夏祭り、恋花火
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#301 [七瀬]
『遊希の言うてることは、分かってる。
そんな都合いいことアカンよな。』
「違う!
そんなんゆうてんのと、ちゃう!!」
コンコン
「神野さん?
入りますよー?」
:09/03/27 19:36 :N703iD :VBS6fHZc
#302 [七瀬]
「じゃあ、もうそろそろ行くわ。
体調、崩さんようにな。」
『ありがとう。
遊希も頑張ってな、カステラ。』
「おう!」
そう笑った後、
「ほんまに、
もう奏には手ぇ、引きや。」
:09/03/27 19:41 :N703iD :VBS6fHZc
#303 [七瀬]
また怖い目に戻って、病室を出ていった。
「気分はどうですか?」
お医者さんの質問に答えてる間にも、上の空。
“奏には手ぇ、引きや”
遊希の言葉がこだまする。
奏から手を引く?
そんなん嫌や。
:09/03/27 19:46 :N703iD :VBS6fHZc
#304 [七瀬]
私には
もう奏のいない生活なんて考えられへんの。
せっかく、あの人が吹っ切れたのに、
今度は奏?
もう、あんな思いはしたない。
:09/03/27 19:49 :N703iD :VBS6fHZc
#305 [七瀬]
「退院おめでとぉ!」
『ありがとう。
でもたかが熱中症で倒れて2日間、寝込んでただけやで?
大げさやわ。』
「何ゆうてんの。
はい、いっぱい食べ。
いっぱい食べて体力つけなさい。」
お母さんは、ステーキをテーブルに置いた。
:09/03/27 21:07 :N703iD :VBS6fHZc
#306 [七瀬]
『おいひい〜。』
一口含むと、柔らかい舌触りと肉汁が広がった。
「そう、良かった。
まつり、ごめんな。
お母さん、気付いてあげられなくって。」
ステーキを飲み込んだ。
『ええよ。仕方ないやん。』
:09/03/27 21:11 :N703iD :VBS6fHZc
#307 [七瀬]
それから
気持ち良くって、
ついお風呂に1時間以上、入ってしまった。
やっぱり我が家が一番。
自分の部屋に入る。
うわ〜、
めっちゃ久々やん!
部屋の中にある全てが、懐かしく感じた。
ふと見ると携帯が光ってるのが見えた。
:09/03/27 21:16 :N703iD :VBS6fHZc
#308 [七瀬]
“退院おめでとう。”
ほんま遊希も大げさや。
“ありがとう!”
と送り返すと、
しばらくして遊希から電話。
『もしもーし。』
「まつり、退院おめでとう。」
:09/03/27 21:19 :N703iD :VBS6fHZc
#309 [七瀬]
『遊希もお母さんも、おーげさや。』
「それだけ心配してんの。まつりのお母さんも、
俺もな。」
『…ありがと。』
「どーいたしまして。
それよりどう?
2日ぶりの我が家は。」
:09/03/27 21:22 :N703iD :VBS6fHZc
#310 [七瀬]
『たった2日間おらんかっただけやのに、懐かしい。不思議な気持ちや。』
「そんなもんや。
それより、明後日。
明後日どう?」
『明後日?なんかあんの?祭はないやろ?』
「明後日、ヒマ?」
『ヒマってゆわれたら、
ヒマ…やけど。』
:09/03/27 21:27 :N703iD :VBS6fHZc
#311 [七瀬]
「じゃあ決まりや!」
『は?決まりって…』
「昼の11時。
まつりの家に迎えに行くから、待ってて。」
『え!ちょっと遊希!?』
「じゃあ、明日もゆっくり休めよ。
明後日は、忙しいでー。
祭以上に。」
:09/03/27 21:30 :N703iD :VBS6fHZc
#312 [七瀬]
『ちょ…待ってってば!
