夏祭り、恋花火
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#400 [七瀬]
「お前…」
今度は大きくため息をつく遊希。
「だから、言いたくなかってん。
絶対泣くから…」
『ほんっ…ま、聞かんかったら…良かった。
私…アホやな…。』
なぜか、こんな時になって泣けてくる。
:09/04/01 13:30 :N703iD :VvI5HsyM
#401 [我輩は匿名である]
:09/04/01 16:41 :D705i :1QngmUEY
#402 [七瀬]
匿名さん
ありがとう(^3^)/
:09/04/01 23:25 :N703iD :VvI5HsyM
#403 [七瀬]
「頼む、お願いや。
頼むから泣かんといて。」
こんなとこで、泣いたって遊希を困らせるだけ。
『ご…ごめん。
遊希に…グズッ迷惑かけて、ウゥ〜…ほんま悪いと思てる。』
必死に涙を堪える。
…はずが泣き止まず。
:09/04/01 23:30 :N703iD :VvI5HsyM
#404 [七瀬]
「ちゃう!
俺が、泣くなゆうたのは、迷惑やからとかじゃなくって…
…まつりに、そんな顔させたくなかったから。」
『遊希、優しい〜…』
遊希の優しい言葉にさらに涙が止まらず、
遊希を見た、その瞬間に
涙は止まっていた。
:09/04/01 23:34 :N703iD :VvI5HsyM
#405 [七瀬]
だって
あまりにも、遊希が赤い顔してたから。
『遊…希?』
「だから、悲しい顔せんといて。」
そんな顔しないでは、
こっちが言いたいよ。
そんな恥ずかしそうに言わんといて。
私も赤くなってしまう。
:09/04/01 23:38 :N703iD :VvI5HsyM
#406 [七瀬]
「ってか、まつり…」
『えっ、なに!?』
遊希の手がスッと伸びてくる。
そして私の頬に優しく触れた。
「髪、食ってる。」
そう言って、私の口に入っていた横髪を払った。
:09/04/01 23:42 :N703iD :VvI5HsyM
#407 [七瀬]
手を伸ばす時の遊希の真っすぐな瞳と、
髪を払い終えた後の笑った顔が
より私の頬を赤く染めた。
『…ありがとう。』
やばい意識しすぎだ、私。
「おう。」
そうやって
目線を再び、私の頬から目へと戻した遊希。
:09/04/01 23:47 :N703iD :VvI5HsyM
#408 [七瀬]
また目が合う。
ドクンドクン
ドクンドクン…
心臓は破裂寸前。
「…んな顔すんな。」
遊希が目を逸らした。
『じゃあ…どんな顔すればいいんよ。』
私も顔を横に逸らした。
:09/04/02 01:35 :N703iD :opfWhb72
#409 [七瀬]
「そうやな…
泣きもせず、悲しい顔もせず、
そんな、こっちが恥ずかしくなるような顔もせず…」
“こっちが恥ずかしくなるような顔”
は遊希が先にしたんやろ。
そう思ったけれども、黙って遊希の言葉を聞く。
「笑っといて。」
:09/04/02 01:40 :N703iD :opfWhb72
#410 [七瀬]
フイと後ろを向く。
遊希と私の背中が向かい合う状態になった。
「ただ、笑っといてくれたらええ。
いつものお前みたいに、
キャーキャーうるさく騒いでて。」
“キャーキャー”って…
大きなお世話。
だけど、うれしかった。
:09/04/02 01:47 :N703iD :opfWhb72
#411 [七瀬]
私が遊希に背を向けたのは
泣いてるのを隠すため。
だって
“泣かんといて”って
ゆわれたばっかやもん…
でもね、遊希。
私、悲しくて泣いてるんとちゃうよ?
