漆黒の夜に君と。U[BL]
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#7 [ちか]



第五話 不器用なココロ


⏰:09/04/05 15:22 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#8 [ちか]
過保護な両親に
年の離れた姉が二人


末っ子の俺は、酷く
甘やかされて育った


アレが欲しいと一言言えば
それが山ほど用意される


どんなにワガママな願いも
俺が言えば全て叶った


だけど、

⏰:09/04/05 15:31 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#9 [ちか]

本当に欲しいモノだけは
いつも言えなくて、


代わりを作ってみるけれど


いつだって俺の気持ちが
満たされることはなかった


本当の愛なんて分からない
隙間の空いたこのココロ


   ――‥‥椿めぐる

⏰:09/04/05 15:46 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#10 [ちか]
幼くして捨てられた俺を
養子として
引き取ってくれた、
大切な両親


優しくて温かくて
俺をたくさん愛してくれる


たくさんの幸せをもらった俺は暮らしに何の不自由も無かった


だけど、

⏰:09/04/05 15:54 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#11 [ちか]

ワガママを言えば
またそれが壊れてしまいそうで、


本当に欲しいモノなんて
いつも言えなかった


いつだって俺の気持ちが
満たされることはなく、


本当の愛なんて分からない
隙間の空いたこのココロ


   ――‥‥櫻井凌

⏰:09/04/05 15:58 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#12 [ちか]


これはそんな
不器用な二人と出逢った、


暑い夏の


不器用なおはなし。

⏰:09/04/05 16:04 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#13 [ちか]
――――――‥‥
―――――‥

蒸し暑い熱帯夜

「ふ…あッ///だ…めっ//」

ギンギンと冷えたこの部屋も

「クスッ…何がダメなの?」

俺達を包む空気だけは

「はぁッ//んン…!!イ、イッちゃ‥う!!///んぁっ//」

燃えるように熱い。

⏰:09/04/05 16:20 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#14 [ちか]
「ハァ…ッ//ハァ‥ッ//」

「クスッ、息あがりすぎ。」

真っ赤になった俺を見ながら妖艶に微笑む漆黒の瞳。

「っな!!///恭弥が強引だったから…ん、ふ‥ぅ///」

言い返そうとすると、また唇を塞がれる。


そんな強引な男、黒羽恭弥に感じてしまう俺は日下冥。

言っとくけど俺はこれでも歴(レッキ)とした男だ。
名前とかで判断すんなよな。

⏰:09/04/05 16:36 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#15 [ちか]
「こう言うのが好きなクセに。」

わざとクチュッと音を鳴らして離された唇と唇に、銀色の糸がのびる。

その色っぽい声に紅く染まる頬をシーツで隠しながら

「うるさい…//」

と小さく呟く。

するとこの人はその漆黒の目を細めてにっこりと笑うんだ。

その笑顔が俺はたまらなく好き。

⏰:09/04/05 21:27 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#16 [ちか]
って、早速のろけてごめんなさい。


でもさぁ、こんだけ美形だとのろけたくもな…

「冥?何ぶつぶつ言ってるの?」

「えっ、ふあ?!!?///」

やべっ!!
声出てた?!///

って言うか、急に後ろから抱きしめるとか反則っ!!!!///


絡みつく恭弥の腕を必死にほどこうとしたが、俺の身体は恭弥のすっぽりと納まってしまった。

⏰:09/04/05 22:17 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#17 [ちか]
恭弥の体温が心地良い。


うとうとと睡魔が襲ってくる。
目が自然と微睡(マドロ)んできた。


あ、ちなみに今は夏休み真っ只中!

期末は試験前に透がいろいろ教えてくれたおかげで赤点無かったんだ!!
ホントに奇跡…(泣)
つまりお仕置きもなんとか受けずに済んだってワケ!!

⏰:09/04/05 22:53 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#18 [ちか]
夏休みは買い物に行ったり、水族館に行ったり、とにかく外でいっぱいデートした。

恭弥最初は面倒だから嫌って言ってたのに、意外と楽しんでた(笑)

まぁ、そんな感じで思いっきり夏休みを楽しんでるわけです。


恭弥の程よく筋肉のついた腕に抱かれながら、俺はデートのことを思い出してニヤついていた。

すると不意に頭上から俺を呼ぶ声がした。

⏰:09/04/05 23:03 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#19 [ちか]
「ねぇ、冥。」

そう呼ばれ、微睡んでいた目で頭上に居る恭弥を見ながら短く返事をした
すると、

「明日から旅行でも行こっか。」

そう、さらりと言葉を放つ恭弥。

「‥‥‥‥‥‥‥‥、えぇえぇ?!??!」

「反応おそ。」

俺はあまりにあっさりとした口調だったからか、暫く反応を返せなかった。

⏰:09/04/05 23:17 📱:P906i 🆔:EVOvgo76


#20 [ちか]
「りょっ旅行?!!?」

俺は目を丸々とさせながら聞き返す。

「うん。暇だし、どっか行こうよ。」

そう言って俺の髪を優しく撫でた。

暇だしって…
この人、相変わらずマイペースなことを…

「で、でも明日からって!!さすがに飛行機のチケットとかいろいろ無理があるんじゃ…」

「ん?ウチのを使うから心配ないよ?」


ま、まさかの自家用ジェットですか…
さすが大金持ち…

⏰:09/04/06 13:26 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#21 [ちか]
いろんな事に驚いてしまって声も出ない俺を見て、恭弥はにっこりと微笑んだ。

「どこ行きたい?」

そう問われた俺は暫く黙り込む。

「冥?」

「‥‥‥‥‥。」

口をもごもごとさせながら、俺はシーツをぎゅっと握る。

そして小さく呟いた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥海。」

⏰:09/04/06 14:03 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#22 [ちか]
「海?」

「うん‥‥‥だめ?」

定番すぎかな?
笑われてしまいそうで俺は恥ずかしくなり顔を赤くした。

そんな俺を撫でる優しい手。

「いいよ。でも海って言ってもいろいろあるよ?
定番にハワイとかグアムにでも行く?
そう言えば、その近くにウチの島が‥‥、」

「お、沖縄がいい!!//」

恭弥の声を遮って俺は声を張り上げた。

⏰:09/04/06 14:17 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#23 [ちか]
勢いよく振り向いた俺に、恭弥は少し驚いた様子

「いいけど、なんで沖縄なの?もっと綺麗な海たくさん…、」

そんな問いかけに、俺は勢いをなくした声でぼそりと呟いた。

「昔…家族で行った時綺麗だったから……」

父さんと母さんがまだ生きてた頃の話だけど‥。

思い出すと悲しくなってきて俺は俯いた。

⏰:09/04/06 15:33 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#24 [ちか]
グイッ

「分かった。行こ、沖縄。」


不意に引き寄せられて俺の頭は恭弥の胸の中。

俺を慰めるかのように優しい手つきが俺の心を温かくした。

「うん‥‥ありがと。」


俺はそれだけ呟いて、眠りに落ちた。

⏰:09/04/06 15:45 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#25 [ちか]
翌日。


目覚めた時の俺は、旅行の話なんて夢だったんじゃないかと、半信半疑だった。


が、それはやっぱり夢じゃなかったんだ。


「む、む、無理!!!!落ちる!!!!早く降ろせーっ!!!」

「うるさいなぁ。
落ちるわけないでしょ?」

俺は今、飛行機に乗ってます…。

⏰:09/04/06 18:21 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#26 [ちか]
「自分が高所恐怖症だったなんて知らなかった…。」

飛行機なんか乗ったの、ホントに小っちゃな頃に一回きりだったから、飛行機の感覚を忘れてたみたいだ…

げっそりとした顔でそう呟くと恭弥はクスクスと笑った。

「仕方ないね。」

ぎゅっ

「これで大丈夫でしょ?」

「‥‥‥っ!///」

手を強く握られて、鼓動がドクドクと早くなる。


結局俺は飛行機が怖くて、到着するまで恭弥に手を握られたまま震えていた。

⏰:09/04/06 18:33 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#27 [ちか]
漸く目的地に着いた俺達の目の前に広がったのは、青い空と青い海。


「すっげー!!!
見て恭弥、超キレイ!!」

俺はまるで子供に戻ったかのように目をキラキラさせながら、海を指差した。

「見てる見てる。
綺麗だね。
て言うか、ちゃんと前見て歩かないと転ぶよ?」

「大丈夫、大丈夫!
俺そんなガキじゃな…っほわ!?!!」

まだガキだったみたい…

⏰:09/04/06 21:08 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#28 [ちか]
「ほらー。だから言ったのに。」

そう言って恭弥は俺に片手を差し出した。

「いてて‥だってさぁ、早く海行きたいんだもん。」

恭弥の手を借りて立ち上がると俺は口を尖らせる

「海は逃げないから、大丈夫だってば。」

そんな俺に呆れ口調でそう言う恭弥。

そうして少しじゃれあった後、俺達は別荘へ向かって車に乗り込んだ。

⏰:09/04/06 22:20 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#29 [ちか]
数十分と車を走らせると、別荘と呼ぶには大きすぎる屋敷が見えてきた。

「来るの何年ぶりだっけ。
懐かしいなあ。」

そんな呑気なことを呟く恭弥に俺は呆気にとられながら車に揺られること数分。


玄関の前で車は静かに停まった。
 

⏰:09/04/06 22:27 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#30 [ちか]
松山さんがドアを開けてくれて、俺達は車から降りると扉まで歩いていく。


松山さんが鍵をジャラリと鳴らしながら取りだし、それを鍵穴に差し込もうとしたその時。


バァン!!!!!


「「「‥‥‥‥っ?!?!」」」


大きな音を立てて内側から扉が開いた。

⏰:09/04/06 22:37 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#31 [ちか]
「遅かったなあ!!!
待ちくたびれたわあ!!!」


そう声を大きく張り上げたのは、見知らぬ男。


赤茶色のクセづいた髪、キラリと光る小さなシルバーのピアス。

少しつりあがった大きな瞳に、笑うと見える八重歯が特徴的だった。



この人は一体‥‥?

⏰:09/04/06 22:46 📱:P906i 🆔:hLECz3SE


#32 [ちか]
「まぁ、ええわ!
暑かったやろ??
ほら、早(ハ)よ入りぃ♪」


そう言ってその人はニコニコ笑いながら手招きをする。

この独特な話し方、関西弁‥?

ワケが分からず、恭弥をチラリと横目で見てみると、案の定恭弥の顔は最強に曇っていた。


うん。
すっごくヤな予感‥‥

⏰:09/04/07 16:01 📱:P906i 🆔:/p5nooO.


#33 [ちか]
「住居侵入罪で警察に突き出してあげようか?」


わぁ‥‥。
顔は笑ってるけど、オーラがすっごく怖いんですけど…


「相変わらずやなぁ、きょん♪」


そんな恭弥にびくともせず、相変わらずの笑顔を向ける男の人。

⏰:09/04/07 16:06 📱:P906i 🆔:/p5nooO.


#34 [ちか]
プチン.

隣で何かが切れたような音が鳴った。

コレは久々の‥‥‥


「その呼び方やめろって言ったよね?
本気で死にたい?ねぇ。」

キレモードの恭弥…


恭弥はその人の腕をぐねりと捻る。

「い、痛い痛い痛いっ!!!!!
ごめんなさい!!!!もう言わへんからッ!!!!頼む!!離して!!!!」


半泣きで痛がるその人が可哀想にすら見えた。

⏰:09/04/07 16:35 📱:P906i 🆔:/p5nooO.


#35 [ちか]
「で、なんでお前が此処に居るの。」

恭弥がやっとのことでその人を離した後、俺達は気を落ち着かせるためにとりあえず中に入りリビングのソファーに腰かけた。

相変わらずの怒った口調で恭弥がその人に問うと、その人はニッと俺達に笑いかけて口を開いた。

「なんでって、会いに来たからに決まってるやろ♪」

⏰:09/04/07 22:08 📱:P906i 🆔:/p5nooO.


#36 [ちか]
「はぁ…、そう言う意味じゃなくて。
なんで僕達が此処に居るって分かったの?」

「ん〜?
まぁ簡単に言うと、恭の家行ったらメイドの可愛い姉ちゃんが沖縄(ココ)行った言うから、先回りして驚かしてみてん★」


刺々しい口調の恭弥と、
呑気な口調のその人。


俺は向かい会って座る2人を交互にキョロキョロと見た。

⏰:09/04/07 22:15 📱:P906i 🆔:/p5nooO.


#37 [ちか]
「先回りって…。よく僕達より早く来れたね。」

苦笑いを浮かべる恭弥。

「おふくろに頼んだらすぐ飛行機用意してくれたからな♪」

「相変わらずだね、その過保護。」

「あの〜…」


あまりに2人の会話について行けないから、俺は間を裂くように小さく声を発した。

⏰:09/04/08 18:00 📱:P906i 🆔:PgiMtaMc


#38 [ちか]
俺の小さな声に、ぐるりと2人の顔がこちらへと向く。

そして関西弁の人は、ぱっと顔を明るくさせて勢いよく俺を指差した。

「あ、君が噂の!!!」

「はい…?」

噂??
噂って、どんな…

言葉の意味が分からず、俺はただ間抜けた顔をするだけ。

⏰:09/04/13 16:51 📱:P906i 🆔:Y1fCMan.


#39 [ちか]
「俺、君に会いに来てんで!!」

そう言ってその人は俺の手をぎゅっと握った。

「な、なんで俺…なんですか?」

混乱状態の俺に、にっこりとその人は笑いかけると、この上なく大きな声を発した。


「君が恭の恋人やろ?!」

⏰:09/04/13 16:56 📱:P906i 🆔:Y1fCMan.


#40 [ちか]
ぱっちりとした大きな目でそう問われた俺は、戸惑いを隠しきれなかった。


はいって言うべき??
いや、恭弥の知り合いみたいだし、神楽さんみたいなことになったら大変‥‥、でもこの人なんの迷いもなく男の俺を恋人って‥‥‥

俺はぎゅっと両手を握られたままパニック中。


「え、あ‥その、なんて言うか‥‥「そうだよ。」

⏰:09/04/13 18:55 📱:P906i 🆔:Y1fCMan.


