漆黒の夜に君と。V[BL]
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#401 [ちか]
*おまけの話。
「めえーぐうーるう〜っ」
「うわ、なんやねん、顔パンダやで?!もう…、はいティッシュ。」
ここは
大阪、椿邸。
「ティッシュじゃなくてハンカチがいいー!!」
「はいはい…」
一番上の姉貴が東京から急に帰ってきたかと思えば、この有り様。
正直、訳が分からへん。
:11/11/09 13:45
:Android
:/zp5pGog
#402 [ちか]
俺の把握してる状況といえば、帰ってくる直前に携帯へ来た、一本の電話の内容くらいで。
それも…
『もしもし、めぐる?あたし。
陽平と離婚した。
他に好きな人が出来たの。あ、パパにはもう言ってあるから大丈夫。もうすぐ家着くから、あんたは家でお姉様を待ちなさい。じゃあね。』
唐突というか、なんというか。
冷静な声やったから心配こそしてなかったものの、帰ってくるなり泣き出す長女、楓(29)。
「なんやねんな、急にぃ。」
事情が掴めずの弟こと俺、めぐる。
:11/11/09 13:54
:Android
:/zp5pGog
#403 [ちか]
「だってぇ〜…グスッ、うっ…」
東京での生活がすっかり長い姉は、いつの間にか関西弁も抜け綺麗な標準語。
そんな姉の頭を撫でながら問いかける。
昔から、姉二人に甘やかされて育った分、そんな姉達の傷心を癒すのも俺の役割だった。
しかし、まさかこの歳になってもこうする日が来るとは…
女医としての姉しか知らない人間から見たら、とんだギャップだろう。
普段完璧キャリアウーマン気質な姉が泣き顔見せるのなんて、弟の俺くらいなのだから。
すっかり目が真っ赤(+真っ黒)な姉に、俺は言った。
「だいたい、好きな人出来て別れたんやろー?なんで姉貴が泣くねん。泣きたいのは陽さんの方ちゃうん?」
陽さんこと陽平さんは姉の旦那(元になるのか)で、親父が院長をつとめる病院の医者だったりする。
可哀想に、陽さん…
:11/11/09 14:02
:Android
:/zp5pGog
#404 [ちか]
そんな何も知らない無神経な俺の言葉に、姉は捨て犬のような目をして、俺を見つめた。
「でも陽平以上の人なんて居ないもん…」
29にもなって、語尾が“もん”て…
半ば呆れつつ、俺は口調を優しめに改める。
「じゃあなんでそんな浮気みたいなんしたん?」
「だって…」
ゴニョゴニョと聞こえづらい声を聞き取ろうと前屈みになった。
「そうでもしなきゃ、陽平気づかないんだもん、自分に。」
「は?」
やっと聞こえはしたものの、言葉の意味がわからず頭の中は“?マーク”でいっぱい。
:11/11/09 14:09
:Android
:/zp5pGog
#405 [ちか]
そんな俺に姉は見限ったように言い放った。
「とにかく、大人の事情なんだからめぐるは聞かなくていいのー!お姉様の介抱だけしてればいいのーっ!!」
まったく、この姉は…
はいはい、と言いながら今日の予定を全キャンセルして姉に徹することに予定を変える俺。
なんて優しい弟なんや、俺は。
そんな風に自画自賛してる時、ふいに姉が呟いた。
「あんたは良い人見つけなさいよ…。あんただけを見てくれる人を…。」
突然のことに目を丸くした。
俺の彼女なんて、イジメ倒してやるが口癖のブラコンな姉がそんなことを言うものだから。
しかし、その発言から俺が連想するのは、
(凌…。)
だったりする。
:11/11/09 14:15
:Android
:/zp5pGog
#406 [ちか]
もうそっからは頭の中が凌だらけで、姉の話などまるで頭に入らない。
その間にも姉はぺらぺらと女の子ってのは、なんてことを語りだしている。
「そうねー、料理できて教養があって、あ、音楽が出来る子がいいわね、繊細そうな…」
姉の勝手な嫁像も全く耳に入ってない俺。
そんな俺を見てもの足りなさそうに膨れたかと思いきや、姉は閃いたと言わんばかりに顔を明るくした。
そして、
「あ、凌くんピッタリかも!!」
突拍子もないことを言う。
:11/11/09 14:20
:Android
:/zp5pGog
#407 [ちか]
