561 [ぎぶそん]
「このゲームには、コントローラーなどの器具はありません。
皆さんには、脳でゲームを行ってもらいます。

これからあるスイッチを入れると、皆さんは昏睡状態に入ります。
皆さんはその昏睡状態の間、実際にゲームの世界に進出したような感覚を起こします。

すなわち、ゲームの世界そのものをリアリティに体感することができるのです。」

「へぇー!
何かよく分からないけど画期的ね〜!」

説明を受けたエリが、ますます楽しげにする。

つまり、次に目を覚ました時、現実世界のような仮想世界が待っているということかな。

⏰:09/08/22 20:49 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#562 [ぎぶそん]
「準備はよろしいですか?
それでは、スイッチを入れます。
1・2・3…!」

「…っ!」

係の人の合図と同時に、ビリビリと全身に電気が流れる。

身体に痛みは軽いが、脳味噌へ何か強い刺激が一気に送られる感じだ。

だんだんと意識が遠退く。

⏰:09/08/22 20:54 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#563 [ぎぶそん]
「…ここは、何処…!?」

再び目を開けた時、何もない、暗がりな世界にいた。

エリたちの名を呼んでみる。
返事がない。
どうやら私1人だけのようだ。

「初めまして。
ミス・マキ・アマミヤ。」

突然、モニター画面が映り、1人の少女が現れた。

⏰:09/08/22 21:02 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#564 [ぎぶそん]
「わたくし、このゲームの案内人役を務めさせて頂きます、アイリーンと申します。

ミス・エリたちも同様に、今それぞれ説明を受けていることでしょう。

先程説明を受けたことでしょうが、今あなた方は、ゲームの世界にいる夢を見ているのです。

しかしゲームの世界とはいっても、痛覚はありますし、物や人に直接触れることは出来ます。

つまり、あなた方にとっては、現実世界とは何ら変わりのない世界なのです。」

⏰:09/08/22 21:13 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#565 [ぎぶそん]
アイリーンは説明を続けた。

「さて、肝心のゲームの内容ですが…。

西暦20××年。
ダイヤモンドシティという街に、隕石が墜落しました。

隕石自体はそれほど大きなものではなかったのですが、
隕石が持ち込んだバイオウイルスによって空気感染が発生し、世界に混乱が巻き起こったのです。」

⏰:09/08/22 21:18 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#566 [ぎぶそん]
「隕石墜落から約2時間後、一度死んだかと思われた人間が再び目を覚まし、
突如近くにいた人々に襲い掛かりました。

そして、噛まれた者は死に、再び目を開けた時、最初に襲ってきた人間と同じように、生きている人間に噛みつく…。

そうして、新鮮な人肉だけを求めさ迷い歩くアンデッドが、地球上に大量発生したのです。」

⏰:09/08/22 21:31 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#567 [ぎぶそん]
「あなた方は政府によって急遽結成された、バイオハンターなる組織の一員です。

世界救出の鍵を握る3つのアイテムを手に入れ、オレンジハウスという施設にいる、
クレア博士と呼ばれる人の元へ無事に届けることが出来れば、ゲームクリアとなります。」

「条件はそれだけ?
他に注意する点は?」

アイリーンの説明が一くくり終わった時、私は彼女に質問した。

⏰:09/08/22 21:36 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#568 [ぎぶそん]
「流石はミス・マキ。
鋭いですね。

アンデッドに少しでも切り傷を負わされたり、噛まれた時点で感染者とみなし、ゲームオーバーとなります。

そして、全員がゲームオーバーとなり任務を遂行出来なかった場合は、それなりの代償を受けさせてもらいます。」

「代償…?」

私は聞き返した。

⏰:09/08/22 21:38 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#569 [ぎぶそん]
「それは後ほど説明しましょう、ふふふ。

何の目的もなくやるようではやる気を損ねそうなので、このようなシステムを設けさせて頂きました。

たかがゲーム、されどゲームですよ。

さあ、あちらに見えるゲートが実際のゲームの世界に繋がっています。
既に他の3人はくぐり抜けたようですよ。

では、わたくしはここであなた様の無事をお祈りしておきます、ミス・マキ。」

⏰:09/08/22 21:43 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#570 [ぎぶそん]
アイリーンの指す左方向に、ドアの形状をした白い光が差し込んでいた。

