俺がホストじゃなかったら
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#325 [ゆう]
俺はスウェットのまま地下鉄に乗った
タツミさんのアパートから俺のマンションは一駅だった
何でこんなに急いでるんだろう
会えるわけないのに
そんなことを考えているうちに俺のマンションについた
:07/08/23 18:15 :D902iS :☆☆☆
#326 [ゆう]
鍵でドアを開けた
その拍子に、ドアについてる郵便受けから金属が擦れる音がした
郵便受けを開けると、レナが持っていた合い鍵が入っていた
ポストの中の鍵が、二人の関係の『終わり』を俺に教えてくれた
部屋にはまだ微かに、レナの残り香があった
:07/08/23 18:21 :D902iS :☆☆☆
#327 [ゆう]
:07/08/23 18:22 :D902iS :☆☆☆
#328 [ゆう]
:07/08/23 21:19 :D902iS :☆☆☆
#329 [ゆう]
部屋に入ると、レナのものは全てなくなっていた
レナの化粧品、レナの服やバッグや靴、レナの歯ブラシ、コップ、雑誌
もとから荷物が少なかったから、ここで俺とレナが暮らしていたことを証明するものは、もう何ひとつ残っていなかった
:07/08/24 01:36 :D902iS :☆☆☆
#330 [ゆう]
レナに『今までありがとう』ってありきたりなメールを送ろうと思ったけど、もうアドレスは変えられていた
完全に終わった
俺の長かった恋
俺の初めての恋
俺を変えてくれた恋
たくさん裏切られたけど、それでも大好きだった
ほんと、バカだよね
:07/08/24 01:50 :D902iS :☆☆☆
#331 [ゆう]
それからの俺は最悪だった
仕事に身が入らない
指名も売り上げも数字は下がり、ナンバーも1から2に下がった
客に「最近元気ないね」って言われたくない一心で、わざと明るく振る舞ってみても裏目に出るばかりだった
:07/08/24 02:01 :D902iS :☆☆☆
#332 [ゆう]
女に振られたぐらいで仕事に支障が出るとかダサすぎる
楽しませなきゃと思って頑張る程、いつもの接客が出来なくなっていった
「ユウくん最近どうしたの?」
そう俺に話しかけてきたのはオーナーだった
:07/08/24 02:06 :D902iS :☆☆☆
#333 [ゆう]
「ナンバー、下がったみたいだけど。最近、調子悪そうだね」
「はい、すんません」
「ユウくんには新しい店任すことになってるんだから、ナンバー1でキープしといてもらわなきゃ」
そう言うとオーナーはスタッフルームを出て行った
俺は何かムシャクシャして近くにあったゴミ箱を思いっ切り蹴り飛ばした
:07/08/24 02:13 :D902iS :☆☆☆
#334 [ゆう]
「ユウさん、大丈夫ですか?」
俺が倒したゴミ箱を直してる時、ルイがスタッフルームに入ってきて俺にそう聞いた
「へーきだよー」
「ゴミ箱、蹴ったんすか?」
「でもちゃんと直したよ」
「‥ユウさん、何かダサくて可愛いっす」
「うっせ、きもちわりー」
俺は笑った
:07/08/25 12:36 :D902iS :☆☆☆
#335 [ゆう]
「笑ってくれましたね」
ルイがニコッと笑った
「え、俺いつも笑ってるし」
「いやいや、最近の顔、死んでますよ。調子も悪いじゃないですか。ホスラブとかでめっちゃ言われてるっすよ」
「出た。またホスラブかよ」
そう言いつつ俺は自分が何て叩かれてるのか気になってルイに見せてもらった
:07/08/25 12:45 :D902iS :☆☆☆
#336 [ゆう]
『今回のナンバー教えて』
『ケン、ユウ、マサキだよ。それ以下は知らない』
『ユウ下がったね』
『最近初めてこの店行ってユウ指名したけど別に大したことなかった笑』
『最近調子悪いよね』
『本命にフられたんだよ』
『本命って誰?』
『本命は私だよ』
『↑一生ユウに騙されとけ』
:07/08/25 13:04 :D902iS :☆☆☆
#337 [ゆう]
『ユウは色枕ホスだからナンバー1は続かないよ』
『ユウは枕しないよ』
『昔はバリバリ枕だったよ』
『中学の時からタラシでヤリチンだったらしいよ』
『うわー幻滅』
『↑関係ないじゃん、営業妨害やめろ』
『女で遊ぶ奴は女に遊ばれる』
:07/08/25 13:23 :D902iS :☆☆☆
#338 [ゆう]
結構痛い内容の書き込みばかりだった
「うわー、すげー言われようだな俺。誰がここまで知ってんだよ」
「大丈夫っすよ、ホスラブなんかデマばっかりだし」
