記憶を売る本屋さん
最新 最初 🆕
#201 [我輩は匿名である]
「…月城くんって、ちょっと他の子と違うよね」

「…へ??」

直人はぽかんとする。

「いや、変わってるっていう意味じゃないよ?そうじゃないけど…」

「あー、まぁ何となくわかるよ。変に大人びてると言うか、クールすぎるというか」

「ははっ。うん、月城くんってあんまり騒いだりしないみたいだから、何か目を引くっていうか…」

「あぁ、騒がないなぁ、あいつは。喋ってて楽しいか?」

「楽しいよ。月城くん、いろんな話してくれるから」

⏰:10/03/29 20:34 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#202 [我輩は匿名である]
「そっか、あいつが女を気にするのって初めてだから、どーしても気になってさ」

「…そうなんだ」

響子は少し顔を赤くして目をそらす。

「ま、そういう事だからさ、あいつの事可愛がってやって」

「あははっ、何それ」

直人と響子はそんな話をしながら、ぼちぼちと家に帰っていった。

⏰:10/03/29 20:35 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#203 [我輩は匿名である]
直人はベッドに寝転んで、少しめんどくさそうに本を見つめる。

「…そろそろ何か起きてくんねーかなぁー…」

どうせ今日も何もないのだろうが、万が一何か進展があっても困る。

直人ははぁっとため息をつき、起き上がる。

期待はせずに、ゆっくりと本を開いた。

⏰:10/03/29 23:30 📱:N08A3 🆔:P5Rp3vxg


#204 [。゚+ゆきな+゚。]
>>2-200

⏰:10/03/29 23:58 📱:SH904i 🆔:eeM7faXQ


#205 [我輩は匿名である]
>>204さん
ありがとうございます

⏰:10/03/30 12:30 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#206 [我輩は匿名である]
今日もまた、学校だ。

それも下校中。

「絶対何もないな。あーあ…いつまでこうなんだよ…」

直人は早速ぶつぶつ言う。

「あのぅ…」

要の背後で声がした。

振り返ると、見たことのある顔。

「うわぁ…美代だ…」

話し掛けてきたのは、あの美代だった。

⏰:10/03/30 12:30 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#207 [我輩は匿名である]
「…何か用?」

要が尋ねる。

「…晶ちゃんが伝言を、って…」

「晶ちゃんが?」

「うん」

美代の表情は、何だか元気がなさそうだ。

「…伝言って何だよ?」

直人は首を傾げる。

今日はいつもとちょっと違う。

⏰:10/03/30 12:31 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#208 [我輩は匿名である]
「…来週、行けないって」

「え、それだけ?」

要はきょとんとする。

「うん、それだけ。『言ってきて』って言われたから…」

「…何で来れないか聞いてない?」

「わからない。それだけしか言われてないの」

「…そっか、わかった。ありがとう」

要は美代に礼を言う。

⏰:10/03/30 12:31 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#209 [我輩は匿名である]
美代はそのまま帰っていった。

「…来れないのか…、でも、何でまた…?」

要も直人も首を傾げる。

理由がないのは、何だか怪しい。

「あいつの嘘…?ってのも、アリだよなぁ…」

いろいろと引っ掛けられてきたため、さすがの直人も今回は疑ってかかる。

「…まぁ…しかたないかな。今度また様子見に行こう」

要はそう独り言を言ってまた歩きだす。

⏰:10/03/30 12:31 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#210 [我輩は匿名である]
今日はそれだけだった。

次の日曜日、つまり5月5日の約束が無くなった、という事だけ。

「(ゴールデンウィーク中か。あの時代からゴールデンウィークがあったのかわかんねぇけど)」

戻ってきた直人は考える。

施設中で何かあるのか、とも思ったが、それなら美代が知っているはずだ。

何が理由なのか?昨日のデートでは何も問題はなく、仲良く話していたではないか。

「うーん…わかんねぇなぁ…」

直人は頭を悩ませながら本を閉じた。

⏰:10/03/30 12:32 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#211 [我輩は匿名である]
次の朝。

