漆黒の夜に君と。[BL]
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#500 [ちか]
「優里はひねくれてるけど、根はいい子なんだよ。口は悪いけど…仲良くしてやってよ。ね?」

恭弥はそう言って、眉を寄せて苦く微笑んだ。

なんでそんな顔するんだよ。
そんな顔されたら、俺…


「…………わかったよ…」

そう言うしか無いじゃんか。

⏰:09/03/09 18:43 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#501 [ちか]
そして今に至るワケだ。


さて、このブラコンをどうやって車に乗せようか

「俺は絶対てめえなんかと帰らねーからな!!!
てめえと帰るくらいなら、そこらで野宿する方がマシだ!!!!」

トランクにでもぶちこんでやろうか、この野郎。

⏰:09/03/09 18:50 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#502 [ちか]
「お前の大好きな兄貴に頼まれてんだよ。兄貴の頼みなのに聞けねーの?」


「………………………さっさと帰るぞノロマ!!!!」


ノロマノロマ言うな、このブラコン豹変野郎!!!

と、口に出してしまいそうだった言葉を飲み込んで俺も車に乗った。

⏰:09/03/09 19:29 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#503 [ちか]
張り詰めた沈黙は家までの道のりをより長く感じさせた。


やっとの事で黒羽邸に着いた俺(達)は、お互いその沈黙を保ったまま階段を上がり、部屋に向かった。


ん?

待て待て。
コイツの階はもう一つ上だろ?

⏰:09/03/09 19:56 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#504 [ちか]
「‥‥‥‥‥。」

「‥‥‥‥‥。」


おいおい。
部屋の前着いたんだけど


なんでお前はまだ俺の後ろに居るの?
なんで俺の部屋の前でお前も足止めてんだよ。

⏰:09/03/09 20:14 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#505 [ちか]
ガチャ‥

ドアノブの回る音が廊下に響いた。

「‥‥‥‥‥なんだよ。」

「別に。」

「ふーん。じゃ、俺部屋入るし、お前も‥‥」

そう言ってドアを閉めようとした時。

ガシッ

「なっなんだよ?!」

なんでドア掴むわけ?!

⏰:09/03/09 20:19 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#506 [ちか]
「べ、べつに?!?!」

「ならドア離せよっ!!!」

「無理っ!!!!」

「はぁ?!なんでだよ?!?!」

なに、なんのコイツ!!
ついに頭おかしくなった?!?!



「ひ、一人嫌なんだよ!!!」


‥‥‥‥‥‥は?

⏰:09/03/09 21:04 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#507 [ちか]
>>506訂正

なんのコイツ→○
なんなのコイツ→×

すいません><

⏰:09/03/09 21:06 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#508 [ちか]
がっちりと掴まれたドア


いつになく必死な顔



なに、お前、それ‥‥



「本気‥‥?」

⏰:09/03/09 21:15 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#509 [ちか]
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥わりぃかよ…。」


俯く優里。

唖然とした顔の俺。



「ぷっ、「笑うなっ!!!!//」

だって…
あんな偉そうな態度で
実は寂しがりとかさあ…
ギャ、ギャップが…ぷっ

⏰:09/03/09 21:27 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#510 [ちか]
「いいから入れろよノロマ!!!///」

「おわっ!!」

バタンっ!!


ブラコン寂しがり屋豹変野郎は強引なようです。
ぷっあはははは!!!!

「笑うなっつってんだろーがあ!!!!///」

⏰:09/03/09 21:38 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#511 [ちか]
俺は真っ赤な優里を見ながら必死で笑いをこらえた。

「お、お前さあ…そのギャップどうにかなんない?!」

「うるせえっ!!!///」

「いてっ!!!殴んなよ!!」

照れ隠しに暴力かよ。

⏰:09/03/09 21:52 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#512 [ちか]
頭を擦りながら言う俺をよそに、優里はドカッとソファーに腰かけた。


やっぱりその偉そうな態度とさっきの態度が一致しない。

あ、やべ笑い堪えられなくなってきたかも。

「だ、だいたい、なんでお前家に住んでんだよ!!!」


うん、それはいい質問だ。
でも簡単に言うと、お前の兄貴に半強制的に住まされてんだよ。

⏰:09/03/09 22:13 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#513 [ちか]
とは、さすがに言えない

「‥‥‥‥‥‥。」

なんて言おうか。

俺が言い訳を探していると、痺れを切らした優里は俺の言葉を聞く前に口を開いた。


「やっぱり、アレか。」


 

⏰:09/03/09 22:19 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#514 [ちか]
「お前…まさか気づいてたのか‥‥?」



恭弥と俺が“そう言う関係”だと言うことを。


「当たり前だろーが。」



ま、まじで‥‥‥?

⏰:09/03/09 22:28 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#515 [ちか]
言われて見れば、
昨日だって一つ屋根の下で“あんな事”してたワケだし…。



もしかして、恭弥の態度とか俺の態度見て気づいたのかも…。

家じゃ学校より気抜いてたし、関係がバレてもおかしくない…。

⏰:09/03/09 22:49 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#516 [ちか]
「ご、ごめん俺…っ「ウチの財産が目当てなんだろ」









はい?

⏰:09/03/09 22:51 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#517 [ちか]
「は?」

「とぼけんな。兄貴にどうやって取り入ったのかは知らねーけど、俺まで誤魔化せると思うなよ?」


いやいや。
誤魔化すもなにも…

俺は思ってもみなかった言葉にただ呆然とした顔で立ち尽くした。

「否定しねーとこを見ると図星みたいだな。」

⏰:09/03/09 22:57 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#518 [ちか]
「や、違うけど…」

「じゃあ説明してみろよ」

「‥‥‥‥‥。」


どう説明したらいい?
淡白で、それでいて複雑なこの関係を。


「言えねーじゃねえかよ」


悔しい。

⏰:09/03/09 23:14 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#519 [ちか]
「とにかく俺は兄貴を守る。お前なんかさっさとこの家から追い出してやるから覚悟しとけよ。」


ビシッと人差し指を俺に向けながら睨む瞳。


思わず怯んでしまい、何も言えなかった。

と、その時。

コンコン.

「冥?優里もそこに居るの?」

ノック音と恭弥の声。

⏰:09/03/09 23:18 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#520 [ちか]
ドアが薄く開くと、そこからひょっこりと出された恭弥の顔。

「あ、居た居た。」

優しい笑顔に、俺は表しようのない安心感を得た

「おかえり!」

後ろから放たれる明るい声色。

⏰:09/03/09 23:24 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#521 [ちか]
「ただいま。」

返される優しい笑顔。

この笑顔はみんなに平等?
分かってる。俺のモノじゃないんだよな…。

「兄貴、そっちの部屋行っていい?」

ニコニコと笑う優里。

⏰:09/03/09 23:30 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#522 [ちか]
「あ…ごめん、今から出掛けなきゃいけなくて…」

「えー…なんで?」

口を尖らす優里。

え、じゃあ俺またコイツと2人っきり?!
耐えられないって…

「ちょっとこの前の商談の続きがあってね。」


ん?商談?
て事は‥‥――!!

⏰:09/03/09 23:42 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#523 [ちか]
「お、俺も行く!!!」

「「え?」」

2人の視線が一気に集中する。

「挨拶も無いままバイト辞めちゃったし…荷物とかあるし‥‥‥だめ?」

俺は恐る恐る恭弥を見る

恭弥は暫く考えるような顔をしたあと、
「いいよ。」と、返事をくれた。

⏰:09/03/09 23:47 📱:P906i 🆔:QJ4p4rAQ


#524 [ちか]
「やったあ!!」

いい機械だ。
ちゃんと店長に挨拶して、お礼を言おう。

ついでにこのギャップの激しい奴とも離れられて好都合だ。

「俺も一緒に行く…っ!!」

喜ぶ俺とそれを見て微笑む恭弥の間を割って入るような声。

⏰:09/03/10 00:50 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#525 [ちか]
「優里、お前はダメだ。」

なんの躊躇もなく恭弥は優里を見据えてそう言った。

「なんでコイツは良くて俺はダメなんだよっ!!!!」

「それはお前が一番良く分かってるだろ?」

「でも…っ「優里。」

いつもは優しく慰めるように言う筈なのに、この時は違った。
優里の言葉を遮って、最後までOKを出さなかった

⏰:09/03/10 00:55 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#526 [ちか]
「兄貴の馬鹿…―っ!!!!」

吐き捨てるようにそう言って優里は部屋を飛び出していった。

部屋に流れ出す沈黙。

恭弥もそれをかき消すように、
「じゃあ、下で待ってるから。」
と微笑んでドアを閉めてしまった。


だけど、なんでそんな悲しそうに笑うんだろう…

⏰:09/03/10 14:45 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#527 [ちか]
下に降りていくと、黒いスーツを身に纏った恭弥が居た。


スラリとした身体つきによくに合っていて、つい見とれてしまった。



あの漆黒の夜を思い出して。

⏰:09/03/10 15:12 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#528 [ちか]
「冥?」

名前を呼ばれて、俺は我に返った。

「ほわ?!?!なに?!」

あー…また変な声出してしまった…


「クスッ、行こっか。」

笑われた事が少し恥ずかしくて、俺は小さく頷いた。

⏰:09/03/10 15:24 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#529 [ちか]
久しぶりにまたあの長いリムジンに乗った俺は、なぜか緊張して畏(カシコ)まってしまった。


「クスッ、なんで固くなってるの?」

「だって、なんか…」

いろいろ思い出すし…

恭弥は俯く俺を見て、ふふっと笑うと優しく頭を撫でた。

⏰:09/03/10 15:49 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#530 [ちか]
「子供扱い…するな…//」

「冥は素直じゃないね。」

この余裕な表情がムカつくんだよ‥っ///

俺は照れ隠しに、撫でられる手をはらいながら話題を変える事にした。

「て、て言うか、なんで優里連れて来なかったの?別にあんな厳しくする事ないのに。」

⏰:09/03/10 16:08 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#531 [ちか]
そう言って恭弥の顔にチラリと目をやると、そこには哀しげな表情(カオ)があった。

「ごめん、俺…っ、そんな顔させるつもり無かったんだけど‥‥、」

俺は慌てて言葉を付け足した。

「や、冥は何も悪くないよ。謝らないで?」

そう言ってまた作られる哀しげな笑顔。

⏰:09/03/10 16:28 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#532 [ちか]
何も言えなくなる。
そんな顔されたら‥‥

俺まで哀しくなる…


恭弥は俺の表情が曇っていくの見て、こう問いかけた。


「冥は…優里がなんでカナダに住んでたと思う?」

⏰:09/03/10 16:33 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#533 [ちか]
>>532訂正

曇っていくの見て×
曇っていくのを見て○

すいません><

⏰:09/03/10 16:34 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#534 [ちか]
突然の問いかけに俺は少し考え込んだ。

「英才教育の一貫…とか?」
暫くして、俺は浮かんできた答えの中で一番もっともらしい答えを口にする。

しかしそれはハズレだったようで、恭弥は首を横に振った。

そして言ったんだ。


「優里はね、病気なんだ」

⏰:09/03/10 17:33 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#535 [ちか]
「え…?」

“病気”と言う単語がリアルに感じるのは、きっと恭弥の表情(カオ)が暗いから。

「病気って言っても、癌みたいなものじゃないんだ。
優里には生まれつき心臓に小さな腫瘍があってね。
普段は普通の人と何も変わりないんだけど、その腫瘍のせいでいつ発作が起こるか分からないんだ。
言うならば、心臓に爆弾を抱えてるようなもので…」

恭弥の顔から作り笑いすら消えていく。

⏰:09/03/10 17:41 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#536 [ちか]
「カナダに心臓外科の名医が居るんだ。
その先生に診てもらう為に優里は五歳の時、日本の病院からカナダの病院に移されてそこに住んでる。だから、僕と優里は物心ついた頃から離ればなれだったんだ。
今はまだ手術に耐えられる歳じゃないから、進行を遅らせる事しか出来なくて…」


俺はただ黙々と恭弥の話を聞いた。
だけどどこかに『まさか』『あれで本当に病気?』って思ってしまう自分が居る。

⏰:09/03/10 18:29 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#537 [ちか]
「優里のあの口調と派手な見た目はね、優里なりの強がりなんだ。
『病気で可哀想』、『親兄弟と会えなくて可哀想』、『病院暮らしで可哀想』…。
とにかく他人に可哀想な目で見られたくないみたい。
だから派手にして、『自分は全然辛くなんかない』ってそう他人に見せつけてた。
案の定、同年代の子はみんな優里を怖がって離れていっちゃった…」

⏰:09/03/10 18:38 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#538 [ちか]
「優里は辛いとか寂しいなんて一言も言った事ないけど、小さい頃、隅っこで泣いてるのをよく見たよ。
だから、僕は決めてるんだ。滅多に会えない分、会った時はどんな優里でも、誰よりも理解して守ってあげようって。
それが兄として、優里にしてやれる精一杯の事だと思うから…」


兄として精一杯してやれる事‥‥―――
恭弥はいつからそれを決めてたんだろう。
子供の頃からそんな事を思えるのは、きっと…――

⏰:09/03/10 18:55 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#539 [ちか]
「だからこんな血の気の多い場所、いつ発作が起こるか分からないのに連れていけないよ。

大切な‥‥弟だから。」


呟く声がやけにか弱くて。

「恭弥は優しいね。」

俺はそう言って手を握った。

⏰:09/03/10 19:40 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#540 [ちか]
「ありがとう。」