:09/04/02 01:52 :N703iD :opfWhb72
#412 [七瀬]
これは、うれし涙。
幸せで泣いてるの。
なんて、やっぱり変かな。
それでもいい。
矛盾してても
人に笑われても…
今だけはいいと思えるの。
それはやっぱり、
君のおかげ。
:09/04/02 01:58 :N703iD :opfWhb72
#413 [七瀬]
小刻みに肩が震え、
消え入りそうな嗚咽が漏れはじめる。
君は、私の考えてること分かってたみたい。
「そんな、涙やったら
たまにはええかもな。」
そう笑った。
後ろを向いてるから、見たわけじゃないけれど、
確かに笑った。
:09/04/02 02:03 :N703iD :opfWhb72
#414 []
:09/04/02 07:44 :P905i :Mef.VGG.
#415 [七瀬]
さん
ありがとうヾ(=^▽^=)ノ
:09/04/02 08:57 :N703iD :opfWhb72
#416 [七瀬]
『いらっしゃい!』
「1000円の二つ。」
焼きたてホカホカのカステラを、袋に詰めてゆく。
『はい、1000円の二つ。
おおきに〜!!』
あんなに降っていた雨が
奇跡的に止んで
カステラには長蛇の列が
出来ていた。
:09/04/02 09:01 :N703iD :opfWhb72
#417 [七瀬]
あまり星の見えない大阪。
だけど祭は無数ライトと
人々の目の輝きでキラキラしてる。
雨が降らなかったら
ほんまは、もっと売れてたけれど…
「500円の一つ下さい。」
小さな5歳くらいの女の子が立っていた。
:09/04/02 09:06 :N703iD :opfWhb72
#418 [七瀬]
はぁーいと返事しながら見ると、カステラは一つしかなくて遊希が焼いている最中だった。
遊希は汗だくだった。
と言っても当たり前かな。
だって、
この8月に、こんな機械の前にいて汗を流さない人はいない。
少し離れたところにおる私も、その熱気は伝わってくる。
:09/04/02 09:10 :N703iD :opfWhb72
#419 [七瀬]
機械とは、もちろんカステラを焼く機械。
大きなフタがあって、
それを開けると、小さな穴がたくさん規則的に並んでいる。
その穴に粉を入れて、
フタを閉める。
そして、一定時間待って
再び開けると、
丸くて甘いカステラの完成とゆうわけ。
:09/04/02 09:15 :N703iD :opfWhb72
#420 [七瀬]
でも、カステラを焼くのは難しい。
粉を入れる量。
たくさんある穴に、すべてを同じ量にするのは、考えただけでも…
フタを開くタイミングも、大切。
早すぎると、中が生で冷たかったりする。
中には、生が好きで、
わざと生にしてとゆう人もおるけど、ごくまれだ。
:09/04/02 09:19 :N703iD :opfWhb72
#421 [七瀬]
だから商品にならない。
かといって、焼きすぎてももちろんダメ。
このタイミングが一番、
大切で難しい。
ポンポンポンポンと
軽やかに穴からカステラを取り出してゆく遊希。
「なにしてんねん。」
:09/04/02 09:32 :N703iD :opfWhb72
#422 [七瀬]
『へ!?』
「“へ”ちゃうわ。
はよ入れぇや。」
『ああ、ごめん。』
私がボンヤリしてる間に、焼き上がって
湯気の出ているカステラたち。
「お、毎年、来てくれる子やんな。」
:09/04/02 09:36 :N703iD :opfWhb72
#423 [七瀬]
遊希が女の子に笑いかけると、その子は笑った。
「この子、毎年カステラ買いに来てくれんねん。」
うれしそうな遊希。
「いつもは、お父さんと一緒やのに…お父さんは?」
「そこ。」
女の子の指差す。
その先に目を向けると、男性が一人、軽く会釈した。
:09/04/02 09:41 :N703iD :opfWhb72
#424 [七瀬]
「はい。」
私が、急いで詰めてる間に遊希は残ってたカステラを一つ、女の子の手に握らせた。
「ありがと。」
カステラを口一杯に頬張る女の子に遊希は
「こちらこそ、いつもありがとぉな。
また来年も来てな。」
と言った。
:09/04/02 09:46 :N703iD :opfWhb72
#425 [七瀬]
女の子と、バイバイした後も列は続く。
遊希の汗も私の手も止まらない。
たくさんあったペットボトルも空に近づいてゆく。
3時間近く、この状況。
さすがに疲れた…
体力も限界に達する
その瞬間…
:09/04/02 09:54 :N703iD :opfWhb72
#426 [七瀬]
ヒュー、ドーン!!
