・・・ゆめみる魚・・・
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#601 [向日葵]
「あのねーご本よんでほしいのー」

可愛らしいえくぼを作りながら微笑む我が子に、満面の笑みを向けながら私は言った。

「うんいいよ。何がいい?」

「えとね、これ!」

小さな手に抱かれたそれは……。

「ゆめ、これが好きね。」

「うん!だってママがくれたもん!」

「そっか。じゃあ読もうかな。」

⏰:08/03/17 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#602 [向日葵]
私は絵本の1ページ目を開く。

「“ゆめみる魚”……」

―――――…………

「ただいまー。」

夕飯の用意をしていると、真一が帰ってきた。

玄関まで迎えに行って、カバンを持ってあげる。

「おかえり。今日職員会議じゃなかったの?」

「早目に終わったから全速力で帰ってきた。」

その理由はもちろんゆめがいるからだ。
真一がここまで親ばかになるだなんて思っても見なかった。

⏰:08/03/17 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#603 [向日葵]
「絵本読んだら寝ちゃったから起こさないでよ」

「なんだ寝てんのか。んじゃ奥さんで我慢するわ」

「ちょっと、我慢っとどういう意味よ」

反論していると、後ろから抱き締められた。
前よりも長くなった私の髪に、真一の吐息がかかる。

「じょーだん。我慢だなんてとんでもない」

「当たり前。誰だったかしらね。卒業の日に婚姻届出しに行こうって勝手に盛り上がってた人は……。」

その時のビデオでもあったら見て欲しいくらいだ。

⏰:08/03/17 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#604 [向日葵]
私が呆れるほど目を輝かせてはしゃいでるもんだから、落ち着けと頭をどついてやらないと真一は冷静にならなかった。

「それぐらいみかげが好きって事さ。そろそろゆめに兄弟作ってあげてもいいんじゃない?」

ギクッと固まる。

さすがはもとタラシ。
そういう際どい事を安々と言ってのけるあたりまだまだ現役バリバリのタラシだと思う。

「みかげ……返事は?」

「み、耳元で喋んないで……っ!」

⏰:08/03/17 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#605 [向日葵]
真一が編み出した技。

こうすれば私が断らない事を知っているのだ。

「し……真い」

「あ、パーパー!」

起きてきたゆめが、私達の元に走ってくる。

「おかえりなさぁぁい!」

嬉しそうに抱きつくゆめを、真一は愛しいそうに抱き上げる。

「ただいま。いい子にしてたか?」

「ウン!」

⏰:08/03/17 02:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#606 [向日葵]
私はそれを微笑ましく見つめる。

それはいつしか夢で見た光景……。

そんな風に、幸せはいつまでも続いていくのだろう。
そうなる事を、私は夢見てる……。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『みんなー!』

これでなんどめだろう。

魚はさけびつづけていました。

でもみんなはみつかりません。

⏰:08/03/17 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#607 [向日葵]
魚はさらにつよくおもっておよぎました。

ぜったいあきらめない。
みんなにあいたい。

『みんなー!』

また魚はさけびます。

そのときでした。

とおくからなにかきこえてきました。

『オーイ!こっちだよー!』

魚はふりむいて、そのほうこうをみました。

するとどうでしょう。

はなればなれになってたなかまがいるではありませんか。

⏰:08/03/17 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#608 [向日葵]
『やっとあえた……!』

魚はよろこびいっぱいにおよぎ、みんなのもとへと向かいました。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たくさんのありがとうを、今貴方に。

真一、会えて良かった……。






・・・ゆめみる魚・・・
*END*

⏰:08/03/17 02:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#609 [向日葵]
*あとがき*

如何でしたか「ゆめみる魚」
今まで沢山の応援、励まし、アドバイス。
本当にありがとうございました
私はいつも自分の中で「温かな幸せ」をテーマとしているのですが、少しでもそれが皆様に伝わっていたら嬉しいです
また読んで頂けると幸いです

本当に本当にありがとうございました


向日葵

⏰:08/03/17 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#610 [向日葵]
感想また頂けると嬉しいです

あとアンカーしてますんで良ければどうぞ

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-610

⏰:08/03/17 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#611 [ぱちりす]
お疲れさまですヾ(^▽^)ノ
めっちゃ良かったです

楽しかったぁ

あったか〜ぃ気持ちになれました
ありがとうございます

⏰:08/03/17 18:43 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#612 [向日葵]
ぱちりすさん

読んで下さってありがとうございます

あったかーい気持ちになって頂いて良かったです

良かったら感想板の方も来て下さいね

⏰:08/03/17 18:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#613 [向日葵]
・・・ゆめみる魚・・・

―番外編―

⏰:08/04/09 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#614 [向日葵]
もうすぐ冬が来る。

しかしその前に、私達3年生は受験と言う1つの山を越えなければならなかった。

今まさに受験シーズン。

終わった人もいるけれど、大抵の人がこれからなので、教室は殺伐とした空気が漂っている。

参考書や単語帳とずっとにらめっこしている人や、ひたすら書いて覚えたり問題集をやってる人もいる。

そんなピリピリした雰囲気の中、なんの心配もせず呑気に人間観察なんてしちゃってる私こと葛(カズラ)みかげは、受験には縁が無かった。

⏰:08/04/09 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#615 [向日葵]
「ちょっとみかげ……」

さっきから目の前で問題を解いている友人の増田 多香子(マスダ タカコ)が、私をじとっと睨みつける。

目で「なんだ」と応じれば、多香子は眉にしわを寄せた。

「ずるい……ずるいよみかげはぁぁぁ……。1人だけそんなホワホワした雰囲気漂わしてぇぇっ」

受験が1週間後に迫っている多香子は情緒不安定になっていた。

しかし多香子は推薦で受けるので、「そんなに頑張らなくても」て言うと、「その油断がダメなのよ!」と怒られた。

⏰:08/04/09 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#616 [向日葵]
私が受験と縁遠いのは理由があった。

