亡き君に告ぐ
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#101 [不発花火]
もし「助けてくれ」と懇願されたら?
もし恐怖で涙が溢れる瞳で見つめられたら?
そう考えると本当に自分が出来るのか不安になるが、妻の顔がふと浮かんだ。
愛しい妻と、その子供。
リストラされた僕には出産費用や養育費、とにかく大金が必要になる。
:10/12/29 16:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#102 [不発花火]
500万あれば、今まで少ない給料で貯めていた貯金と合わせれば2年は家族3人なんとか生活出来るだろう。
その間に僕は再び就職先を見つければいい。
足りなくなったらアルバイトをしながらでも出来る。
もう、引き返せない。
:10/12/29 16:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#103 [不発花火]
気付けば電話は切れていて、僕はただ携帯を持ったまま立ち尽くしていた。
「―幸せのためなら」
僕は上着を羽織り、マスクを付け、家を飛び出した。
NEXT
:10/12/29 16:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#104 [不発花火]
絶望、それだけ。
―リストラ、その先は(3)―
:10/12/29 21:38
:SH04B
:2c2Jat.Y
#105 [不発花火]
ギィ、と錆びた音を立てながら扉が開き、僕は中に足を踏み入れた。
―場所は○×倉庫。
随分前に廃墟と貸した倉庫には、中にはもちろん周りにも誰一人としていなかった。
静寂の中、僕の呼吸の音が大きく聞こえた。
先程から煩く鳴る心臓の音まで聞こえそうだ。
:10/12/29 21:38
:SH04B
:2c2Jat.Y
#106 [不発花火]
突如、背後から扉が大きな音を立てて閉まる。
僕の体はビクリと跳ね、鼓動が今までよりも早く鳴りはじめた。
マスクを外すと、ポタポタと汗が足元に落ちる。
目線を少し上げると、何もない倉庫の中に何かが転がっていた。
:10/12/29 21:39
:SH04B
:2c2Jat.Y
#107 [不発花火]
それがガムテープと包装紙のような紙でグルグル巻きにされ、芋虫のような状態になっているそれが人間だと気付くのにあまり時間はかからなかった。
もぞもぞと苦し気に動いているのだ。
まるで助けを乞うように。
:10/12/29 21:39
:SH04B
:2c2Jat.Y
#108 [不発花火]
「はっ、はぁ…はぁ…」
それを見た途端、呼吸が酷く乱れるのを感じた。
確かに生きているそれを、僕は殺す。
妻との幸せな未来のために。
:10/12/29 21:40
:SH04B
:2c2Jat.Y
#109 [不発花火]
「あ、武器…武器は」
早く済ませ、金を貰って帰りたい。
妻が待つ家に。
きっと何も知らない妻は僕を笑顔で迎えてくれるだろう。
僕はうまく笑えるだろうか。
:10/12/29 21:40
:SH04B
:2c2Jat.Y
#110 [不発花火]
それに近付くと、もぞもぞと動くそれの横に黒いビニール袋があった。
中を開くと大金と、一丁の拳銃が無造作に入っていた。
初めて見る拳銃と大金。
束ねられていない札は500万以上あるように感じた。
「―そういえば、影武者は」
影武者の存在がどこにもないのを確認すると、突如僕の携帯が鳴りはじめた。
:10/12/29 21:40
:SH04B
:2c2Jat.Y
#111 [不発花火]
何もない空間に響く携帯の音に体が大きく跳ね、震える体で画面を確認すると『非通知』の文字があった。
「も、もしもし…」
『やぁ、私だ。影武者の存在は心配するな。こちらから君の姿は見えているよ』
:10/12/29 21:41
:SH04B
:2c2Jat.Y
#112 [不発花火]
―なんで、僕の番号を。
聞き慣れた男の声。
僕は男に電話をかける時は必ず非通知にしていたし、今まで一回だって男から電話がかかってくることはなかった。
『驚いているな?こちらは君のことを何でも知っているんだ。
さて、早速そこに転がる芋虫を殺して頂こうか』
男はそう言うと、有無を言わさず電話を切った。
:10/12/29 21:41
:SH04B
:2c2Jat.Y
#113 [不発花火]
僕はただ呆然と立ち尽くし、横に転がるそれに目をやった。
口を塞がれているのか、声を上げることもなく、ガムテープと包装紙でグルグル巻きになっている体を逃げようと必死になっている塊。
性別すらわからない人間。
顔すら覆われてるのが救いか。
:10/12/29 21:41
:SH04B
:2c2Jat.Y
#114 [不発花火]
僕は銃を手に取り、横になるそれを蹴飛ばして仰向けにして心臓に向ける。
