記憶を売る本屋さん
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#201 [我輩は匿名である]
「…月城くんって、ちょっと他の子と違うよね」
「…へ??」
直人はぽかんとする。
「いや、変わってるっていう意味じゃないよ?そうじゃないけど…」
「あー、まぁ何となくわかるよ。変に大人びてると言うか、クールすぎるというか」
「ははっ。うん、月城くんってあんまり騒いだりしないみたいだから、何か目を引くっていうか…」
「あぁ、騒がないなぁ、あいつは。喋ってて楽しいか?」
「楽しいよ。月城くん、いろんな話してくれるから」
:10/03/29 20:34
:N08A3
:P5Rp3vxg
#202 [我輩は匿名である]
「そっか、あいつが女を気にするのって初めてだから、どーしても気になってさ」
「…そうなんだ」
響子は少し顔を赤くして目をそらす。
「ま、そういう事だからさ、あいつの事可愛がってやって」
「あははっ、何それ」
直人と響子はそんな話をしながら、ぼちぼちと家に帰っていった。
:10/03/29 20:35
:N08A3
:P5Rp3vxg
#203 [我輩は匿名である]
直人はベッドに寝転んで、少しめんどくさそうに本を見つめる。
「…そろそろ何か起きてくんねーかなぁー…」
どうせ今日も何もないのだろうが、万が一何か進展があっても困る。
直人ははぁっとため息をつき、起き上がる。
期待はせずに、ゆっくりと本を開いた。
:10/03/29 23:30
:N08A3
:P5Rp3vxg
#204 [。゚+ゆきな+゚。]
:10/03/29 23:58
:SH904i
:eeM7faXQ
#205 [我輩は匿名である]
:10/03/30 12:30
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#206 [我輩は匿名である]
今日もまた、学校だ。
それも下校中。
「絶対何もないな。あーあ…いつまでこうなんだよ…」
直人は早速ぶつぶつ言う。
「あのぅ…」
要の背後で声がした。
振り返ると、見たことのある顔。
「うわぁ…美代だ…」
話し掛けてきたのは、あの美代だった。
:10/03/30 12:30
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#207 [我輩は匿名である]
「…何か用?」
要が尋ねる。
「…晶ちゃんが伝言を、って…」
「晶ちゃんが?」
「うん」
美代の表情は、何だか元気がなさそうだ。
「…伝言って何だよ?」
直人は首を傾げる。
今日はいつもとちょっと違う。
:10/03/30 12:31
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#208 [我輩は匿名である]
「…来週、行けないって」
「え、それだけ?」
要はきょとんとする。
「うん、それだけ。『言ってきて』って言われたから…」
「…何で来れないか聞いてない?」
「わからない。それだけしか言われてないの」
「…そっか、わかった。ありがとう」
要は美代に礼を言う。
:10/03/30 12:31
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#209 [我輩は匿名である]
美代はそのまま帰っていった。
「…来れないのか…、でも、何でまた…?」
要も直人も首を傾げる。
理由がないのは、何だか怪しい。
「あいつの嘘…?ってのも、アリだよなぁ…」
いろいろと引っ掛けられてきたため、さすがの直人も今回は疑ってかかる。
「…まぁ…しかたないかな。今度また様子見に行こう」
要はそう独り言を言ってまた歩きだす。
:10/03/30 12:31
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#210 [我輩は匿名である]
今日はそれだけだった。
次の日曜日、つまり5月5日の約束が無くなった、という事だけ。
「(ゴールデンウィーク中か。あの時代からゴールデンウィークがあったのかわかんねぇけど)」
戻ってきた直人は考える。
施設中で何かあるのか、とも思ったが、それなら美代が知っているはずだ。