思わずブッと吹き出してしまう。
「な、なな、なに言ってんねん!!!///
凌は男やんか!?!?」
慌てて取り乱す俺に、姉はさっきまで泣いていたのが嘘のようにイタズラな笑みを剥けた。
「やーだ、“女の子なら”ってことよ、凌くんが♪もったいないわよね、あんな綺麗な顔で男の子なんてー」
人の気も知らないで、そんな呑気なことを言う姉に俺は困り果てたような笑顔を返す。
ほんま、心臓に悪いで姉貴…
:11/11/09 14:25
:Android
:/zp5pGog
#408 [ちか]
それでもなぜだか意識してしまい、顔が赤らむ。
俺は、そんな自分が恥ずかしくて姉から離れた。
やっぱり予定、再変更。
姉貴から逃げる。
そう思い、立ち上がったが時既に遅し。
「だめ!めぐるは今日わたし専用!」
「わっ、もう、危ないから!俺の可愛い顔がこけて傷ついたらどうするん?!」
「だーいじょうぶよー、そしたらお姉様が綺麗に縫ってあげる♪」
あー、そうえばこの人はこんな人やったよな。
俺は一人黄昏るように遠い目をした。
:11/11/09 14:29
:Android
:/zp5pGog
#409 [ちか]
なにはともあれ、
離婚からの傷心で帰ってきた姉に少し元気が戻ったみたいでよかった。
今度、東京行くときは手土産もって陽さんのところに謝りにいこう。
姉が迷惑かけました、と。
そんなことを思いながら、俺は姉がしがみける腕をほどいた。
「わかったからー、今日だけやからな?」
結局、甘い俺。
なんだか疲れたのか全身の力が抜けた。
そうだ、こんな日は凌に電話しようかな。
姉が俺の嫁にしたがってる、って。
あいつ、どんな顔するかな?
俺と同じように照れればいいのにな、たまには。
なーんちゃって、な。
― おまけの話 e n d ―
:11/11/09 14:35
:Android
:/zp5pGog
#410 [ちか]
:11/11/09 14:45
:Android
:/zp5pGog
#411 [ちか]
:11/11/11 21:18
:Android
:ybUdOCh.
#412 [ちか]
断る時の言葉なんていつも決まっていた。
「あの、…ずっと好きでしたっ///」
常に本当のことは隠したまま。
ただ、少しの笑顔と詫びる素振りを見せて。
口調はやんわりと。
「気持ちは嬉しいけど俺、今部活以外興味ないから。ごめんな。」
そうすれば、ほら、
誰も傷つかない。
:11/11/11 22:37
:Android
:ybUdOCh.
#413 [ちか]
─────────────────………
──────────────……
──────────…
「うわ、はやく着きすぎた。」
携帯のディスプレイを開けば、約束の時間より20分程早い時刻が表示されている。
自覚が無かった分、思わず驚きから独り言が漏れた。
息を吐けば白く濁る正月気分の抜けない街を目の前に、俺は駅の改札口で一人、待ち人を待つ。
頭1つ分背の低い、幼馴染みの日下冥を。
ごった返す駅の中、
寒さに耐えられず俺は顔をマフラーに埋めた。
すると、ふいに見覚えのある人影が隣を通った。
:11/11/11 22:47
:Android
:ybUdOCh.
#414 [ちか]
その人影は俺を通り越し、斜め前の柱にもたれ退屈そうに俯く。
黒髪のさらさらと揺れるショートヘアに、
色白の肌。
淡白だが、整った顔立ち。
あれは、そう、確か…
( 瀬野(セノ)…? )
過去一度だけ作ったことのある、
まさしく初カノ。
:11/11/11 22:53
:Android
:ybUdOCh.
#415 [ちか]
咄嗟に顔をマフラーに埋めたまま、少しそらした。
気まずい、
という表現が正しいのかどうか分からない。
あの頃からなんら変わらない凛とした姿勢。
少し、苦手だったりする。
.
:11/11/11 22:56
:Android
:ybUdOCh.
#416 [ちか]
その時、急にポケットで震えだす携帯。
来たメールを開いた途端に、苦笑いがこぼれた。
from:冥
Sub:No title
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ごめん、ちょっと遅れる!