#41 [ちか]
「僕の恋人。冥って言うんだ。」

落ち着いた瞳が真っ直ぐにその人を見つめる。

俺は恭弥のこう言うところが好き。
堂々と言ってくれると、嬉しさと照れで身体が熱くなるけど、それもちょっと好きだったりする。

「へえーっ!冥かあ♪
えらい可愛い名前やなぁ!!」

そう言ってその人は俺の頭をワシャワシャと撫でた。

⏰:09/04/13 23:33 📱:P906i 🆔:Y1fCMan.


#42 [ちか]
「あ、俺も自己紹介せなな!
俺は椿めぐる(ツバキメグル)♪
めぐって呼んでな★
恭とは昔っからの幼馴染みで、まぁ俺は大阪に住んでるからしょっちゅうは会ってへんけど…(以下省略)」


よく喋る人‥‥
1人でマシンガントークを続けるめぐるさんに俺は適当な相槌を打ち続けた。


「まぁ、とりあえずよろしくな冥ちゃん♪」

⏰:09/04/13 23:40 📱:P906i 🆔:Y1fCMan.


#43 [ちか]
「なっ、なんで【ちゃん】付けなんですか!!///
冥でいいですっ!!///」

慣れないちゃん付けに、俺は思わず顔を赤くさせた。

そんな俺に口を尖らすめぐるさん。

「だって、冥って言うたら絶対恭怒りそうやもんー。
冥ちゃんは【くん】より【ちゃん】ぽいし!
まぁ細かいことは気にせんでいいやん♪」

そうして俺の呼び名は、冥ちゃんになった‥‥

⏰:09/04/13 23:46 📱:P906i 🆔:Y1fCMan.


#44 [我輩は匿名である]
待 っ て る ね

楽 し み に し て ま す

⏰:09/04/15 01:42 📱:W52S 🆔:kZoi0h0A


#45 [ちか]
>>44
└→我輩は匿名さま*

ありがとうございます♪
更新不定期ですが、頑張るので良かったら続きも読んでくださいね^^*

⏰:09/04/15 17:12 📱:P906i 🆔:XWrMgS7Y


#46 [ちか]
めぐるさんは俺が嫌がれば嫌がるほど、【冥ちゃん】を連呼する。

「めぐるさん、その呼び方やっぱ慣れないって言うか…」

あまりのハイテンションさに若干うんざりしながら俺は小さく呟いた。

「俺だって【めぐるさん】て呼ばれるん慣れへんわぁ!【めぐ】でいいって!」


いやいや、会って数分でめぐとか馴れ馴れしいだろ!!

⏰:09/04/15 17:17 📱:P906i 🆔:XWrMgS7Y


#47 [ちか]
闘い(ただの言い合い)の末、勝者は‥‥

「しゃあないなぁ!!じゃあ、【めぐさん】で許したるわ!冥ちゃんだけ特別なっ♪」

「もうなんでも良いです‥‥。」


…言うまでも無くめぐさんだ。


恭弥は疲れはてた俺の顔を見てクスクスと笑っていた。

⏰:09/04/16 20:55 📱:P906i 🆔:x7h8Kuxk


#48 [ちか]
プルルルル‥


不意に恭弥のポケットから機械的な音が鳴りだす

「あ、ごめん。」

それを取り出して、耳に押し当てながら恭弥はそう言うと席を外した。


リビングに取り残された俺とめぐさん。

⏰:09/04/16 21:07 📱:P906i 🆔:x7h8Kuxk


#49 [ちか]
目線を右へやると、ニコニコした笑顔を絶やさないめぐさんが見える。

その笑顔が少し鬱陶しくて下に視線をそらした。


続く沈黙。
続く笑顔。


「……めぐさんは、」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で俺はポツリと呟いた。

⏰:09/04/16 21:27 📱:P906i 🆔:x7h8Kuxk


#50 [ちか]
そんな俺の声に「ん?」とめぐさんも短く返事を返す。

その返事を聞いて俺は再び口を開いた。

「俺が恭弥と……その‥そう言う関係だって聞いて、なんとも思わないんですか‥?」


口にしてみるとやっぱ変な感じだよな‥
間違ったことしてるわけじゃないのに、こんな事聞くなんて。

こんな質問をして、反応を聞くのが怖いなんて…

⏰:09/04/16 21:51 📱:P906i 🆔:x7h8Kuxk


#51 [ちか]
「なんともって??」

「へ‥?」

「やから、“なんとも”ってどう言う意味なん?」

きょとんとした顔で聞き返されて俺は唖然とした


「だっ、だから…同性愛とかキモいとか、幼なじみなのにショック‥とか‥」

俺が途切れ途切れにそう言うと、めぐさんは相変わらずの声色と調子で笑顔を向けた。

⏰:09/04/16 22:13 📱:P906i 🆔:x7h8Kuxk


#52 [ちか]
「あはは!アホか、この世の中同性愛なんかもう珍しないわ♪どっかの国では結婚も出来んねんで?!
国際派のめぐ様がそんなんで驚くわけないやろーっ!」


めぐさんはそう言ってケラケラとおかしそうに笑う。

俺はめぐさんが俺達を受け入れてくれた事に安堵の息を漏らした。

そんなのも束の間、めぐさんは明るかった笑顔をやめて、口を開いた。


「って言う気持ちもあるけど、ほんまはちゃうねん。」

⏰:09/04/17 19:08 📱:P906i 🆔:K9rwRhC6


#53 [我輩は匿名である]
ド キ ド キ

ふ ぁ い と

⏰:09/04/17 20:36 📱:W52S 🆔:rLtJXr2k


#54 [ちか]
>>53
└→我輩は匿名さま*

ありがとうございます★
頑張りますっ(p`・ω・。q)

⏰:09/04/18 18:30 📱:P906i 🆔:OLJvo4FQ


#55 [ちか]
>>52

「え‥‥?」


ドクンと心臓が大きく脈を打った。

じんわりと汗が滲んでくる。めぐさんがあんまり真剣な顔をするから‥


めぐさんは俺から目をそらして呟くように話し出した。

⏰:09/04/18 18:33 📱:P906i 🆔:OLJvo4FQ


#56 [ちか]
「…ほんまはな、俺はアイツに誰かを好きになる日が来ること自体信じられへんかってん。」

細い眉が八の字を描き、めぐさんは哀しげな笑顔を作った。

「今日も来るまでは正直半信半疑やったしな。
でも、来てみてびっくりしたわ。アイツのあんな優しそうな瞳(メ)今まで見たことなかった。
一目で冥ちゃんが大事にされてるんやって分かったで。」


めぐさんはそう言うと、落としていた目線を俺に向けて片手を俺の頭にポンと乗せた。

⏰:09/04/18 18:42 📱:P906i 🆔:OLJvo4FQ


#57 [ちか]
「ありがとうな、冥ちゃん。」

哀しそうな優しそうな笑顔に顔が少し熱くなった

「でッでも、俺ありがとうなんて言われるようなことなんて何も‥‥――っ」

“何もしてない”
そう言おうとしたが、めぐさんはそれを遮った。


「いや、恭は冥ちゃんに大分救われてるで。
あんな優しい目出来るようになったんも冥ちゃんのおかげや。
…アイツ、ひねくれてるけど、これからもよろしくしたってな。」

⏰:09/04/18 18:52 📱:P906i 🆔:OLJvo4FQ


#58 [ちか]
「‥は、はいっ」
と、返事をするとめぐさんはふんわりと笑った。

優しい笑顔に、俺まで笑顔になった。

「ところで、冥ちゃん。」

「ハイ?」

めぐさんの表情が急にガラリと変わった。
なにか企んでいるような‥

「ええモン見せたるわ♪」

⏰:09/04/20 08:26 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#59 [ちか]
めぐさんはそう言ってポケットからスルリと一枚の写真を取り出した。


「え‥‥これって…っ」


「せやで〜♪どうや?『ええモン』やろ??」


口角をあげてニヤつくめぐさん。


俺が見せられたモノ。

それは‥‥――――

⏰:09/04/20 19:33 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#60 [ちか]
「恭がまだ初等部に上がる前のやから、4、5歳のんやったかなぁ?」


そう。
子供版恭弥の写真!!


「か、可愛い…っ///」


クリクリとした大きな瞳に真っ赤な唇。
そして透き通るような白い肌の、幼さの残る恭弥の顔はそれはもう…可愛いかった‥///


俺はめぐさんから写真を受けとると、ソレに釘付けになった。

⏰:09/04/20 19:40 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#61 [ちか]
写真に見とれる俺に、めぐさんは耳元で囁いた。


「欲しいやろ??
特別に冥ちゃんには激安特価で‥‥「僕で悪どい商売するのやめてくれる?」



後ろで響く、怒りの混ざった低い声。

⏰:09/04/20 19:47 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#62 [ちか]
めぐさんの肩がピクリと揺れて、まるで『マズい‥』とでも言いたげな表情(カオ)を作った。

黒いオーラのようなモノが俺達の背中を熱くする


「いっ、いややなぁ!!;
冗談やんかぁ、冗談っ♪
なっ?!冥ちゃん?!」

ぐるりと振り返り弁解するめぐさん。
‥‥‥目が必死だ。

「はッはい‥!!(?)」

俺がそう返事をすると、恭弥は大きくため息をついた。

⏰:09/04/20 20:52 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#63 [ちか]
「でっ電話はもう終わったんか?!誰からやったん?!」

めぐさんは話題をそらす事に必死らしい。

恭弥もめぐさんの言葉に、今思い出したかのような声をあげた。


「あぁ、そのことなんだけど‥‥、」


その続きを言おうとした時、玄関からリビングに通じていたドアが目の前でゆっくりと開いた。

⏰:09/04/20 21:08 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#64 [ちか]
「‥‥‥だ‥れ‥?」


一枚のドアが開くとそこに立っていたのは、


肩につくかつかないかぐらいのブロンドの髪に、
長い睫毛が伸びた碧眼(ヘキガン)を持った綺麗な女の人。


周りを見渡すと、大きな目をさらに大きく開き、口をポカンと開けて固まっていた。

それを見てニヤニヤと口元を緩める恭弥。

⏰:09/04/20 21:31 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#65 [焔枉
この小説めちゃ好きです
応援してます
頑張ってください

⏰:09/04/20 21:35 📱:SH706i 🆔:HpkNfg2A


#66 [ちか]
>>65
└→焔桙ウま*

そう言って頂けて、ほんまに嬉しいです(´;ω;`)
ありがとうございます!
これからも頑張るので、
続きも読んで頂けると嬉しいです♪
>>3に感想板があるので、よかったら遊びに来てくださいね∩^ω^∩★

⏰:09/04/20 22:09 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#67 [ちか]
>>64

「久しぶり。
凌、背伸びたんじゃない?」

呑気な口調で話す恭弥に、凌と呼ばれたその人は不満そうに口を開いた。

「でもまだ恭には勝ってない。」

そんな返事を聞いて、ふふっと恭弥は笑う。

めぐさんは相変わらず固まったまま。


が、暫くして震える人差し指をしっかりとその人に向けながら叫んだ。

「なっ…なんでお前がココに居んねん!!!!」

⏰:09/04/20 22:17 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#68 [ちか]
めぐさんがそう大声を張り上げると、碧眼がめぐさんを映した。


「あぁ。居たんだ。
ごめん、小さかったから視界に入らなかった。」


そんな毒づいた言葉を、単調に吐き捨てるその人


それと同時に『ブチン』と聞き覚えのある音が聞こえた。
しかし、それは恭弥のモノじゃない。


これは、

⏰:09/04/20 22:20 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#69 [ちか]
「そこまで小っちゃないわボケ!!!!
もっぺん言ってみぃ!!」


めぐさんがキレた合図。


「だから、『小さすぎて視界に入りませんでした。』
これで満足?」


面倒くさそうな表情でめぐさんを見下ろす謎の綺麗な女の人。


3人の関係性が全く見えないんですけど…。

⏰:09/04/20 22:27 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#70 [ちか]
「…〜〜っ!!(怒)
何しに来てん!!!!!」

「何しにって、お前に言わなきゃいけない義務でもあるワケ?」

「勝手に入ってくんなや!!」


※君もね☆
(↑冥・恭弥の心情)


「来る前に電話もしたし、インターホンも押した。
松山さんに入れてもらったんだけど文句ある?
て言うか、いつからお前が此処の出入りを制限出来るような人間になったワケ?」

「…〜〜っ!!!!!」


睨み合いながらの壮絶な口喧嘩。

⏰:09/04/20 22:35 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#71 [ちか]
「まぁまぁ。
2人とも落ち着きなよ。」

口ではそんな事言ってるけど、恭弥絶対2人の喧嘩見て楽しんでる…

俺は口元をニヤつかせる恭弥の脇で2人の喧嘩にビクビクしていた。


「俺は落ち着いてる。
落ち着いてないのはこの猿だけだろ。」

ん?

「誰が猿じゃボケェッ!!!」

「お前以外に誰か居る?」


今この女(ヒト)、“俺”って‥‥―――

⏰:09/04/20 22:49 📱:P906i 🆔:DHUcas..


