†horror†
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#401 [輪廻◆j6ceQ96kak]
意外にも返事は早く返ってきた。


『大丈夫。昨日はごめんね』

響歌はこの文章を見て安心し胸をなで下ろす。


続けてメールを打つ。


『私にできる事だったら何でもするのでいつでも言ってくださいね。あと何か仕事があったら紹介してください』

…と、送信。

⏰:11/07/23 00:43 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#402 [輪廻◆j6ceQ96kak]
これまたすぐの返事。


『ありがとね。昨日はウチのせいでホントごめん!

うん、仕事あったらすぐ連絡するね』

彼女が落ち着いた事に安心した途端、突然空腹に襲われた。


響歌『そーいえば昨日からご飯食べてないや…』

お腹が大きく鳴る。


すぐにキッチンに向かいお湯を沸かし、袋から大量にあるカップラーメンを一つ取り出した。

⏰:11/07/23 00:51 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#403 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ラーメンを無我夢中ですすり、気がつくと2個目までいっていた。


食べ終わってベッドで寝転がっていると、携帯電話の着信音が響いた。


慌ててテーブルの上にあるのを取りに行って電話に出る。


響歌『…はい?』


『ザザザザザ……………あ゙あ゙あ゙あ゙……』

ノイズと共に人の唸り声のようなものが聞こえてくる。

⏰:11/07/23 01:02 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#404 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その声に、お昼前だというのに急に薄気味悪く感じて通話をすぐに切った。


着信履歴を見てみると


『非通知』

の文字。


何かのイタズラだと思い携帯電話の電源を切ってその場に放置し、再びベッドに寝転んだ。

⏰:11/07/23 01:06 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#405 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして本を読んだりしていると、次第にあの電話の事は忘れていった。


…………。


響歌『もう17時か…』

窓からは赤い夕日が雲と雲の間から覗き込んでいる。


ベッドから起き上がって携帯電話を取り電源をつけた。


画面が現れてしばらくしてから出た表示に響歌は驚く。


『新着通知:101件』


響歌『は…? なにこれ…』

そのほとんどが着信履歴だった。

⏰:11/07/23 01:16 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#406 [輪廻◆j6ceQ96kak]
順番に見ていくと全てが非通知で、更に留守録が入っている。


どうせさっきのようなイタズラだろうと思った響歌は、留守録を一つも聞く事なく履歴を全て消去した。


メールも来ていたので、受信ボックスを見る。


いわゆるメルマガなどがほとんどであったが、中に件名に『登録完了』と書かれたメールを発見した。

⏰:11/07/23 01:23 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#407 [輪廻◆j6ceQ96kak]
恐る恐るそのメールの中身を見た。


――――――――――
Frm:DEATH net
Sb:登録完了

kyouka murai 様

この度はDEATH netに
登録頂きまして
誠にありがとうございます。

ID:******
PASS:******

お客様のポイント:500P

ポイント追加購入はコチラへ
――――――――――


…と、まるでどこかの出会い系サイトに勝手に登録され送られてくるメールのようだった。

⏰:11/07/23 01:37 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#408 [輪廻◆j6ceQ96kak]
すぐに削除するが、メールは次々に送られてきた。


内容は


『人を殺してスッキリしませんか?』などという意味不明なものだった。


当然身に覚えのない響歌は、メールアドレスを変更する。


アドレス変更の知らせを他の友達や麗奈に送った。


メールが来なくなって安心したのも束の間、それから非通知の電話が何度もかかってきた。

⏰:11/07/23 10:47 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#409 [輪廻◆j6ceQ96kak]
試しに出ると、相変わらずノイズに人の唸り声。


『あ゙あ゙あ゙あ゙……ザザザザザザ……』


響歌『いい加減にしてください! 警察に通報しますよ?』

そう言った途端―


『ザザザザザ……コロス!』

そこで電話はプツっと切れた。

⏰:11/07/23 10:53 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#410 [輪廻◆j6ceQ96kak]
電話の向こうで何者かが最後に発した言葉に『戦慄』という言葉が脳裏をよぎり、恐怖を覚えた。


なんとなく落ち着かなくなり、部屋の鍵が閉まっているのを確認しにいき、他の窓なども閉め切った。


それからあの電話がきてからというもの部屋の中で誰かに見られていたり、背後から誰かにつけられているような錯覚に陥り、ベッドに潜り込んで引きこもる日々が続く。


電話は毎日のように、ひどい時は1日に200件近くの着信があり、ノイローゼになりつつあった。

⏰:11/07/23 11:02 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#411 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>2-64 1話
>>65-261 2話
>>262-361 3話

時系列は現在3話→1話→2話となっておりますが、1話目から見て頂ければ幸いですm(_ _)m

⏰:11/07/23 12:04 📱:T004 🆔:SaD6jMfQ


#412 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数日後―


響歌の携帯に再びDEATH netからのメールがきた。


内容は、メールアドレスの変更が完了したという事を伝えるものだった。


電話も相変わらず鳴る中、響歌はとうとうある疑惑を持ち始める。


響歌『誰かが…私の個人情報を悪用してる…?』

響歌のメールアドレスを変更した内容を伝えた人物は限られている。


その人物ら中に、響歌のメールアドレスを使って悪質なサイトに登録したのかもしれないと考えた。

⏰:11/07/25 01:59 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#413 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その時、一瞬頭の中に一人の人物の顔が浮かんだ。


響歌『…麗奈…さん…?』

首を横にブルブルと振る。


響歌『あ、あり得ないよ。何考えてんの私…』

彼女を疑うなんてどうかしてる、と自分に言い聞かせた所で再びメール着信。


そっと携帯を開くと、そこには信じられない文章が待っていた―

⏰:11/07/25 02:04 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#414 [輪廻◆j6ceQ96kak]
――――――――――
Frm:DEATH net
Sb:おめでとうございます


kyouka murai 様

おめでとうございます。

あなたはこの度、142人目のターゲットに選ばれました。

近々、あなたの元へ会員の皆様がお伺いします。

栄光を称え、ポイントを進呈致します。


進呈ポイント:500P
――――――――――


…目を疑った。

その時、すぐにわかった。


『DEATH net』とは麗奈が言っていた『出会い系殺人ネット』の事であると。

⏰:11/07/25 02:12 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#415 [輪廻◆j6ceQ96kak]
突如、とてつもない恐怖と寒さを肌に感じた響歌は携帯電話の電源を切ってベッドに潜り込んだ。


響歌『なんで…なんで私なの…!』

あまりの恐怖と戦慄に涙がボロボロとこぼれ落ちる。



あの日からよく見ていた夢―


あの夢は、これから起きる出来事を予知していたのだろうか―?


