こちら満腹堂【BL】
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#200 [ひとり]
「俺の学校の保険医は若いお姉さんでしたよ」
「やめてその"へ〜お前の学校の保険医オバチャンだったんだ〜"顔、マヂムカつくから」
「白衣の下のボディーラインがまさにサンクチュアリっつーかなんつーか・・・・何?」
気が付くと、三田さんが何とも言えない顔でこちらを見ていた。
・
:09/12/23 20:28 :F01B :SdPnyTWc
#201 [ひとり]
なんだろう、敢えてその顔に台詞を当てるなら
「は?」
だろうか。または
「え?」
が近いか。
それから体調が優れない身でありながら、満面のスマイル。
・
:09/12/23 20:34 :F01B :SdPnyTWc
#202 [ひとり]
「病人の全開スマイルってなんか凄みありますね」
よくわからないので、取り敢えず礼儀としてちゃかしてみた。でも三田さんは聞こえてるんだかいないんだか。何かを噛み締めるように二三度ゆっくり頷いて口を開いた。
「やっぱ根岸はちゃんと女が好きなんだな」
ファック
・
:09/12/23 20:42 :F01B :SdPnyTWc
#203 [ひとり]
瞬間、頭の中で毒づいた。そういう事かよ。
「やっぱこの前のは只の悪酔いだよな、うん。」
うんとか勝手に納得してんじゃねー
「いやさ、じゃないかと思ったんだけどなんか遂ね、ガチだったらどうしよーとか思っててさぁ」
ガチガチのガチだよ文句あるかよ
「悪りぃ、実はさり気なく避けてた」
さり気なくねんだよバレバレだこの大根が
・
:09/12/23 20:48 :F01B :SdPnyTWc
#204 [ひとり]
「・・・・・・・・・・」
「え?何聞こえんし」
「三田さんです」
「へ?」
「俺が今好きなのは三田さんです。」
言い切ったら、暖房が効き過ぎているはずのこの部屋の温度が、ぐんと下がった気がした。
引き潮の音が聞こえてきそうな程に、三田さんが引いているのがわかる。
・
:09/12/23 20:52 :F01B :SdPnyTWc
#205 [ひとり]
でも今言わなきゃ、一生言えない気がして、俺は病人相手に喋り倒した。
「確かに俺は女が好きだし乳とか尻とか丸んてしてフニャンてするのが好きだし三田さんにそんな要素一っっっつもないのもまして男だって事も分かってますけどでもそれでも好きってのは事実だしリアルだし酒のせいとか悪酔いだとか都合のいい解釈つけてねじ曲げてなかったみたいにされるのはマヂムカつく。てかうぜぇ。」
・
:09/12/23 20:58 :F01B :SdPnyTWc
#206 [ひとり]
あんまり一気に喋ったもんだから若干息が上がった。そのまま立ち上がり
「おじゃましました」
俺は一目散、逃げるように玄関へ向かうと、スニーカーをつっかけるだけつっかけて外へ出た。
途中三田さんが俺を呼ぶガラガラ声がしたけど、聞こえないふり。
・
:09/12/23 21:19 :F01B :SdPnyTWc
#207 [ひとり]
風邪で弱っているのに息なり攻め立てて、挙げ句何もしないで(まぁ体温計は渡したけど)出てきた事に少し罪悪感を感じもしたが、それを差し引いてもやはり許せなかった。
「マヂ餓鬼・・・」
一つ溜め息。白い息が暗闇に溶けた。
携帯を取り出し画面を開くと、着信ありのマーク。予想通り満腹堂の皆からの電話だったので、取り敢えず弘さんに折り返す。
・
:09/12/23 21:29 :F01B :SdPnyTWc
#208 [ひとり]
「もしもし、あ、すんません・・・・・はい・・・・・はい・・・いや、三田さんとこに・・・・・はい、風邪らしくて・・・・・はい、あ、酒は・・・・・・そうすか、わかりました。すいません連絡しなくて・・・・えぇ、はい・・・・・はい、わかりました・・・・・・・あ、迷惑じゃなかったら弘さん、三田さんとこ行ってあげて下さい。結構辛そうだったんで・・・・・・・・・・いや、俺はそっち戻ります。はい・・・・・はい、お願いします、失礼しまーす」
電話を切って、長谷部さんちに向かう。今日はもう、呑みまくってやろう。ゲロ吐くまで呑んでやろう。
そう決意して、腕をぶんと回した。
・
:09/12/23 21:56 :F01B :SdPnyTWc
#209 [ひとり]
【休憩】
おはようございます、ひとりです。
第十一話完結です。今度は素面でちゃんと告白できました根岸ですが、怒って逃げちゃいました。いかんですね、おこちゃまですね。でも彼は今まで受け身の生ぬるい恋愛しかしてこなかったんで、戸惑ってるんです。はい。と、フォローしてみるこすいひとりでした〜
・
:09/12/24 10:49 :F01B :dVoX7R3g
#210 [我輩は匿名である]
おもしろいです★
:09/12/24 14:58 :SH01A :uZWH5u4k
#211 [ホシ]
この小説すきです・ω・ひとりたむがんばってくださいx
:09/12/24 16:50 :Sportio :0xEeDAsw
#212 [我輩は匿名である]
キャラのしゃべり方が銀魂ぽくて何か好きですw
頑張ってください
:09/12/25 16:14 :PC :lmIIc1gs
#213 [ひとり]
>>211ホシさん
好きだなんて、照れるやい(⊃∀//)←
ありがとございます^^総合に感想板もあるんで、是非また遊び来て下さいませ(´ω`)
・
:09/12/26 20:53 :F01B :NBa4Z6xA
#214 [ひとり]
>>212匿名さん
マヂでか←
ひとり銀魂好きですよ^^酢昆布も好きですよ(´∀`)←黙
・
:09/12/26 20:55 :F01B :NBa4Z6xA
#215 [ひとり]
>>210匿名さん
ありがとっす(`∀´)ひとりはその言葉だけで元気百倍です!!僕のかおをお食べよ!!!!です←意味不