遊…希。』
プツッ
ツーツーツーツーツー
一方的に切られてしまった。
虚しい音だけが、私の耳に残る。
なんやねん、あれ。
意味分からんまま、眠りについた。
:09/03/27 21:36 :N703iD :VBS6fHZc
#313 [七瀬]
そして明後日。
ピーンポーン
『はーいっ。』
ドアを開けると
『ほんまに来たん!?』
「冗談やと思った?」
ニカッと笑う遊希。
:09/03/27 22:06 :N703iD :VBS6fHZc
#314 [七瀬]
『いや…冗談とゆうか…』
「用意出来たか?」
『用意って……』
「もちろん出掛ける用意。」
「あらあら!遊希くん!!」
その時、運悪く?
お母さんが登場した。
:09/03/27 22:11 :N703iD :VBS6fHZc
#315 [七瀬]
「どぉも、こんにちは。」
「こんにちは〜。
もしかしたら、
これからまつりとデート!?
ごめんねぇ、遊希くん。
この娘、グータラして、まだ顔も洗ってないのよ!
ここで待つのも、あれだし…
あがってちょうだい!」
お母さんは、
かーなーり一方的、
かつ一気にしゃべった。
:09/03/27 22:16 :N703iD :VBS6fHZc
#316 [七瀬]
『顔は洗ったし!
着替えてないだけで…
ってかデートちゃうわ!』
そんな私の言い分は無視され、
遊希は初めて私の家に足を踏み入れた。
『と、とりあえず着替えてくるから!』
バタン!
そう言って、部屋へ戻る。
:09/03/27 22:20 :N703iD :VBS6fHZc
#317 [七瀬]
なにあれなにあれ!
来るとは言ってたけど、
ほんまに来るか!?
ドア越しに聞こえる
お母さんと遊希の笑い声。
ほとんどお母さんの声やけど。
そんな二人とは裏腹に、心臓バクバクな私。
えーとっ!
とりあえず着替な!!
:09/03/27 23:55 :N703iD :VBS6fHZc
#318 [七瀬]
タンスを片っ端から開けて、あさる。
あ、あった!
少し大人っぽい白いワンピースを取り出す。
軽く化粧をする。
「まだかー、まつり。」
『ま、待って!』
最後にグロスを塗る。
:09/03/28 00:00 :N703iD :23CTAh1M
#319 [七瀬]
『おまたせっ。』
「よし、行こか!!
じゃあお母さん、
麦茶ありがとうございました。」
「はーい。気を付けて。
またおいでね、遊希くん。」
お母さんに見送られ、
家を後にした。
:09/03/28 00:03 :N703iD :23CTAh1M
#320 [七瀬]
しばらく歩いて、
近所のバス停に着いた。
『バス乗んの?
ってか、どこ行くんよ。』
「うーん、70点。」
私の質問をスルーして、
遊希は言った。
『え?』
:09/03/28 00:10 :N703iD :23CTAh1M
#321 [七瀬]
「後、
髪巻いてくれたら90点やのに。」
なーんだ、そうゆうことか。
『遊希が急かすからやろ。』
「じゃあ、時間あったら巻いてた?」
『さあ、どうかな。』
ちょっと意地悪して、はぐらかす。
:09/03/28 00:13 :N703iD :23CTAh1M
#322 [七瀬]
「これが奏とのデートやったら、
急かされても、巻いとったんやろな。」
独り言のように遊希は言った。
『なにゆうてんの。
ってゆうか、
デートちゃうってゆうてるやん!』
「そぉやったな。」
:09/03/28 00:17 :N703iD :23CTAh1M
#323 [七瀬]
寂しく笑う遊希。
『あとは…になるんよ。』
「なんて?」
『だからっ!
あとは、
どうやったら100点になんの?』
「あ、ああ。」
不意を突かれた様子。
:09/03/28 00:21 :N703iD :23CTAh1M
#324 [七瀬]
「そぉやな。」
見定めるように、
私を下から上まで見る。
「もぉちょっと
化粧濃くしてくれたら…」
『却下!』
ハハッと遊希が笑った。
私も吊られて笑う。
なぜか、この瞬間が大切に思えた。
:09/03/28 00:26 :N703iD :23CTAh1M
#325 [七瀬]
『あ、バス来たで!』
プシュー
扉が開いた。
足をバスへと一歩踏み出す。
『遊希?乗らへんの?』
ガバ
「やっぱり変更。」
:09/03/28 02:15 :N703iD :23CTAh1M
#326 [七瀬]
そう言われ、
遊希に手を引っ張られたのだと気付く。
『じゃ、じゃあどこに行くんよ!?』
元々、行き先も知らないのに
急に変更とかされて……
ますます分からん!
