記憶を売る本屋さん
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⏰:10/03/30 14:13 📱:SO905iCS 🆔:F62lBiEg


#218 [我輩は匿名である]
結局、日曜になるまでまた何も起こらなかった。

5月5日。

約束はなくなったが、要はとりあえず、あの場所に行ってみることにした。

直人もそれが正しいだろうと、黙って景色を見つめる。

もしかしたら、あの場所にいるかもしれない。

要も直人も、少し緊張気味だ。

あと角を2つ曲がってまっすぐ行けば、あの場所に着く。

「あの…」

1つ目の角を曲がる寸前、誰かが要に話し掛けてきた。

⏰:10/03/30 19:38 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#219 [我輩は匿名である]
振り替えると、細身で綺麗な女性が、困った顔で立っている。

「はい?」

「この辺の方ですか?ちょっと道に迷ってしまって…」

マジかよ。直人も困ったように女性を見返す。

「えっと…どこに行きたいんですか?」

「姫崎公園に…」

「あぁ…結構迷っちゃいましたね」

「遠いんですか?」

「歩いて20分ぐらいかかるんです。…説明しにくいしなぁ…」

要は腕を組んで考える。

⏰:10/03/30 19:38 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#220 [我輩は匿名である]
そして、「ちょっとここで待ってて下さいね」と言って走りだした。

晶が来ていないか確認しておく為だ。

しかし、やっぱり晶は来ていなかった。

「…来てないな。じゃあいいか」

要はそう言って、また来た道を戻る。

「すいません、待たせちゃって。…僕が一緒に行きます」

「えっ?でも、何か予定があったんじゃ…」

「いえ、散歩してただけですから。行きましょう」

「ごめんなさい、ありがとうございます」

⏰:10/03/30 19:39 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#221 [我輩は匿名である]
女性は優しい笑顔を見せる。

「…昔でもこんな綺麗な人いるんだな」

女性の顔に、直人はしばし見とれる。

「…はっ!何考えてんだ俺!俺には晶がいるだろ!」

自分で言って、直人はまた考える。

晶と付き合っているのは、直人ではなく要である。

しかし時々、今のように、自分が付き合っているような錯覚に陥る事がある。

「…うーん…俺もヤバくなってきてるかな…?」

いろいろあったりなかったりで、本の怖さを忘れていた。

⏰:10/03/30 19:40 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#222 [我輩は匿名である]
慣れてきたのかもしれないが。

「この辺、結構ごちゃごちゃしてて、分かりにくいんですよね。よく迷う人いるんですよ」

「そうなんですか?良かった、ちょっと安心です」

要と女性は、ただ黙っていくのもつまらないと、仲良く話しながら歩いている。

「私、ここに来たのは初めてなんです。いい町ですね」

「そう…ですね、いい人ばかりだし。何でこの町に?」

「大学の友達の家に遊びに来たんです。地図もらったんですが、どうしてもわからなくて」

女性は恥ずかしそうに笑う。

「車とかで送ってくれる人がいれば楽なんですけどね」

⏰:10/03/30 19:40 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#223 [我輩は匿名である]
「そうですね。父がいれば、送ってくれたんでしょうけど…」

「お仕事ですか?」

「亡くなったんです、戦争で」

女性は隠しもせずに言った。

直人は呆然とする。

よく考えれば、ここは1977年。戦争が終わって22年しか経っていないのだ。

「…なるほどな…」

「すいません、そんなつもりじゃ…」

「あぁ、いいんです。親がいないのには慣れてますから」

「…え…」

⏰:10/03/30 19:41 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#224 [我輩は匿名である]
「私、父も母も死んだので、養護施設で育ったんです。

母が亡くなったのは戦後ですけど」

「養護施設?」

直人も要も、その言葉に目を丸くする。

「俺の友達にも、施設で育った子がいるんです」

「そうなんですか?偶然ですね、なかなかいないのに」

「はい。びっくりしました…」

要も驚いているようだった。

「…学校、楽しいですか?」

要はふと、そんな事を尋ねた。

⏰:10/03/30 19:41 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#225 [我輩は匿名である]
すみません。
>>223
の「22年」は「32年」のミスでした

⏰:10/03/31 10:33 📱:N08A3 🆔:Cnlymdz2


#226 [我輩は匿名である]
「え?えぇ、楽しいですよ。高校も楽しかったけど、私は大学の方が楽しいかな。…どうして?」

「いやぁ…その友達が、学校は楽しくないって言ってたから…」

「…施設で育った負い目で?」

女性に言われて、要は「多分」と答える。

「そんなの、関係ないですよ」

女性は笑う。

「施設で育った子も親の元で育った子も、どっちが良い、なんて事はありません。

私は施設で育った事を友達に言いましたが、今でもその子は友達のままです。

…その子は、自分から壁を作ってるんじゃないかな」

⏰:10/03/31 10:34 📱:N08A3 🆔:Cnlymdz2


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