浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 全 
#101 [笹]
:10/04/19 20:43
:D905i
:2Nqm1ljI
#102 [笹]
:10/04/19 20:44
:D905i
:2Nqm1ljI
#103 [笹]
:
:
それは季節に似合わず
肌寒い日だった
「財布‥落としましたぜ」
財布と言うか
小さな巾着袋が
金物がこすれる音を立てて
その主の袖口からこぼれた
:10/05/02 20:51
:D905i
:sxqRlBYk
#104 [笹]
「あぁ!これは申し訳ない!!
俺としたことが‥」
拾い上げて埃をはらったそれを
手のひらに乗せてやれば
かしこまって頭を下げられる
「いえ、いえ」
緩く微笑み背を向ければ
軽く引かれた着物の袖
:10/05/02 20:51
:D905i
:sxqRlBYk
#105 [笹]
「一杯‥どうですか?」
できた笑い皺
人の良さが滲み出る
先程の巾着を持ち上げ
"おごらせてくれ"と言った
小さな木枯らしが
肌をかすめた夕暮れ
:10/05/02 20:52
:D905i
:sxqRlBYk
#106 [笹]
:
:
「あんた面白い人だなぁ!!」
「いえ、いえ」
相手方の男は
どうやら"出来上がった"ようで
首や耳のあたりまで赤くして
ぐいっと肩を組んできた
:10/05/02 20:52
:D905i
:sxqRlBYk
#107 [笹]
「いいなぁ‥旅かぁ」
完全に緩みきった顔
男に抱かれたって嬉しかない
そっちの気は
流石にありゃあしない
抱き寄せられた体を
投げるようにして任せれば
にこにこと笑い満足げ
:10/05/02 20:52
:D905i
:sxqRlBYk
#108 [笹]
「俺も旅したいさぁー。
できるなら、あんたみたいに
1人でいろーんなとこ‥」
馬鹿でかかった声は一転
萎んで終いにはかすれて消えた
もう片方の手で酒瓶を握り
何かから逃れるように
喉の奥に流し込んでいた
:10/05/02 20:53
:D905i
:sxqRlBYk
#109 [笹]
「何か、厄介なことでも
‥あるんで?」
横目で問えば
困ったように笑ってた
「んあぁ‥んん」
「まぁ、誰にでも‥
そんなものは有ります、よ」
「あぁそうだ!!
聞いてくれるか?あんちゃんよ」
:10/05/02 20:53
:D905i
:sxqRlBYk
#110 [笹]
肩に乗っていた手に
ぐいっと引き寄せられた
酒の甘ったるい臭いが
顔にかかる
自分もこんなに酒臭いのかと
少しばかり気落ちした
「娘がな、居るんだけどな」
:10/05/02 20:54
:D905i
:sxqRlBYk
#111 [笹]
溢れんばかりの笑み
この先の言葉に
だいたいの検討はつきますが‥
「それがさ、もう‥
可愛くて可愛くて仕方ないんだ!」
そんな事を言われて
抱き寄せられた私に
あんたは何を求めてるんだ‥
:10/05/02 20:56
:D905i
:sxqRlBYk
#112 [笹]
「ほぉう」
「もう今年で十になるんだが
最近じゃあお姉さんになって‥」
「へぇ、はぁ」
「ほんとに何というか‥
いい子でなぁ、」
その瞬間
父親の目つきになった
力強く、その上暖かい
:10/05/02 20:57
:D905i
:sxqRlBYk
#113 [笹]
「危なっかしい所もあるが、
責任感と正義感が強くて‥
唯一の‥励みなんだ」
少しばかり低くなった声
読みとれるのは
暗闇に埋もれた絶望
娘を語る口調は
暖かくも悲しみに濡れていた
:10/05/02 20:57
:D905i
:sxqRlBYk
#114 [笹]
「そりゃあ‥いい娘さん、ですね」
「‥」
その男は突っ伏したまま
ぴくりともしなかった
人々の騒がしさに埋もれた姿は
たった独りだけ
取り残されたような
別の空気をまとって見えた
:10/05/02 20:58
:D905i
:sxqRlBYk
#115 [笹]
酔いつぶれた‥か
ため息ひとつ
猪口を持ち上げ飲み干す液体
普段よりも苦味を感じた
:10/05/02 20:58
:D905i
:sxqRlBYk
#116 [笹]
:
:
「なぁ‥あんちゃん。」
‥起きてたんですか
「あんた、名前は?」
「壱助‥と申します」
突っ伏したままの頭に答えれば
"ふぅん"と弱々しく唸った
:10/05/02 20:58
:D905i
:sxqRlBYk
#117 [笹]
「なぁ‥壱助」
「何、か」
「頼みが‥あるんだ」
少しばかり嫌な予感がした
酔った勢いだと
投げてしまえばそれまでだが
口調は先ほどより
はっきりしている
:10/05/02 20:59
:D905i
:sxqRlBYk
#118 [笹]
「俺に‥もしものことがあったら」
「娘を頼む‥とでも?」
否定を求めて問ったんですが、ね
「あぁ‥何でわかった?