#72 [我輩は匿名である]
頑 張 っ て ね

楽 し み イ

⏰:09/04/20 23:57 📱:W52S 🆔:PKV/1AmY


#73 [ちか]
>>72
└→我輩は匿名さま*

いつもいつも嬉しいコメントありがとうございます
今から更新しますねっ*

⏰:09/04/21 21:27 📱:P906i 🆔:vRwZN9EM


#74 [ちか]
>>71

「お前ほんっっっまにムカつく!!!!」

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ。」

そう言えば、なんか言葉使いも女の人にしては少し乱雑って言うか‥‥

俺は恐る恐る恭弥の服の裾を引っ張った。

それに反応して、俺に目をやる恭弥。

「あの‥‥この人って‥」

⏰:09/04/21 21:42 📱:P906i 🆔:vRwZN9EM


#75 [ちか]
俺の聞きたいことを悟った恭弥は2人の間に入り、自分の両側に居る2人を手のひらで差した。


「えっと、こっちは分かるよね。」

と言って、恭弥がめぐさんを横目で見たから俺はコクンと頷いた。
そして恭弥の視線は右から左へと移る。

「で、この外人顔の奴は櫻井凌(サクライ シノグ)。
神楽を入れた俺達4人は親繋がりの幼なじみ。」

⏰:09/04/22 19:04 📱:P906i 🆔:KZdQLZfE


#76 [ちか]
「神楽入れて3人でええわ!!こんな奴幼なじみやと思ったこと無いし!」

「ソレこっちのセリフ。」


2人は恭弥を挟んで睨み合う。
そんなことも気にせずに話を続ける恭弥。


「一応言っておくけど、凌は男だからね。」

⏰:09/04/23 00:07 📱:P906i 🆔:FPxhwjMk


#77 [ちか]
恭弥のその声に思わず凌さんの顔に目をやった。


確かに背も高いし、声も女にしては低い。


でも‥‥


俺はその容姿から凌さんが男だと言うことを信じれずにいた。

⏰:09/04/24 19:10 📱:P906i 🆔:g0nkni46


#78 [ちか]
すると恭弥は俺の思っていることが分かったのか、クスッと小さく笑うと凌さんの方にくるりと顔を向けた。


「凌、冥はお前のこと女だって思ってるみたいだよ?」

少し馬鹿にしたような、意地悪な笑みを浮かべながら恭弥がそう言うと、凌さんは少し嫌そうに「え‥。」と呟いた。

そして暫く考え込むような顔で俯いたあと、俺に目を向けた。

⏰:09/04/24 19:16 📱:P906i 🆔:g0nkni46


#79 [ちか]
「これで信じてくれるかな。」


凌さんな呟いた声は俺の耳には微かにしか届かなかった。


「え??‥‥‥ッッ!?!?//」


しかし次の瞬間俺の顔はタコのように真っ赤に染まった。


「分かった?」

顔色一つ変えず、無表情で凌さんはそうやって俺に問いかける。

⏰:09/04/24 19:26 📱:P906i 🆔:g0nkni46


#80 [ちか]
凌さんの後ろで恭弥は笑いを堪えるように口元を片手で隠し、めぐさんは呆れたようにため息をついていた。


俺の顔はみるみる内に耳まで赤くなった。


なんでかって?


だって……

この人、急にTシャツ脱ぎだして‥‥っ///
じょ、上半身が!!!///

⏰:09/04/25 18:57 📱:P906i 🆔:K6GokItw


#81 [ちか]
当の本人は俺がなんで真っ赤になってるのか全く気づいてない様子。

それどころか、

「まだ分かんないかな?
…じゃあこれでどう?」

そう呟いて不意に俺の手首を強く掴んだ。

突然手を引っ張られて俺は思考停止状態。


ペタ。


…手の行き先は、凌さんの胸。

⏰:09/04/25 19:07 📱:P906i 🆔:K6GokItw


#82 [我輩は匿名である]
わ く わ く

あ げ ま す ね

⏰:09/04/26 23:37 📱:W52S 🆔:KmF3cRkI


#83 [ちか]
>>82
└→我輩は匿名さま*

あげてくれてありがとうございます*´ω`
>>3の感想板にも良かったら遊びにきてくださいね♪

⏰:09/04/27 18:18 📱:P906i 🆔:BdDFPefA


#84 [ちか]
>>81

一気に心拍数が上がった。

意外と鍛えられていた胸がリアルな感覚を手に与える。

離したくても手首を強く握られて、そこから手を離すことが出来ない。

やがて凌さんはゆっくりと俺に問いかけた。

「胸ないだろ?
男って信じてくれた?」

表情は至って『無』。

俺が激しく首を縦に振ると、漸く凌さんは手を離してくれた。

⏰:09/04/27 21:00 📱:P906i 🆔:BdDFPefA


#85 [ちか]
触れていた手に熱が残る
尚も鼓動は早いまま。


突然だったことに俺が立ち尽くしている間、凌さんは脱ぎ捨てたTシャツを拾って被っていた。


やっぱり表情は無い。


そんな凌さんを見ながら俺は心の中で叫んだ。



この人絶対ズレてる!!

⏰:09/04/27 21:22 📱:P906i 🆔:BdDFPefA


#86 [さやか]
あげ(^O^)/

いつでもいいんで
書いて下さい

⏰:09/05/02 22:54 📱:F905i 🆔:017gNd7E


#87 [ちか]
>>86
└→さやかさま*

優しいお言葉ありがとう
ございます(´;ω;`)
更新不定期すぎて、本当にすいません‥
ですが絶対完結させますので、ゆっくり待っていただけたら嬉しいです

⏰:09/05/04 21:27 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#88 [ちか]
>>85

そんな俺を見てやっぱり恭弥はクスクスと笑っている。

…なんかすっごいムカつくんですけど‥。


睨み付けるように恭弥を見ると、恭弥は目を細めて微笑んだ。
やっぱりこんな時でも俺はこの笑顔に弱いんだよな。


そんなことをぼんやり思っていると、刺々しい口調で関西弁が響いた。

「んで、お前何しに来てん。」

⏰:09/05/04 21:38 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#89 [ちか]
その静かながら怒りの籠(コモ)った声に、チラリと凌さんは振り向いた。


「…たまたまこっちの知り合いに演奏頼まれて呼ばれたから。」


相変わらず険悪な雰囲気だ…。
疲れきった俺を察して恭弥は一度コホンと喉を鳴らすと口を開いた。

「じゃ、僕らは海でも行って来ようかな。」


その一言で俺のテンションは一気にぐんと上がった。

⏰:09/05/04 21:47 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#90 [ちか]
『海』と言う一文字は今の俺にとって魔法の言葉のようだ。


表情がパッと明るくなったのが自分でも分かった







が。

⏰:09/05/04 21:52 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#91 [ちか]
「はぁ?!そんなん自分らだけずるいわ!!俺も行く!!」

「恭が居ないのに此処居ても仕方ないし。」

同時に二つの声が重なって響いた。


「「コイツと行くんはごめん」」「やけど!!」「だけど。」

そしてまた語尾だけが異なって二つの声が重なる。


声が重なったことでまた口喧嘩を始める2人に、俺達もため息を重ねた。



やっぱりそう簡単にこの2人から離れるのは難しそうだ。

⏰:09/05/04 21:58 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#92 [ちか]
結局、俺達は海に行けないままこの険悪なムードと共に1日を過ごす羽目になった。


そんな夕方のこと。


夕食を済ませた俺達4人は黙りこんでいた。


暫くして、急にめぐさんが立ち上がる。

⏰:09/05/04 22:06 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#93 [ちか]
「言うん忘れとったけど、俺、夜は此処泊まる気無いし出ていくわ!」


相変わらずの明かるい笑顔。

しかし、恭弥と凌さんはその一瞬で顔を曇らせた。


だけど俺はそれを大したことだとは考えずただ椅子に座り込んでいた。


そんな中、めぐさんは俺の隣に寄ってくると小さく耳打ちした。


「夜まであんたらの邪魔する気無いから、好きなだけ仲良うしいや♪」

⏰:09/05/04 22:14 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#94 [ちか]
俺はびっくりすると同時に赤面した。

そんな俺の反応を見てニヤッと笑うとめぐさんは玄関の方に繋がるドアから出ていった。


すると、恭弥はそれを追うようにして席を立った。



凌さんは出ていった2人を見た後、視線を斜めに落として大きくため息をつく。



なんか嫌な予感がする…
今の俺にはそんな曖昧な事しか分からなかった。

⏰:09/05/04 22:19 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#95 [ちか]
― めぐるside.―


玄関のドアノブに手をかけた時、恭に呼び止められて初めて恭が後ろに居たことに気づいた。


コイツは昔っからそう言う奴やった。
影みたいに黒い部分(トコロ)があって、時々気配が無いみたいな感覚にさせる。


俺は振り返って、「なんや。」と低く声を発した。

⏰:09/05/04 22:36 📱:P906i 🆔:/B51orBQ


#96 [ちか]
「どこ行く気?」

振り向くと、腕を組みながら俺を見据える恭弥が居た。

「…分かってるくせに嫌な質問してくるなぁ。」

苦笑いをする俺を見て、恭弥はふっと笑った。

「まだそう言うことしてたんだ。いい加減やめれば?」

まるで俺をバカにしているかのような瞳(メ)。
黒くて、全てを見透かしているかのようなその瞳がたまに嫌いやったりする。

⏰:09/05/05 22:57 📱:P906i 🆔:eZG02kr2


#97 [ちか]
「止めれたらとっくに止めとうわ。」



それだけ吐き捨てるように呟いて俺はそこを後にした。


外に出て改めて景色の美しさに気づく。

たくさんの星が一斉に瞬いて地面を照らしていた

⏰:09/05/06 23:00 📱:P906i 🆔:z4wn19po


#98 [ちか]
だけど、俺はそんなことにいちいち感動出来るような心の綺麗な奴じゃない。



むしろ、嫌いや。



遠く上の方から、ちっぽけな俺を見下してるように見えて。

⏰:09/05/07 18:09 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#99 [ちか]
真っ黒でバカでかいこの世界で俺は蟻みたいに小さい存在でしかなくて、惨めな気分になる。


やから夜は嫌い。



俺は一歩、また一歩と歩く速度を早め恭の別荘を後にした。

まるで何かから逃げるかのように‥‥―――

⏰:09/05/07 18:21 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#100 [ちか]
― 冥side.―

恭弥が出ていったあと、俺達に残されたのはどうしようもない沈黙だった。


黙々と食事を続ける凌さん。

ちょっと食べ過ぎなんじゃ‥‥――と思ったけど、そんな事を言える雰囲気じゃなかった。


あまりにもそんな時間が長く続くもんだから、耐えきれなくなって俺は風呂にでも入ろうと席を立った。

⏰:09/05/07 19:15 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#101 [ちか]
と、言っても実は俺、かなりの方向音痴‥‥。

時々すれ違うメイドさん達に何度も何度も場所を聞いては迷い、最終的には案内されると言う形でそこに辿り着いた。


アジアンテイストな造りのバスルームからは夜空に浮かぶ月によってキラキラと輝く海がよく見えた。


「明日は海行けるかな‥。」


そんなか細い独り言は、お湯の中に溶けていった。

⏰:09/05/07 19:24 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#102 [ちか]
「あっちぃー‥」


長く入りすぎて身体はかなりの熱を帯びていた。

俺は顔の周辺をパタパタと仰ぎながら熱を冷ますが、熱は尚も俺の身体を支配し続ける。


仕方無しに俺は夜風にでもあたろうと、バスルームのすぐ傍にあった窓から庭に出た。

⏰:09/05/07 19:43 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#103 [ちか]
熱のせいでぼんやりとする頭と、フラフラな足取り。

よろよろとその辺を歩いていると、不意に何処からか綺麗な音色が聞こえてきた。

‥───♪‥〜〜♪


「あれ‥‥?」


音のする方へ進むと、段々と人影が見えてきた。

⏰:09/05/07 20:34 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#104 [ちか]
「‥‥―――!!!」

俺の目に飛び込んできたのは、雪のように真っ白で細い手でバイオリンを弾く凌さんの姿だった。


月明かりがちょうどスポットライトかのように凌さんを照らしていて、さらにその美しさを引き立たせている。

あまりに綺麗な旋律と容姿に俺は思わず暫くの間見とれてしまっていた。

⏰:09/05/07 20:40 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#105 [ちか]
我に返ったのは、ピタリとその白い手首が動きを止めた時だった。

ハッとした俺は、その場からどうしたらいいか分からなくなり立ち尽くした。


そんな俺に鋭い碧眼が向く。



「いつまでそうしてる気?」

⏰:09/05/07 20:52 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#106 [ちか]
「あ…っ、えっとその…ッ」

冷たい瞳が言葉の自由を奪う。
両手だけが空間を掻いた。


凌さんはそんな俺を暫く見つめた後、大きくため息をついて手招きをする素振りを見せた。

⏰:09/05/07 21:23 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#107 [ちか]
俺は戸惑いながらも、小走りで凌さんに近寄った

「盗み見なんて悪趣味な事されるくらいなら、近くに居た方がマシ。」

相変わらずの無表情が言葉にトゲをつける。

だけど俺は嬉しかった。
あの綺麗な旋律を近くで聴けると思うと自然と顔が緩んでいた。

「そ、それって見てていいってことですよね…?」

恐る恐るそう聞くと、凌さんは初めて柔らかい笑みを見せた。

「今日だけ特別、ね。」

⏰:09/05/07 23:18 📱:P906i 🆔:ltv73rLQ


#108 [ちか]
そして白い手首は再び動きだす。

俺はペタリと座りこんで、それをじっと見続けた。


指先から足の爪先まで、本当に整った、中性的な容姿。

時々風に靡くブロンドの髪がキラキラと輝いて美しかった。

こうしてみるとやっぱり女の人に見える。
それくらい綺麗だった。

⏰:09/05/08 21:00 📱:P906i 🆔:0YEHIE/g


#109 [ちか]
暫くすると凌さんは手を止めた。

さっきのように急にではなく、余韻を残すようにゆっくりと丁寧に。


どうやら曲が終わったみたいだ。

それを合図するかのように碧眼は目線を落として、俺を写した。

その澄みきった碧(アオ)に吸い込まれそうになる。

⏰:09/05/08 23:14 📱:P906i 🆔:0YEHIE/g


#110 [ちか]
「なんで泣いてるの?」

「え‥‥?」


言われるまで全く気づかなかったが、触れてみると頬は確かに濡れていた。


「良く分かんないけど、なんか凌さんの弾いてた曲聴いてたらなんか胸の奥が苦しくなって‥‥―――」


綺麗で優しいけど、どこか哀しくて寂しさが伝わってくる。

⏰:09/05/09 20:28 📱:P906i 🆔:zjxVugOY


#111 [ちか]
凌さんは俺の言葉に、ただ「そう。」とだけ返事して、俺の隣に腰を下ろした。

目線が同じ位置になったところで、俺は口を開く。


「‥なんて曲なんですか?」

すると凌さんは少し考えるような素振りを見せたあと呟いた。

「まだ決まってない。」

「まだ‥?」


.