・
:09/12/26 20:57 :F01B :NBa4Z6xA
#216 [ひとり]
【第十二話/『はい喜んで』】
年が明けた。
テレビを付ければ各局が『あけましておめでとう』を連呼して、間に挟まれるフジカラーのCMの樹○希林までもが着物に身を包み『正月』な雰囲気を盛り上げている。
でも俺は、ちっともめでたくなんかなかった。
・
:09/12/26 20:58 :F01B :NBa4Z6xA
#217 [ひとり]
「あんたおもち何個?」
「一個でいい」
1月2日。都内にある実家に帰省した俺に、早速根岸家特製雑煮に入れる餅の数を聞いてくる母親。
「一個でいいなんてゆうちゃん風邪でもひいてんの?」
「・・・風邪は今NGワードだから二度と言うなよ」
「意味わかんない、何でよ」
俺を『ゆうちゃん』と呼んでくるのは従兄弟のアキ。
「聞くな、大人の事情だから」
「どうせ禄でもない事情なんでしょ」
「お前なんか浪人しちまえ」
「お生憎様〜もう四月から花の女子大生確定で〜す」
「よし、俺が行ってその合格辞退しますって言って来てやる」
「やめてよバカ」
・
:09/12/26 20:58 :F01B :NBa4Z6xA
#218 [ひとり]
根岸家では毎年、長男である親父のもとに次男三男が家族を連れて新年の挨拶に来る。というのが恒例行事になっている。三家族が一つのテーブル(正確に言えば二つの長いテーブルをくっつけたものなんだが)を囲んで酒を呑み御節をつつく様は圧巻だ。
大抵上座で親父達三兄弟が酒を酌み交わし、母親達は母親達でこれまた固まり去年一年間の労をねぎらい、近況を報告し合ったりする。すると自然に下座に子供達が固まる、という案配だ。
・
:09/12/26 20:59 :F01B :NBa4Z6xA
#219 [ひとり]
従兄弟は全部で七人。その中でも年の近い者同士が自然と固まるのだが、毎年俺の横を陣取るのはアキだ。
「ねぇ、後で初詣行こうよ」
皿の上に御節の具で何やら不細工な顔を作って遊びながらアキが言う。
「嫌だよ寒みぃ」
「そんなん理由になんないよ、断るならもっとマシな理由考えるんだね」
「・・・嫌だよ面倒い」
「よし、行くのね」
「・・・・・・」
コイツは昔からこうと決めるとテコでも動かないという融通の効かなさ、よく言えば芯の強さがある。どうやら初詣は決定事項のようで、俺に断る術はないらしい。
・
:09/12/26 20:59 :F01B :NBa4Z6xA
#220 [ひとり]
それから暫くゴロゴロと食っちゃ寝起きちゃ呑みを繰り返して、嫌々ながらアキに付き合って外へ出たのは午後三時。酒で体が大分温まっていたので助かった。
初詣へ向かう途中もアキはよく笑い、よく喋った。
「お前本当よくしゃべるな」
「だってゆうちゃんと会えるのってお正月くらいじゃん、メールしても返事遅いし」
「でもちゃんと返すだろ」
「結果論でしょ、いくら返してくれても、一週間後じゃ意味ないんだよね」
「なら電話すりゃいい」
「いつも留守電のくせによく言うよ」
「お前のタイミングが悪い」
・
:09/12/26 21:00 :F01B :NBa4Z6xA
#221 [ひとり]
「でもま、許してやるか」
アキが悪ガキがうまい悪戯を思い付いた時のようにニヤリと笑った。
「すげぇ嫌な予感すんだけど」
「そんな事ないんじゃない?何か素敵な事が起こる予感ならしてるけど」
笑みが深まったその顔で、アキは嬉しそうに言った
「私、春からゆうちゃんちの近くに一人暮らしするの!!!!」
俺の嫌な予感は大体いつも当たるんだ。
・
:09/12/26 21:00 :F01B :NBa4Z6xA
#222 [ひとり]
別にアキが嫌いな訳じゃない。寧ろ、俺によく懐いているし、可愛い奴だと思う。ただ一つ問題があるとするならそれは、懐き過ぎているという事だ。
今まで会うのは一年で正月と、夏に帰省すればその時、つまり多くて二回。それならまぁわかる。まぁ甘やかそう。だけどそれが毎日となれば話は別だ。
「お前さ、毎日俺んちこようとか思ってないよな?」
「えー思ってるよ」
「やめて」
「何でよー」
・
:09/12/26 21:01 :F01B :NBa4Z6xA
#223 [ひとり]
「なんでもへったくれもないの!!」
「誰もへったくれてないしー」
「語尾伸ばすな、女子か」
「女子だし」
リアルに毎日うちに来られたらどうしよう。ていうかリアルに来る感じのテンションだよコレ、寧ろこのテンションで毎日来る気だよコイツ。俺は元々根暗な質で、一人の時間や空間をこよなく愛していたりする。俺の平穏。サンクチュアリ。
それがここ最近じゃどっかの小っさいオッサンのせいで心を乱されまくって平穏て何語?みたいな状態なのに、この上アキまで毎日来やがるようになったら・・・・
「今年俺、厄年だっけ」
「え、何?」
・
:09/12/26 21:02 :F01B :NBa4Z6xA
#224 [ひとり]
「何でもない。いいから早く木箱にジャラ銭ぶちこんでアホみたいに上の鐘ジャランジャランさせてうさんくさい紙切れ引き抜いてワーイ凶がでたぁーかなんか言って帰ろうぜ」
「どしたのゆうちゃん、何かいきなりネガティブな感じでひくんだけど」
「引いとけ引いとけ、ついでにおみくじも引いとけよ三百円やるから」
「ゆうちゃん・・・・・・・・・・二百円足んない」
おみくじが予想外にぼったくっていて、俺のテンションは更に急降下を続けたのだった。
・
:09/12/26 21:03 :F01B :NBa4Z6xA
#225 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
今回は根岸家からお届けしました。遂に登場した新キャラのアキ、皆さんよろしくお願いします(何が)まだひとり自身アキのキャラを掴みきれていませんので、読みづらいかもですがそこはぬるい気持ちでスルーよろしく。シュワッチ!!!!