やっぱりあんた、徒者じゃないな」
「‥奥さんは?」
:10/05/02 20:59
:D905i
:sxqRlBYk
#119 [笹]
「死んだよ。娘を産んですぐに‥
今は‥別の女と暮らしてんだ」
そしてまた酒を口にした
小刻みに震えていた手が
苦しみのあまり
酒に逃げ続けた事を物語っていた
:10/05/02 21:00
:D905i
:sxqRlBYk
#120 [笹]
「娘には、その女が母親だって
‥そう言ってある。」
「何、故」
「可哀想だった‥。
何も知らずに"お母さんは?"って
‥"死んだ"なんて、言えなかった」
:10/05/02 21:00
:D905i
:sxqRlBYk
#121 [笹]
途切れ途切れの言葉が
妙に奥に突き刺さった
何とも言えない
もどかしさを覚えた
「幸せになってほしいんだ
香夜には‥妻の分まで‥」
やっと顔を上げ
此方に向けられた顔は
父親の顔だった
:10/05/02 21:01
:D905i
:sxqRlBYk
#122 [笹]
最愛の人の死を迎え
絶望に満ちたその瞳は
守らねばならぬものを
確かに持っていた
「香夜に何一つ‥
父親らしいことを
‥してやれなかった。
仕事ばかりで、あまり時間も‥
だからせめて
守りたいんだ。あの子を」
:10/05/02 21:01
:D905i
:sxqRlBYk
#123 [笹]
「あんた‥もしかして」
ふと過ぎるのは暗黒の世界
目に浮かぶは褐色の液体
鼓動が乱れた
:10/05/02 21:02
:D905i
:sxqRlBYk
#124 [笹]
「壱助‥香夜を頼む」
決意に満ちた目は
恐怖に脅えてなどいなかった
ただ一心にひたすらに‥
:10/05/02 21:02
:D905i
:sxqRlBYk
#125 [笹]
香夜さん‥私には任務がある
―‥貴女を守る任務が、ね
_
:10/05/02 21:03
:D905i
:sxqRlBYk
#126 [笹]
:10/05/02 21:08
:D905i
:sxqRlBYk
#127 [笹]
:10/05/02 21:09
:D905i
:sxqRlBYk
#128 [笹]
*゚*。*゚*
「あれ‥?
ない‥ないない‥」
「朝から騒がしい、ですね」
それはある雨の日のこと
いつものように
壱助さんの顔面攻撃を食らい
目を覚ましたわけですが‥
:10/05/03 22:20
:D905i
:92Bmo8C2
#129 [笹]
「ないんですぅーっ!!」
「‥」
もう今は
そんな呆れた視線なんて
気にもならない
ないんですよ‥あたしの‥
「か ん ざ し ーっ!!!」
:10/05/03 22:21
:D905i
:92Bmo8C2
#130 [笹]
:
:
雨音が強くなる
屋根にぶつかる雫は
ばちばちと打ち抜くようで
液体だということを
忘れさせるくらいだった
「あたしの簪!!
‥知りませんか?
確か昨日枕元に‥あれぇ?」
:10/05/03 22:21
:D905i
:92Bmo8C2
#131 [笹]
枕元を見ても
枕を持ち上げて揺すって見ても
どこにも見当たらない
部屋中をじっと見回し
昨夜の記憶を辿る
:10/05/03 22:21
:D905i
:92Bmo8C2
#132 [笹]
「簪くらい‥
いいじゃあないですか、ねぇ」
「よくなーいっ!!