‐ e n d ‐
こいつのちょっとは、
ちょっとじゃ済まないな。
そんなことを悟ることが出来るのは付き合いが長いから。
俺は適当に返事を返し、再び閉じた携帯をポケットにしまい込んだ。
斜め前には、時計と睨み合う瀬野の姿。
瀬野も人待ちか。
自分と同じように柱にもたれたその姿を見ているうちに、俺の記憶は遡っていった。
最初で最後の彼女となるであろう瀬野と付き合い始めた中学二年の夏に。……─────
:11/11/11 23:31
:Android
:ybUdOCh.
#417 [ちか]
昨日まで手繋いでた幼馴染みも色恋に目覚め、急に意識しはじめて手が繋げなくなる、そんなお年頃。
中学に上がれば頭の中はすっかり浮かれ調子で、それは学年があがるごとに増していく。
そんな中学生達を俗にマセガキとか中二病とか言うらしい。
もっとも、
「とおる〜!」
「んー?どしたー?」
俺たちには特に関係もない話。
:11/11/12 11:38
:Android
:Cz0jqLjU
#418 [ちか]
「D組のかおりちゃん、透のこと好きなんだって!どうする?」
「どうするって…。なんで冥がそんなこと知ってんの?」
なぜなら、
「え?なんか伝言頼まれたからさー、かおりちゃんとその友達に!で、返事は?」
「…ふーん、部活以外興味無いからごめんって言っといて。」
「透変わんないよな〜、昔っからそうやって断ってばっかじゃん。」
「お前も、万年俺の伝言役だよな。」
お互い色恋にも先輩風吹かすことにも興味がないからだ。
:11/11/12 11:46
:Android
:Cz0jqLjU
#419 [ちか]
休み時間でガヤガヤとうるさい教室内に、鈍い音と短い悲鳴が鳴る。
「い゛っ…、殴んなくてもいいだろ?!」
「透が一言多いからじゃん。」
俺より頭1つ分くらいは裕に低い身長のくせに、殴る力は一人前な俺の幼馴染み、冥。
そんな冥が痛がる俺をよそに、不服そうな目で俺を覗き込んだ。
「でも、なんでみんな断ってんの?この前のミキちゃんなんか、超可愛くて有名じゃん。後輩も先輩もお前のこと羨ましがってたよ?」
悪気もなくそう問いかけてくる冥に、思わずため息をこぼしそうになったのをぐっと飲み込んで、俺は毎度の理由を語ろうとする。
が、
「だから、部活しか興味な…」
「俺にウソは通用しませーん。」
じゃあ、
どうしろって言うんだ。
:11/11/12 11:57
:Android
:Cz0jqLjU
#420 [ちか]
ひとの気も知らないで。
「女の子達は騙せても俺は騙せないよ?だって透、断るときいっつも嘘ついてますーって顔に書いてるもん!ま、俺にしか分かんないだろーけど?」
「あー、そうですか。さすが幼馴染みですね、なんでも分かっちゃうとか冥くんすごーい。」
えっへん、という効果音がぴったり合うような態度の冥を、心の中の動揺を隠しながら軽くあしらい、窓の外に目を向ける。
その隣ではそんな俺の態度に不満なのか膨れ上がる冥が何やらブツブツ呟いていたが、知らないフリ。
だってコイツが悪いんだ。
俺が告白を断り続けている本当の理由なんて聞いてくるから。
:11/11/12 17:57
:Android
:Cz0jqLjU
#421 [ちか]
膨れ上がる冥を窓越しに見つめながら思う。
本当の理由(コト)を言えればどんなに楽だろうって。
本当の理由(コト)を言えば、
コイツはどんな顔をするんだろう、
って。
:11/11/12 18:26
:Android
:Cz0jqLjU
#422 [ちか]
俺は
この幼馴染み、日下冥が好きだ。
いつからかなんてもう分からない。
気がつけばもう遅かった。
男同士なのにそれでもコイツが
好きで、好きで、好きで、
他のヤツなんて目に入んなくて。
苦しい。
:11/11/12 18:35
:Android
:Cz0jqLjU
#423 [ちか]
胸が苦しい。
だって、俺が好きになったのは