何が理由なのか?昨日のデートでは何も問題はなく、仲良く話していたではないか。
「うーん…わかんねぇなぁ…」
直人は頭を悩ませながら本を閉じた。
:10/03/30 12:32
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#211 [我輩は匿名である]
次の朝。
曇り空の下で、薫と響子はいつものように話している。
「…ここまで、夢の方はどうなった?」
「えっと…屋上で洗濯物手伝ってもらって、仲良くなって、ご飯に行って、
もう1回ご飯に行った時に、『私とお付き合いして下さい』って言われて…。
“私”は『はい』って返事して、お付き合いする事になった。
今日は、ドライブに連れていってもらった」
「そうか」
順調だな。薫は少し笑う。
:10/03/30 12:32
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#212 [我輩は匿名である]
「(初めて会ったのは3月、ドライブに行ったのは7月…。
…本よりも進むのが早いのか…?)」
薫は黙って考えていた。
「…でも、まだ顔はわからないんだ」
響子は残念そうに言う。
「そのうち見えるよ」
「…そうだよね」
薫に言われて、響子は笑った。
:10/03/30 12:33
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#213 [我輩は匿名である]
「…変な事言うけど…夢なのに、…好きなんだ、あの人のこと」
恥ずかしいそうに、響子は途切れ途切れに話す。
薫はそれを見て優しく笑う。
「なんかね、夢だと思えなくて。覚めなかったらいいのにって思うくらい」
「覚めないと困るだろ」
「それはそうなんだけどね」
それに、もうすぐそれは現実になるよ。
薫は心の中で呟いた。
:10/03/30 12:33
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#214 [我輩は匿名である]
今日は怜奈は、直人に一言も話し掛けて来なかった。
「お前、昨日何か言ったのか?」
帰り道、直人は薫に聞いた。
「あぁ、『悪いけど諦めてくれ』って釘刺しといた」
「よくやるな」
「付きまとわれると面倒だろ?香月に何かあっても困るしな」
薫は参ったように髪を触る。
「まぁそうだよなぁ」
「あーゆー危なそうなやつは、はっきり言っといた方がいいんだよ」
薫はいつになく、少し苛立っているようだ。
:10/03/30 13:24
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#215 [我輩は匿名である]
怜奈を良く思っていないのだろう。
「そういえば、昨日たまたま香月がいたから、一緒に帰ってきたんだ」
直人は適当に話を変える。
「へぇ、初めて喋ったんじゃないか?」
「あぁ。なんか、女の子らしい奴だな」
「何だよそれ。…まぁ、男っぽくはないけど」
薫は笑う。
「お前の事、『他の子とは違う』って言ってたぞ。多分、雰囲気が」
「そんな事言ってたのか?」
:10/03/30 13:24
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#216 [我輩は匿名である]
「騒がないからな、お前」
「騒ぐのはお前だけで十分だろ」
「何だよそれ!」
嘲笑う薫に、直人はギャーギャー騒ぐ。
「(…ふぅん、香月っていうんだ。あの女)」
2人の会話を、曲がり角の陰から怜奈が聞いていた。
しばらく2人の後ろ姿を見た後、冷たい笑顔を浮かべてその場を離れた。
:10/03/30 13:25
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#217 [
]
:10/03/30 14:13
:SO905iCS
:F62lBiEg
#218 [我輩は匿名である]
結局、日曜になるまでまた何も起こらなかった。
5月5日。
約束はなくなったが、要はとりあえず、あの場所に行ってみることにした。
直人もそれが正しいだろうと、黙って景色を見つめる。
もしかしたら、あの場所にいるかもしれない。
要も直人も、少し緊張気味だ。
あと角を2つ曲がってまっすぐ行けば、あの場所に着く。
「あの…」
