スーパースター、スーパーヒロイン
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#1 [Gibson]
もしも自分が、
テレビや映画に登場するような正義のヒーローになって、
世の為愛する人の為、悪と闘うことができたら…。

そう思うのは、
何も男の人ばかりじゃなくってよ…。

⏰:09/02/02 22:43 📱:SH705i 🆔:n9zyNbiU


#2 [Gibson]
 
*はじめに
ぎぶそんと申します!
2作目となります(>_<)/

下手でありきたりな話になるかも知れませんが、頑張って書きますφ(.. )

こちらにも気軽に
遊びに来てくれると嬉しいです\(^ヮ^)/☆★
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4172/

⏰:09/02/02 22:51 📱:SH705i 🆔:n9zyNbiU


#3 [Gibson]
Chapter01
「指命と使命」

⏰:09/02/03 00:17 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#4 [Gibson]
私が小さい頃は、周りの女の子は皆、特撮ヒーローに助けられるヒロイン役に憧れてた。

でも私は、他の子たちとは違った。
もしもなれるなら、正義の名の元にある英雄になりたいと思う。

人々がピンチの時には颯爽と現れ、勇敢に悪に立ち向かい、
そして闘いが終われば、自分の名も告げずに去っていく。

そんなの、凄くかっこいいじゃない…―

⏰:09/02/03 00:30 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#5 [Gibson]
「飯島くん!このレポート、誤字脱字だらけだったよ!」

「は、はい!申し訳ございません…。」

私の名前は、飯島紗世子。21歳。

都内で暮らす、ごくごくフツーのOL…と言いたいところだけど、少々人よりドジや失敗が多いのが難点。

今日も会社の先輩に注意を受け、へこへこと頭を下げる。

⏰:09/02/03 00:39 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#6 [Gibson]
目の前の課長の、指摘を含む説教は続く。
私のお茶の入れ方や、挨拶の仕方までに話は至った。
「…という訳だよ!分かったかね!?」

お決まり"シメ"の言葉で、やっとのことで解放される。
10分か、今日は短い方だ。

重い足取りで、自分の席まで戻る。

「ハァ、また怒られちゃった…。」

「フフフ。次に生かせばいいだけよ!」

⏰:09/02/03 00:55 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#7 [Gibson]
隣に座る女子社員が、フォローの言葉を掛けてきてくれた。

彼女の名前は、小川ちひろ。
私の同僚でもあり、よき理解者である。

失敗ばかりの私とは違って、彼女は何でも卒にこなす。

でも、誰に対しても優しくて、私も彼女の言葉に何度も励まされた。

私、彼女がいなかったら、今頃会社に辞表出してたのかな…うん、出してた!

⏰:09/02/03 01:03 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#8 [Gibson]
昼の12時過ぎ。

「ファァ〜。やっとお昼だぁー!今日何食べる?」

体を大きく伸ばしながら、隣のちひろに確認する。
会社で一番楽しみな時間がやって来た。

「うーん、昨日は唐揚げ定食だったでしょー。
脂っこいものは避けたいわよねぇ。」

「ちひろはもっと食べなきゃって位、痩せてるからいいじゃん!
いいわ、今日はパスタにしよう!」

「えーっ。炭水化物。」

⏰:09/02/03 01:14 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#9 [Gibson]
カバンを持って、ちひろとオフィスを出ようとした時だった。

「あっ、二人とも…。」

後ろから、私たちを呼び止める声がする。

そこにいたのは、部の先輩の本田正彦さんだった。

かっこよくて、誠実で、仕事も出来て…
まさに白馬に乗った王子様みたい!

私が密かに憧れている人物。
そんな彼から話しかけられるなんて、今日はなんていい日だろう!

⏰:09/02/03 01:30 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#10 [Gibson]
「今からお昼?
良かったら、俺の行きつけのそば屋さんがあるんだけど、一緒にどうかな?」

「私たち、これからパス…っ」

マズイ!と思った私は、ちひろの言葉を遮るように、前に乗り出した。

「え〜!いいんですかぁ!?行きます行きます!是非ご一緒させて下さい!」

本田先輩に話し掛けられるだけじゃなく、お昼の時間を一緒に過ごせるなんて!

これがあるから、日々上司からのお説教にも耐えて生きてるのよ!

⏰:09/02/03 01:41 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#11 [Gibson]
「飯島さん、今日も元気いいねぇ!」

本田先輩の隣で、クスクスと笑う男がいる。

(ゲッ、小橋夏生…。)

同僚の男だった。
こんな風に、いちいち私に突っ掛かってくる所がキライ!

「あっ、彼も一緒だから。」

「よろしく〜!」

(あーん、本田先輩とのお昼ご飯に、とんだ邪魔が…。)

それから、会社近くのそば屋に4人で向かった。

⏰:09/02/03 01:54 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#12 [Gibson]
そば屋に着き、男性陣と女性陣が対立するように座る。

店内を見回す私。
老朽化がだいぶ進んでいて、壁の汚れが傷が目立つ。

先輩って、こういうこじんまりとした感じの店が好きなんだ。
要メモしとかなくっちゃ!