そう考えれば考えるほど、眠りにつくのが怖くなった。


そして一日一日が過ぎるのも怖くなり、一日中部屋に閉じ込もる日々が続く。

⏰:11/07/25 02:20 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#416 [輪廻◆j6ceQ96kak]
携帯電話の電源も一切つけないで放置している。


それからあの夢は毎日見る様になった。


しかし不思議な事に、その夢は見る度に少しづつ内容が変わっていた。


手足を縛られ息ができない状態でいると、暗闇の向こうから少しづつ誰かが近づいてくるのだ。


顔は全く見えない。

男なのか女なのかさえも判別がつかない。


ただゆっくりとその人物は確実に響歌の元へ向かって進んできている。

⏰:11/07/25 02:26 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#417 [輪廻◆j6ceQ96kak]
夢が現実となる日―


運命は交錯する―



とある深夜の2時を過ぎた頃、響歌の部屋のチャイムが鳴らされた。


もうあの夢を見るのが精神的にも限界になった響歌は眠らずに明かりのついた部屋のベッドの上で体育座りをしていた。


深夜に鳴ったチャイムに鳥肌が立ち、嫌な汗が流れる。

⏰:11/07/25 02:33 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#418 [輪廻◆j6ceQ96kak]
すぐに部屋の電気を消して息を殺した。


チャイムが2、3回鳴らされた所でかすかに声がした。


『村井さん、村井さん!』

聞き覚えのある声だ。


響歌『武田さん…?』

響歌の部屋の隣に住む隣人の武田の声である。

⏰:11/07/25 23:23 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#419 [輪廻◆j6ceQ96kak]
再び部屋の電気をつけて玄関へ向かう。


ドアにある覗き穴からそっと外を見ると間違いなく武田の姿があり、安心した響歌はドアを開けた。


武田『遅くにごめんなさいね。あのね、最近村井さんの部屋の前になんか変な人達がいる事が多いから気になって』


響歌『…え?』

一瞬背筋が凍る。

⏰:11/07/25 23:41 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#420 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『夜とかね、ゴミを捨てに行く時に見かけるのよ。おばさんの顔見たらすぐに逃げていくんだけど。何か心当たりとかあったりするの?』


響歌『ありませんありません!』

首を横に思い切り振って否定した。


武田『それで今さっきも見かけたのよ。怪しかったから注意しようとしたんだけど…すぐに逃げてったわ』


響歌『ど、どんな人達だったんですか…?』

怖いが思い切って聞いてみた。

⏰:11/07/25 23:46 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#421 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『男の二人組よお。年齢は一人が30代、もう一人が40代くらいだったわ』

そんな二人と知り合った事もないが、響歌はすぐに彼らの正体を理解した。


響歌『デスネット…会員…』

響歌の独り言のようなその呟きを聞いた武田は首をかしげている。


響歌『わざわざ教えてくれてありがとうございます…』


武田『戸締まりはきちんとしておいた方がいいわよ。今は物騒だからねえ』

と、寒いのか体をぶるぶると震わせながら自分の部屋に帰っていった。

⏰:11/07/25 23:57 📱:T004 🆔:.qVFQkJU


#422 [輪廻◆j6ceQ96kak]
部屋に戻った響歌。


そのまま一睡もする事なく朝を迎えた。


朝の眩しい日差しが室内を照らす。


久しぶりに、ずっと放置していた携帯を拾い上げて電源をつける。


『新着通知:48件』

予想とは違い、以前よりは減っている着信。


電話とメールが半々で来ていた。


電話着信の履歴を見ると、非通知の中に麗奈の名前を発見する。

⏰:11/07/26 23:13 📱:T004 🆔:sv3qIVXs


#423 [輪廻◆j6ceQ96kak]
履歴によると昨日のお昼頃からの着信。


留守録も残されていたので、それを聞いてみる事にした。


『…響歌ちゃん? 麗奈です。ええと…昨日から蓮ちゃんが行方不明になりました。どこか心当たりがあったら教えて欲しいのでこれを聞いたら連絡ください。待ってます』

その留守録を聞き終わった後の響歌は放心状態で、力のなくなった手から携帯電話が床に落ちた。

⏰:11/07/26 23:25 📱:T004 🆔:sv3qIVXs


#424 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数分後―


我に帰り、落とした携帯電話を手に取って麗奈に電話した。


『……もしもし?』

暗い声で彼女が出る。


響歌『麗奈さんすみません! 私…携帯の電源切ってて…』


『気にしないで…。それよりこれから会える?』


響歌『大丈夫です! あの! 蓮が行方不明って…』


『詳しい事は後で話すよ。響歌ちゃんの家の住所教えてくれる? すぐ行くから』

響歌は電話口で住所を言って、もう一度一言だけ謝ってから通話を切った。

⏰:11/07/26 23:36 📱:T004 🆔:sv3qIVXs


#425 [輪廻◆j6ceQ96kak]
携帯電話をテーブルに置いて部屋を見渡すと、あまりの汚さに気がつき片付けを始めた。


脱ぎっぱなしにしてある服などを洗濯機に放り込んでいる時、部屋のチャイムが鳴った。


響歌『は、早いな…』

先ほどの麗奈との通話が終わってから5分もしない間に、もうやって来たのかと驚く。


しかし麗奈しかいないと思った響歌はドアの覗き穴から外を確認する事もなくドアチェーンと鍵を外してドアを開ける―


あの日、麗奈が同居している蓮の家からタクシーでアパートへ帰宅する際、片道1時間近くかかった事を響歌は忘れていた―


ドアを開けた先には、二人組の見知らぬ中年の男が響歌を待ち受けていた―

⏰:11/07/26 23:50 📱:T004 🆔:sv3qIVXs


#426 [みゆ]
続き気になりますっ!