1つ目の角を曲がる寸前、誰かが要に話し掛けてきた。
:10/03/30 19:38
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#219 [我輩は匿名である]
振り替えると、細身で綺麗な女性が、困った顔で立っている。
「はい?」
「この辺の方ですか?ちょっと道に迷ってしまって…」
マジかよ。直人も困ったように女性を見返す。
「えっと…どこに行きたいんですか?」
「姫崎公園に…」
「あぁ…結構迷っちゃいましたね」
「遠いんですか?」
「歩いて20分ぐらいかかるんです。…説明しにくいしなぁ…」
要は腕を組んで考える。
:10/03/30 19:38
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#220 [我輩は匿名である]
そして、「ちょっとここで待ってて下さいね」と言って走りだした。
晶が来ていないか確認しておく為だ。
しかし、やっぱり晶は来ていなかった。
「…来てないな。じゃあいいか」
要はそう言って、また来た道を戻る。
「すいません、待たせちゃって。…僕が一緒に行きます」
「えっ?でも、何か予定があったんじゃ…」
「いえ、散歩してただけですから。行きましょう」
「ごめんなさい、ありがとうございます」
:10/03/30 19:39
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#221 [我輩は匿名である]
女性は優しい笑顔を見せる。
「…昔でもこんな綺麗な人いるんだな」
女性の顔に、直人はしばし見とれる。
「…はっ!何考えてんだ俺!俺には晶がいるだろ!」
自分で言って、直人はまた考える。
晶と付き合っているのは、直人ではなく要である。
しかし時々、今のように、自分が付き合っているような錯覚に陥る事がある。
「…うーん…俺もヤバくなってきてるかな…?」
いろいろあったりなかったりで、本の怖さを忘れていた。
:10/03/30 19:40
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#222 [我輩は匿名である]
慣れてきたのかもしれないが。
「この辺、結構ごちゃごちゃしてて、分かりにくいんですよね。よく迷う人いるんですよ」
「そうなんですか?良かった、ちょっと安心です」
要と女性は、ただ黙っていくのもつまらないと、仲良く話しながら歩いている。
「私、ここに来たのは初めてなんです。いい町ですね」
「そう…ですね、いい人ばかりだし。何でこの町に?」
「大学の友達の家に遊びに来たんです。地図もらったんですが、どうしてもわからなくて」
女性は恥ずかしそうに笑う。
「車とかで送ってくれる人がいれば楽なんですけどね」
:10/03/30 19:40
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#223 [我輩は匿名である]
「そうですね。父がいれば、送ってくれたんでしょうけど…」
「お仕事ですか?」
「亡くなったんです、戦争で」
女性は隠しもせずに言った。
直人は呆然とする。
よく考えれば、ここは1977年。戦争が終わって22年しか経っていないのだ。
「…なるほどな…」
「すいません、そんなつもりじゃ…」
「あぁ、いいんです。親がいないのには慣れてますから」
「…え…」
:10/03/30 19:41
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#224 [我輩は匿名である]
「私、父も母も死んだので、養護施設で育ったんです。
母が亡くなったのは戦後ですけど」
「養護施設?」
直人も要も、その言葉に目を丸くする。
「俺の友達にも、施設で育った子がいるんです」
「そうなんですか?偶然ですね、なかなかいないのに」
「はい。びっくりしました…」
要も驚いているようだった。
「…学校、楽しいですか?」
要はふと、そんな事を尋ねた。
:10/03/30 19:41
:N08A3
:3m0ZWZ2s
#225 [我輩は匿名である]
すみません。
>>223の「22年」は「32年」のミスでした

:10/03/31 10:33
:N08A3
:Cnlymdz2