「…続きましては、次のニュースです。」

それぞれ注文を取り終えた所で、何気なく店内にあるテレビに目を向ける。

⏰:09/02/03 02:09 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#13 [Gibson]
「大手食品メーカー社長、九井信坊氏が、今朝未明、会社近くの川で水死体となって発見されました…」

ニュースの内容に、釘づけになる一同。

「うわー、またかー!」

「最近多いですよね、大企業のお偉いさんたちが、謎の死を遂げるの…。」

「うちの社長は大丈夫かな!?」

「うちは中小企業だから、その心配はないよ!(笑)」

⏰:09/02/03 02:22 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#14 [Gibson]
4人で真剣に話し込んでいると、人数分のざるそばがやって来た。

「…しかし、トップの人たちにこうも先立たれると、日本の未来が心配だな。」
先輩が、つゆに浸けたそばを勢いよく啜る。

「その辺は大丈夫でしょう!
有望な人材は、次から次に出て来ますから…。」

「それにしても、この不吉な連鎖、早くどこかでピリオドを打って欲しいわ…。」

⏰:09/02/03 04:43 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#15 [Gibson]
3人の真摯な会話を、傍らで聞いてるだけの私。

相次ぐ不可解な死か…。
何だか自分とは、別世界な話だと思ってしまう。

両親は健在だし、人生の中で大きな事故や災害に遭ったことも、目の当たりにしたこともない。

それより憧れの先輩オススメの、そばの味をしっかり覚えておくことに努めた。

⏰:09/02/03 08:22 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#16 [Gibson]
「飯島、それいつも身につけてるよな。」

そば屋からの帰り、本田先輩が私の首元を指差す。

「ああ、これですか?
死んだ祖母の形見なんです。

って言っても、私が2歳の時に亡くなったから、全然思い出とかないんですけどね。」

私が小学生の時、母に何故かこのネックレスを渡された。
祖母が亡くなる前、私にあげるようにと言ったらしい。

その理由は今になっても謎だけれど、淡く光る薄紫色の石が綺麗で、かれこれ十年以上気に入って着けてる。

⏰:09/02/03 08:33 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#17 [Gibson]
「…おっと、明日の取引先から電話だ。」

歩く途中、先輩の携帯電話が鳴る。

「…はい、はい。
了解いたしました。…」

丁寧にはきはきと話す先輩。

横顔も、少し出ている喉仏も素敵。
やっぱり先輩ってかっこいいな!

⏰:09/02/03 08:48 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#18 [Gibson]
夕方、仕事が終わる。
真っすぐアパートへと帰宅せずに、会社の近くのレンタルショップへと足を運ぶ。
週に二度は好きで訪れる。

「おっ!『ファイティングレンジャー』の新巻出てるじゃん!早速借りようっと!」

私、年甲斐もなく、特撮ヒーローや戦隊シリーズが好きなんだよね。

店内で物色するのも、このコーナーだけ。

同年代の子たちは、恋愛物のドラマや映画に夢中だと言うのに。

⏰:09/02/03 08:54 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#19 [Gibson]
アパートに戻ってから、まずシャワーを浴びて、今日一日の汚れを落とす。

お風呂から上がったら、二週間ぶりにパックをすることにした。
ひんやりしてて、実に気持ちがいい。

近所のスーパーで買った半額弁当に手をつけながら、さっそく今日借りてきたDVDを観る。

至福の一時。

⏰:09/02/03 09:10 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#20 [Gibson]
私がヒーローもので好きなのは、俳優の端整な顔じゃなくて、悪者とひたすら闘い続けるシーン。

全身を使って攻撃したり、様々な武器を使って敵を倒す所に、胸が痺れる。

私、男に生まれてたら、絶対アクション俳優かスタントマンを目指していただろうにな。

アクション女優も存在するけど、運動神経には全く自信ないから、現実では遠い夢のような話。

⏰:09/02/03 09:23 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#21 [Gibson]
ううん、創りものの中じゃなくて、もしも実在する世界で自分が正義のヒーロー、もといヒロインになれたら…―

なんて、私もとっくに成人しているし、実際に悪いことをしでかす怪獣どもは、存在しないことくらい理解している。

そして、事件や犯罪などは、警察に任せておけばいい。

うん、私の出る幕なんてこれっぽっちもないほど、世の中は成立してるんだ。

⏰:09/02/03 09:38 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#22 [Gibson]


「ん…。何…?!」

深夜、明日に備えて眠りに就いていた時だった。

窓の方から、何か叩くような音がする。

その気配で、目を覚ましてしまった。

⏰:09/02/03 22:12 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#23 [Gibson]
様子を見にベッドから下りて、窓の方へと向かう。

寝ぼけ眼で、部屋のカーテンを開けてみる。

「…キ、キャアッ!!」

目の前の光景を見て、私は腰が抜けて倒れ込んでしまった。

⏰:09/02/03 22:17 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#24 [Gibson]
そこに映っていたのは、一人の少女であった。

変質者か泥棒かと思ったら、何と彼女の体は宙に浮かんでいるではないか。

「ゆ、幽霊…。」

生まれて始めて目にしたそれに、全身で身震いする。

「…飯島紗世子だな!?」

少女が話し掛ける。

⏰:09/02/03 22:22 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#25 [Gibson]
 
○初めて
×始めて

所々の誤字脱字をお許し下さい(>_<)

⏰:09/02/03 22:24 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#26 [Gibson]
「…な、何で私の名前を…!?」

「お願いだ。ここを開けてくれ。あなたと話がしたい。」

自分より随分幼く見えるが、冷静な態度で坦々と話す彼女。

「…イヤ…。イヤ…。」

咄嗟にテーブルの上にあった携帯を手に取り、誰かに助けを求めようとした。

あまり頼りたくない相手だけど、小橋夏生ならまだ起きてるはず。

⏰:09/02/03 22:32 📱:SH705i 🆔:PmbMsxN.


