　　　　　　― 短編箱 ―

｢じゃあ､林檎がいいです｣

少し恥ずかしそうで嬉しそうな彼女
こっちまで
嬉しくさせる笑顔

雨が止んだ｡

あっという間に時がすぎてしまって
彼女はまた深く頭をさげて
にこりと笑って去っていった｡

夢のようだ‥｡
まだあの優しい空間に包まれる

結局
名前も駅のことも彼氏のことも
何ひとつ聞けなかった

ただ一つ得た情報に頼るしかなかった俺

もう一回話したい
もう一回笑顔が見たい

ただそれだけのために‥｡

あの日から行きの電車で
彼女の前に座るのが照れくさい

だけどあれから彼女とは
"知り合い"になったわけで
ぺこりと軽く頭をさげるようになった

そしてまた雨の日のこと

その日はちゃんと傘は持っていた
だけど俺の手が傘を開こうとしない

根拠もないままに
あの日と同じように
ぼーっとしながら彼女を想う

やっぱり雨好きだ
また彼女がやってきた

｢こんにちは｣

にこりとあの笑顔｡
鼓動がじわじわと熱くなる

｢あ‥飴なめる？｣

とにかく話したくて

カバンの中をあさり
飴の袋を取り出した｡
もちろん林檎味

彼女のために買った
俺には似合わない林檎の飴

彼女は少し驚き
そしてすぐにくすっと笑って

｢ありがとう｣

欲しかった笑顔を見せてくれた

｢林檎‥好きなの？｣

飴の袋を指差して
純粋な眼差しで見つめられる

君と話したくて‥
笑顔が見たくて‥なんて
言えたもんじゃない｡

残念ながら
奥手具合は治らない（笑）

俺は一呼吸置いて

｢うん､好き｣

君のことがね､

雨がだんだん弱くなる

傘を広げて彼女はまた去っていく

｢あの‥!｣

雨が止んでうっすらと虹がかかる
滴がきらりと眩しい

もう雨には頼らない

>>106-134

まとまりがないです(´･ω･｀)
全然展開を考えずに
書き始めてしまったので
わけわからんことになってしまいました

結局
名前とかいろいろと謎のままだし←

ほとんどがハッピーエンドなので
今回はもどかしい過程を書いてみました
このあとはご想像におまかせです ^^*

>>2-17
君の､匂い｡

>>18-40
一番じゃなくても

>>41-51
約束はしないよ｡

>>52-67
あおぞら

>>69-99
ぶキよウ

>>106-134
ある雨の日