#226 [我輩は匿名である]
「え?えぇ、楽しいですよ。高校も楽しかったけど、私は大学の方が楽しいかな。…どうして?」
「いやぁ…その友達が、学校は楽しくないって言ってたから…」
「…施設で育った負い目で?」
女性に言われて、要は「多分」と答える。
「そんなの、関係ないですよ」
女性は笑う。
「施設で育った子も親の元で育った子も、どっちが良い、なんて事はありません。
私は施設で育った事を友達に言いましたが、今でもその子は友達のままです。
…その子は、自分から壁を作ってるんじゃないかな」
:10/03/31 10:34
:N08A3
:Cnlymdz2
#227 [我輩は匿名である]
「…壁…かぁ…」
女性に言われて、要は繰り返す。
確かに晶の性格なら、あり得なくはない。
「その子に、『思い切って踏み込んでみて』って言っといて下さい。
『受け入れてくれない子は、その程度の子。他にもいい子はたくさんいるから』って」
女性はにっこり笑って、要に伝えた。
要は「はい!」と大きく頷く。
前方に大きな公園が見える。
「あっ、あれですよ。姫崎公園」
:10/03/31 10:35
:N08A3
:Cnlymdz2
#228 [我輩は匿名である]
「え?あっ、着いたー!」
女性は胸に手をあて、大きく息をつく。
公園の前で、2人の女性が、こちらに手を振っている。
「良かった、友達もちゃんと待っててくれたみたい。ありがとう」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。また来て下さいね」
要は笑って女性に手を振る。
女性もこちらに手を振って、友達の元へ走っていった。
要もまた、家へと引き返す。
もう一度あの場所に行こうかとも考えたが、
さっきいなかったから今日は来ないだろうと、要はまっすぐ家に帰った。
:10/03/31 10:35
:N08A3
:Cnlymdz2
#229 [我輩は匿名である]
直人は本を閉じる。
あの女性に会って、何だか元気が出た気がする。
「直接晶を会わせてやりたかったなぁ…」
自分が伝えるよりも、あの女性が直接話をした方が、晶も勇気が出たかもしれない。
「(…あの女の人、元気かなぁ…?)」
直人はそんな事を考えながら、ボーッと窓の外の夜空を眺めた。
:10/04/01 17:03
:N08A3
:IMFDvu/M
#230 [我輩は匿名である]
直人は大きなあくびをして机に突っ伏せる。
大好きなゴールデンウィークも終わってしまった。
外は雨が降っており、廊下を見れば、屋上に行けない薫と響子が窓の方をむいて話している。
「…この間ね、プロポーズされたんだ」
響子は薫だけに聞こえるような声で言った。
「霜月優也に?」
「うん。寒かったから、冬だったと思う」
「12月13日」
薫は開いた窓の桟に両肘を置く。
:10/04/01 18:04
:N08A3
:IMFDvu/M
#231 [我輩は匿名である]
「そうなの?…よく知ってるね、相変わらず」
「まぁな」
薫は鼻を高くして笑う。
「3月に結婚式しようって。…私も嬉しくて、すぐにうんって返事して…」
響子は少し頬を赤らめて話す。
薫も笑ってそれを見つめる。
「でね、今日はその、結婚式だったの。
真っ白い、綺麗なドレスを着せてもらって、優也に指輪をはめてもらって…。
…すごく幸せだった」
薫はすぐに気付いた。
:10/04/01 18:04
:N08A3
:IMFDvu/M
#232 [我輩は匿名である]
響子が「優也」と、呼び捨てで呼び始めている事に。
ついこの間まで「あの人」と呼ぶ事が多かった。
「(…話の進度は速くても、キョウコの見る夢はあの本とほぼ同じみたいだな…)」
薫は1人、静かに考えを巡らせていた。
:10/04/01 18:05
:N08A3
:IMFDvu/M
#233 [我輩は匿名である]
「うーん…」
直人は本を手に、ベッドの上で頭を悩ませる。
今日は何事も無かったのだが、やはり晶の、来れなかった理由が気になるらしい。
「(…何かある気がするんだよなぁ…)」
今まで素直に要と接していた晶が、理由も無しに来ないのはおかしい。
それも、自分で言いに来ないとなると尚更だ。
めんどくさがり屋の直人ならともかく、晶はそんな性格でもない。
しかも、嫌いだと言っていた美代に、そんな伝言を託すだろうか?