⏰:09/05/09 20:34 📱:P906i 🆔:zjxVugOY


#112 [ちか]
「思い浮かんだ音を並べただけだから、まだ曲としては決まってないんだ。」

そう言って凌さんはバイオリンを指でなぞった。

「それってその、つまり凌さんが作ったってことですか?」

「うん。」

その瞬間空気はシンと静かになった。

そして…

⏰:09/05/09 21:00 📱:P906i 🆔:zjxVugOY


#113 [ちか]
「すっげー!!!」

星がキラキラと瞬く夜空に俺の声は響き渡った。

凌さんは驚いたように目を丸くしている。

俺は興奮状態。

「自分で作るとかすごすぎ!!!天才?!」

目を大きくさせてそう言う俺に、凌さんは驚いた顔を見せた後暫くして「ぷっ」と吹き出して笑った。

⏰:09/05/10 07:45 📱:P906i 🆔:5M2wVrvQ


#114 [ちか]
「天才って…ぷっはは、なんか分かる気がするな。」

「だ、だってホントにすごいし!!!///ってか分かるって何がですか?」

笑われたことで恥ずかしさが込み上がってくる。


「ん?恭が君を選んだ理由。」

「あ、そう言う意味ですか〜あははは…、」



って!!!
えぇ?!?!

⏰:09/05/10 20:47 📱:P906i 🆔:5M2wVrvQ


#115 [ちか]
「なな、なんで凌さんまで俺達のこと‥‥っ?!?!?!」


な、なんで知ってんの?!


動揺を隠しきれず、言葉に詰まる俺。

「見てたら分かるって。」

そんな俺を見て凌さんはさらりと言ってのけた。

⏰:09/05/11 18:05 📱:P906i 🆔:1cPCjFDs


#116 [ちか]
「そ、そうなんですか‥;」

そんなに分かりやすかったのかな?俺達って…


そんなことに思考を巡らせていると、隣で凌さんは小さく呟いた。



「俺も恭のこと好きだしな」

⏰:09/05/11 18:09 📱:P906i 🆔:1cPCjFDs


#117 [ちか]
・・・・・。




俺 モ 恭ノ コ ト
       好キ ?


「えぇえぇえッ?!?!!?!?」



「反応おそっ。」

⏰:09/05/11 18:13 📱:P906i 🆔:1cPCjFDs


#118 [ちか]
「%*★¥☆▽〜ッッ?!?!」

「何言ってんのか分かんないんだけど。」


だ、だって!!!

好きって…その‥アレで!!

つまり‥‥‥、


「俺達ライバルってことですか…?」

⏰:09/05/11 18:51 📱:P906i 🆔:1cPCjFDs


#119 [ちか]
恐る恐る聞く俺に対して、凌さんの反応は俺の考えと正反対のものだった


凌さんは笑いをこらえるような素振りを見せ、それでもクスクスと笑い声をもらした。

「ごめん、ちょっと誤解させたかも‥今はそう言う意味の好きじゃないから安心して?」



今は、って‥‥?

⏰:09/05/11 22:35 📱:P906i 🆔:1cPCjFDs


#120 [ちか]
「確かに好きは好きだけど、そう言う意味で好きだったのはだいぶ昔のことだよ。」


そう言って凌さんはおかしそうに笑う。

だけど俺は全く笑えない


だってさぁ!!!!

たとえ昔だったとしても、こんっっっな綺麗な人が恭弥のこと好きだったとか…

さすがに負い目感じずにはいられない。
俺の心はショックと不安の渦にぐるぐると掻き乱された。

⏰:09/05/12 23:48 📱:P906i 🆔:A7YkuQuc


#121 [ちか]
そんな俺を見て、凌さんは話を続ける。

「今はなんて言うか…好きだけどそう言う対象の好きじゃないから、そんな顔しなくていいって。」

「は、はい…」

そうは言われても‥‥

返事をしても、顔は半泣き状態の俺。

凌さんは一度大きなため息をつくと、追い討ちをかける一言を呟いた。


「まぁ確かに、しょーもない奴だったら別れさせるつもりだったけど…」

⏰:09/05/12 23:55 📱:P906i 🆔:A7YkuQuc


#122 [ちか]
真顔で言われると余計に怖いって!!!(泣)

もはやショックすぎて言葉も出ない俺はただ固まるだけ。


「……まぁ、でもその心配は無さそうだから。」

「へ…??」


聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声を聞き返すと、凌さんは空を見上げながら言った。

「恭にあんな顔が出来ると思わなかった。」

⏰:09/05/13 19:03 📱:P906i 🆔:twm7d2MU


#123 [ちか]
「恭が、あんな風に笑うなんて想像も出来なかった。
あんなに誰かを愛しそうな目で見るのも…
君のおかげで恭は変わったんだと思う。」


凌さんはそう呟いて碧眼に星を映してた。


俺は、恭弥の俺にしか見せない一面があることを喜んだけど、そのすぐ後にめぐさんの言葉を思い出した。

⏰:09/05/13 22:08 📱:P906i 🆔:twm7d2MU


#124 [ちか]
『アイツに誰かを好きになる日が来ること自体、信じられへんかってん。』



二人の言葉は確かに似ていた。

それを言う時の表情(カオ)も。



まるで恭弥の何かを知っているかのようだ。

⏰:09/05/13 22:13 📱:P906i 🆔:twm7d2MU


#125 [ちか]
「恭は俺の恩人なんだ。」


真っ暗な空にその声はよく響いた。


思わず「恩人?」と聞き返す俺。
凌さんはそれにコクンと頷いて話し出した。



「俺子供の頃喋れなかったんだ。」

⏰:09/05/15 20:40 📱:P906i 🆔:6NNgoRVc


#126 [ちか]
そんな言葉が耳に届き、俺は咄嗟に落としていた目線を凌さんに向けた。


「俺さぁ、子供の頃、親に結構酷い虐待受けてて捨てられたんだ。
で、施設に入れられて出会ったのが今の両親。」

そう話す凌さんの横顔が心なしか悲しげに見えた。


「でもその時にはもう喋れなくなってた。
今思えば心の病ってやつだったのかもな。
でも、今俺はこうやって普通喋れてる。」

⏰:09/05/15 20:57 📱:P906i 🆔:6NNgoRVc


#127 [ちか]
「そのキッカケが恭弥‥ってことですか?」

そう聞くと凌さんはまた静かに頷いた。


「あの時恭が居なかったら今の俺は絶対居ない。
だから俺にとって恭は昔っから特別。」


凌さんの言う『特別』には確かに特別な何かが籠っていた。


俺はそれの嫉妬に似たものを感じた。

⏰:09/05/15 21:24 📱:P906i 🆔:6NNgoRVc


#128 [ちか]
「でも今の恭はあの頃と…」

「はい?」


凌さんの細い声は聞き取りづらかった。


「…いや、なんでもない。」


聞き返すと凌さんがそう言ったから俺はその話をあっさりと流した。

⏰:09/05/16 18:08 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#129 [ちか]
どうして俺はこの時




その言葉の続きを、

凌さんの表情の変化を、




気づけなかったんだろう

⏰:09/05/16 18:09 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#130 [ちか]
「まぁ、とにかく恭は俺にとって一番大切な人なんだ。
『その大切な人の大切な人』は俺も大切にしたい。
だから俺、君のことも好きだよ。」


凌さんにとって恭はそれほど大切で大好きで守りたいものなんだ‥―――

ぼんやりとそんな事が頭の中で滲んだ。


しかしこう美人な人に意味は違えど『好き』って言われるとさすがに照れ‥‥、


「…――っ?!?!?/////」

⏰:09/05/16 18:21 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#131 [ちか]
一瞬自分に何が起こっているのか解らなかった。


解るのは頬に感じる確かな柔らかい温もりと、

その原因が凌さんであると言うことだけ…



俺の思考はそこで完全にストップした。

⏰:09/05/16 19:27 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#132 [ちか]
「じゃ、俺そろそろ寝るわ。ばいばい。」


そう言い残して凌さんは去っていった。

星空の下に俺を残して。


暫くして漸く状況を把握した俺。





「キ‥‥キスされた‥。」


その声は漆黒の空に溶けた。

⏰:09/05/16 20:21 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#133 [ちか]
― 恭弥side.―


めぐがココを出ていったのを追いかけて引き留めるワケでもなく、僕はあの後まず元の部屋に戻った。


が、すでに冥の姿も凌の姿もそこには無く、メイド達が食べ終えた食器類を片付けている最中だった。


そして今僕は部屋で冥の帰りを待っている。

⏰:09/05/16 23:05 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#134 [ちか]
部屋数は相当なもので、一人一部屋にすることも出来たけどそうはしなかった。
(だって旅行だし。)


ソファに腰かけてドアを見ていると、暫くしてドアノブがぐるりと回った。


「おかえり。」


そんな出迎えの声に冥は肩をビクンと震わせた。

あからさまな動揺。

⏰:09/05/16 23:08 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#135 [ちか]
じっと見てみると、何故か片手でずっと右頬に触れているのに気づいた。

何か気にしているような素振り。


「どこ行ってたの?」


これから尋問TIMEになりそうだ。

⏰:09/05/16 23:18 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#136 [ちか]
「え‥っと、ちょっと外に…」

視点の定まらないまま泳ぐ瞳が可愛いくてたまらない。

「‥ふぅん。凌は夕食の後どこに行ったの?」


僕はこの時、冥の肩が微かに揺れたのを見逃さなかった。


凌と何かあったんだ、と言うのが分かると僕はニヤリと口角を上げた。

⏰:09/05/16 23:22 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#137 [ちか]
ソファから腰をあげると、そのままドアの前で固まっている冥に詰めるように迫ってみる。


「さっきから頬(ココ)ばっかり触ってるけど‥どうかした?」

冥が自分の頬に触れている手を僕はゆっくり撫でた。
段々と顔が赤くなっていく冥。


「ななな、なんでもない!!離せよっ!!///」

あっけなく払われる僕の手。

⏰:09/05/16 23:28 📱:P906i 🆔:VYdIZ03.


#138 [ちか]
しかしそんな事で僕が狼狽えるワケもなく、それどころか更に詰め寄ってみた。


顔と顔との間に隙間は少ししかあらず、息遣いを感じるほど。


「何を隠してるの…?」


わざと耳元で囁く。


「まさか…凌にキスされた?」

⏰:09/05/17 08:15 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#139 [ちか]
その時冥の身体がビクンと跳ねた。


相変わらず分かりやすい。
しかし冥はあくまで白を切るつもりらしい。

「んなワケないだろ!!//
何も隠してないってば!!」

そこで僕は止め(トドメ)の一言を刺す。

「僕見てたんだよ?」


もちろん嘘だけど。

⏰:09/05/17 08:21 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#140 [ちか]
チラリと冥を見ると、冥は大きな瞳に水分を含んでいた。


「‥‥‥‥ごめん…、でも…っホントにいきなりで俺‥‥―――っ」

まるでそれは子犬に弱々しかった。


あまりにも可愛い(可哀想?)から、そろそろ尋問はやめて種明かしでもしてあげようか。

僕はゆっくりと口を開いた

「凌には気に入ったモノにキスをする癖があるんだ。」

⏰:09/05/17 08:28 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#141 [ちか]
「へ…?」

今にも泣き出しそうだった瞳が僕を見上げた。

「凌のバイオリンの先生が外国の人で、凌が良い演奏をしたりするとハグしたりキスする人なんだよ。
たぶんそれが移ったんだと思う。」

そう言って笑ってみせるけど、冥は固まったままだった。


暫くして糸が切れたように冥はその場に座り込んだ。

⏰:09/05/17 09:16 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#142 [ちか]
「なにそれ‥‥‥。良かったぁ〜…(泣)」

瞳から涙が一粒ポロリと落ちた。


余程安心したのだろう。




でも、
本当の本番はこれから。

⏰:09/05/17 09:19 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#143 [ちか]
「でも、」


僕がそう呟くと冥は「?」と僕の顔を見つめた。






「僕に嘘つこうとするなんて、お仕置きだね。」

⏰:09/05/17 09:28 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#144 [ちか]
そう呟くと同時に、僕は強引に冥の唇を奪った。

逃げられないように右手は壁に、左は冥の頭をしっかりと押さえながら。


「んふ…っ///んんっ!!」


冥はそれを拒否するように僕の背中を力任せに叩く。


部屋にはクチュクチュと鳴る淫らな音と乱暴な拳の音だけが響いた。

⏰:09/05/17 19:52 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#145 [ちか]
舌絡めれば絡めるほど、
冥は息を荒くする。


唇を離すと銀色の線が糸をひいた。

その先に見えるのは潤む瞳。



全部、全部僕のモノにしてしまいたい。
僕だけのモノに。

⏰:09/05/17 20:14 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#146 [ちか]
こうやって唇を重ねている時だけは、僕が冥の全てを支配している気がした。


冥が僕だけを考えているように思えた。
僕だけを見ているように。



たとえそれが歪んだ愛情だったとしても。
僕はそれ以外の愛の確かめ方なんて知らない。

⏰:09/05/17 23:18 📱:P906i 🆔:vhZETnFE


#147 [ちか]
だけどそれでもいい。



それだけでいい。



冥を想うこの気持ちさえあれば、



それだけで。

⏰:09/05/18 14:15 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#148 [ちか]
僕は足元に座りこむ冥の身体を無理矢理立たせた。


足にしっかりと力の入らない冥を腕で軽く持ち上げ、顔を首元に埋める。


舌先を使いながら首筋を這っていくと、それに連れて冥は熱っぽい声をあげた。

⏰:09/05/18 14:37 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#149 [ちか]
「やぁ…ん‥ン///」



耳を甘噛みすると、吐息混じりに鳴く冥。



次はどうしてあげようか




そんな事を考えながら、
冥のベルトに手をかけた

⏰:09/05/18 18:57 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#150 [ちか]
― 冥side.―


凌さんのキスがそう意味だったと言うことに安堵していたのも束の間、容赦なく恭弥は俺に舌を絡めてくる。


『お仕置き』
の4文字は俺に新たな不安を与えて俺を犯す。


クチュクチュと響く卑猥な音が、俺の身体をより熱くした。

⏰:09/05/18 19:06 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#151 [ちか]
カチャ..