・
:09/12/26 21:06 :F01B :NBa4Z6xA
#226 [我輩は匿名である]
更新されてる
毎日楽しみに覗かさせて頂いてます
根岸頑張れ
ひとりさん頑張れ
:09/12/26 23:01 :N04A :qzgqZ4Ts
#227 [ひとり]
>>226匿名さん
ありがとうです^^
根岸共々がんばります(`∀´)ゞ!!!!よければ総合の掲示板にも遊びきてください〜
・
:09/12/27 12:46 :F01B :Hmc8sEFw
#228 [ひとり]
【第十三話/トイレに貼られている挨拶書き『こんな所まで失礼します』って・・・本当にな!!!!】
風邪をひいた。三十一日。皆が年越しカウントダウンとかしちゃってお祭り騒ぎのその日。俺は一人体温がお祭り騒ぎに急上昇。今年最後の時を、うなされ寝汗かきまくりながら布団の中で越した。年越し蕎麦ならぬ、年越しがゆも食べた。味気ねぇ。
あと、職場の後輩に怒られた。怒られたというか、怒らせた。だけじゃなく、嫌われたかもしれない。
まぁ、俺が悪い。
・
:09/12/27 21:19 :F01B :Hmc8sEFw
#229 [ひとり]
アイツが帰った後、しばらくしてひろむが来た。風邪薬とみかんゼリーを持って。
「お前も随分といいタイミングで風邪ひいたもんだね」
「悪りぃ」
「気にすんな、心の友よ」
「ジャイアン・・・」
俺が弱っている時、ひろむは優しい。映画の時のジャイアンくらい優しい。それは今みたいに単に風邪ひいた時だけじゃなくて、気持ちが弱って折れそうな時も含めて。どっかの誰かさんみたいに、床に伏せっている俺を叱りつけて逃げたりなんか絶対にしない。
・
:09/12/27 21:19 :F01B :Hmc8sEFw
#230 [ひとり]
きっとひろむにはレーダーがついてるんだと思う。いくら隠そうとしても、ひろむは真っ先に気付くし、側にいてくれる。それがわかってるから俺も隠す事はしないし、素直でいられるんだと思う。ひろむにはその素直さが、どうも伝わりきってないようだけど。
「根岸いたんだろ?」
「あぁ、いたね」
実は根岸に『うぜぇ』とか言われて内心ショック受けてた俺。だってあれは本気の『うぜぇ』だった。
・
:09/12/27 21:20 :F01B :Hmc8sEFw
#231 [ひとり]
ひろむはそんな事あったなんてもちろん知らないし、『ひろむの前だと素直な俺です』アピールしたばっかだけど、何故かそこは『は?ショックじゃねぇし』みたいな、ショックがってる自分を否定したい俺がいて。台詞棒読みしたみたいな気持ち悪い口振りになる。
「アイツ滝に酒買って来い言われて出てったのにいい加減帰って来ないからさ、事故ったりしてねぇかって若干焦った」
「そっか」
一方的なメールを送りつけた。あん時は熱の波がピークに来ていて、メール送るだけで精一杯だったんだ。
そこまで気が回らなかった。
:09/12/27 21:21 :F01B :Hmc8sEFw
#232 [ひとり]
「俺がメールで呼び出したんだわ、ごめん」
「みたいね、やっと連絡ついたと思ったら『今三田さんちで風邪みたいだから来てあげて下さい』だもんよ」
近所迷惑も考えないで、性急にチャイムを鳴らしまくっていた根岸。扉一枚隔てた先で、あん時どんな顔してたのかってふと思った。
・
:09/12/27 21:22 :F01B :Hmc8sEFw
#233 [ひとり]
「でもお前も珍しいな、俺じゃなくて、根岸呼ぶってのは」
「・・こないだ、ホラ、髭そられた事であの野郎は俺に借りがあったかんね」
嘘だ。根岸を家に泊めたあの日、確かにチャーハン食ってチャラにしたのに。頭で思っても、口が勝手に嘘を並べ立てる。
「まだんな事言ってんのかよ」
ひろむは『小学生か』って言って笑った。俺も『うっせほっとけ』と言って笑ったけど。
・
:09/12/27 21:23 :F01B :Hmc8sEFw
#234 [ひとり]
考えてみれば、何で根岸を呼んだんだろう?