#27 [Gibson]
「…千葉瑠璃子。」

「え?」

「お主の祖母の名前で合っているな?」

「…。」

確かに、母親の母親はその人だけれど、
どうしてこの子が知ってるの…?―

⏰:09/02/04 20:23 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#28 [Gibson]
「それから、お主のお尻にホクロがあるだろう!?」

「えぇっ!どうしてそれを…。家族しか知らないのに…。」

次から次に事実を言い当てる少女。

「とにかく、一先ずここを開けてくれ。何も妙なことはせぬ。」

「…。」

幽霊(?)だしね、金品を盗んでもどうしようもないよね…。
それに、さっきから窓越しで話し声が聞き取りにくいし…―

私は彼女の指示通り、窓を開けてみた。

⏰:09/02/04 20:33 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#29 [Gibson]
「申し遅れた。
私の名前はナナという。」
少女が部屋に入ってきた。
その体はぷかぷか浮いている。

「ナナ…。」

「お察しの通り、私は人間ではない。かと言って、天国からやって来た訳でもない。
まあ、どこか別の星から来たのだと受け止めておいてくれ。」

「は、はぁ…。」

⏰:09/02/04 20:41 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#30 [Gibson]
「何故私がお主の目の前に現れたのか、それが気になるのだろう?」

「ま、まぁ…。
言いたいことがあるならさっさと言って欲しいけど。
私も明日朝早いし…。」

その場で大きく欠伸をした。
時計の針は、深夜2時を指している。

「ははは。
何もお主を驚かそうと思ったり、暇つぶしにここにいるのではない。
重大な用件があって来たのだ。」

⏰:09/02/04 20:49 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#31 [Gibson]
「近頃立て続けに起こっている、エリート集団の変死について、どこかで耳にしたことはあるか?」

「え!?うん、ニュースでやってるのなら知ってるけど…。」

今日の昼に、皆で話し合った出来事のことだろう。

「それについて、どう思ったか?」

「えっ?えっとー…トップに居続けることに疲れちゃって、かなり追い込まれてたのかなぁって。」

警察は、全ての事件は自殺の線で片付けているらしい。

⏰:09/02/04 20:58 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#32 [Gibson]
「…その全てが、誰かによる陰謀だとしたらどう思う!?」

「えぇ!!
それは不可能ないんじゃない?
だって南は沖縄から北は北海道まで起こってるんだよ?
一つ一つの犯行に及ぶのはかなり大掛かり…っていうかめんどくさい…。」

それに、恨みを買っているにしても、一人ひとりに接点はないって言うじゃない。
猟奇的な殺人にしても、全然証拠は見当たらないらしいし…―

⏰:09/02/04 21:06 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#33 [Gibson]
「確かに、たった一人で全てを計画し行おうとすれば、どこかで無理が生じるだろうな。
だが、集団によるものだとしたら?」

「集団…。」

「そして、私はその集団の情報を少しずつ掴んできた…。」

「ま、まじ!?」

⏰:09/02/04 21:11 📱:SH705i 🆔:WmLD0Z9A


#34 [Gibson]
「その組織は、約70年前に壊滅したはずだと聞いていたが、迂闊だった。
今は当時のメンバーの子孫らが再び立ち上げているらしい。」

「…そんなに古い歴史があるんだ…。」

「…。」

自らをナナと名乗った少女が、突然そこで黙り込んだ。

⏰:09/02/05 00:53 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#35 [Gibson]
彼女が部屋をキョロキョロと見回すと、ハッとした表情をする。

「…お主は、ヒーロー物に興味があるのか?」

そう質問する彼女は、棚に飾ってある戦隊シリーズのフィギュアや、
テーブルの上にある、今日借りたDVDのケースを見ている。

「う、うん。小さい頃から好きだけど…。」

それがどうしたって言うのよ…―

⏰:09/02/05 01:02 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#36 [Gibson]
「ならば話は早い。
もしも自分が、そういう物語の中に登場するような、正義の味方になれるとしたら、どう思うか?

いいや飯島紗世子、お主はそういう運命の下に生まれてきた。
選ばれた人間なんだよ。」

「ええっ!?
な、何言ってんの!?」

そうだ私、今変な夢でも見てるんだ!
…ってイテテ、ほっぺは確かに痛みを感じる…―

⏰:09/02/05 01:13 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#37 [Gibson]
「嘘でも冗談でもない。」

「だって私、運動オンチだし、速く走れないし…。
闘いに挑む要素とか全然ないって!」

「それは、通常のお主がそうであるからだけであろう?
…これを見てみろ。」

彼女が私に、一つのネックレスを差し出してきた。

⏰:09/02/05 01:32 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#38 [Gibson]
「…これ、おばあちゃんの形見のネックレスに似てる…。
って言うか、色違い!?」

彼女から渡されたものを、まじまじと見つめる。
石の色が白色以外は、形もサイズも、私の持っているものと全く同じであった。

「…それがお主の能力を発揮するアイテムだ。
お主の持つものとそれを同時に掛けた時、力は発動する。」

「ほー…。」

その説明に、妙に納得がいく。
要はヒーロー物の変身道具と、同じ原理なんでしょ?

⏰:09/02/05 01:44 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#39 [Gibson]
「でも、どうして私なの!?
私はたまたま、これを死んだおばあちゃんから貰っただけで…。」

「偶然ではない。
何故ならばお主の祖母も、若い頃これを身につけて、悪の集団と闘っていたからだ。」

「えぇっ!?お、おばあちゃんが!?」

つまり、今となって孫の私に引き継がれた訳!?…―

⏰:09/02/05 01:50 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#40 [Gibson]
「先程、昔一度だけ組織は崩壊したと言ったな?
それを成し遂げた人物こそが千葉瑠璃子、お主の祖母だ。」

「ひぇ〜!!」

実のおばあちゃんがやってみせちゃうなんて…。
彼女は一体何者なの!?