もう結末とか決めてたりはされてるんですか〜??

⏰:11/07/27 19:38 📱:841SH 🆔:apuPnhgg


#427 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>426さん

そう言ってくださると非常にやる気が出て嬉しいです。

結末は…構想はできてますね。

私はどんでん返し系のお話が大好きなので、この作品もできたらやりたいですね(^^)

というか内容がホラー路線からかなりズレちゃってますね(笑)

⏰:11/07/27 23:09 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#428 [輪廻◆j6ceQ96kak]
男性二人は怪しい笑みを浮かべながら響歌の顔を凝視していた。


すぐにドアを閉めようとしたが、男性の一人がとっさにドアノブを向こうから力強く引っ張った。


そのあまりの力に響歌の身体ごと外へと引っ張り出される。


響歌『きゃあっ!』

小さな悲鳴をあげると、もう一人の男性が今度はいやらしい目つきで響歌を見た。

⏰:11/07/27 23:17 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#429 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『かわいいね。こんなかわいい子がターゲットなんて可哀想だなぁ』

そう言って次は同情の目をした。


響歌『な、なんですかあなた達…』

身の危険を感じたらすぐ逃げれるように、階段側の方にゆっくりと歩み寄りながら言った。


『デスネットから連絡あったでしょ? 僕達、事務局から言われて君を殺すように言われてきたの』

そう言う男の顔は決して冗談を言っている表情ではない。

⏰:11/07/27 23:24 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#430 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここいたらやばい。


直感でそう感じた響歌はとっさに後ろを振り向いて階段の方へ走った。


しかし、そこで階段を上がってきた誰かの体とぶつかる。


思わずその場にしりもちをつくようにして倒れた。


ゆっくり上を見上げると、見知らぬ男の姿があった。


『大丈夫?』

20代後半くらいの男はそう言って手を差し出したが、響歌はその男の体の横をすり抜けようとした。

⏰:11/07/27 23:31 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#431 [輪廻◆j6ceQ96kak]
が―


男はその行動を読んでいたかのごとく、一瞬で後ずさりして階段の道を体で塞いだ。


反対側には中年の二人組がいる。


完全に行き場を失った響歌は、ふと右に目をやる。


『武田』

と書かれたプレート。

そう、隣人の武田の部屋が目についたのだ。

⏰:11/07/27 23:36 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#432 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女に助けを求めようと、武田の部屋のインターホンを押した。


本来ならばここで阻もうと男達が血相を変えてこちらへ走ってくると思っていたが、全くそんなそぶりを見せる事なく男達は黙って見ていた。


しばらく待つも、中から武田が出てくる様子はない。


その時、理解した。

この男達は武田が留守だと知っている…と。


『残念だったね。さあ、行こうか』

と、中年二人がゆっくりと近づいてくる。

⏰:11/07/27 23:45 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#433 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もうダメだと思いその場に崩れ落ちた時―


一台のパトカーがアパート前に停車した。


男達は『まさか!』と言わんばかりの表情を見せて逃げようとするも、パトカーから素早く降りてきた二人の警官にあっけなく取り押さえられた。


響歌は安心の溜め息を小さく吐いて立ち上がった。

⏰:11/07/27 23:51 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#434 [輪廻◆j6ceQ96kak]
警官の一人が階段を上って、響歌の元へやってきた。


『大丈夫ですか?』

頼りになりそうなガタイのよう警官に言われ、すぐに『大丈夫』と答えた。


『このアパートの住人と名乗る方から、怪しい男数人がウロウロしていると通報がありましてね…』

それを聞いてすぐに通報したのが武田だとわかった。

⏰:11/07/27 23:54 📱:T004 🆔:WPC53TuY


#435 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そしてその警官は響歌の耳元で小さく呟くように言った。


『命拾いしたな』

その言葉に、ゾクッと顔から背中にかけて冷たい風を感じた。


警官はニヤっと笑うと、階段を降りてパトカーへと乗り込んでいった。


響歌は完全に言葉を失った―

⏰:11/07/29 11:18 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#436 [輪廻◆j6ceQ96kak]
武田『村井さん村井さん!』

ほうきを手にした武田が現れ響歌の名を呼ぶ。


彼女は心配そうな顔で階段を上ってくる。


武田『村井さん大丈夫? 怪我はない?』


響歌『はい、なんとか…』

力なく答えた。


武田『この近くを掃除してたら3人の男がアパートの前でウロウロしてたからね、気になって通報したのよ』

⏰:11/07/29 12:00 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#437 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ありがとうございます…』

彼女に感謝の気持ちを伝え、部屋に戻って麗奈が来るのを待った。



20分後―


チャイムが鳴った。

警戒しつつドアの覗き穴から外を確認。


向こう側には、茶髪で髪の長い麗奈が確かにいた。


安心してドアを開け彼女を中へ招き入れた。

⏰:11/07/29 12:07 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#438 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『コーヒーでいいですか?』