────
年が明けて、三ヶ日と一日経った今日、俺は気付いた。いや、気付いてはいたんだ。ただその事実を認めたくないから、気付かないふりをしていただけ。
・
:09/12/27 21:25 :F01B :Hmc8sEFw
#235 [ひとり]
ぶっちゃければそれは
『甘え』
根岸がまさか本気で俺に気があるなんて・・・そう否定しながら、心のどっかじゃ俺を好いてるかもしれない根岸なら、風邪っぴきの自分のもとに駆けつけるに違いないって考えがあったんだ。例えそれが大晦日の、夜八時を軽く超えた時分でも。
・
:09/12/27 21:29 :F01B :Hmc8sEFw
#236 [ひとり]
身体が弱ってたからとか、あの時は無意識だったからとか、そんなんは言い訳にしかならない。俺は俺の都合で根岸の気持ちを利用して、その上否定したんだから。
自分で自分に吐き気がする。最低だ。
もう嫌われて、口聞いてくんねぇかもしんないけど。やっぱここは一回ちゃんと謝っとかないと、俺の気が済まない。
「って結局また自分かよ」
自分本位な考えしかできないなんて、つくずくうんざりしてしまう。
「とにかく明後日・・・」
コタツの中、テーブルの上に顎を載せて、一月のシフトが書かれた用紙に目を走らせる。『根岸』の欄、六日の枠内には『遅』と印刷されていた。
・
:09/12/27 21:32 :F01B :Hmc8sEFw
#237 [ひとり]
【休憩】
今晩は、ひとりです。
十三話完結致しました。反省する三田でしたね、うん。悪いことは悪いって認められる人は、人間としての伸びしろがまだあるんだって先生思うよ!!!!アレ?こんな台詞前にどっかで聞いたような・・・・・(゚ω゚)←
・
:09/12/27 21:41 :F01B :Hmc8sEFw
#238 [ひとり]
【第十四話/すいません、お絞りもう一つ下さいって言う女子は世話好き】
一月六日。今年初出勤の満腹堂に到着したのは午後四時半過ぎ。早番のスタッフと新年の挨拶を交わす。
「あけおめことよろー」
こんな程度の軽い感じで。その中には三田さんもいて、俺はなるべくそっちを見ないように意識した。
・
:09/12/28 15:52 :F01B :rkwSdkYA
#239 [ひとり]
気持ちを否定されてショックだった。でも間が空いて冷静になれた・・・・・気でいた。なのに
「やっぱうぜ」
可愛さ余ってなんとやら。視界の隅にチラつく三田さんに苛立つ。その事で、思ってる以上に自分が傷ついてるんだと知らされた。
「俺ってナイーブ」
「何ブツクサ言って、気味悪いよ」
・
:09/12/28 15:52 :F01B :rkwSdkYA
#240 [ひとり]
振り返ると、俺と同じ遅番出勤の津久井がいた。
「あけおめ」
「おめ」
気心の知れてる者同士であればある程、形式ばった挨拶は照れ臭い。
「で、なに根岸って独り言キャラだっけか?」
「いやまぁ、色々とあったんだわ」
・
:09/12/28 15:53 :F01B :rkwSdkYA
#241 [ひとり]
「例のあの子?」
「まぁ」
「まだ避けられてんの?」
「いや、逆」
「逆って・・避けてんの?」
「うん」
「『うん』って、何やってんの君達は」
「何やってんだろうね」
「俺が聞いてるんだけど」
「自分でもよくわかんね」
・
:09/12/28 15:53 :F01B :rkwSdkYA
#242 [ひとり]
「返事まだ貰ってないってこと?」
「貰うもなにも、否定されたし」
「・・・・・何それ」
「俺が酔って言った冗談だって、なかった事みたいにされてた」
「うわ〜・・・んでどしたん」
「んなのもっ回告るに決まってんじゃん」
「なのにまた答えは貰えなかったのかよ」
「うん、俺逃げたしね」
「はぁ?」
・
:09/12/28 15:54 :F01B :rkwSdkYA
#243 [ひとり]
「だってムカつくじゃん、せっかく勇気だして告ったのに、その気持ち否定されるとか」
「一応聞くけどさ、二回目ん時何て告ったん?」
「カッとなってよく覚えてないけど、好きだっつってんだろ的な・・・・あ、あとムカつくとか・・うぜぇって言ったかも」
それを聞いて津久井は顔をしかめた。
「最悪・・・・それ告ったんじゃなくて怒ったんじゃん」
「怒らせたのはあっちだし」
「同じ事だよ」
・
:09/12/28 15:55 :F01B :rkwSdkYA
#244 [ひとり]
「・・・・・・・」
そのまま中途半端に会話が途切れたロッカールームは静まりかえる。俺と津久井が立てる、布の擦れる音だけ。
着替えが済んだ俺が先に出ようとすると、まだボタンを留めてる途中の津久井が口を開いた。
「とにかくさ、いい加減楽になったら?」
「・・ありがと」
「おう」
・
:09/12/28 15:55 :F01B :rkwSdkYA
#245 [ひとり]
そうだ、いい加減楽になりたい。否定する程ありえないってんなら、それはもう絶望的なんだろうが、それでも俺は三田さんの口からちゃんと聞きたいんだ。ちゃんと、振ってほしい。
俺は決心して、厨房で寸胴を掻き回す三田さんの背中に話しかけた。
「三田さん」
「ん?うおっっっ!!!!びっくしたぁー!!!!」
振り向いた先にあったのが俺の顔だったのがいけないらしい。
・
:09/12/28 16:02 :F01B :rkwSdkYA
#246 [ひとり]
「断りなく俺の後ろに立つんじゃねーよ!!」
「ゴルゴ13かよ、とかツッコんだほがいいですか」
「いや・・・いいです」
「そうすか」
一瞬俺達の間に気まずい沈黙が流れたけど、そんなん周りは気付かない。
「実は」
『今日残って下さい』って言おうとしたら
・
:09/12/28 16:08 :F01B :rkwSdkYA
#247 [ひとり]
「根岸悪いけど今日話しあっから残って」
思いがけない一言に俺の言葉は阻まれた。
「あ、はい」
「後ついでにお前コレ変わって!!!」
「そんなドサクサ紛れに言ってもダメですよ、今日三田さんの当番でしょ」
「いいだろケチ!!これ疲れるから嫌いなんだよ、筋肉つきそうだし」
「女子かって」
・
:09/12/28 16:15 :F01B :rkwSdkYA
#248 [ひとり]
「髪に匂いついちゃうし〜」
「・・・・・・・」
「おいぃぃぃ!!!!!ツッコミ面倒くさがんないの!!!!そこは被せるでしょ!?基本でしょ!?!?」
「あ、俺テーブル拭いてきます」
「俺が滑ったちゃんみたあになってんですけどぉぉぉ!!!!ちょっとぉぉぉぉ!!!!!」
とにかく、ようやく答えがもらえそうだ。
・
:09/12/28 16:20 :F01B :rkwSdkYA
#249 [ひとり]
────
───────
今日の仕事も無事終了して、皆それぞれ片付けの目処もたった頃、カウンターで電卓を叩いてた三田さんが言った。
「今日の鍵誰だっけかー」
「確か長谷部さんとノジコさんですよ」
側ではき掃除をしていた津久井が答えると、今度はカウンターに身を乗り出して、キッチンにいる二人にデカめの声をかけた。
「べぇやんとノジコはもう終わりそ?」
すると姿は見えないが奥から二人の『あー』とも『うぃー』ともつかない声が返ってくる。
・
:09/12/29 22:10 :F01B :7w8DO9h.