曇り空の下で、薫と響子はいつものように話している。

「…ここまで、夢の方はどうなった?」

「えっと…屋上で洗濯物手伝ってもらって、仲良くなって、ご飯に行って、

もう1回ご飯に行った時に、『私とお付き合いして下さい』って言われて…。

“私”は『はい』って返事して、お付き合いする事になった。

今日は、ドライブに連れていってもらった」

「そうか」

順調だな。薫は少し笑う。

⏰:10/03/30 12:32 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#212 [我輩は匿名である]
「(初めて会ったのは3月、ドライブに行ったのは7月…。

…本よりも進むのが早いのか…?)」

薫は黙って考えていた。

「…でも、まだ顔はわからないんだ」

響子は残念そうに言う。

「そのうち見えるよ」

「…そうだよね」

薫に言われて、響子は笑った。

⏰:10/03/30 12:33 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#213 [我輩は匿名である]
「…変な事言うけど…夢なのに、…好きなんだ、あの人のこと」

恥ずかしいそうに、響子は途切れ途切れに話す。

薫はそれを見て優しく笑う。

「なんかね、夢だと思えなくて。覚めなかったらいいのにって思うくらい」

「覚めないと困るだろ」

「それはそうなんだけどね」

それに、もうすぐそれは現実になるよ。

薫は心の中で呟いた。

⏰:10/03/30 12:33 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#214 [我輩は匿名である]
今日は怜奈は、直人に一言も話し掛けて来なかった。

「お前、昨日何か言ったのか?」

帰り道、直人は薫に聞いた。

「あぁ、『悪いけど諦めてくれ』って釘刺しといた」

「よくやるな」

「付きまとわれると面倒だろ?香月に何かあっても困るしな」

薫は参ったように髪を触る。

「まぁそうだよなぁ」

「あーゆー危なそうなやつは、はっきり言っといた方がいいんだよ」

薫はいつになく、少し苛立っているようだ。

⏰:10/03/30 13:24 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#215 [我輩は匿名である]
怜奈を良く思っていないのだろう。

「そういえば、昨日たまたま香月がいたから、一緒に帰ってきたんだ」

直人は適当に話を変える。

「へぇ、初めて喋ったんじゃないか?」

「あぁ。なんか、女の子らしい奴だな」

「何だよそれ。…まぁ、男っぽくはないけど」

薫は笑う。

「お前の事、『他の子とは違う』って言ってたぞ。多分、雰囲気が」

「そんな事言ってたのか?」

⏰:10/03/30 13:24 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#216 [我輩は匿名である]
「騒がないからな、お前」

「騒ぐのはお前だけで十分だろ」

「何だよそれ!」

嘲笑う薫に、直人はギャーギャー騒ぐ。

「(…ふぅん、香月っていうんだ。あの女)」

2人の会話を、曲がり角の陰から怜奈が聞いていた。

しばらく2人の後ろ姿を見た後、冷たい笑顔を浮かべてその場を離れた。

⏰:10/03/30 13:25 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#217 []
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600

⏰:10/03/30 14:13 📱:SO905iCS 🆔:F62lBiEg


#218 [我輩は匿名である]
結局、日曜になるまでまた何も起こらなかった。

5月5日。

約束はなくなったが、要はとりあえず、あの場所に行ってみることにした。

直人もそれが正しいだろうと、黙って景色を見つめる。

もしかしたら、あの場所にいるかもしれない。

要も直人も、少し緊張気味だ。

あと角を2つ曲がってまっすぐ行けば、あの場所に着く。

「あの…」

1つ目の角を曲がる寸前、誰かが要に話し掛けてきた。

⏰:10/03/30 19:38 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#219 [我輩は匿名である]
振り替えると、細身で綺麗な女性が、困った顔で立っている。

「はい?」

「この辺の方ですか?ちょっと道に迷ってしまって…」

マジかよ。直人も困ったように女性を見返す。

「えっと…どこに行きたいんですか?」

「姫崎公園に…」

「あぁ…結構迷っちゃいましたね」

「遠いんですか?」

「歩いて20分ぐらいかかるんです。…説明しにくいしなぁ…」

要は腕を組んで考える。

⏰:10/03/30 19:38 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#220 [我輩は匿名である]
そして、「ちょっとここで待ってて下さいね」と言って走りだした。