ぼんやりとした頭を覚ましたのはそんな小さなベルトの音。


「‥‥‥――っ!!!///」



突然全身に走る快感。
下着越しに俺のモノは恭弥の手によって弄られていた。

⏰:09/05/18 20:10 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#152 [ちか]
「あッ///や‥め…ッふぅ//」

「自分に拒否権あると思ってるの?」

「んあぁ…ッ///ハァハァ‥ッ」


恭弥は聴覚でも俺を犯す

甘く低く囁いて、
ナイフみたいに俺を刺す


その声を、
その快楽を求めて




俺は鳴く。

⏰:09/05/18 23:04 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#153 [ちか]
恭弥は辛うじて立っている俺の下に膝立ちになった。

そして焦らすようにゆっくりと俺の履き物を剥いでいく。


そして股関からミゾオチまでの間をゆっくりとゆっくりと撫で上げる。


背筋がゾクゾクする。
欲が増えて我慢出来なくなる‥

俺のモノは大きくなるばかり。

⏰:09/05/18 23:25 📱:P906i 🆔:4sI39tHQ


#154 [ちか]
「見て?冥‥‥こんなに大きくなって‥」

「うるさ‥ッいン!!///あ…っ」


恭弥はそう言って俺のモノを円を描きながらなぞる。
快感におかしくなりそうだ。

やがて恭弥はモノから手を離すと、それを口内に運んだ。


クチュ.クチュ..ピチャ


恭弥は器用に先端を吸ったり、舌先で弄ぶ。

「やっ…はぁんッ!!///
ダ…メだって!!でる…ぅッ///」

⏰:09/05/19 01:02 📱:P906i 🆔:3DlGwaqA


#155 [ちか]
そう呟くと同時に頭が真っ白になって、あっけなく俺は果てた。


「ハァハァ‥ッ//ん…ハァ‥//」

白濁色の液体が太股を伝う。
潤む視界から、妖艶な笑みを浮かべる恭弥が見えた。

「あーあ。汚れちゃった。」

そう言って恭弥は口内から溢れた愛液を指で絡めとり舐めた。

艶やかな目付きが俺を縛って動けなくする。

⏰:09/05/19 12:28 📱:P906i 🆔:3DlGwaqA


#156 [ちか]
「ねぇ、どうしてくれるの?」

伝う愛液を絡めとるように恭弥は俺の太股を舐めた。


「ふ…ぁ///ごめ‥んン…なさい…っ」

背筋を走る快感に身悶えしていると恭弥はスッと立ち上がった。


「ヤだよ。」


その声は俺の神経を掴んで離さない、甘い罠。

⏰:09/05/19 17:35 📱:P906i 🆔:3DlGwaqA


#157 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

タイミングが悪くて
すいませんm(__)m

皆さんの意見をぜひ
聞きたいので、感想板↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/262
に一度来て
いただきたいです!><

協力よろしくお願いします

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/05/20 11:23 📱:P906i 🆔:B/cpgI72


#158 [ちか]
>>156
その瞬間、恭弥は俺の身体の向きを無理矢理を変えさせた。

「?!?!…なにす‥っんン!!///」

そして蕾へと滑り込む指。

「一気に2本も入っちゃった。淫乱だね。」


かき混ぜるような指使いと、攻める言葉が俺を狂わせる。

⏰:09/05/20 11:48 📱:P906i 🆔:B/cpgI72


#159 [ちか]
「あっ‥ん///やめ…ッ//そこ…は…ッ!!///」

「なにそれ、誘ってるの?」


そんなワケないじゃん!!(泣)


指を出し入れしながらも左手は俺のモノを弄り続ける。

「も…っ限界‥‥ッ?!?!//」

2度目の頂点を迎えようとしたその時。

⏰:09/05/21 20:56 📱:P906i 🆔:gsQdz226


#160 [ちか]
先端を摘ままれて俺はイキ損ねた。


「きょ…ハァ..おや…??//」

激しく中をかき混ぜていた指はゆっくりと抜かれ、俺は物足りなさを感じていた。

その瞬間。



「言ったよね?
お仕置きだって…クスッ」

⏰:09/05/21 21:32 📱:P906i 🆔:gsQdz226


#161 [ちか]
全身の力が抜けそうになるほどの甘い声で俺は正気に戻る。


そうだ…
恭弥がそんな簡単にイカせてくれるわけない‥


しかしそんな事、今さら気づいてももう遅かった


恭弥はゆっくり俺から離れると、おもむろにベッドの上へと腰を下ろした。

⏰:09/05/21 21:41 📱:P906i 🆔:gsQdz226


#162 [ちか]
それがどういう意味なのか分からず、俺はただ息を整えながらそれを見つめた。


「続き…したい?クスクス」

俺の反応を愉しむようなその顔がむかつく…

だけどそんな事に腹を立てる余裕なんて今の俺には無かった。


俺は小さく頷く。

⏰:09/05/21 21:46 📱:P906i 🆔:gsQdz226


#163 [ちか]
そんな俺の反応を見て、案の定恭弥は満足げに微笑んだ。


「でも、」


その言葉に俺はピクンと身体を揺らす。


「どこに何して欲しいのか、言わなきゃ分かんないでしょ?
『おねだりの仕方』は教えたはずだよ?」

⏰:09/05/21 21:50 📱:P906i 🆔:gsQdz226


#164 [我輩は匿名である]
あげます☆

⏰:09/05/25 20:36 📱:P905i 🆔:7vdmwdmc


#165 [ちか]
>>164
└→我輩は匿名さま*

あげてくれてありがとうございます^^*


>>3 に感想板があるので
匿名さまも他の読者様も
ぜひ遊びに来て下さい♪
コメントがあると、
すごく励まされます><
いつもありがとうございます!

⏰:09/05/26 20:28 📱:P906i 🆔:eV6mQaso


#166 [ちか]
>>163続き

身体中が一気に熱を帯びた。

「そっそんなの出来な…///「なら、やめようか?」

ニヤリと口角をあげて恭弥は意地悪く微笑む。

本当はやめたくなんてない…でも‥///

俺は俯きながら絞りだすように声を出した。

⏰:09/05/26 20:51 📱:P906i 🆔:eV6mQaso


#167 [ちか]
「お、俺のアナルに‥‥挿れてください…っ////」

手を壁につかせ、少し尻を突き出すような体勢をとる。

言葉にするとさらに恥ずかしさが込み上がってきて、身体が熱くなった。


「クスッ‥良くできました。」


顔は見えないけど、その声色から恭弥の機嫌が窺える。

⏰:09/05/26 21:16 📱:P906i 🆔:eV6mQaso


#168 [ちか]
‥‥しかし、いっこうには恭弥が俺の傍に来る気配ない。

静寂が俺の恥ずかしさを余計に駆り立てた。


ま、まさかこれが放置プレイってやつ…?!(泣)

どこまで意地悪なんだよ!!


もはや身体もそして俺自信も限界だった。

その時。

⏰:09/05/27 18:51 📱:P906i 🆔:EChABreI


#169 [ちか]
>>168訂正
いっこうには→×
いっこうに →○

すいませんm(__)m

⏰:09/05/27 18:54 📱:P906i 🆔:EChABreI


#170 [ちか]
>>168続き

「続きしたいなら自分からおいでよ。」

「え…?」

静けさを破ったその声を聞き返すように振り返ると、相変わらずの妖艶な笑みを浮かべた恭弥が視界に入った。


一瞬頭が混乱したが、事態を把握すると一気に顔が赤らんでいくのを感じた。


放置プレイ以上にコイツは意地悪だった‥‥(泣)

⏰:09/05/27 19:09 📱:P906i 🆔:EChABreI


#171 [ちか]
戸惑いを感じられるような足取りで少しずつ少しずつ恭弥の居るベッドに歩みを進める。


目の前まで行くと恭弥の両腕はいとも簡単に俺の体を包み込み、俺はベッドの上に倒れこんだ。


「ほわっ!!!?///ちょ…っ恭‥弥っ///んん…ッ」

⏰:09/05/27 19:16 📱:P906i 🆔:EChABreI


#172 [ちか]
濃厚な甘いキスが俺を支配する。

恭弥はわざと卑猥な音をたてて唇を離すと囁いた


「たっぷり奉仕してもらわなくちゃ。」


そう言って舌で唇をなぞる仕草が色っぽくて、俺の心臓はドクドクと激しく脈を打った。

⏰:09/05/28 19:19 📱:P906i 🆔:obx8kVL2


#173 [高繧ゥ江
あげ
楽しみに待ってます(*^ ^*)y

⏰:09/06/01 01:28 📱:W62SH 🆔:0kyKok.w


#174 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
長い間の放置
本当にすいませんm(__)m

この一週間とちょっとの間、用事がありすぎて更新するどころか、ここに来る時間もありませんでした
でもそれも一段落ついたのでまた今日から更新再開します★∩^ω^∩

どうか最後までこの小説と私を(笑)よろしくお願いします!><

↓感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/06/06 17:17 📱:P906i 🆔:paMdzXBk


#175 [ちか]
>>173
└→ゅかさま*

あげありがとうございます(´;Д;`)
今から更新するので、よかったら続きも読んでくださいね♪(*^^*)

⏰:09/06/06 17:19 📱:P906i 🆔:paMdzXBk


#176 [ちか]
>>172続き

俺は慣れない手つきで恭弥に『奉仕』を始めた。

首筋を舌でなぞると恭弥はくすぐったそうに笑う

「わっ//笑うなっ!!///」

「だって‥‥クスクス」

こっちだって一生懸命やってるんだっつーの!!///
普通笑う?!?!
ほんとむかつくっ!!

⏰:09/06/06 17:31 📱:P906i 🆔:paMdzXBk


#177 [ちか]
くすぐったそうな恭弥を無視して愛撫を続ける。

ついに俺の手は恭弥のベルトへとかかった。


ゆっくりと外し、少し履き物を下ろすと、大きく反り返ったモノが現れた。


鼓動を増す心臓の音がうるさい。

⏰:09/06/06 17:42 📱:P906i 🆔:paMdzXBk


#178 [我輩は匿名である]

>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200

⏰:09/06/07 23:34 📱:W61SH 🆔:KZnGhAVY


#179 [ちか]
>>178
└→我輩は匿名さま*

アンカーありがとうございます(*^^*)
>>3の感想板にもぜひ来て下さいね♪

⏰:09/06/08 22:40 📱:SH01A 🆔:4nVvTb32


#180 [ちか]
>>177続き

未だその大きなモノを、しかも自分から挿れるとなると恥ずかしさと抵抗がある。

「何?どうかした?」

無表情のその問い掛けに
俺は蚊のように小さな声で呟いた。

「や、やっぱ俺、き…騎乗位とかした事ないし‥///」

「じゃあ止める?」

遮るようにまた問い掛けてくる恭弥の目は、すでに俺の答えを悟ってるみたいだった。

⏰:09/06/08 22:59 📱:SH01A 🆔:4nVvTb32


#181 [ちか]
「…やります‥‥‥」

しばらく間を置いてそう呟くと、恭弥は満足げな笑みを浮かべた。


恭弥を跨いで、ソレと垂直の位置に身体を持っていく。

ヌプ..

「んあ…///ん...」

生々しい音と求めていた快感のせいで溢れた熱っぽい声が部屋を包んだ。

⏰:09/06/09 21:17 📱:SH01A 🆔:KSkyVcB6


#182 [のん]
あげ!

⏰:09/06/18 18:58 📱:W56T 🆔:eu0SC58s


#183 [ちか]
>>182
└→のんさま*

あげてくれてありがとうございますm(__)m★
更新頑張りますっ!

⏰:09/06/18 20:52 📱:P906i 🆔:t7j4xlm6


#184 [ちか]
>>181続き

「ん…ハァ///あ‥‥ん//」


上下にゆっくりと身体を動かすと同時に、快楽の波が押し寄せてくる。


もっと…もっと気持ちよくなりたい。


それだけのために、俺はただただ身体を揺らした。


「クス…ヤらしい顔。」

⏰:09/06/18 20:58 📱:P906i 🆔:t7j4xlm6


#185 [み]
あげます

更新楽しみに待ってます

⏰:09/06/21 11:27 📱:W47T 🆔:7sdyb6.I


#186 [のん]
あげ!
頑張ってください!

⏰:09/06/24 09:40 📱:W56T 🆔:JpgZmAo2


#187 [のぉシ]
Fightイ!

⏰:09/06/24 10:28 📱:W61SH 🆔:OhswiwE6


#188 [高繧ゥ江
待ってますネ(*^ ^*)y

⏰:09/07/01 19:16 📱:W62SH 🆔:bAjdKyy2


#189 [ちか]
長い間の放置すいません;;
今日少し更新出来そうなんですが、今月はかなりのスローペースになりそうです(´;ω;`)
ですが!絶対に絶対に完結させるので、どうか暇な時は読んでやってください

>>185みさま
>>186のんさま
>>187のぉさま
>>188ゅかさま
まとめてしまってすいません…応援してくれてありがとうございます(´;ω;`)

⏰:09/07/06 18:15 📱:P906i 🆔:xjEUiyCM


#190 [ちか]
>>184続き

「…っるさい!!///黙っ…」
『黙ってろよ』
そう言おうとしたその一瞬、
視界が急に一回転して
気がつけば立場は逆になっていた。

「ちょ…ッ恭‥や…っ!?//」

「下から見るのも良いけど、やっぱり僕苛める方が好きみたい。」


そう言って笑う黒い瞳は
悪魔のように意地悪だった

⏰:09/07/06 18:26 📱:P906i 🆔:xjEUiyCM


#191 [ちか]
「やぁっ///きょ、恭弥!!だめ…んあっ///」

「ん、締めすぎ…。もっと力抜いて。‥‥そう。」

「だめだって!!!///
出る…!!!あぁっ//」


快楽の波が全身を巡って、俺は欲を吐き捨てた。


「ん…ハァハァ///あ‥ハァ..」

乱れる呼吸が部屋中に響く。

⏰:09/07/06 19:00 📱:P906i 🆔:xjEUiyCM


#192 [ちか]
「クスクス…早かったね。
そんなに気持ち良かった?」

恭弥は俺の太股を伝う白濁色のソレを指で絡めとると、そう言って舐めた。


「ハァハァ..恭弥が強引だからだろ…っ!!///」

力ない声で抵抗する俺を見て恭弥はクスリと微笑む。
そんな表情も愛しく思えてしまう。


二度目の頂点を迎え、余韻に浸りながらぐったりとしている俺の耳元で恭弥は囁いた。


「まだ寝かさないよ?」



窓からは漆黒の夜を照らす真っ白な満月が美しく見えた。

⏰:09/07/09 21:41 📱:P906i 🆔:oVQig.fk


#193 [ちか]
― めぐるside.―

「んあ…///」

ギシギシとベッドが軋む。

「あ‥も…だめッ///イっちゃう!!//」」

首元にかけられた両腕が
鬱陶しいくらい熱い

「めぐる君…ッ///」

呼ぶな

「愛してる///ンあ…ッ//」

嘘を

「…俺も愛してるよ。」


つかないで

⏰:09/07/10 12:46 📱:P906i 🆔:sMvEJb6E


#194 [ちか]
熱っぽく荒い呼吸が室内の温度をあげる。


「めぐる君、上手すぎ…//私シャワー浴びてくるね。」


そう言って足早にベッドを去る後ろ姿を見つめて、俺はまた一つため息を吐(ツ)く。

.