花火が上がった。
人々の目が空へと向かう。
うそ…っ
今日は、中止なんじゃ…
「お!」
遊希も店から乗り出した。
:09/04/02 12:32 :N703iD :opfWhb72
#427 [七瀬]
「今年は天神祭に負けへんくらい、きれぇや。」
遊希のゆう通り、とても綺麗な花火だった。
今、思うと
この時から、
また私の花火は上がり始めていたのかもしれない。
以前よりも、激しさを増した恋花火が…
:09/04/02 12:37 :N703iD :opfWhb72
#428 [七瀬]
パチパチパチパチ…
最後の取りを飾った、大きな花火も散っていった。
花火が終わると、
客数はより一層、増えて
詰める作業が続いた。
「お疲れ。」
そして、祭が終わる頃に
やってくるのは
いつもの幸せな時間。
:09/04/02 21:56 :N703iD :opfWhb72
#429 [七瀬]
『お疲れ〜…フフ。』
「なに笑ってんねん。
薄気味悪い。」
『いや〜、遊希はええパパになるなあ思て。』
「なんやそれ。」
缶ジュースをクイッと飲みながら遊希は言った。
:09/04/02 21:59 :N703iD :opfWhb72
#430 [七瀬]
『だって、さっきの女の子、めっちゃ遊希に懐いてたもん。
どっちがお父さんか分からんかったわ。』
「俺、そんな老けてる?」
『老けてる。』
そんな冗談を言い合う。
こういう、ほのぼのしたのっていいな。
:09/04/02 22:03 :N703iD :opfWhb72
#431 [七瀬]
「初めてあの子が来たの時は、3年前でなあ…」
楽しそうに話す遊希に耳を傾ける。
「最初は、あのお父さんに肩車されて、買いに来てくれてん。
めっちゃ小さくって…
まあ、今もちっちゃいけどな。
でも一応、小学1年やねんで。
幼稚園児みたいやろ。」
:09/04/02 22:08 :N703iD :opfWhb72
#432 [七瀬]
ほんとお父さんみたい。
「で、それから毎年、買いに来てくれんねん。
今年はおっきなってて、ビックリしたわ。
子供の成長って、ほんま早いなあ。」
しみじみする遊希。
「…でなあ、
将来の夢が俺と結婚することやねんて〜!
毎年ゆうてくれんねん。」
:09/04/02 22:12 :N703iD :opfWhb72
#433 [七瀬]
『ふーん…』
あまりに楽しそうにゆうから、少し嫉妬してしまう。
相手は小学生なのに、
バカみたい。
それに…
「なんや、まつり。
ブスッとして……
もしかしてヤキモチ焼いてんのか。」
そう私を茶化す遊希。
:09/04/02 22:16 :N703iD :opfWhb72
#434 [七瀬]
「なんてな〜冗談…」
『…焼いてるよ。』
上目遣いに見た遊希は、
あっけらかんとしている。
「アカンで、まつり。」
:09/04/02 22:19 :N703iD :opfWhb72
#435 [七瀬]
そうだよね。
遊希を見ていた目は
握りしめてる空になった缶へと移動する。
「まつりには、奏がおる。やり直すんやろ?」
『…ん。』
そうだよ、私には奏がいる。
だから嫉妬なんてする権利なんてないんだよ…
:09/04/02 22:23 :N703iD :opfWhb72
#436 [七瀬]
「一回、反対したけど、
やっぱり奏とやり直し。
あいつはええヤツや。」
…遊希。
「麻友のこともあるし、
つらいかもしれんけど…」
『うん!分かってる!!』
遊希の言葉を遮る。
:09/04/02 22:26 :N703iD :opfWhb72
#437 [七瀬]
『私には、奏しかおらんもん!頑張るよ。
ってゆうか、なに勘違いしてんのよ〜、遊希。
冗談やで、冗談!!