晶が来ていないか確認しておく為だ。

しかし、やっぱり晶は来ていなかった。

「…来てないな。じゃあいいか」

要はそう言って、また来た道を戻る。

「すいません、待たせちゃって。…僕が一緒に行きます」

「えっ?でも、何か予定があったんじゃ…」

「いえ、散歩してただけですから。行きましょう」

「ごめんなさい、ありがとうございます」

⏰:10/03/30 19:39 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#221 [我輩は匿名である]
女性は優しい笑顔を見せる。

「…昔でもこんな綺麗な人いるんだな」

女性の顔に、直人はしばし見とれる。

「…はっ!何考えてんだ俺!俺には晶がいるだろ!」

自分で言って、直人はまた考える。

晶と付き合っているのは、直人ではなく要である。

しかし時々、今のように、自分が付き合っているような錯覚に陥る事がある。

「…うーん…俺もヤバくなってきてるかな…?」

いろいろあったりなかったりで、本の怖さを忘れていた。

⏰:10/03/30 19:40 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#222 [我輩は匿名である]
慣れてきたのかもしれないが。

「この辺、結構ごちゃごちゃしてて、分かりにくいんですよね。よく迷う人いるんですよ」

「そうなんですか?良かった、ちょっと安心です」

要と女性は、ただ黙っていくのもつまらないと、仲良く話しながら歩いている。

「私、ここに来たのは初めてなんです。いい町ですね」

「そう…ですね、いい人ばかりだし。何でこの町に?」

「大学の友達の家に遊びに来たんです。地図もらったんですが、どうしてもわからなくて」

女性は恥ずかしそうに笑う。

「車とかで送ってくれる人がいれば楽なんですけどね」

⏰:10/03/30 19:40 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#223 [我輩は匿名である]
「そうですね。父がいれば、送ってくれたんでしょうけど…」

「お仕事ですか?」

「亡くなったんです、戦争で」

女性は隠しもせずに言った。

直人は呆然とする。

よく考えれば、ここは1977年。戦争が終わって22年しか経っていないのだ。

「…なるほどな…」

「すいません、そんなつもりじゃ…」

「あぁ、いいんです。親がいないのには慣れてますから」

「…え…」

⏰:10/03/30 19:41 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#224 [我輩は匿名である]
「私、父も母も死んだので、養護施設で育ったんです。