⏰:09/07/10 12:55 📱:P906i 🆔:sMvEJb6E


#195 [ちか]
真夏の熱帯夜とギンギンと冷えた部屋はまさに俺みたいだ。


触れ合えば
身体は熱くなる


だけど、胸の奥の、
一番大切なところは
どこか冷めていて


自分が分からなくなる

⏰:09/07/10 12:58 📱:P906i 🆔:sMvEJb6E


#196 [ちか]
「“愛してる”…とか、簡単に言うなよ。」


この夜だけで終わりの関係に、“愛”なんて
そんなもの無い。


だけど、一瞬でも孤独を
忘れたくて俺は求める。


偽物の愛を。

⏰:09/07/10 13:07 📱:P906i 🆔:sMvEJb6E


#197 [ちか]
差し込む満月の光が眩しくて、

その光に照らされると、自分の陰が浮き出てしまうから、


逃げるように目をそらす



「なんで俺、こんなんしてるんかなぁ…。」

なぁ、教えてや。
誰か…


見上げた満月は、哀しいくらい美しかった。

⏰:09/07/10 13:11 📱:P906i 🆔:sMvEJb6E


#198 [ちか]
──────────
──────‥


 漆黒の夜に
 弦の音色が響く

 それは美しく、
 そして寂しい


 同じ空の下、
 それぞれが感じるのは
 愛なのか孤独なのか


 いつになれば呪縛から
 解放されるのか‥──


    ‥‥──────
  ──────────

⏰:09/07/13 18:37 📱:P906i 🆔:7MvgArVw


#199 [ちか]
― 冥side.―

「ん゙〜〜‥‥」


肌寒さを覚えた俺は、小さく寝惚けた声をあげて目を覚ました。

(今何時だ‥‥?)

と、薄く開いた目であたりを見回すと、途端に俺の頭に昨日の事がフラッシュバックされた。

そう。
視界にどアップで恭弥の寝顔が飛び込んできたからだ。

⏰:09/07/13 21:16 📱:P906i 🆔:7MvgArVw


#200 [ちか]
肌寒さを感じていたはずの身体は一気に熱を帯びて、俺を赤く染める。


「ん、‥ス― ス―‥」

長い睫毛が白い肌に良く栄(ハ)えて、俺を釘付けにした。

そして俺の目線は形の良い薄い唇へと移る。


ゴクン..


緊張からか、一度唾を飲み込みソレに視線を戻した。

(軽く…軽く‥//)

そう心の中で呟いて顔を近づけた。

⏰:09/07/13 21:49 📱:P906i 🆔:7MvgArVw


#201 [ちか]
ちゅ。


軽く唇を乗せると、柔らかい感触を感じた。

高鳴る鼓動と、きつく瞑る瞳。
全身が熱くなるのが分かった。
その時。


「んふ…ぁ?!!///」

突然忍びこんできた舌。

「んんっ…//‥‥―!!!」

余韻を残して離された唇を辿ると、まだ少し微睡んだ漆黒の瞳があった。


「寝込み襲うなんて悪趣味だね。」

⏰:09/07/14 21:32 📱:P906i 🆔:uUIWmaXs


#202 [ちか]
そう言われて俺の顔は一気に熱が込み上げる。

「や…っ、ちがっ!!!///
これはその…っ、つまり//」

「《つまり》、なに?」

上半身を起こしてて、
ぐいぐいと迫ってくる恭弥

「えっと…その、うわあっ!!?」

ドンッ

「いったぁ〜…(涙)」

迫ってくる恭弥から逃げるように後ろへ後ろへと退いていると、いつの間にかベッドの範囲を越えてしまったようだ。
音を立てて俺は床に叩きつけられた。

⏰:09/07/14 21:44 📱:P906i 🆔:uUIWmaXs


#203 [ちか]
「…何してんの、全く。」

恭弥があんな顔して
近づいてくるからだろ?!//

心の中でそう叫びながらも口に出すことは出来ず、俺は起き上がろうと腰をあげた。






が。

⏰:09/07/14 21:47 📱:P906i 🆔:uUIWmaXs


#204 [ちか]
「いっってぇーッ!!!(泣)」


腰に激痛が走る。
ジンジンとしみるように痛さが伝わってきた。


「腰痛いの?」

ベッドの上から見下ろすように俺を覗く恭弥に、俺は顔を大きく縦に振った。


「情けないなぁ。《アレ》くらいで。クス‥」


《アレくらい》じゃなくて《アレだけすれば》だっつーのっ!!!!!!!(泣)

⏰:09/07/14 21:52 📱:P906i 🆔:uUIWmaXs


#205 [ちか]
ベッドから落ちた衝撃でさらに腰の痛みは悪化したようで、俺はその場を動けずに居た。

が、

「仕方ないなぁ。」

と気だるそうに呟くと、恭弥は軽々と俺を抱き上げた。
いつものお姫様抱っこで。

暴れたくても暴れられない俺は、ただ顔が赤くなっていくのを感じるしかなかった。

⏰:09/07/16 17:36 📱:P906i 🆔:cLbwCS8g


#206 [ちか]
ゆっくりとベッドに降ろされた俺。
俺を気遣ってくれてるのかいつもより丁寧だ。

「…あ、ありがと..」

目も合わせないままそう言うと、恭弥は俺の頭を軽く撫でた。

「どういたしまして。」

その笑顔はすごく優しくて。愛しくて。



いつの間にか俺達の唇は重なろうとしていた。…――

⏰:09/07/16 17:39 📱:P906i 🆔:cLbwCS8g


#207 [ちか]
バァンッ!!!!

「朝やで〜っ!!起きい〜♪」


残り数mmといったところで、愛しかった雰囲気はいとも簡単に掻き消された。

固まる俺と恭弥。
徐々に恭弥の怒りが辺り一帯に広がっていく。

そんなこともお構い無しに相変わらず暢気な声をあげるめぐさん。

「あ、ごめんごめん!!もしかして俺、邪魔してもた?!」

⏰:09/07/16 17:50 📱:P906i 🆔:cLbwCS8g


#208 [ちか]
「もしかしてじゃなくて、邪魔なんだよ、ねぇ?分かってる?」

めぐさんの居る方へ振り返った恭弥の背中からは殺気が漂っていた。

「ごめんて!!そんな怖い顔せんとってや〜(汗)」

苦笑いを浮かべ両手を合わせるめぐさん。
そんな姿に恭弥はあからさまな溜め息を吐いた。

「で、なんの用?」

⏰:09/07/17 13:16 📱:P906i 🆔:kBnPgbV.


#209 [ちか]
「ん?あ〜!!!そうそう!!」

恭弥の問いかけにめぐさんは大きく手を叩いた。


「海!!!海行こーや!!」


満面の笑み。
口元からは八重歯がチラリと見えた。

しかし、今のこの状況。


‥‥‥行けるはずない。

⏰:09/07/17 22:25 📱:P906i 🆔:kBnPgbV.


#210 [ちか]
「悪いけど、冥体調良くないから今日は無理。」

「えっ?!なんで?!どーしたん冥ちゃん!!」


大袈裟なリアクションが独特だ。

「とにかく今日は無理。」

鬱陶しそうにめぐさんに返す恭弥の声を聞きながら、俺は俯いた。


行きたかったなぁ…海。

⏰:09/07/17 23:13 📱:P906i 🆔:kBnPgbV.


#211 [ちか]
「ん〜…じゃあバーベキューしよ、バーベキュー!!」

大きくて通る声が雰囲気をパッと明るくした。

「だから体調が…、」

俺は恭弥の言葉を遮るように服の裾を引っ張った。

「…バーベキューしたい。」

小さく呟いたその声に恭弥は少し戸惑う。

「でも…「大丈夫だよ、さすがに今すぐは無理だけど..」

そう言って少し引きつるように笑った。
そうすると恭弥はいつもみたいに優しく俺の頭を撫でた。

「分かった。」

優しい微笑み。

⏰:09/07/18 09:10 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#212 [ちか]
「よし!じゃあ決まりやな★恭!!朝飯食ったら買い出し行くで!」

「買い出し?」

「おう!」

きょとんとした顔を向ける恭弥。


そして一言。

「バーベキューの準備って僕達でするの?」


あぁ…この人って、こう言う人だったよな‥

⏰:09/07/18 09:14 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#213 [ちか]
「当たり前やろ!!お前、ほんま相変わらずやなぁ」

ケラケラと笑うめぐさんにつられて俺も少し笑う。
本人はなんで笑われてるのか分かってない様子。


「ところで今何時か分かる?」

恭弥にそう聞かれ、めぐさんは自分の腕時計に目をやった。

「え〜っと、12時半過ぎやな!!」

「「‥‥‥‥。」」


あぁ…この人もこう言う人だったよな…。

⏰:09/07/18 09:19 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#214 [ちか]
その後、3人で朝御飯と言うには遅すぎる食事をとった。

「そう言えば凌は?」

「さぁ。どっかでヴァイオリンでも弾いてるんちゃう。」

めぐさんは凌さんの事となると、途端に機嫌を悪くする。

「ふぅん。」

「「「‥‥‥‥‥。」」」

なんだ、この空気!!

この雰囲気を変えるために俺はやたら饒舌(ジョウゼツ)になった。


そんな風に食事を終えた俺達は、暫くしてバーベキューの準備に取り掛かることにした。

⏰:09/07/18 10:20 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#215 [ちか]
「じゃあ俺と恭は買い出し行ってくるから、冥ちゃんは留守番しときぃ。」

「僕も留守番が‥「んじゃあ、行ってきまーす♪」


そうして玄関の扉はバタンと音をたてた。


「恭弥もめぐさんも居ないし暇だなぁ。」

そう思いながらまだ痛む腰を少しさすった。

⏰:09/07/18 10:25 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#216 [ちか]
だだっ広いリビング。

さすがに一人で居るには寂しい。


「…凌さんどこかな?」


そう呟いて俺の足は自然と昨日の庭へ向かっていた。

――――――――――――――――――――――――

⏰:09/07/18 15:09 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#217 [ちか]
― めぐるside.―

「「「 あ。 」」」

玄関を出てすぐ俺達はバッタリ出会ってしまった。


(コイツ、あからさまに嫌な顔しやがって‥‥)

俺は思いっきり凌を睨んだ
その碧色の瞳に俺の姿なんて映ってないと言うのに。

「どこ行くの?」

「ん?ちょっと買い出しにね。」

⏰:09/07/18 20:00 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#218 [ちか]
「買い出し?」

首をかしげながら凌はそう言った。

「バーベキューすんねん!!!バーベキュー!!お前はココで留守番しとけ。」

自分で言うのもなんやけど、かなりの憎たらしい口調。

案の定、凌はムッとした顔を家の中へ入っていった。

⏰:09/07/18 21:01 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#219 [ちか]
「なんやねん、あの目!!
ほんっっまムカつくわ!!!」

吐き捨てるようにそう言って俺はスタスタと歩いていく。

「ちょっ、車は?!?!」

後ろからそう叫ぶ恭の声がする。

あ゙ーっ!!!!
イライラする!!!!