「いや、実際この通りなんだけどさ笑」
だけど何だかんだ言って俺は、ホスラブで叩かれるのとかは慣れてたから気にしないでいた
:07/08/25 13:37 :D902iS :☆☆☆
#339 [ゆう]
それから数日後、俺はいつものように出勤して、指名されたテーブルについた
「アイ、久しぶりだね」
この日俺を指名したのはキャバ嬢のアイ
「久しぶりー!ちょっとの間キャバ出勤してなかったから来れなかった」
アイはそう言うと申し訳なさそうに笑った
:07/08/27 13:40 :D902iS :☆☆☆
#340 [ゆう]
それから何度か他からの指名が被って、アイのテーブルをちょくちょく離れた
戻って来た頃にはアイはかなり酔っていた
アイは酔うと手がつけられない
「ばか、そんな飲むなっていつも言ってんだろ」
俺はアイが飲んでいたグラスを取り上げた
:07/08/27 21:58 :D902iS :☆☆☆
#341 [ゆう]
「あーもう!うるさいなぁ!」
うわ、始まった‥
アイは酔うといつもこうだった
だから俺もなるべく長い間席を離れないようにしていた
「ユウ、いい加減はっきりしてよ!」
俺からグラスを奪い取ってアイが言った
:07/08/28 14:05 :D902iS :☆☆☆
#342 [ゆう]
「なにがだよ笑」
いつものことだと思った俺は適当に話しを流して、小さい子を扱うようにアイの頭を撫でた
「いつもそうやってはぐらかすやん!アイは彼女なん?客なん?本命って誰?」
アイは俺に詰め寄った
:07/08/28 16:24 :D902iS :☆☆☆
#343 [ゆう]
「ユウもアイのこと好きやと思ってキャバ頑張って店通っててん。本命ってレナちゃんなん?」
突然レナの名前を出されて俺は戸惑った
「レナは、俺とは関係ないよ」
「そうやんな、レナちゃん、ユウのこと利用しててんもんな」
アイはそう言うと少し笑った
:07/08/31 13:21 :D902iS :☆☆☆
#344 [ゆう]
何でアイがレナのこと知ってるの?
何でそこまで知ってるの?
そう思ったけど、平気なふりをするので精一杯で何も聞けなかった
俺は利用されてただけ
そうだよね
俺、ほんとダサいよね
:07/08/31 13:26 :D902iS :☆☆☆
#345 [ゆう]
次の日、アイからメールが入った
『昨日は酔って変なこと言ってごめん。アイのこと色でも、アイはユウが好きやよ』
メールにはそう書かれていた
胸が苦しくなった
『無理して店来なくていいよ、会いたくなったら外で会おう』
俺はそれしか言えなかった
:07/08/31 13:34 :D902iS :☆☆☆
#346 [ゆう]
ちょっと前までは、これが仕事なんだから仕方ないと思っていたことも
仕事だからって平気で出来たことも
レナにふられてから、出来なくなった自分がいた
好きな人に裏切られる辛さを知ってしまったから、簡単に『好き』という言葉が言えなくなった
人の痛みに敏感になって、弱くなっていた
:07/08/31 13:40 :D902iS :☆☆☆
#347 [ゆう]
更新遅れてごめんなさい
今ちょっと仕事の方でトラブルがあって忙しいです
待っててくれてる人ごめんなさい
今からちょっと更新します
:07/09/07 15:19 :D902iS :☆☆☆
#348 [ゆう]
「もう色とか出来なくなってきたー‥」
ルイと二人で仕事帰りに立ち寄った早朝のファミレス
俺はそう独り言のように呟いた
「アイちゃんのことっすか?」
ルイは口をもごもごさせながら俺に聞いた
:07/09/07 15:24 :D902iS :☆☆☆
#349 [ゆう]
「あぁ‥前の俺なら確実にアイに色かけたよ。絶対付き合ったと思う。アイ、付き合ったらすげー店とか通いそうなタイプじゃん」
「そうっすね」
「でもさ、嘘で好きって言えなかった。好きだった人が、本当は俺のこと好きじゃなかったって、めっちゃ悲しいことだからさ」
:07/09/09 11:48 :D902iS :☆☆☆
#350 [ゆう]
「ユウさん、それでホスト続けられるんすか?」
ルイが俺に聞いた
ルイの言いたいことは分かった
今の俺じゃホストに向いてないってこと
「出来るだろ。客が払う金額に見合った、むしろそれ以上のサービスを提供するのは、嘘ついて騙したり、色かけたりしなくても出来るはずじゃん」
俺はそう言った
:07/09/09 14:47 :D902iS :☆☆☆
#351 [ゆう]
めっちゃ遅れてごめんなさい
仕事のトラブルはまだ片付いてないんですけど待ってくれてる人がいるんで更新して行きますね