休み時間のガヤガヤした音に、アナウンスの音が混じる。

<葛みかげ、葛みかげ。至急社会科準備室まで来なさい>

「あ、呼ばれてる」

「裏切り者ぉぉぉ!!」

ついに泣き叫ぶ多香子を放置して、私は社会科準備室へと急いだ。

前より少し伸びた髪の毛が、歩く風によって揺れる。
社会科準備室のドア前に来て、ノックをすれば、中から返事が返ってきた。

⏰:08/04/09 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#617 [向日葵]
「失礼します」

「おう入れ」

1歩入り、ドアを閉めて、いつも通り鍵も閉めておく。

そして、意地悪そうな笑い声を出した後、低く甘い声が聞こえる。

「どうした?早くこっち来いよ」

ドがつく程Sっぽいこの人は、松川 真一。
ここの教師。私の同居人。

……私の恋人……。

「真に呼びだされたせいで多香子に泣かれた」

⏰:08/04/09 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#618 [向日葵]
声をあげて笑う真を私は睨む。

コイツはただ会いたいからと言う理由だけで私を呼び出す。
これはお決まりパターンなのだ。
正に職権濫用。

なかなか真に近づかない私に痺れをきらしたのか、真自ら私の元へやって来て、手を引っ張り、握ったまま自分はイスに座った。

「嫌だった?俺に会うの」

にこりと笑って首を傾げるものだから、嫌じゃないけど嫌とは言えなくなった。
だからと言って「会いたかった」なんて乙女チックな事、私が言える訳が無い。

⏰:08/04/09 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#619 [向日葵]
でも真のその仕草に私の中の少ない乙女チック思考の心にグッときて、顔が赤くなるのを自覚しながら口を閉ざした。

そんな私を面白がるように、少し私の手を引っ張って、頬に唇を寄せた。

「ちょっ……!」

急いで身を引いても、手を握られたままだから逃げるに逃げられない。

そんな慌てた私に満足した真のニヤッとした意地悪な笑みに、更に顔の体温は上がる。

「聞いてるのに何も言わない子にはちゃんと教えてあげるのが教師だろ?」

⏰:08/04/09 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#620 [向日葵]
なんかそれ違う……。

本当はこんな関係いけない。
同居人だとは言え、私は生徒、真は教師。
それでも想いは止められず、私達はついに……

「卒業するまでにはもうちょい素直になって欲しいな。なんてったって俺達夫婦になるんだから」

そう。
私が受験と縁遠い理由。
それが今、真が言った事なのだ。

知ってるのは多香子だけ。
進路調査では、名前こそ出さなかったけれど(てか出したらえらい事になるけど)結婚するとしてある。

⏰:08/04/09 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#621 [向日葵]
……と言うか……、3年に上がって担任が真になったので、助かったのだ。

これが他の教師であれば結婚となれば相手を聞かれそうだ。
ちなみにそんな場合は「親戚の家の仕事を手伝う」とか言う予定だった。

実際、真繋がりの親戚で、旅館を経営してる人がいるらしく、嘘を言ってる訳ではないからなんとでも通るのだ。

真曰く

「あすこのおっさんとおばさんは俺が可愛いから何でも言う事聞いてくれるだろうからなー」

⏰:08/04/09 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#622 [向日葵]
と言った。

心の中で「どうなってんだよアンタの親戚」と突っ込んだのは言うまでもない。

「素直……って、私はこれで普通なんだから素直も何もないでしよ」

「もっと自分から抱きつくとか好きって囁くとかさー」

「酔っ払ってんの?」

こんなやりとりしょっちゅうだ。
真はどうにかして私を乙女チックに仕上げたいらしい。

その分真は抱きつくわ好きと囁くわ、あげくの果てにはキスだ。

⏰:08/04/09 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#623 [向日葵]
「真も知ってる通り、私は遂この間まで恋愛の“れ”の字も知らなかった小娘なの」

「“小娘”って分かるようになった辺り成長したな」

「……その“小娘”に手ぇ出したのは誰……」

真はにーっこり笑うとひらひら手を振る。

そうだ。真は私達世代には興味ないとか言ってたくせにちゃっかり私に手を出したんだった。

結局理想なんて意味も無いものなんだと真を見て感じる。

⏰:08/04/12 01:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#624 [向日葵]
話を元に戻そう。

真の過剰なスキンシップや愛情表現が嫌な訳ではないし、真が嫌いだから何も言わない訳じゃない。

それなりのムードがあれば、私だって後で思い出せば恥ずかしい言葉だって言ってる時はある。

ただ、私は怖い。

自分が自分でなくなってしまいそうなのがなんだか怖いのだ。

さらけ出して、真が私を嫌いになってしまうかもと考えれば、越えてしまいそうなあと1歩が踏み出せない。

⏰:08/04/12 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#625 [向日葵]
もちろん、こんな恥ずかしい事は言えないし言いたくもない。

真は机に肘をついてフゥ……とため息をつく。

「せめてさー……保健室の時みたいな可愛い事言えない?」

保健室の時とは、文化祭で私が階段から落ちて気を失ってしまった時だ。

あれこそ本気で恥ずかしい。
泣きじゃくりながら必死に「側にいたい」と言った自分がひどく滑稽に見えたからだ。

どんなドラマ展開だ。

⏰:08/04/13 12:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#626 [向日葵]
一度真に聞いた事がある。

いつもと変わらず、抱きついたり、甘い言葉を吐いている時だった。

何故そんな事が出来るのかと。

返ってきた言葉はこうだった。

「好きな奴には全力で自分の気持ちを知ってほしいから」

あっそう……としか言えなかった。

そんなそれが当然かのように言われてしまったら私はどうすればいいんだ。

⏰:08/04/13 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#627 [向日葵]
呆れていながら社会科準備室の時計を見れば、あと5分で休み時間が終わろうとしていたので、頭の中から少女漫画回路を追い払ってここに呼び出した訳を真に聞いた。

「用がなきゃ呼んじゃダメかよ」

「愚痴なら帰ってから聞くからさっさと何の用か言って頂戴」

渋々といった感じで真はブレザーの上着から何かを取り出した。

薄い封筒のようだ。

それをヒラヒラさすながら真は言った。

⏰:08/04/13 12:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#628 [向日葵]
「生物の高木先生から懸賞かなんかで1泊2日の温泉旅行が当たったらしい」

生物の高木……?
あぁ、あののほほんとした空気をまとった40代後半のおばさん先生か。

……え。
温泉旅行?