「―神様」
目を閉じて、刹那。
乾いた銃声が倉庫に鳴り響く。
目を開けると、ピクリとも動かないそれの胸元辺りの包装紙が血に濡れていくのが見えた。
:10/12/29 21:42
:SH04B
:2c2Jat.Y
#115 [不発花火]
ジワジワと染み込み、床に血溜まりを作っていく。
僕はあまり見ないように、黒いビニール袋を手に取り颯爽と倉庫を後にしようと扉に足を向ける。
不思議と先程まで感じていた恐怖も何も感じなかった。
なぜか清々しささえ感じていた僕は異常なのだろうか。
それともずっと感じていた恐怖と緊張感から逃れられた安堵感なのだろうか。
:10/12/29 21:42
:SH04B
:2c2Jat.Y
#116 [不発花火]
薄暗い倉庫から出ると、陽は高く登り、眩しさに目を凝らした。
「やぁやぁ、君は見事任務を成し遂げることに成功したね」
「!?」
突如背後から聞き慣れない声が聞こえ、勢いよく振り返ると、扉の横にもたれ掛かるように老人が立っていた。
「…社長…?」
:10/12/29 21:43
:SH04B
:2c2Jat.Y
#117 [不発花火]
老人はよく見慣れた人物だった。
忘れもしない、自分がつい先日まで勤めていた会社の経営者。
人物に解雇を告げた張本人。
まさか、社長が。
社長が僕に人を殺させたというのか。
「君は見事大金を手に入れることが出来た訳だが、代わりにとても大切なものを失った」
:10/12/29 21:43
:SH04B
:2c2Jat.Y
#118 [不発花火]
社長はニコニコと人当たりの良い笑顔を向けている。
「どういうこと、ですか」
心臓が再び大きな音を立てて鼓動を刻み始めた。
「君が殺した人間を確認してくれば、全てわかるよ」
社長の顔から笑みが消え、声のトーンを落とした。
その声は、電話越しの男の声と同じだった。
:10/12/29 21:43
:SH04B
:2c2Jat.Y
#119 [不発花火]
「さぁ、確認しておいで」
トン、と肩を叩かれる。
僕は弾かれたように再び倉庫の扉を開け、事切れたそれに近づき包装紙とガムテープを解く。
おかしなくらいに手が震え、うまく開けることが出来ない。
乱暴に包装紙を剥ぎ取ると、そこには変わり果てた愛しい妻の顔があった。
「―…ッ!」
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#120 [不発花火]
突如込み上げる嘔吐感を堪えることが出来ず、吐き出す。
まさか、まさか、自分の手で妻を。愛する妻を。
「君は自分の手で最愛の妻を殺してしまった。見事だよ」
パチパチと社長が拍手をする。
なぜ、妻なのだ。
「お前…!殺してやる!!」
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#121 [不発花火]
社長に掴みかかろうとした瞬間、目の前に銃口を突き付けられた。
「教えてやろう。なぜ、君の妻を君が殺さなくてはならなかったのかを」
僕は眉間に当てられた銃口に動くことが出来ないでいる。
心臓の音がやけにうるさい。
:10/12/29 21:44
:SH04B
:2c2Jat.Y
#122 [不発花火]
「7年前の話だ。当時、君の妻は18歳で車の免許を取ったばかりだった」
「嬉しかったのだろうね。君の妻は深夜に車を飛ばしていた。
そこで、君の妻が乗った車が人身事故を起こした」
「轢いたのは私の娘だよ。
即死だった。だが君の妻は恐怖からか逃走した」
体が冷えていくのがわかった。
妻が人を殺している。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#123 [不発花火]
そんな話、一度も聞いたことがなかった。
「普通だったらすぐに法で裁かれるだろうが、彼女の父親は警視庁だと聞く。『証拠不十分』でこの事件は揉み消されたよ」
社長が持つ銃がカチリ、と音を立てた。
僕は動くことは愚か、言葉も発することができなかった。
語られていく真実。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#124 [不発花火]
「だから私は私のやり方で彼女を裁いてやろうと誓った。
いやあ、彼女を探し当てるのに7年もかかってしまったよ。
まさか自分の会社の人間の妻になっているとは」
クックッと聞き慣れた笑い声。
社長の口元がニヤリ、と笑う。
「―なぜ、僕の妻だと」
言葉が震えてうまく言葉を紡ぎ出せない。
:10/12/29 21:47
:SH04B
:2c2Jat.Y
#125 [不発花火]
「君が書類を忘れた日、それを届けにきた彼女を見た時だよ。
彼女は気づかなかったが、私は死んでも忘れない。
忘れられる訳がない。
たった一人の娘を殺した人間の顔など、一時でも忘れたことなどない!!だから私は君を使って彼女を殺してやろうと思ったのだ!