:07/09/26 00:54 :D902iS :☆☆☆
#352 [ゆう]
それから暫くして、俺が任されることになった新店舗がオープンした
立地条件がいいせいもあってか売り上げは好調で、だんだん俺はホストという仕事に対しての自信と感覚を取り戻し始めた
ルイは俺について来てくれた
その当時の俺はがむしゃらに働いた
:07/09/27 02:54 :D902iS :☆☆☆
#353 [ゆう]
まだレナを忘れてはいなかった
街中でよく似た後ろ姿を見つけた時
同じ香水の匂いがした時
レナが働いていた店の前を通り過ぎた時
灯りのついていない家に帰った時
生活の中のどれも全てが、レナを忘れさせてはくれなかった
:07/09/27 02:58 :D902iS :☆☆☆
#354 [ゆう]
そんな時俺はまた、知らなくてもいいことを知ってしまう
それでいつも傷ついて来たのに
「○○のセイヤ、引退らしいよ」
そう教えてくれたのは俺の客だった
:07/09/27 03:17 :D902iS :☆☆☆
#355 [ゆう]
俺はその話題に少し食いついた
「まじで?じゃあ今度のでかいイベントってセイヤさんの引退イベントなんだ」
そう言った俺に客は続けて
「今セイヤって全盛期なのにねー、もったいない。結婚するから辞めるんだって」
と教えてくれた
:07/09/27 03:22 :D902iS :☆☆☆
#356 [ゆう]
大嫌いなセイヤと同業じゃなくなることに少し喜びを覚えたけど、今が一番いい時期なのに結婚のために辞めれるなんてすごいな、とも素直に感心した
次の言葉は、聞きたくなかった
「レナ、だっけ?その子と結婚するらしいよー。まぁ前から噂あったしね」
:07/09/27 03:26 :D902iS :☆☆☆
#357 [ゆう]
レナとセイヤが結婚‥?
俺の乏しい思考能力では追いつかないような受け入れがたい現実だった
「‥それほんと?」
「ほんと。知らなかった?ユウは噂とか疎いからねー」
俺は気が遠くなりそうだった
:07/09/27 03:31 :D902iS :☆☆☆
#358 [ゆう]
それから偶然、レナとセイヤが二人で歩いてる所を目撃することもあった
その時の俺はただ、遠くから見ているだけ
レナは、俺といたあの頃より幸せそうだった
それならいい
レナが幸せなら
悲しいけど、そう願う以外なかった
:07/09/27 03:51 :D902iS :☆☆☆
#359 [ゆう]
俺の気も知らないで、月日は巡ってく
ある日、一本の電話から、俺はまた新しい事実を知ることになる
「ユウ?久しぶりー」
かかって来た電話の相手はトウヤだった
:07/09/27 04:06 :D902iS :☆☆☆
#360 [ゆう]
「俺さ、結婚するんよ」
トウヤは俺にそう言った
「マジで?いつ?」
突然の知らせに俺は驚いた
「来月の下旬!日程詳しく決まったら連絡するから来てよ」
「おー行く行く!おめでとう!」
俺は自分のことのように嬉しくなった
:07/09/27 04:10 :D902iS :☆☆☆
#361 [ゆう]
「まぁデキ婚なんだけどな。結果オーライだろ笑」
トウヤは笑いながらそう言った
「マジかよー!本当おめでとう!ベッドとかおもちゃ、やろうか?」
俺がそう言うとトウヤは
「え?ユウ使わないの?」
と聞いてきた
:07/09/27 04:13 :D902iS :☆☆☆
#362 [ゆう]
「うん、まぁ、色々あって。大体わかんだろ?何も聞かないでもらっとけよ」
俺がそう言うとトウヤは気まずそうに
「‥そっか、悪いな!」
と言った
その後適当に喋り電話を切った
:07/09/27 04:16 :D902iS :☆☆☆
#363 [ゆう]
電話が終わった後俺はすぐに子供部屋に入った
ここ最近ずっとこの部屋には入っていなかったから、なんだか不思議な気持ちになった
ベッドを解体してトウヤに送ってあげるつもりで、俺はベッドに手をかけた
:07/09/27 04:18 :D902iS :☆☆☆
#364 [ゆう]
?
ベッドの柵の隙間に紙が挟まっていた
俺の心臓が、ドクン
と大きく波打った
俺はその紙を手に取り広げた
:07/09/28 01:42 :D902iS :☆☆☆
#365 [ゆう]
その紙には見覚えのある字がびっしりと書き詰められていた
レナの字だった
俺は高鳴る心臓を押さえながら紙を握り締めその場に座った
手紙には、こう書かれていた
:07/09/28 01:46 :D902iS :☆☆☆
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