私は躊躇うことなく、その光の中へ入っていった。
あまりの光の強さに、両目を腕で覆い隠しながら突き進む。

「…うっ!」

途中で、私の動きが止まり、記憶も吹き飛ぶ。

⏰:09/08/22 21:51 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#571 [ぎぶそん]
「…。」

私は長い眠りから覚めたように、その場所で目を覚ました。

上体を起こした時、身体にはずっしりと重量感があった。
胴体や肘、膝の箇所に防具が装備されていた。

この世界では私はバイオハンターという役目なんだったっけ。

⏰:09/08/22 21:55 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#572 [ぎぶそん]
「真希、遅かったな。」

耳元で優平の声がした。
よく見ると、エリや元基たちも同じく薄暗いこの部屋にいた。

そして、皆も私と同じように防具や拳銃を装備されている。

「ここは…何処?」

「さっき、ポケットに入っていたマップで現在地を調べてみた。
…どうやら、港近くの廃墟ビルの一室みたいだ。」

優平が私の問いに答える。

⏰:09/08/22 22:00 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#573 [ぎぶそん]
「案内人役の少女は、3つのアイテムを手に入れろって言ってたよな。
もしかして、マップ上で星のように点滅してる奴かな?

ここから一番近いホワイト教会という所に、『聖なる反射鏡』というアイテムがあるみたいだ。
よし、まずはここを目指して進んでみよう。」

優平が頼もしく中心となり、皆を誘導する。

「ハァ…。ちょっとちょっと〜…代償って何なのよー?
ほんのお遊びのつもりが、とんでもないことになったみたいね。」

ゲームが始まって既に涙ぐむエリ。

⏰:09/08/22 22:09 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#574 [ぎぶそん]
私たちは廃墟ビルを出て、拳銃を構え街を警戒しながら歩いた。

街全体には靄がかかっていて、この世界の混沌とした様子が漂っていた。

「おい、あそこに誰かがいるみたいだぞ。
生存者かな?」

ビルを出てすぐ、元基が人の気配に気づいた。
建物にもたれ座り込んでるその人の近くに、彼が歩み寄る。

⏰:09/08/22 22:15 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#575 [ぎぶそん]
「おーい。大丈夫ですかぁ〜!?」

その人の肩を叩こうとする元基。

―ぎゃあおおうっ!

「うわあー!!」

元基の気配に気づき、その人が起き上がった。
それは生存者ではなく、見るからにアンデッドだった。

「危ないっ!」

―パンッ!

私はそのアンデッドの頭目掛けて、銃弾を一発放った。
見事命中し、アンデッドはそのまま地面に倒れ伏せた。

⏰:09/08/22 22:21 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#576 [ぎぶそん]
「真希、ありがとう。助かったよ。」

元基が冷や汗をかきながらこっちに戻ってくる。

「元基のアホ〜!!
この世界はもはやアンデッドがうじゃうじゃ生息してるの!
そうむやみやたらに人間に近づくんでない!!」

元基の胸倉を掴むエリ。

「皆、アンデッドは胴体を撃っただけじゃ死なないからね
狙うなら頭。覚えておいて。」

「…。」

冷静な私の台詞に、誰も口にする言葉がなかった。

⏰:09/08/22 22:27 📱:SH705i 🆔:.m377TEo


#577 [ぎぶそん]
パンッ、パンッ!―

霞んだ街に銃声が響き渡る。
ゾンビを見つければ撃ち、見つければは撃ちの繰り返しだ。

エリが弾を外せば、私が100%カバーする。

「それにしても、幾ら空想の世界の化け物とは言え、流石に撃ち殺すのは気が引けるわね。
真希はどうしてそんなに扱い慣れてるの?」

拳銃を持ち替えながら、エリが尋ねた。

⏰:09/08/24 21:01 📱:SH705i 🆔:jyetulw.