「自分は行く予定が無いから俺にどうだと聞いてきた。で……、行くか?」

つまりそれは温泉旅行のチケット。
そしてその温泉旅行に行かないかと誘われている……。

ってか、

「2人で?」

⏰:08/04/13 12:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#629 [向日葵]
「大人数でいけるか馬鹿」

温泉と聞いて嬉しくない訳がなかった。
この寒くなる1歩手前の温泉……露天風呂が楽しめそうじゃないか……っ!

「行く!行きたい!」

「よし決まりだな」

真も嬉しいのか、笑って私の頭をクシャッと撫でた。
私はされるがままになる。

もうすぐチャイムが鳴りそうなので、真から離れ、私は社会科準備室を後にした。

⏰:08/04/13 12:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#630 [向日葵]
*******************

予想外のみかげのはしゃぎっぷりに俺は嬉しさを隠せなかった。
が、その反面少し虚しくもあった。

彼女は不器用で、滅多にベタベタしてくれない。
いや別にいいんだ。
そんなところも大いに可愛いと思う。

だが、こちらとしては少し物足りないと感じる事もあるのだ。

そこでやってきた温泉旅行を譲る誘い。

この旅行を機にみかげが少し甘い雰囲気に慣れて少しでも甘えたりしてくれれば嬉しい……。
なのに……。

⏰:08/04/13 12:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#631 [向日葵]
どうやら彼女には温泉を楽しむ頭しかないようだ。

普通あの年代なら、旅行に行くのを緊張しながらも楽しみにしたり勝手な妄想膨らましたりすると思ったんだが……。
ずっと2人で暮らしている為みかげにはその意識が低いらしい。

……我慢出来るかねー……俺。

最近のみかげは髪が伸びたせいか一段と可愛い。
でもこちらとしては常に理性との戦いなので歯を食い縛って1日1日をしのいでる。

でも……みかげの気持ち最優先だから、嫌がる事は絶対にしない。

⏰:08/04/13 12:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#632 [向日葵]
それだけは肝に銘じておく。

……ま、理性が切れるまではの話だけどな。

*******************

<何の話だったの?>

授業中、多香子からメールが来た。
視線を少し横にずらせば、携帯を机の下に隠して、こちらを向いてニヒッと笑っていた。

アンタ真面目に勉強するんじゃなかったの……?

<旅行の話>

そう送った。

「り……っ!」

⏰:08/04/14 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#633 [向日葵]
多香子の呟きが大きくここまで聞こえた。

メールは驚くほど早く返ってきた。

<り、旅行!?松川と!?マジで!遂にみかげが大人の階段上るの!?シンデレラになっちゃうの!?>

なんのこっちゃ。

大人の階段?
なんでそんな展開を予想しているかが分からない。

呆れながら私はまた多香子にメールを返した。

<何言ってんの?ただ旅行にいくだけ>

多香子のくだらない妄想は際限ない。

⏰:08/04/14 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#634 [向日葵]
その豊かな想像力を勉強に回せばいいのに。

左手に持つ携帯が震えたので、私は携帯を見る。

<何言ってんのはこっちの台詞だよ!みかげなんで意識しないの!?泊まり=それっきゃないじゃん!>

やっぱり私には乙女思考は働かない。
と言うか乙女チックな考え方は私には無理みたいだ。

どうしてそうなるのかが分からない。
てかなる訳がない。
一緒に住んでるんだからそんな展開期待する方が間違いだ。

⏰:08/04/14 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#635 [向日葵]
また何かメールが来たけど、めんどくさくなって私は寝たフリをして無視をした。

……でも不思議だな。
前まではこうやって顔を伏せるだけですぐ夢の中へ旅立ってたのに、今は真がいるおかげで全然眠れない。

それほど真の存在が、私の中で大きく光輝いてるって事なのかもなぁ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと来てっ」

我慢出来ないと言った風に、私の元へ多香子がやって来た。

⏰:08/04/14 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#636 [向日葵]
腕を引っ張り、私と廊下に出た。

そのまま興奮したように私の肩を掴んで多香子は間近で力説しだした。

「いいみかげ。旅行って言うのはね、色んな雰囲気をまとってしまうの。そのいつもと違う空気に2人の気持ちは高まってー……って事になっちゃうかもなのゃ!」

「“かも”でしょ?私達にはそんなのないから」

「あぁーまいっ!!」

ってか何で多香子がテンション上がってるかが私には不思議で仕方ない……。

⏰:08/04/14 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#637 [向日葵]
なんか1人で身振り手振り話している多香子を心の中で鼻で笑う。

これだからいつも考えすぎの多香子は困る。

そんな訳ないって言うのに……。

――――――……

学校から帰ってきて、手を洗う時に自分の左薬指に光る銀の輪が目に入った。

台所から入る窓の光により、微かに輝いている。

私はそれを眩しそうに目を細めて見つめた。

あれからもう1年以上過ぎたと思えば、時の早さを思い知った。

⏰:08/04/15 20:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#638 [向日葵]
この1年、些細なケンカも確かにあったけれど、毎日が本当に温かく幸せな日々を送っていた。
この左手を見る度そう思う。

[シンデレラになっちゃうの!?]

多香子のメールを思い出す。

真はあの性格だから、確かにそれらしき雰囲気を漂わしたりした事もあったけど、私が私だからいつも“おあずけ”状態にした。

「……ハ、ハハ……まさかね」

それ目的で真が温泉に誘っただなんてまずありえない。

⏰:08/04/15 20:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#639 [向日葵]
だって真は真なりに考えてくれてるし、ムードに流されて無理矢理なんて事はないと思うし。

そう……。

「だから多香子の考えすぎなんだって!」

「増田がどうかしたのか?」

「ひぃっ!いたの!?」

後ろにいた真を振り返りながら自分の今の考えを振り払う。

私ばっかりこんな事考えてたら私が望んでるみたいになっちゃうじゃない……っ!!