麗奈『…ありがとう』

元気がないようだ。

よく見ると、寝ていないのか目が虚ろになっている。


温かいコーヒーを差し出し、麗奈の前に座った。


響歌『あの…大丈夫ですか?』


麗奈『…………』

返事がない。

ふと見ると、麗奈は下を向いたまま何やらぶつぶつと呟いていた。

⏰:11/07/29 12:13 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#439 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女にただならぬ雰囲気を感じた響歌は、思わずその場から後ずさりした。


同時に麗奈の口にした言葉が聞き取れてしまった。


『コ…ロ…シ…テ…ヤ…ル』

そう言って彼女はゆっくりと立ち上がる。


響歌は視線を麗奈の顔にやった。


麗奈の目は何か別のものを見ているような、まるで獲物を狙う獣のようである。


よく見ると唇も青紫色に変色していた。

⏰:11/07/29 12:19 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#440 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は身動きが取れず固まった状態で彼女を見ていた。


視線を外そうとしても、何かの力が働いているようで彼女の顔から外れない。


響歌『麗奈さん…?』

彼女はその獣のような目を響歌へ向けると、ゆっくり歩み寄ってきた。


『私、殺されるの…?』

そう心の中で問いかける。

⏰:11/07/29 12:25 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#441 [輪廻◆j6ceQ96kak]
目をぎゅっとつぶり『これは夢だ!』と必死に心の中で言い続けた。


『ピンポーン』

チャイムの音で夢から現実に引き戻されたような感覚になりゆっくりと目を開けると、そこにさっきまでの麗奈の姿はなかった。


『響歌ちゃん、ウチ』

玄関の方から声がする。

麗奈のいつもの健康そうな声だ。

⏰:11/07/29 12:34 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#442 [輪廻◆j6ceQ96kak]
急いでドアを開けた響歌は、外で待っていた麗奈に思い切り抱きついた。


麗奈『ど、どうしたの?』

響歌は子供のように泣きながら『麗奈さん』と何度も言い続けた。


なんとか落ち着きを取り戻し、再びコーヒーを麗奈に差し出す。


麗奈『ありがとう。ところで…何かあったの?』


響歌『いえ…なんでもないんです』

先ほどの事を話しても信じてもらえないと思い、口をつぐんで喋らなかった。

⏰:11/07/29 12:45 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#443 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『それより、蓮がいなくなったって本当ですか?』


麗奈『うん。一昨日、朝起きたらいなくて…。蓮ちゃん携帯持ってないから連絡とれない状態なんだよね。結局それから家に戻ってきてないの』


響歌『心当たりとかは…?』


麗奈『わからない…。ウチとお父さんで探しに行ったりもしたんだけどね…』

それを聞いて心配と同時に胸騒ぎがした。

⏰:11/07/29 12:56 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#444 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮とは中学の頃からお互いをよく知り合っていた存在だっただけに他人事とは思えなくなった響歌。


響歌『私も探します!』


麗奈『ありがとう。ウチも蓮ちゃんと親しかった人を当たってみる』

しばらくして、麗奈の携帯電話の着信音が鳴った。


麗奈『蓮ちゃんのお父さんからだ。ちょっと待ってね』

麗奈が電話で話をしている中、響歌は出掛ける準備に取りかかった。

⏰:11/07/29 13:08 📱:T004 🆔:t7jC03ts


#445 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数分して、通話を終えた麗奈がゆっくりと言った。


麗奈『蓮ちゃん…見つかったって』


響歌『ほ、ホントですか?』

嬉しい報告に胸がホッとして体の力が段々抜けていくのがわかった。


麗奈『警察に…あの男に面会に行ってたみたい』


響歌『あの男って…』

安心したのも束の間、すぐに嫌な汗が流れる。

⏰:11/07/30 11:01 📱:T004 🆔:u/Ao7u1E


#446 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『これから、蓮ちゃんのお父さんが警察に迎えに行くって』


響歌『あの! 私も行ってもいいでしょうか?』


麗奈『うん、行こう。じゃあウチの車乗って!』

二人はすぐに車に乗り込んで、蓮が行ったという警察署に向かった。

⏰:11/07/30 11:05 📱:T004 🆔:u/Ao7u1E


#447 [輪廻◆j6ceQ96kak]
1時間近くの距離を走った所で大きな警察署が見えてきた。


近くのコンビニに車を停車し、二人は門の方へ。


そこに蓮とその父親の姿があり、警官に頭を下げている所だった。


麗奈『蓮ちゃん!』

蓮は麗奈の声に反応し、後ろを振り返る。

⏰:11/07/30 11:18 📱:T004 🆔:u/Ao7u1E


#448 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『…なんで村井までいるの?』

麗奈から響歌へ視線を向けて言う。


麗奈『響歌ちゃんはアンタの事をすごい心配してたんだよ? そんな言い方ないんじゃない?』

麗奈が強い口調で言うと、蓮は無言でポケットに手を突っ込んでそっぽを向いた。


『おい蓮、ちゃんとこの子に礼を言うんだぞ。こんなお前でも心配してくれてる人がいるんだから』

父親がそう言って頭をポンと叩くと、蓮は拳をぶるぶると震わせはじめた。

⏰:11/07/30 11:31 📱:T004 🆔:u/Ao7u1E


#449 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『うるせーよ! ホントの親父でもない癖に偉そうに言ってんじゃねーよ!』

突然の蓮の暴言に響歌は唖然とする。


そこには今まで見た事がない蓮の姿があった。


蓮『麗奈、悪いけど車乗せて』

響歌が、とりつく島がないとはこの事だと実感した時だった。

⏰:11/07/30 11:37 📱:T004 🆔:u/Ao7u1E


#450 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈の車に乗り込んだ三人。


運転中はシーンとした沈黙がずっと続く。


麗奈『お、音楽でもかけよっか』

この空気に息苦しくなったのか、麗奈はカセットテープを取り出しステレオにセットした。


陽気な音楽が流れると、今までの深い霧が一気に晴れたようだ。

⏰:11/07/30 11:48 📱:T004 🆔:u/Ao7u1E


#451 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮に聞きたい事が沢山あるが、思うように聞けないでいた。