#250 [ひとり]
「オッケしたら今日俺閉めてくからどっちかよこせー」
「何あんた残んの?」
ここでようやく姿を見せたノジコさん。利き手の人差し指にホルダをひっかけてくるくると鍵を回しながら三田さんの横につけた。
「残るよ」
「何急に?いつも早く帰りてぇとかうっさいやつが」
言いながら探るような目で三田さんを見つめるノジコさんの顔は、クラスの悪ガキを叱る学級委員長のようにみえてちょっと笑える。
・
:09/12/29 22:10 :F01B :7w8DO9h.
#251 [ひとり]
「何か企んでんじゃないの?」
言うことまで洩れなく委員長だ。ここで一つ注意して欲しいのは、ノジコさんがバイトで、三田さんが店長だっていう事。二人の後ろでテーブルを磨いてた俺は隠れて少し笑った。
「別になんも企んでねって」
「怪しい〜」
「怪しくない!!」
「そのムキになる態度が更に怪しい〜」
「しつこい!!」
ノジコさん、面白がってる。
・
:09/12/29 22:11 :F01B :7w8DO9h.
#252 [ひとり]
「怪しくねぇよ、根岸も一緒だし」
正直驚いた。俺はてっきり一人で残るふりするんだって思ってたから。
「そうなん?」
「はい」
「ならまぁ安心か」
安心とか言いながらノジコさん、『なんだつまんねぇの』って顔に書いてありますよ。
・
:09/12/29 22:12 :F01B :7w8DO9h.
#253 [ひとり]
でもまぁ隠す必要がないなら楽でいい。床掃きしながら俺同様二人の会話を聞いてちょっと笑ってた津久井が
「したら俺帰るね」
と道具を片しに行ったので、『お疲れ』と声をかけて見送った。
それから長谷部さんとノジコさんも連れ立って出て行き、店には三田さんと俺の二人きりになった。
・
:09/12/29 22:13 :F01B :7w8DO9h.
#254 [ひとり]
「お前それ、いつまで拭いとく気?」
「え・・・あぁ」
言われて気付くと、俺はテーブルの同じ箇所ばかりをずっと磨いていたらしい。
「とりあえず着替えてらっしゃいよ」
「はい」
言われるままに更衣室に引っ込み、そそくさ着替えを済ませて再びホールに出ると、三田さんはカウンターからテーブルに移動して、煙草をふかしていた。
・
:09/12/29 22:14 :F01B :7w8DO9h.
#255 [ひとり]
出てきた俺を見つけた三田さんは、煙草をくわえたまま指先でテーブルをコツコツ叩いて座れの合図を送ってくる。
「何か飲む?」
「いや、大丈夫です」
「そう」
最後の一口を吸い終わったのか、静かに灰皿で火を押し消すと、改まったように座り直した三田さん。
「根岸」
きた。降られる。
「はい」
・
:09/12/31 00:14 :F01B :VFbZnWIw
#256 [ひとり]
「ごめん!!」
「・・・・・・」
わかっていても、鉛を食わされたように胃のあたりが重たくなって、言葉が出てこない。
「本当、悪かったって思ってる」
「・・・・?」
「うん、お前の・・なんだ、俺を〜・・・す、好き?・・・・そういうのなんか・・つまり〜否定したっつーか」
「はい?」
・
:09/12/31 00:15 :F01B :VFbZnWIw
#257 [ひとり]
なんだ?話が読めない。つまり今の『ごめん』は、三十一日の事を言っているのか?
「俺さ、お前に甘えてたみたいだわ」
「はぁ、そうなんすか」
「うん、だからさ」
いつのどれを言っているんだろう。俺は三田さんに甘えられた覚えなんてない。まぁ、振り回された記憶なら山ほどあるんだけど。
・
:09/12/31 00:18 :F01B :VFbZnWIw
#258 [ひとり]
「だから・・あ、その前に聞いときたいんだけど」
「どの前なんすか今」
「いいから答えろよ、お前俺が好きなんだよな」
「何回言わせるんですか」
「・・・・・・・」
訴えるような三田さんの目に根負けした俺は、舌打ちして答えた。
「好きです」
・
:09/12/31 00:19 :F01B :VFbZnWIw
#259 [ひとり]
「よし、わかった」
「わかってんなら言わせんな、罰ゲームかなんかですかコレ」
「焦んなよ、こっからが大事なんだから」
そこまで言って三田さんは大きく深呼吸をした。その必死な感じが、子供の頃読んだ北風と太陽の絵本にでてくる、北風の挿し絵を連想させる。吸って、吐いて、二回、三回。
・
:09/12/31 00:20 :F01B :VFbZnWIw
#260 [ひとり]
それから決心が着いたらしく、また顔をあげるとこう切り出したんだ。
「根岸は俺で立つの?」
さっき飲み物断ってよかった。もし今何か飲んでたら、確実吹いてたわ。
「なんつーダイレクトな・・・」
「なんだよ男同士なんだから恥ずかしがることねぇだろ」
「そうですけど」
「で、たっちゃうワケ?」
「・・・・・はい」
・
:09/12/31 00:22 :F01B :VFbZnWIw
#261 [ひとり]
「てことは、かいちゃうワケ?」
「そこはいいでしょ別に!!」
「先に確認しとかないと大事でしょうがそういう事は!!!!」