母が亡くなったのは戦後ですけど」

「養護施設?」

直人も要も、その言葉に目を丸くする。

「俺の友達にも、施設で育った子がいるんです」

「そうなんですか?偶然ですね、なかなかいないのに」

「はい。びっくりしました…」

要も驚いているようだった。

「…学校、楽しいですか?」

要はふと、そんな事を尋ねた。

⏰:10/03/30 19:41 📱:N08A3 🆔:3m0ZWZ2s


#225 [我輩は匿名である]
すみません。
>>223
の「22年」は「32年」のミスでした

⏰:10/03/31 10:33 📱:N08A3 🆔:Cnlymdz2


#226 [我輩は匿名である]
「え?えぇ、楽しいですよ。高校も楽しかったけど、私は大学の方が楽しいかな。…どうして?」

「いやぁ…その友達が、学校は楽しくないって言ってたから…」

「…施設で育った負い目で?」

女性に言われて、要は「多分」と答える。

「そんなの、関係ないですよ」

女性は笑う。

「施設で育った子も親の元で育った子も、どっちが良い、なんて事はありません。

私は施設で育った事を友達に言いましたが、今でもその子は友達のままです。

…その子は、自分から壁を作ってるんじゃないかな」

⏰:10/03/31 10:34 📱:N08A3 🆔:Cnlymdz2


#227 [我輩は匿名である]
「…壁…かぁ…」

女性に言われて、要は繰り返す。

確かに晶の性格なら、あり得なくはない。

「その子に、『思い切って踏み込んでみて』って言っといて下さい。

『受け入れてくれない子は、その程度の子。他にもいい子はたくさんいるから』って」

女性はにっこり笑って、要に伝えた。

要は「はい!」と大きく頷く。

前方に大きな公園が見える。

「あっ、あれですよ。姫崎公園」

⏰:10/03/31 10:35 📱:N08A3 🆔:Cnlymdz2


#228 [我輩は匿名である]
「え?あっ、着いたー!」

女性は胸に手をあて、大きく息をつく。

公園の前で、2人の女性が、こちらに手を振っている。

「良かった、友達もちゃんと待っててくれたみたい。ありがとう」

「いえ、こちらこそ楽しかったです。また来て下さいね」

要は笑って女性に手を振る。

女性もこちらに手を振って、友達の元へ走っていった。

要もまた、家へと引き返す。

もう一度あの場所に行こうかとも考えたが、

さっきいなかったから今日は来ないだろうと、要はまっすぐ家に帰った。

⏰:10/03/31 10:35 📱:N08A3 🆔:Cnlymdz2


#229 [我輩は匿名である]
直人は本を閉じる。

あの女性に会って、何だか元気が出た気がする。

「直接晶を会わせてやりたかったなぁ…」

自分が伝えるよりも、あの女性が直接話をした方が、晶も勇気が出たかもしれない。

「(…あの女の人、元気かなぁ…?)」

直人はそんな事を考えながら、ボーッと窓の外の夜空を眺めた。

⏰:10/04/01 17:03 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#230 [我輩は匿名である]
直人は大きなあくびをして机に突っ伏せる。

大好きなゴールデンウィークも終わってしまった。

外は雨が降っており、廊下を見れば、屋上に行けない薫と響子が窓の方をむいて話している。

「…この間ね、プロポーズされたんだ」

響子は薫だけに聞こえるような声で言った。

「霜月優也に?」

「うん。寒かったから、冬だったと思う」

「12月13日」

薫は開いた窓の桟に両肘を置く。

⏰:10/04/01 18:04 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#231 [我輩は匿名である]
「そうなの?…よく知ってるね、相変わらず」

「まぁな」

薫は鼻を高くして笑う。

「3月に結婚式しようって。…私も嬉しくて、すぐにうんって返事して…」

響子は少し頬を赤らめて話す。

薫も笑ってそれを見つめる。

「でね、今日はその、結婚式だったの。

真っ白い、綺麗なドレスを着せてもらって、優也に指輪をはめてもらって…。

…すごく幸せだった」

薫はすぐに気付いた。

⏰:10/04/01 18:04 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#232 [我輩は匿名である]
響子が「優也」と、呼び捨てで呼び始めている事に。

ついこの間まで「あの人」と呼ぶ事が多かった。

「(…話の進度は速くても、キョウコの見る夢はあの本とほぼ同じみたいだな…)」

薫は1人、静かに考えを巡らせていた。

⏰:10/04/01 18:05 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#233 [我輩は匿名である]
「うーん…」

直人は本を手に、ベッドの上で頭を悩ませる。

今日は何事も無かったのだが、やはり晶の、来れなかった理由が気になるらしい。

「(…何かある気がするんだよなぁ…)」

今まで素直に要と接していた晶が、理由も無しに来ないのはおかしい。

それも、自分で言いに来ないとなると尚更だ。

めんどくさがり屋の直人ならともかく、晶はそんな性格でもない。

しかも、嫌いだと言っていた美代に、そんな伝言を託すだろうか?