焼くわけないやん、ヤキモチなんて。』
痛い…
胸がチクチクする。
それでも、笑っていないと遊希との今の関係が崩れてしまうんじゃないか
って思ったから。
:09/04/02 22:31 :N703iD :opfWhb72
#438 [七瀬]
「ごめんごめん!!」
遊希が、笑ってくれたから少し安心した。
「もうそろそろ行こか。」
缶をゴミ箱に投げ捨て、
立ち上がる。
なにゆうてんねん…
自分で自分が嫌になる。
:09/04/02 22:34 :N703iD :opfWhb72
#439 [七瀬]
私は奏が好きなんやろ?
奏しかおらんのやろ?
なのに、
なに揺らいでんのよ…
少し前を歩く遊希を
チラッと見る。
でも…
遊希がわからない。
:09/04/02 23:21 :N703iD :opfWhb72
#440 [七瀬]
奏と別れろ
ってあんなにすごい剣幕でゆうくせに
急に、やり直せなんて…
わからないよ。
遊希も
自分自身も…
どうすればええんか…
:09/04/02 23:25 :N703iD :opfWhb72
#441 [七瀬]
「まつり。」
遊希の呼ぶ声。
「行っといで。」
そう遊希がゆう先には
奏と麻友ちゃん。
遊希を見ると、笑ってる。
:09/04/02 23:28 :N703iD :opfWhb72
#442 [七瀬]
ああ、そうやな。
やっぱり私の居場所は
私の愛しい人は
奏なんだ。
遊希が応援してくれてるんだから頑張らないと。
行かないと…
けれども、足は動かない。
:09/04/02 23:31 :N703iD :opfWhb72
#443 [七瀬]
「どしたんや…まつり?」
やっぱり怖い。
奏と別れるかもしれない恐怖じゃなくって
このままでええんやろか
という、焦りの交じった恐怖。
やだ…
訴えるように遊希を見る。
:09/04/02 23:34 :N703iD :opfWhb72
#444 [七瀬]
助けて…
「まつりっ!!」
前から、麻友ちゃんが手を振ってくる。
仕方なく、引きつった笑顔を向ける。
奏は…
目を逸らす。
:09/04/02 23:37 :N703iD :opfWhb72
#445 [七瀬]
「どぉしたのぉ?
そんなところに、いないでこっちおいでよっ!」
麻友ちゃんのやけに高い声が耳をキンキンさせる。
「ちょっと、麻友。」
「なにー?遊希。」
「ちょっと、こっち来い。」
「えー?どしたんよ。
そんな怖ーい顔して。」
:09/04/02 23:42 :N703iD :opfWhb72
#446 [七瀬]
「ええから。」
「もぉー、
わかったわかった。」
うんざりしたように
麻友ちゃんはこっちへ来た。
「じゃあ、頑張れよ。」
遊希は小さくそう言って、私を睨む麻友ちゃんを連れて消えていった。
:09/04/02 23:45 :N703iD :opfWhb72
#447 [七瀬]
「まつり、久ぶりやな。」
しばらくして、奏が重たい口取りで言った。
「こっち来て。」
ちょこんと、奏の隣に座った。
その距離は
近すぎず、遠すぎず…
あまりにも、微妙な距離で気まずさは増すばかり。
:09/04/02 23:58 :N703iD :opfWhb72
#448 [七瀬]
「あのな…」
長い長い沈黙の末、
奏は口を開く。
「昼間のことやねんけど…」
ドクン
心臓が飛び跳ねる。
「まつり、目合ったよな。
その…麻友と…」
:09/04/03 00:03 :N703iD :aggujxUQ
#449 [七瀬]
言葉を濁らす奏。
『…合ったよ。
奏と麻友ちゃんがキスしてるとき。』
奏が一番言いたいことを、先に言ってやった。
また黙る奏に少し苛立つ。
「…ごめん!!」
:09/04/03 00:06 :N703iD :aggujxUQ
#450 [七瀬]
必死に頭を下げる奏。
『知ってたよ、私。
キスしてるとこ
見る前から…』
それに反応して、
顔を上げる奏。
「ほんま…ごめんな。
ってゆうても許してもらえるなんて思ってない。」
震える声。
:09/04/03 00:11 :N703iD :aggujxUQ
#451 [七瀬]
声
香水の匂い
サラサラとした髪…
奏のすべてが懐かしい。
だけど前みたいに
“愛しい”と思えない。
『…許す。』
:09/04/03 00:24 :N703iD :aggujxUQ