⏰:08/04/15 20:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#640 [向日葵]
振り返ったはいいものの、私は何を言えばいいか分からず、下を向いてしまう。

真はと言うと、クスリと笑う声が聞こえたかと思えば、私がもたれていたシンクに手をついて私を閉じ込めるようにした。

体がさっきより近づいて、真愛用の香水の香りが漂ってくる。

これは、思いきり攻めの体勢だ。

「ちょ……何……」

うつ向いたままなんとか聞こえる音量で抗議してみる。

⏰:08/04/15 20:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#641 [向日葵]
「何って……楽しんでる」

本当に楽しそうな口調で言うもんだから、眉を寄せて赤くなるしかなかった。

じわじわと顔が近づいて、真の片手が私の頬に触れる。上を向くよう促されてる感じはするものの、私は頑なに上げようとはしなかった。

頭がパニックを起こす。
体はガッチリ固まってしまった。

「みかげ」

優しく呼ばれて、そろりと顔を上げれば、柔らかく微笑む真がいる。

⏰:08/04/18 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#642 [向日葵]
緊張していた体は力が抜け、真の片手が導くままに顔をしっかり上げた。
と同時に真の顔が近づく。
長いまつ毛が間近に迫れば、見つめるのが恥ずかしくなってそのまま真の唇が触れるのを目を瞑って待った。

[二人の気持ちは高まって……って事になる]

多香子の言葉がエコーがかって頭に響けば、私は叫びながら力一杯真を押し返していた。

「う……っわぁぁぁぁ!!」

「おわぁっ!!」

⏰:08/04/18 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#643 [向日葵]
突然の攻撃に容易く真は飛ばされてしまい、フローリングに尻餅をついた。
私はシンクに頼りなくもたれながら胸を押さえて心臓の音を聞く。

何急に意識しだしてんだ私……っ!さっきまでどうもなかったのにおかしい!

そこまで考えて私はハッとした。
真をほったらかしにしたまんまだった。

「ご、ごめん真っ!あの……」

「はぁ……いいよ。早く晩飯作ってくれ」

そう言うと、真はテレビをつけてソファーに身を投げ出した。

⏰:08/04/18 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#644 [向日葵]
あぁ……。真を傷つけてしまった……。
だから私は子供なんだよ。

……もういい。
全部多香子のせいにしてやる……。

頭のごちゃごちゃも、真となイザコザも、全て多香子に押し付けて私は晩御飯の準備にとりかかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「真ー。ご飯だよ」

台所からソファーの真に呼びかけても返事は無かった。
まだふてくされてるのかと、真に近づく。

⏰:08/04/18 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#645 [向日葵]
真を上から覗いて見れば、静かに寝息を立てて眠っていた。

いつも頑張っているし、(勝手にやってるんだとしても)学校の時と人格違うようにしてるから疲れてるのかもしれないなぁ……。

それを癒してあげるのが私の役目だと思う……のに。
突き飛ばしちゃった……。

その場で脱力するようにうなだれる。

座って、ちらりと真を見る。
相変わらず整った顔は寝ていても崩れない。

⏰:08/04/18 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#646 [向日葵]
「ごめん……なさい……」

寝返りをうった時に眼鏡を傷つけてはいけないと、眼鏡に手を触れた瞬間……。
素早く手首を掴まれた。

「ひぃっ!」

「んな化けもんに会ったみたいに驚かんでも……」

私は眼鏡に手をかけたまま固まった。

「外したいなら外せば?」

え、起きる気ないの?

特に理由もなく、せっかく外しかけたのだからと意味の分からない事を思いながら私は真の眼鏡を机に置いた。

⏰:08/04/18 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#647 [向日葵]
依然、私の手首はまだ解放されず、その掴まれてる手をぼんやりと見つめた。

「旅行行くの、やめる?」

そんな事言うもんだから、私は「え!?」と言いながら真をバッと勢いよく見た。

忘れていたけど、眼鏡を外した真の眼光は眼鏡をかけている時の2倍。
見えてるのかいないのか分からないながら見つめてくるけど、私はその視線にいつもクラクラする。

そんな事はとりあえず置いておいて、私は真に問うた。

⏰:08/04/18 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#648 [向日葵]
「な、なんで。あ、予定合わなくなった?それなら別の日……」

「じゃなくて」

私の言葉を遮って真が言った。
手を伸ばして、微笑みながら耳元を髪と一緒に撫でる。

「誰かさんが何かいやらしー事意識してるみたいだから」

理解しかねた私は首を傾げて真の言葉を口の中で繰り返した。
そして意味が分かった時、恥ずかしいようなムカつくような気分になった。
思わずそっぽを向く。

⏰:08/04/18 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#649 [向日葵]
「し……してない」

「顔真っ赤にしたくせに」

「真が迫る時はいつもでしょう」

「じゃあいつもいやらしい事考えてんだ」

「違うってば!」

ムキになればなるほど真は笑った。

笑い事じゃない……。

軽く口を尖らせていると、掴まれていた手首をぐいっと引っ張られた。

「わぁっ!」

⏰:08/04/18 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#650 [向日葵]
何をされるのかと目をギュッと瞑った。
暖かさを感じて目を上げれば、ソファーに寝転がっている真の上に、上半身だけ私の体が覆い被さっていた。

こ、この格好はマズイだろ……っ!

うろたえてる私をよそに、真は真剣なトーンで話始めた。

「何もしないよ。お前が嫌がる事は」

「べ、別に嫌がってる訳じゃ……」

ようやく手首を解放されると、今度は頭と腕を掴まれてる更に引き寄せられた。

⏰:08/04/18 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#651 [向日葵]
アンカーです(。・ω・。)
良かったらお使い下さい

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>600-650

⏰:08/04/20 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#652 [向日葵]
※訂正

>>650

×腕を掴まれてる
○腕を掴まれて

⏰:08/04/21 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#653 [向日葵]
必然的に、私の顔は真の肩辺りに埋まる。
すぐ近くに真の綺麗な首があって、胸は高鳴り、息を詰めた。

