星とぽんず。
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#1 [七瀬]
「星とぽんず」の続編です!
マイペースやけど、
またがんばりまっす(^^)

あらし、中傷
やめてね゚。(p>∧<q)。゚゚
>>2-3 アンカー。
感想板、
『星とぽんず』
:09/05/25 19:37
:N703iD
:vnUiPhyQ
#2 [七瀬]
:09/05/25 19:38
:N703iD
:vnUiPhyQ
#3 [七瀬]
:09/05/25 19:41
:N703iD
:vnUiPhyQ
#4 [七瀬]
『はあ‥』
みなさん、
お久しぶりです。
「やぁね〜、この子ったら」
どうも、松田柚子です。
「ため息ばっか。
せっかくの夏休みなのに」
華の女子高生、一年目。
初の夏休み。
:09/05/25 19:45
:N703iD
:vnUiPhyQ
#5 [七瀬]
あたしの心はこのギンギン光る太陽のように熱い‥
『はあ〜〜‥』
はずが‥
「言ったそばから、もう‥」
楽しくないっっ!
夏休みに入って、
もう二週間。
飽きた。
:09/05/25 19:46
:N703iD
:vnUiPhyQ
#6 [七瀬]
最初は‥最初はね!
楽しかった‥
これから、始まる楽しいはずの日々にわくわくしてたよ。
でも、今は‥
『はあ〜〜〜‥‥』
「‥もう知らない。
お姉ちゃん、向こう行ってアイスでも、食べましょ」
:09/05/25 19:47
:N703iD
:vnUiPhyQ
#7 [七瀬]
アイスいいな〜。
でも動きたくないな〜。
『お姉ちゃん』
「持ってこないからね」
あ‥バレた?
『おねぇ〜ちゃ〜ん』
「食べたかったら、リビングおいで。」
‥鬼。
:09/05/25 20:07
:N703iD
:vnUiPhyQ
#8 [七瀬]
もう、いいや。
今はクーラーの前から
離れたくない。
せっかくの夏休み。
なのに、あたしったら
それを持て余しちゃってる。
もったいない。
そう思いながらも
なにもしたくない。
:09/05/25 20:08
:N703iD
:vnUiPhyQ
#9 [七瀬]
夏休みに入ってから、すぐに中学の友達と会った。
ひさびさの、ガールズトークに日頃のうっぷん晴らしたよ。
‥でも、そのうっぷんは2倍にも、3倍にもなって帰って来た。
みんなには、当たり前だけど、新しい友達ができ、彼氏ができ‥
もちろんその“新しい友達”ってのは女の子で。
:09/05/25 20:10
:N703iD
:vnUiPhyQ
#10 [七瀬]
とりあえず、あたしとは大違い。
毎日毎日、汗臭い男どもにまみれてるあたしとは。
その当たり前が、うらやましくてうらやましくて。
ほぼ男子校に通うあたしには夢のまた夢‥
友達ほしいよー!
ともだち!!
かわいい女の子の友達がほしい‥
:09/05/25 20:11
:N703iD
:vnUiPhyQ
#11 [七瀬]
うっぷんを晴らすどころか現在の自分の状況を再確認させられたっつうか‥
こんなことを考えてて、
ため息をつかないわけがない。
つまんない。
それプラス、憂うつ。
またそれにプラスして
アイツがいない。
アイツってのは‥
:09/05/25 20:12
:N703iD
:vnUiPhyQ
#12 [七瀬]
「ゆず〜!」
下から、声が。
『なに、お姉ちゃん!』
もう!
動きたくないんだってば!!
顔だけ、
階段の方へ向けた。
「まりちゃん来てるよ〜!」
まり?