#452 [七瀬]
バッと顔を上げて、
私を見る奏の目は、大きく見開いている。
『許すけど
……忘れない。』
その目を強く見返す。
「それは…ヨリ戻してくれるってこと?」
:09/04/03 00:27 :N703iD :aggujxUQ
#453 [七瀬]
コクリと頷く。
「まつり、ありがとぉ。」
泣きそうな奏。
『私も悪いし…
お互い様や!!』
久々に見る奏の笑い顔は、思ったより心地よかった。
こうして、奏との再スタートが始まった。
:09/04/03 00:32 :N703iD :aggujxUQ
#454 [七瀬]
「あーあ…
良かったの?遊希。」
「まつりが幸せなら、
それでええ。」
「私は納得出来ないけど…」
「もう、なんもすんなよ、麻友。
これでええんや…」
:09/04/03 00:35 :N703iD :aggujxUQ
#455 [七瀬]
奏とヨリを戻して、
もう2ヶ月。
私たちの仲は
最低最悪だった。
:09/04/03 00:44 :N703iD :aggujxUQ
#456 [七瀬]
ちょっとしたことで
ケンカばかりしている。
そして
一番、私の頭を悩ませている一言。
「じゃあハラダさんのとこ行けば?」
ほら、また言った。
なにか気に食わないことがあるとこれ。
口癖になってしまってる。
:09/04/03 02:44 :N703iD :aggujxUQ
#457 [七瀬]
そんな奏に向かっての一言。
『もう別れるっ!』
これもまた、口癖になってしまっている。
その後、奏が謝ってくる。
お決まりのパターン。
最初の1ヶ月は良かった。
お互い、ヨリを戻したばかりで気を遣い合っていた。
:09/04/03 03:06 :N703iD :aggujxUQ
#458 [七瀬]
でも、
段々と溝が大きくなっていって…
この一週間は、この繰り返し。
やっぱり、奏は気にしてるんだ
原田さんのこと。
本人は“気にしてないよ”って言っても、ほんまは心の奥底では気にしてる。
:09/04/03 03:09 :N703iD :aggujxUQ
#459 [七瀬]
それは私も同じで
麻友ちゃんのことを
いくら
“お互い様”と思ってても
“許す”と言ったことでも
終わったことでも…
責めたくなる。
どうして?
って問い詰めたくなる。
:09/04/03 03:13 :N703iD :aggujxUQ
#460 [七瀬]
でも、
そうするとキリがない。
いつまでも終わらない。
分かってるのに、
私たちはぶつかり合う。
はぁ
ため息をつく。
今、奏は雑誌を読んでて、私はテレビを見ている。
:09/04/03 03:17 :N703iD :aggujxUQ
#461 [七瀬]
二人の間には会話はなく
ただ、テレビの音と
紙がめくれるパラパラとゆう音が部屋に響く。
「まつり…さっきはごめん」
『いいよ。
こっちこそ、ごめんね?』
こうゆうことにも、慣れてしまった。
:09/04/03 03:21 :N703iD :aggujxUQ
#462 [七瀬]
こんなことに、慣れたいわけじゃない。
前みたいに、笑顔の二人はもうここにはいない。
疲れた…
最近は、一緒におるだけでその空気に参ってしまう。
まさに最低最悪。
『…なあ、奏。』
:09/04/03 03:25 :N703iD :aggujxUQ
#463 [七瀬]
「ん?」
『…私、ほんま原田さんとは、なんもないよ。
確かに私の初恋の人やし、あの時、奏を放って原田さんのとこ行ったのも事実やけど、今は…』
「分かってる。」
『じゃあ、
…もうあんなこと、ゆわんといて。』
:09/04/03 14:54 :N703iD :aggujxUQ
#464 [七瀬]
「…ん。
じゃあ、まつりも言わんといて、
“別れる”なんて。」
『言わへんよ。』
「俺から離れんとって。」
『…離れへんよ。』
大丈夫。
大丈夫大丈夫…
私は奏と上手くやっていける。
:09/04/03 14:57 :N703iD :aggujxUQ
#465 [七瀬]
そう自分に言い聞かせる。
「約束。」
そう言って、小指を絡める。
少し心が軽くなった。
『指きりげんまん。
嘘ついたら、針千本飲ーますっ!!』
久しぶりに笑った。
:09/04/03 15:05 :N703iD :aggujxUQ