「今度は孫の紗世子、お前の出番だ。
ネックレスに秘められた力は、お主の元でしか発動しない。」

他の人の前では、単なるアクセサリーに過ぎないって訳ね…―

⏰:09/02/05 06:39 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#41 [Gibson]
「…情報によると、組織は明日、とある大手の会社に爆弾を仕掛けるらしい。

お主には、それが爆発するのを阻止してほしい。」

「ば、爆弾〜!?
もし失敗したら、私の体も木っ端みじんになっちゃうってこと!?

私、まだ死にたくないんですけど!!
お嫁にも行ってないし…。」

「失敗した時のことなど考えるな。
我々の指示通りに動けば、間違いはない。」

我々?
ナナには仲間がいるってこと?
まあ、集団に挑むんだから、集団で対抗するわよね―

⏰:09/02/05 06:48 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#42 [Gibson]
「…会社は、『ヨクキク薬品会社』だそうだ。
お主はこの会社の名前に、見覚えがあるはずだ。」

「えっ…。」

記憶力を駆使して、私は考えてみた。

ヨクキク、ヨクキク…
た、確か…―

「…ほ、本田先輩が明日取引する会社の名前のはず…。」

恐怖で身体が震える。
憧れの先輩が、明日死んでしまう危機にあるってこと…!?―

⏰:09/02/05 06:56 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#43 [Gibson]
「お主には選択権がある。
"やる"か"やらない"かのどちらかだ。

私は是非とも、お主には協力して欲しいと思っている。
その為に今ここにいる。

しかし、無理にとは言えない。
お主の意思を第一に尊重しよう。

しかし、"やらない"となれば、知り合いの上司も、たくさんの人間も、明日死ぬことになる。

そういう現実を、安々と見過ごすが出来るのか?」

⏰:09/02/05 07:03 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#44 [Gibson]
ナナが私に判断を任せ、そして深刻な状況を突き付ける。

本田先輩が死んじゃうなんて…絶対に嫌だ!!

そして何より、私は今まで何の為に正義のヒーローに憧れてきたの?

何の非のない人たちが、次々と殺されていってる。
人は決して、罪と悪の前に臆しちゃいけない。

「…やる、やるわ!」

決断に迷いはなかった。

⏰:09/02/05 07:12 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#45 [Gibson]
「いい返事だ。
流石は、千葉瑠璃子の孫娘だけのことはある。

ではここでお主に、三つの条件を申しておく。」

「条件!?」

「その一、自分の正体を決して誰にも明かさぬこと。
私利私欲の為に動くのならば、ネックレスに秘められた力は消滅する。

ヒーローというものは、ちやほやされる為の肩書きではないということだ。」

ナナの言葉に、大きく唾を飲み込んだ。

⏰:09/02/05 07:24 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#46 [Gibson]
「その二、変身は一日に一度だけ。
一度解けてしまえば、その日は再び変身することはできない。」

「ヒャー!苛酷ね!」

慎重にやらなきゃあ〜。
でも、変身を解く時ってどうするんだろう…!?―

⏰:09/02/05 16:25 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#47 [Gibson]
「その三…。」

ナナがそこで止まる。

「な、何?」

「最後まで、決して諦めないこと。
これが三つの中で、一番難しいかも知れぬ。」

「そ、そうね…。」

今からこんな大役を、たった一人でやらなきゃいけないんだから…―

⏰:09/02/05 16:30 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#48 [Gibson]
ナナの説明が大体済んで、再び布団に潜り込む私。

明日も朝から仕事だしー!
ってその前に、爆弾撤去か…。

「ね、ねぇ…、今までの話、嘘じゃないよね…?」

壁にもたれ掛かって腕組みをしている、ナナに尋ねる。
むしろそうであって欲しい。

「…仮にそうだとして、お主のような娘に長々とこんな話をして、何の得がある。」

…ごもっともです。

⏰:09/02/05 16:36 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#49 [Gibson]
「そうだ!爆弾処理は、警察に頼めばいいんじゃない?彼らの専門職だし。」

私、普通のOLだし。

「生身の人間では、組織には太刀打ちできない。」

「…そんなー…。」

結局、私がやらなきゃいけないのか…―

⏰:09/02/05 16:40 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#50 [Gibson]
「あ〜もう分かった!騙されたと思って、腹括って明日やればいいんでしょ!
お・や・す・み!」

「…。」

何気なく毎日を普通に過ごしていた。
その時突如舞い込んできた、"正義のヒロイン"への指名…。

まさかそれが自分だなんて―
憧れは憧れのままで良かったかも知れない。

何事もない日常が一番幸せね。
でもこれからその幸せを取り戻す為に、私が動かなければ…!―

⏰:09/02/05 16:50 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#51 [Gibson]
次の日の朝。
通常どおり会社へと出勤。

「…眠〜い…。」

何度も欠伸をしながら、オフィスへと向かう。
私の隣では、ナナがふよふよと浮いたまま、私の歩幅に合わせて動いている。

「飯島、おはよう!」

「本田先輩!」

廊下を歩いていると、先輩が眩しい笑顔で、ポンッと肩を叩いてきた。

⏰:09/02/05 16:57 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#52 [Gibson]
「せ、先輩、今この場所に私たちの他に誰かいます?」

「ん?誰もいないけど…。」

彼が、キョロキョロと廊下を見渡す。

私の隣では、ナナが悠然とした態度で私たちの会話を聞いている。

彼女の姿が私にしか見えないってこと、本当なんだ―

⏰:09/02/05 17:01 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#53 [Gibson]
「おっ、そうだ。
今日は大事な取引があるんだった。」

彼が、腕時計で時間を確認する。
確か、時間は朝の10時からだったはず。

「先輩、本当に行くんですか!?」

「え?そりゃ、それが仕事だから。」

クスクスと笑う彼。

⏰:09/02/05 17:08 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#54 [Gibson]
「先輩、行かないで下さい!爆発事故が起こるかも知れないんです!」