ダルい体を起こして下へ。
:09/05/25 20:14
:N703iD
:vnUiPhyQ
#13 [七瀬]
「ゆっず〜!」
ひらひらと手をふる、
まりのすがたが。
『今日は彼氏さんとデートなんじゃなかったっけ?』
まりは、あたしをそんな憂うつな気分にさせた一人。
「うん、それがぁ〜
ダーリンはクラブでいきなり無理になっちゃって。」
おいおい。
あたしは暇な時の遊び道具じゃないぞ。
:09/05/25 20:16
:N703iD
:vnUiPhyQ
#14 [七瀬]
そう思いながらも、
『ふ〜ん。
で、なにしに来たの?』
普通に答える優し〜いあたし‥暇人なあたし。
「あ、うん。
今日来たのはね、同窓会のお知らせ伝えようと思って」
『同窓会のお知らせ?』
「うん。同窓会」
:09/05/25 20:18
:N703iD
:vnUiPhyQ
#15 [七瀬]
同窓会って‥
『まだ卒業して、半年も経ってないじゃん!』
「まぁね〜」
なんて呑気な。
「ま、来る予定だったら、メールして。日時、場所も言うから」
『あたし、宿題山盛りあるし、行けるかわからな‥』
:09/05/25 20:19
:N703iD
:vnUiPhyQ
#16 [七瀬]
「だから、行くんだったらメールして!ばいばーい」
『‥い』
最後の“い”まで、聞かずまりは帰ってった。
同窓会‥ねぇ。
そりゃ、もちろん‥
行くっしょ!
宿題山盛りあるとか言いながら、
ほんとは行く気満々!!
:09/05/25 20:21
:N703iD
:vnUiPhyQ
#17 [七瀬]
毎日毎日、暇なあたしが、行かないはずはない。
今から楽しみだぁー!
わーいわーい!
あ、まりにメールしとこ。
でも、
あんなこと言ちゃったし、すぐにメールするってのもなぁ‥
あれこれ悩んでるうちに、あたしの長い夜は更けてゆく。
:09/05/25 20:22
:N703iD
:vnUiPhyQ
#18 [七瀬]
あれから、結局まりにメールして、今その同窓会場へと向かっている。
‥って、
ただのファミレスだけど。
「あ、いたいた!ゆずー!」
『みんな久しぶり〜』
あ〜なんか懐かしい!
半年も経ってないのに!!
自然と笑顔に。
:09/05/27 05:46
:N703iD
:3SqaaO0A
#19 [七瀬]
やっぱ、このメンバーっていいな。
安心する。
今の二組とは大違い。
3ー2最高!
「よ、松田。」
『林原〜』
こいつとも、なんだか久しぶりな感じがした。
『久しぶりじゃん〜』
夏休みに入ってから一度も会ってなかったし。
:09/05/27 05:48
:N703iD
:3SqaaO0A
#20 [七瀬]
「“久しぶり”って、お前ら高校同じだろ!」
男子が口を挟んだ。
「ま〜、俺は部活で忙しかったからな。」
「えー、
林原なに部なわけ?」
みんなが林原へ視線を移動させた。
「剣道。」
:09/05/27 05:49
:N703iD
:3SqaaO0A
#21 [七瀬]
「へえ〜、そうなんだ〜」
歓声が上がった。
4ヵ月ほど前までは、ふつうのちょっとおとなしかった女の子たちが、
今では、
えっ、誰?って感じ。
みんな、校則に縛られてたのが、一気に解放されて、弾けてしまったんだろう。
特にうちの中学は厳しかったし‥
よくあることだよね。
:09/05/28 19:01
:N703iD
:G2b4JUyo
#22 [七瀬]
そんな子たちを中心として、林原の周りを囲んでいた。
「ちょっとちょっと、柚子!いいの?」
『へ?なにが?』
まりの鋭い目にたじろぐ。
「“なにが”って‥もぉ〜」
まりのため息に
ますます疑問が。
:09/05/28 19:03
:N703iD
:G2b4JUyo
#23 [七瀬]
「林原!盗られちゃうよ!」
小声だけど、脅すようなその一言でやっと、その意味に気付いた。
『盗られるもなにも‥』
「林原ってさあ、
高校入って、途端に人気でたよねぇ‥」
『え、そう?』
あたしがよっぽどマヌケな顔をしたのか、まりのため息が大きくなる。
:09/05/29 20:14
:N703iD
:9TMx6ROY
#24 [七瀬]
「あんたって子は‥」
まり‥
お母さんみたい。
‥じゃなくて。
「なんだか、この4、5ヵ月で、だいぶ雰囲気変わったよね。」
『そうかなぁ‥』