あぁ。
良かった‥――
やっと笑ってくれた。


俺もその笑顔に安心して、笑顔を溢した。


やがて静かに車は停まり、俺はそこから降りた。

⏰:09/03/10 19:57 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#541 [ちか]
「じゃ、また後で迎えに来るね。」

「うん、じゃあね。」

俺は車を視界から消えるまで見送ったあと、店のドアノブに手をかけた。

しかしなかなか回す事が出来ない。
いきなりなんの挨拶もお礼も無し辞めちゃって、半ば勢いでここまで来たけど、店長達に合わせる顔が…

⏰:09/03/10 20:05 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#542 [ちか]
「あれ、日下?!」

後ろから急に名前を呼ばれ、俺の身体はビクリと跳ねた。

振り返るとそこには、

「崎田さん…」


一緒に働いていた先輩が居た。

⏰:09/03/10 20:08 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#543 [ちか]
「久しぶりだなっ!!」

崎田さんは俺より7つ年上でよく面倒みてもらっていた。
なおさら合わせる顔が無い。

「急に辞めたから驚いたわ!!!」

「すいません…」

⏰:09/03/10 20:11 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#544 [ちか]
「ま、立ち話もなんだし、入れよ!」

「あ…っ」

カランコロンと小さく鈴の音が鳴って、崎田さんに背中を押された俺は店内に入った。

「いらっしゃ…――冥!!」


入って早々、目に飛び込んだのは店長の顔だった

⏰:09/03/10 20:21 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#545 [ちか]
「お、お久しぶりです…」

目もまともに見れない‥

だけど店長の声は優しかった。

「元気だったか?」

俯いていた顔をあげると、優しい笑顔。

「はい‥、あの…急に辞めちゃって、なんのお礼も言えなくて…すいませんでした!!!」

俺は深く頭を下げた

⏰:09/03/10 20:33 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#546 [ちか]
「頭あげろよ、お前らしくない。」

頭上で、あははっと笑い声をあげる店長。

「お前が急に居なくなったのにはほんとに驚いたけど、後から黒羽さんに話聞いたから。」

恭弥?
いつの間に…

⏰:09/03/10 20:41 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#547 [ちか]
「気にしすぎだっつーの!
頭あげろって。」

崎田さんはそう言って俺の頭を軽く叩いた。


俺ってつくづく幸せだよな…
こうやって温かく迎えてくれる人が居て…

⏰:09/03/10 20:46 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#548 [ちか]
それから店長達とたくさん話をした。

最近あったくだらない話や、常連さんの面白話…

店が込みだせば、手伝ったりもして、あっと言う間に時間は過ぎていった

夜が深くなり、街はさらに活気を増していく。

柄の悪い連中も増える時間。

「なんか店の外が騒がしいな。」

店長がドアの方を見ながら呟いた。

⏰:09/03/10 21:11 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#549 [ちか]
「喧嘩は勝手にしてりゃあ良いけど、ウチの前でされちゃあ困るんだよなー。」


店長は眉間にシワを寄せながら腕を組んだ。

途切れ途切れに聞こえてくる喧嘩の声。

「…〜っ!!!はなせってば…!!!」

この声、聞いた事ある…

⏰:09/03/10 21:20 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#550 [ちか]
これは…

「〜…触んな、馬鹿野郎!!!」

この声は…

「おい、冥!!?」


気づけば俺は店の外に飛び出していた。


「優里?!?!」

⏰:09/03/10 21:28 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#551 [ちか]
目の前に飛び込んで居たのは、柄の悪そうな二人と掴み合いになっている優里の姿だった。

「どこ見て歩いてんだよ、ガキが!!!!」

「おっさんこそ目見えてないんじゃねーの?!?!
あんたが悪いんだろーが!!」

「誰がおっさんだコラァ!!」

そう言って優里に拳が振り上げられた。

バキ‥‥――ッ

⏰:09/03/10 21:40 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#552 [ちか]
鈍く生々しい音が辺りに響いた。

「い゙ってーっ!!!!!」

俺、頭がどうかしちゃったんだろうか。
優里をかばって、自分が殴られるなんて。

「お前…っ、なんで!??!」

「そりゃこっちのセリフだっつーの…」

左の頬がジンジンと痛んだ。

⏰:09/03/10 21:44 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#553 [ちか]
「なんだてめえっ!!!‥‥‥‥あ、お前この前のっ!!!」

大声を張り上げる男を見上げると、そいつは偶然にもあの夜に恭弥にやられた二人組だった。

「てめえ、あの時はよくも…っ!!!!!」

ガタイのでかい男がもう一度拳振り上げる。

「やめろ。」

「あ゙?!なんでだよ!!!」


「‥‥‥‥俺にもっといい考えがある。」

⏰:09/03/10 21:54 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#554 [ちか]
>>551訂正
目の前に飛び込んで居たのは→×
目の前に飛び込んで来たのは→○
すいません´;;`

⏰:09/03/10 21:55 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#555 [ちか]
>>553訂正
拳振り上げる→×
拳を振り上げる→○
本当にごめんなさい;

⏰:09/03/10 22:26 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#556 [ちか]
>>553
― 恭弥side.―

思ったより商談が長引いてしまった。

ふと時計に目をやると、短い針が3を指す手前まで来ていた。

早く迎えに行かなきゃ。

そんな事を考えながら車を走らせて、冥の待つ店に向かった。

⏰:09/03/10 22:34 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#557 [ちか]
ドアを開くと、店長の水嶋さんが焦った顔で僕に駆け寄ってきた。

「こんばんわ、あの…冥は…?」

見渡す限り冥の姿は無い

「それが、店の前で喧嘩してた連中に連れていかれて‥‥っ!!!冥と同い年くらい金髪の子も一緒に…!!」

⏰:09/03/10 22:44 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#558 [ちか]
同い年くらいの金髪の子って…――優里?!

「警察にも言えないし‥‥、とにかく早く助けないと‥‥っ、ってちょっと!!」

一瞬で血の気が引いた。

冥と優里が‥‥――?

水嶋さんの話も最後まで聞かないまま、僕は店を飛び出した。

⏰:09/03/10 22:51 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#559 [ちか]
しかし外に出たところで、何かが分かるワケでもない。


「恭弥様?どうなさいましたか?顔色が‥‥」

心配そうな顔で松山は僕の顔を覗き込む。


「‥‥‥松山。」

「なんでしょうか?」

⏰:09/03/10 22:56 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#560 [ちか]
「命令だ。
冥と…優里が連れ去られた。
一秒でも早く探し出せ。

手段は選ぶな。」

低い声が静かな街中に響いた。


「はい。」

⏰:09/03/10 23:00 📱:P906i 🆔:iBV6D6kI


#561 []
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600

⏰:09/03/10 23:08 📱:F906i 🆔:BRPhDdXs


#562 [ちか]
>>561
└→さま*
アンカーありがとうございます★
よかったら、感想板にも遊びに来てくださいね♪

⏰:09/03/11 00:11 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#563 [ちか]
>>560
― 冥side.―

「ん‥‥―――」

視界がぼんやりと広がっていく。

ここ‥‥どこ?

「やっと起きたのかよ。」

声のする方へ顔を向けると、優里と目が合った。

「なんでお前も居…?!!」

そう言って手を動かそうとしても、身動きが取れない。

縛られてる…?!

足の方に視線を向けると、縄は足にも絡みついていた。

⏰:09/03/11 15:20 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#564 [ちか]
「んなでかい声出すなよ、耳痛てえ…」

「ご、ごめん…て言うか、ここどこ?」

薄暗くて、広い‥‥――
何かの倉庫‥‥?

「知らね。アイツらの“お気に入りの場所”だろ」

『アイツら』の言葉の先を辿ると、薄く開いた扉の隙間からさっきの柄の悪い奴らが見えた。

⏰:09/03/11 15:42 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#565 [ちか]
どうやら俺達はコイツらに連れてこられたようだ

みぞおちがズキンと痛むのは、その証拠。

きっと俺は殴られて気を失ったんだろう。

「けど、マジでアイツ来んのかよ?」

小さいながらも確かに聞こえるアイツらの声。

⏰:09/03/11 15:58 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#566 [ちか]
「来るだろ。丁寧にあの店の店長にココの場所まで教えてやったんだぜ?ま、一人で来いって条件付きだけどなっ」

ゲラゲラと低い笑い声が耳につく。

「でも、アイツらが人質になるかどうか…」

アイツら…
俺達のことか。

⏰:09/03/11 16:30 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#567 [ちか]
「それもそれだな。
まぁ、もし来なかった時はアイツらで憂さ晴らしすりゃあいいだろ?」

「それもそうだなっ」

二人の笑い声が辺りに響き渡った。

俺達で憂さ晴らしって…

「おい、どーすんだ…よ、って優里?!」

向き直ると顔色を悪くして肩で息をする優里が目に入った。

「気やすく……名‥前呼ぶんじゃ…ねえよ…ハァ‥ハァ」

⏰:09/03/11 16:42 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#568 [ちか]
>>567訂正
それもそれだな×
それもそうだな○
ごめんなさい!

⏰:09/03/11 16:43 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#569 [ちか]
>>567

「お前顔真っ青じゃん!!」

「あ?大した…事じゃ…ねえ、う…っ!!」

「ちょ…っ!!?」

まさか‥‥‥っ

「発作?!?!」

優里の顔はさらに青くなり、息も荒れていく。

⏰:09/03/11 16:49 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#570 [ちか]
「なんで‥‥‥てめえが…ハァ、知って…………兄貴…か?」

「あ、それは‥‥っ」

やばい。
車降りる時言われてたんだった。

『優里は秘密にしたいみたいだから…内緒ね』って。

「分かりやす…ハァハァ…、どうせ…お前も思ってんだろ?」

⏰:09/03/11 16:55 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#571 [ちか]
「え?」

思ってる…?何を‥――

「こ…んな病気持って、病院暮らしで…ダチも居ない俺を『哀れだ』『惨めだ』って…思ってんだろ…?!」

苦しそうに声を絞り出す優里。

「っな、俺はそんな事「兄貴だってそうだ……っ」

⏰:09/03/11 16:59 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#572 [ちか]
「俺みたいな……弟……、『邪魔だ』って‥‥!!!
だから今日だってついてくるなって……―――」


その言葉が頭に届いた瞬間俺は俺を見失った。




「バッッカじゃねーの?!」

⏰:09/03/11 17:06 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#573 [ちか]
「恭弥は…っ、お前の兄貴はそんな事思ってない!!!
アイツは、お前を『大切な弟』だって‥‥!!!
大切だから、大事だからこんな危ないトコには連れてけないって言ってた‥‥!!
それを分かってやれないお前は大馬鹿だよ!!!!」

俺は息をするのも忘れたかのように言葉を吐き捨て、怒鳴った。

いきなりの怒声に優里は目を丸くしている。

⏰:09/03/11 17:31 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#574 [ちか]
「あ?アイツら起きたのか?」

ふと我に返った時はもう遅かった。

俺の声のせいで俺達が目を醒ました事に気づいた二人は扉を開けた。

「なぁ、あの黒髪のヤツなかなか来ねえし、俺、ウォーミングアップしてえんだけど。」

大柄なヤツがニヤリと口角を上げた。

⏰:09/03/11 17:43 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#575 [ちか]
「勝手にしろ。あ、でも1人だけにしとけよ?
2人共やっちまったら、いざって言う時役に立たねーからな。」

そう言ってもう片方の男は煙草に火をつける。

「オッケーオッケー。どっちにしよーかなあ?」


ニヤニヤしながら、大柄の男は俺と優里を交互に見る。

⏰:09/03/11 17:48 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#576 [ちか]
優里の息が不規則に荒く鳴る。

こんな状態で殴られでもしたら‥‥――――


「な、殴るなら俺にしろ…!!」


俺は大柄の男を見上げ、そう大きく言放った。

⏰:09/03/11 17:51 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#577 [ちか]
「あ゙ぁ?いい度胸じゃねーか。」

「く‥‥っ」

グイッと前髪を捕まれ、顔を上に向けられる。

「じゃ、遠慮なく…ニヤッ」

太く大きな拳が勢いよく振り上げられた。

やられる‥‥―――っ!!