中学の頃はお互い気さくに話しかけ合ったりしていたのに、今は昔の彼の面影はなかった。


麗奈『響歌ちゃん、今日うちに泊まってかない?』

ミラー越しに響歌の顔を見て問う。


響歌『い、いえ…大丈夫です』

やんわりと断ると、彼女は残念そうな顔を見せて視線を前に戻した。

⏰:11/07/31 19:15 📱:T004 🆔:U7g8LGbo


#452 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌のアパート近くに車は到着し、降りてお礼を言うと車は帰っていった。


部屋に帰ろうとしてふとアパートの方を見ると、数人の警官とパトカーが目に入る。


近くにいた警官を捕まえて響歌は尋ねた。


響歌『あの…何かあったんですか?』

響歌は警官に衝撃的な事実を聞かされる。



『このアパートの管理人が強盗殺人にあったんです。君はここの住人?』

⏰:11/07/31 19:28 📱:T004 🆔:U7g8LGbo


#453 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌は身体が凍りついたまま首を縦にゆっくりと振った。


『とにかく…君はすぐに部屋に戻って戸締まりをするようお願いします。犯人はまだ見つかっておりませんので。十分警戒してください』

固まっていた足を一歩一歩と動かしながら部屋に戻った。


テレビをつけると、丁度その事件が報道されていた。


管理人が殺されたという時間は今日の午後1時頃。


先ほど響歌がアパートに帰ってくる30分前の事だった。

⏰:11/07/31 19:37 📱:T004 🆔:U7g8LGbo


#454 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌の周りで次々と不幸が訪れる人々―


ただの偶然なのだろうか。



響歌はすぐに麗奈に連絡をした。

彼女は驚いた様子で『やっぱりうち泊まっていきなよ』と言うと、響歌は一言…


『お願いします』

と呟くように言った。

⏰:11/07/31 19:44 📱:T004 🆔:U7g8LGbo


#455 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数分後、車のエンジンの音に気づいて外を出る。


麗奈の車である事を確認し、大きな鞄を持って早々と乗り込んだ。


麗奈『大丈夫?』


響歌『はい…お願いします』

車は麗奈と蓮の家へ向けて発車した。

⏰:11/07/31 19:49 📱:T004 🆔:U7g8LGbo


#456 [輪廻◆j6ceQ96kak]
車内では響歌と麗奈の会話に蓮が入ってくる事は一度もなく、彼はただ黙って窓の外を見ているだけだった。



1時間後―


彼女らの家に車が停車すると、エンジン音に気づいたのか玄関から蓮の父親が姿を現した。


『蓮、降りろ』

蓮は大きな舌打ちしてからドアを開ける。

⏰:11/08/01 10:07 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#457 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『なんだよ?』

二人の間になんとも言えない空気が漂う中、父親は思わぬ事を言い始める。


『今さっき警察から電話があった。お前が面会に行った男についてだ…』


蓮『…!!』

蓮の表情が一瞬変わったのを響歌は見逃さなかった。


『剛史を殺した男なんだってな。どうしてそれを今まで黙っていた?』

父親は怒鳴る寸前だ。

⏰:11/08/01 10:18 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#458 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『どうだっていいだろ。テメェは俺らの…』

ここまで言うと、父親は蓮の頬を拳で殴りつけた。


勢いでその場に倒れそうになった瞬間でとっさに胸ぐらを掴む。


麗奈が二人を止めにかかるのを見て響歌も駆け寄る。


麗奈『やめてください! 蓮ちゃんもほら…』

蓮は再び舌打ちをし、家に戻っていった。

⏰:11/08/01 10:26 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#459 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あ、あの…私やっぱり帰った方が…』


麗奈『気にしないで。いつもの事なんだ…』


響歌『あの、蓮に何があったのか聞かせてくれませんか?』

麗奈はコクリと頷いて、家に響歌を招き入れた。


2階の麗奈の部屋に案内されると、お茶とお菓子を出されすぐに話を始めた。

⏰:11/08/01 10:32 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#460 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『蓮ちゃんと初めて会ったのは、剛史と付き合い始めてからだから…もう何年も前かな。その時はこの家じゃなくて田舎の家だったのね』


響歌『田舎の…家…』


麗奈『中学一緒だったなら…蓮ちゃんが中学卒業してから引っ越したのは覚えてる?』


響歌『はい、覚えてます』


麗奈『そしてお兄さんの剛史がウチの学校に転校してきて、付き合ってから挨拶で行った剛史の家で蓮ちゃんと会ったんだよ』

⏰:11/08/01 10:44 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#461 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『そうなんですか…。ちなみにその時はお父さんはいたんでしょうか…?』


麗奈『本当のお父さん? うんいたよ。でもある日、仕事の帰りに事故にあって死んだの。思えばその時からかも…蓮ちゃんが変わっていったのって』


響歌『今のお父さんは…蓮の本当のお父さんじゃないんですよね?』


麗奈『今のお父さんとはお母さんが勤めてた仕事場で出会ったんだよ。どっかの旅館だって聞いたけど…』


旅館―

このキーワードにピンときた響歌。

⏰:11/08/01 10:53 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#462 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『池崎旅館…』


麗奈『…え?』

響歌のつぶやきに反応する麗奈。


響歌『池崎旅館…。あの日、私達がいった場所…』


麗奈『響歌ちゃん?』


響歌『あ、あの! ちなみにお母さんはどうなったんですか?』

身を乗り出して目の色を変えた響歌が尋ねる。

⏰:11/08/01 10:57 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#463 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『剛史と蓮ちゃんのお母さんは…実は今のお父さんと再婚してから…自殺したって…』