彼の体を、大きく揺さぶる。

「ははは。
薬品会社だから、そういう危険の可能性がないとは言い切れないな。

でも心配ご無用。
ここで俺がきっちり契約取ってきて、会社に利益を出してくるから。」

先輩が私を追い越して、オフィスの中へと入って行く。

「先輩…。」

こうなったら、何としても爆弾を止めなきゃ…―

⏰:09/02/05 17:16 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#55 [Gibson]
「ねぇ、ナナ?
私も一応社会人な訳でー…
仕事に穴開けたら、私会社クビになっちゃうんだけど。」

仕事と正義のヒロイン、同時にこなせないよ―

「その心配はない。
ちょっとあそこの扉で行くぞ。」

彼女に従って、普段全く使われていない非常口まで歩いた。

⏰:09/02/05 17:34 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#56 [Gibson]
ナナに言われ、ドアを開けてみる。

「はぁ〜い。」

「わぁっ!!」

そこには、手を振るグラマーなお姉さんの姿があった。
そしてナナと同様、体が浮いている。

「紹介しよう。彼女の名はシュリ。
私たちの仲間だ。
私以外にも複数の仲間が存在するから、覚えておくように。」

「沙世子、よろしくね。」
シュリがウインクをする。
わ、私より色っぽい…―

⏰:09/02/05 17:41 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#57 [Gibson]
「沙世子、シュリとそれぞれ右手を合わせてみろ。
そして目を閉じれ。」

「へ!?うん。」

ナナの言うように、目の前のシュリと手の平を重ねてみた。

「…!?」

目を閉じた瞬間、全身に不思議な力が込み上げてきた。

しっかり立っていないと、頭上に浮いてしまいそうな位、身体が軽くなる。

何か、私の中のものが、シュリに渡っている感じ…!?―

⏰:09/02/05 17:47 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#58 [Gibson]
しばらくして、その不思議な雰囲気が収まった。

「…もういいぞ、目を開けてよい。」

ナナの言葉で、ゆっくりと瞼を開いてみる。
目の前にはシュリじゃなくて、私自身の姿が!?

「な、何これ!?」

私、ちょっと太った!?
…じゃなくて、私が二人いる!?―

⏰:09/02/05 17:55 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#59 [Gibson]
「シュリにはネックレスの持ち主を、複製(コピー)出来る能力がある。

精神はシュリのままだが、紗世子の性格・癖・身体能力・その日のスケジュールまでもインプットされている。

持続時間は一日以内。
それが過ぎれば、再び元の姿に戻る。」

じゃあ、今目の前にいるのはシュリってこと!?
何かスゲー!

「紗世子、今日の分の仕事なら私に任せて!」

私、もといシュリが胸を張って言う。

何かズルしてるみたいで、悪いなあ〜。
でもこれで、徹底して悪の集団に挑める!

⏰:09/02/05 18:02 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#60 [Gibson]
会社のことはシュリに任せることにして、私とナナはそれからタクシーで薬品会社へと向かった。

同じ区内に位置するので、十分程度で到着した。

「うっひょ〜!うちと違っておっきい会社。」

会社は、辺りでは一番広くて高い建物だった。

私とナナは、そのまま会社の入口へと入って行った。

⏰:09/02/05 20:03 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#61 [Gibson]
「…ですから、今日この建物内に爆弾が仕掛けられるんです!
中にいる人全員に避難するよう指示して下さい!」

「は、はあ…。」

中に入ってからまず、受け付けの女性に強く訴えかけた。
何度説明しても、彼女のキョトンとした顔は変わらない。

その後、彼女は責任者と呼ばれる人を呼び、私はその人にこっぴどく叱られてしまった。

いい大人が、馬鹿げたことを言うんじゃない。
この会社の防犯設備は万全で、不審者がいればすぐにセンサーが反応するって。

そして、私は社内から追い出されてしまうはめになった。
…カッコ悪〜い…。―

⏰:09/02/05 20:15 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#62 [Gibson]
「先輩も薬品会社も、誰も信じてくれない…。」

ナナと建物の裏口に回って、しょんぼりと座り込む私。

「人間は事態が起こらないと、動かない生き物だからな。

まあ紗世子、お主が爆発を防げばいいだけのことだ。

さあ、行くぞ!」

ナナが私を立ち上がらせる。
私たちは裏口のドアから建物に侵入した。

⏰:09/02/05 20:20 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#63 [Gibson]
誰もいないことを確認すると、ナナが私にもう一つのネックレスを差し出す。

「…この力を授かるということは、同時に人々を救うという義務と責任を背負うということだ。」

ナナが瞬き一つせず、見開いた目で私を見つめる。

「…分かったわ。」

彼女の言葉に、コクリと頷く。
重大な任務であるという状況が、重くのしかかる。

いよいよ変身ね。
でも、どんな風に姿が変わるんだろう?
特撮みたいに、全身かっこいい衣装を纏っちゃうのかしら!?

⏰:09/02/05 20:28 📱:SH705i 🆔:SvoYBDoU


#64 [Gibson]
ナナの手からネックレスを取り、それを掛けてみた。

その瞬間、全身が光り出す。
体温がどんどん上昇する。

「あ、熱い〜!!」

何よコレ…!
今にも溶けてなくなりそう…。
人々を助ける前に、自分が死んじゃうじゃないの…?―

⏰:09/02/06 00:06 📱:SH705i 🆔:p/BCCk7.