「買い出しっちゅーもんはなぁ!!!歩いてするもんなんじゃ!!!」

※完璧な八つ当たり(笑)

⏰:09/07/18 21:44 📱:P906i 🆔:ohQY5GhA


#220 [ちか]
恭弥もこれには呆れた様子で、でも隣に並んできた。

やけど、なんせこの雰囲気の悪さ。
いや、俺が悪くしたんやけど!!
俺は自業自得のこの沈黙を破れずにいた。


照りつける真夏の太陽が、俺の額を湿らせる。

(この空気どないしよ‥)

考えれば考えるほど解決案が見つからず、汗がタラリと首筋を伝った。その時。

「あのさ、」

沈黙を破る乾いた声。

⏰:09/07/19 08:46 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#221 [ちか]
声のする方へ顔を向けると、夏とは無関係のような真っ白な肌が目に映った。


「なに。」

応答は自分でも驚くほど静かで短いものやった。

セミの声が辺り一面を五月蝿くするが、俺達の間だけはやけに静かな気がする。


「めぐ、凌のこと
     好きでしょ?」

⏰:09/07/19 08:56 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#222 [ちか]
一瞬、この世の何もかもが止まった気がした。

それくらい衝撃的だった。


「…は、はぁ?!何言ってんねん!!お前俺のどこ見てそんなん言って‥‥、」


何故か心臓が早く脈を打った。
何故自分が焦っているのか分からない。
解らない…。

⏰:09/07/19 09:04 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#223 [ちか]
「どこを見てって言うか‥‥、なんとなくだけど。」

「は…はは、なんやそれ。変なこと言うなよ。」

なんで俺、こんなひきつってるんや?
こんなんいつもの俺やったら、笑い飛ばすなりキレるなりするはずやのに‥‥


でも、今俺の中はどっちでもない。
なんなんやろ、この感覚…

⏰:09/07/19 14:11 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#224 [ちか]
「じゃあ、めぐは凌の何が嫌いなの?」

その問いかけの口調は、嫌味や悪気などは全くなくただ素朴だった。

「そ、そりゃ…俺を馬鹿にしてるようなあの目とか‥」

「凌の目付きはもともと悪いよ?」

「あの憎たらしい口調とか…」

「いつも先に喧嘩吹っ掛けるのはめぐでしょ。」

「俺を見下ろす態度‥、」

「めぐの方が身長低いんだから仕方ないよ。」

「‥‥‥‥‥‥。」

⏰:09/07/19 14:29 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#225 [ちか]
ことごとく覆された俺は黙り込んだ。
それに追い討ちをかけるようにして恭弥は言う。

「そもそも、何がキッカケであんな仲悪くなったっけ?」

「それは…っ‥‥‥」

「それは?」

「いや、なんでもない。そんなん忘れたわ。」

「?変なの。」

そう言って恭弥は歩いていく。でも俺は立ち止まってしまった。

『忘れる』わけないから

⏰:09/07/19 16:49 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#226 [ちか]
でも、それは仲が悪くなったキッカケじゃない。

俺が、俺一人がアイツを拒んだ理由‥‥―――
―――――――――――

まだ8つか9つの頃だった。
たまたまパーティーで顔を合わせた俺とアイツ。
親同士の思いつきで急遽皆の前で、俺はピアノ、アイツはヴァイオリンで一つの曲を一緒に演奏することになった。

⏰:09/07/19 17:04 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#227 [ちか]
だけど、演奏中。

俺の親は仕事でパーティーを抜けた。

演奏が終わった後、舞台を降りるとアイツは両親に抱き締められていた。
何度も何度も頭を撫でられて誉められていた。

でも俺は‥‥―――
隣に世話係りが居るだけ。

「なんで俺だけ‥‥っ
なんで‥‥‥っ
俺は一人やねん…!!!!」

そう言って世話係りの服の裾を千切れるくらい強く握った。

嫉妬した。妬んだ。

そんなキッカケで俺はアイツを遠ざけるようになった。

⏰:09/07/19 17:16 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#228 [ちか]
「アホやな…俺。」


そう呟いてまた恭の隣に並んだ。
でもきっと俺はもうアイツとは並んで歩けない。

俺がそうしたから‥――


恭弥はチラリとこっちに目を向けたがすぐにまたそらした。



「また女抱いたんだね。」

―――‥‥え?

⏰:09/07/19 17:36 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#229 [ちか]
「女物の香水の匂いする。」

顔をしかめる恭弥。

「…ふ、はは。昨日俺が出ていく時から分かってたくせにいちいち言うんや?
性悪やな恭も。」

「お前には言われたくない」


お前には、か。


――――――――――――
――――――――――――

⏰:09/07/19 17:47 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#230 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

更新ストップします(´`)
誰か読んでくれてる方
いますか?(;_;`)

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/07/19 17:53 📱:P906i 🆔:4c/3kdjU


#231 [りえ]
読んでます
ずっと見てます
大好きです

⏰:09/07/19 20:11 📱:SH905i 🆔:kuBLqg1c


#232 [ウ]
この小説大好きですイ
毎回楽しみにしてます~。

⏰:09/07/19 22:31 📱:W53T 🆔:1nzXVRTU


#233 [ちか]
>>331
└→りえさま

ずっとですか!!><
大好きなんて言ってもらえて嬉しすぎます(;д;`)
これからも頑張ります!
>>3感想板にもぜひお越しください♪
ありがとうございましたっ

⏰:09/07/20 01:22 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#234 [ちか]
>>233さま

私の携帯がドコモのせいで、名前が分からずすいません(;_;`)
嬉しいお言葉ありがとうございます!!
私にはもったいないくらいです(T_T*)
これからも楽しんでもらえるように頑張ります★
>>3感想板にもぜひ♪
ありがとうございましたっ

⏰:09/07/20 01:23 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#235 [ちか]
― 冥side.―

「い…いた‥‥!!」

方向音痴の俺が、
わりと簡単にココまで来れたのは、やっぱり


♪―‥♪〜‥


この音のおかげかな?

⏰:09/07/20 09:40 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#236 [ちか]
だけど今回は、


「また来たの。」





「あ…ごめんなさい。」


すぐバレちゃった。

⏰:09/07/20 12:35 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#237 [ちか]
凌さんと俺の間には
中途半端な距離。


凌さんの眼がそうさせる。
近寄れないオーラみたいな


だけど、
嫌な感じじゃないんだよな

「そんなトコ居ないでこっち来れば。」

ほら。

⏰:09/07/20 12:49 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#238 [ちか]
凌さんの隣に小さくなって座ってみる。

「なんで体育座り…。」

「え?あ‥や、癖って言うか…あは、あはは‥」

何緊張してんだ俺!!!!//


少し左上を見上げると、ブロンドの髪を靡かせる色白な顔が見える。


つくづく綺麗だよなぁ…

⏰:09/07/20 13:21 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#239 [ちか]
って!!!!!///
俺なに考えてんのっ!!!

相手はあくまでオ・ト・コ!!
これじゃあホモ道まっしぐらじゃんかあああ!!


「はぁ…。」

俺が好きなのはあくまで
恭弥なワケで

「どうかした?」

男ではない。絶対…。

「なんでもないです‥」

⏰:09/07/20 13:26 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#240 [ちか]
「あ、そう。」

「はい…。」

「‥‥‥‥。」

「‥‥‥‥。」

「「‥‥‥‥‥‥‥‥。」」

気まずっ!!!!(汗)
どうすりゃいいんだよ…
なんか話題話題話題‥


「あ、あの…っ」

「何?」

「凌さんは、めぐさんの事、きっ‥嫌いですか?」

⏰:09/07/20 13:44 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#241 [ちか]
「え‥‥‥、」

目を丸くする凌さん。

「あ‥‥‥っと…」

俺の馬鹿ぁぁっ!!!!(泣)
なに聞いてんだよ!!!
よりによって、めぐさんのこと‥‥っ

「ご、ごごめんなさい!!!
別に悪い意味とかじゃなくて!!その…「嫌い。」

「嫌いだよ、アイツのこと」

「え…あ、そう‥ですか…」

なんでかな。
分かってたハズなのに、なんか悲しい…。

⏰:09/07/20 13:51 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#242 [ちか]
「でも…昔はもっと嫌いだった。」

「え?」

俯いていた顔をあげて左を見ると、至って無表情な凌さんが目に映る。

が、その碧眼は何かを物語っていた。

「昨日言っただろ?
俺が虐待を受けて施設に入れられて。今の両親が本当の両親じゃないこと。」

俺は力なく頷いた。

⏰:09/07/20 14:48 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#243 [ちか]
「だから昔っから嫌いだったんだ。我が儘言いたい放題のアイツが。」

いつの間にか俺達を照りつけていた太陽は沈む準備を始めていた。

「俺は言えなかった。
欲しい物とかしたい事とか、我が儘言ったらまた捨てられるんじゃないか、って思うと恐くて言えなかった。」

「凌さん‥‥。」

…そんな哀しい顔しないで

⏰:09/07/20 14:57 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#244 [ちか]
「でも今思えば、羨ましかったんだよ、アイツが。
俺は嫉妬してたんだ。」

凌さんはそう言って無理な笑顔を作った。

「でも今は違う意味で嫌い」

「違う意味?」

「うん。」

小さく頷いて、凌さんはヴァイオリンを撫でた。

⏰:09/07/20 15:03 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#245 [ちか]
「アイツ昨日の夜出ていっただろ?あの後、きっと女と寝てた。」

「えっ?!」

初耳な事と衝撃的な事で、俺は思わず声を大きくした。
そして慌てて口元を手で覆う。
凌さんはそんな俺をチラリと横目で見て、話を続けた。

「いつからだかは分かんないけど、アイツそうやって何かから逃げてんの。」

そう言って表情を曇らせた。

「《何か》って…?」

⏰:09/07/20 15:11 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#246 [ちか]
そう問いかけると、凌さんは静かに顔を横を振った。


「それは分からない。
でもああやって逃げるのは違うと思う。ムカつくし、なんて言うか‥‥
見てて痛い。」

俺はそう言い終えた凌さんに、なかなか声をかけられなかった。


だって…、俺思うんだ。

⏰:09/07/20 15:17 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#247 [ちか]
きっと凌さんは
めぐさんの事嫌いじゃない


嫌いだったら、もっと拒絶してるよ。
見ないようにするはずだよ。

でも凌さんは違う。

多分、解りたいんだ。
凌さんはめぐさんのこと。

もっと近づきたいんだよ…

⏰:09/07/20 15:21 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#248 [ちか]
「仲良くなれたら…良いですね。」


気づけば無意識に
そんなことを呟いていた。

「?べ、別に俺は‥‥っ」

凌さんは何かを言いかけたが、それが最後まで言い終わる前に、

『ただいまぁーっ!!!』

と買い出しから帰ってきためぐさんの声が響いた。

「あ、おかえりなさーい。」

振り返ると、たんまり食料を買い込んだ2人が見えた。

⏰:09/07/20 15:28 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#249 [ちか]
「冥ちゃーん!!準備するでー♪」

少し遠くからめぐさんの明るい声が届く。
俺もそんな明るさにつられて「はーい!」と返事を返し、腰を上げた。
いつの間にか、だいぶ痛みは無くなっていた。

「あ、」

凌さんは動かず座りこんだまま。

「ほら、凌さんも行くんですよっ!!」

俺がそう言って手を差し出すと、
凌さんは少し戸惑いの表情を見せた後、

その手を掴んだ。
――――――――――――
――――――――――――

⏰:09/07/20 15:47 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#250 [ちか]
― 凌side.―

『仲良くなれたら
     良いですね』


まさかそんな風に言われるなんて、思ってもみなかった。


アイツと仲良く
なんて考えてもみなかった


だけど、何だろう?
嫌(イヤ)じゃないこの感覚。

嫌い(キライ)なはずなのに。
─────‥‥
───────────

⏰:09/07/20 16:08 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#251 [ちか]
――――――――――――
――――――――――――
― 冥side.―

「あ〜!!!食った食った♪
もう食われへんわあ!」

太陽はすっかり沈み、無数の星が瞬く下で俺達はバーベキューの終盤を迎えた。

「俺ももう限界‥。」

無理やりと言っていいほどめぐさんに食べさせられた俺は、椅子に座りこみすっかりダウン。


恭弥も凌さんも最初は乗り気じゃなかったけど、なんやかんやで楽しんでたみたい。

⏰:09/07/20 16:11 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#252 [ちか]
恭弥は少し眠そうに肩肘をついて椅子に座っているし、凌さんは相変わらずの無表情を貫いていた。


「ほな、俺ちょっと散歩でもしてくるわ〜♪」


言い放った口調の軽さに対し、俺達3人の反応は重く、そして敏感なものだった。


それを知ってか知らずか、めぐさんは足早に玄関へと向かっていく。

⏰:09/07/20 16:42 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#253 [ちか]
そうと決まったワケじゃないのに、さっきあんな事を聞かされたせいか、めぐさんの目的が散歩とは思えなかった。


嫌な予感がする‥‥


きっと誰もがそう感じていたはずだ。


「し、凌さん‥‥っ
追いかけなくて良いんですか?!」

⏰:09/07/20 16:49 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#254 [ちか]
「俺には関係無い。」

「関係無いって……
でもっ‥‥「うるさい。」

「‥‥‥ッ!!」

凌さんはこれまでにないくらいキツい眼で俺を睨んだあと、立ち上がった。

俺は遠退いていく背中に必死で叫ぶ。

「でもッ…、めぐさんを助けてあげられるのは凌さんだけなんですよ‥‥っ!!!!」

しかし凌さんはなんの反応を示すこともなく、屋内に消えていった‥‥───

⏰:09/07/20 16:55 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#255 [ちか]
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
更新ストップします^p^
もし読んでくれている方
いましたら、ぜひ感想等
聞かせてください★

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4220/
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

⏰:09/07/20 16:58 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#256 [ちか]
― 凌side.―

───‥‥
『めぐさんを助けられるのは凌さんだけなんですよ』
      ‥‥────


部屋に戻ってからも
頭に残るのはその言葉ばっかりだ。

⏰:09/07/20 20:40 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#257 [ちか]
助ける?

俺がアイツを?


そんな事出来るわけ‥──


だけど何故だろう

アイツの去っていく背中が
目に焼き付いて離れない。

⏰:09/07/20 20:52 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#258 [ちか]
俺には関係ない
俺には…


何度もそう言い聞かせた


だいたい俺が行ったところで何になる?


きっと払いのけられて終わる。きっと。

⏰:09/07/20 21:12 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#259 [ちか]
だけど‥‥───

もしかしたら、
なんて思ってしまう自分がいる。


俺達が感じてるモノは
同じなんじゃないかって


逃げたいモノは
同じなんじゃないかって

⏰:09/07/20 21:18 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#260 [ちか]
コンコン.


ドアをノックする軽い音


出てみるとそこには

「恭‥‥」

恭の姿があった。

「なんか用?」

「いや、用ってほどじゃないんだけどね。」

⏰:09/07/20 21:25 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#261 [ちか]
「ふーん。」


恭は大切な人。
だから訪ねにきてくれるのはすごい嬉しい。

でも時々、なんか掴めなくて解らなくなる。

今のこの表情も何考えてんのか解らない。


「凌はさ、突然施設に入れられてどう思った?」

⏰:09/07/20 21:36 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#262 [ちか]
突然の質問に少し困惑する俺。

「なんだよ、いきなり。」

「いや、純粋にどんな気持ちだったのかなって。」

そう言って怪しげに微笑む恭弥。
やっぱり掴めない。


「それは‥‥───」

言いかけて言葉に詰まった。

⏰:09/07/20 21:43 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#263 [ちか]
『居場所』
なんてもの無かった。


周りの人間なんて
所詮は他人事で、

可哀想だの、なんだのって同情はする癖に実際は偽善者の塊だった。


いつも独りで孤独で、


寂しかった‥‥───

⏰:09/07/20 21:47 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#264 [ちか]
俯いていっこうに話そうとしない俺に話を続ける恭弥。




「じゃあめぐはどうだったのかな?」





アイツ‥‥‥?