#466 [七瀬]
『ゆーび、切った!!』
二人の声が重なって、
唇も重なる。
でも、
この“約束”は、すぐに壊れてしまうことになる。
それも私のせいで。
奏、ほんまごめん。
:09/04/05 00:27 :N703iD :6MvmfN.s
#467 [七瀬]
あれから、順調に交際は続いた。
『今から行っていいー?』
「ええよ。
おいで、まつり。」
電話越しに聞こえる、
奏の声に安心する。
『うん。
今から駅向かうわ。
コンビニ寄るけど、なんかいるー?』
:09/04/05 00:33 :N703iD :6MvmfN.s
#468 [七瀬]
「うーん、そぉやなあ。」
少し間が開いて、
また奏の声が聞こえる。
「ビールと、
そやな…なんかエクレアとかシュークリームとか、
甘いやつ、お願い!!」
『え?
奏…甘いのん、食べへんやん。』
奏は、甘いもんが苦手。
:09/04/05 00:37 :N703iD :6MvmfN.s
#469 [七瀬]
特に、生クリームが
ダメらしい。
「うん、俺が食べるんじゃなくって遊希が…
ほらアイツ、めっちゃ甘党やん?
それに酒飲まれへんし。」
『え、遊希おんの?』
「うん。今、俺の隣に。」
『ふーん、わかった。
とりあえず買って行くわ。』
:09/04/05 00:41 :N703iD :6MvmfN.s
#470 [七瀬]
遊希に会うのは久しぶり。
大学の夏休みが終わる、
3日前の祭で会った以来。
ってゆうか、
遊希とは祭以外では会うことはない。
退院した後に遊希が急に私の家に来た、
あの日以外には会ったことない。
長いこと、遊希とおるけどプライベートなことは
あまりわからない。
:09/04/05 00:47 :N703iD :6MvmfN.s
#471 [七瀬]
でも、仕方ない。
前にもゆうたけど、
“神野商会”とはそうゆうとこ。
ただの仕事仲間でしかない。
相手のことに、一々干渉しない。
お互いなにも知らんでいい。
“祭”とは、そうゆうとこ。
:09/04/05 00:51 :N703iD :6MvmfN.s
#472 [七瀬]
それが暗黙の了解であり、掟。
そう思うと、昔の私は掟、破り過ぎやろ。笑
プライベートも、なにもなく質問攻めやったもん。
でも大きくなるに連れ、
そうゆうことが分かってくる。
自然と、体に染み付いてくる。
:09/04/05 00:55 :N703iD :6MvmfN.s
#473 [七瀬]
そして、
そのたびに
遊希が遠くなってゆく
気がして
ひしひしと胸を締め付けた。
:09/04/05 00:57 :N703iD :6MvmfN.s
#474 [七瀬]
ピンポーン
「開いてるー。」
中からそう声が聞こえたから、ドアを開けた。
「まつり、ありがとう。
重かったやろ?」
奏がビニール袋を持ってくれたその時
「おう。」
:09/04/05 01:00 :N703iD :6MvmfN.s
#475 [七瀬]
下から声が聞こえた。
『遊希…』
「まつり、久しぶりやなっ」
そうやって、白い歯を見せて笑った。
そのおかげで、
少しだけ緊張がほぐれた。
『ほんま久々やな。』
「うん、やな。」
:09/04/05 01:03 :N703iD :6MvmfN.s
#476 [七瀬]
『あ、そうや。これ…』
そういって、
袋に入ったシュークリームを渡す。
「サンキュー。
なんか口が寂しかってん」
ルンルンしながら
あさる遊希に、
少しホッとする。
良かった。
いつもの遊希や。
:09/04/05 22:46 :N703iD :6MvmfN.s
#477 [七瀬]
だって、
あの奏とヨリを戻した日から、
遊希とは、なんか気まずくって…
それは多分、
応援してくれてる遊希と
なぜか苦しい私の気持ちが反比例してたから。
遊希の気遣いが
私は嫌で
遊希の“良かったな”
って笑う顔が息苦しかった
:09/04/06 01:44 :N703iD :YoigC51Q
#478 [七瀬]
「まーつり、乾杯しよ!!」
奏がビール
私はチューハイ、
遊希はコーラ片手に乾杯する。
チンッ
グラスの響く音が
気持ち良く部屋に響く。
『かんぱーいっ』
3人の声も元気良く響く。
:09/04/06 01:49 :N703iD :YoigC51Q
#479 [七瀬]
「あれ?