⏰:09/03/11 17:57 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#578 [ちか]
そう覚悟して目を瞑り、歯を食いしばったその時‥‥―――


ギィィ‥‥―――

扉が軋みながら重たく開く音が響き渡った。


月明かりに照らされて浮かび上がるシルエット…―

⏰:09/03/11 18:09 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#579 [ちか]
「恭‥‥弥‥――?」


目を薄く開くと、そこに立っていたのは紛れもなく恭弥だった。





しかし、それは俺の見てきた優しい恭弥じゃない

⏰:09/03/11 18:21 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#580 [ちか]
前髪を掴まれ、今にも殴られそうな俺。

その隣で苦しそうに息をする優里。

それが恭弥の瞳にどう映ったのだろうか。


少なくとも俺の瞳に映った恭弥は怒りで震えていた。

「何してるの?」

それが、恭弥が口を開いて初めて発した言葉だった。

⏰:09/03/11 21:29 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#581 [ちか]
「やっと来やがったな!!」

大柄の男もまた、怒りで興奮していた。

しかし、恭弥の怒りはきっとこんなものではない
その夜のように黒い瞳の奥にその怒りようが垣間見れた。

「何してるのって聞いてるんだよ。」

恭弥は眉間にシワをギュッと寄せた。

⏰:09/03/11 21:35 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#582 [ちか]
「はっ、見りゃ分かるだろ。」

煙草の煙を辺りに吐きながらもう1人の男が言う

「へえ…随分偉そうなんだね。」


「それはてめえだろーが!!」

大柄の男が入り口に立っている恭弥の方に向き直る。

⏰:09/03/11 21:40 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#583 [ちか]
「君は何か勘違いしてるみたいだから教えてあげる。」

その低い声に背筋が凍った。



「ねえ、君は…僕のものに触っていいと思ってるの?
触って…タダで済むと思ってるの‥‥?」

⏰:09/03/11 21:46 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#584 [ちか]
怖い。
俺…こんな恭弥知らない
見たこと無い‥――

「はぁ?!意味わかんねえ!!!」

大柄の男の拳には血管が浮き上がり、それがその興奮状態を物語っていた


「ふうん。
……解らないなら教えてあげる。」

恭弥は不適な笑み浮かべそう言った。
だけど目は笑ってない…

⏰:09/03/11 21:52 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#585 [ちか]
「ふざけた事ばっか言ってんじゃねえぞ!!!!!」

ついに男の拳が恭弥をめがけ牙を向けた。

「学習能力が無いんだね。
そう言うの何て言うか知ってる?」


恭弥は勢いのある拳を簡単によけた。

そこからは言うまでもない。

一瞬だった。

「馬鹿って言うんだよ。」

恭弥のその言葉と同時に大柄の男は大きな音をたてて倒れこんだ。

⏰:09/03/11 21:59 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#586 [ちか]
「次は誰?」

恭弥は煙草をふかす男を鋭い眼孔で睨み付けた。

「やっぱ強えーな…。でもこっちはお前の為にだいぶ人を用意したんだぜ?さすがのあんたも‥‥、」


「人?ああ…、もしかしてこの人達?」

扉が完全に開いた時、俺も煙草をふかしていた男も目を疑った。

⏰:09/03/11 22:11 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#587 [ちか]
目に飛び込んできたのは、地に倒れこんでいるたくさんの人‥‥―――
数えきれないほどの数の人だった。


「なっ、嘘だろ…?!全部あんた1人で…――?!」

「邪魔してきたから…。手加減出来たか分かんない。」

恭弥のその言葉に、男の顔が青ざめていくのが分かった。

⏰:09/03/11 22:17 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#588 [ちか]
「君で最後みたいだね。」

「わ、分かった!!!コイツらはあんたに返す!!!な?!
だから見逃し‥‥――」


男が最後まで言う前に、
鈍い音が倉庫中に響き渡った。

「やだよ。」


ドサッと言う音をたてて、最後の1人がそこに倒れこんだ。

⏰:09/03/11 22:22 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#589 [ちか]
「きょ、恭弥‥‥‥?」

恐る恐る名前を呼んでみる。

すると、その瞬間さっきまでの不気味さは消え、焦ったような表情で恭弥は駆け寄ってきた。

「冥っ!!!優里…っ!!!」

俺達は恭弥の腕の中に包みこまれた。

⏰:09/03/11 22:28 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#590 [ちか]
「ごめん‥‥‥っ」

なんで恭弥が謝るの…?
なんで‥‥―――

今にも消えそうな掠れた声。

「恭弥‥‥――――、」

なんで震えてるの…?

「恭弥様っ!!!!!!」

松山さん率いる恭弥に仕える人達が一気に倉庫内に入ってきた。

⏰:09/03/11 22:35 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#591 [ちか]
「一秒でも早く探してって言ったよね?なんで僕1人の方が早いの?ねえ、」

恭弥が松山さんを睨んで言う。

「申し訳ございません!!」

深く頭を下げる松山さん

「もういいから、とにかく早く優里を…っ」

「はい…っ!!!」


そうして優里は病院に運ばれ、俺と恭弥もそれに同行した。

⏰:09/03/11 22:44 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#592 [ちか]
優里は緊急治療室に運ばれた。

俺達はその前のソファーに座り俯いていた。

沈黙が重い。

静まり返る病院。

「守りきれなかった…―」

ふいに恭弥が口を開いた

⏰:09/03/11 22:51 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#593 [ちか]
「恭弥‥‥――?」

驚いた。
恭弥の目に涙が浮かんでいたから。

「怖かったんだ‥‥――
取り返しのつかない事になったらどうしようって…。優里を失くしてしまったらどうしようって‥‥――」

恭弥の肩が震えてた。
どれだけ不安だったのか、伝わってくるほどに。

⏰:09/03/11 23:00 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#594 [ちか]
「守っていたつもりだった。だけど、それは僕の勘違いで‥‥―――
実際は何も、僕は優里に何もしてやれてなかった…」

その言葉は自ら自分を追い詰めているようだった

俺は震える恭弥の手を強く握った。

「そんな事ない…っ」

⏰:09/03/11 23:06 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#595 [ちか]
「優里は恭弥の事、好きだって言ってた。恭弥の為に学校でも明るく振る舞ってた。恭弥が、もし何もしてやれてなかったらこんな事してないよ、絶対。
恭弥は…ちゃんと、優里を守れてたよ。」

今俺の目の前に居る恭弥は余裕も無くて、すごく弱い。

だけど、それは優里がそれほど大切だったから。

大切にしてたから。

⏰:09/03/11 23:18 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#596 [ちか]
俺は恭弥を力の限り抱き締めた。

恭弥の不安を少しでも無くしてあげたかったんだ。

俺にとっては、恭弥が
それほど大切だったから



暫くして、看護婦の人が俺達に安心の言葉をくれた。

⏰:09/03/11 23:22 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#597 [ちか]
精密機械の音だけが響く部屋に連れていかれた。

ベッドに寝ているのは優里。

「今は呼吸も安定していますし、命にも別状はありません。直に目も覚めるでしょう。」

先生の話を聞いて、俺達は安堵の息をもらした。

それから俺達は優里の目が覚めるまで、一睡もする事がなかった。

⏰:09/03/11 23:31 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#598 [ちか]
気づけば夜が明けて、朝になっていた。

「兄‥‥貴‥‥?」

「優里っ…――!!」

小さい声にも過敏に反応した俺達は優里の名前を呼んだ。

「ごめん…。」

優里は呟くように言った。

⏰:09/03/11 23:39 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#599 [ちか]
「心配したよ…――」

「ごめん‥‥。」

この淡白な会話にどれほどの感情が詰まっている事だろうか。

この不器用な兄弟の間には。


暫く兄弟同士で会話を交わしたあと、優里は俺に目をやった。

⏰:09/03/11 23:43 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#600 [まな]
面白すぎますっ!!
文才ありまくりですねっ!!

もう感動です…

⏰:09/03/11 23:45 📱:PC 🆔:j6gUNdeY


#601 [ちか]
「ありがとうな…冥。」


その笑顔に寂しげな表情は欠片も無かった。

「お、おう!」

俺は笑顔で返す。


少しは俺らの距離も縮まったかな‥‥?

⏰:09/03/11 23:48 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#602 [ちか]
「驚いたよ。」

病室を後にしたあと、恭弥に言われた。

「え?何が?」

そう言って疑問の瞳を向けると、恭弥はふふっと笑った。


「優里が人の事名前で呼ぶなんて初めてだったから。」

⏰:09/03/11 23:53 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#603 [ちか]
「え‥‥」

それって‥‥――
それって‥‥‥――――

「友達って意味じゃない?」

恭弥はにっこりと笑った。

「ホントに?!」

「病院内では静かに、ね」

嬉しかった。
むかつく奴だけど、
ひねくれた奴だけど、
とにかく嬉しかった。

⏰:09/03/11 23:57 📱:P906i 🆔:KaqMZK1M


#604 [ちか]
それから2日後、優里はカナダに帰る事になった

もともとは来年行う腫瘍を取り除く手術に向けての検査中に、俺の噂を聞いて病院を抜け出してきたらしい。

やっぱブラコ…――

「誰がブラコンだコラ。」

⏰:09/03/12 00:11 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#605 [ちか]
「あ、また口に出てた?」

「出まくりだっつーの、馬鹿か。」

こんな生意気な口がきけるまで優里の体調も回復しましたよ、みなさん。

「誰に話してんだよ。」

「内緒。」

ちなみに今は空港まで、
優里を見送りに来てます

あ、もちろん学校は休んだ。恭弥も一緒にね。

⏰:09/03/12 00:17 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#606 [ちか]
「俺がカナダに居る間、特別に兄貴はお前に任せてやる。
まぁ、手術さえ終わればいつでも帰ってこれるけどな。念のためだ、念のため!」

「はいはい。」

あれから俺達の間はだいぶ近くなった。
下の名前で呼びあってるのが、その証拠。

恭弥は俺と優里の会話を聞きながら、嬉しそうに笑っていた。

⏰:09/03/12 00:24 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#607 [ちか]
「優里様、飛行機の準備ができました。」

「分かった。今行く。」

とうとう別れの刻らしい

ちょっとだけ名残惜しかったりする。言わないけど

「あ、そうだ。最後に一つ教えてやるよ。」

そう言って優里は俺に耳打ちした。

⏰:09/03/12 00:27 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#608 [ちか]
「は?お、おう…」

「じゃ、またな!兄貴も!」

笑顔でそう言うと、優里は歩いていった。


こうして長い嵐は去って行った。


え?
何て言われたかって?

『神楽(カグラ)姉には
    気をつけろよ』

だってさ。誰だよソレ。

  ― 第三話 e n d ―

⏰:09/03/12 00:34 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#609 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

第三話 嵐は突然に
>>337-608

第三話ようやく
完結しました★Д`
第一話、第二話には無かった恭弥の内面がたくさん
描けた話になりました♪

感想・ご意見などよろしくお願いします∩^ω^∩

感想板↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/03/12 00:43 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#610 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

★まとめ

第一話 漆黒のきみ
>>3-195

第二話 比例する気持ち
>>199-332

第三話 嵐は突然に
>>337-608

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/03/12 00:44 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#611 [ちか]
>>600
└→まなさま*

まなさま、この前も感想くれましたよね?
いつも読んでくれてありがとうございます♪
文才あるだなんて、私にはもったいない言葉、本当に嬉しいです!
何より、感動して頂けて、良かったです
第三話は感動的なシーンに気合いを入れていたので♪
よければ、ぜひ感想板にもお越しください★

⏰:09/03/12 00:49 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#612 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第三話に説明不足な点が
あったので、補足と言う
形で書かせて頂きます*

優里が冥のお店の前に
居たのは、こっそり
別の車でついてきていた
からです><
しかも現地に着いたあと
ボディーガードの人とも
はぐれたと言う…(・ω・`)

私がぬけているばっかりに重要な部分をちゃんと説明出来ずすいませんでした
第四話も楽しんで貰える
よう、頑張ります!

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/03/12 08:30 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#613 [ちか]
`


 第四話 噂の女


 

⏰:09/03/12 17:52 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#614 [ちか]
あれから俺達はあの嵐のような2日間が嘘のように、平和な毎日を送っていた。

好きな人と共に過ごしていく平和な毎日。

しかし、それも長くは続かないことを俺は心の何処かで気づいていた。


それはじんわりと湿気のただよう6月のこと‥――

⏰:09/03/12 18:02 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#615 [ちか]
「日下‥‥‥―――」

「先生‥‥――」

見つめあう俺と英語の高橋先生。




雨の音が響く教室には俺達しか居ない。

⏰:09/03/12 18:08 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#616 [ちか]
「日下‥‥――頼む‥」

先生の潤んだ目と掠れた声がが俺に罪悪感をもたらす

でも‥――

「先生‥‥俺‥‥―――出来ません‥」

小さく呟く。
辛くて先生の顔が見れない。

⏰:09/03/12 20:09 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#617 [ちか]
「なんでた…っ?!
俺はずっとお前に…っ」

「わかってます!!……それは分かってます‥‥―――でも俺には‥‥。」


先生、俺、先生の気持ちはすっごく嬉しいよ。

でもこればっかりは‥―


「だったらなんで‥―っ」

⏰:09/03/12 20:18 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#618 [ちか]





「答えが一つも
  合ってないんだ…?」




⏰:09/03/12 22:05 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#619 [ちか]
「それはやっぱり、俺の頭が悪いからじゃないですかねえ…。」

シャーペンをくるくると回しながら俺は真剣に答えた。

「自分で言うなよ…。」

「いてっ!!」

高橋先生は呆れた顔でそう言うと、俺にデコピンを喰らわせた。

⏰:09/03/12 22:11 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#620 [ちか]
みなさん。

紛らわしい光景を見せしてしまい、ごめんなさい

今の状況を簡単に説明すると、俺は今マンツーマンで高橋先生の居残り補習を受けてます。



高橋先生はお疲れ気味です。

⏰:09/03/12 22:15 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#621 [ちか]
「ここまで俺の丁寧な説明を理解出来なかったヤツはお前が初めてだ。」

「おっ!それってすごくない?」

「ある意味な。」


センセー、
ソレッテドーユーイミ?

⏰:09/03/12 22:25 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#622 [ちか]
「お前このまんまだと、追試と補習で夏休み潰れるぞ?」

「えぇえぇッ?!?!」

先生のその言葉は、俺の眠りかけていた頭を一気に覚ました。

「嫌ならもっと真面目にやれ。」

「やってますよー。でも雨の日ってやる気なくなりません?」

え?俺だけだって?