「好きでたつんだからその先は言わなくてもわかるでしょ、男なら」
「なるほどな」
・
:09/12/31 00:22 :F01B :VFbZnWIw
#262 [ひとり]
何が『なるほど』なのか、腕組みをして俯いたまま動かなくなった三田さん。俺は待つしかない。
深呼吸を繰り返していたさっきよりも長い間。
そしてその沈黙を破ったのもやっぱり三田さんだった。
「考えるよ、根岸」
「え?」
「お前が真剣だってわかったから、俺も真剣に考える」
「それって・・」
「うん、今お前とやるとこ想像してみたけど、別に思ったよか抵抗なかったわ」
「そういう沈黙だったのかよ今のは」
・
:09/12/31 00:25 :F01B :VFbZnWIw
#263 [ひとり]
「いや、さわりだけな」
「さわりだけ」
「あ、"触り"じゃなくて、事の流れをサラッとって意味での」
「わかってますよ」
「そっか、よし、まぁつまり、それが言いたかったってことだ」
『考える』。予想もしていなかった言葉に、頭がついていかない。
「テメェ俺がせっかく謝ってその上考えてやるっつってんのに、リアクションが薄すぎなんじゃね?」
・
:09/12/31 00:26 :F01B :VFbZnWIw
#264 [ひとり]
「あ、ちょっと今感激してるんでそういうノリいいっすわ」
「え、何それ聞いてないんですけど、感激させてやったのは俺だろコルァ!!もっと感激を表現しろコルァ!!」
「ちょ、マヂで、シッ」
「"シッ"とかうぜぇぇぇぇ!!!!どうしよ相手が冷静だと余計にヒートアップしちゃうじゃん俺!!しちゃうじゃん!!!!」
・
:09/12/31 00:27 :F01B :VFbZnWIw
#265 [ひとり]
三田さんが何事か叫んでいたけど、凄く遠くに聞こえていて理解できない。
今はっきりしてる事は、俺が予想していた結末は訪れなかったって事。これから先はわからないが。今はこれで十分過ぎるくらい十分で、いっぱいいっぱい。
今晩家に帰ったら一人で、柄にもなく小躍りしてしまいそうだ。
・
:09/12/31 00:29 :F01B :VFbZnWIw
#266 [ひとり]
【休憩】
おはようございます。ひとりです。
第・・・もう何話だかわかんなくなってきました←
三田、ようやく根岸の気持ちに気づけました。遅せぇよ。遅せぇけど、気づけただけではなまるです。
まだまだ続きますので、暇潰しに読んで頂けたらと思います。
てか今日大晦日!!!!
・
:09/12/31 08:43 :F01B :VFbZnWIw
#267 [ホシ]
三田さんだいれくとな感じかわいいですx
:09/12/31 23:43 :Sportio :Kf5q69TM
#268 [ひとり]
>>267ホシさん
おぉホシさん!!またカキあざす^^以前も来て下さいましたよね?三田ダイレクトですよね、てか性格が雑ですwこれからも暇潰しに読んでやって下さい☆よければ総合の感想にも遊びきて下さいまし(´∀`)/
・
:10/01/01 22:38 :F01B :C52atI8E
#269 [ひとり]
【第十五話/さっきのお客さんトイレ長くね?】
三田さんに気持ちが伝わって、一人小躍りした日からもう一月とちょっと経った。
別に二人の間で交換日記を始めたわけでも、目と目があってモジモジするわけでもない。何が変わったかと言われれば、二人で飲みに行く事が増えたとか、後は・・・まぁそんくらいだ。
・
:10/01/01 22:39 :F01B :C52atI8E
#270 [ひとり]
俺からしたらそれだけで上出来。避けられる事も嫌われる事もなく、以前より少しだけ親密になれたんだから、それだけで。
ただ、逆を言えばこの状況は生殺しかもしれない。だって三田さんは『考える』って言ったんだ。嫌いじゃない、でも好きかと聞かれればそれもどうだろうと。だから『考える』と。まぁそういう事だ。
・
:10/01/01 22:40 :F01B :C52atI8E
#271 [ひとり]
「根岸ー今日鍋しようぜ」
『考える』と言ってくれたあの日から、三田さんはかなり積極的に俺を誘ってくる。あ、変な意味じゃなくて、飲みとか飲みとか、まぁ、飲みなんだけど。
「鍋っすか、どっかいい店知ってるんですか三田さん」
仕事中の俺は皿を次々とシンクに沈め、ジャブジャブ洗う手は休めずに聞いた。
「いやバカ言うな、昔っから鍋は家のコタツでって相場が決まってんだろ」
「いつの昔からそんなん決まってたんだよ」
・
:10/01/01 22:40 :F01B :C52atI8E
#272 [ひとり]
「そりゃまだ人間がサルだった頃から・・」
「その頃は残念だけどまだコタツも家もなかったと思いますよ」
「バッ、おっま何もわかってねぇのな、彼らには地球とゆう星そのものが大きな"我が家"だったんだ!」
「そういう話してるんじゃないから今」
「とにかく、そんくらいセオリーって意味さ」
「・・で、家って長谷部さんちでやるんですか?」
・
:10/01/01 22:41 :F01B :C52atI8E
#273 [ひとり]
「いや、お前んちかうちんち」
「あ、・・・・そう」
「うん」