もう一度、女の子に囲まれた林原を見る。
:09/05/29 20:16
:N703iD
:9TMx6ROY
#25 [七瀬]
“変わった”といわれても別に、林原は
髪の色が明るくなったとか
ズボンを思いっきり下げてはくようになったとか‥
まあ、いわゆる高校デビューという奴ではない。
周りにいるような、そんなチャラチャラした奴じゃない。林原は。
だから、なにが変わったのか、分からない。
:09/05/29 20:18
:N703iD
:9TMx6ROY
#26 [七瀬]
「もうっ!ほんとに分かんないの!?」
『そんなこと言われても‥』
まりに押されつつ、思考を巡らせる。
変わったとこ
変わったとこ‥
強いていうなら
『あ、背のびた?』
まりのため息は途絶えることはなかった。
:09/05/29 20:21
:N703iD
:9TMx6ROY
#27 [七瀬]
『そんな目で見られても〜‥』
困りますよ、高田まりさん。
「よく見てっ!バカ柚子!」
そうやって、グイッ!と、首の位置を移動された。
目は自然と林原へ。
あ‥
「どう!?わかった?」
:09/05/29 20:22
:N703iD
:9TMx6ROY
#28 [七瀬]
『うん‥』
まりのいう意味がやっと分かった。
確かに、林原は変わったかも。
少なくとも‥ううん。
こうして改めて見ると、かなり変わったかも。
「ね?私の言ったこと分かったでしょ?」
『……』
:09/05/29 20:23
:N703iD
:9TMx6ROY
#29 [七瀬]
そこには、女の子たちに囲まれ笑ってる林原の姿。
「林原って、誰が話し掛けても、あんましゃべんなかったじゃん。
それが、あんなにしゃべってる。笑ってる」
『うん‥』
まりの言ってることは、
今、あたしが感じたことだった。
「私もびっくりしたわよ。」
:09/05/29 20:25
:N703iD
:9TMx6ROY
#30 [七瀬]
まりの一言一言が重い。
「林原は、いつもボーっとしていて、イマイチよく分かんないヤツだった。
それに、壁みたいなん感じたしね」
中学時代を思い出す。
「それが今はどう?」
まりの指す先を見る。
:09/05/29 20:27
:N703iD
:9TMx6ROY
#31 [七瀬]
林原はやっぱり笑ってた。目を反らしたくなる。
少し胸が痛んだ。
でも、昔の面影は残ってるみたい。
その証拠に、相変わらず、ほわんとしてたし、
なにより、林原が話している最中にも時々、
あの茶色い犬のような瞳が、あたしの目と合った。
そのことが、
痛みを軽くした。
:09/05/29 20:29
:N703iD
:9TMx6ROY
#32 [七瀬]
「ゆっず〜、
ひさしぶりぃ〜!」
『わ、み、みさき〜』
三咲が抱きついてきた。
三咲はまりと同様、
特に仲良しだった友達。
「まりとなに話してたの?」
『ん〜、別にたいした話じゃないよ』
「えー、なになに?気になるじゃん。
あ、もしかして恋バナとか!?」
:09/05/29 20:30
:N703iD
:9TMx6ROY
#33 [七瀬]
『ゲホッゲホッ‥ゲホ…』
「ちょっと柚子〜、汚い〜」
『ごめ‥』
「ああ〜もう。なにやってんの。はい、おしぼり。」
『ありがと‥』
まりに手渡されたおしぼりで机と手を拭いた。
三咲が、そんなこと言うから吹いてしまったではないか。
:09/05/29 20:31
:N703iD
:9TMx6ROY
#34 [七瀬]
「も〜、柚子はほんとわかりやすい。図星?」
呆れ半ば、三咲が笑う。
「見事に的中だね、まったく…」
『そんな‥まりまで…』
ハハハと3人の間に笑いが起きた。
「で?」
三咲のにっこり笑顔があたしに向けられる。
:09/05/29 20:33
:N703iD
:9TMx6ROY
#35 [七瀬]
『え?』
「だーかーら!
詳しく話なさいっ!詳しく!!」
‥オーマイガーっ!
三咲の好奇に満ちた目は、恐ろしく輝いていた。
どうなるの‥あたし‥‥
:09/05/29 20:34
:N703iD
:9TMx6ROY
#36 [七瀬]
「ふ〜ん、そういうこと」
「そういうこと」
『ちょ、
ちょっと待って‥』
あれから、三咲の拷問に合ったのはいいものの、
ほとんどってゆーか全部まりが答えてた。
おかげで、かなりフィクション入ってましたけど?