直人は大きくため息をつく。

⏰:10/04/01 18:05 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#234 [我輩は匿名である]
「(…やっぱり、帰りにもう1回あの場所に戻るべきだったのか…?)」

直人の意志で要の身体を動かせないにも関わらず、直人はそんな事を考える。

しかし、2時頃に1度見に行っても、あの場所に晶はいなかった。

「…あー…わかんねぇなぁ…。何か気に障る事したか…?」

あぐらをかいて、直人は長い間頭を抱えていた。

⏰:10/04/01 18:06 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#235 [我輩は匿名である]
次の日、珍しく飛鳥が学校を休んでいた。

「(…今日あいつ休みなのか)」

そこまで仲良くは無いのだが、どこか気になってしまう。

「(…最近気になる事が多いなぁ…。悩みがないのが自慢だったのに…)」

直人はシャーペンをくるくる回しながら、机に肘をついて考える。

晶の事、飛鳥の事…。

おまけに、またある事を思い出す。

薫の「初めて人を殺したいと思った」という言葉。

あれは一体何だったのか?余計な事を思い出してしまった。

⏰:10/04/01 18:06 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#236 [我輩は匿名である]
「水無月」

「へ?」

ボーッとしていた直人は、先生に名前を呼ばれたのに気付かなかった。

顔を上げると、先生も周りの生徒もこっちを見ている。

が、何で呼ばれたのかわからない。

「24ページの2行目から読め!」

幸い、後ろの席の男子が小声で教えてくれた。

「サンキュ!」

直人は小声で礼を言い、慌てて立ち上がって、言われた所を読み始めた。

⏰:10/04/01 18:45 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#237 [我輩は匿名である]
「今日、元気ないじゃん」

昼休み、薫が直人に言った。

「…そうか?」

「ないだろ、どう見ても。授業中はずっとボーッとしてるし」

「…うーん…」

直人は口をモグモグさせながら、鼻からふぅっと息を吐く。

「……なんかさぁ、考え事多すぎて、もう頭がパンクしそうっつーか…」

「考え事?珍しいな」

薫はきょとんとする。

⏰:10/04/01 18:46 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#238 [我輩は匿名である]
「…俺、何か怒らしちまったかなぁー…」

「…誰を?」

「…晶」

直人は言いながら、ボーッと弁当のおかずを口に入れていく。

逆に、薫の箸が止まる。

「…石川晶か」

「んー…」

直人は適当に返事をした後、思い出したように薫を見た。

⏰:10/04/01 18:46 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#239 [我輩は匿名である]
「そういえばお前、晶の事も知ってんのか?」

直人の問いに、薫はしばらく黙る。

そして、考えながら口を開いた。

「あぁ、知ってるよ」

やっぱりな。直人は思った。

「何で?何かお前、何でも知ってるよな」

「俺の本にも出てくるからだよ」

「…へ?じゃあ俺も出てくるからくんの?」

「お前は出ない」

薫はきっぱりと否定する。

⏰:10/04/01 18:47 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#240 [我輩は匿名である]
直人はどういう事かと首をひねる。

「わかった!お前、晶の施設の…」

「残念ながら俺は両親の元で家で育った」

ちっ。直人はブスッとする。

「じゃあ何で晶だけがお前の本に出てくるんだよ?」

そう聞かれて、薫はまた、しばし考える。

「…お前が本を全部読み終わったら教えてやるよ」

「はぁ〜?それ、いつになるんだよ」

薫の言葉に、直人はうなだれる。

薫はそれを見て、笑いながら心の中で呟いた。

「あと1ヶ月もしないうちにわかる」と。

⏰:10/04/01 18:47 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#241 [我輩は匿名である]
次の日曜日も、何故か晶は待ち合わせ場所に来なかった。

要は気になって、晶の住む施設まで行ってみる。

忘れているのだろうか?

それとも、先週会わなかったため、今週は約束していない事になっているのだろうか?

確かにそれはあるかも知れないが、何も言わずに来なくなるのはおかしい。

直人は要の中で、必死に頭を働かせる。

もしかしたら、他に好きな男でも?