何てことだろう。これってもしや巷で言うところの"おうちデート"じゃなかろうか。
「で、どっちでやる?」
「どっちでもいいけど、材料何もないですよ」
「心配すんな、うちに田舎のばぁちゃんから山ほど野菜届いたんだ」
「あぁ、それで」
・
:10/01/01 22:41 :F01B :C52atI8E
#274 [ひとり]
なんだ、俺の勘違いかよ。つまりおうちデートじゃなくて、処理班て事か。
「うん、ばぁちゃんの野菜うまいから、根岸にも食わせてやろうと思って」
「・・したら三田さんちのほがいいんじゃないですか」
「そうな、うん、したら俺んちで」
言って三田さんは仕事に戻って行った。
三田さんが使うのはいつも反則技ばかりだ。期待させて落として、結局また期待させられて浮かれてる俺。まいったね。
・
:10/01/01 22:42 :F01B :C52atI8E
#275 [ひとり]
────
「お疲れしたー」
「お疲れー」
今日は皆一斉に店じまい。弘さんがシャッターを下ろし鍵を閉めるのを待つ。
「うし、で、皆今日どうするんだ?」
閉めたシャッターをチェックしながら弘さんが言った。
・
:10/01/01 22:42 :F01B :C52atI8E
#276 [ひとり]
「津久井は?」
「俺明日一限から入ってるんで」
「俺暇よ」
「あたしも」
「じゃ俺んち?」
「そうするかー根岸は?」
「いや、俺はちょっと」
「そかぁー三田、お前は来るべ?」
・
:10/01/01 22:43 :F01B :C52atI8E
#277 [ひとり]
弘さんに問い掛けられて、三田さんは一瞬チラッと俺を見た。それから
「今日なんか調子悪りぃから帰るわ」
「また風邪かよ?」
「わかんね、だと不味いからさ」
「だな、んじゃ俺達だけで行きますか」
「あ、俺も途中まで」
そうして弘さん、滝さん、長谷部さん、ノジコさん、それに津久井は、駅の方向に向かって歩き出した。
・
:10/01/01 22:45 :F01B :C52atI8E
#278 [ひとり]
その後ろ姿が豆粒大になるまで二人で見送ってから
「嘘つきめ」
「そりゃそっちでしょ、いつ具合悪くなったんです」
「うるせー、行くぞ」
駅とは反対の方向に向けて歩き出した。
・
:10/01/01 22:49 :F01B :C52atI8E
#279 [ひとり]
三月。暦の上では春かもしれないが、まだまだ俄然寒く、防寒対策が欠かせない。
「俺んちにお前が来るのってさ、チャーハン時以来だよな」
すっかりお馴染みになったポジション。自転車を挟んで右に三田さん、左に俺。
・
:10/01/01 23:01 :F01B :C52atI8E
#280 [ひとり]
「そうでしたかね」
「『そうでしたかね』っておま、白々しいー」
「だって俺的にはチャーハンより告った事のが印象強くて」
「・・あぁ、まぁ、そうね」
横目で盗み観ると、三田さんは視線を宙に泳がせながら、顎髭を指腹でジョリジョリしていた。
・
:10/01/01 23:12 :F01B :C52atI8E
#281 [ひとり]
この横からのアングル、俺的にかなりベストアングルだったりする。何がいいって、鼻の角度がいい。上向き過ぎず下向き過ぎない、程よい傾斜。本人は脂取り紙三枚半はかたいという自称ギッシュな鼻であるが、こうして見る限りそこまでとは思えない。
惚れた弱みか、未だ冬を主張するこの冷え切った夜気のせいか。男相手にこんな表現は似つかわしくないかもしれないが、横顔の三田さんは綺麗だ。
・
:10/01/02 00:23 :F01B :Kzhnaq.I
#282 [ひとり]
「何、鼻糞でもそよいでる?」
俺の熱視線に気付いた三田さんだったが、残念。
「あんたのそういうとこ、なんか残念だよね」
「は?どゆ意味」
「三田さんてさ、女子より男子にモテるタイプだよね」
「え、喧嘩売ってんの?」
・
:10/01/02 00:27 :F01B :Kzhnaq.I
#283 [ひとり]
「そういう喧嘩っぱやい発言とかも、なんか惜しいよね」
「よし、先ずその語尾の『ね』辞めようか、上から物言いな感じが勘に障る」
「だからそうじゃないんだよね」
「次言ったらマヂで俺の昇竜拳が火を噴くかんな」
「可愛いね」
・
:10/01/02 00:31 :F01B :Kzhnaq.I
#284 [ひとり]
「£#&*@!?!?!?」
拳をグーの形にしたまま固まった三田さん。どうしたんだろ俺、これから三田さんちに二人きりだからって舞い上がり過ぎてるのかな。なんか、スイッチ入った感じする。
落ち着け、別に三田さんは俺を好きな訳じゃない。あんま浮かれて調子こいてると、バッサリいかれそうだし。ビークールだ、ビークール、俺。
・
:10/01/02 00:37 :F01B :Kzhnaq.I
#285 [サルエルパンツ]
ヤバい面白すぎです!
ここまで読むのに何時間かかったかな〜?
かなりハマって気がついたらこんな時間です(笑)
ってことで寝ますおやすみなさい…
更新楽しみです
楽しみすぎて寝れないかもです(´_ゝ`)←三田さんの鼻ってこんな感じですか?