⏰:09/03/12 22:33 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#623 [ちか]
「そう言う事言える期間はとっくに過ぎてんだよ…。」

苦笑いを浮かべる先生。

「あはは!てか先生って、何せんちー?」

「ん、確か…183だったかな。」

「でかっ!!」

羨ましいそうな眼差しを先生に向けると、先生は
「お前は小っこいもんな」
と悪戯な笑みを浮かべた

⏰:09/03/12 22:41 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#624 [ちか]
「って、そんな事考えてる暇あったら単語でも覚えろ。」

「えー。」

「"えー"じゃない。
雨だいぶ強くなってきたな…続き明日にするか。」

窓の外に目をやると、濃いグレーの雲から大粒の雨が降りしきっていた。

梅雨ってこれだから嫌なんだよな。

「明日もあるんだ…。」

「当たり前だ。
じゃ、これ明日までに解いてこい。以上。」

⏰:09/03/12 23:27 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#625 [ちか]
目の前に置かれた紙の束

「これ全部?先生、鬼?」

「先生は人だ。」

爽やかな笑顔で返すのやめてくれ。

俺はその紙の束をカバンに詰め込んで椅子から腰をあげた。

「じゃ、先生ばいばい!」

「おー。気ィつけて帰れよ」

⏰:09/03/12 23:31 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#626 [ちか]
そんな会話を交わして、俺は玄関へと降りていった。

「すっごい雨…。」

目の前に広がる真っ白な景色がその水滴の大量さを物語っている。

あ、今日は恭弥が先に帰ってて、俺には別の車を用意されてるんだ。

⏰:09/03/12 23:35 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#627 [ちか]
傘をさして校門まで歩いていく。

「あれ?」


校門に近づくにつれて、ぼんやりと浮かびあがってくる人影。


女の人‥‥―――?

⏰:09/03/12 23:43 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#628 [ちか]
くっきりとその姿が見える距離まで来た時、その人と目が合った。


腰まで伸びた栗色の髪

真っ白の肌に綺麗な柄の
着物を纏ったその人は、
とても

「きれー‥」

だった。

思わず口にしてしまうほどに。

⏰:09/03/12 23:48 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#629 [ちか]
って!!!

この人、傘さしてない?!


水も滴るいい女
と言う言葉があるが、
その人は長い間雨にうたれていたのか全身ずぶ濡れでそんな言葉を通り越していた。


「だ、大丈夫ですか?!」

俺は走ってその人に傘をかけた。

⏰:09/03/12 23:52 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#630 [ちか]
「あ…すいません‥私‥」

近づくとさらに綺麗だと言う事に気づいた。

「どうかしたんですか?!」

女の人の瞳は少し赤くなっていた。
泣いてたのか…?

「私‥‥人を探してて‥―――」

「人?って、ちょっと、え?!?!」

何かを言いかけて、その人は俺の胸に倒れこんだ

⏰:09/03/12 23:57 📱:P906i 🆔:pF033Bmg


#631 [ちか]
「ちょ、あのっ?!?!」

いきなりの事でパニックになる俺。
応答の無い冷たい身体。


その異様な冷たさに危機感を感じた俺は、とりあえず車に運ぼうと女の人を背中におぶって車へと足を早めた。

校門から少し離れた場所に停められた長い車。

そのすぐ傍には恭弥がよこした執事の人が傘をさして立っていた。

⏰:09/03/13 14:24 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#632 [ちか]
「冥様っ、傘はどうなされたんですか?!」

女の人をおぶるので精一杯だった俺は、傘もささないまま歩いてきたせいで全身びっしょりと濡れていたもんだから、執事の人が驚くのも無理はない。

俺は女の人が見えるように体を斜めに向けた。

「校門で倒れて‥‥」

状況を説明しようと口を開い時、女の人の顔を見え、執事の人の顔色が変わった。

⏰:09/03/13 14:37 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#633 [ちか]
「九谷様……!!?」

「え?」

この人の事知ってるの?

そう聞こうとした時、

「と、とにかく家へ急ぎましょう!!」

と執事の人は慌てたように言って、俺達を車に乗るよう促した。

⏰:09/03/13 14:41 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#634 [ちか]
家に着くと、既に大量の執事とメイドが玄関の前で立っていた。

「早く処置を…!!」

メイドの人達は女の人を抱き抱え、屋敷内へと入っていく。

「冥様もそのままでは風邪をひかれます!!」

そう言って危うく俺も抱き抱えられそうになったが、執事さんの手を振り払い走って自分の部屋に戻った。

⏰:09/03/13 14:47 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#635 [ちか]
「あっぶねえ…」

もうちょっとで恭弥だけじゃなく、執事さんにまでお姫様抱っこされるとこだった…。

この家の人はお姫様抱っこ以外の抱え方を知らないのか?

「っくしゅん!!」

雨に濡れたせいかくしゃみが。

このままじゃほんとに風邪引きかねないと思った俺は風呂に入って服を着替えた。

⏰:09/03/13 15:14 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#636 [ちか]
廊下からバタバタと人が慌ただしく走る音がする

そう言えばあの女の人、
大丈夫だったかな?

気になった俺はドアを開け廊下に出た。

「あの‥さっきの女の人どこに居ますか?」

通りかかったメイドさんに尋ねてみる。

⏰:09/03/13 15:20 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#637 [ちか]
「女の人?あぁ、九谷様の事ですね!お隣の部屋にいらっしゃいますよ。」

あの人、九谷って言うのかな‥?
て言うか案外近くに居たんだな。
そりゃ廊下が騒がしい訳だ。

「入ってもいいですか?」

「どうぞ。あ、でも静かにお願いしますね。」

メイドさんはにっこりとそう言って、廊下を歩いていった。

⏰:09/03/13 15:48 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#638 [ちか]
ドアノブをゆっくり回すと小さく音をたててドアが開いた。


目に入ってきたのはベッドに眠る色白の女の人。

改めて見ると、ほんとに綺麗な顔立ちをしているな。

そんな事を思いながら、
眠る彼女の脇で俺はちんまりと座りこんだ。

⏰:09/03/13 16:21 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#639 [ちか]
「…きょー‥くん…―」

ふいに女の人がぽつりと呟いた。

「きょーくん?‥教訓?」

寝言だろうか?
なんの夢を見てるんだろう?

俺は首を傾げたあと、彼女の顔を覗き込もうとした。


その時。

⏰:09/03/13 16:25 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#640 [ちか]
ぱっちりと大きな瞳が開いた。

「おわっ?!?!」

俺は突然の事に思わず変な声をあげ、退けそった。

上体を起こし、キョロキョロと部屋を見渡す女の人。

「あの〜…」

暫くそんな彼女を眺めたあと、恐る恐る声をかけてみた。

彼女の小さな顔がこちらへと向く。

⏰:09/03/13 16:30 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#641 [ちか]
「あなたは!」

大きな瞳をさらに大きくして女の人は言った。

「俺の事、分かります‥?」

そう尋ねると、にっこりと柔らかく微笑んで、
「もちろんです!」
と、声を大きくした。

「あなたが私をここに?」

辺りをキョロキョロと見ながら言うその人に、俺はコクリと顔を縦に振った。

⏰:09/03/13 16:34 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#642 [ちか]
「ありがとうございます。
道に迷っていたら雨が降ってきてしまって…止むのを待っていたら、いつの間にかこんな事に…」

恥ずかしげに頬を染める彼女。

そこら辺で雨宿りすればよかったのに。
この人天然?
なんて事を思いながらも、その美貌に目を奪われる。

「あ、そう言えば人を探してるって‥‥」

確かそう言ってたような

⏰:09/03/13 16:38 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#643 [ちか]
その人はほんわりと微笑んでいた目をぱっちりと見開いた。

「あっ、そうなんです!!
私、その…人を探してて道に迷ってしまって…」

仕草が女の子らしく、
その困った表情が可愛いく思えた。

「あの、俺で良かったら一緒に探しますよ?」

「いえ、そんなお世話になってばかりでは申し訳ないです…っ」

⏰:09/03/13 21:40 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#644 [ちか]
「全然ですよ、もしかしたら俺の知ってる人かも知れないし!
あ、俺、日下冥って言います。」

「私の方こそ申し遅れてすいませんっ!!
私は‥‥―――、」

そう言いかけた時、
ドアをノックする音が鳴った。

きっとこれは、

「冥?居るの?松山に聞いたらここだって‥――」

ほら、やっぱり恭弥だ


ガチャッと言う音とともに、恭弥が部屋に入ってきた。

⏰:09/03/13 21:50 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#645 [ちか]
「「‥‥‥‥‥‥‥。」」

ん?

俺を間に挟んで、言葉を無くす2人。

俺は交互に2人の顔をキョロキョロと見る。


恭弥の顔が青ざめていくように見えるのは気のせい?

しかし長く続いた沈黙を破る声は相当大きかった。

⏰:09/03/13 21:59 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#646 [ちか]
「恭くんっ!!!!!」


その瞬間、恭弥の顔から血の気が引いていくのが分かった。

正確には、抱き締められた瞬間、血の気が引いていった。


そう。
抱き締められて‥‥――

抱き締められて?!?!

⏰:09/03/13 22:08 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#647 [ちか]
いつの間にっ!!!!!

女の人はベッドを出て、
いつの間にか恭弥に抱きついていた。


硬直する恭弥。


硬直する俺。


さらにきつく抱きつく謎の女の人。

⏰:09/03/13 22:24 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#648 [ちか]
謎の修羅場。

ん?修羅場なのか?


もうなんなのか解らない


俺の思考は停止したも同然だ。


だって、こんなの…
優里ぶりで‥‥―――

⏰:09/03/13 22:33 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#649 [ちか]
「く、苦し‥‥っ」

絞り出すような声を出し、ますます青ざめていく恭弥。

「私の愛の証です!」

そう言ってさらにぎゅうぎゅうと締め付ける女の人。

え、愛?
LOVEって意味の?
あ、俺英語強くなった?

って、そう言う話じゃないっ!!

俺は目の前に浮かぶ光景に困惑し、一人ツッコミまでしてしまう始末。

⏰:09/03/13 22:41 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#650 [ちか]
「そんな愛は要らない!!
て言うか、なんでお前がここに?!」

もはや恭弥の顔は青を通り越して、白くなっていた。

「クスッ、相変わらず恭くんは照れ屋さんですね。
でも、婚約者が婚約者に会いに来るのに理由なんて要らないでしょう?」


そして俺の頭も今さっき
真っ白になった。


 

⏰:09/03/13 22:47 📱:P906i 🆔:wTLUQSGQ


#651 [ちか]
「こ…んやく…しゃ…?」

耳に入ってきた言葉を
おうむ返しのように
口にする。


だけど意味は一向に理解出来なかった。

いや、きっと理解することを頭が、身体が拒否したんだろう。

だってそんなの…

⏰:09/03/14 16:53 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#652 [ちか]
俺の間抜けな声に女の人は俺の存在を思い出して、恭弥から体を離した。


「あ、お恥ずかしいところをお見せして申し訳ありませんっ!!」

そう言って顔を赤くして、頭をペコリと下げる。


しかし何を言われても
今の俺の頭は回転せず、
ただ恭弥とその人を交互に見るだけだった。

⏰:09/03/14 16:58 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#653 [ちか]
頭をあげると同時に栗色の長い髪がふわりと宙を描いた。



「私、九谷神楽(クタニ カグラ)と申します。」



九谷 神楽 ‥―――

その聞き覚えのある名前が何度も何度も頭の中でエコーした。

⏰:09/03/14 17:03 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#654 [ちか]
神楽‥‥―――


もしかして、この人が優里の言ってた『神楽姉』って人‥‥?


だけど気をつけろ

って何を?
どう言う意味?

婚約者だから、バレないしろって意味…?

⏰:09/03/14 17:40 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#655 [ちか]
考えれば考えるほど、
思考は悪い方へと進んでいくばかり。


ついには涙まで浮かんできた。
胸がズキズキと痛い。


なんで?ねぇ、恭弥‥

青ざめたのは、婚約者って言う関係がバレてしまうと思ったから‥?
そうなの‥――?

⏰:09/03/14 17:50 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#656 [ちか]
黙りこむ俺に、暫くして
女の人は口を開いた。


「あ、私はもうお気づきかも知れませんが、私は恭くんの、」

聞きたくない…
聞きたくない…っ
改めて言われたら俺…ッ

「婚約‥‥―――、」

そこまで口にしたところで、今まで生気が抜けたように黙っていた恭弥が突然声を張りあげた。



「婚約者になった覚えは微塵も無い!」

⏰:09/03/14 18:01 📱:P906i 🆔:tb7s0gDM


#657 [アリス]
続き楽しみ

⏰:09/03/15 22:35 📱:N702iD 🆔:klDjXBQY


#658 [ちか]
>>657
└→アリスさま*

ありがとうございます★
更新頑張りますねっ

⏰:09/03/16 15:17 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#659 [ちか]
「え‥‥?」


何、どう言うこと?


「もう恭くんったら♪
照れなくてもいいんですよ?」


どっちなんだよ…
答えてよ…恭弥…――

⏰:09/03/16 15:40 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#660 [ちか]
「端から照れてなんかない。神楽、誤解を招くようなことばっかり言ってると、いい加減怒るよ?」


いつになく刺々しい口調の恭弥。

黙りこんでしまった神楽さん。



てことは‥‥―――っ

⏰:09/03/16 15:42 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#661 [ちか]
「冥、誤解しないで。
神楽は僕の幼馴染みだ。」


幼ななじみ‥‥?


「まぁ、簡単に言えばそうなりますが‥‥」

「簡単に言わなくてもそうだ。会うのは久しぶりだけど。」

どう言うこと?