お気に入りなのに‥」
何処までもこの人は悠長で
興味がないのか何なのか
どうせ人事だと思ってるんでしょ
もー‥。
:10/05/03 22:22
:D905i
:92Bmo8C2
#133 [笹]
少し膨れっ面で髪をかきむしれば
壱助さんが自分の枕を見つめた
「形見か‥何かですかい?」
そう言って
とりあえずと言った様子で
枕を持ち上げた
絶対探す気ないわ‥
:10/05/03 22:22
:D905i
:92Bmo8C2
#134 [笹]
「いや‥ただ
可愛いから気に入ってたんです」
「ほぉう‥
そりゃあ、どんな?」
結局すぐに枕を下ろし
いつものように茶を煎れはじめ
「えっと‥
簪自体は黒くて、
飴色の硝子玉の飾りが‥」
:10/05/03 22:23
:D905i
:92Bmo8C2
#135 [笹]
「飴色‥ねぇ」
少し考えるようにして
顎に添えられた細長い指
そしてつられるように
艶容な唇が弧を描いた
「‥はぁ。
もういいです。
自分で捜します、自分で」
:10/05/03 22:24
:D905i
:92Bmo8C2
#136 [笹]
茶を啜り一息つく姿を見ると
ひとりで騒いでる自分が
惨めに思えてくる
無くしたあたしが悪いんです
自分の物は自分で管理しろ
そういうことですよね
雨音がさらった
少しばかりの心意気
:10/05/03 22:24
:D905i
:92Bmo8C2
#137 [笹]
湿気に犯された畳を拭うように
着物が擦れる音がした
「ちょいと、野暮用に‥」
「え‥
あたしの簪は??」
「今、自分で捜すと
仰ったじゃあ‥ないですか」
:10/05/03 22:24
:D905i
:92Bmo8C2
#138 [笹]
「うぅん‥
でも外雨降ってるし‥ねぇ?」
ちらり外に向いた壱助さんの視線
右手に握られた真っ赤な番傘
ガサッと紙が擦れるような音
こんなもので
何故雨を防げるのかと
不思議に思う
:10/05/03 22:25
:D905i
:92Bmo8C2
#139 [笹]
そして此方に向けられた視線は
相変わらず鋭いもので
「ちょいと‥野暮用に」
「‥い、いってらっしゃい」
雨の中に埋もれた真っ赤な色は
遠く遠くに姿を消した
:10/05/03 22:26
:D905i
:92Bmo8C2
#140 [笹]
「んうぅ‥簪‥」
雑に髪をたくし上げ
そのまま手を離せば
切りっぱなしの
伸びかかった黒髪が
だらしなく揺れていた
:10/05/03 22:26
:D905i
:92Bmo8C2
#141 [笹]
:
:
「はぁ‥やっぱりない」
部屋中いたるとこを捜した
なのにない
なんで?なんで?
「まぁ‥あれも
だいぶ使い込んで‥
飾りの部分が欠けてたんだけど」
:10/05/03 22:27
:D905i
:92Bmo8C2
#142 [笹]
新しいの買い直そうかなぁ‥
ふと後ろに気配を感じ
振り返れば
「うわっ!!
お‥お帰りなさいっ」
髪が濡れていた
ぽたり落ちた雫が頬を伝った
:10/05/03 22:27
:D905i
:92Bmo8C2
#143 [笹]
「壱助さん?