紛れもない男で。
華奢で
女みたいな顔で
声もまだ少し高くて
そこらへんの女子より可愛くても
冥はレッキとした男で。
恋心を抱いたところで
どうしようもない。
叶うことはもちろん、
告げることさえもきっと出来ない。
この先も、ずっと。……──────
:11/11/12 19:28
:Android
:Cz0jqLjU
#424 [ちか]
中学に入った途端にモテだした俺は、もうどれくらい断ったか分からない。
俺が冥に向けるような、小さくて淡くて熱い感情を。
この感情を忘れるために
適当に彼女を作ろうとしたこともあった。
取っ替え引っ替えに彼女でも作って、
適当に愛だの恋だのぬかして、
この感情を消して、
グチャグチャに塗り潰してしまえば
きっと楽なんだろう、
って、何度も何度も思った。
でも、俺には出来なかった。
冥に幻滅されたくない。
冥の傍に居たい。
冥に、友達としてで良いから好かれていたい。
そして何より、
冥に誤解されたくない。
俺の一番が冥以外の誰かなんてそんな誤解をされたくなかった。
そう思うとどうしても、
彼女なんて作る気は到底起こらなかった。
:11/11/12 19:42
:Android
:Cz0jqLjU
#425 [ちか]
それと反比例するように
断れば断るほど、とにかくモテた。
それはもう、俺のモテ期はここで終わるんじゃないかってほどに。
まぁ、実際は高校になってもさほど変わり無い調子でモテているが。
なんでも、女子達はこう俺を噂する。
「クールなとこがいい」
そんな意識、した覚えがない。
「みんなの蓮見くんって感じでいい」
俺は物じゃない。
「あの爽やかな笑顔で断られると、もっと好きになっちゃう。」
作り笑顔って怖いな。
冷たくあしらってるつもりなのに、どうしても告白されると傷つけないように優しく接してしまうんだ。
きっと、自分に透過してしまっているのが原因だろう。
俺に叶わない恋をしている相手に、
冥に叶わない恋をしている自分を重ねて。
:11/11/12 21:55
:Android
:Cz0jqLjU
#426 [ちか]
そんな俺の葛藤を知らずに、
俺の伝言役なんか務めちゃう冥が
愛しさ故に、憎たらしい。
「あ゛ぁあ゛〜〜!!!!!もうっ〜!!!!」
「な?!透、なに急に?!そんなに頭(殴ったとこ)痛かった?!」
憎たらしいけど
それでも
大好きで。
「ちげーよ、バカ!!」
「バカ?!バカって言った方がバカだし!!」
そして
何も出来ない今に至る。
そんな頃だ。
瀬野が現れたのは。
:11/11/12 21:57
:Android
:Cz0jqLjU
#427 [ちか]
それは昼休みだった。
いつものように、冥と昼飯を食っていると廊下側のクラスメイトに茶化すような声で名前を呼ばれた。
「蓮見ー、お前に用事だってー!」
そう呼ばれれば、目の前のコイツは興味津々と言った顔で、廊下に立つ見えない女子の姿を覗こうと背筋を張る。
そんな姿に思わずため息をついて、俺は席を立った。
その時は、
昼休みに呼び出すなんてまためんどくさいことをしてくれるな、とかそんな風にしか考えていなかったのに。
まさかこんな事になるとは。
「えーっと、…用ってなに?」
サラサラの黒髪ショートヘア。
色白な肌にシンプルで整った目鼻立ち。
なんか、見たことあるんだけど、…誰だっけ。
少なくとも目立つグループの女子じゃないよな。
そんなことをグルグルと考えながら適当に笑いかける。
「ここじゃちょっと話しにくいから、屋上行きたいんだけど、いい?」
が、一瞬で分かる。
この子、俺の苦手なタイプだ。
だって目の奥が俺と似てる。
:11/11/12 23:11
:Android
:Cz0jqLjU
#428 [ちか]
言われるがままう頷いて、屋上に向かう二つの足取り。
「屋上って締め切ってなかった?」
「あたし合鍵持ってるから大丈夫だよ。」
「へえ…」
合鍵なんて、どこから手に入れたんだ?