「ほら……こうするだけでお前緊張してる。家ならまだしマシだけど、旅行先でもしこんな事が起こったら、お前パニックに起こすだろ」

空いている手で、真は優しく髪を撫でる。
その感触が心地良くて、緊張が少しずつ引いていく。

ホラ……真はちゃんと私の事考えてくれてる。
だから大丈夫……。

「それはそれ、これはこれでしょ。私はただ単純に真と旅行したいだけ。……怖くなんか、ないから……」

⏰:08/04/21 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#654 [向日葵]
真は体を動かすと、反転させて私の体をソファーに寝かせた。
さっきとは逆の体勢。

真の片手が、私の頬に触れる。

「本当に?行っても大丈夫?」

「うん。大丈夫」

真は頬をゆるめる。
そして顔を近づけ、オデコをコツリと当てた。

「今度は突き飛ばすなよ」

そう言って、唇を優しく押し付けてきた。

⏰:08/04/21 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#655 [向日葵]
――――――……

「旅行と言えば…………やっぱ下着っしょぉぉ!」

金曜日の放課後。
明日に旅行を控えた私を引っ張り、デパートにやって来た多香子と私は、下着売り場にいた。

相変わらずそっち方面の意識しかないドスケベな多香子はハイテンションだ。

「さぁ何色にする!?やっぱ情熱な赤!?」

惜しみなくレースを付けた真っ赤なブラを見せながら多香子は言った。

「テメェで着てろバカ」

私は他の色を探す。

⏰:08/04/21 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#656 [向日葵]
「じゃあ大人の黒はっ!?」

「あーのーね多香子」

遂に私は痺を切らして多香子に向き直った。
多香子は今度は白のレースがついた黒い下着のセットを持ちながら私をキョトンと見る。

「前、真と話したけど、真はそんなつもりないの。私の事を一番に考えてくれてるから、楽しく旅行しましょってだけ!」

「男は狼なのーよー。気をつけなさーいー」

聞く耳を持たない多香子は歌いだす。

⏰:08/04/21 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#657 [向日葵]
イラッとしたので多香子が持ってた下着のセットをぶん取って元の位置に戻した。

とりあえず紺色とかでいい。

「じゃあさみかげ、そんなに言うならさ、万が一と考えて1着は可愛いらしいの買っておこうよ」

他人事のように言ってくれる……。
いや他人事なんだけど……。

「下着なんてあればいいんだから、買っておいて損はないでしょ?」

ま、そりゃそうだ……。

⏰:08/04/21 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#658 [向日葵]
私が納得したのが分かった多香子はにまぁーっと笑った。

「赤もダメ、黒もダメ……。残るはピンクってとこ?」

「もうちょっとマシなのにしてくれ……」

結局ミントグリーンの上下1着、紺色を1着買った。

下着買うのがこんなにも体力奪われるものだったかと疑問に思いながら私は家へ帰った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

時刻は6時半を過ぎた。
真は今日早いと言ってたから帰ってるだろう。

「ん?」

マンション近くの自販機で、オロオロしている50過ぎくらいの女性がいた。

⏰:08/04/21 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#659 [向日葵]
「どうかしました?」

暗いけれど、自販機の灯りと外灯の灯りで見えた女性の顔は、意外にも綺麗だった。

「いえねー、寒いからあったかいココアでも買って帰ろうかしらーと思ってお金入れても全然反応しないからー……」

「あー。これコツがいるんですよ」

私は女性に離れるよう指示してから自販機に向き直る。
精神統一するよう深呼吸してから足にグッと力を入れる。

「だぁ!」

⏰:08/04/21 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#660 [向日葵]
派手な音を立てながら思いきり自販機の側面を蹴る。
そうすればちゃんと自販機は反応して、ボタンが押せるようランプがついた。

「ハイ、いいですよー」

女性を見れば口を開けてポカンとしていた。
そして息を吹き出すと、声を上げて笑った。

「アハハハハ!本当、あの子が言った通りおもしろい子っ!」

「あの子?」

おばさんは笑いながらココアのボタンを押すと、私に押しつける。

「お礼。良いもの見させてもらったから体暖まった!」

⏰:08/04/21 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#661 [向日葵]
「え、でも……」

「じゃあね」

女性は私にココアを押し付けて颯爽と歩いて行ってしまった。

私は手の中にある暖かいココアを持ちながら女性を呆然と見送る。

なんか……エネルギー溢れる人だなぁ……。

そう思いながら、私は真が待つであろう部屋へと帰った。

「ただいまー真いるのー?」

「おー……」

⏰:08/04/24 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#662 [向日葵]
いつもの真らしい声じゃなかったので、首を傾げて疑問に思った。

リビングに入れば、テーブルに突っ伏した真がいた。
疲労と言う岩が真にのしかかってるように見える。

「ど、どうしたの?」

「いやー……久々だからなぁ……」

よく分からない事を呟く真。
私はますますハテナが頭上に舞った。

ダルそうに体を起こした真は、私をじっと見つめる。

⏰:08/04/24 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#663 [向日葵]
「何」

「多分お前可愛いがられるだろうなー……」

「さっきからなにブツブツ言ってんの。早く旅行の用意するよ」

真は「ヘイヘイ」と言ってリビングを出ると、別の部屋へと行った。
どうやら旅行カバンを探しに行ってるらしい。

そこで私はチラリと今日買ってきた下着を入れてるビニール袋を見た。

1泊2日だから下着は2着いらない……。
じゃあどちらを持っていけばいいの……。

⏰:08/04/24 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#664 [向日葵]
すると耳元に小さい多香子が出てきた(気がした)。

<何躊躇ってんのよ。イチかバチか持って行ってみればいいじゃない!>

いやウンそうだよ。
別にそんな気合い入れてるる訳でもないし。
たかがミントグリーンだよ?
そんな気合い入れた下着には見えないだろうし……。

すると反対の耳元には小さい私が出てきた(気がした)。

<真は私に合わしてくれるから持って行くだけ無駄よ。紺色のんにしときなさい>

⏰:08/04/24 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#665 [向日葵]
そうだよねー。真言ったもんねー。
じゃあ入れなくていいかなー。

