WHITE★CANDY
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#792 [ぎぶそん]
「雨宮城様・雨宮真希様、今から写真撮影を行うのでこちらに来て下さい」
スタッフの男性に呼ばれ、父とスタジオ奥へと移動した。
一番に写真撮影の背景になる特大パネルが目につき、それは映画で最初に国王と王女がいた城を手描きで再現したものだった。
このイベント、かなりの経費が掛かっていそうだ。

青いシートの上に立つと一人の女性スタッフが駆け寄り、私たちのポーズや位置を整える。
カメラマンの男性や照明係の人、その他大勢の人が私たち親子を凝視する。
気分はまるで雑誌のモデルだ。

「はーい、今から撮りますんで、リラックスしてください」
女性が立ち去ると、カメラマンの男性がレンズを覗き、私たちに話しかけた。
そして、カシャカシャ!と、慌ただしいシャッター音が静かなスタジオ内に響いた。
数分の間、シャッター音は何度も連続して鳴った。

⏰:12/05/31 05:01 📱:Android 🆔:Cc8rMnGc


#793 [ぎぶそん]
「はーい、オッケーでーす。最後に当選者の皆さんで写真を撮りますんで、申し訳ないですがそれまで適当に時間を潰してて下さい」

シャッター音が鳴り終わり、カメラマンの男性の指示でその場を離れた。
今度は入れ替わりで遠藤さん親子が呼ばれた。
色んな機材に囲まれた場所にいる若い男性スタッフの方に呼ばれ、パソコンに送られた写真を見せてもらった。
どれも同じ体勢なので全て同じ写真に見えたが、親子ともに目を瞑っているのが何枚かあった。

自分たちの写真を見終わると他の親子の撮影風景を見たり、スタジオ内をうろうろして時間を過ごした。
昼十二時を過ぎると、昼食として幕の内弁当が差し出された。
スタジオ隅にあるテーブルで、口紅が落ちないように気をつけながら食べ物を口に運んだ。
ペットボトルのお茶を飲む時も、飲み口に口をつけず仰向けになり口を開けて飲んだ。

⏰:12/05/31 05:31 📱:Android 🆔:Cc8rMnGc


#794 [ぎぶそん]
それから一時間・二時間と過ぎたがなかなか個人個人の撮影は終わらず、退屈そうに待つ人や、椅子に座ったまま仮眠を取る人も現れていた。
私は当選者の中にいた六歳の竹田愛ちゃんという女の子が話し掛けてきてくれたので、ひたすら彼女とおしゃべりをしていた。
愛ちゃんは今同じ幼稚園に好きな男の子がいて、今日のドレスアップした姿を彼に見せたかったと話していた。

三時過ぎになり、五組目の山口さん親子の撮影が終わり、ようやく全ての親子での撮が終わった。
カメラマンの男性に、当選者全員がカメラ前に来るよう指示を受けた。
一番背の低い愛ちゃんが中央、四番目に背の高い私は右端に位置付けられた。
男性陣はそれぞれの娘の後ろにいるよう台の上に立たされた。

ポーズと位置が整うと、カメラマンの男性がレンズを覗き込む。
「はーい。では撮りまーす」
静まり返ったスタジオ内にシャッター音が何度も轟く。
こうして、全ての撮影が終了した。

⏰:12/05/31 06:01 📱:Android 🆔:Cc8rMnGc


#795 [ぎぶそん]
再び着替え室に戻り、名残惜しくも着ていたドレスを脱いだ。
ハイヒールを脱ぎ、履いてきた運動靴に履き替えると、その慣れた心地よさに幸せを覚えた。

着替え終わり最初にいた第三会議室に入ると、森部さんから印刷した写真が入っている封筒を渡された。
早速、封筒を開け写真を取り出してみた。
専門の方々から施された自分は、普段鏡で見るのとは全然違うような気がした。
隣の父も、高校生の娘がいるのが驚くくらい若々しく映っていた。
当選者全員で撮った写真は、一期一会の集まりとは思えないくらい和やかな雰囲気が漂っていた。

会議室を出て、最後に親子二人で関係者の方々にお礼を言ってビルを後にした。
衣装や靴は希望があればプレゼントすると言うので、親子ともに持って帰ることにした。
それらを車のトランクに積んだ時、父がこうぼやいた。
「いつか、真希の結婚式の時にまた着ような。……って、真希が結婚することなんかまだ考えたくもないけど」
私は愛情のこもった父のその願望を、いつか叶えてあげたいと思った。

⏰:12/05/31 06:30 📱:Android 🆔:Cc8rMnGc


#796 [ぎぶそん]
二日後の月曜日。昼休み、横山から今からイベントで撮った写真を持って屋上に来いという内容のメールが届いた。
彼が私の写真に興味を持つなんて不思議だ、と思いながら屋上まで上がると、そこには横山の他に優平も一緒にいた。

「じゃあお二人さん。後はごゆっくり」
私がやって来ると横山はそれだけ言い残し、すぐに屋上から出た。
残された優平と目が合った時、私と優平が二人きりになる機会を彼が設けてくれたんだと察した。

「これ、こないだ言ってたイベントの写真……」
私は彼に写真を差し出した。
「綺麗だよ。お父さんも、本当の王様みたい」
彼が感激といった表情をする。
「その衣装、家に持って帰ったの。いつか、優平の前で着れたらいいな……」
「うん、見せて。見たい」
私の言葉が持つ本当の意味も分からぬまま、優平は素直に笑っていた。

――このままずっと優平を好きでいて、そのまま結婚相手も彼だったらいいのにな。
高校時代に恋をした、父と母のように。

⏰:12/05/31 06:50 📱:Android 🆔:Cc8rMnGc


#797 [ぎぶそん]
後日。お風呂から出ると、リビングでノートパソコンを操作している父が私を手招きした。
パソコンの画面を覗いてみると、衛星放送の公式ホームページにこの前のイベントの内容が掲載されていた。
当選者全員で撮った写真がアップされていて、左端に私たち親子もしっかりと映っていた。

「最年少の竹田愛さんは、『今度のお遊戯会でこのドレスを着て、エマ王女を演じてみたい』と述べている。――だって」と、父が記事を読み上げる。
一緒に見ていた東吾兄は、「城さんもマキロンも芸能人みたい。すげー!」とはしゃぎ、羨ましそうにしていた。

部屋に上がり、ベッドに横になって自分に起こった最近の出来事を振り返ってみる。
まず、横山という同じ映画鑑賞が趣味の友達も出来た。
そして一番印象的なのは、父と親子二人で「パリの祝日」の世界を疑似体験できたことだ。

映画。それは私にとってどんなものだろうかとよく考える。
他人の人生を約二時間覗くことで自分の人生を考えさせられたり改めさせられたりする、不思議なショーだ。

きっと私は生涯映画を愛し、観続けるだろう。
映画は誠意を誓った友のようにいつも私のそばにいる。
これからもそんな映画と、そして隣で観る人たちと共に寄り添って生きていきたい。

Chapter09 END.―

⏰:12/05/31 07:35 📱:Android 🆔:Cc8rMnGc


#798 [匿名]
あげる

⏰:12/12/28 15:11 📱:KYL21 🆔:☆☆☆


#799 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑

⏰:22/10/02 01:11 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#800 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/04 18:32 📱:Android 🆔:nH.OoPsQ


#801 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30
>>30-60
>>60-90
>>90-120
>>120-150

⏰:22/10/04 21:10 📱:Android 🆔:nH.OoPsQ


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