「まつりと、
ゆーっくり話せるところ。」
:09/03/28 02:19 :N703iD :23CTAh1M
#327 [七瀬]
今度は真剣にゆう遊希。
少し、たじろいでしまう。
『…ゆっくり話せるところってどこよ。』
「うーん、知らへん。」
『ファミレスとか、
喫茶店とか?』
「いいや、違うな。」
『じゃあどこ?』
:09/03/28 03:44 :N703iD :23CTAh1M
#328 [七瀬]
うんざりと聞く私に、
遊希は
「あっこ。」
指差して言った。
その指の向こうには
……ホテル?
:09/03/28 03:47 :N703iD :23CTAh1M
#329 [七瀬]
こ、これは!
もしかして…
もしかすると!!
イケナイ関係ってやつ!?
『ちょっ、ちょっと遊希!ふざけんのも、ええ加減にして!
そんな真っ昼間から、なに考えてんのよ!
しかも私には奏がおるし……
ほんまにアカンって!!』
:09/03/28 03:51 :N703iD :23CTAh1M
#330 [七瀬]
10分後。
「なあ、まつり。
奏は忘れ、な?」
私は遊希に迫られてる。
『…遊希。』
あまりにもの真剣な眼差しに流されてしまいそう。
「な、俺のゆう通りにし。絶対に後悔せんから。
ってか俺がさせへん。」
:09/03/28 03:55 :N703iD :23CTAh1M
#331 [七瀬]
そんなことゆわれたら…
ごめん。
ごめんな、奏。
『…遊希。
私、遊希のゆう通りに…』
バンッ
『いったー!』
:09/03/28 03:59 :N703iD :23CTAh1M
#332 [七瀬]
「おー!ホームランや!!
ホームラン!走れ走れ!」
遠くで聞こえるオッサンの声。
「大丈夫か、まつり!?」
『痛い痛い痛い!
ぜんっぜん大丈夫とちゃうわ!!』
見事に私の額にホームランしたボール。
:09/03/28 04:03 :N703iD :23CTAh1M
#333 [七瀬]
『だから、川原なんて嫌やってゆうたやんか!』
「ごめんごめん…。
それより、
お前、ほんま最高やな。」
含み笑いする遊希。
『笑うな!』
言った瞬間、遊希は吹き出した。
:09/03/28 04:08 :N703iD :23CTAh1M
#334 [七瀬]
一回、吹き出してしまうとなかなか止まってはくれないみたいで
遊希はお腹を抱えてる。
「お腹…ほんま最高!
おもろすぎやろ!!」
『そんなことで最高ってゆわれても…』
ブーと膨れる。
「すみませーん。
ボール、そっちに行ってませんか?」
:09/03/28 04:12 :N703iD :23CTAh1M
#335 [七瀬]
「あれ、もう帰って来たん?
デート終了?」
家に入っての第一声。
「いや〜、
さっき、まつりが…ブッ」
“デートちゃう!”
“笑うな!”