<せっかくのシンデレラチャンスよ!>

<アンタ自分の事じゃないからって面白がりすぎなのよ!少しはこっちの身にもなって考えなさいよ!>

耳元でギャーギャーギャーギャー……。

「うるっさぁぁぁい!!」

「お前がな」

旅行カバンを2つ持った真が戸口になって私の叫びにツッコミを入れた。

⏰:08/04/24 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#666 [向日葵]
※訂正

>>664

×気合いいれてるる
○気合いいれてる

>>665

×戸口になって
○戸口に立って

⏰:08/04/26 23:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#667 [向日葵]
私は買ってきた下着の袋をとっさに後ろに隠した。
幸い真は私のその動作には気づかず、私の前に「ホラ」とカバンを置いた。

「忘れもん無いようにな。財布の中身は少量でいいから」

「安月給のくせに無理しなくていいって」

「その安月給の俺に養ってもらってんのはどこのどいつだかな」

デコピンをくらい、おでこをさすりながらも舌を突き出して抗議する。

部屋で用意しようと、隠した袋をさりげなーく持って行こうとした。
が、真は目ざとくも今度ばかりは気づいた。

⏰:08/04/26 23:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#668 [向日葵]
「ん?何それ」

ギクッとして体が固まった。
ギシギシ言わせながら、なんとか真の方へ振り向く。

「い、いや……ちょっと……旅行用の服を……」

「へー。じゃあ着て見せてよ」

無理。
ってか着たらモロバレじゃないか。

「明日のお楽しみって事で……」

「いーまー!ホラ見せて」

と袋を掴むので、一気に冷や汗が吹き出す。
紙袋の中に下着が入っていて、その上からさらにビニール袋に入れてるからパッと見では下着とバレないものの、探られてしまえばゲームオーバーだ。

⏰:08/04/26 23:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#669 [向日葵]
「ちょ……っ、やめんかこのボケェェ!!」

焦りに焦って、足が出てしまった。
足はクリーンヒットし、真の脇腹を強打。
突然の事に身構える事が出来なかった真は床にうずくまってしまった。

前回に引き続き、私もうちょっとマシな反応が出来ないものかと自分ながら思う。

「ちょ、おま……冗談キツすぎ……」

「し、真が悪いんじゃない……っ!」

私は逃げるように自分の部屋へと駆け込んだ。

⏰:08/04/26 23:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#670 [向日葵]
――――――……

快晴。雲1つなく文句ない天気。
……しかし、約1名の機嫌が頗る悪かった。
まぁ言うまでもないと思うけど……。

「あの……真……」

「あーぁ……なぁんでこんな脇痛ぇーんだろーなぁー」

わざとらしく脇をさすりながら着々と用意をする。
車に荷物を入れながら、大袈裟な真にムカッとしながらも、自分が悪いので怒るに怒れないでいた。

「ごめんなさいって!ちょっとこの頃あの自販機で鍛えちゃったもんだから……」

⏰:08/04/26 23:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#671 [向日葵]
意外に蹴るのが楽しかったり……って何言ってんだ私。

「だからごめんなさい!機嫌直して。ね?」

「小首傾げるのは反則だろお前……」

別に狙ってやった訳じゃないけど効果はあったみたいだから良しとしよう。

真はため息をついて、苦笑いすると、私のおでこにキスした。
本来なら「おわぁっ!」とかって飛び退きそうなのを、ぐっと我慢して耐える。

嫌な訳じゃないけど目をギュッと瞑らなければ急なこういう動作には恥ずかしさを隠せない。

⏰:08/04/26 23:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#672 [向日葵]
そんな私を気にした風もなく、真はクスリと笑って車のドアを開けてくれた。
ドアを閉め、真も乗り込むと、約2時間ほどの場所までの旅が始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「つーいたぁー」

車を降りて、大きく背伸びをする。
着いた旅館は意外と大きく、周りは山や田んぼがあった。

田舎だけど、お土産屋さんのお店も多数あるので、お客さんはそれなりにいた。

真が荷物を持って、空いた手で私の手を握る。

⏰:08/04/27 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#673 [向日葵]
そんな当然のようにやってのけるのが、なんだか心温まって頬を緩めた。

「チェックインしたら、そこらを散策するか」

真も楽しそうに言うから、笑顔のまま私は頷いた。

……それにしても、先ほどから真に視線が集まっているのが分かる。
しかも主に女性から。
その視線が、後に私にくる。

そうなのだ。
私の隣にいる人は、学校では仮面を被り、顔は良いものの人気がない。
でも今は仮面を被る必要はないから素なのだ。
つまり……モテてしまうバージョン。

⏰:08/04/27 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#674 [向日葵]
「あの子彼女?」

「可愛いけどまだ子供っぽくない?」

「なんであのカッコイイ人にあんな子が?」

うるっさいなー。
そんなんだからアンタ達に男が寄ってこないんだよ。

と悪態づきながらもショックは隠せないでいる。
私は真の手をギュッと握った。

「ん?どうした?」

「……なんでも」

真は「ふーん」と言うと、急に手を引っ張って耳に息を吹きかけた。

⏰:08/04/27 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#675 [向日葵]
「やぁぁ!何すんのっ!」

握られていない方の手で吹きかけられた耳を塞ぐ。
鳥肌がたつも、顔は真っ赤になった。

「何か騒いでもらいたかったから」

どういう事だそれは……っ!

*******************

みかげは旅行の緊張感も忘れて楽しそうにしている。

けれど問題発生だ。

みかげに男の視線が集まっている。
そしてそれは後に俺へとやって来る。

⏰:08/04/27 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#676 [向日葵]
「あの子ヤバイなぁー……」

「ってか隣彼氏?違うよな。多分兄弟だよな?」

「兄弟で手繋ぐ訳ないだろ。でもなんであんな奴?俺の方が良くね?」

出来る事ならばみかげを見ている奴を目潰しして、ふざけた事言ってる奴の口をひん曲げてやりたい所だが……。
もっと効果的な事をしてやろう……。

と頭の中で黒い事を考えていれば、急にみかげが手をギュッと握ってきた。

「ん?どうした?」

⏰:08/04/27 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#677 [向日葵]
聞けばみかげは困ったような、恥ずかしいような表情を浮かべて前を向いたまま呟いた。