もう酒無くなかったわ。」
空になった缶を手に
物足りなそうな奏。
『じゃあ、
私、買ってくるわ…』
そう立ち上がろうとした
瞬間に
「いいよ。
もう外暗いし、俺が行ってくるわ。」
奏は言った。
:09/04/08 23:55 :N703iD :JtNg4n8U
#480 [七瀬]
「じゃっ、行ってくるわー」
『いってらっしゃい。』
近所のコンビニへと向かう奏を見送った後、
元の場所に腰を下ろす。
「あいつ、
ほんま酒好きやな。」
ゴロゴロ寝転びながら
遊希。
『そぉゆう遊希は…』
横目で遊希を見る。
:09/04/08 23:59 :N703iD :JtNg4n8U
#481 [七瀬]
『ほんま、
甘いもん好きやなあ。』
少し呆れながら、
でも、からかうような声。
「うっさいわ!!」
うつむきながら、
抵抗する遊希の耳は赤みを帯びていた。
そんな遊希が、面白くってついクスクス笑ってしまった。
:09/04/09 00:03 :N703iD :bh4XHvt6
#482 [七瀬]
「笑うなっ!」
そうゆわれると、
余計おかしなる。
少々、酔っていたのもあって笑いが止まらなかった。
が、次の遊希の言葉で一気に笑いは冷めてしまう。
「…で、奏とはどうなんや」
:09/04/09 00:07 :N703iD :bh4XHvt6
#483 [七瀬]
『どうって…』
「見た感じ、上手くいってるみたいやけど?」
『まあ…いってるけど。』
「なんや、
その浮かない顔は。」
遊希が、
そんなこと聞くからやん。
そう言いたかった。
:09/04/09 06:49 :N703iD :bh4XHvt6
#484 [七瀬]
「まあ、ええわ。
…で?」
『なによ。』
「だから、麻友とは?
あれからどんな感じなん?」
麻友ちゃん…
これはこれで
答えられない。
:09/04/09 06:52 :N703iD :bh4XHvt6
#485 [七瀬]
遊希の言う“あれから”
とは、もちろん奏とヨリを戻した日。
あれから3ヶ月が経とうとしている。
麻友ちゃんとは、
一切連絡をとっていない。
どこでなにをしてんのか…
奏のことも、
どう思ってるんやろか。
それも謎のまま。
:09/04/09 06:58 :N703iD :bh4XHvt6
#486 [七瀬]
カンカンカンカン…
階段を上る音が
段々、大きくなってきた。
「…またなんかあったら、俺にゆいや。」
カチャ
『あ…奏、おかえり』
「ただいま。」
:09/04/09 22:01 :N703iD :bh4XHvt6
#487 [七瀬]
お酒が入っているせいか、奏の頬は赤くなっていた。
「もっかい飲み直そー!!」
そう言って、
持っている袋を上げて見せた。
中にはぎっしりと缶が
詰まっている。
はぁ
横からため息が。
:09/04/09 22:05 :N703iD :bh4XHvt6
#488 [七瀬]
『ねえ〜ねぇねぇねぇー!ねぇってば!!』
「ん?」
振り向いた奏は
…完全に出来上がってた。
『飲み過ぎだって!!