麗奈の一言で部屋の中に薄暗い雰囲気が漂い始める。


響歌『麗奈さん…一ついいですか?』


麗奈『ん? どうしたの?』

響歌は眉をしかめて麗奈を見つめる。

⏰:11/08/01 11:01 📱:T004 🆔:bJ4AUl8A


#464 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『麗奈さん達…あの日、もしかしてその旅館に行こうとしてたんじゃないですか?』


麗奈『えっ…』


響歌『あの時、どこに向かうつもりだったんですか?』

麗奈は黙り込んだままで、響歌は話を続ける。


響歌『麗奈さん達は今の蓮のお父さんから旅館の名前を聞いてあの旅館に向かっていたんじゃないですか?』

⏰:11/08/02 14:37 📱:T004 🆔:b3cETUus


#465 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『…すごいね、響歌ちゃん』

そう言って小さなため息をついた。


麗奈『蓮ちゃんの為にも旅館に行って調べてみようって事になったの』


響歌『そこで私と会った訳ですか…』


麗奈『車の中で響歌ちゃんが旅館って言ったから、その時に剛史と顔を見合わせて確信したの。私達が探してる旅館はそこだろうって』

そこまで言うと目に涙が溢れ、やがてこぼれ落ちていった―

⏰:11/08/02 14:45 📱:T004 🆔:b3cETUus


#466 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『麗奈さん…』


麗奈『ごめ…』

かける言葉も見つからなかった。


そのまま夜を迎える―


麗奈『ちょっと見てもらいたいものがあるの』

落ち着きを取り戻した麗奈は棚の引き出しから黒い携帯電話を取り出してきた。

⏰:11/08/02 14:51 📱:T004 🆔:b3cETUus


#467 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『これ剛史の携帯。あの日の一週間前くらいに変な電話とかメールが来たの』


響歌『えっ?』

響歌は目の色を変えた。

自分にも覚えのある出来事だったからだ。


麗奈『前にも言ったけど…多分、出会い系殺人ネットって所からだと思う…』


響歌『ちょっと見せてください』

彼にきた受信メールを読む。

⏰:11/08/02 14:57 📱:T004 🆔:b3cETUus


#468 [輪廻◆j6ceQ96kak]
――――――――――
Frm:DEATH net
Sb:おめでとうございます

tsuyoshi kiritani 様

おめでとうございます。

あなたはこの度、138人目のターゲットに選ばれました。

近々、あなたの元へ会員の皆様がお伺いします。

栄光を称え、ポイントを進呈致します。

進呈ポイント:500P
――――――――――


響歌『これって…』


麗奈『何か知ってるの?』

響歌はすべてを麗奈に話した。

⏰:11/08/02 15:01 📱:T004 🆔:b3cETUus


#469 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『そんな…響歌ちゃんにもこのメールが…』


響歌『その会員が私の所にきた時、隣に住んでる武田さんに通報してもらってなかったら…私どうなっていたんだろうって考えると怖くなります…』


麗奈『そう…だね。…ところでお腹減ったよね? 何か作ってくるから待ってて』

時計を見ると午後19時を過ぎていた。

⏰:11/08/02 15:06 📱:T004 🆔:b3cETUus


#470 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その日の夜食はスパゲティをいただき、麗奈の部屋で寝る事になった。