⏰:09/03/16 15:56 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#662 [ちか]
「だいたい、お前が来るなんて僕は一言も聞いてないよ。」

ため息混じりにそう言って恭弥は目線を神楽さんに落とした。


「‥‥‥‥‥‥‥‥私、
家を出てきたんです。」


俯いたまま、そう言った声はか細かった。

⏰:09/03/16 17:58 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#663 [ちか]
「‥‥だと思った。今度はなんで?」

恭弥のなんでと言う問いに神楽さんの肩が急に震えだした。
泣いてるのか‥‥?

「だっ、だって…―――
お父様が‥‥っ!!!!」

声まで震えてる。

俺は小刻みに震える神楽さんを見ながら、酷く心配な気持ちになった。

「また始まった‥‥。」

「え?」

ぼそりと呟かれたその声同様、恭弥の顔は鬱陶しそうな表情で曇っていた

「お父様が…――っ!!!」

⏰:09/03/16 18:12 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#664 [ちか]
勢いよく上げられた顔は
泣いているどころか、
怒り狂っているように見えた。

「私は恭くん以外の方と結婚する気など無いと何度も申していますのに!!!!」

「冥…出来るだけ守るけど、気を付けてね…。」

「え、何それどう言う…―ひっ?!?!」

何かが勢いよく俺の顔のすぐ隣をかすめた。

フォ、フォーク?!?!

これさっきメイドの人が運んできたご飯の‥‥?!
でもテーブルの上の皿に乗ってたはずじゃ‥‥
あれ、無い?!

⏰:09/03/16 18:26 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#665 [ちか]
「懲りもせずに自分の部下を連れてきては婿にしろ婿にしろ、と‥‥―――っ!!!!」

神楽さんが喋る度に、部屋の中にあるものが潰れていく。

正しくは、神楽さんが喋ると同時に身の周りにある物を片っ端から掴んでは、素手で潰している……。

「私はそんな野蛮な輩は嫌だと申してますのに!!」

「ひゃ…っ!!!?」

飛んでくる物達。
恭弥が引っ張ってくれたおかげで今助かった。

⏰:09/03/16 18:32 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#666 [ちか]
「あまりにしつこいので、家を出てきたんです!!!!」

荒々しく放たれたその言葉を最後に、飛んでくる物は終わった。

いや、もう投げれるほどの物が部屋に残っていなかっただけなのかも知れない。

もうこの部屋に原型をとどめている物はなかった。

⏰:09/03/16 18:41 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#667 [ちか]
疲れたのか、神楽さんは言い終わったあとペタンとその場に座り込んだ。


「あー…また派手にやったね。」

苦笑いを浮かべる恭弥。

また、って‥‥
これよくある事なの…?!

「ご、ごめんなさい…。」

神楽さんからは、さっきの怒った表情がすっかり消えてもとのおっとりとした雰囲気に戻っていた。

⏰:09/03/16 19:43 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#668 [ちか]
「あ、あのー‥」

ちんまりと座りしゅんとしている神楽さんと腕を組んで眉を寄せる恭弥。


俺の声はそんな2人の間を割るように小さく声を出した。


それに反応した2人から俺は一気に視線を浴びる

⏰:09/03/16 21:56 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#669 [ちか]
>>668訂正
俺の声は…×
俺は…  ○
すいませんД`

⏰:09/03/16 22:07 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#670 [ちか]
「あ、改めてちゃんと説明するね。
この人は九谷神楽。
僕の幼馴染みで神楽のお母さんは日本で5本の指に入る茶道家なんだ。」

「へえー‥」

それで喋り方とかも丁寧なのかな?
そう言えば着物姿きれかったなあ。
だいぶ濡れてたから今は着替えたのかワンピース姿だけど。

けど茶道してる人って、
こう…もっと大人しい感じのイメージが‥‥‥、

「それから、」

⏰:09/03/16 22:23 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#671 [ちか]
「神楽のお父さんは、日本で5本の指に入るマフィアで、まぁ、簡単に言えばヤクザなんだけど。
神楽の破壊力はそう言う家業からの遺伝からなんだと思う。また神楽のお父さんは大柄な人でね‥‥。」

「えぇ?!?!」

「普段は気をつけてるつもりなんですけれど、頭に血が上ると力をコントロールしきれなくて‥‥‥。
驚かせてしまってすいません…。」


いやいや!!!!
そりゃその破壊力にも十分驚いたけどっ!!!

俺が今驚いてんのは、
神楽さんがヤクザの人だって事で!!!!

⏰:09/03/16 22:37 📱:P906i 🆔:NYN2yzBA


#672 [ちか]
言いたいことがありすぎて言葉に出来ず俺は口をパクパクさせた。

「神楽、たぶん冥はそっちに驚いてるんじゃなくて…」

「はい?」

「いや…なんでもない。
とりあえず僕達は部屋に戻るから。
神楽はメイドに他の部屋用意してもらうよう頼んどくからそれまでここに居て。(部屋から出て家中を壊されたら困るし、僕達もこれ以上被害受けたくないしね。)」

「はい…。お世話になってばかりですいません…。」

恭弥は神楽さんの返事を聞いてにっこり微笑むと、俺の手を掴んで、部屋を出た。

⏰:09/03/17 00:01 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#673 [ちか]
「ごめんね。ほんといろいろと…。」

ドアを閉めたあと、申し訳なさそうな顔で恭弥は言った。

「あ、いや、謝らなくていいって。別に恭弥が悪いワケじゃないし…。」

元を辿れば、連れてきたのは俺だし‥‥。

「ありがと…。それで、お願いがあるんだけど…」

「え、なに?」

恭弥が俺にお願いなんて、珍し…

「‥‥今日、冥の部屋で寝かせてくれない?」

⏰:09/03/17 00:29 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#674 [ちか]
「ふえっ?!?!///」

「ごめん、やっぱりダメだよね…。」

いや、別にいっつも急に入ってくるし!
たまに寝ていくし‥‥//
別にいいんだけど!

ただ改めて了承を得られるとなんか…照れる…//

「じゃあ、僕部屋戻るね。」

で、でも…――っ

⏰:09/03/17 01:00 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#675 [ちか]
「‥‥‥‥‥いっ、いいよ?入れ‥ば?//」

ただ傍に居たくて、
去ろうとする恭弥の服の裾を掴み、俯き加減でそう小さく呟いた。


あー。
俺ってマジで可愛げないよな…。

いや、16にもなって可愛げを求めるのもアレだけど!!!!///

って別にそう言う問題じゃなくて…〜っ!!

あーもうっ!!//
俺、何やってるんだろ…

⏰:09/03/17 01:08 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#676 [ちか]
俯く俺の頭に大きな手がそっと置かれた。

「ありがとう。」

見上げると、悩殺されそうになるくらい愛しい笑顔。


俺は赤らんでいく顔を気づかれないようにそらしながら、自分の部屋のドアノブを捻(ヒネ)った。

「入らないの‥?//」

そんな俺を見て恭弥はふふっと笑い、中に入った

⏰:09/03/17 14:17 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#677 [ちか]
ドアを閉める音がひっそりとした部屋に響いた。

「でも、なんで急に?」

そう言って少し前に立っている恭弥を見た。

「あぁ、神楽がね…。」

「神楽さん?」

「うん。昔から親と喧嘩してはウチに来てたんだけど…、夜になると寝ぼけてるのか僕の部屋に絶対入ってくるんだよ。ついでに僕の部屋を破壊するし…。安心して寝れなくてね…。」

そう言ってどこか遠くを見ながら苦笑いを浮かべる恭弥。


胸中お察しします‥‥。

⏰:09/03/17 14:33 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#678 [ちか]
「大変なんだな…。(いろいろと)」

「まぁね。」


「「‥‥‥‥‥‥‥。」」


沈黙の中に何か会話のネタは無いかと俺は必死に思考を巡らせた。

なんで緊張してんだよ、俺っ!!//
なんか無いか?!なんか‥

⏰:09/03/17 14:38 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#679 [ちか]
「あっ!」

俺は胸の前で思い出したように軽く手を叩くと、ソファーの上に無造作に置かれたカバンへと手を伸ばした。

恭弥に背を向け、ゴソゴソと鞄の中をあさる俺。

それを不思議そうに見つめる恭弥。

暫くして、探していた物を掴むと俺は振り返りそれを見せた。

「これ、教えて?」

恭弥に見せたのは、居残りの時先生から渡された太い紙の束。

⏰:09/03/17 14:51 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#680 [ちか]
「随分いっぱい渡されたんだね。」

恭弥は目を丸くして紙の束を見つめた。

「高橋先生鬼だから…。」

見るだけでやる気なくすよな、この量‥‥。

居残りのことを思い出すだけで気が滅入ってくる

そんな俺を見かねて恭弥は口を開いた。


「じゃ、やろっか。」

⏰:09/03/17 15:00 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#681 [ちか]
―――‥‥それから何時間経っただろうか。


「‥‥冥。」

「は、ハイ‥?」

「僕の説明聞いてた?」

「聞いてたつもり‥デス」

「‥‥‥‥。」


改めて言うのもなんだけど、俺ほんとに勉強に向いてないみたい…

⏰:09/03/17 18:01 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#682 [ちか]
四角い透明なテーブルに
隣同士で座る俺達。
この体勢でどれくらい居た事だろう。

恭弥にも呆れられるぐらい重症なのか、俺‥‥

俺はどうにかこの問題くらい解こうと頭をフル回転させた。
ついでにシャーペンも。

しかし、
「‥‥‥‥やっぱ無理‥」

俺には解けません…。

自分の不甲斐なさに涙が浮かんできた。

「冥さぁ‥‥、」

「へ?」

潤む目を右側に向けると
頬杖をつく恭弥がぼんやりと滲んで見えた。

⏰:09/03/17 18:15 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#683 [ちか]
「よくウチの高校に入れたね。」

真面目な顔で言われて
内心傷ついていたのは
言うまでもないだろう

だけど本人の顔を見る限り悪気は無いんだろう…

「受験生の頃は、毎日透に教えてもらってたから…。」

懐かしいなあ。

あの頃も透に呆れられたり、馬鹿にされたりしたっけ…

でもいっつも初めから教えてくれて、おかげでこの学校にも受かったんだよな。

それから半年しか経ってないのに、何故かすごく懐かしく感じた。

⏰:09/03/17 18:21 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#684 [ちか]
― 恭弥side.―


「あの頃は毎日透に教えてもらってたから…。」


教え疲れて多少ぼんやりしていた頭がその言葉でふと醒めた。


冥のその口から、
“透”と言う名前を聞くだけで、少しだけ腹立たしかった。

⏰:09/03/17 18:25 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#685 [ちか]
懐かしそうな瞳で何かを考えているところを見ると、考えている事なんてだいたい想像がついた。


その考えの中にやっぱり
“透”と言う存在が居ることも。


そう思うと急に胸が苦しくなった。
奥から湧いてくる小さな怒りと独占欲。

僕以外の奴の事なんて考えるな。
僕以外の奴をその瞳で見るな。
その手で触れるな。

そんな子供染みた気持ちが僕の胸を掻き鳴らした

⏰:09/03/17 18:31 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#686 [ちか]
>>684訂正

あの頃は×
受験生の頃は○
すいません

⏰:09/03/17 18:33 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#687 [ちか]
きっとこれが、
嫉妬ってヤツなんだろうな。

「恭弥?どうかした?」

「ん、いやなんでもないよ。」

まさか自分が誰かにこんな感情を抱く日が来るなんて思ってもなかったから、今の自分が少し微笑ましかった。

目の前には不思議そうな顔で僕を覗きこむ愛しい人。

そして、止めどなく溢れてくる欲望。

⏰:09/03/17 18:46 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#688 [ちか]
こんな感情が初めてなだけに、止め方も他へのやり方も僕には解らなかった。



‥‥‥‥今は、思いのまま動いてみようか。




僕なりに。

⏰:09/03/17 18:50 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#689 [ちか]
「ねえ、冥。」

プリントと睨み合う横顔を見つめながら愛しいその名前を呼ぶ。

「なに?」

声はそう言ってるけど、紙切れとの睨み合いは続き、一向に僕に目線を寄越そうとはしない。



しかし、そうされると余計にこっちを見させたくなるもの。

⏰:09/03/17 21:30 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#690 [ちか]
「僕、思うんだけど、」

「なに‥おわっ?!?!」

男にしては偉く細い肩を乱暴に引き寄せみた。

そのまま無理矢理こっちへ向かせて顎を軽く掴み、顔を寄せる。

「きょっ、きょおや?!///」

みるみるうちに赤くなっていく顔。
上擦る声。

すべてが愛しくてたまらない。

⏰:09/03/17 21:52 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#691 [ちか]
「冥はこう言う勉強より」

「んっ…ふ‥ぁ///」


冥の全てを僕のものに。


「こっちの勉強の方が向いてるんじゃない?」


僕だけのものに。

⏰:09/03/17 22:03 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#692 [ちか]
― 冥side.―

いきなり首筋に唇を落とされて、そのなんとも言えない感覚といきなりの事に頭がパニックになった。

「こっちの勉強の方が向いてるんじゃない?」

なに言ってんの‥?