言い返す気力をすっかりなくしてしまってる。
:09/03/28 11:47 :N703iD :23CTAh1M
#336 [七瀬]
おとなしく、遊希とお母さんのやり取りを聞いてる私。
「アカン…
思い出したらまた笑えてきた。」
もう好きにして。
好きなだけ笑って下さい。
「あ、そうそう。
おばさん救急車、貸して下さい。」
:09/03/28 11:51 :N703iD :23CTAh1M
#337 [七瀬]
遊希は消毒液を取り出した。
「ちょっと痛いかもしれんけど我慢してな。」
ピクッ
「痛いか?」
消毒液が傷に染み込んで、ヒリヒリと痛んだ。
『ちょっと痛いかな…』
だけど、痛さの中に遊希の優しさが溢れているようで、うれしく思えた。
:09/03/28 11:56 :N703iD :23CTAh1M
#338 [七瀬]
訂正
× 「あ、そうそう。
おばさん救急車、貸して下さい。」
〇 「あ、そうそう。
おばさん救急箱、貸して下さい。」
“救急箱”が“救急車”に間違っていました。
:09/03/28 11:59 :N703iD :23CTAh1M
#339 [七瀬]
「私、買い物に行ってくるからあ〜。」
お母さんは、なにを勘違いしたのか、
いらない気を利かした。
『ごめんな。
お母さん、なんか勘違いしてるみたいで…』
「はい、終わった。」
『…ありがとう。』
:09/03/28 20:12 :N703iD :23CTAh1M
#340 [七瀬]
「あんな、まつり…」
しばらくの沈黙ののち、
遊希が口を開いた。
「さっきの話の続きやねんけど。」
『…うん。』
さっきの話の続き……
嫌な予感。
:09/03/28 20:14 :N703iD :23CTAh1M
#341 [七瀬]
「ほんまに何回もゆうけど、奏とは別れ。」
さっきは流されそぉになったけど、今度は違う。
冷静になれ。
と自分に唱える。
『なんで?
なんで、そんなことゆうの?』
「知らん方がええ。」
:09/03/28 21:10 :N703iD :23CTAh1M
#342 [七瀬]
『知らん方がええって…
そんなんじゃ、納得でけへん!!』
思わず、身を乗り出す。
「知らん方が幸せなこともある。」
遊希は冷たく言った。
『…分からん。
もう分からへんわ!
奏も、
遊希も……』
:09/03/28 21:14 :N703iD :23CTAh1M
#343 [我輩は匿名である]
:09/03/28 21:52 :W61SA :QPIROulk
#344 [七瀬]
匿名さん
ありがとう(*^□^*)
:09/03/29 00:34 :N703iD :raWiQQ8.
#345 [七瀬]
なんだか、悲しい。
「知りたいか?」
『知りたいってゆうか、
気になる!
いきなり別れろなんてゆわれて、
納得出来る人なんておらんやろ。』
「まあ…な。」
遊希は一人だけ納得している。
:09/03/29 00:39 :N703iD :raWiQQ8.
#346 [七瀬]
「じゃあ、話そっかな。」
そう言いながらも、
なかなか話し始めない遊希に苛立つ。
『遊希、言いたいことあるんやったら、はっきり…』
「泣くなよ。」
え?
「頼むから、泣かんとってくれ。」
:09/03/29 00:42 :N703iD :raWiQQ8.
#347 [七瀬]
やっぱり、良い話ではないみたい。
「約束できるか?
絶対に泣かへんって。」
そんなん、聞いてみな分からへん
そう思ったけれど
『…分かった。』
と答えた。
遊希の真剣さは、さっきよりも増したみたい。
:09/03/29 00:46 :N703iD :raWiQQ8.
#348 [七瀬]
「あのな…」
怖い
怖い怖い…
いざ聞こうと思うと、
言い知れぬ恐怖が襲ってくる。
“奏と別れるかも”
とゆう恐怖が私の心を支配する。
:09/03/29 00:50 :N703iD :raWiQQ8.
#349 [七瀬]
「あの日…
まつりが倒れた日。
実は俺、奏と一緒じゃなかった。」
少し息が荒くなる。
「俺は大竹さんと二人で
トラック乗って帰った。
もちろん最初は奏も一緒に帰るつもりやった。
でもあいつとは、一緒に帰らへんくなった。」
:09/03/29 00:56 :N703iD :raWiQQ8.
#350 [七瀬]
なぜ?
そう聞きたかったけれど、聞けない。
なにも話されへん。
遊希は続けた。
「だから俺、知らんねん。
なんで奏が電話に出られへんかったのか。
一緒におらんかったからな。」
:09/03/29 01:00 :N703iD :raWiQQ8.
#351 [七瀬]
じ、じゃあ…
奏が知って私の電話を無視したわけじゃないんや!
そう喜んだのも束の間。
「けど大体、予想はついてんで。
なんで、奏が電話に出られへんかったのか。」
心臓がどんどん加速してゆく。
:09/03/29 01:04 :N703iD :raWiQQ8.