#65 [Gibson]
シュリの複製(コピー)の時と同様に、やがて動きが静まる。

"変身後の姿"を早速確認してみると、私の身体はタイトな黒いモビルスーツで包まれていた。

「…何か女スパイみたい…。」

「ははは。闘うにはこれが一番耐性がいいんだ。」

「それにしても、変身する度あんな熱くなるなんて…これから憂鬱だなあ。」

「だんだん慣れてくるさ。
買ったばかりの靴が、履き慣れない時があるだろう?
それと同じことだ。」

そう言うナナはいつも裸足じゃない…―

⏰:09/02/06 00:20 📱:SH705i 🆔:p/BCCk7.


#66 [Gibson]
「でもさ、その悪の組織っていうのは、どこに爆弾を仕掛けるっていうの?

こんな広い建物の中を、片っ端から探すのも効率悪〜い…。」

20階は裕にあるこの建物。
思わずため息が。

「その心配もない。
ダン!私だ、ナナだ!」

ナナの叫び声が、その場に響き渡る。

⏰:09/02/06 01:06 📱:SH705i 🆔:p/BCCk7.


#67 [Gibson]
「はいよっ。」

ナナの声に呼び寄せられるかのように、長身で知的な感じの男性が現れてきた。

シュリと同じように、彼もまた仲間ね。
そして彼女らと同様に、彼も体が浮いてる。

「こちらはダン。
組織の秘密や手掛かりを収集するのに、非常に長けている。

今日ここに爆弾が設置されることも、彼が掴んでくれた情報だ。」

ダンという彼が、ニッコリと微笑む。

⏰:09/02/06 01:16 📱:SH705i 🆔:p/BCCk7.


#68 [Gibson]
「それで、爆弾の設置場所は特定出来たの?」

「今まで組織は、どれも他殺と思わせないような手口を使ってきた。
その状況から判断して、今回もまた同様に、そのパターンを実行するだろう。

ここは薬品会社。
すなわち、劇薬による誤った爆発事故に見せかけることも可能な訳だ。」

「なるほどね。」

「17階にある第2実験室。

実験室最大の広さ、危険度から見ても、この場所に間違いないだろう。」

「そうと分かれば!」

私たちは急いで非常階段を上がっていった。

⏰:09/02/07 02:34 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#69 [Gibson]
「…もう10階は上がったっていうのに、息を切らすどころか、全く疲れてない!
もしかして変身のおかげ?」

階段を駆け上がりながら口にする。
平行な道を歩くのと、同じくらい楽に感じる。

「今のお主には、プロのアスリート以上の身体能力が備わっている。」

ナナが独り言に説明を加えた。

「ひゃ〜!!
普段は腕立て伏せを10回もできないのに…。」

⏰:09/02/07 02:43 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#70 [Gibson]
「ねぇ、ナナ?
ナナたちはどうして、私たち人間を助けようとするの!?

その、何て言うか…。」

ナナたちは人間じゃないから―
人類がどうなろうと、関係ない気もするけど…―

「…食物連鎖という言葉を知っているな?

微生物は土の中の養分を食べ、その微生物を虫が食べる。

その関係において、我々は普段、人間から放たれる見えないエネルギーを自らの蓄えとしている。」

「へぇ!?そうなの?」

⏰:09/02/07 21:59 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#71 [Gibson]
「それはどんな人間からのエネルギーでも、良いという訳ではない。
この国でしか、我々の必要な栄養分は得られない。

つまり、大勢の人間に死なれては困るということだよ。」

共倒れ、って奴ね―

「ねぇ、組織の目的は何なの!?
日本人を憎んでるなら、もっと一気に殺せばいいような気もするけど…。」

人殺しもちまちましててさ、イマイチ回りくどいのよね―

⏰:09/02/07 22:07 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#72 [Gibson]
「復讐には二つのパターンがある。
全てを瞬時にして跡形もなく失くす形と、ジワリジワリといたぶりながら消し去っていく形がある。

狙われてる者は皆、この国の発達において、大きな役割を果たしてきている。

その被害がもっと拡大すれはどうなるか?
主導者を瞬く間に失ったこの国は、混乱し始め、パニックを引き起こす。」

「つまり、復讐のパターンの後者の方ね…。」

怖いな…―
私たちのこと、そんなに憎んでるんだ…―

⏰:09/02/07 22:18 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#73 [Gibson]
ナナから色んな話を聞いている内に、17階に到着した。
階に着いてから、一つ一つの部屋のプレートを確認する。

「…第2実験室。ここね。」

大きな扉のドアノブに手をかける。
幸い、ドアに鍵は掛かっていなかった。

「ひゃあー!学生時代でいう、理科室って所!?
広さは比べものにならないけど…。」

暗幕のカーテンで閉ざされた室内を、色んな実験器具を見ながら歩き回る。
独特の薬品の臭いに、少し酔いそうになる。

⏰:09/02/07 22:28 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#74 [Gibson]
「…んー。爆弾らしきものはどこにもないみたいだけど…。」

隅から隅まで探し回ってみるが、何度確認しても見当たらない。

「ダン、ここで間違いないのか?」

「…100%とは言い切れない。」

「現在の時刻は11時…。後1時間か…。」

ナナの表情に、焦りが見える。

⏰:09/02/07 22:39 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#75 [Gibson]
「爆発する時間は、正午ジャストなの?」

「ああ。それは間違いない。奴らは太陽が最も上昇した時に、計画を実行する。」

ナナが腕組みをしたまま言った。

「ふーん…。
ねえ、ダン。この建物全体の見取り図とか持ってる?」

「ん?これがそうだが…。」

彼が、小さな電子ノートのようなものをを渡す。

⏰:09/02/07 22:45 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#76 [Gibson]
「…やっぱり。」

「どうかしたのか!?」

ナナが私のぼやきに反応する。

「この建物は、15階から上の階は、実験室や保管所で覆いつくされているの。
つまり、人の出入りがあまりないって言う訳。
この階だって、私たち以外に人の気配はなかったし。