「あ…っんふ‥ぁっ///」

唐突に重ねられた熱いものが俺の神経を奪っていく。

⏰:09/03/17 22:15 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#693 [ちか]
優しいけど、いつもよりどこか乱暴な口づけ。

「んンっ//ふ‥ぅ//」

そんな口づけにも感じてしまう俺はやっぱり淫らなのかも知れない…。

離された唇から糸が引いていて、それがどれだけ濃厚だったのか伺えた。

⏰:09/03/17 23:19 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#694 [ちか]
引き寄せられた拍子に、
俺は恭弥を押し倒し覆い被さるような体勢になった。

がっちりと服を掴まれているせいで、動こうにも動けない。

「下から見るのも悪くないね。」

そう言って怪しく微笑む恭弥。

「なっ何言ってんの!!//」

甘い声が耳を犯す。

⏰:09/03/17 23:28 📱:P906i 🆔:7cJZ1/ng


#695 [ちか]
「ちょ‥っまだプリント残って…るからっ///」

「頭で覚えるより身体で覚えた方が早いよきっと。」

「な‥に言って…あっ//」


もがけばもがくほど、
服ははだけていく。

徐々に露になる胸元に、
恭弥が喋る度に吐息がかかって声が出てしまう。

⏰:09/03/18 00:00 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#696 [ちか]
「どうしたの?」

俺の反応を愉しむようにわざと近くに寄って話す恭弥。

「んッ…///しゃ‥べんない‥でっ!!!//」

「クスッ、なんで?」

なんでって‥‥―――

言うか言うまいか悩んでいると、シャツ越しから急に突起を甘噛みされた

「はぁッん…っ//やめ…っ//」

快感に背筋がゾクゾクして下が疼く。

⏰:09/03/18 00:09 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#697 [ちか]
「やめてって言ってるわりには、さらに僕に被さってきてる気がするんだけど?」

その余裕の笑みが頭にくる。

そんなの…―っ
勝手に力抜けてくんだから仕方ないだろっ!!!?

俺だって‥‥―――っ

⏰:09/03/18 01:10 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#698 [ちか]
下で微笑む恭弥を見て、俺は思い付いた。



俺だってヤられてばっかりじゃ納得がいかない。

ここはこの体勢を利用して、この余裕の笑みを消してやろう。

覚悟しろよなっ!!!


そう思って俺はニコッとした笑顔を恭弥に向けた

⏰:09/03/18 01:14 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#699 [アルマゲドン]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:09/03/18 05:06 📱:D904i 🆔:.IGkiuUE


#700 [ちか]
>>699
└→アルマゲドンさま*
アンカーありがとう
ございます★(^ω^)

⏰:09/03/18 12:21 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#701 [ちか]
>>698
―恭弥side.―

さっきまで真っ赤にしていた顔が急ににっこりと微笑むもんだから、僕はどうしたのかと一瞬舌の動きを止めた。

何か企んでる‥‥?

「め‥いッ?!」

名前を呼ぼうとしたその時、突然舌を絡められた

慣れてないのが伝わってくるほどにぎこちないけど、僕にとってはそれすらも愛しかった。

⏰:09/03/18 14:00 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#702 [ちか]
きっと冥は僕が笑ってるのが気に入らないんだろうな。

僕の余裕を消したいんだろう。

唇はぎこちなく首筋を這っていく。

気持ち良いような、くすぐったいような感覚に笑ってしまいそうになるけど、今はそれを我慢した。

愛しい人のために。

⏰:09/03/18 14:08 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#703 [ちか]
―冥side.―

ディープキスって難しい‥

いつも恭弥は俺を簡単に気持ち良くさせるから、こんなに難しいと思わなかった。

ちゃんと出来てるかな??//

唇をだんだん下に落としてゆき、首筋を這った

軽く吸ってみたり、
舌の先でなぞったりと工夫を凝らしてみる。

「ねぇ、恭弥‥
きっ、気持ち良い?//」

徐々に恭弥の余裕な笑顔は消えていくけど、不安が消えない俺は呟くように聞いた。

⏰:09/03/18 14:39 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#704 [ちか]
「う‥ん、気持ち良いよ。」

途切れる言葉が嬉しかった。

正直、あの余裕のある表情を無くしてやりたい気持ちもあったけど、今はそんな気持ちより、いつも俺ばっかり気持ち良くしてもらってるからそのお返しのつもりだった。

だから、こうやって俺に感じてくれてる事がすごく嬉しかった。

⏰:09/03/18 14:45 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#705 [ちか]
もっと気持ち良くしてあげたい。

俺がいつもしてもらってるみたいに。

そう思った俺は右手をおもむろに恭弥の服の中に滑り込ませた。

「‥‥っ///」

恭弥はほとんど声を出さないけど、ふいに指が突起をかすめた時、恭弥の身体がピクリと反応した。

⏰:09/03/18 14:50 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#706 [ちか]
ここがいいのかな‥?

もう一度指をかすめてみる。
恭弥の身体は力が抜けていくようだった。

そっか、ここが気持ちいいんだ。

もっと、
もっと触れてみよう。

そうしてさらに手を深く入れた。


その時‥‥――――


ガチャ..

⏰:09/03/18 15:34 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#707 [ちか]
ガチャ‥?
なんの音‥‥――?

俺は音のする方へ顔を向けた。

「いっ…」

い?
恭弥の声じゃない。
もちろん俺の声でも。

俺の角度から見えたのは白い足だった。


え?‥‥白い‥足‥―?


まさか‥‥―――っ!!!!

⏰:09/03/18 15:41 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#708 [ちか]
気づいた時にはもう既に遅かった。

見上げるとそこに立っていたのは‥‥、

「「か‥ぐら…」さん…?」

恭弥と声が重なった。

「いッ…いぃいやあぁああッ!!!!!!!」



見 ら れ た ・ ・ ・ ・ 。

⏰:09/03/18 15:46 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#709 [ちか]
響き渡る神楽さんの悲鳴

鼓動が瞬時に速くなった

頭が真っ白になって、
声すらも出なかった‥‥

このあと、俺の部屋は神楽さんの手によって半壊状態になった事は言うまでもないだろう。


そんな事より今は‥‥‥

「め、め、め、冥さんは…そ、その‥――」

この状況をどうにかしなきゃ、その事で頭がいっぱいだった。

⏰:09/03/18 21:33 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#710 [ちか]
どうやら神楽さんはパニックになっても力をコントロール出来なくなるようだ。

半壊と言う形でおさまった部屋に座りこむ俺と恭弥と神楽さん。


これぞまさに修羅場だ…


手が震える。

どうしよう…どうしよう

⏰:09/03/18 21:52 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#711 [ちか]
まさか恭弥とあんなことをするなんて思ってなかったもんだから、ドアに鍵をかけることをすっかり忘れていた。

今更ながら、後悔の気持ちでいっぱいだ…


俯きながらチラリと横目で恭弥を見ると、事の発端とも言える当の本人はすました顔で神楽さんを見ていた。

「た、た、確かに恭くんは凄く素敵な方だと、お、思います…。ですがっ…その‥冥さんは細身ですし可愛いらしいお顔ですが…お、男の子でして……、」

⏰:09/03/18 22:47 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#712 [ちか]
神楽さんの肩が小刻みに震えてる。

そりゃ、自分の好きな人が押し倒されてて、ましてやその相手が男だったら、震えたくもなるよな…

返す言葉が無かった。

手に汗がじんわりと滲んでいく。

「おッ、男の子同士が…っその‥ああ言った行為をなさるのは‥‥その‥」

いっその事、この場から消えたいとさえ思った。

⏰:09/03/18 22:58 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#713 [ちか]
そんな中、
この気まずい空気を裂くような通った声が隣で響いた


「神楽。」




たった二文字の言葉だけど、俺も神楽さんもその声に身体をビクリと跳ねさせた。

⏰:09/03/18 23:09 📱:P906i 🆔:.uF.NUH2


#714 [ちか]
「は、はい…?」

神楽さんが細い声で返事をする。


それと同時に鼓動が一気に速さを増していくのが分かった。



これは、どうしようもなく沸き上がる不安。…―

⏰:09/03/19 00:27 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#715 [ちか]
ねぇ恭弥。








その次はどんな言葉が用意されてる…?

⏰:09/03/19 00:33 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#716 [ちか]
用意されているのは、

俺を守るフォローの言葉か、
神楽さんとの関係を守る言葉か。

解ってる。

俺はこの1、2ヶ月の間に出逢った仲で、神楽さんは昔からの幼馴染みだと言うことくらい。


…用意された答えは、
どう考えても後者だろう

⏰:09/03/19 00:40 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#717 [ちか]
「僕は、」


言わないで。

それが例え、神楽さんを落ち着かせる為のその場凌ぎの言葉だとしても、聞きたくないよ…


気持ちを否定されるのが、怖い。
その一瞬でも、例え嘘でも、胸が張り裂けそうになる。

俺は恭弥の声を拒否するように俯き、小さく震えた。

⏰:09/03/19 11:50 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#718 [ちか]





「冥のことが好きなんだ」




⏰:09/03/19 17:42 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#719 [ちか]
確かに俺の耳にはそう聞こえた。
幻聴だろうか…?


いや、違う。

だって‥‥――――


肩を引き寄せられ、俺の身体は左に傾く。


俺の肩を抱くその手は、
確かに恭弥のものだった

⏰:09/03/19 17:49 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#720 [ちか]
「恭‥弥‥‥――?」

今にも泣きそうだった顔で恭弥を見上げると、恭弥は特に顔色を変えることもなく、堂々と神楽さんを見つめていた。


「なっ、恭‥くん‥?あの、そう言う御冗談は…」

「冗談でこんな事言わないよ。僕は本気。」

そう言うと、俺を見て優しく微笑んだ。


「僕の大切な人だよ、冥は。」

⏰:09/03/19 17:59 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#721 [ちか]
大切 な 人 …―――


いつの間にか自然と体の震えは止まっていた。


抱かれている肩から恭弥の温もりが伝わってくる

なんて落ち着くんだろう


が、そのすぐ後から急に照れが込み上がってきて顔が赤くなっていくのを感じた。

⏰:09/03/19 18:53 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#722 [ちか]
「はっ離せ‥よ!//」

「やだ。」

そう言って満面の笑みを浮かべる。

やばい‥今一瞬クラッときた‥///

「ほ、ほ、本気…」

大きな瞳をさらに大きくして恭弥の言葉を繰り返す神楽さん。

そのか細い声に神楽さんの存在を思い出した俺はその声の先に慌てて目をやった。

⏰:09/03/19 21:18 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#723 [ちか]
相当なショックを受けてるらしい。
そりゃそうだろうな…

肩はさらに震えていた。

「きょ…う…くん…が‥ほ‥んき‥‥―――」

「か、神楽さん?!?!」


神楽さんはそのまま後ろに倒れこんでしまった。

⏰:09/03/19 21:23 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#724 [ちか]
「神楽さん?!神楽さん?!」

揺すっても起きない。

「暴れるの通り越して気絶しちゃったみたいだね。」

物珍しそうな目で神楽さんの顔を除きこむ恭弥。

「俺のせいだ…。」

俺のせいでこんなにショック受けて‥

⏰:09/03/19 22:08 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#725 [ちか]
>>724訂正
除きこむ×
覗きこむ○
すいません><

⏰:09/03/19 22:10 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#726 [ちか]
「冥は責任感じすぎ。」

恭弥はそう言って眉間にシワを寄せていた。

「だ、だって‥‥」

って言うか、お前もちょっとは責任感じろよ!!!!

「別に僕達悪いことしてないんだから。そんなに1人で責任感じなくていいんだよ?」

至って平然とした顔で言ってのける恭弥。

⏰:09/03/19 22:46 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#727 [ちか]
そう言われて気持ちが軽くなった反面、あまりに堂々すぎるその態度に苛立ちも感じた。


でも、そうだよな‥


別に悪いことはしてないはず‥

嘘なんかついたって、いつかまた今日みたいにバレてしまう日が来るんだから、これで良かったんだよな…。

⏰:09/03/19 22:48 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#728 [ちか]
そのあと、俺と恭弥は気を失っている神楽さんを別の部屋に運んだ。


「じゃ、俺部屋戻るから。おやす…みぃ?!?!」

声が上擦ったのは恭弥に腕を強く引っ張られたから。

「あんな部屋(半壊状態)で寝れないでしょ。
僕の部屋おいで。」

⏰:09/03/19 22:53 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#729 [ちか]
そう言えばそうだった…
恭弥、こう言うところ優しいよな。

「ありが…、」

礼を言おうと振り返ったその時。

「さっきの続きしたいしね」

囁かれる甘く低い声。

「っな…!!///」

向けられる意地悪な笑顔


さっきの言葉は、やっぱり前言撤回!!!!

⏰:09/03/19 23:01 📱:P906i 🆔:mlPc9IaA


#730 [ちか]
「まっまだプリント残ってるし!!!!///」

「明日の放課後までに僕がやっといてあげる。」

それはラッキー!
って違ーう!!(1人ツッコミ)

「や、でもっ!!
自分の力でやらなきゃ…」

「冥に拒否権はありません。」

そうやって妖艶な笑みを向けられたら最後。

この後、俺がどうなったかはご想像にお任せします‥///

⏰:09/03/20 11:53 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#731 [ちか]
翌朝、目が覚めると目の前には恭弥の顔。

「★!?#@%$?!//」

「あ、今起こそうと思ったんだけど、」

心なしか恭弥の顔に『つまんない』と書いてあるように見えた。

俺は咄嗟に上体を起こした。

どうやって起こすつもりだったんだか知らないけど、顔近すぎっ!!!///

⏰:09/03/20 12:13 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#732 [ちか]
「冥、顔真っ赤だよ?」

「き、気のせい気のせい!!///俺シャワー浴びてくるっ!!」

益々赤みを増す顔を適当に隠しながらバスルームに逃げ込んだ。



朝から心臓に悪いっつーの‥‥。

⏰:09/03/20 21:53 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#733 [ちか]
それから着替えたあと、朝食を食べに1階に降りたけど神楽さんは一度も姿を見せなかった。

そして今、いつもの車に乗り込んで学校に向かってる。


「てかさぁ、…言っちゃってよかったの?」

「ん?何を?」

「か、神楽さんに‥俺達のこと。」

⏰:09/03/20 21:59 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#734 [ちか]
小さくそう呟くと、恭弥は「あぁ。」と短く声を漏らした。
今思い出したかのように


「あぁ、って‥‥。
恭弥ってホントにマイペースだよなぁ。」

「そう?
まぁ、でも神楽なら大丈夫だよ。」

偉く余裕な態度。
どっからそんな自信湧いてくるんだ?