『あの事件について話がある』と私の名前を使って彼女を呼び出してな!!」
僕はその瞬間、全てを理解した。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#126 [不発花火]
朝、妻がやけに細かく洗濯機の使い方や洗濯物のたたみ方、調味料の置き場所等詳しく書いていたのかを。
妻が今日自分が殺されることを理解していたのだ。
だから僕が、一人でも生きていけるようにと。
体から力が抜け、足から崩れ落ちる。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#127 [不発花火]
守ろうとしていた妻と子を、自らの手で危めてしまった絶望。
愛する者を奪われ、復讐だけを考えて生きてきた人間の味わってきた絶望。
もう、何も考えたくなかった。
「…僕にはもう何もありません。守るものも、失うものも」
社長が握る銃に手をかけ、座り込んでしまった僕の額にまで下げさせる。
:10/12/29 21:48
:SH04B
:2c2Jat.Y
#128 [不発花火]
「いっそ、殺してください」
なぜ電話口の声に気付けなかったのか。
なぜ欲に負け、人を危める道を選択したのか。
なぜ、躊躇せず人を殺めてしまったのか。
後悔と、絶望しかなかった。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#129 [不発花火]
「それと、影武者など本当は用意していない。
君が躊躇った時、私が君と彼女を殺そうと思っていた。
だが君は任務を成し遂げたんだ。
私が殺す義務はない。
自殺するなり、足掻いて生きていくなり、好きにするがいい」
そう言うと社長は、僕の手を振り払い自らのこめかみに銃を当て、発砲した。
再び、乾いた音が響いた。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#130 [不発花火]
スローモーションのように倒れる様を僕はただ呆然と見ていた。
気付けば僕の目の前には二つの死体と、二丁の拳銃。
拳銃を手に取り、僕も二人の後を追おうと心臓に当てレバーを引くが、弾は入っていなかった。
:10/12/29 21:49
:SH04B
:2c2Jat.Y
#131 [不発花火]
「はは…」
僕はまだ立ち上げれないでいる。
END
:10/12/29 21:50
:SH04B
:2c2Jat.Y
#132 [不発花火]
:10/12/29 21:56
:SH04B
:2c2Jat.Y
#133 [不発花火]
一体いつから夢を見続けていたのかさえも、曖昧で。
―殺人犯の憂鬱―
:11/01/08 16:10
:SH04B
:GxI.VZ8M
#134 [不発花火]
夢の中で少女が泣いている。
まだ幼く、親がいなくては右も左もわからない様な少女が蹲りながら泣いている。
「どうしたの…?」
少女に歩み寄ると、ピタリと泣き声が止む。
:11/01/08 16:11
:SH04B
:GxI.VZ8M
#135 [不発花火]
「ママに会いたいの」
ゆっくりと少女の顔が上がる。
「ママに会わせて…」
少女の、顔は。
「―はぁッ…!」
少女の顔を確認する前に夢から現実に引き戻される。
:11/01/08 16:11
:SH04B
:GxI.VZ8M
#136 [不発花火]
毎度の如く、同じ夢。
自分が殺した少女の夢。
「くそッ…」
眠りについて直ぐに見る夢は、自分が3年前に殺した少女の夢ばかりだった。
毎日のように夢に現れる少女の顔を見る前に、必ずと言っていい程に目が覚める。
:11/01/08 16:12
:SH04B
:GxI.VZ8M
#137 [不発花火]
だが、3年前より明らかに長く夢を見るようになった。
殺した翌日は真っ暗な闇だった。
半年してから泣き声が聞こえるようになった。
1年が経過すると少女の姿が僅かに見えるようになった。
2年が経つと、少女の姿ははっきりと見えるようになった。
:11/01/08 16:13
:SH04B
:GxI.VZ8M
#138 [不発花火]