傘‥さしてたんじゃ?」
水も滴るいい男。
うん‥悪くないかも
真っ白な首筋から一滴
胸元をすり抜けて
着物の奥に消えた
それを目で負えば
雫の行方が気になって
胸が高鳴る
:10/05/03 22:28
:D905i
:92Bmo8C2
#144 [笹]
「ちょいと‥
破れちまいやして、ね」
やはり紙は脆いのか‥
にしても
どれだけ大きな穴が‥
「ふぅん‥ほんとに?」
「まぁ、いいじゃあないですか」
:10/05/03 22:29
:D905i
:92Bmo8C2
#145 [笹]
壱助さんの声が
上から降り注いで
後ろから
ぎゅうっと抱きしめられた
湿った着物が首筋に貼り付く
「んえ‥あの‥」
:10/05/03 22:29
:D905i
:92Bmo8C2
#146 [笹]
「まるっきり同じとは
‥なかなか言えませんが、」
少し冷えた手がうなじに触れた
綺麗な指に絡まる髪
高く持ち上げられれば
首筋にすうっと空気が抜けた
:10/05/03 22:30
:D905i
:92Bmo8C2
#147 [笹]
「飴色‥ですぜ」
華奢に鳴いた硝子玉
鏡を覗けばきらきら光った
「壱助さん‥これ‥」
「さすがにもう‥これじゃあ」
「あ‥それ」
:10/05/03 22:30
:D905i
:92Bmo8C2
#148 [笹]
今にも硝子玉が落ちそうに
ぷらぷらとだらしない簪
鏡越しに見つめれば
すっと壱助さんの懐の中へ
「もしかして‥わざわざ」
「香夜さん‥」
「‥はい?」
:10/05/03 22:31
:D905i
:92Bmo8C2
#149 [笹]
「ちょいと体が‥冷えます故‥」
優しく首元を抱いた腕は
雨に濡れて冷たくて
「今暫く‥このままで」
たった一時の、幸せを‥
:10/05/03 22:31
:D905i
:92Bmo8C2
#150 [笹]
【おまけ】
「本当に穴開いたんですか?」
「‥人助け、ですよ」
「はぁ?何ですかそれ」
「あの番傘も‥
綺麗な娘さんの手に渡り
さぞかし‥幸せでしょう、ね」
「‥色男め」
:10/05/03 22:36
:D905i
:92Bmo8C2
#151 [笹]
:10/05/03 22:39
:D905i
:92Bmo8C2
#152 [笹]
:10/05/03 22:40
:D905i
:92Bmo8C2
#153 [笹]
:
:
全てを語られた
途切れ途切れの記憶が
全てつなぎ止められた
壱助さんの手によって‥
自分の記憶を信じ切ってたから
隠れた真実に息が止まる
:10/05/17 13:21
:D905i
:u/aJ89Bs
#154 [笹]
「貴女の父上は
‥死と向き合った」
そんなことを言われたって
簡単に飲み込めずに喉に絡まる
お父さんはあたしを救うため
命を捨てたこと
"アレ"は母親ではないこと
壱助さんがお父さんの代わりに
あたしを守ってくれてること
:10/05/17 13:21
:D905i
:u/aJ89Bs
#155 [笹]
‥何から処理したらいい?
これは知るべき事実なのか
それさえもわからなかった
視界が揺れる
右へ、左へ‥
灰色に染まった世界
じわりと濁った
「どうして‥ですか?」
:10/05/17 13:21
:D905i
:u/aJ89Bs
#156 [笹]
一番気にかかる
一番疑問に思うのは
「どうして‥お父さんの頼みを?」
たった一晩共に飲んだだけだ
よくわからない男の
わけのわからない頼みを
どうして受け入れた?
:10/05/17 13:22
:D905i
:u/aJ89Bs
#157 [笹]
嘘かもしれない
酔った勢いかもしれない
何を根拠に、何を理由に
あたしの傍に‥貴方は‥
「何となく‥ですか、ね」
「‥んえ?」
予想もしていなかった
曖昧な宙に浮いたような返事に
気の抜けた声が漏れた
:10/05/17 13:22
:D905i
:u/aJ89Bs
#158 [笹]
「何となく‥ですよ」
「何となくで人を見殺しにして
何となくで‥あたしを?」
妙な憤り
何か正確な理由を
予想していたわけではないけど
ちゃんとした理由が欲しかった
このもどかしさを
埋めてほしかった
:10/05/17 13:23
:D905i
:u/aJ89Bs
#159 [笹]
そしたら何故か
気持ちに整理が付きそうで‥
「あるじゃあないですか‥
根拠は無くとも‥ねぇ」
「じゃあ‥どうして
お父さんを助けて‥」
「よく魘されたもんです、よ
あの生々しい残虐さ‥」
:10/05/17 13:23
:D905i
:u/aJ89Bs
#160 [笹]
被せられた声は
遠くを見つめているような
それでいてまだ
生々しさを保ったままで
飛び散った褐色の液体
へばりつくような呻き声
鼓膜を突き破る悲鳴
あの光景を
貴方は同じように見てた
:10/05/17 13:23
:D905i
:u/aJ89Bs
#161 [笹]
「眠りにつくたびに
襲われるものですから‥
単純に‥寝るのを止めましたが」
とんだ冷酷人間だ
そう思っていたけれど
もしかしたら
あたしなんかより
重い恐怖を背負っていたのかも
:10/05/17 13:24
:D905i
:u/aJ89Bs
#162 [笹]
「香夜さんと父上‥
両方を救うことなど
‥容易い事でした。」
「‥壱助さん」
「しかし‥
私には、その先が見えず
‥助けた所で
お二方が幸福かどうかなど
わかりゃしなかった。」
:10/05/17 13:24
:D905i
:u/aJ89Bs
#163 [笹]
少年が母親に
傷つけられていたあの時
壱助さんはあたしに
同じ様なことを言った
『助けた所で
貴女は少年を養えますか?