⏰:09/07/20 22:35 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#265 [ちか]
「大病院の院長を父親に持って、昼も夜も、誕生日も傍に居なくてさ。
代わりに世話係り達とプレゼントばっかり用意されて。
それって、
それってどれだけ寂しかったのかな?」


そこまで言われてハッとした。


『どれだけ寂しかったのかな』……───

⏰:09/07/20 22:42 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#266 [ちか]
「恭‥‥‥」

「ん?」

「ありがとう。」




そう呟くと同時に俺は走り出していた。

⏰:09/07/20 22:45 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#267 [ちか]
あの子の言葉の意味を、
恭の言葉の意味を、


今やっと解った気がした。


行き先なんて分からない。
会えるかどうかなんて
分からない。


だけど、

俺には今、行かなきゃいけないトコロがある───‥‥

⏰:09/07/20 22:53 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#268 [ちか]
`




アイツの居るトコロに。




.

⏰:09/07/20 22:56 📱:P906i 🆔:8LQ1D/eo


#269 [ちか]
`







「全く世話が焼けるよねぇ」

そんな恭弥の呟きが、ひっそりとした廊下に溶けた。
――――――――――――
――――――――――――

⏰:09/07/21 16:05 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#270 [ちか]
― めぐるside.―

散歩とは言ってみたものの、ここらの道には詳しくなく、

「あれここさっきも通ったような‥‥?」




この有り様や。

⏰:09/07/21 16:14 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#271 [ちか]
バーベキューはめっちゃ楽しかった。

冥ちゃんに食わしすぎたか?
なんてちょっと思うけど。

とにかく楽しい時間やった


けど、やっぱり何処か
孤独で仕方なかった。

だから抜け出してしまった

⏰:09/07/21 16:29 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#272 [ちか]
そしてまた無意識に探してる。


一瞬だとしても
その場しのぎだとしても



孤独を忘れさせてくれる奴を。

⏰:09/07/21 16:35 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#273 [ちか]
昨日も、その辺を歩いてたら声をかけられた。

──────‥‥
呼び止められて、

「君、ココらの人?」

「や、大阪から。」

「そうなんだぁ!!私も旅行で来てね〜、でも今彼氏と喧嘩中でさぁ。良かったら遊ばない?」

「‥‥‥ええよ。」
     ‥‥‥────

そんなやり取りをした後の結果は、きっと言わなくても分かるやろ。

⏰:09/07/21 16:44 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#274 [ちか]
「今日はどないしょーかな」

そんなことを呟いてフラフラしていると、


「そこのお前。」



低く聞き取りにくい声で呼び止められた。

⏰:09/07/21 18:54 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#275 [ちか]
「?‥なんですか…ぐふ…ッ!!!」


振り向くと同時に、頬に焼けるような痛みが走った。

そのまま道端に倒れ込む俺。


「い゙…ったぁ〜‥」

見上げると大柄で色黒の男とその後ろに見覚えのある女が立っていた。

⏰:09/07/21 19:05 📱:P906i 🆔:3mc/G7.U


#276 [ちか]
「ちょっ…!!待って、話聞いてよ!!!」

「お前は黙ってろ!!!!」

怒りで興奮状態の男と、それに慌てる昨日の女。

(そう言うことね〜‥)

殴られて赤くなっているであろう頬を撫でながら、俺はそんな2人をまるで他人事のように見ていた。

「てめぇ、人の女に手出しやがってッッ!!!!ぶっ殺してやる!!!!」

そう言って男は座りこんでいた俺の胸ぐらを掴み、拳を高くあげた。

(これ喰らったら、さすがに痛いやろなぁ‥)

なんて暢気な事を考える俺

⏰:09/07/22 18:05 📱:P906i 🆔:GJUAHk0k


#277 [ちか]
どうせなら、いっそのことこのまま‥‥───

そんな考えが頭に過った

「……まで………れよ。」

「あ゙?!」

「気が済むまで殴れよ。あんたの好きなだけ。」

気が付けばそんな事を口にしていた。
男はその言葉に更に逆上し今にも拳を降ろそうとしている。


そうや。
いっそこのまま、俺を殺してくれたら‥‥───
そしたら、孤独からも解放されるかな?

最早俺の目は現実を見ていなかった。

⏰:09/07/22 18:12 📱:P906i 🆔:GJUAHk0k


#278 [ちか]
固く突き上げられた拳が、一気に俺目掛けて勢いよく降りてきた。
俺は固く目を瞑る。
──…これで俺も楽に‥

そう思ったその時。

バキッ..

鈍く生々しい音が鳴った。
しかし俺の頬はいっこうに痛くならない。
ゆっくりと目開けてみると俺に馬乗りになっていたハズの男がすぐ傍に倒れ、唸っていた。

何事か分からず上を見上げるとそこには…──

「し……のぐ‥‥?」

息を切らせる凌の姿があった。

⏰:09/07/22 18:27 📱:P906i 🆔:GJUAHk0k


#279 [ちか]
走ってきたのか、肩で息をする凌。
そんな凌を見てただ呆然とする俺。


「なんで…お前が……、」

『此処にいるのか』と言い終わる前に、手首を掴まれた。

「えっ…ちょ‥‥え?!!?」

状況を把握出来ずパニック状態のまま、俺は凌に引っ張られる形で走り出す。

後ろを見ると、踞(ウズクマ)っている男が遠くなっていくのが見えた。‥‥───

⏰:09/07/23 19:02 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#280 [ちか]
ハァ‥‥ッ‥ハァ‥ハァ‥──

「ちょ、どこまで行くねん!?」

どれくらい走っただろうか
息が上がり、体力にも限界が近づいてきた頃、漸く凌は足を止めた。

凌は俺に背中を向けたまま返事をしない。

「ハァッハァ‥おい、なんとか言え‥や‥──い゙っ!!?」


パン!!!

と斬れの良い音が辺りに響き渡り、俺の頬は滲むように痛みだした。

⏰:09/07/23 19:36 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#281 [ちか]
「何してんだよ!!!!
なんで逃げないわけ?!!
馬鹿か?!!」

振り向いた凌は、今まで見たことがないくらい怒りの表情を露(アラワ)にした。

凌の平手打ちを受け混乱するが、じんじんとする痛みで我に戻る。

「…っな、お前には関係無いやろ!!!!」

お前に‥‥──
お前なんかに‥‥───

「お前なんかに俺の何が分かんねん……っ!!!!」

気が付けばそう叫んでいた

⏰:09/07/23 19:56 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#282 [ちか]
シンと静まりかえる辺り。
しかし凌に驚いたような素振りはない。
それどころか、

「あぁ、分かんないよ。」

そう言って俺を怒りのこもった目で睨み付ける。
俺もその表情に一瞬怯んだが、言い返そうと口を開く。

「それやったら、もう…「分かんないから、分かろうとしてんだよ。」

その声は『怒り』とはまた違う、何とも言えない静けさがあった。

⏰:09/07/23 23:12 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#283 [ちか]
「…う、嘘や!!嘘つくな!!
分かろうとなんか‥─ッ」

分かろうとなんか、
今まで誰一人かてしてくれへんかったやんか。

嘘なんかいらんねん…っ
嘘なんか‥──

込み上がってくる何かが、俺の感情をコントロール出来なくする。

震える身体。
怯えるように耳を塞ぐ俺はまるで子供のようで。
冷めきった心が全てを拒絶する。

しかし突然、身体に温かさを感じた。

⏰:09/07/23 23:20 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#284 [ちか]
「大丈夫。大丈夫だから。」

耳元で鳴るその声と苦しいほどの締め付けは不思議なほど俺を落ち着かせていく。

けど、心の何処かで
まだソレを信じられない俺が居る。

「は、離せや…っ!!!」

みんないつかは離れていく
俺から遠くなっていく

それなら最初から、そんなモノ要らん‥


「もう一人で抱え込むなよ」

⏰:09/07/23 23:31 📱:P906i 🆔:x5f2JRqo


#285 [ちか]
「お前が辛い時は、その辛さ俺も半分背負うから。
だから逃げたりすんなよ。
目そらすなよ‥──
一緒に受け止めてやるから。」


そう言って凌はさらに締め付けを強くした。

───‥『一緒に』…


ポタ‥─ッ

凌の肩に小さな円が滲む。
それは連続的に。
そして零れ落ちるように。

何かの歯止めが取れたかのように俺の瞳(メ)からは大粒の涙が溢れ出した。

⏰:09/07/24 22:52 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#286 [ちか]
そうか。

「お…俺は‥──っ」

俺は、

「ずっと…」

孤独を忘れさせてくれる人じゃなくて、

「ずっと独りで‥──ッ」

一緒に受け止めてくれる人を探してた‥──
       ずっと。

⏰:09/07/24 23:05 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#287 [ちか]
「大丈夫。大丈夫だから。
もう独りじゃないから。」

「うっ…グス‥‥うぅ…っ」


俺をあやすようなその手つきが優しかったから、
余計に涙が止まらなくなって

俺はまるで子供のように泣いた。
声が枯れるまで。


月明かりに照らされて
涙はキラリと光った。

――――――――――――
――――――――――――

⏰:09/07/24 23:10 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#288 [ちか]
― 冥side.―

「あーっ!!!!!
ちょ、恭弥ぁっ!!!!(怒)」

「ん?」

俺は朝から鏡を通して、後ろでコーヒーの入ったティーカップをすする恭弥を睨む。

そんな俺に暢気な返事を返す恭弥。

「見えるトコにはつけんなってあれだけ言ったのに!!//
どーしてくれんの、コレ!!」

"コレ"の正体、それは

「僕のモノって印だもん。
見えるトコじゃないと分かんないでしょ?」

赤い小さな痕。

⏰:09/07/24 23:18 📱:P906i 🆔:CzAz7gTI


#289 [ちか]
「あ〜もうっ…〜。」

そう呟いて、消えるわけないと分かっているのにそこを擦る。

暫くそんなやり取りをした後、俺達はリビングへやって来た。


ついに今日は海へ。
テンションもだんだんと上がってくる。

リビングに着くと、既にめぐさんの姿があった。

「めぐさん早いですね〜っ!って、…えぇ?!!;」

俺はめぐさんの顔を見て思わず驚きの声をあげる。

⏰:09/07/25 17:32 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#290 [ちか]
「どっどーしたんですか、その目っ!!!」

「ん?あ〜これなぁ〜‥、えっと‥」

泣き腫らしたようにパンパンなめぐさんの目。

「なんて言うか〜…」

なかなか真相話そうとしないめぐさんに俺はさらに心配になる。

そんな俺達を見てクスクスと笑う恭弥。
コイツ絶対何か知ってる…
けど、意地悪なコイツがタダで教えてくれるはずない

昨日散歩に行くと言って出ていったきり会ってなかった俺は、良からぬ事ばかり考えて一人焦っていた。

そんな時、突然後ろから聞き覚えのある声がした


「ひっどい顔。」

⏰:09/07/25 17:42 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#291 [ちか]
振り返ると、意地悪そうに笑う凌さんが居た。

「はぁ?!うるさいわっ!!」

あ〜また始まったよ…

「めぐの方が十分うるさい」

あれ‥??

「俺のどこがうるさいねんっ!!」

今凌さん、『めぐ』って呼んだ‥‥?!

⏰:09/07/25 18:32 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#292 [ちか]
「きょ、恭弥、恭弥!!///」

「ん?」

肩を叩き、耳元でコソコソと名前を呼ぶと、短い返事を返した恭弥の恭弥の顔も心なしか綻んで見えた。

「なんか、めぐさんと凌さん仲良くなってない??」

チラリと二人に目をやると、昨日まではあり得なかったような、表情が優しいって言うか、あったかいって言うか‥‥
空気が柔らかい気がする。

「何かあったみたいだね。」

そう言って恭弥はふふっと笑った。

⏰:09/07/25 19:09 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#293 [ちか]
「そう言う馬鹿なトコ。」

「アホはええけど馬鹿はむかつく!!!」


喧嘩してるけど、時々笑った表情が見える。

二人の間に何があったのかは分かんないけど、
確かに二人の溝は無くなっていた。


だって、ホラ。


隣に並んで歩いてる。

⏰:09/07/25 21:56 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#294 [ちか]
「し、凌さん!!!//
めぐさんの事どう思いますか‥?!//」

無意識に俺はそんな問いかけをしていた。
喧嘩中だった二人は同時に俺の方を向く。

「っな!!///いきなり何聞いて…」

大きな瞳をさらに大きくさせてめぐさんは言う。
が、俺の耳には届かない。
俺の耳が求めてるのは、ただ一つ、凌さんの答え。

⏰:09/07/25 22:04 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#295 [ちか]
「…………嫌い、じゃない。」


わざと視線をそらしたまま、凌さんはそう不器用に呟いた。

その瞬間、俺の表情はパッと明るくなった。

嫌いじゃない
って、それって…──
それってさ…──!!

「なにニヤニヤしてんの。」

「ほぇっ?!!//」

凌さんは呆れた風に笑った

⏰:09/07/25 22:12 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#296 [ちか]
恭弥もゆっくりとめぐさんの隣に歩いていくと、ポンと肩を叩いた。

「良かったね、めぐ。」

「っな!!!!俺は別に…っ//」

「クスッ顔真っ赤だよ?」

「〜…っっ!!///うるさいわ!!//」




  嫌い嫌いも好きのうち      ってね。

⏰:09/07/25 22:19 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


#297 [ちか]
――――――――――――――――――――――――
寂しさを
忘れることは出来ないかも知れない。

孤独から
逃げることは出来ないかも知れない。

だけど、

キミが傍に居てくれるなら

受け止めることは

出来る気がするよ。

ありがとう。───‥‥


  ― 第五話 e n d ― 

⏰:09/07/25 22:28 📱:P906i 🆔:aI2ZqENk


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