#352 [七瀬]
『な…なんで?』
やっとの思いで口を開く。
「こんなこと言いたないけどな。」
遊希は念を押した。
「あいつには他に女がおる。」
なんとなく思ってた。
電話に出てくれなかった
あの日から、心の底のどこかで感じてた。
:09/03/29 13:51 :N703iD :raWiQQ8.
#353 [七瀬]
けど、そんなはずないと願っていたのも事実。
「でな…」
遊希は言葉を詰まらす。
「その、あんな……」
さっきよりも一層、深刻そうな顔に恐怖が倍増する。
『…なによ。』
ここで逃げたらアカン。
:09/03/29 13:58 :N703iD :raWiQQ8.
#354 [七瀬]
ピリリリリリ…
電話はもう10分近く鳴っている。
かけてきている主は遊希だと、見なくても分かる。
けれども私は、電話に出ず手にブザーを感じているだけ。
今はただ、駅へと足を急がすだけ。
:09/03/29 17:49 :N703iD :raWiQQ8.
#355 [七瀬]
駅に着いても、鳴り止まない携帯。
遊希…ごめんな。
私は電源を切った。
走ったからか、
それとも、
今から起こる出来事のせいか。
心臓は、
とてつもなく早い。
:09/03/29 17:54 :N703iD :raWiQQ8.
#356 [七瀬]
2時間かけて向かう場所。
カツカツカツカツ…
階段を上っていると、
小さく“仲嶋”とゆう表札が見えた。
いつ来ても汚いアパート。
そう、ここは奏の家。
:09/03/29 17:58 :N703iD :raWiQQ8.
#357 [七瀬]
よくここで、
一人暮らしをしている奏の家に遊びに来たなあ。
そんなことを思いながら、最後の一段を上り終えた。
ガチャ
:09/03/29 18:02 :N703iD :raWiQQ8.
#358 [七瀬]
「まつり……」
『……麻友ちゃん。』
:09/03/29 18:39 :N703iD :raWiQQ8.
#359 [七瀬]
さっきの遊希の言葉を思い出す。
「その、あんな……
奏の女ってゆうのは
多分、麻友…や。」
麻友ちゃん……?
その瞬間、
私は、走りだしていた。
:09/03/29 18:42 :N703iD :raWiQQ8.
#360 [七瀬]
遊希の言ったことは、
ほんまやったんや……
落胆する。
「まつり…
なんで、ここにいるん?」
『いつ彼氏の家に来たってええやろ?
ただ奏に会いたなっただけ。』
私、ほんと嫌な女。
麻友ちゃんに、
こんなことゆうなんて。
:09/03/29 23:39 :N703iD :raWiQQ8.
#361 [七瀬]
『麻友ちゃんこそ、なんで?
なんで、奏の家から出てきたわけ!?』
分かってるくせに
麻友ちゃんが答えられへんことを聞く私。
ズルいのは分かってる。
けれど、止められないの。
:09/03/29 23:43 :N703iD :raWiQQ8.
#362 [七瀬]
思った通り、
なにも言わず、目をそらす麻友ちゃん。
『なんで?
答えてよ、麻友ちゃん。』
ひるまず攻める。
「それは…」
ジッと麻友ちゃんの目を見る。
:09/03/29 23:46 :N703iD :raWiQQ8.
#363 [七瀬]
「そ、奏君が忘れ物してて……
届けてあげてん。」
また祭あるから、その時に渡せばええやん。
そんなに大事な忘れ物なわけ?
ってゆうか、
そんなに大事な忘れ物なら忘れんやろ、普通。
それに、わざわざ2時間もかかるのに電車、乗って来たん?
:09/03/29 23:50 :N703iD :raWiQQ8.
#364 [七瀬]
ツッコミ所、満載な答え。
麻友ちゃんの下手くそな嘘に、もっと強く睨む。
「フッ、フフフフ…」
麻友ちゃんが妖しく笑った。
「こんな言い訳、さすがに通じんよなぁ。
まつりも子供じゃないわけやし。」
いつもと違う麻友ちゃんに戸惑う。
:09/03/29 23:56 :N703iD :raWiQQ8.