しかし、彼女は「私には要くんしかいないから」と言っていた。

まぁ時が流れれば変わる事もあるわけだが。

⏰:10/04/01 19:55 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#242 [我輩は匿名である]
でも、ちょっとひねくれてはいても、普通の純粋な女の子である。

そんなにコロコロと気が変わるような子ではない。

少なくとも直人はそう信じている。

直人がそうだという事は、きっと要も同じであるだろうが。

あれこれ考えている間に、目の前には施設の門が迫っていた。

要はふうっと、息を吐く。

「…あ」

晶はちょうど、門の近くで花壇の花に水をやっていた。

「何だよ、普通にいるじゃねぇか」

直人は少しムッとした。

⏰:10/04/01 19:55 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#243 [我輩は匿名である]
要は少し重い足取りで晶に近づく。

「…晶ちゃん」

要は彼女にギリギリ聞こえるような声で呼ぶ。

晶は少しキョロついてから、要に気が付いた。

「来ないから、何かあったのかと思って」

要はちょっと苦笑する。

しかし、晶は何も言わない。

それどころか、顔を背けてどこかへ走り去ってしまった。

⏰:10/04/01 19:55 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#244 [我輩は匿名である]
要も直人も、わけがわからずきょとんとする。

「…何だよ?今の…」

何だかわからないが、怒っているような態度。

しかし、2人とも心当たりは全くない。

そのため、直人は逆に腹が立ってきた。

「おい、あんな女ほっといて帰ろうぜ」

直人が言うのと同時に、要は踵を返す。

2人とも納得がいかないまま、とぼとぼと家路に着いた。

⏰:10/04/01 19:56 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#245 [我輩は匿名である]
元の世界に戻っても、直人のイライラは収まらない。

すぐに本を閉じて、文を読む気にすらならない。

「何なんだよ…この間来れないって言ったの、あっちだろ…」

直人はぶつぶつ言いながら寝転ぶ。

だからめんどくさい女は嫌なんだ。そう思いながら目を閉じた。

⏰:10/04/01 19:57 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#246 [我輩は匿名である]
1日ボーッとした日が続く。

薫と何を話したのかもあまり覚えていないほど。

飛鳥も今週は出席していたが、直人と同じようにボーッとしては、放課後すぐに学校を出ていた。

直人は何となく、それも気になっていたが、何もしないまま、気付けばもう金曜日だった。

運悪く、今日は直人と怜奈が日直だ。

余計にため息が出る。

しかも今日は体育。教室の鍵締めという面倒な仕事がある。

⏰:10/04/01 20:16 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#247 [我輩は匿名である]
「はぁ…」

直人は大きくため息を吐く。

「鍵締めめんどくせー、とか思ってんでしょ」

怜奈に言われて、直人はハッと、彼女の方を向く。

「べっ、別にそんな…!」

「いいよ?男子の教室の鍵も閉めてあげても」

「…へ?」

直人はぽかんとする。

「女子の方が着替え長いからね。まとめて閉めてあげてもいいよって言ってんの。

いやなら別にいいけど」

⏰:10/04/01 20:16 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#248 [我輩は匿名である]
「いや!是非閉めてくれ!助かる!」

『意外といい奴かも』と、直人は怜奈に手を合わせる。

その拍子に、薫が珍しく席に着いているのが見えた。

まだ朝礼まで10分あるというのに。

直人は立ち上がり、薫の席に行く。

「おい、どうしたんだよ?今日は晴れてるぞ?」

ボーッとしていた薫は、声をかけられて顔を上げる。

「…あぁ…ちょっとな…」

本を持つ者がみんなボーッとしている。

⏰:10/04/01 20:17 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#249 [我輩は匿名である]
直人は何かおかしいと感じた。

「喧嘩でもしたか?」

「いや…キョウコがちょっと体調悪いみたいでな…」

「…キョウコぉ?」

とうとう呼び捨てになったか。直人はにやつく。

「休んでんのか?」

「いや、来てるけど」

「じゃあ会いに行けばいいじゃん。昨日も普通に会ってただろ?」

「…昨日と今日じゃ状況が違うんだよ」

⏰:10/04/01 20:17 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


#250 [我輩は匿名である]
薫は思い詰めたように言った。

直人はますます首をかしげる。

そして、ハッとした。

「手ぇ出しちゃったか!」

「出してない!!」

薫は鬼のような顔で言い返す。

が、すぐに暗い顔に戻ってしまった。

「…出してないけど…」

薫がこんな顔をするのはほとんど見た事がない。

直人は困って頭を掻く。

⏰:10/04/01 20:17 📱:N08A3 🆔:IMFDvu/M


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194