彼らは爆弾で人間を始末することが目的なのよね!?
だったら、もっと下の階を狙うんじゃない!?」

⏰:09/02/07 22:55 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#77 [Gibson]
「「なるほど…。」」

ナナとダンの声が重なる。

「…とまあ、ここまでは予測できても、肝心なのは爆弾のありかよねー。

昼の12時でしょー…。
ご飯時に狙われちゃしゃーないよねー。」

ん、まてよ…!?―

⏰:09/02/07 23:00 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#78 [Gibson]
「分かったよ!爆弾の設置場所!」

「本当か!?」

無我夢中で、実験室を勢いよく飛び出す私。

17階まで上りつめた階段を、全力疾走で一気に駆け降りる。

ナナとダンが、それを必死に後ろから着いていく。

1階まで下りず、とある階にたどり着くと、通路を右に曲がる。

⏰:09/02/07 23:08 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#79 [Gibson]
「…ここよ!」

「…厨房?」

私たちがやって来たのは、5階にある、主に調理が行われている場所であった。
それは、社内食堂と隣り合わせになっている。

「お昼になると、社員が昼食を求めて、食堂にどっと押し寄せる。
大勢の人を爆死させるなら、うってつけの場所じゃないかしら?」

「見事な推測だ、紗世子。」

⏰:09/02/07 23:23 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#80 [Gibson]
「そして、尚且つ人目につきにくい所…。」

私たちは裏側へと回って、食糧庫の前に着いた。

「11時15分…。急がなきゃ…。


腕時計に目をやる。

ここだと確信を持ち、一旦乱れた呼吸を落ち着かせる。
その時、自分がドアノブを回す前に、扉が開いた感覚があった。

⏰:09/02/07 23:31 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#81 [Gibson]
ドンッ!―

ドアが開いた瞬間、私の体が背後へと吹き飛んだ。

そのまま数メートル後ろへと、急ブレーキをかけたように地面へと滑り込む。

「痛ッ…。」

動きが完全に止まった後、防御に優れたモビルスーツを着ているというのに、腹部に激痛が走る。

そして食糧庫から、覆面を被った男が出てきた。

⏰:09/02/07 23:42 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#82 [Gibson]
「ククク。お前ら、まだ我々を追っていたのか…。」
男の、この世のものとは思えない、まがまがしい声が響き渡る。

どうやら私は、この男に咄嗟に腹部を殴られたらしい。

「"カラス"!貴様らの方こそ、まさか復活を遂げていたとはな!」

"カラス"?
それが組織の名称…!?―

攻撃のダメージでぼんやりとする意識の中、ナナと男の会話を聞く。

⏰:09/02/07 23:52 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#83 [Gibson]
「フン。70年前、お前らが雇ったっていう千葉瑠璃子は、随分甘かったよ。

当時の組織の子供らだけは、見逃してやろうって言うんだからな。

まあそのお陰で、俺もこうして存在しているのだがね。ククク。

そして我々は、長らく復讐のチャンスを待った!
そして時を経て、組織の数を増やし、今こうして計画を実行しているのだ!」

男が拳を握りながら、不気味に声高らかに笑う。

⏰:09/02/07 23:59 📱:SH705i 🆔:jBtSb0nA


#84 [Gibson]
「そしてまた、こんな人間の小娘をアテにしているのか。

たった一撃で、立ち上がれないほどダメージをくらうとは…とんだ使えない奴だ。」

「っ…!」

男が、私の髪の毛を引っ張り、顔を上げる。

「我々は相手が誰であろうと、決して容赦はしない!

自然界を破壊し続け、その痛みすら感じない貴様ら人間など、苦しみもがきながら滅びるといい!」

男が一発、二発と、拳に強く力を入れて、私の顔面を殴る。

⏰:09/02/08 00:08 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#85 [Gibson]
痛い、痛いよ…―

「ククク。まあいい。
あの爆弾は、誰にもどうすることもできまい。
今日はこの場所で、うぬらも灰へと化す運命にあるのだ!
ハハハハハハ!」

男が立ち去っていく。

「紗世子!大丈夫か!?」
男が消えると、ナナが私の元へと駆け寄る。

「…。」

殴られた痛みで、声を出すこともできない。

⏰:09/02/08 00:15 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#86 [Gibson]
「すまぬ…。我々の力だけでは、組織には全く太刀打ちできない。

お主一人だけにこんな大役を任せて、申し訳ないと思っている。」

ナナが、乱れた髪を優しく掻き分ける。

「そ…な…こと…な…よ…。」

ナナの要求を引き受けた瞬間から、私はもう、弱音を吐いたり、後戻りすることはできない。

でも、それは想像していたよりも苛酷で、危険で、そして辛い。

⏰:09/02/08 00:41 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#87 [Gibson]
「私の…体…。
どん…ど…消…てる!?」
足元から次第に、モビルスーツの下があらわになっていく。

もしかして、変身が解けていってる!?