もうそろそろ…』
「まだいーじゃ〜ん。」
:09/04/09 22:09 :N703iD :bh4XHvt6
#489 [七瀬]
困ったように
遊希をチラッと見る。
『なんとかしてよ〜』
小さな声と目線で訴える。
しょうがないなあ
とでもゆうように重い腰を上げた遊希。
「ほら、奏!」
肩を叩く。
:09/04/09 22:13 :N703iD :bh4XHvt6
#490 [七瀬]
「遅なったら電車なくなるし、
外もこれ以上、暗なったらまつりも女やし、危ないやろ。
今日はこの辺でお開きにしよーや、な?」
奏は納得していない様子だったけど、渋々頷いた。
「よし、じゃあ帰ろか!
まつり、送るわ。」
『うん。』
:09/04/09 22:21 :N703iD :bh4XHvt6
#491 [七瀬]
ん〜、
やっと解放されるー!!
奏はアルコールが入ると
いつものしっかり者で頼れるイメージの奏が
…うーん、なんとゆうか
その逆になるって感じ、
それに、めっちゃ飲む!!
お酒は嫌いやないけど
強い方でもない私はいつもクタクタ。
:09/04/09 23:17 :N703iD :bh4XHvt6
#492 [七瀬]
とりあえず、
酒から解放されるんや
とゆう解放感に浸りながらドア付近まで足を運ぶ。
「じゃあ帰るわな、奏。」
『おやすみ〜またあし…』
「待って!」
奏の引き止める声に
2人で振り向く。
「どしたんや。」
:09/04/09 23:21 :N703iD :bh4XHvt6
#493 [七瀬]
「別に〜帰らなくても〜」
奏は呂律の回らない口調。
「まつり、今日泊まりぃや」
『え、でも…』
「明日は学校ないやろ?」
『まあ…
でも!その…』
「じゃあえーやん。
決定!!」
:09/04/09 23:26 :N703iD :bh4XHvt6
#494 [七瀬]
おろおろしながら
遊希を見る。
「じゃー、俺は帰るわ。」
チラッと私を見て、
すたすたと階段を降りていった。
私を置いて。
「ま〜つりぃ。」
取り残された私には奏の声が聞こえただけだった。
:09/04/09 23:39 :N703iD :bh4XHvt6
#495 [七瀬]
「なあ〜」
私を呼ぶ。
「好きやで、まつり。」
『んんっ…』
いつもの優しいキスではなく、荒っぽい。
こんなに余裕のない奏、
初めて。
:09/04/09 23:48 :N703iD :bh4XHvt6
#496 [七瀬]
そのままベッドへ。
私は、奏に抱かれながら
遊希のことを考えてた。
時折聞こえる奏の
“まつり、離れんな”
とゆう言葉を耳に…
:09/04/09 23:53 :N703iD :bh4XHvt6
#497 [七瀬]
『う〜ん…』
ムクッと体を起こすと
太陽の光いっぱい差し込んでいて、目を上手く開けられない。
ふと、下を見ると
奏が静かな寝息を立てて
眠っている。
あ…そうか。
昨日は泊まったんだ…
:09/04/10 20:42 :N703iD :M6Uf2VzY
#498 [七瀬]
ズキン
『…いった…〜』
立ち上がろうとすると
頭が痛む。
お酒の飲み過ぎだろうか。
それとも…
「…んん〜まつり?」
:09/04/10 20:45 :N703iD :M6Uf2VzY
#499 [七瀬]
『奏…おはよ。』
「おはよ…痛っ」
頭を抱えて、
そうゆう奏に冷蔵庫から
水を取出し注いであげる。
「ありがとう。」
そう言って、一気に飲み干す。
それを見て、
私もコップを口へ運んだ。
:09/04/10 20:49 :N703iD :M6Uf2VzY
#500 [七瀬]
ズキンズキン…
まだ頭は痛むけれど、
傍にある服を着始める。
「帰んの?」
『うん、
ちょっと疲れたし…』
「もぉちょっとおりぃや。」
『…』
:09/04/10 20:53 :N703iD :M6Uf2VzY
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