ますます読めない人間だ。
警戒心からか眉間に皺がよる。
そうこうしているうちに屋上に着き、本当に持っていた合鍵でいとも簡単に扉を開ければ、夏だけに少し暑苦しいがきれいに晴れ渡った空が広がった。
「さっそくなんだけど、」
実のところ屋上には来たことがなく、そのインパクトの大きさに魅了されていると、よく通る凛とした声が話を切り出す。
:11/11/12 23:18
:Android
:Cz0jqLjU
#429 [ちか]
そこで我に返った俺は曖昧な相づちを打ち、続きを促した。
それに対してニッコリ微笑む彼女。
「あたし、E組の瀬野麻美(セノ アサミ)。分かる?」
「……や、ごめん分かんない。」
E組なら分からなくても無理は無い。
俺や冥はA組で、AとEは廊下の端同士なのだから。
俺の返事に瀬野も、だよね、と笑う。
そしてニコっと微笑み直し、続けた。
「あたし、蓮見くんのこと好きなんだ。付き合ってほしいの。」
ほら、来た。
構えていたその言葉が。
:11/11/12 23:29
:Android
:Cz0jqLjU
#430 [ちか]
結局はみんなそうなんだ。
特に俺を知りもしないで、そんな状態で俺を好きだの言ってくる。
簡単に。
俺が冥に言えない言葉を簡単に。
しかし、それは決して叶うこともない。
そこに自分を重ねて、同情という名のもとに優しい口調で断り続ける自分。
そんな時の優しさなんて
本当の優しさでもなんでもないのに。
それをまた勘違いするんだから、つくづく可哀想になる。自分共々。
そんなことを悶々と考えながらも、こんな状況にももう慣れたのか自動的に適当な言葉が口から滑るように出た。
最後にお決まりの言葉を添えて。
「…だから、部活以外今興味ないんだ。ごめ…」
それでいつもみたいに終わると思っていた。
「嘘はダメだよ、蓮見くん。」
のに。
:11/11/13 19:11
:Android
:08ju6xVE
#431 [ちか]
「え?」
思わず自分の耳を疑った。
嘘?
こいつ、何言って…
「なんで俺が嘘なんかつかなきゃいけないんだよー?瀬野さんなんか勘違いしてない?」
動揺を悟られてはいけないと、さらに笑顔を作り誤魔化す。
が、瀬野はトドメの一言をさらりと言ってのけた。
「あたし、知ってるよ。蓮見くんが日下くんのこと好きなの。だから、みんなの告白断ってるんでしょ?」
.
:11/11/13 19:30
:Android
:08ju6xVE
#432 [ちか]
ドクン、
と心臓が跳ねた。
なんだ、こいつ…
なにを根拠にそんなことを…
俺はそんな素振り一度だって…
「なんで?って顔してるね。教えてあげよっか?」
そんな俺に瀬野は悪戯っ子のような笑顔を向ける。
咄嗟に俺は自分の顔にてを当てた。
顔に出るほど、動揺してるなんて。
動揺がさらなる動揺を呼び、暑さからなのかさえ分からない汗がだらりと額から落ちてきた。
「目、見たら分かるの。日下くんのこと見てるときの蓮見くんの目、恋する女の子みたいなんだもん。」
暑さのせいで耳までおかしくなったのだろうか。
俺が恋する女の子?