#365 [七瀬]
「ええわ。
そこのファミレスで話そ。
な?まつり。」
その戸惑いを隠すために
精一杯、麻友ちゃんの言葉に頷く。
この人は麻友ちゃんじゃない。
なんか、いつもより化粧も濃くって、露出の多い服。
:09/03/30 00:01 :N703iD :gYBu1X56
#366 [七瀬]
それに見た目だけじゃなくって、
オーラが違う。
きつい、誰も寄せ付けないようなオーラを
今の麻友ちゃんは発していた。
いつもの、
優しくって、しっかりした清楚な女子大生の姿は
そこには、なかった。
:09/03/30 00:06 :N703iD :gYBu1X56
#367 [七瀬]
「いらっしゃいませー。」
「私はアイスミルクティーを一つ。
まつりは?」
『…私も、同じの。』
「じゃあ、アイスミルクティー二つ下さい。」
「かしこまりました。」
:09/03/30 00:15 :N703iD :gYBu1X56
#368 [七瀬]
「お待たせしました。
アイスミルクティーお二つです。」
カランカラン
しばらく、ストローでコップをかき回していた麻友ちゃんが話しだした。
「さあ、どっから話そか。まつり、何が聞きたい?」
なにがって…
挑発的な麻友ちゃんの態度に怒りを隠せない。
:09/03/30 00:20 :N703iD :gYBu1X56
#369 [七瀬]
「まあまあ、
そんな怖い目ぇせんと。」
『…』
黙って、睨み続ける。
「ごめん。
タバコ吸うていい?」
そう言うと、
麻友ちゃんは鞄からタバコを取出し、火を付けた。
:09/03/30 00:24 :N703iD :gYBu1X56
#370 [七瀬]
それ、奏と同じタバコ…
それに、麻友ちゃん。
タバコなんて吸うてたっけ?
フーと息を吐くと麻友ちゃんは言った。
「あんたの思てる通り、
私は奏とデキてる。
ってゆうても、一週間くらい前からやけどな。」
:09/03/30 00:28 :N703iD :gYBu1X56
#371 [七瀬]
一週間前……
ちょうど、私と原田さんが再開した日だった。
奏、やっぱり怒って
私への当て付けに麻友ちゃんと……
そう思っていると
「きっかけは私からやけどなあ。」
衝撃的な一言を麻友ちゃんは意図も簡単に言った。
:09/03/30 00:35 :N703iD :gYBu1X56
#372 [七瀬]
『…どういうこと?』
奏が、ヤケになってしたこてじゃないの?
麻友ちゃんからって……
なんでなん?
「私から、奏を誘ったの。でも決断したのは奏やで?私は、ただ誘惑しただけ。」
クスクス笑う麻友ちゃんに猛烈に腹が立った。
:09/03/30 00:40 :N703iD :gYBu1X56
#373 [七瀬]
「最初は奏もかなり渋ってたけどな。
でもほら、まつりは夢中やったやん?
初恋の人と。
それで奏、大分ショック受けてたみたいで。
だーかーら、
私が慰めてあげたの。」
そう笑う麻友ちゃん。
確かに言うとおりや。
私が奏を裏切ったから。
:09/03/30 00:46 :N703iD :gYBu1X56
#374 [七瀬]
最初に裏切ったのは私。
奏を誘惑した麻友ちゃんも
誘惑に負けた奏も
私に二人を責める資格はないんや…
黙り込む。
だってなんも言われへん。
自業自得や。
:09/03/30 00:49 :N703iD :gYBu1X56
#375 [七瀬]
「でも、良かったやろ?
まつりは原田さんと会えてんし。
感謝してほしいくらいやわ。
ほんま大変やったで。
原田さんの住所調べんの。」
ペラペラと楽しそうに話す麻友ちゃん。
私の知らんところで、
いろんなことが起こってて頭が着いていかなかった。
:09/03/30 00:54 :N703iD :gYBu1X56
#376 [七瀬]
「ほんまは、天神祭に連れて来たかってんけど、
思ったより時間かかって、間に合わんかった。
だって、おもろいやん。
奏とまつりが付き合った、天神祭で、その二人が壊れていくなんて。
それに思い出すんやろ?