#578 [ぎぶそん]
「私は毎年父とハワイの実弾射撃ツアーに行ってるから。
保護者の許可と同伴があれば、子供でも撃たせてもらえるんだ。」

そう、私は幼い頃から拳銃マニアだったのだ。
収集したモデルガンは、部屋の棚に綺麗に並べている。

従って、一目見ただけで拳銃の種類が分かる。
因みに今所持してるのは、ベレッタM8000の9ミリ口径。
装弾数は15発。

⏰:09/08/24 21:06 📱:SH705i 🆔:jyetulw.


#579 [ぎぶそん]
それから1kmほど歩き、街の外れにあるホワイト教会という場所に辿り着いた。

優平が先頭になって、慎重に扉を開ける。
中はお化け屋敷のように、不気味な雰囲気が漂っていた。
怪しげな薄暗さと、霧がかかったような空気が、恐怖感を煽る。

「よし、手分けしてアイテムを探そう!
元基とエリは一先ずこの一室を見てくれないか。
俺と真希は奥の通路の様子を見てくる。」

優平の指示で、私たちは二手に別れることとなった。

⏰:09/08/24 21:23 📱:SH705i 🆔:jyetulw.


#580 [ぎぶそん]
優平と奥の通路へとゆっくりと進むと、左右1つずつ部屋があった。

「まずは左の部屋から見てみよう…。」

ドアを開け、2人掛かりで机の引き出し、棚の中、ソファーの下などを手分けして見る。
鏡らしきものはなかった。

続いて、その隣の部屋。
脚立やロープなど、何かの作業道具が乱雑に置かれていた。

「…ここもないわね。エリたちの方なのかしら?」

私たちは引き返すことにした。

⏰:09/08/26 23:09 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#581 [ぎぶそん]
「椅子の下とか、隅々まで見たけどこっちもなかったぜ。」

2人の所へ戻ると、第一声に元基がこう言った。

私たちが立ち尽くした感じでいると、エリが何かに気づいたように、後ろ歩きでドアの方へ近寄る。

「ねえっ!もしかして鏡ってあれじゃない?
絵の女の人が手に持ってる奴。」

目の前に飾られている、大きな絵画を指差すエリ。
彼女が言うように、シスターと思われる女性が鏡を両手で抱えていた。

一見絵に見えるその鏡は、光に反射して光っている。

⏰:09/08/26 23:17 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#582 [ぎぶそん]
「いやあぁぁああっ!!」

鏡に見とれていると、エリの大きな叫び声が後ろからした。
振り返ると、ドアから入って来たアンデッドがエリの腕を噛み付いていた。

パンパンパンッ!―

私は急いで銃を撃った。
血飛沫を浴びながら吹き飛ぶアンデッドの頭。

右腕を押さえながら、しゃがみ込むエリ。
彼女に近付くと、既に右腕を負傷していた。

―遅かったか…。

⏰:09/08/26 23:23 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#583 [ぎぶそん]
「私が鏡を取って来る。
元基と優平はエリを擁護して!」

私たちの匂いを嗅ぎ付け、ドアから次々と入って来るアンデッド。

私はさっき入った部屋で目にしたロープを取って来た。
そして先端に小さな輪を作り、絵画より数10センチ上にある突起に向かって投げる。
3回ほど投げた所で成功した。

引っ掛けたロープをしっかり持ち、壁をつたうようにしてよじ登る。

⏰:09/08/26 23:28 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#584 [ぎぶそん]
パンッ!―
パンパンッ―

男2人が放つ銃声の音を耳にしながら、一定のペースを保ちながらロープをつたう。
2メートルほど登った所で、私は絵画に取り付けられていた鏡を手にした。

「くそっ!撃っても撃ってもキリがねぇ!
真希!もうドアからは出られないぜ!」

元基が愚痴るように言う。

「任せて。」

私は左手をロープから離し、ゲーム開始当初から背負っていた(背負わされていた)ショットガンをその手に持った。
そして、左壁にある三色ガラスの窓を何発かで撃ち抜いた。

出口がないのなら、作ればいい。

⏰:09/08/26 23:38 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#585 [ぎぶそん]
そして力みをつけ、ターザンのように窓に向かってロープで地上を移動した。