フィクションというか、そこまでいくと嘘なんじゃ…
:09/05/29 20:36
:N703iD
:9TMx6ROY
#37 [七瀬]
「でも、ミサはもうとっくに、柚子と林原くんは付き合ってると思ってた〜」
あたしの言葉を遮った上に爆弾発言ですよ、三咲さん。
「だよねー、私も見ててじれったいじれったい」
こら、まり。
便乗すんな。
『違うってばっっ!』
:09/05/29 20:37
:N703iD
:9TMx6ROY
#38 [七瀬]
思わず、叫びに近い声を上げてしまった。
「おいおい、なにが違うんだよ。松田」
当然、みんながあたしに注目したと思ったら、
この男子の発言でドッと笑いが起きた。
チラッと林原を見ると、
「相変わらず、松田はおもしろい」
クスクス笑っていた。
:09/05/29 20:39
:N703iD
:9TMx6ROY
#39 [七瀬]
林原まで〜!
ガタッ
また座りなおした。
「ほんと柚子は最高」
『まりと三咲が、そんなこと言うから‥』
すると、
2人がまた笑いだす。
もう!知んない!
:09/05/29 20:40
:N703iD
:9TMx6ROY
#40 [七瀬]
「ごめんごめん。
怒んないで、ゆず」
そんな含み笑いで、
言われて、誰が怒りを鎮めるかっつーの!
フイとそっぽを向いた。
と、その時
ピリリリリ…
「あれ、
誰か携帯鳴ってない?」
:09/05/29 20:41
:N703iD
:9TMx6ROY
#41 [七瀬]
『あ、あたしだ』
ディスプレイを見ると、
着信“お母さん”
なんだ、こんな時に‥
『もしもし?』
「ちょっと、柚子!
いったいどこでなにしてるの?」
電話に出た瞬間、
お母さんの通りのよい声がキーンと響いて、
思わず携帯から耳を少し遠ざけた。
:09/05/29 20:43
:N703iD
:9TMx6ROY
#42 [七瀬]
『なにって、
今日は同窓か…』
「いいから、牛乳買って来て!今すぐね、今すぐ!」
プツッ
それだけ言うと、電話を切られた。
今のあたしの耳には、
さっきのお母さんの声と正反対なくらい静かな
ツーツーツーツーという音が寂しげに響いている。
:09/05/29 20:44
:N703iD
:9TMx6ROY
#43 [七瀬]
『‥‥‥』
「ゆず?ゆ〜ず〜?
ゆずってばぁー!」
三咲の呼び掛けに
ハッと我に戻る。
『もうっっ!
なんで、うちのお母さんは、あんなに自己チューなのっっっ!?』
「わ、ちょっとゆず〜。
耳元で叫ばないでよ〜」
あ、いけない‥
またやってしまった。
:09/05/29 20:46
:N703iD
:9TMx6ROY
#44 [七瀬]
どうやら、あたしの悪い癖みたいだ‥
興奮すると、叫んじゃう。
…嫌な癖だな。
『ごめん、三咲、みんな。あたし帰るわ』
「え、ゆず。もう帰るの?」
『うん。お母さんから電話あって‥牛乳買ってこいって。しかも早急に。』
「相変わらず、松田のお母さんは強烈だな〜」
:09/05/29 20:47
:N703iD
:9TMx6ROY
#45 [七瀬]
男子の言葉に思わず苦笑い。
まったくだよ、ほんと‥
『ま、そういうことで、あんま遅くなると、また電話かかってくるから。
じゃねー、ばい』
「お疲れ〜」
「ゆず、またね!」
「気を付けてなぁ」
みんなに手を振り出口へ。
:09/05/29 20:48
:N703iD
:9TMx6ROY
#46 [七瀬]
『ばいば〜い』
最後にもう一度、みんなに手を振った。
その時、
「送ってくよ、松田」
今さっきまで、囲まれてた林原が立ち上がった。
わいわいうるさくって、
営業妨害に近かったくらいなのに、
それが嘘のようにシーンってなった。
:09/05/29 20:49
:N703iD
:9TMx6ROY
#47 [七瀬]
なんか‥前にもこんなことがあったような…
『いや‥いいよ。
林原は、もっと楽しんで』
あたし‥ちょっとヤキモチ妬いてたのかも。