そして3年が経過した今、少女が語りかけてくるようになった。
少しずつ少女が自分に近付いているのを感じた。
だが、3年の長い年月の中で自分は今だに警察に身元が割れていない。
警察は最初の捜査で躓いたのだ。
:11/01/08 16:14
:SH04B
:GxI.VZ8M
#139 [不発花火]
自分ではない全く関係のない人間に容疑をかけ、2年に渡り裁判を続けた。
しかし、結局無実だと発覚した訳だが後の祭。
長い月日は自分が犯人だという真実を消すには充分過ぎる時間だった。
一番最初の捜査で躓くと、解決は極めて困難になるというのは本当だったのだ。
:11/01/08 16:14
:SH04B
:GxI.VZ8M
#140 [不発花火]
時効がない今、無実になることは未来永劫ないが、恐らく自分は永遠に捕まることはないだろう。
完璧な殺人だった。
目撃者すらない完璧な殺人。
加えて、無差別の快楽殺人。
溜まっていた鬱憤を晴らす為に幼い少女の命を奪った。
:11/01/08 16:15
:SH04B
:GxI.VZ8M
#141 [不発花火]
自分と少女や少女の家族とは何の接点もない。
そして証拠も残っていない今、自分が捕まることは皆無だった。
無抵抗の少女を殺すのはとても心地が好いものだった。
恐怖に怯えた大きな瞳に自分が写った瞬間、どんな残忍な方法で殺してやろうか悩んだ。
:11/01/08 16:16
:SH04B
:GxI.VZ8M
#142 [不発花火]
細い少女の首に手をかけ、力を込めると意図も安易く鈍い音を立てて折れてしまった。
少女が事切れた刹那、抑えようのない快楽が体を支配し、セックスよりも酷く興奮した。
自分でも異常だと思ったが、罪悪感すら湧かなかった。
だが、少女が夢に現れてからまともに眠れない日々を過ごしているうちに段々、恐怖と僅かながらの罪悪感を感じるようになった。
:11/01/08 16:16
:SH04B
:GxI.VZ8M
#143 [不発花火]
自分は、あの夢に恐怖していた。
「何なんだ…言いたいことがあるなら言え!クソっ…」
死人に口ナシとは本当によく言ったものだ。
「ちくしょう…今日もまともに寝れやしねぇ」
:11/01/08 16:16
:SH04B
:GxI.VZ8M
#144 [不発花火]
布団から起き上がり立ち上がると、少女を殺した後も変わらず住み続けているボロアパートの床はギシギシと悲鳴を上げた。
「…酒でも呑むか…」
それと、一人言が増えた。
一人暮らしは高校を卒業してから田舎を離れてからしているし、もう長い時間が経つが元から余り喋るのが好きじゃなかった為慣れてはいるが、少女を殺したあの日から一人が格段に増えた。
やはり自分は恐怖しているのか。
:11/01/08 16:17
:SH04B
:GxI.VZ8M
#145 [不発花火]
幼い少女を殺し、未来を奪ったことに。
裁かれることに。
冷蔵庫を開けると、暗い部屋がぼんやりと明かりに照らされる。
冷蔵庫に敷き詰められたビールや焼酎、酎ハイの缶から厳選していると、後ろから夢と同じ泣き声が聞こえた。
「―…ッ!?」
:11/01/08 16:17
:SH04B
:GxI.VZ8M
#146 [不発花火]
勢いよく振り返ると、布団の横で少女が蹲り泣いていた。
「…ママ…」
幽霊、だろうか。
途端に足がガクガクと奮え始め、立っていられなくなる程の恐怖を感じた。
「…ママに会いたいよ…」
少女はまだ顔を上げないままシクシクと泣いている。
「―クソッ」
:11/01/08 19:18
:SH04B
:GxI.VZ8M
#147 [不発花火]
笑う足を叱咤し、少女に近づく。
が、いよいよ少女に手を伸ばせば触れられる程の距離まで近付いた時、少女が顔をゆっくりと上げ始めた。
心臓が煩い程に孤独を刻んでいる。
自分は恐怖している。
だが少女の顔が自分に向けられる前に、強い力で意識が引き戻された。
:11/01/08 19:19
:SH04B
:GxI.VZ8M
#148 [不発花火]
「―…はぁッ…!」
気付けば自分は布団の中にいた。
体を起こし、辺りを見回しても少女はいない。