深夜の2時を回った頃―


響歌はふと目を覚ました。


隣にはスースーと静かに寝息をたてた麗奈の姿。


枕元に置いてあった携帯電話を開くと、一件のメールがきていた。

⏰:11/08/02 15:16 📱:T004 🆔:b3cETUus


#471 [輪廻◆j6ceQ96kak]
――――――――――
Frm:DEATH net
Sb:ペナルティー

kyouka murai 様

DEATH net事務局です。

あなたはこの度、会員に罪を問わせ、自らターゲットを辞退されたという事でペナルティーを与えさせて頂きます。


近々、あなたの元へ事務局の局員らがお伺いします。


現在のポイント 1000P

マイナスポイント -1000

累計ポイント 0P
――――――――――

⏰:11/08/02 15:28 📱:T004 🆔:b3cETUus


#472 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『いやっ!』

その文章を見た響歌はたまらず携帯電話を壁に投げつけた。


その音に麗奈の体が反応して起き上がる。


麗奈『響歌ちゃん…?』


響歌『あ…ご、ごめんなさい…』

すぐに投げた携帯電話を拾いにいった。

⏰:11/08/02 15:31 📱:T004 🆔:b3cETUus


#473 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『何かあったの?』


響歌『い、いえ…なんでもないんです。ちょっと怖い話を見てて』

余計な心配をかけまいと、そうごまかした。


麗奈『そう…ならいいけど。でもほどほどにね』


響歌『…はい』

すぐにメールを削除し、寝て忘れる事にした。

⏰:11/08/02 15:40 📱:T004 🆔:b3cETUus


#474 [輪廻◆j6ceQ96kak]
気がつくと朝を迎えていた。


朝の日差しが照りつける。


麗奈『おはよう。あれからよく寝れた?』


響歌『はい、なんとか…』


麗奈『今、朝ご飯作るね。下でみんなで食べようか』

麗奈に蓮を起こすよう言われ、朝食を作っている間、響歌は麗奈の部屋の隣にある蓮の部屋のドアをノックしていた。

⏰:11/08/02 15:46 📱:T004 🆔:b3cETUus


#475 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『誰?』

返事は意外にも早く返ってきた。

響歌は緊張した面もちでドアの向こうに話しかける。


響歌『あ、蓮? 今から朝ご飯だから麗奈さんが下りてこいって』


蓮『…ああ、すぐ行く』

いつもの声にちょっとだけ安心し、階段を下りてリビングへ向かった。

⏰:11/08/02 15:53 📱:T004 🆔:b3cETUus


#476 [輪廻◆j6ceQ96kak]
キッチン側のテーブルではスーツを着た蓮の父親がコーヒーカップを片手に新聞を読んでいた。


これだけ見れば、なんの変哲もない平和な日常だと思いながら父親に軽く頭を下げ、テレビのある居間のソファーに座る。


やがて二階から蓮が下りてきた。


あれから父親とは話をしていないのだろうか、父親のいるテーブルを避けて響歌のいるソファーに座った。

⏰:11/08/02 16:02 📱:T004 🆔:b3cETUus


#477 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『おはよう村井』


響歌『あ、うん…おはよ』


蓮『昨日何かあったの?』


響歌『え…何かって?』


蓮『何かぶつけてたろ。俺の部屋の壁に響いてたから』


響歌『ごめん…ちょっとね』

そこにいるのは、あの中学時代明るくおちゃらけていた桐谷蓮のはずなのに、なぜか別人のような感じがした。

⏰:11/08/02 16:07 📱:T004 🆔:b3cETUus


#478 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『まあいいや…』


麗奈『蓮ちゃん、響歌ちゃん。ご飯できたよ』


蓮『こっち持ってきて』


響歌『ちょっと蓮…』

麗奈はすぐに二人分の朝食を運んできた。


響『あ、ありがとうございます』

目玉焼きや味噌汁など、いかにも一般的な朝食。


実家の事を少し懐かしく思いながら、朝食に手をつけた。

⏰:11/08/02 16:31 📱:T004 🆔:b3cETUus


#479 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『ウチ、今日午前中からバイトなんだけど響歌ちゃん達はどうする?』


響歌『あ、私は帰ります』


麗奈『今日もとりあえずゆっくりしていったら? まだ強盗犯がうろついてるかもしれないし…』


響歌『いいんでしょうか…』


『いいじゃないか。もう少しいなさいよ』

恐縮する響歌に、奥のテーブルに座っている蓮の父親が笑いながら言った。

⏰:11/08/05 12:08 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#480 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて…』


『女の子が多いと蓮の奴も嬉しいだろう』

まるで蓮を挑発するかのような発言に、一瞬ヒヤっとした響歌だったが、蓮は黙ってご飯を口にしていた。


もはや反発する気もなかったのだろうか。


『じゃあ行ってくる。村井さんだったかな? こんな所でもよかったらいつでも遊びにきていいぞ』

にこやかにそう言って家を後にしていった。

⏰:11/08/05 12:09 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#481 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『村井さ…』


響歌『ん? なに?』


蓮『兄ちゃんが死んだ時って村井もそこにいたんだよな?』


響歌『…うん。あの光景、今でも忘れられない…』


蓮『麗奈から聞いたけど、村井の親友も殺されたんだよな?』

響歌はコクリと頷いた。

⏰:11/08/05 12:10 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#482 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『その親友ってもしかして井本のこと?』


響歌『…ナナ…?』

数年ぶりにその名前を聞く事になった。


蓮『ふと気になっただけ。今でも連絡とか取ってんの?』


響歌『ナナ…か。高校も別だったし、メールとかはちょくちょくしてたけど、いきなり連絡取れなくなっちゃったんだよね』


蓮『そっか。元気にしてんのかね』

この感覚に当時の懐かしさを覚えた。

これこそが響歌の知っているいつもの蓮だと。

⏰:11/08/05 12:11 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#483 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『私、ナナに未だにちょっとだけ許せない事があるんだよね』


蓮『…ん?』


響歌『デスカメラだよ。もしかしたら私の実家の個人情報が売られたりしてるかもしれないんだよね』


蓮『それと井本と何の関係があんの?』

響歌は、中学時代に話す事ができなかった事をすべて話した。

⏰:11/08/05 12:11 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#484 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮はかなり驚いた様子だった。


蓮『人の住所勝手に使うとか、確かに許せないな』


響歌『まあ、別に何か起こったりはしてないからいいんだけど…』


蓮『闇市場だっけ…まだそのサイトあんのかな』


響歌『ううん…わからないけど、あるんじゃない?』

その時、麗奈が二人の間に割り込んだ。

⏰:11/08/05 12:13 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#485 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『響歌ちゃん。今の話ってホントなの?』


響歌『はい、まあ…』

なぜか嫌な予感がした。


麗奈『その子、最低じゃない? 警察には言ったの?』


響歌『言ってませんけど…』


麗奈『そういうのは被害届を出すべきなんだよ。親友といってもやってる事は犯罪じゃない?』

彼女は正論だが、当時の響歌には個人情報売買が行われているとは知らなかった為、何もできなかったのだ。

⏰:11/08/05 12:14 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#486 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『麗奈、身乗り出しすぎ。ガキじゃないんだから』


麗奈『いや、ウチ汚い事するやつ大嫌いだからさ…。なんかごめんね響歌ちゃん』

そう言って苦笑いしながら階段を上がっていった。


蓮『なあ村井。井本に電話してみね?』


響歌『…ナナに?』

彼の予想外の提案に一瞬戸惑う。


蓮『あいつがデスカメラで中学ん時の先生を撮ったって言ってたよな? で、結局その先生も事故って死んだじゃん』

⏰:11/08/05 12:28 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#487 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『真島先生…』


蓮『引っ越す前の日にあいつから家と携帯の番号教えてもらってたから、かけてみる?』


響歌『…出るかな』

蓮はすぐに棚から紙と、テーブルに置かれた電話の子機を手に取る。


090…

蓮は紙に書かれた番号を見ながらボタンを押している中、響歌は心臓が高鳴っていた。

⏰:11/08/05 12:43 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#488 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『……あれ?』


響歌『ど、どうしたの? 繋がったの?』


蓮『この番号は現在使われてないってさ…』


響歌『携帯変えたのかもね…。ねえ、もうやめない?』

止めようとするも、蓮はすでに家の電話番号を押し始めていた。


蓮『………あ、もしもし?』

響歌の期待を裏切るかのように七瀬の家へ繋がった。

⏰:11/08/05 12:50 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#489 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『えーと……井本さんのお宅さんですか?』