それが彼にとって
幸せだとは限らない。』
救い出すだけが勇気じゃない
見過ごす勇気は絶大だ
:10/05/17 13:24
:D905i
:u/aJ89Bs
#164 [笹]
「死を覚悟することは
そう‥容易いことではない」
壱助さんを
いつも遠くに感じた
すぐ近くにいるのに
どこか遠くて
壱助さんは
いつも真っ直ぐ先を見つめてた
:10/05/17 13:25
:D905i
:u/aJ89Bs
#165 [笹]
あまり笑わないし
いつだって冷静で
だけど本当は
誰よりも感情豊かで
それをただ胸の内に秘めて
常に一番正しい道を
選んできたんだ
‥何も知らなかった
明かされた鋼鉄の真実
:10/05/17 13:25
:D905i
:u/aJ89Bs
#166 [笹]
:10/05/17 13:31
:D905i
:u/aJ89Bs
#167 [笹]
:
:
あたしを守るため
死を惜しまなかった父
その父にあたしを任せられ
‥それじゃぁ、壱助さん
「死んで‥しまうの?」
もう目の前で
大切な人を失うのは嫌だ
:10/05/17 13:32
:D905i
:u/aJ89Bs
#168 [笹]
自分のためだと言われたって
独り残されたあたしは
どう生きたらいい?
生きる術が見つからないじゃない
ただ辛いだけじゃない
そんな思いまでして
生きたいなんて‥思えないよ
:10/05/17 13:32
:D905i
:u/aJ89Bs
#169 [笹]
「‥まぁ、それが私の使命
"生き甲斐"とでも
言っておきましょうか、ね」
目を伏せて笑った
苦笑でもない作り笑いでもない
どこか満足げな笑みだった
:10/05/17 13:33
:D905i
:u/aJ89Bs
#170 [笹]
あたしは壱助さんの為なら
死んだって構わない
そう思っているのに‥
どうして、そう
みんな身勝手なの?
:10/05/17 13:33
:D905i
:u/aJ89Bs
#171 [笹]
「見殺しにした‥からです。
罪償いです、よ
私なりの‥償い。」
つり上がった唇
綺麗に弧を描いて
切ないため息がひとつ
「まぁ‥そんなのは
只の言い訳にしか
‥過ぎないのもしれません、ね」
:10/05/17 13:34
:D905i
:u/aJ89Bs
#172 [笹]
ばちりと目があった
いつもの鋭さはどこか柔らかくて
まるで自分に呆れるかのように
軽く鼻であしらった
「義務じゃあない‥
私の意思です、よ」
「意思?」
:10/05/17 13:35
:D905i
:u/aJ89Bs
#173 [笹]
「まぁ、まぁ
こんな重い話は‥
性に合わないでしょう」
正座から足を崩し
胡座をかいて
少しだけはだけた着物
息苦しかった空間が
あっという間に解けた
:10/05/17 13:35
:D905i
:u/aJ89Bs
#174 [笹]
「香夜さん‥ちょいと手を‥」
「手?」
「此方に‥、」
浮かんだ笑みは怪しくて
何か企んでるに違いない
この手を差し出したら
食いちぎられるかもしれない‥
失礼かもしれないけど
それくらい不気味な笑みで
:10/05/17 13:36
:D905i
:u/aJ89Bs
#175 [笹]
躊躇いながら右手を見つめれば
ぴくりと微かに飛び跳ねた
出し惜しみすれば
早くしろよと鋭い視線
「はい‥手」
「‥遅い」
:10/05/17 13:37
:D905i
:u/aJ89Bs
#176 [笹]
「すみませ‥ぎゃああっ!!」
やっぱり食いちぎられるのかと
疑ってしまうほど‥
勢い良く手を捕られ
引きちぎれるほど強く引かれた
「ななな‥なになにな‥」