まさか、夢…
「何なんだよ…!」
起きて、罪悪感を感じたことすら夢なのか。
:11/01/08 19:19
:SH04B
:GxI.VZ8M
#149 [不発花火]
気を取り直して、テレビをつける為リモコンに手を伸ばすが、今度は真横で少女の泣き声が聞こえた。
「…ママ…」
泣き声が聞こえる方を見ると、冷蔵庫の前でまたしても少女がシクシクと泣いていた。
「ママは、どこ…?」
「うるせぇ!とっとと土に還れ!クソガキが!!」
勢いよく布団から立ち上がり少女に近付くと、またしても強い力で意識が引き戻された。
:11/01/08 19:20
:SH04B
:GxI.VZ8M
#150 [不発花火]
「―…何なんだよ!」
また、自分は布団の中にいた。
今のも夢だと言うのか。
現実と変わりないではないか。
「…気が狂っちまう…」
これも夢だと言うのだろうか。
試しに自分の頬を強く叩いてみると、確かな痛みがあった。
「…はは」
:11/01/08 19:20
:SH04B
:GxI.VZ8M
#151 [不発花火]
ヒリヒリとした痛み。
どうやら自分は相当寝不足に参っていたようだ。
まともに眠れない日が続いた3年の間、無意識のうちに気にしないようにしていたことを思い知る。
やはり自分は恐怖していた。
少女を殺した罪悪感に。
:11/01/08 19:20
:SH04B
:GxI.VZ8M
#152 [不発花火]
自嘲気味に笑っていると、今度は自分の真横で少女の泣き声が聞こえた。
「―ママ」
咄嗟に起き上がり隣を見ると、少女がすぐ真横で蹲り泣いていた。
「ママに会いたいよ…」
:11/01/08 19:21
:SH04B
:GxI.VZ8M
#153 [不発花火]
少女に手を伸ばした瞬間、いい加減慣れてしまった強い力でまたしても意識を引っ張られた。
「―くそっ!!」
痛みを感じたはずなのに、また自分は布団の中にいた。
いい加減、気が狂ってしまう。
どうせこれも夢なのだろう。
:11/01/08 19:21
:SH04B
:GxI.VZ8M
#154 [不発花火]
「何なんだ…!今更出て来て、何がしたいんだ!いい加減にしろ!!」
布団から飛び出し、台所の棚から包丁を取り出す。
「はぁっ…はぁっ…」
すると、また背後から少女の泣き声が聞こえた。
ほら、夢だ。
:11/01/08 19:21
:SH04B
:GxI.VZ8M
#155 [不発花火]
「ちくしょう…!いい加減にしやがれ!!クソガキ!」
少女に包丁を向けながら走り出すと、少女が勢いよく顔を上げた。
「ママ」
少女の顔は可愛らしい笑みを浮かべていた。
:11/01/08 19:22
:SH04B
:GxI.VZ8M
#156 [不発花火]
「マ"マ"…」
ごぼごぼと少女の口から血の泡が吹き出された。
「―――ッ!」
少女に向かって勢いよく包丁を振りかざすと、また意識が浮上するのを感じた。
気付けば自分はまた布団の中にいた。
「はは―…」
:11/01/08 19:22
:SH04B
:GxI.VZ8M
#157 [不発花火]
終わらない夢。
どうせこれもまた夢なのだろう。
今度は目の前から泣き声が聞こえた。
起き上がると、布団の前で少女が蹲り泣いていた。
「…ママ」
いつまで自分は夢を見ているのだろうか。
:11/01/08 19:23
:SH04B
:GxI.VZ8M
#158 [不発花火]
自分の手に握られた包丁を自分の喉元に突き刺した。
また、意識が浮上するのを感じた。
END
:11/01/08 19:23
:SH04B
:GxI.VZ8M
#159 [不発花火]
:11/01/08 21:17
:SH04B
:GxI.VZ8M
#160 [不発花火]
亡き君に、弔いの言葉を。
―亡き君へ―
:11/01/09 16:36
:SH04B
:CF17bEo.
#161 [不発花火]
家族が泣いている。
ゆらゆらと、漂いながら微かに声を聞いた。
深い、微かな声。
けれど確かな声。
家族が呼ぶ元へ、ゆらゆらと。
ただ、体を打つ冷たい波に飲まれながら。
:11/01/09 16:36
:SH04B
:CF17bEo.