⏰:09/03/20 22:07 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#735 [ちか]
「なんで?」

恭弥があまりに自信に満ち溢れた顔をしてるもんだから、俺は少し眉を寄せてそう聞いた。


すると、恭弥は俺の方を見て優しく微笑んでこう言った。


「神楽なら解ってくれるって信じてるからね。」

⏰:09/03/20 22:24 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#736 [ちか]
恭弥のことだからまた、
「なんとなく。」とか、
「大丈夫そうだし。」とか
そんな適当なことを言うんだろうと思っていた俺は、予想外の答えに言葉を無くした。


その瞳は、本当にあの人を信じきっていて、これが幼馴染みの絆なのかな、なんて納得してしまった自分が居た。

⏰:09/03/20 22:48 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#737 [ちか]
そのあと恭弥は

「あと、言っておいた方がそろそろ神楽も僕のこと諦めてくれるかなと思って。」

と付け足したから、ちょっと感動は薄れたけど。



まぁ、それも恭弥らしいよな。

⏰:09/03/20 22:55 📱:P906i 🆔:ZLvEnrdE


#738 [ちか]
学校に着いて俺達はそれぞれの教室へと別れた。


何一つ変わらないいつもの教室。
いつもの友達。


私生活だいぶ変わった分、一番気を抜ける場所ってここなのかもな。

⏰:09/03/21 13:44 📱:P906i 🆔:Meagy3sM


#739 [ちか]
そんなことをぼんやりと考えながら平和な1日が終わり、放課後になった


つまり、今からまた高橋先生の居残り。

あ、プリントはちゃんと自分でやったよ?
透に教えてもらいながらだけど。

1人ぽつんと座っていると、暫くして先生が入ってきた。

⏰:09/03/21 22:06 📱:P906i 🆔:Meagy3sM


#740 [ちか]
「遅れて悪いな。」

そう言って先生は俺の前にイスを持ってくるとガタンと音をたてて座った。

「先生、俺このプリント全部解いたんですよ?この俺が。」

机の上の紙の束をぽんぽんと叩きながら得意気に話す俺。

「おっ、頑張ったな。
まぁ蓮見にでも見てもらったんだろうけど。」

全部お見通しってワケか

「…先生、一言多い。」

先生はその一言で俺の得意気な顔を一瞬にして曇らせた。

⏰:09/03/22 14:25 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#741 [ちか]
俺の拗ねた態度を見て先生は、ははっと笑うと、プリントを自分の方に向けて目を通しだした。

「けっこう合ってるな。」

「ほんとに?さすが俺!」

「さすが蓮見じゃな「先生、うるさいですよー?」

なんだよ、蓮見蓮見って
俺だってちょっとは頑張ったっつーの。

⏰:09/03/22 18:00 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#742 [ちか]
先生がプリントに目を通してる間、俺はそれを頬杖をつきながら見つめた。


地毛だか染めてんだか知らないけど焦げ茶色の短髪に、切れ長な目。
筋の通った高い鼻に薄い口の、高橋先生はいわゆるイケメン。

こりゃ女子から人気にもなるわな。
モテるの自覚してるところが恭弥に似てるかも。


「‥‥先生ってさ、彼女とか居るんですか?」

先生を見てるうちに、いつの間にかそんなことを口にしていた。

⏰:09/03/22 18:07 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#743 [ちか]
案の定先生も突然の質問に驚いて目を丸くしていた。

「まさか男の生徒からそんな質問されると思ってなかったわ。」

そりゃそうだろうな。

先生の苦笑いに俺も苦笑いで返す。

「まぁ…居るけど。」

少し先生の頬が赤らんで見えた。

⏰:09/03/22 18:49 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#744 [ちか]
「どんな人?どんな人?」

急かすように食いつく俺に、先生は暫く黙りこんだあと、

「かなり美人…。」

と言って、照れ隠しなのか片手で顔を隠した。

相当その彼女に惚れてるんだろうな、なんて思わせるほどに真っ赤な顔が微笑ましくて、ついニヤついてしまった。

⏰:09/03/22 19:13 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#745 [ちか]
「へえ〜!中身は??」

赤くなる先生を面白がってさらに質問を続ける俺

「んー、俺なんかより全然頭良くて大人で…、」

先生より頭の良い美人な大人かー。
へえー。ふーん。

「って!!そんなこと聞いてる暇あったら単語覚えろっつってんだろーが!!」

「い゙たっ!!んな分厚いのんで普通頭叩く?!?!」

「黙って覚えろっつの。」

…やっぱこの人鬼だ。

⏰:09/03/22 21:18 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#746 [ちか]
覚えろって言っても…


じんじんと痛む頭を擦りながらふいに窓の外へ目をやった。

梅雨時には珍しい快晴。


校門の方に目をやった時、ふと神楽さんのことを思い出した。

神楽さん、あの後大丈夫だったかな…?

⏰:09/03/22 21:50 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#747 [ちか]
そこから、頭に浮かんでくるのは神楽さんと恭弥のことばかり。

昔からって言ってたけどいつからの仲なんだろ?

神楽さんは恭弥のどこを好きになったんだろ?

恭弥のこといつから好きだったんだろ…?

恭弥はなんであんな綺麗な人好きにならなかっ‥‥‥あ、破壊力のせいかな?


て言うか、

⏰:09/03/22 21:55 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#748 [ちか]





恭弥は俺のどこを
好きになったんだろう…?




⏰:09/03/22 21:57 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#749 [ちか]
そう言えば、俺なんかのどこが良かったんだろう?

俺、バカだしガキだし、
顔だって童顔でカッコいいとは言えないし…

俺なんかよりカッコいい人も可愛い人もアイツの周りならいっぱい居るだろうし…家柄だって、俺、全然恭弥に相応しくないし…


あの夜、もし出逢ってなかったら恭弥は好きになってなかったのかな?

⏰:09/03/22 22:20 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#750 [ちか]
そう考えた瞬間、胸の奥が苦しくなって無償に切なくなった。

今じゃこれが何故だかちゃんと解る。
だからこそ苦しいんだ。
いつか俺以外の人を見つけて、俺の手の届かないどこかに行ってしまいそうで。

「せんせー。」

「ん?」

呟きのように小さな声に、短い返事が返ってくる
その目は紙の束を見つめたまま。

⏰:09/03/22 23:10 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#751 [ちか]
「もしもの話だけどさ…」

「なんだ?」

雑な返事。

「ほんとにもしもだよ?」

そう。これはあくまで“もしも”の話。

「だからなんだよ。」

なかなか本題に入ろうとしない俺に先生の返事も乱暴になる。

⏰:09/03/22 23:18 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#752 [ちか]
「もし…先生の前に、どう考えても先生より彼女に相応しい男が現れたとしたら…」

「なんだソレ。ヤな話だな。」

先生はふっと小さく笑ってそう言った。

「まぁまぁ。それで、その男が先生の彼女を好きだって言い出したら…どうする?」

そう、これは今の俺の現状に似せた例え。

先生ならどうするかなって。

⏰:09/03/22 23:27 📱:P906i 🆔:DXTf0Jxg


#753 [ちか]
俺が質問を投げ掛けたところで先生はやっとプリントから目を離し、俺の方へその目を移した。


「どうするって‥別にどうもしないだろ。」

「え?」

どんな答えが返ってくるだろうと半ば緊張していた俺に返された答えは、予想以上にあっさりしたモノだった。

その単純な答えに俺は思わず間の抜けた声をもらす。

⏰:09/03/23 12:43 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#754 [ちか]
「‥なんで?落ち込んだり、焦ったり‥しないんですか?」

「そんなことしても疲れるだけだろ。」

その口振りに余裕さが窺える。
その余裕さゆえに俺の頭はさらに疑問で埋まってゆき、小首を傾げた。

そんな俺を見て先生はさらに言葉を続けた。

⏰:09/03/23 12:49 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#755 [ちか]
「あのなぁ、その男が彼女に似合うか似合わないかなんて俺が決めることでも他人が決めることでもないんだよ。
彼女が俺を選んでくれてるうちは、彼女にとっては俺が一番相応しいってことだろ?
ならそれでいいじゃねーか。
誰が出てこようが、本人の気持ちが俺に向いてるなら焦る必要も、負い目感じる必要もない。
考えるだけ無駄だ無駄。
俺、疲れることはしない主義だからな。」

そう言って先生は柔らかい笑みを見せた。

⏰:09/03/23 17:26 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#756 [ちか]
『似合うか似合わないかなんて俺が決めることでも他人が決めることでもない』

『俺を選んでくれてるうちは、彼女にとっては俺が一番相応しいってこと』

『誰が出てこようが、本人の気持ちが俺に向いてるなら焦る必要も、負い目感じる必要もない』‥――

言葉の一つ一つが頭に染み込んでくる。

そうだ。恭弥はいつだって俺を見ててくれてる。
誰が出てこようがそれは変わらなかった。
悩む必要なんて無かったんだ、初めから。

⏰:09/03/23 17:36 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#757 [ちか]
胸の締め付けがスッと解けていくのが分かった。


「先生、たまには良いこと言うんですね。」

「“たまには”ってのは余計だ。」

そう言って先生はまた俺にデコピンを食らわせようとする。
それを片手で掴む俺。

「同じ手はくらいません」

得意気にニッと笑ってみせる。

⏰:09/03/23 17:46 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#758 [ちか]
手を離そうとしない俺に先生はムッとしたご様子。
しかしその顔はすぐに笑顔へと変わっていく。
ニヤリと笑うその顔は鬼と言うより悪魔だ。

「て言うか、なんだお前そう言う恋愛してんの?
ふーん。へえ〜。」

「べ、別にそれは関係な‥ッ///い゙って!!」

空いていた片手が否定しようとする俺に命中した

「甘いな日下。
手は二つあるんだよ。」

にっこり微笑む先生。

やられた‥‥。

⏰:09/03/23 18:00 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#759 [knj]
メチャクチャいいですv(*^^*)/
感動しました(T_T)
続き頑張って下さい\(*^^*)/
応援してます(^∇^o)(o^∇^)

⏰:09/03/23 19:49 📱:W61PT 🆔:134pqGpo


#760 [ちか]
>>759
└→knjさま*

ありがとうございます!!
嬉しくて涙が(´;ω;`)
感動してもらえて、書いてる側としてもほんま嬉しい限りです*´∀`*

これからも楽しんでもらえるように一生懸命頑張りますっ★

⏰:09/03/23 21:50 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#761 [ちか]
>>758

「むかつく…。」

手加減してるつもりかも知れないけど威力はある
赤くなるおでこを擦りながら涙目で先生を睨んだ

「ラッキーだと思え。
俺のデコピンを受けると頭良くなるんだから。」

「じゃあ俺はとっくに天才少年ですよ。」

「それもそうだな。」

そんな他愛のない冗談にお互い笑みを溢しながら、放課後の居残り補習は進んでいった。

⏰:09/03/23 22:03 📱:P906i 🆔:O6X.h/Hk


#762 [ちか]
「じゃ、今日はここまでにするか。」

窓の外はいつの間にか青かった空は夕焼けで綺麗なオレンジに染まっていた。

「今日はってことは明日もか〜。」

「嫌だったらさっさと賢くなれ。」

そんな無理言われても…

「でもちょっと出来るようになりましたよ、俺。」

「“ちょっと”な。」

皮肉混じりの言葉が頭にくるけど先生らしいよな

⏰:09/03/24 00:11 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#763 [ちか]
俺は教科書やらプリントを鞄の中に詰め込んで立ち上がった。

「気をつけて帰れよー。」

「はいはーい。」

そんな淡白な会話をして教室をあとにする。

階段を降りて玄関まで行くと、校門の方に白く長い車が見えた。

⏰:09/03/24 17:59 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#764 [ちか]
「目立つから校門の前には来ないでって言ったのに…。」

誰も居ない玄関でため息混じりの独り言を呟く俺

しかし珍しいな。
いつも車は黒なのに…

白い車を見るのは今日が初めてだった。

⏰:09/03/24 18:04 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#765 [ちか]
しかし、まぁそんな日もあるんだろうと、あまり深く考えず俺は校門へと足を運んだ。


車の前まで来てみたものの、やっぱり何か違和感がある‥

腰を曲げて窓に顔を近づけると、閉まっていた窓が静かに開いた。

⏰:09/03/24 21:51 📱:P906i 🆔:niXsekkY


#766 [ちか]
黒くて外からは見えないよう加工された窓がゆっくりと降りていく。


それを辿るように目で追っていく俺。

だんだんと露になるその見覚えのある顔。


「神楽さん?!?!」


ピタリと止まった窓の中から顔を見せたのはまさしく神楽さんだった。

⏰:09/03/25 00:21 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#767 [ちか]
「昨日はお世話になりました。」

神楽さんはにっこり笑ってそう言うと、軽く頭を下げた。

「や、お世話なんて全然!!
あの‥体調はもう大丈夫なんですか?」

「はい、もう大丈夫です。ご心配おかけしました。
恭くんが連絡したのか今朝実家に連れ戻されましたが‥」

「あ、じゃあこの車は‥」

「うちのものです。」

だから白いのか。

⏰:09/03/25 12:14 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#768 [ちか]
俺は一人納得したように、頭を縦に小さく振った