天神祭の花火見たら、初恋の、あの人を。」
:09/03/30 01:01 :N703iD :gYBu1X56
#377 [七瀬]
麻友ちゃんは、心底悔しそうに、そして愉快そうに言った。
「ほんま惜しいことしたわ。」
『ふ…ふざけんといて。』
なんて弱気な声なんやろ。
麻友ちゃんとは、まるで対照的な声だった。
:09/03/30 01:05 :N703iD :gYBu1X56
#378 [七瀬]
「ふざける?」
そんな私を鼻で笑う麻友ちゃん。
「“ありがとう”くらい
ゆうてほしいなあ。
会いたかったやろ?
運命の赤い糸で結ばれた
愛しい愛しいあの人と。」
バンッ
『ええ加減にして!』
:09/03/30 01:10 :N703iD :gYBu1X56
#379 [七瀬]
机に手をつく。
周りの視線が突き刺さる。
今の私には精一杯の反撃だった。
けれども麻友ちゃんは
そんな私に、もろともしないようだった。
「“ええ加減にして”?
それはこっちのセリフや。」
:09/03/30 01:14 :N703iD :gYBu1X56
#380 [七瀬]
「いつまでも奏を振り回して…
ええ加減にしてよ!」
初めて、麻友ちゃんは声を荒げた。
大きな目が吊り上がり気味に私を見ている。
「私はまつりとは違う!
まつりみたいに
奏を初恋の人と重ねて見たりしてない!!」
:09/03/30 01:19 :N703iD :gYBu1X56
#381 [七瀬]
ズキン…
麻友ちゃんの言葉が
胸を傷める。
「私の方が奏を幸せに出来る。
一人の男として見れる!
私の方が…
奏を愛してる!!」
それでも、
容赦なく降り掛かってくる言葉。
:09/03/30 01:23 :N703iD :gYBu1X56
#382 [七瀬]
確かにそうかもしれない。
私は奏とあの人を重ねてた。
「私は、ずっと前から奏が好きやった。
まつりが悪いんやで。」
麻友ちゃんは店を出た。
私はポツリと、麻友ちゃんの言い残した言葉の重みを感じていた。
:09/03/30 11:38 :N703iD :gYBu1X56
#383 [七瀬]
祭があるまでの、この四日間。
すごくすごく考えた。
こんなに頭を使ったのは、人生初かもしれへん。
今日は雨がザーザー降ってじめじめしていた。
余りにも、すごい雨やから祭は中止に、なりかけけどセーフだった。
でも、花火は中止のようだった。
:09/03/30 11:47 :N703iD :gYBu1X56
#384 [七瀬]
傘をさして、カステラへと向かう。
今日は、大竹さんがお休みなので、
遊希がカステラを焼いて、私は前場をすることになった。
金魚は麻友ちゃんがするみたい。
少し安心した。
奏も来てるみたいだけど、会う元気と勇気はすっかりなくしてしまった。
:09/03/30 11:51 :N703iD :gYBu1X56
#385 [七瀬]
「ちょっと、まつり。
これ、金魚に持っていって。」
お母さんが、最悪な仕事を持って来て、自分の店に帰っていった。
金魚…
麻友ちゃん。
「俺が持って行くわ。」
遊希は、なにかを察して
気を使ってくれた。
:09/03/30 11:55 :N703iD :gYBu1X56
#386 [七瀬]
『ううん…遊希は粉練らなあかんし、私が行くわ。』
遊希にいつまでも迷惑かけたらあかん。
もう一度、
傘を広げ、金魚へと足を運ばせた。
パシャパシャパシャ
歩くたびに、水溜まりが足に跳ねて、冷たい。
金魚の約10メートル前で
立ち止まる。
:09/03/30 11:59 :N703iD :gYBu1X56
#387 [七瀬]
麻友ちゃんと奏が
キスしてた。
まるで、あの日みたい。
たくさんの金魚たちに見守られて…
そう、2年前の天神祭。
:09/03/30 12:02 :N703iD :gYBu1X56
#388 [七瀬]
ボォーっと、2人を眺めていると、
麻友ちゃんが私に思えてきた。
私と奏が、そこにいるように錯覚してきた。
早く、こっから立ち去らないと…
身体の危険信号が黄色になっていた。
:09/03/30 12:05 :N703iD :gYBu1X56
#389 [七瀬]
奏と目が合う。
時間が止まったみたい。
奏と麻友ちゃんは向かい合っていて、
私には麻友ちゃんの背中と、奏の大きく見開かれた目しか見えない。
危険信号はすでに、赤に変わっているはずなのに
なぜか客観的に見てる自分がいた。
:09/04/01 11:11 :N703iD :VvI5HsyM
#390 [七瀬]
人生初の浮気現場を目撃して…
これから
人生初の修羅場?