#162 [不発花火]
毎日、君を探す人がいる。
サクサク、と波で湿った砂浜が足音を立てる。
「必ず、見つける」
その人は言った。
冷たい風がその人の体温を容赦なく奪っていく。
気付けば夕闇に浮かんでいた。
:11/01/09 16:37
:SH04B
:CF17bEo.
#163 [不発花火]
毎日、君を叱る人がいる。
「馬鹿なことを」
叱るその人は大粒の涙をボロボロと零していた。
涙は砂浜に吸い込まれ、消えた。
夕焼けが涙を美しく照らしていた。
:11/01/09 16:38
:SH04B
:CF17bEo.
#164 [不発花火]
(君は皆に愛されていた)
亡き、君へ。
END
:11/01/09 16:38
:SH04B
:CF17bEo.
#165 [不発花火]
どうせなら、美しく死にたい
―美しい死体―
:11/01/21 22:11
:SH04B
:esLpyWR6
#166 [我輩は匿名である]
恵まれた容姿。
恵まれた頭脳。
恵まれた家庭。
何一つ不自由はなかった。
けれど、それは孤独の魔法。
美しいと言われる容姿は同性から嫉まれ、異性からは近寄り難いと言われ、いつも一人だった。
恵まれた頭脳は同性からも異性からもお高く止まっていると言われ一人になった。
恵まれた家庭は近所から嫌みだと疎まれた。
:11/01/21 22:11
:SH04B
:esLpyWR6
#167 [我輩は匿名である]
両親だけが私の味方だった。
両親はいつも一人でいる私の気持ちを汲んで、昔から「辛かったら家にいればいい」と言ってくれた。
それが嬉しかった。
無理矢理外に出されるよりも、一人で家にいた方がずっと気が楽だったから。
でも、私の唯一の味方だった両親も先月交通事故で亡くなった。
私に残されたものは一生働かなくとも生きていける程の莫大な財産だけだった。
:11/01/21 22:11
:SH04B
:esLpyWR6
#168 [我輩は匿名である]
そんな大金だけがあっても、所詮は一人。
今更外に出て友人や恋人を作る気などさらさらなかった。
どうせまた一人になるのだ。
また一人になる虚しさを感じるくらいなら初めから一人だった方がいい。
一人で死んだ方がいい。
だから私は、恵まれたこの容姿を崩さないまま死ぬことを決めた。
:11/01/21 22:12
:SH04B
:esLpyWR6
#169 [我輩は匿名である]
生きていても一人。
ならいなくても同じ。
だから私は今、高層ビルの屋上にいる。
飛び降りの遺体は悲惨なものだと聞くが、臀部から着地すればそれは綺麗な死体になるらしい。
だから、臀部が下になるように飛び降りた。
:11/01/21 22:12
:SH04B
:esLpyWR6
#170 [我輩は匿名である]
これで私の遺体は綺麗なまま。
美しいまま。
なのに、どうして。
なぜ私は飛び降りたはずの場所に佇んでいるのか。
確かに飛び降りたはずなのに。
「お姉さんが望んでいる綺麗な死体とは程遠いものだったからだよ」
「!?」
:11/01/21 22:12
:SH04B
:esLpyWR6
#171 [我輩は匿名である]
クン、と服を捕まれ、そこを見ると小さな少年がいた。
黒い髪に、大きな瞳。
可愛らしい顔立ちの少年がいつの間にか私の隣にいた。
「なんで…」
「臀部から着地しようとしたみたいだけど、そんなの偶然じゃなきゃうまくいかない。お姉さんの死体は脳みそグチャグチャで体は変な方向に曲がり放題。骨も突き出てたしね」
:11/01/21 22:13
:SH04B
:esLpyWR6
#172 [我輩は匿名である]
グロテスクな言葉をスラスラと不釣り合いな程軽々しく少年は口にした。
「そんなの嫌っ…!そんなの私が望んでいる死体じゃない!」
知りたくなかった。
自分は綺麗な死体になりたいのだ。
「だから僕はここにいる。お姉さんが満足するまで僕は何度でも自殺に付き合うよ」
この少年は何を言っているのだ。
:11/01/21 22:13
:SH04B
:esLpyWR6
#173 [我輩は匿名である]
そんなことが可能なのか。
でも、現に私は確かに飛び降りたはずなのにここにいる。
飛び降りた高層ビルの下にいるのが何よりの証拠だった。
「でも、途中で死ぬのをやめることは出来ない。だってお姉さんは一度死んでいるもんね?お姉さんは自分が満足する死体になるまで何度でも死ななきゃいけない」
くすくすと少年が笑う。
:11/01/21 22:13
:SH04B
:esLpyWR6
#174 [我輩は匿名である]
それでもよかった。
どうせ生きていても一人。
美しい死体になるまで何度だって死んでやる。
一度死ねたんだ。
また一人であの孤独感を味わうのなら、死んだ方がマシだ。
「…わかった」
さぁ、次はどうやって死のうか。
NEXT
:11/01/21 22:14
:SH04B
:esLpyWR6
#175 [不発花火]
:11/01/21 22:16
:SH04B
:esLpyWR6
#176 [我輩は匿名である]
気になります
:11/01/24 23:09
:N08A3
:kF.WyjM.