外に身体が出ると、タイミングを計ってロープを持っていた手を放す。

身体が勢いよく地面に転がる。
痛い。流石に無傷では済まなかった。

「皆、私に続いて!」

私は教会の中にいる3人に聞こえるように叫んだ。

⏰:09/08/26 23:45 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#586 [ぎぶそん]
エリを背負っている元基、優平の順で窓から出て来た。

「これでも喰らいやがれっ!」

元基が予めポケットに入っていた手榴弾を窓に向かって投げた。
その数秒後、中から小さな爆発音がした。

「エリ、大丈夫?」

私はエリの元に寄る。
彼女の右腕からは、痛々しいほどの血が出ていた。

⏰:09/08/26 23:52 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#587 [ぎぶそん]
「うん。思ったほど痛みはないみたい…。
でっかい蚊にチクっと刺された感じ。」

「きっと痛みは軽減してくれてるのね。」

『0時間47分42秒。
ミス・エリ・ハセベ。
ゲームオーバーです。』

私たちが一先ず安心していると、アナウンスのように、何処からかアイリーンの声が聞こえてきた。

「皆、足手まといになってごめんなさい。
真希!後はよろしくね。」
今までの姿が幻かのように、エリが消えていった。

⏰:09/08/26 23:57 📱:SH705i 🆔:Dm0BucS.


#588 [ぎぶそん]
「くそっ!俺がもう少ししっかりしていれば…。
エリを守れなかった…。」
悔しがるように、座っていた元基が地面を一発叩く。

「気持ちは分かるが、ここでそううかうかしてられない。
急がないと、奴らが迫って来るぞ。」

元基の身体を起こす優平。

「これからどうすればいいの?のんびり街を歩いてても、あいつらの餌食になるわよ。」

「よし、あれに乗ろう。」

優平が道路にある、何かを指差した。

⏰:09/08/27 00:02 📱:SH705i 🆔:G7Sq6gHg


#589 [ぎぶそん]
「人生初めてのドライブが、まさか無免許運転になるとは思わなかったな。」

初めてとは思えないほど、優平が手慣れたようにハンドルを操作する。
私たちはあれから、優平が目にしたトラックに乗り込んでいた。

彼のドライブテクを見守るように、助手席に座る私。

「最近のお坊ちゃんは、見よう見真似で車の運転も出来るらしい。」

後部席に座っていた元基が、優平を茶化す。

私たちは2つめのアイテム・『古びたアルバム』があるクレア博士の自宅に向かっていた。

⏰:09/08/27 00:13 📱:SH705i 🆔:G7Sq6gHg


#590 [ぎぶそん]
『皆さん、まずは1つめのアイテムを手に入れたようですね。
おめでとうございます。』

車内の中で、再びアイリーンの声がした。

『さて…最初にお話した"代償"のことですが…。
まず、私たちは皆さん方の性格・記憶・嗜好・癖など、脳内にインプットされた情報を全て牛耳っています。』

⏰:09/08/30 17:29 📱:SH705i 🆔:ebOPHEFo


#591 [ぎぶそん]
『従って、誰一人としてゲームがクリア出来なかった場合は、
脳内でプログラミングされてる中で"一番大切なもの"を奪わせてもらいます。』

「一番大切なもの?」

私は彼女の言葉を復唱した。

『そうですね…、優れた身体能力の一部とか、忘れたくない思い出とか、好きな趣味とか、そんな所です。』

私の疑問に冷静に説明する彼女。

⏰:09/08/30 17:39 📱:SH705i 🆔:ebOPHEFo


#592 [ぎぶそん]
「じゃあ、例えば俺や優平とかだったら、サッカー出来る能力を失っちゃう訳?」

元基が身震いする。

『しかし、このままでは皆さん方にとってはあまりに不条理…。
わたくしたちもそこまで鬼ではありません。
見事ゲームクリア出来た方には、逆に脳にまつわる事なら何でも仰せのままに致しましょう。』