:10/01/02 03:23 :F902iS :hTOvq6c6
#286 [ひとり]
>>285サルエルパンツさん
いらっしゃいませ〜初めまして\(^o^)/
そんなにハマって頂けましたか、ひとり調子にのりますょヾ(´∀`)ノヒャヒャヒャ←
寝不足にはご用心☆まぁ正月だしいっかー(どっちだ)よければ総合に感想板ありますので、そっちにも遊びにいらして下さいなぁ〜
・
:10/01/02 11:39 :F01B :Kzhnaq.I
#287 [サルエルパンツ]
:10/01/02 22:58 :F902iS :hTOvq6c6
#288 [ひとり]
───
─────
肉はないからと、近くの精肉店でそれだけ適当に見繕ってから三田さんちへ。
「玉ねぎですか」
「え、お前やったことないの?」
「うん、初めて」
キッチンの狭いスペースで手際よく材料を切っていく三田さん。いつも満腹堂で見る姿とはまた違って新鮮だ。
「マヂでか、チゲ鍋には玉ねぎが鉄板だろ」
・
:10/01/02 23:30 :F01B :Kzhnaq.I
#289 [ひとり]
「知りませんて」
「食えばわかるよ」
なんだろ、やたら機嫌がいいように見えるのは、俺の気のせいかな。
「根岸コンロと皿セットしてきて、そこの上に入ってっから」
「はい」
言われるままに皿と箸、コンロをセットする。
・
:10/01/02 23:31 :F01B :Kzhnaq.I
#290 [ひとり]
「並べた?」
「はい」
「じゃ鍋持ってくぞ」
「どうぞー」
言うと三田さんが鍋をもって登場した。腰をやや落として、摺り足でこちらに向かってくる。
「ちょ、根岸そこ退いて」
「はいはい」
無事、コンロに鍋を着地させると、コタツに潜り込みテレビをつけた。
・
:10/01/02 23:32 :F01B :Kzhnaq.I
#291 [ひとり]
三田さんはバラエティーが好きだ。コンロに着火し野菜が煮込まれるのを待つ間も、フジのなんだか無駄に芸人が出演する番組を選局して観ていた。
俺もそれに付き合う。別にお笑いは好きだけど、どっちか言ったらテレ東とかTBS派だ。
でもそんな事はちっとも重要じゃない。じゃあ何が重要なのかと言われれば、それは三田さんといるこの空間そのものだ。
・
:10/01/02 23:32 :F01B :Kzhnaq.I
#292 [ひとり]
番組の合間に交わす何気ない会話とか、ふきこぼれかけた鍋に二人で慌てたりとか、そういうのが。
好きな人と同じ場所に居て、同じものを観て、同じ鍋をつつく。空間を共有してる。それが重要なんだ。
「あ、うまい」
「だから言ったべ」
あと、予想外に玉ねぎがチゲ鍋にあってるんだって事が発覚した。
・
:10/01/02 23:33 :F01B :Kzhnaq.I
#293 [ひとり]
食って呑んで、深夜二時。そろそろ宴も闌(タケナワ)。灰皿代わりのビールの空き缶に煙草を落とすと、中から小さくジッと火種の消える音が聞こえた。
「したら俺、そろそろ帰りますね」
「え?」
「ほら、もう二時だし、明日もあるし」
「泊まりゃいいのに」
・
:10/01/03 10:09 :F01B :dtBpp/ps
#294 [ひとり]
「いや、酒の勢いで何かやらかしたら三田さんに悪いんで、今日は」
ダウンに袖を通しながら言う俺に、三田さんは少し間を置いて
「・・・・・・そっか」
と短く頷いて玄関まで見送りに来てくれた。
「じゃあ」
「じゃ」
・
:10/01/03 10:10 :F01B :dtBpp/ps
#295 [ひとり]
玄関先で向かい合って、軽く手を挙げる。
「「・・・・・・・・」」
何、この沈黙。帰る俺が先に何か言うべきなのか。
「・・おじゃましました」
「うん、また来い」
「はい」
・
:10/01/03 10:10 :F01B :dtBpp/ps
#296 [ひとり]
ドアを閉める。背中で三田さんが鍵をかけるガチャっという音を聞き届けてから歩き出した。
近くに適当に止めておいたチャリに跨ると、ハンドルもサドルもキンキンに冷え切っていた。寒い。
ダウンのジップを限界まで上げて風の侵入を防ぎながらチャリを漕ぐ。
漕ぎながら、今日の鍋の美味さを思った。三田さんが自分で選んだというコタツ布団の柄を思った。三田さんの笑った顔と、帰り際の何か言いたげな顔の訳を思った。
胸がざわついた。
・
:10/01/03 10:11 :F01B :dtBpp/ps
#297 [ひとり]
【第十六話/つーかゲロゲロ聞こえるんですけど!!!!】
ひろむに誘われた時、咄嗟に調子が悪いってホラ吹いた。あいつには嘘つき呼ばわりされたけど、そんなんお互い様だろ。
ここ一月ちょっと、俺達はちょくちょく飲みに出た。誘うのはいつも俺だ。根岸の野郎、俺に好きとかぬかしておきながら、うんともすんともアクションがない。俺も考えるって言っちまった手前、奴を知るためにちょっと飲んだり食べに行ったり(休日の昼間に会うなんてのは流石にサムいから避けたけど)、二人での時間とか作ってみた訳だ。
・
:10/01/03 19:40 :F01B :dtBpp/ps
#298 [ひとり]
つぅか、絶対おかしいよね?普通逆だよね?なんで告ってきた筈のあいつを、考えてやる的な?完全有利な立場である俺様が?必死こいて誘ってやらなきゃいけないんだ!!!!!
何なのあの子!?!?
そうかと言って、本当はやっぱ俺をからかってるだけなんじゃないかと疑心暗鬼にかかって暫く飲みの誘いもしないでいると、なんか仕事中チラチラ見てくるし、『あれ?』みたいな顔してくるし。視線が痛てんだよテメェで誘ってこいやブォケェェェェ!!!!
・
:10/01/03 19:41 :F01B :dtBpp/ps
#299 [ひとり]
って思ってたところにばぁちゃんから届いた段ボール。それも二箱。中を開ければ、大量に押し込まれた野菜野菜野菜野菜・・・
その時頭に浮かんだのは、訴えるような目をする根岸の顔だった。仕方ない、鍋、誘ってやるか。
前にチラッと話したけど、奴の"来る者拒まず"は、事実らしい。てかそこダメだろ。俺が好きとか言うなら、もちっとがぶりよって来いっつんだよチキンが。
・
:10/01/03 19:41 :F01B :dtBpp/ps
#300 [ひとり]
そんで今日、根岸がうちに来た。男同士、何に気を遣う事もなく、ただ鍋をつついて、テレビを観て、合間にチョコチョコと下らない話をする。
無口でもないが、おしゃべりでもない根岸。俺の話しに笑ったりツッコんだりする根岸。鍋の灰汁を掬ったり、具を皿によそう根岸。酒を美味そうに飲む根岸。
根岸といるのは、楽だ。
・
:10/01/03 19:42 :F01B :dtBpp/ps
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