#177 [我輩は匿名である]
確かに地面に叩き付けられる直前に例えようのない恐怖を感じたというのに。
―美しい死体(2)―
:11/01/27 10:31
:SH04B
:0FYnLcmw
#178 [我輩は匿名である]
私の最も理想的な死体は、かの有名な世界一美しいと言われるミイラ「ロザリア・ロンバルド」だった。
まるで人形のような、未来永劫老いることのない美しい死体。
:11/01/27 10:32
:SH04B
:0FYnLcmw
#179 [不発花火]
溺死は二目と見られない程醜い死体になると聞くし、青酸カリは泡を吹き遺体はアーモンド臭がするらしいから却下。
首吊りや列車衝突も却下。
美しく死にたかった。
孤独で寂しい人生を送っていた分、一目を惹くような、美しい死体になりたかった。
:11/01/27 10:33
:SH04B
:0FYnLcmw
#180 [不発花火]
「凍死するしかないよ」
隣で少年が笑いながら言う。
あれから少年は、私の傍にくっついて回った。
私自身は確かに一度死んだはずなのに、なぜだか他の人間に見えてはいるが(普通にコンビニで買い物が出来たのが証拠)、少年は誰にも見えていなかった。
:11/01/27 10:33
:SH04B
:0FYnLcmw
#181 [我輩は匿名である]
「凍死なんて出来る訳ないでしょ。冷凍庫にでも押し込むつもり?」
少年の皮肉に、私も皮肉で返すが少年は気にしていないようでまだ笑っている。
「僕なんて首が180度曲がって口から血の泡を吹いて死んだんだよ。それに比べたら冷凍庫に入って凍死のがいいでしょ」
:11/01/27 10:33
:SH04B
:0FYnLcmw
#182 [我輩は匿名である]
どこがいいんだ。
業務用冷凍室のような広いところならともかく、家庭用の冷凍庫に押し込められて死ぬなんてドリフのコントでもそんなのはない。
それはともかく、少年の言葉が気にかかった。
傍にいる、名前も知らない少年の死に方。
事故だろうか。
:11/01/27 10:34
:SH04B
:0FYnLcmw
#183 [我輩は匿名である]
「…君は殺されたの?」
少し遠慮がちに聞くと、少年は一瞬笑顔を消すが、またニコニコと笑い始める。
「…違うよ。事故だったんだ」
「…事故…」
少年は見た目からして小学2、3年生くらいだろうか。
:11/01/27 10:39
:SH04B
:0FYnLcmw
#184 [我輩は匿名である]
その年齢なら事故死でも納得がいくが、まだ幼い少年の急な死を憐れに思った。
「僕はブランコから投げ出されたんだよ…」
少年の笑顔の中にどこか悲しげなものが混じっていたのは、きっと気のせいじゃない。
:11/01/27 10:40
:SH04B
:0FYnLcmw
#185 [我輩は匿名である]
「この話は終わり!さあ、お姉さんはどうやって美しく死ぬつもりなの?」
「…私は」
美しく死ぬことは難しい。
餓死は醜いし、きっと誰かしら異臭に気付き腐敗してる遺体を見付けるだろう。
それだけは嫌だった。
やはり凍死が一番理想的だが、用意が出来ない。
:11/01/27 10:41
:SH04B
:0FYnLcmw
#186 [我輩は匿名である]
エベレストにでも行く?