「もう少し‥
色っぽい声出せませんかい?」
:10/05/17 13:37
:D905i
:u/aJ89Bs
#177 [笹]
「余計なお世話‥あぁです」
目の前に映るは純白の肌
すっと潔く伸びた鎖骨
見上げればもうすぐそこに
‥艶容な唇に甘い吐息
「‥あ、の」
「何、か」
:10/05/17 13:38
:D905i
:u/aJ89Bs
#178 [笹]
「近い‥気が」
少しでも動いたら
触れてしまいそうで
思考が停止してしまわぬよう
忙しなく働く鼓動
乱れた重低音が漏れないように
そっと中心に意識を寄せた
:10/05/17 13:38
:D905i
:u/aJ89Bs
#179 [笹]
「何か不都合でも、お有りで?」
「え‥あぁ」
「‥香夜さん」
ごくり息を飲む
魚のように泳ぐ目を
覚悟を決めてきつく閉じる
:10/05/17 13:39
:D905i
:u/aJ89Bs
#180 [笹]
「ん‥」
唇に軽く触れたのは
冷たく美しい指先だった
緩く唇の輪郭をなぞる
気が散漫する
長い睫が柔らかく揺れた
:10/05/17 13:39
:D905i
:u/aJ89Bs
#181 [笹]
「貴女が望むなら‥
独りにはしません、よ
貴女を守り、最期まで‥共に」
穏やかな表情が降り注いで
包み込むように
そっと唇が触れた
言葉になんかしてないのに
壱助さんはいつも
あたしが望む言葉をくれる
たっぷりの雫を目に浮かべ
こぼれぬように小さく頷いた
:10/05/17 13:41
:D905i
:u/aJ89Bs
#182 [笹]
熱くなる頬をそのままに
甘い時に包まれて
惜しげもなく照らす月明かり
‥淡く揺れる二人影
:10/05/17 13:42
:D905i
:u/aJ89Bs
#183 [笹]
:10/05/17 13:46
:D905i
:u/aJ89Bs
#184 [笹]
:10/05/17 13:48
:D905i
:u/aJ89Bs
#185 [笹]
質問があったので
補足説明いたします ^^*
小説に組み込めれば
一番よかったんですが
どうも文章力に欠けるので
お許しくだされ(´・ω・`)
:10/05/27 21:19
:D905i
:LasqqonI
#186 [笹]
香夜ちゃんのお家は
借金取りに追われて?まして
お父さんは一応仕事あるんですが
なかなかいい稼ぎがなく
借金取りの怖い人たちが
毎日毎日家にやってくる。
(お父さんがいない時に)
それに耐えかねた義理の母が
人身売買と言うことで
香夜ちゃんを売るということで
交渉成立。
お父さんは家に帰ると
どこか清々してるような義母に
不信感を抱きそれ察する
:10/05/27 21:20
:D905i
:LasqqonI
#187 [笹]
当日
借金取りに香夜ちゃんを引き渡す
恐怖に脅えた香夜ちゃんは
唯一頼れるお父さんに
必死に助けを求める。
大切な一人娘を
連れて行かれてたまるかと
前日に死を覚悟してまで
助け出すと決意したお父さんは
香夜ちゃんを無理やり
輩の手から奪い取る。
話が違うと逆上した輩たちは
目の前に現れたお父さんを
刀で斬り倒した。
義理の母は自分の計画を狂わされ
愛する夫を亡くした悲しみを
香夜ちゃんに対する憎しみに変え
その日から虐待を始めた。
:10/05/27 21:21
:D905i
:LasqqonI
#188 [笹]
と言うことです ^^
自分の頭の中では
こういう設定だったんですが
なかなか組み込める機会がなく
言葉足らずになってしまいました
本当に申し訳ない(´・ω・`)
質問してくれた方
非常に助かりました !!