なーんてアホなことを考えてると
奏は麻友ちゃんから離れ、金魚からも、遠ざかっていった。
麻友ちゃんの見たことない幸せそうな横顔が小さく見えた。
:09/04/01 11:18 :N703iD :VvI5HsyM
#391 [七瀬]
ここで、つっ立ってっていてもアカンし…
麻友ちゃんへと歩いてゆく。
水の跳ねる足音でなのか、麻友ちゃんが私の存在に気付いた。
『これ…』
お母さんに頼まれてたものを渡す。
:09/04/01 11:22 :N703iD :VvI5HsyM
#392 [七瀬]
「ありがとぉ、まつり。」
昨日と同じ人物と思えない。
化粧の仕方
服装
そしてオーラ…
なにもかもが、
いつもの麻友ちゃん。
やっぱり昨日のことは夢やったんやろか…
それと、さっきのことも…
:09/04/01 11:25 :N703iD :VvI5HsyM
#393 [七瀬]
『じゃあ…』
「待って。」
どうやら、夢のままでは
終わってくれないみたい。
私の願いも虚しく、
現実に引き戻される。
「見た?」
と、たった一言。
低い声。
:09/04/01 11:29 :N703iD :VvI5HsyM
#394 [七瀬]
『見たよ。』
と、私も一言。
「そう。」
カステラへと体の向きを変える。
「…奏を私にちょうだい。」
:09/04/01 11:36 :N703iD :VvI5HsyM
#395 [七瀬]
訂正
× なにもかもが昨日のこと〜
〇 なにもかもが四日前のこと〜
すいません(><)
“昨日”をすべて
“四日前”とします。
:09/04/01 12:56 :N703iD :VvI5HsyM
#396 [七瀬]
「まつり、どしたんや。さっきからボーっとして。」
『遊希…なんもないよ。
それよりお客さん0やなあ。客所か人っ子一人、歩いてへんわ。』
「当たり前や。
こんな大雨やのに。
って、それより…
やっぱ、なんかあったんやろ、あの日。」
:09/04/01 13:04 :N703iD :VvI5HsyM
#397 [七瀬]
『あったよ。』
なにも考えずゆう。
なんかもう、どうでもなれって感じ。
『麻友ちゃんに
“奏を私にちょうだい”
ってゆわれた。』
「麻友と会ったんか。」
『会ったよ〜
遊希のゆうてるあの日に』
:09/04/01 13:07 :N703iD :VvI5HsyM
#398 [七瀬]
「やっぱり…
いきなり走りだした思たけど、やっぱり奏の家、行っとってんな。」
『そう!ご名答!!
遊希するどーい。』
笑って、おどけて見せる。
『そして…家から出てきた。麻友ちゃんが。
でも、奏をちょうだいってゆわれたのは、その日じゃない。
ついさっき。』
:09/04/01 13:13 :N703iD :VvI5HsyM
#399 [七瀬]
遊希は小さくため息をしながら言った。
「だから、ゆうたやんけ。
俺が行ったるって…」
ほんま、そうすれば良かった。
遊希に頼んでれば、
あんなシーン見なくて済んだのに。
アホや、と後悔する。
:09/04/01 13:17 :N703iD :VvI5HsyM
#400 [七瀬]
「お前…」
今度は大きくため息をつく遊希。
「だから、言いたくなかってん。
絶対泣くから…」
『ほんっ…ま、聞かんかったら…良かった。
私…アホやな…。』
なぜか、こんな時になって泣けてくる。
:09/04/01 13:30 :N703iD :VvI5HsyM
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