なんて、冗談。
それならば。
「…樹海に行く。綺麗なドレスを着た白骨死体なんて素敵じゃない?昔お母さんが話してくれた令嬢も、綺麗なドレスを着た白骨死体で見つかったの」
彼女のような、死して尚愛されるような美しい死体に。
:11/01/27 10:41
:SH04B
:0FYnLcmw
#187 [我輩は匿名である]
「…磁場が狂う程奥に行かなければ死体なんてすぐに見付けられちゃうよ」
「樹海でコンパスが効かないなんて話、信じてるの?それに失敗すればまたやり直せるんでしょう?」
満足のいくまで、私は何度だって死んでみせる。
その時の私は、自分が一度感じた死への恐怖にまだ気付けないでいた。
NEXT
:11/01/27 10:41
:SH04B
:0FYnLcmw
#188 [我輩は匿名である]
報復など、醜いだけだと
―死して尚、屍―
:11/01/29 21:15
:SH04B
:T5g04vLM
#189 [我輩は匿名である]
『僕は君の友達だよ』
僕の友達は、僕を置いて逃げたんだ。
事故なのはわかっていた。
けれど、僕は薄れゆく意識の中で走り出す君の背中を見たんだ。
僕はあの時、確かに生きていたのに。
:11/01/29 21:15
:SH04B
:T5g04vLM
#190 [我輩は匿名である]
「今度は僕が背中を押してあげるよ」
降り続く雨が強くなり、彼を濡らす。
僕は彼の背中を強く押す。
ギィ、とブランコが揺れる。
「―やめろっ!!」
:11/01/29 21:16
:SH04B
:T5g04vLM
#191 [我輩は匿名である]
彼が暴れ出すと、悲しいかな所詮は子供と大人の力の差。
彼はブランコから手を離し、前から地面に落ちた。
「手を離したら危ないよ…僕みたいになっちゃうじゃないか…」
「はぁッ…はぁッ…」
みっともなくも、地面に拳を握り締め彼は起き上がろうとしない。
:11/01/29 21:16
:SH04B
:T5g04vLM
#192 [我輩は匿名である]
僕は彼の前に立ち、見下ろす。
彼は大粒の涙を流していた。
「…すまなかった!君を見捨てる気はなかったんだ!怖かったんだよ…!」
「!」
急に彼が僕に縋り付いてきたから、僕は体制を崩すが何とか持ちこたえるが、彼はただ嗚咽混じりでボロボロと涙を零しているだけだった。
:11/01/29 21:16
:SH04B
:T5g04vLM
#193 [我輩は匿名である]
「何度もここに来ようと思ったんだ!でも怖かった!君に拒絶されるのが…!」
「…僕がここにいる確信でも?」
彼は何を言っているんだ。
どんな確信があって、何を思ってここに来たのか、僕にはわからなかった。
「君は絶対にここにいると思ったんだ…ずっと謝りたかった…」
謝るために、ここに。
ならばなぜ、謝りたかったのならもっと早くここに来なかったのか。
:11/01/29 21:16
:SH04B
:T5g04vLM
#194 [我輩は匿名である]
なぜ、
「決心がつかなかったんだ…君に拒絶されるのが怖かった臆病者なんだ…」
「…」
「笑ってくれ…君を見殺しにしたくせに、死ぬのが怖いんだ…」
彼はズルい。
そんな風に泣かれてしまったら、許すしかなくなってしまう。
:11/01/29 21:17
:SH04B
:T5g04vLM
#195 [我輩は匿名である]
僕にはもう、それ以外の選択肢しかないではないか。
「…もう、帰って。二度とここに来ないで」
僕の口が吐き出した言葉は文句ではなく、君を赦す言葉。
「…すまなかった」
立ち去る彼を、見送るしか出来ない僕は。
僕は一体、何のために長い間ここにいたのか。
僕はこれからどうすればいいのか。
ふと、彼が去った後に一枚の写真が落ちているのに気付いた。
写真には僕と同じくらいの可愛らしい顔立ちの少女が写っていた。
僕はただ雨に打たれ歪んでいく写真を見つめることしかできなかった。
END
:11/01/29 21:17
:SH04B
:T5g04vLM
#196 [不発花火]
:11/01/29 21:19
:SH04B
:T5g04vLM
#197 [我輩は匿名である]
あげ↑
:11/10/04 20:06
:W62P
:.ni/x2UA
#198 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age
:22/10/04 08:40
:Android
:nH.OoPsQ
#199 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/04 17:14
:Android
:nH.OoPsQ
#200 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/04 17:15
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#201 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/04 17:28
:Android
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