「あ、恭弥ならもう帰ってますよ?」

「いえ、今日は冥さんとお話したくて参りましたので。」

「俺に‥?」

笑顔でそう言う神楽さんを見て、俺は自分を指差しながら言った。

普段勘が冴えない俺だけど、なぜかこの時は身の危険を感じた。

⏰:09/03/25 13:10 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#769 [ちか]
「はい。
立ち話もなんですので、どうぞ中へ。」

神楽さんがそう言うや否や、運転手と思われる人が降りてきて、ドアを開けた。

「や、でも‥」

何か嫌な予感がする。

「遠慮なさらずに。」

結局俺は神楽さんの押しに負けて車内へと入った

⏰:09/03/25 14:16 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#770 [ちか]
そわそわして落ち着かない俺に、妙に静かな神楽さん。
そして、ゆっくりと走り出した車。

2人の間に流れる空気はなんとも言えない。


「あ、あの…話って‥」

このまま黙っているワケにもいかず、どうせなら早く終わらせてしまおうと俺はついに口を開いた。


どうして俺はこの時思い出さなかったのだろう。
優里の言葉を。

⏰:09/03/25 16:02 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#771 [ちか]
俺が話を切り出すと、神楽さんも口を開いた。

「あ、そうでしたね。
話と言うのは昨日のことでして…」


“昨日のこと”‥――
神楽さんからその単語を聞いた瞬間、鼓動が急に早く脈打ちだした。

それがバレないように顔を強張らせる俺。

⏰:09/03/25 21:45 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#772 [ちか]
次にどんな言葉が来るか
どんな言葉が放たれるのか。

神楽さんが言葉の後に長く間を空けるもんだから、俺の想像はいろんな方向へと巡らされた。

さぁ、今次の言葉が放たれようとしている。
なんて言われるか。
鼓動はドクドクと胸を打つ。

神楽さんはゆっくりと口を開いた。

⏰:09/03/25 23:21 📱:P906i 🆔:sBuzbL7s


#773 [かなほ]
あげwww

続き気になる

⏰:09/03/26 11:44 📱:SH02A 🆔:tVlc8YuM


#774 [ちか]
>>773
└→かなほさま*
あげてくれてありがとうございます
中途半端なところで切ってしまいすいません><
今から更新します*

⏰:09/03/26 12:01 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#775 [ちか]
>>772

「正直、恭くんの口からあんな言葉を聞く日が来るなんて思っていませんでした。」

眉を寄せ、苦く笑う神楽さん。

その言葉の意味が良く分からなくて、俺は首を傾げた。
そんな俺を見て神楽さんはふふっと笑うと、話を続けた。

⏰:09/03/26 12:11 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#776 [ちか]
「恭くんと私は親同士が友人でして、本当に幼い頃から顔見知りだったんですが、その頃から恭くんにはなんとも言えないオーラのようなものがあって、私自身もその頃は近寄りがたい存在だと思っていました。」

「へ、へえ‥」

オーラ‥ねぇ。
なんか想像つくかも。

⏰:09/03/26 12:21 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#777 [ちか]
「そもそも、私と恭くんが初めて言葉を交わしたのは、うちの父が主催したその年初等部に入学する子供を持つ友人と子供同士を祝うのパーティーの席でのことでした。」


「は、はあ‥」


なんか話それてきてる気が‥

⏰:09/03/26 12:29 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#778 [ちか]
――‥11年前
     (語り:神楽)
そのパーティーで私は主催者の娘と言うこともあり皆さんの前でピアノを演奏することになったんですが…

なんせ騒ぎ事が大好きな父ですから、いらした方も多く、まだ6つだった私は直前になって逃げ出してしまったんです。

パーティー会場から出た私は闇雲に走って着いた場所に小さく踞(ウズクマ)り、泣いていました。

⏰:09/03/26 12:41 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#779 [ちか]
『神楽お嬢様?!』
『神楽お嬢様ーっ!!』

狭い部屋でしたし、私自身隅っこで小さくなって居たものですから、私を探しに来た人達も全く私も見つける気配はありませんでした。

それからだんだんと騒がしさがおさまってきた頃、ドアが開く音がしました。

⏰:09/03/26 19:08 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#780 [ちか]
靴音がして、誰かが部屋に入ってきたようでした

私は、怒られるのが怖くてただ小さく震えるだけ‥

やがて私の前でその靴音はピタリと止みました。

『かぐらちゃん?』

ふいに名前を呼ばれ、私は咄嗟に顔をあげました。

『やっぱりかぐらちゃんだ。』

そこに立っていたのが恭くんだったのです。

⏰:09/03/26 19:15 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#781 [ちか]
涙で歪んだ景色にぼんやりと恭くんの顔が浮かびました。

『なんで泣いてるの?』

恭くんはそう言って私の瞳に溜まった涙を拭ってくれました。

私は皆さんの前ピアノを弾くのに緊張して逃げ出してきたことを打ち明けました。
涙で言葉に詰まる私の話を、恭くんはただ静かに聞いてくれました。

⏰:09/03/26 22:25 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#782 [ちか]
『でも、かぐらちゃんが居なくなってみんな心配してたよ?』

恭くんの言う“心配”の2文字が私の幼心を罪悪感でいっぱいにしましたが、それでも私は皆さんの前に立つのが怖くて【いや、いや】と言わんばかりに首を横に振りました。

ですが、その時です。

『ん〜、じゃあぼくも一緒に弾いてあげる。』

『え‥?』

思ってもみなかった発言に私は潤んだ瞳を恭くんに向けました。

⏰:09/03/26 22:50 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#783 [ちか]
『2人なら大丈夫でしょ?』

私は小さくコクンと頷きました。

『じゃあ行こ。』

そう言って笑顔で手を差し伸べられた時、私は恋に落ちたのです。

あの時の笑顔はもう可愛いらしくて可愛いらしくて‥

⏰:09/03/26 22:57 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#784 [ちか]
「そうだったんですかぁ‥」

ほんのりと頬を紅くする神楽さん。
なんか自分の世界って感じ。
そんな神楽さんに適当な相槌を打つ俺。
内心は俺の知らない恭弥を知ってる神楽さんが羨ましくて、少し妬いていた。

でも、やっぱり話それてない?

⏰:09/03/26 23:01 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#785 [ちか]
「あ、すいません思い出していたらつい長々と…。話の続きを‥えーっと、あ!そうです、そうです!その頃から私はずっと恭くんだけを見てきました。
外見はもちろん、内面もお優しい恭くんは、それはもう俗に言う"モテモテ"でした。」

俺は相槌を打ち続けるものの、神楽さんに対する恭弥の態度を思い出しながら納得のいかないような顔をしていた。

だって内面もお優しいってさぁ…ねぇ?

⏰:09/03/26 23:09 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#786 [ちか]
そんな俺をよそに、マシンガン的なテンポで話を続ける神楽さん。

が、モテモテでしたと言ったあと一息ついてテンポは緩やかになった。

「ですが、恭くんはどんな美人が言い寄って来ようとも、見向きもしませんでした。…今まで一度も。
ですから、私もこの思いが受け入れて貰えなくても別に良かったのです。
恭くんに“特定の方”が現れなければ…それで良かったのです…。」

だんだんと悲しそうな顔をする神楽さんに俺は多少の罪悪感を覚えた。

⏰:09/03/26 23:56 📱:P906i 🆔:T1.t4GZE


#787 [ちか]
「ですが、昨日‥‥。
あんなに他人(ヒト)を愛しそうに見つめる恭くんは初めて見ました…。」

(それが俺なのか…)

俺はしゅんとする神楽さんをよそに内心すごく嬉しかった。
本当に恭弥は俺を好きで居てくれてるんだと確認出来て、嬉しかった。

ニヤけてしまいそうな顔がバレないように顔に力を入れていたその時。

神楽さんの俯いていた顔が勢いよくこちらへと向いた。

⏰:09/03/27 00:01 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#788 [ちか]
「冥さんっ!!!!!」

「へ、はぃッ?!?!」

俺を見つめる瞳に、もはやおっとりとした雰囲気の神楽さんは居なかった
その真剣な眼差しに俺は思わず怯(ヒル)んだ。
声まで上擦ってしまう始末。情けないよなぁ…。

なんてことを考えているうちに、神楽さんはずいずいと俺に近づいていた。

そしてこう言ったのだ。

⏰:09/03/27 00:07 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#789 [ちか]
「私と勝負してください!!」

勢いよく放たれた言葉に俺の頭は一時フリーズした。

―…しょ、しょ、
「勝負ッッ?!?!」

神楽さんの目は真剣そのもの。

「じょ、冗談じゃないです!!」

女の子(破壊力は最強だけど)と勝負なんてそんな…っ

「もちろんです!!私も冗談で申してる訳ではありません!!」

いや、そう言う意味じゃなくて!!!

⏰:09/03/27 00:24 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#790 [ちか]
だって、性別の壁ってもんがあるだろ?!

殴り合うようなことは男として絶対手あげられないし!!

逆に花嫁対決みたいな、料理とか掃除とか、そりゃあずっと一人暮らしだったから普通の男よりは全然出来るけど!!

こんな良いとこのお嬢様に敵うような腕前はない

どっちにしろ、答えは

「無理です!!!!」

に決まってる。

⏰:09/03/27 00:30 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#791 [ちか]
驚いて目を丸くする俺を見て、神楽さんはその真剣な眼差しで言う。

「ご心配は要りません。
どちらにも不利が無いよう勝負内容は考えさせて頂きましたから。
もう準備は全て整っております。
後は、この車が目的地に着くだけです!」

「えぇッ?!?!」

そう言えば、この車どこ向かってんの?!?!

⏰:09/03/27 00:35 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#792 [ちか]
気づいた時にはもう遅かった。
あの時、神楽さんの車に乗った瞬間からこの人の計画は始まっていたのだ

徐々にスピードを上げていく車。

「後は私にお任せください。」

そう言ってハンカチのような物を俺に当てた。

「っな!!!任せ‥ら‥れる‥わけ‥‥―――」

そこで俺の意識は途切れた。
最後に頭の中で浮かんだのはあの時の優里の、
『神楽姉には気を付けろ』と言う言葉だった‥‥―――

⏰:09/03/27 00:43 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#793 [ちか]
――――‥‥

「………ん……?」

次に意識が戻った時、俺の視界には見慣れない景色が広がっていた。

「た…たみ?」

鼻の奥まで薫ってくる独特の匂い。
むくりと起き上がり、辺りを見渡してみる。
和風な装飾品が飾られた広い部屋。

何が何だか分からず、ぽけっとしているとやがて襖が静かに開いた。

⏰:09/03/27 14:06 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#794 [ちか]
「目が覚めたのですね。」

襖からにこにこした笑顔を向け、こっちに歩いてくるのは神楽さんだった

「あ、あのここは‥‥??」

「私が用意した場所ですのでご安心を。」

神楽さんはキョロキョロと周りを見る俺に微笑みかけた。

ご安心をって‥‥安心出来るわけないじゃん!!!!
俺、これからどうなるわけ?!?!

不安で仕方ない俺は近寄ってくる神楽さんから一歩、また一歩と座ったまま退いていく。

⏰:09/03/27 14:16 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#795 [ちか]
「警戒しないでください。少し手荒な真似だったかも知れませんが…」

困ったように笑う神楽さんに俺は疑いの目を向ける。

だって警戒しない方がおかしいだろ?!
ある意味誘拐だ、こんなの!!!

そんな事を考えながら口をパクパクさせていると、再び襖が開いた。

⏰:09/03/27 14:23 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#796 [ちか]
開いた襖から顔を覗かせたのは黒いスーツを着た強面の男の人。

「お嬢、「その呼び方やめなさいと言ってるでしょう。」

一瞬柔らかい口調が刺々しくなる。

俺が推測するに、たぶんお父さん絡みの…つまりヤクザ関係の人だと思う

⏰:09/03/27 14:30 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#797 [ちか]
冷ややかな口調に黒いスーツの人は頭を少し下げると、
「すいません…。」
とだけ呟いた。

それを見て神楽さんは小さくため息をつくと、もとの柔らかい口調で話し始めた。

「それで、何か御用ですか?」

「はい。もう少しで恭弥様がご到着するようです。」

…え?

⏰:09/03/27 14:36 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#798 [ちか]
「そうですか。ご苦労様です。」

「いえ。それではまた後程。」
それだけ言うと襖はまた静かに閉まった。

‥‥‥て言うか、
「恭弥も来るんですか?!」

俺は神楽さんを見上げながら声を張り上げた。

「もちろんです。
最終的にこの勝負の勝敗を決めるのは恭くんですから。」

当たり前のような顔でそんな事を言う神楽さんを目の前に俺はますます混乱した。

⏰:09/03/27 14:43 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#799 [ちか]
「勝負、勝負って‥‥一体何するんですか?!?!」

今の状況に俺の頭は全くついていかず、半ば半泣きの状態だった。

「あぁ、勝負内容を申してませんでしたね。私とした事が‥すいません。
ですが、冥さんは何もしなくて良いのです。」

「へ‥?」

「ここはあるビルの最上階です。恭くんが着き次第、勝負は始まります。
私も恭くんも、ここからモニターを見てるだけでいいんです。簡単でしょう?」

⏰:09/03/27 14:53 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


#800 [ちか]
>>799訂正
私も恭くんもここから×
私も冥さんもここから○
すいません><、

⏰:09/03/27 14:55 📱:P906i 🆔:Kttm89gw


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