「意味分かんねぇ。勝手に推測だけで話進めんのやめてよ、瀬野サン。」
冗談じゃない。
:11/11/13 22:21
:Android
:08ju6xVE
#433 [ちか]
「そうそう、その顔!日下くん以外の子には今みたいな冷めた目してるのにさ、日下くんにはなんかあったかい目で見てるの。自覚ないでしょ?あたしね、人間観察、得意なんだ。」
そう言ってパンと嬉しそうに叩く瀬野。
なんなんだ、この底抜けな明るさとなんでも見透かしているかのような目は。
どう話をそらしても、軌道修正されてしまうその苛立ちに俺は痺れを切らしため息をついた。
「…で、だったらなに?」
別にバレたらバレたでどうにでもなる。
今はコイツから離れたい。
その一心で、俺は敵意むき出しの顔で結んでいた口を開いた。
:11/11/13 22:29
:Android
:08ju6xVE
#434 [ちか]
そんな俺に、瀬野もため息をつく。
「だーかーらー、あたしは蓮見くんが好きなの。付き合って?」
やれやれ、と言った顔でそんなことを言ってのける瀬野に俺は唖然とした。
そうか、これは脅しか。
俺が冥のことが好きなのを黙っておく変わりに自分と付き合え、と。
なんて打算的な女だ。
だけど、俺はその手には乗らない。
俺はフン、と鼻をならし牙を向くようにその提案をはね除けた。
「なに、脅迫のつもり?勝手にすればいいじゃん。そんなの誰も信じないよ。」
目立ちもしない女子一人の噂事なんて、人望のあつい俺からすればどうってこと無い。
好きにしろよ、そう言って蒸し暑い屋上の出入り口に手をかけた、その時。
「違うよ、これは立派な交換条件。」
それは相変わらずのニッとした猫みたいな笑顔が背中越しでも分かるような声だった。
:11/11/13 22:38
:Android
:08ju6xVE
#435 [ちか]
ドアノブを掴みかけた手が固まる。
「なに、どういう意味。」
そう言って、顔だけ瀬野の方に振り向くと案の定猫みたいな笑顔が目に映った。
その笑顔さえ少し鬱陶しさを覚える。
「蓮見くんだっていつまでも片想いじゃ苦しいでしょ?」
そんな俺の内心などお構い無しに瀬野は痛いところを突いてきた。
『苦しい』…確かにそれは否めない。
出来ることならこの感情を忘れたいとさえ思ったほどだ。
瀬野は俺の心を見透かしたように目を細め続ける。
「だからあたしで試したら良いと思うの」
「は?試すってなにを…」
「あたしと付き合って忘れられるか試してみるってどうかな?」
無意識か、思わずため息がこぼれた。
ワケが分からず、俺は乱雑に頭を掻き瀬野を睨み付ける。
「そんなこと、出来たらとっくにやってるよ。」
そう、とっくに。
出来ないのは、やっぱり俺の中の一番が冥だからで。
隣に居る女がさも自分が一番だなんて顔で自分に引っ付いてくると思うと、どうしてもダメなのだ。
そんな俺の頭の中を知ってか知らずか、瀬野はとっておきの作戦と言っても過言じゃないような大袈裟な口調で最後の一言を言ってのけた。
:11/11/15 21:27
:Android
:3nDUr.S6
#436 [ちか]
「もちろん、蓮見くんの最優先は日下くんのままでいいよ。
今まで通り日下くんだけ見てればいい。
あたしはね、女の子の中で蓮見くんの一番になりたいだけだから。」
なんの迷いもなくそう言う瀬野に、思わず俺が戸惑った。
瀬野がそこまで言う意味が分からない。
だけど、なぜだろうか。
俺の心の中をすべて読んでいるような不思議さに少し興味を引かれたのもたしかだった。
「なんであたしがそこまでするのかって思ってるでしょ?」
「…………。」
ほら。
また見透かされる。
今までこんなこと無かったのに。
:11/11/15 21:57
:Android
:3nDUr.S6
#437 [ちか]
なんなんだ、こいつ。
不思議と瀬野のペースに引き込まれていくのが自分でも分かった。
「あたしの蓮見くんに対する“好き”は、興味の対象って意味だから。
日下くんを愛しそうに見てる蓮見くんがあたしは好きなの。それをもっと傍で見れたら素敵だと思って!」
そこに押しの一言。
「蓮見くんの一番は日下くんのままでいいんだよ、そしたら蓮見くん的にはすごい特だと思わない?無駄に女の子に言い寄られることもないし、ね?」
気がつけば俺は小さく頷いていた。
「…わかった。でも、瀬野さん今言ったこと忘れんなよ?」
それが
俺と瀬野の付き合いの始まりだった。
:11/11/15 21:58
:Android
:3nDUr.S6
#438 [ちか]
「彼女が出来たああぁあぁ?!」
屋上で瀬野と別れ、教室に戻ると残わずかとなった昼休みのうちに冥にそのことを報告してみた。
その途端、椅子から立ち上がり、それと共に勢い良く両手を机に突っ立てる冥。
「そんなびっくりしなくても…」
「さっきまで部活しか興味ないって言ってたくせに!!そりゃびっくりするって!」
あまりのリアクションにおれ自身も驚いたが、それもそうか、と妙に納得しつつ、予想外の反応に少し面白くなってくる。
顔がにやけないようにポーカーフェイスを保つのに必死になっていると、冥が目の前であからさまなため息をついた。
「……なんか、でも寂しいなぁ。」
へ?