直人は大きくため息をつく。
:10/04/01 18:05
:N08A3
:IMFDvu/M
#234 [我輩は匿名である]
「(…やっぱり、帰りにもう1回あの場所に戻るべきだったのか…?)」
直人の意志で要の身体を動かせないにも関わらず、直人はそんな事を考える。
しかし、2時頃に1度見に行っても、あの場所に晶はいなかった。
「…あー…わかんねぇなぁ…。何か気に障る事したか…?」
あぐらをかいて、直人は長い間頭を抱えていた。
:10/04/01 18:06
:N08A3
:IMFDvu/M
#235 [我輩は匿名である]
次の日、珍しく飛鳥が学校を休んでいた。
「(…今日あいつ休みなのか)」
そこまで仲良くは無いのだが、どこか気になってしまう。
「(…最近気になる事が多いなぁ…。悩みがないのが自慢だったのに…)」
直人はシャーペンをくるくる回しながら、机に肘をついて考える。
晶の事、飛鳥の事…。
おまけに、またある事を思い出す。
薫の「初めて人を殺したいと思った」という言葉。
あれは一体何だったのか?余計な事を思い出してしまった。
:10/04/01 18:06
:N08A3
:IMFDvu/M
#236 [我輩は匿名である]
「水無月」
「へ?」
ボーッとしていた直人は、先生に名前を呼ばれたのに気付かなかった。
顔を上げると、先生も周りの生徒もこっちを見ている。
が、何で呼ばれたのかわからない。
「24ページの2行目から読め!」
幸い、後ろの席の男子が小声で教えてくれた。
「サンキュ!」
直人は小声で礼を言い、慌てて立ち上がって、言われた所を読み始めた。
:10/04/01 18:45
:N08A3
:IMFDvu/M
#237 [我輩は匿名である]
「今日、元気ないじゃん」
昼休み、薫が直人に言った。
「…そうか?」
「ないだろ、どう見ても。授業中はずっとボーッとしてるし」
「…うーん…」
直人は口をモグモグさせながら、鼻からふぅっと息を吐く。
「……なんかさぁ、考え事多すぎて、もう頭がパンクしそうっつーか…」
「考え事?珍しいな」
薫はきょとんとする。
:10/04/01 18:46
:N08A3
:IMFDvu/M
#238 [我輩は匿名である]
「…俺、何か怒らしちまったかなぁー…」
「…誰を?」
「…晶」
直人は言いながら、ボーッと弁当のおかずを口に入れていく。
逆に、薫の箸が止まる。
「…石川晶か」
「んー…」
直人は適当に返事をした後、思い出したように薫を見た。
:10/04/01 18:46
:N08A3
:IMFDvu/M
#239 [我輩は匿名である]
「そういえばお前、晶の事も知ってんのか?」
直人の問いに、薫はしばらく黙る。
そして、考えながら口を開いた。
「あぁ、知ってるよ」
やっぱりな。直人は思った。
「何で?何かお前、何でも知ってるよな」
「俺の本にも出てくるからだよ」
「…へ?じゃあ俺も出てくるからくんの?」
「お前は出ない」
薫はきっぱりと否定する。
:10/04/01 18:47
:N08A3
:IMFDvu/M
#240 [我輩は匿名である]
直人はどういう事かと首をひねる。
「わかった!お前、晶の施設の…」
「残念ながら俺は両親の元で家で育った」
ちっ。直人はブスッとする。
「じゃあ何で晶だけがお前の本に出てくるんだよ?」
そう聞かれて、薫はまた、しばし考える。
「…お前が本を全部読み終わったら教えてやるよ」
「はぁ〜?それ、いつになるんだよ」
薫の言葉に、直人はうなだれる。
薫はそれを見て、笑いながら心の中で呟いた。
「あと1ヶ月もしないうちにわかる」と。
:10/04/01 18:47
:N08A3
:IMFDvu/M
#241 [我輩は匿名である]
次の日曜日も、何故か晶は待ち合わせ場所に来なかった。
要は気になって、晶の住む施設まで行ってみる。
忘れているのだろうか?
それとも、先週会わなかったため、今週は約束していない事になっているのだろうか?
確かにそれはあるかも知れないが、何も言わずに来なくなるのはおかしい。
直人は要の中で、必死に頭を働かせる。
もしかしたら、他に好きな男でも?