「……なんでも」

あぁ……なんだこの可愛い生き物は……。
いっそのこと、ガラスケースに入れておきたいくらいだな……。

頭の中がやましい気持ちで一杯になったところで、俺はニヤリと笑ってみかげの手を引っ張り、近づいた耳に息を吹きかけた。

本当はさっきの男共に見せつけてやるつもりでキスしようかなとか考えたけど、せっかく楽しんでるみかげに警戒されては困るのでからかう程度で済ます。

⏰:08/04/27 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#678 [向日葵]
しかし、それでもみかげには刺激が強かったのか、顔を真っ赤にして手で繋いでいても離れれるところまで離れた。

「やぁぁ!何すんの!」

そこまで叫ばなくても……。

心の中で苦笑しながらも、周りにいた男共には効果はあったみたいなので良しとする。

「何か騒いでもらいたかったから」

その後、太股にみかげ曰く「自販機で鍛えられた蹴り」をお見舞いされた事は言うまでも無い。

⏰:08/04/27 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#679 [向日葵]
*****************

一連の事があり、チェックインを済ませた私達は予定通り散策を始めた。

よく見れば雪が所どころ残っていて、冬だなぁ……と改めて実感する。

「みかげ、寒くないか?」
「大丈夫。むしろ寒いの好きだし」

すると真は私の頬を指先で触った。

「でも冷たいな……。暖かい飲み物でも買うか」

「ここの自販機は蹴らなくても大丈夫だといいんだけど」

⏰:08/04/27 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#680 [向日葵]
真はクスクス笑って私の手を引いた。
抵抗する事なく、それについて行く。

少し歩いた所に、自販機はあった。
先客がいるので、少し離れたところで待っていようとしたけれど、明らかに様子がおかしかった。

先に来ていた女性1人が、せわしなくポケットをあさったり叩いたりしだしたのだ。

真と何事だろうと顔を見合わした時、2人の会話がこちらに聞こえてきた。

「マジありえない!何で無いのー!?」

「あたしの財布は旅館に置いてきたから無いし……もう諦めようよ」

⏰:08/04/29 18:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#681 [向日葵]
「やだ!今飲みたいんだもん!」

どうやらポケットをあさっている方の人の財布が無いらしい。
真と私はまた顔を見合わせた。
すると真が私の手を離して財布を取り出した。
小銭入れから200円出すと、その女性の元まで歩いて行った。

「お嬢さん方、お金無いならどうぞ」

2人はびっくりしながらも、真にみとれていたのを見逃さなかった。
……特にダダこねてた方……。

嫌な予感が一気にしだす。

⏰:08/04/29 18:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#682 [向日葵]
ダダをこねてた方が真から貰ったお金を大事そうに両手で持って、白々しいくらいの笑顔で真に向き直った。

「ありがとうございます!あたし小恵子(サエコ)って言います!」

聞いてないから。

「良かったら一緒に散歩しませんかっ!」

「お誘い嬉しいけど、連れがいるから」

と真は親指を私の方へ向ける。
小恵子とか言う子は真の向こうから私を見ると、密かに鼻で笑ったような表情を(私にだけ)見せて直ぐに真にまた愛想のいい笑顔を向ける。

⏰:08/04/29 18:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#683 [向日葵]
「妹さん?なら一緒でも構いませんよ」

殴られたいのかコラ。

「違う。婚約者」

その言葉に、2人は愚か、私までもが驚いた。

こ……。

「婚約者ぁぁ!?」

小恵子が叫ぶ。

叫びたいのはこっちだ。
と言うより、婚約者だったんだと改めて実感した。
結婚の約束はしたものの、婚約者と言う言葉は思いついていなかった。

「行くぞ」

⏰:08/04/29 19:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#684 [向日葵]
私の元に帰って来た真は私の肩を抱いて歩き出す。
私はさっきまで小恵子に向けてた敵対心の炎を一気に消し、代わりに温かい感情がこみ上げてきて微笑んだ。

妹とか子供とか言われても関係ない。
真はありのままの私を求めてくれてる。
だったらいいじゃないか。

私は自分にそう言い聞かせた。

「妬いた?」

流れている川の上に橋が架けてある。
私達はそこで立ち止まり、景色を楽しんでいる。

「……何を」

⏰:08/04/29 19:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#685 [向日葵]
「妬きもち」

「……妬かない」

嘘だけど。

でも真はお見通しなのか、喉の奥でクククと笑う。
見抜かれた恥ずかしさに、私は口を尖らせて川をじっと見る。

そんな私を覗き込む。
今は見られたくないのにそんな事するもんだから、私の顔は不本意にも赤くなる。
それを見て、真は楽しそうにニヤリと笑った。

「悪趣味……」

「別に結構」

⏰:08/04/30 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#686 [向日葵]
ひょうひょうと言う真に悔しさを感じる。

「真はどうせ自分に自信あるから妬きもちを妬いたことすらないでしょうね」

「そんな事ないっつーの。じゃなきゃプール行った時不機嫌になるかよ」

きっと歩の事だと思った。
私はまだあの時、真の私に対する気持ちを疑ってたから、妬きもちと判断するのは難しかった。

それでも、妬いてくれてたんだと思えば嬉しかった。

「どうして……。……」

言いかけて私は黙った。

⏰:08/04/30 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#687 [向日葵]
「ん?何?」

聞けない……。
「どうして私が好きになったか」なんてそんな乙女チックモード全開のセリフ、私にはレベルが高すぎて無理だ……っ!