:11/11/16 07:25
:Android
:GxhrNHKU
#439 [ちか]
気づけば目の前のそいつの顔は驚きの表情からすっかり悲しげな表情に変わっていた。
「え、…なんで?」
訳も分からず、条件反射的にそう聞き返すと、冥はさっき勢い良く立ち上がったのとは正反対にふにゃふにゃとしゃがみこむように再び椅子に腰を落とし、チラリとこちらを上目使いで覗きこむ。
大きくて茶色い瞳、長い睫毛、
可愛いくないわけがない。
生唾を飲んで俺は自身の冷静さを取り戻そうと努めた。
こいつのこんな表情(カオ)を独り占めできたらなあ
なんて、叶いもしない願望を抱きながら。
:11/11/18 06:49
:Android
:4yjWSxQE
#440 [ちか]
冥は口を尖らして伏し目がちに呟いた。
「だってさぁ、なんか先越されちゃった感じするし。それに透に彼女出来たら今までみたいに俺としょっちゅう遊べないじゃん
?なんかすっげー寂しい…」
また伏し目がちにするとよく分かる長い睫毛と可愛い仕草が俺の心を揺さぶる。
平常心、平常心、自分に唱えつつ、考えた。
俺が彼女を作ることで、冥が俺に寂しいなんて感情を抱くなんて思ってもみなかった。
冥のその一言は本人からすれば特に深い意味を込めた言葉じゃないことくらい、分かっている。
でも、少し、ほんの少しだけ期待してしまう俺はいけないだろうか。
終始一緒だった俺が距離をとることで、分かることもあるかもしれない。お互いに。
そんな考えを巡らせてるうちに、口角が上がった。
瀬野と付き合うことは、
案外、面白いかもしれない。
:11/11/18 07:09
:Android
:4yjWSxQE
#441 [ちか]
俺がもっと瀬野と仲良くすれば、冥は俺を意識してくれるんじゃないか。
浅はかな期待がそこに生まれた。
それが後に、後悔することになるとも知らずに。
俺は、半にやけになる自分の顔を引き締め言葉を返す。
「別に今までと変わんないって。」
「えー。ほんとに?」
伏せていた目を疑うように上目使いしてくる冥。
ちくしょー、可愛い。
そんな内心を悟られないように冥の頭を雑に撫でた。
「ほんと、ほんと。寂しがんなって♪」
「…なんか透、嬉しそう。」
拗ねる冥ににやけているなんて、当の本人
は全く気づかないんだから、楽っちゃ楽だけど、なんか報われないよなあ。
なんて、少しばかりため息をつきながら頬杖をついた。
「でも、先越されたって言うけどさー、寂しいなら冥も彼女作ればいいじゃん。」
誤魔化そうとするが故に、こぼれる心と裏腹の言葉。
本当はそんなこと、これっぽっちも望んでいないのに。
:11/11/18 23:21
:Android
:4yjWSxQE
#442 [ちか]
俺の問いかけに対して冥は「んー」と唸りながら天井を仰ぐ。
「お前だってモテてんだろ?この前呼び出されてたじゃん。」
「そうだけどー…」
見た目こそ可愛らしいが、冥はモテないこともない。
人懐っこい性格やドジなところ、どこかほっとけない感じがきっと母性本能をくすぐるんだろう。
だけど、冥も俺同様今まで彼女を作ろうとしなかった。
それは前々から疑問に思っていたことで、この際聞いてみてもいいだろう、と俺は冥を覗きこんでみる。
そして、暫くしてから小難しそうな顔で冥は口を開いた。
:11/11/19 23:28
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:PD4m8JoA
#443 [ちか]
「なんか、俺女子って苦手なんだよな〜…。俺のこと可愛い可愛いって言ってさ、男としてそれはなんかプライド的に傷つくし…。告白する時まで言うんだぜ?そんなんで付き合えるかっつーの!」
そう言って頬を膨らまし、むくれる冥。
そんな冥を適当にあやしながら、内心ではガッツポーズをとる俺。
女子が苦手なんて、
ラッキー以外のなんでもないじゃん。
少なくとも、当分はまだ冥を親友として独り占め出来そうだと俺は安堵に似た息をさりげなく漏らし、会話の軌道を戻した。
「ま、そのうち彼女できたら、Wデートでもしよーぜ。」
「うわー、嫌みだ…。」
いじけるような目線をよこす冥を笑いながら、そろそろいびるのもやめようと俺は思い出したように話題を変える。
:11/11/25 06:51
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#444 [ちか]