変身出来るのは一日に一度まで。
今ここで元の体に戻ってしまうのは、かなりの深手となってしまう。

誰も救えないまま、そして私自身も爆発に巻き込まれて死んじゃうのかな…!?―

⏰:09/02/08 00:54 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#88 [Gibson]
昨日まで、本当に何処にでもいるようなOLだった。

そんな私が、突然人々の為に闘う運命を告げられて…―
そして、変身によって強い力を手に入れた。

今でもこれが全部夢なんじゃないかって、ううん、夢であって欲しい位だよ。

組織とか、復讐とか、訳分かんないよ。

でも、最後まで諦めずに絶対やるんだ。

まだ死にたくないし、沢山の人が死ぬ悲劇を作りたくない…!―

⏰:09/02/08 01:02 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#89 [Gibson]
「くっそぉぉおおー!!」

気力を取り戻すかのように、その場で大きく叫び上げる。

変身した時と同様、再び全身が光熱を放つ。

こんな痛みが、何だって言うのよ。
私の手に、この国の未来がかかっているって言うのよ。
もっとしっかりしなさいよ、紗世子…!―

⏰:09/02/08 01:08 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#90 [Gibson]
私の体は、元の姿に戻ることなく、変身が解けそうになった部分も、再びモビルスーツに覆われた。

「…いつまでもこうしちゃいられない…。」

傷だらけの体を起こし、よろめきながら食糧庫へと向かった。

「…あった!爆弾だわ!」

棚の奥の方に置かれてあった、時限装置が設置されてあるそれを発見した。

⏰:09/02/08 01:23 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#91 [Gibson]
「…後20分…。」

目の前にある爆弾が、デジタル表示で爆発までのカウントダウンを、正確に刻んでいる。

私には爆弾に関しての、専門の知識がない。
下手にいじって、起爆させてしまったら、元も子もない。

私はそれを慎重に持ち上げ、落とさないように両手で抱えた。

「紗世子、どうするつもりだ!?」

ナナの言葉に返事もせず、食糧庫を出る。

⏰:09/02/08 01:32 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#92 [Gibson]
とにかく、人気のない場所へ…―

その思い一心で、1階まで階段を駆け下りる。

そして外に出ると、全力疾走で街を走る。

特異な体質を得た私は、もはや電車や自動車を追い越すことも訳ないほど、凄まじい速さで駆けている。

⏰:09/02/08 01:46 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#93 [Gibson]
この辺りの地理は、だいたい把握している。

私は街の外れにある、広い河川敷へとやって来た。

デジタル表示を見ると、残り10秒、9秒、8秒…と、既に時間はほとんど残されていなかった。

「だぁぁああーっ!!」

私は川に向かって、思い切り爆弾を投げた。

⏰:09/02/08 01:53 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#94 [Gibson]
3秒、2秒、1秒…―

…ドォォオオン!!

空に、巨大な黒い閃光が放たれた。
物凄い爆発音に、思わず両耳を塞ぐ。

「お、終わった…。」

爆発の煙が、ゆっくりと川の中に垂れ下がっていく。

安心とそれまでの緊迫感から解放された思いで、腰が抜けたように、その場にへなへなと座り込む。

「紗世子!大丈夫かっ!?」

後を追って来たナナが、私の元へと駆け寄る。

⏰:09/02/08 02:02 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#95 [Gibson]
数日後―

「ニュースや新聞では全然爆弾騒動のこと取り上げられていないし…なーんか正義のヒロインって言っても、地味な仕事ね!」

私はナナと、爆弾を投げた河川敷に再び来ていた。

命懸けでやったことの扱いのされなさに、少しふて腐れる。

「まあ、爆弾のことも組織のことも、お主以外は誰も知らないのだから。

それに、この任務に華やかさを求めているようでは、まだまだ半人前だな!」

「はぁーい。」

⏰:09/02/08 02:11 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#96 [Gibson]
「…私、おばあちゃんの素質を引き継いでないみたい。
すごかったんでしょ、私のおばあちゃんは。」

「いや紗世子、お主は千葉瑠璃子を越える逸材かも知れない。
的確な判断力に行動力、そして、負けん気の心。
今回はどれをとっても素晴らしかったぞ。」

「やっだぁー!急に誉めたりしないでよー!」

嬉しさから、私はナナをどついた。

⏰:09/02/08 02:18 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#97 [Gibson]
「それにしても、組織は何故こんなにも私たちに憎悪を抱いてるのかしら?

…まあいいわ、次に奴らがどんな行動を取ったとしても、それにひたすら立ち向かっていくだけよ!」

その場を立ち上がり、ガッツポーズをする私。

「…いい心意気だ。」

人間ではないナナと見る夕日は、いつもよりうんと綺麗だった。

⏰:09/02/08 02:24 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#98 [Gibson]
平穏を壊したり、人々を苦しみの中に放り込む、
そんな奴らは、この私が許さないわ。

私たちにどんな憎しみを抱いているのかはわからないけど、そのやり方はきっと間違ってる。

組織はこの手で、必ず崩壊させてみせる…!

それまでは全力で、与えられた任務を遂行するわ!

⏰:09/02/08 02:30 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#99 [Gibson]
「あっ、いけない!
今日は7時から、特撮のスペシャルがあるんだった!」

猛ダッシュで河川敷を走る。

「紗世子、本当に生身の姿か?
変身した時みたいに速いぞー!?」

その後を追うナナ。

そう、平和はただそこにあるんじゃない。
人々の手で、作り上げるものよ。

誰の手も借りられない私は、夜空に一つだけぽつんと煌めく星のように孤独だわ。
だけど、寂しく思ったり、くじけたりなんかしない。

その声を聞かなくても、皆が私の力を必要としているのだから。

Chapter01 END.―

⏰:09/02/08 02:43 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#100 [Gibson]
 
*即興で考えた話なので、イマイチだったと思います(T_T)

機会があれば、また続きを書きたいと思います(p^_^q)

お付き合いして下さった全ての方、有り難うございました!(>_<)/

⏰:09/02/08 02:48 📱:SH705i 🆔:KdpEsNy2


#101 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/02 01:15 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#102 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/04 22:43 📱:Android 🆔:nH.OoPsQ


#103 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age

⏰:22/10/07 16:17 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#104 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>70-100

⏰:22/10/07 16:36 📱:Android 🆔:GR1soPvw


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