黙り込んでしまった私に更に近づいて、真は聞く。

「何?言ってみろよ」

無理です。

「絶対に笑う……」

「大丈夫だって」

「いやだー……」

真は「んー」と唸ってから私の肩を抱き寄せた。

⏰:08/04/30 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#688 [向日葵]
「言わないとキスする」

「は!?」

驚いてる私を無視して、真の顔が徐々に近づく。
近づいてくるごとに私は焦った。
誰に見られてるか分からない外でキスされるより、笑われた方が絶対マシだと思った私は、だけど近づいてくる真に恥ずかしさを隠せず、目をギュッと瞑って言葉を搾り出した。

「わ、“私のどこが好き”って聞きたかっただけ……っ!」

近づく気配が止まるのを空気で感じた。
そろりと片方の目を開ける。

⏰:08/04/30 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#689 [向日葵]
真はうつ向いていた。
どうかしたのかと心配になったけれど、何故そうしているか分かったので、半目にした。

「笑わないんじゃなかったっけ!?」

「だ……だってよ……そんな事聞いてくるとか、みかげからは想像つかなかったし……ククク……」

だから嫌だったんだ。

軽く頬を膨らませて、ふいっとそっぽを向く。

笑うだけ笑ってればいいさ……。

「そういうトコかな」

⏰:08/04/30 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#690 [向日葵]
「何の話?」

そっぽを向いたまま喋る。

「みかげのどこが好きかって話。いちいち反応が可愛いくて、実は物凄く寂しがりなところ。あとは……理由なんかなく、ただ好きと思っただけ」

素直に言われると逆に恥ずかしい。
これだからタラシは……。

と思っている半面、少し嬉しかったりもしている。

真は指先で私をこちらに向かせると怪しい笑みを浮かべた。

⏰:08/04/30 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#691 [向日葵]
「満足?お姫様」

「ひ……っ姫なんかじゃないんだからっ!」

「あーでも、みかげがそう思ってくれてるほど愛されてるんだなー俺」

愛されてるって……。

「べ、べべ別に深い意味なんて無いんだから!」

「心配しなくても俺も充分みかげを愛……」

「わー!頼むから愛してる”とかそういう寒い事言うなー!!」

言い合いはしばらく続いたのだった……。

――――――……

⏰:08/04/30 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
旅館に戻った私達は、そろそろお風呂でも入ろうという事になり、それぞれ用意をしていた。

天然温泉、しかも露天と言う事もあり、私の心はウキウキしていたらこの男は……。

「混浴無いんだってー。残念だなーみかげ」

「……例えあっても入らないから」

「将来の為に慣れといたら?」

「殴られたいの?」

そんな脅しに動じず笑う。
私は脱力した。

⏰:08/04/30 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#693 [向日葵]
何で真はいつも余裕なんだろう……。
たまには焦って青くなったりするところを見てみたいものだ。

用意が出来たので、私達は温泉に行く。

女湯と男湯の暖簾があり、私達はそこで別れる。

「じゃ、また後で」

「きっちり洗ってこいよー」

ニヤリと笑ってから真は男湯へ。

さてここで問題。
私はどちらの下着を持って来たでしょーか。

⏰:08/05/03 02:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#694 [向日葵]
正解は…………ミントグリーンの方。

ごくりと生唾を飲んで「いざ!」とお風呂場へ。

露天なので外の景色が見える。
山のふもとにある家の明かりがなんだか温かく感じ、自然の匂いがして、冷たい空気がより私をワクワクさせた。

熱くもなく、ぬるくもない温度はとても気持ち良い。首まで使って、体の中の空気を全て吐き出すくらい深呼吸する。

このまま寝てしまいたい……。

お湯に身を任せながら目を瞑った。

⏰:08/05/03 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#695 [向日葵]
[きっちり洗ってこいよー]

真の言葉を思い出す。
目を開けて、ちらりと旅行用の小さなシャンプーやらボディーソープやらを見る。

ま……まさかぁ……!ね……。

頭が妄想でいっぱいになる。

するとまた小さい多香子が耳元に現れた(気がした)。

<ホラみなさいよー。やっぱり松川そういうつもりじゃなーい。泊まりで何もない事はないんだからね!>

⏰:08/05/03 11:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#696 [向日葵]
で、でも……。真はそんなつめりで言ったんじゃなさそうだし。
私のただの思い違いであって……。

<あーまいっ!みかげはいつも考えがあまい!>

ぎゃんぎゃんミニ多香子に叱られていると、今度はまた小さい私が現れた(気がした)。

<アンタ真がそんな節操なしと思ってんの?いらん事は考えず、旅行を楽しめばいいじゃない>

そ、そうだよ。
いくら真がスケベで女タラシでも、人気持ちぐらい考えてくれるしっ!

⏰:08/05/03 11:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#697 [向日葵]
<何よ!その考えがダメなんだって!>

<アンタは考えすぎなのよ!>

あーもう……分かったから……。
とにかく……。

「洗っておけばいいんでしょぉー!!」

そこらにいた人の不審な目もなんのそので私は洗い場へ行った。
そこでふと顔を見る。
ため息をつきたくなる。

鏡を見た自分は、まだ恋愛すら知らなさそうな幼い顔だった。

こんなだから、妹って見られちゃうのかな……。

⏰:08/05/03 11:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#698 [向日葵]
左手の銀の輪がはめてある指を見て、ギュッと握る。

そろそろ化粧とかした方がいいのかな……。
そうすれば、もっと大人に近づいて、真の隣にいてもお似合いに見えるのかな……。

――――――……

旅館で用意された浴衣に着替えて外に出れば、真が既にいた。
しかしそれよりも私は胸に衝撃が走った。

「お、来た来た。女ってやっぱ風呂長いんだな」

笑いながら言う真の言葉なんて耳に入らなかった。

⏰:08/05/03 11:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#699 [向日葵]
適当に拭かれた濡れている髪は軽くかき上げられ、軽く滴る水滴は首筋を通り流れていっている。
面倒くさくなったのか眼鏡を外し、最近買ったと言っているコンタクトをつけてるらしい。
そしてなんと言ってもその浴衣を着こなしている姿の色っぽさ……。

湯上がりで良かった。
きっと私の顔は、暑さとは違う熱で赤くなっている。

「みかげ?どうしたぼんやりして」

真が近づいて来たので、勢いよく壁に張り付く。

「な、なんでもない!お腹が減っただけ!」

⏰:08/05/03 11:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#700 [向日葵]
「そうだな。部屋戻って食べるとするか」

部屋に戻れば、中居さんが食事を用意してくれてる所だった。
そして何気なく辺りを見渡して、更に私は動揺する。

寝室に敷かれた布団の位置が近いのだ。

無い!これは無い!

「ではごゆっくり……」

中居さんの言葉と共で私はハッとした。

「よし!食うか!」

真は既に座って、用意されたビールを開けようとしていた。

⏰:08/05/03 11:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#701 [向日葵]
※訂正

>>696

×そんなつめり
○そんなつもり

⏰:08/05/03 11:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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