「どういう意味!?」

私は再び聞き返した。

⏰:09/08/30 17:46 📱:SH705i 🆔:ebOPHEFo


#593 [ぎぶそん]
『身体能力をもっと上げたいとか、嫌な癖を直したいとか…、プロレベルの芸術的才能を見につけることだって可能です。

そう、例えばミス・マキ…、あなたの場合は記憶の底にある、生前の母上との思い出を呼び起こすことも可能ですよ。』

「…お母さんの!?」

その一言で、私の心が揺らいだ。

『ふふふ。この条件、悪くないとは思いませんか?
では、わたくしからの説明は以上です。
既に脱落したミス・エリのためにも、しっかり頑張って下さいね…。』

アイリーンの声は消えていった。

⏰:09/08/30 17:55 📱:SH705i 🆔:ebOPHEFo


#594 [我輩は匿名である]
>>1-200
>>201-400
>>401-600
>>601-800
>>801-100

⏰:09/09/01 04:34 📱:N904i 🆔:AnS9cKHk


#595 [ぎぶそん]
「畜生ー!
なめくさった真似しやがってー!
見てろよ!俺はこのゲームをクリアして、天才サッカー少年になってやるからな!」

後ろからする元基の金切り声が、耳をキンキンさせる。

「やったなぁ、真希。
お母さんのことを思い出せるチャンスだな。」

「うん…。」

私は気が落ち着かなくて、俯き加減で手の平を触ったりしていた。

⏰:09/09/03 14:53 📱:SH705i 🆔:XaOOTU7E


#596 [ぎぶそん]
「地図によると、ここのようだ。」

優平がトラックを止める。
クレア博士の自宅らしき場所に到着した。

研究者として稼いでいるのか、いかにも物語に出て来そうな、お屋敷みたいな家だった。

3人で塀をよじ登って、家の門をくぐる。

アンデッドと化した使用人みたいな人たちが、のろのろと私たちの方に向かってくる。

⏰:09/09/03 15:01 📱:SH705i 🆔:XaOOTU7E


#597 [ぎぶそん]
銃声と同時に、無数に転がる死体。
洋風の綺麗な庭に、アンデッドの血がどんどんと染められていく。

この世界にも慣れてきたのか、元基や優平も躊躇いなく奴らを撃っていた。

命中率もぐんと上がり、リロードにかかる時間もムダがなくなっていた。

家の中に入る。
目の前には螺旋階段が上の方に続いていた。

⏰:09/09/03 15:12 📱:SH705i 🆔:XaOOTU7E


#598 [ぎぶそん]
「こんなに広い家だと、どこから手をつけていいのか迷うわね。」

「アルバム、ってくらいだから書斎か何かの棚にあるのだと思う。
…よし、最上階の部屋の奥だ。」

「場所が分かるの?」

はっきりと断言する優平に尋ねた。

「多分、この家は実際の俺ん家を参考にして造られた建物だと思う。
庭とか外壁とかがそっくりだったから。」

そういえば、ここに来た時から既視感がするなとは感じていた。

「ヒェー!軽く自慢かよ!」

⏰:09/09/03 15:23 📱:SH705i 🆔:XaOOTU7E


#599 [ぎぶそん]
螺旋階段を駆け上がり、確かに優平が言うように、5階の左奥に書斎らしき部屋があった。

一面に本棚が置かれていて、その中にはびっしりと本が詰まっていた。
クリア博士が研究者として、常に努力を怠らなかったのが伺える。

「…あったぞ!」

元基が机の下に置かれていた段ボールの中から、アルバムを見つけた。

1つめのアイテムよりすんなりと手に入れることが出来た。

⏰:09/09/03 15:38 📱:SH705i 🆔:XaOOTU7E


#600 [ぎぶそん]
「よし、アイテムも残すところ後1つだ。
次の場所はストロベリーマンション。ここから約300メートル先にある。

アイテムは『記憶と感情を失った少年クリス』か。
アイテムって言うより子供みたいだ。」

優平が地図を見ながらぼやく。

「なあ、俺全部の銃が弾切れだ。」

元基がトリガーを引き、カチッ、カチッと頼りない音をさせる。

「私も。もう予備の弾も残り少ないわ。」

へばるように、その場に座り込む私。

逆に2種類の銃だけでここまで来れたことに感心する。

⏰:09/09/03 15:48 📱:SH705i 🆔:XaOOTU7E


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