繋がった途端、突然緊張しだす蓮。


慣れていないのか、敬語が不自然だった。


蓮『七瀬さんはいらっしゃいますか? 俺、中学の時同級生だった桐谷といいます』

それから通話は数分続いた。


電話の向こうから聞こえる声は、低い男性のもので響歌にも聞き覚えのある声。

⏰:11/08/05 13:05 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#490 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮は電話に向かって頭を下げながらハイハイ言って頷いている。


そして最後に『失礼しました』と言って通話を切った。


通話を終えた蓮から思わぬ言葉が飛び出す。


蓮『井本、高校中退してから家出ていったんだってさ』


響歌『え? な、なんでなの?』


蓮『わかんね…それ以上は教えてくれなかった。それから一度も連絡来てないってさ』

かつての親友に対して不安を抱いた。

⏰:11/08/05 13:14 📱:T004 🆔:tlZw1/iQ


#491 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『村井、どうかした?』


響歌『ナナ、もしかしたら…』


蓮『…?』


響歌『ナナは…もう死んでるかもしれない…』


蓮『…へっ?』

響歌の予想外の発言に蓮は拍子抜けしたような表情を見せる。

⏰:11/08/07 00:12 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#492 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あのカメラ…写された人だけじゃなくて写した本人にもなんらかの不幸がくる…そんな感じがするんだよね』


蓮『それ本気で言ってんの?』


響歌『だって蓮のお兄さんだってあの時…』


蓮『それは…なんていうか…』

言葉に詰まる蓮。


響歌『それにお兄さんの携帯にきたメールも…』


蓮『あんなのふざけたイタズラに決まってるだろ。俺は信じないね』

そう自信満々に言い放った。

⏰:11/08/07 00:19 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#493 [輪廻◆j6ceQ96kak]
一方、響歌は納得できない表情をしていた。


響歌『…蓮には言っておいた方がいいかな』

そう言ってポケットから携帯電話を取り出すと、メール画面を蓮につきつけた。


蓮『な、なんだよこれ…』


響歌『私にもきたの。昨日の夜…』


蓮『い、イタズラじゃねーの?』

まだ言うかと思わんばかりの往生際の悪さに我慢できなくなった響歌は昨日身に起きた体験も話した。

⏰:11/08/07 00:26 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#494 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その話を聞き終えた蓮は黙ってしまった。


響歌『デスカメラとデスネット…蓮のお兄さんに起きた事はこの二つがものすごく関係してると思う』


蓮『で、でも…デスネットなんてサイト、兄ちゃんが入会してるなんて聞いた事ないよ』


響歌『私だってそんなのに入った覚えはないよ。でもこうしてメールは来てるんだよ!』

少し強気に言うと、蓮はなぜか小さく微笑んだ。

⏰:11/08/07 00:32 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#495 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『やっぱお前変わってないや』


響歌『なんでこんな時に笑ってるの?』


蓮『お前だってなんだよその真剣な顔。ガラじゃねえって』


響歌『なっ…』


蓮『よし、肩の力抜けたとこでお前の所に来るっていうデスネットの局員について調べようぜ』

一番辛いのは彼のはずなのに、なぜこんな呑気に笑っていられるのか?


いや、それが響歌の知っている桐谷蓮だったからだ。

⏰:11/08/07 00:39 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#496 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『じゃあお前の携帯で調べてくんない?』


響歌『…私が…?』


蓮『俺、携帯もパソコンもないし』

響歌は小さくため息をついてから、ネットへ繋いだ。


『デスネット 局員』

検索。


あっという間にページが何個か現れた。


一番上から順にページを閲覧していく。

⏰:11/08/07 00:46 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#497 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とある掲示板が表示され、スクロールしていく。


――――――――――
1:名無しさん

登録した覚えのないデスネットというサイトからポイントが0になりました、みたいな感じで局員がお伺いしますってメールがきたんですけどこれって本当にきたりするんですか?

親はイタズラだろうと言いましたが、内心怖いです…。
――――――――――


この書き込みをした者と同じく内心ドキっとなった響歌はゆっくりとページをスクロールした。

⏰:11/08/07 01:02 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#498 [輪廻◆j6ceQ96kak]
――――――――――
2:名無しさん

当然だけどメールアドレスだけで住所までは特定できない。

放っておけば大丈夫。

しつこく来るようならアドレス変更。

架空請求みたいなもんだよ。
――――――――――
3:名無しさん

↑デスネットは別だよ。

主は闇サイトで闇商品買ったりした事ある?

買う時に名前とか住所書く所あるから、そこから情報が色んな所に漏れるよ。
――――――――――


響歌『これだ…』

画面に向かって一人で頷いた。

⏰:11/08/07 01:11 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#499 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『なんかわかった?』


響歌『ナナがデスカメラ買った時に私の名前とか住所使ってた…。だから今になってこのメールが…』


蓮『え…でもおかしくね? お前って中学の時、井本が携帯買ってから連絡先は交換してなかったんだよな? ならなんでアドレスとか番号とかわかんの?』

蓮の言うとおりだった。


それだけが不可解だった。

⏰:11/08/07 01:18 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#500 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな中、一人の男の顔が思い浮かぶ。


響歌『あの男…』


蓮『…どした?』


響歌『私が山の中で会ったあの男なら…』


蓮『…!!』

響歌の中で何かが繋がりはじめていた―


すべてを知る為には、響歌はもう一度あの男に会わなければならないのかもしれない―


その日の夜、またしてもあの夢を見た。


身動きができない状態。


そして暗闇から段々と近づいてくる見えない人物。


それは響歌のすぐ目の前まで迫っていた―


第4話 共鳴なる戦慄【完】

⏰:11/08/07 01:27 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


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