「そういえばさ、今日ジャンプ発売日じゃん?帰りどっかコンビニ行って読んで帰ろーぜ。」
俺としては話題を変えたことはわりと気を利かせた行動だと思った。
なのに、また冥は眉を潜める。
「なに言ってんだよ、彼女と帰ったげなよ。付き合って初日なんだからさ。」
「え、あ…そっか、初日…。」
瀬野と付き合うなんて形だけで、俺の頭の中では中身なんてあってないようなものだったから、俺は意表を突かれたように言葉を詰まらせた。
だけど、
そもそも最優先は冥のままで、と提案したのは瀬野だ。
わざわざ俺が誘う義理もないし。
俺はにこやかな笑顔で返事をする。
「や、でも瀬野、今日用事あるから無理なんだってさー!だから、いいんだよ」
適当に嘘で誤魔化して。
:11/11/25 21:51
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#445 [ちか]
なのに、
偶然とは時々すごく俺に不都合だったりする。
──────────────────………
─────────────……
────────…
「あ、あれ瀬野さんじゃん、透!」
「うわ…」
放課後。
約束通り冥と帰ろうと、玄関口まで来た俺たちの目の前をスッと通っていく凛とした姿勢。
冥の指差す方向を見て無意識に心の声を漏らした俺は、冥に脇腹を小突かれて手で口を覆った。
「うわ、ってなんだよ。おーい、瀬ー野ーさーん!」
「ちょ、お前、なに大声出してんだよ!」
「そうしなきゃ聞こえないだろ?瀬ー野ーさーん」
ところ構わず声を張り上げる冥に俺はため息をつく。
このお節介…なんて、口には出せないけど。
:11/11/26 08:13
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#446 [ちか]
冥の大声に、凛とした後ろ姿がくるりと振り返る。
それと共に、ピンク色のぷっくりとした唇が俺たちに笑いかけた。
「あ、蓮見くん日下くん、偶然だね」
夕暮れにはえる色白の肌。
笑いかける瞳。
なぜか少し背筋がゾクリと疼く。
そんな俺をお構い無しに、お節介な少年はその笑顔に笑顔で返した。
「透が、瀬野さん用事があるから一緒に帰れないって言ってたけど、早く終わったんだねー用事!」
「え、用事?」
曇りのない澄んだ瞳がチラリと俺を見る。
マズイ…。
俺はひきつるような笑顔で瀬野をただ見つめた。
:11/11/26 23:30
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#447 [ちか]
すると瀬野はニヤリと笑い(きっと周りからすればニコリ、に見えるのだろうが)、手を叩いた。
「…うん!そうなんだあ、なんか思ったより早く終わっちゃって!あたしもびっくり。日下くんたちは何してるの?、こんなとこで。」
な、…?
なんで俺に合わせてくれんの?
俺の頭の中は一気に疑問符でいっぱいになった。
そんな俺をよそに冥はぺらぺらと話を続ける。
「そうだったんだー、俺たちも今帰るとこだったんだよ。へへ」
へへ、じゃねえよ!!
なに素直に答えてんだよ、バカ冥!
企みを含んだ笑顔を浮かべたまま、瀬野はそうなのー、と冥に相づちを返す。
こいつアレだ、
「せっかくだから瀬野さんも一緒に帰らない?」
絶対、
「えっ、いいの?!嬉しい!」
冥のこの言葉待ってたんだ…
:11/12/04 17:28
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#448 [ちぇりー]
あげます(*ノェ゚)
:12/01/28 00:58
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:VfD9YsIo
#449 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age
:22/10/02 03:08
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:Ltpo.xA.
#450 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/04 23:12
:Android
:nH.OoPsQ
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