しかし、彼女は「私には要くんしかいないから」と言っていた。
まぁ時が流れれば変わる事もあるわけだが。
:10/04/01 19:55
:N08A3
:IMFDvu/M
#242 [我輩は匿名である]
でも、ちょっとひねくれてはいても、普通の純粋な女の子である。
そんなにコロコロと気が変わるような子ではない。
少なくとも直人はそう信じている。
直人がそうだという事は、きっと要も同じであるだろうが。
あれこれ考えている間に、目の前には施設の門が迫っていた。
要はふうっと、息を吐く。
「…あ」
晶はちょうど、門の近くで花壇の花に水をやっていた。
「何だよ、普通にいるじゃねぇか」
直人は少しムッとした。
:10/04/01 19:55
:N08A3
:IMFDvu/M
#243 [我輩は匿名である]
要は少し重い足取りで晶に近づく。
「…晶ちゃん」
要は彼女にギリギリ聞こえるような声で呼ぶ。
晶は少しキョロついてから、要に気が付いた。
「来ないから、何かあったのかと思って」
要はちょっと苦笑する。
しかし、晶は何も言わない。
それどころか、顔を背けてどこかへ走り去ってしまった。
:10/04/01 19:55
:N08A3
:IMFDvu/M
#244 [我輩は匿名である]
要も直人も、わけがわからずきょとんとする。
「…何だよ?今の…」
何だかわからないが、怒っているような態度。
しかし、2人とも心当たりは全くない。
そのため、直人は逆に腹が立ってきた。
「おい、あんな女ほっといて帰ろうぜ」
直人が言うのと同時に、要は踵を返す。
2人とも納得がいかないまま、とぼとぼと家路に着いた。
:10/04/01 19:56
:N08A3
:IMFDvu/M
#245 [我輩は匿名である]
元の世界に戻っても、直人のイライラは収まらない。
すぐに本を閉じて、文を読む気にすらならない。
「何なんだよ…この間来れないって言ったの、あっちだろ…」
直人はぶつぶつ言いながら寝転ぶ。
だからめんどくさい女は嫌なんだ。そう思いながら目を閉じた。
:10/04/01 19:57
:N08A3
:IMFDvu/M
#246 [我輩は匿名である]
1日ボーッとした日が続く。
薫と何を話したのかもあまり覚えていないほど。
飛鳥も今週は出席していたが、直人と同じようにボーッとしては、放課後すぐに学校を出ていた。
直人は何となく、それも気になっていたが、何もしないまま、気付けばもう金曜日だった。
運悪く、今日は直人と怜奈が日直だ。
余計にため息が出る。
しかも今日は体育。教室の鍵締めという面倒な仕事がある。
:10/04/01 20:16
:N08A3
:IMFDvu/M
#247 [我輩は匿名である]
「はぁ…」
直人は大きくため息を吐く。
「鍵締めめんどくせー、とか思ってんでしょ」
怜奈に言われて、直人はハッと、彼女の方を向く。
「べっ、別にそんな…!」
「いいよ?男子の教室の鍵も閉めてあげても」
「…へ?」
直人はぽかんとする。
「女子の方が着替え長いからね。まとめて閉めてあげてもいいよって言ってんの。
いやなら別にいいけど」
:10/04/01 20:16
:N08A3
:IMFDvu/M
#248 [我輩は匿名である]
「いや!是非閉めてくれ!助かる!」
『意外といい奴かも』と、直人は怜奈に手を合わせる。
その拍子に、薫が珍しく席に着いているのが見えた。
まだ朝礼まで10分あるというのに。
直人は立ち上がり、薫の席に行く。
「おい、どうしたんだよ?今日は晴れてるぞ?」
ボーッとしていた薫は、声をかけられて顔を上げる。
「…あぁ…ちょっとな…」
本を持つ者がみんなボーッとしている。
:10/04/01 20:17
:N08A3
:IMFDvu/M
#249 [我輩は匿名である]
直人は何かおかしいと感じた。
「喧嘩でもしたか?」
「いや…キョウコがちょっと体調悪いみたいでな…」
「…キョウコぉ?」
とうとう呼び捨てになったか。直人はにやつく。
「休んでんのか?」
「いや、来てるけど」
「じゃあ会いに行けばいいじゃん。昨日も普通に会ってただろ?」
「…昨日と今日じゃ状況が違うんだよ」
:10/04/01 20:17
:N08A3
:IMFDvu/M
#250 [我輩は匿名である]
薫は思い詰めたように言った。
直人はますます首をかしげる。
そして、ハッとした。
「手ぇ出しちゃったか!」
「出してない!!」
薫は鬼のような顔で言い返す。
が、すぐに暗い顔に戻ってしまった。
「…出してないけど…」
薫がこんな顔をするのはほとんど見た事がない。
直人は困って頭を掻く。
:10/04/01 20:17
:N08A3
:IMFDvu/M
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