ありがとうございます **
たびたび
自分の中で思ってるだけで
文章にしてないことがあるので
わからなかった時は
気軽に聞いてください ^^*
これからものろま更新ですが
お付き合いのほど
よろしくお願いします( ・ω・ )
:10/05/27 21:21
:D905i
:LasqqonI
#189 [笹]
:
:
そして平凡‥平凡‥?
またいつものような生活に戻る
あんまり深入りはできなかった
だけどそれでよかったのかも
きっともう少し大人になって
心の準備ができたら
全部包み隠さず‥
心の準備と言えば‥あぁ
:10/05/27 21:22
:D905i
:LasqqonI
#190 [笹]
:
:
成り行きと言うか
そんな感じで呆気なく
‥壱助さんに唇が奪われた
体は冷たいのに
まるで別人かのように温かくて
その上、引き締まり
無駄な肉のない体とは違い
大福みたいにやわらかい
:10/05/27 21:22
:D905i
:LasqqonI
#191 [笹]
一瞬にして
こんな思いが頭を駆け巡り
現実だと思えば
頬は熱くなるばかりだった
「んん‥」
こういう時はどうしたらいいのか
経験不足なあたしには
何一つわからない
息はしていいのかとか
目は瞑るべきなのか‥とか
:10/05/27 21:23
:D905i
:LasqqonI
#192 [笹]
心の準備が間に合わなくて
驚きにかっと開いた瞼を
ゆっくりと閉じてみて
うっすら隙間から見える
柔らかな睫や通った鼻筋
毛穴などないんじゃないか?
‥そんな馬鹿なことは有り得ない
「ん‥んん」
:10/05/27 21:23
:D905i
:LasqqonI
#193 [笹]
遂に息苦しさも限界に達し
眉間にしわが寄った
壱助さんの着物の襟あたりを
ぐいっと掴み合図をしても
一向に離れる気配なし
まさか‥これは‥
一種のお仕置き?拷問か?
接吻にて窒息死‥
うぅん悪くないかも‥
:10/05/27 21:24
:D905i
:LasqqonI
#194 [笹]
若干遠のく意識を横目に
やっと離れた唇
余裕たっぷりなその唇の隙間から
小さく息が漏れていた
壱助さんの吸う分の空気まで
吸ってしまう勢いで
肺の隅から隅までに
部屋中の酸素を取り込んだ
:10/05/27 21:24
:D905i
:LasqqonI
#195 [笹]
「すぅ‥はぁ‥。」
「ほぉう‥」
「あの‥えと‥」
近すぎてぼやけていた顔が
少し離れてみてはっきり見えた
さっきまでの甘い時間に
恥ずかしさわ覚えて
胸のあたりから
どくどくと熱を帯びてきた
:10/05/27 21:25
:D905i
:LasqqonI
#196 [笹]
「物足りない‥と」
先ほどまで触れあっていた
艶容な唇がつり上がる
「我慢ならない‥か」
自分の手が
壱助さんの首に回ってることに
はっと気づく
:10/05/27 21:25
:D905i
:LasqqonI
#197 [笹]
離そうとしたときには
‥もう手遅れで
「欲しがり‥です、ね」
「ちが‥」
違うこともない。図星です
:10/05/27 21:26
:D905i
:LasqqonI
#198 [笹]
壱助さんはいい香りがする
お花みたいな匂い
金木犀に近い甘い匂い
ふわり香って
再び視界がぼやける
「ああ‥あの!!」
「何、か」
:10/05/27 21:27
:D905i
:LasqqonI
#199 [笹]
そんな接吻に
脳内を洗脳されてる場合じゃない
はっきりさせなきゃいけない
今が‥そのとき
魚のように泳ぐ目を
ぴたりと彼に向けて
「あの‥
壱助さんは‥何なんですか?」
:10/05/27 21:27
:D905i
:LasqqonI
#200 [笹]
「何、と申しますと?」
のどが乾く
ぴりぴりとした感覚が
のどの奥を突き抜ける
その感覚が声を押し付けて
中身のない弱々しい音となって
口から漏れた
:10/05/27 21:28
:D905i
:LasqqonI
#201 [笹]
「あたしと壱助さんの‥
関係って‥何なんでしょう?」
どんな答えが返ってきても
怖じ気付いてはいけない
呼吸をやめた
取り込んだ空気を
体いっぱいに溜めたまま
その返事を待つ
:10/05/27 21:28
:D905i
:LasqqonI
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194