変な意地張ってるもん。
「送ってく」
そんな、あたしをいとも簡単に対処しちゃう林原は
昔のまんまなのか、変わったのか。
:09/05/29 20:50
:N703iD
:9TMx6ROY
#48 [七瀬]
そう言うと、
林原は出口まで来た。
「じゃなー、みんな」
そうやって、みんなに笑って手、振るとことかも。
「松田、行こ」
なぜか、緊張した。
違う人と、並んで歩いてるような気持ち。
:09/05/29 20:53
:N703iD
:9TMx6ROY
#49 [七瀬]
やっぱり‥
林原と歩いていて、
気付いてしまった。
‥やっぱり、あたし、
意地張ってる。
ヤキモチ妬いてる。
だって、なんかイライラするもん。
モヤモヤするもん。
:09/05/29 20:55
:N703iD
:9TMx6ROY
#50 [七瀬]
時々、乾いた風が吹いて、林原の匂いが、鼻をくすぐる。
一緒に並んで、
また身長差できたなって、実感する。
そして、茶色い瞳が、
あたしに向けられる。
あの、高い声があたしを呼ぶ‥
「松田」
:09/05/29 21:00
:N703iD
:9TMx6ROY
#51 [七瀬]
あれ‥
「お前、見にこいよ」
声‥高くない。
「明日、学校の閣議室で」
なんか、寂しいな。
「部活、あるから」
またあの高い声で
呼んでほしい。
“松田”って。
:09/05/29 21:04
:N703iD
:9TMx6ROY
#52 [七瀬]
『………』
「松田?聞いてるか?」
『…え?あ、ああ!うん。聞いてた聞いてた!!』
「ほんとか?
じゃあ今、俺が言ったこと言ってみろよ」
『…………』
「ほーら、やっぱ聞いてなかったんだろー」
:09/05/29 23:05
:N703iD
:9TMx6ROY
#53 [七瀬]
違う。
違うよ、林原。
『‥明日、学校の閣議室で部活あるんでしょ』
あたしが、なにも言わなかったのは、
あんたのフッて笑った顔が
あまりにも大人っぽかったからだよ。
:09/05/29 23:09
:N703iD
:9TMx6ROY
#54 [七瀬]
林原は、少し目を丸くしたあと、また細めて笑った。
「成長したじゃん」
だからっ
『あたしはガキか!』
そんな顔で
笑わないでよ。
そして、またもう一つ。
重要なことに、気付いてしまう。
:09/05/29 23:11
:N703iD
:9TMx6ROY
#55 [七瀬]
あたしは、
林原に群がった女の子たちに嫉妬したんじゃない。
あたしは‥
コイツに嫉妬したんだ。
こんなに、大人っぽく笑う林原に。
:09/05/29 23:14
:N703iD
:9TMx6ROY
#56 [七瀬]
そして、
そんなコイツが、
離れていってるような気がして、
寂しかったんだ。
ものすごく。
ものすごく、ものすごく。
寂しい。
:09/05/29 23:16
:N703iD
:9TMx6ROY
#57 [七瀬]
「はははっ」
あたしって、
ほんとワガママだよね。
『‥笑うな!』
林原が「好き」って言ってくれたとき、答えられなかったくせに。
「ごめんごめん」
寂しがるなんて。
:09/05/29 23:19
:N703iD
:9TMx6ROY
#58 [七瀬]
『ありがと。
家まで、送ってくれて』
あっという間に家に到着。
「おう!女が夜道に一人は危ないからな」
またあの笑顔で、
そんなこと言う。
だから、ほらまた。
林原のそんな姿に嫉妬してしまう。
:09/05/29 23:22
:N703iD
:9TMx6ROY
#59 [七瀬]
そういえば‥
前に、アイツに送ってもらったときは、
“ぽんずちゃんも一応、女の子だから”
とか言われたっけ。
うん。
いつ思い返しても、腹立つぜ、この野郎。
:09/05/29 23:23
:N703iD
:9TMx6ROY
#60 [七瀬]
同じ意味のことを言ったのに、こうも違うなんて…
やっぱ林原は大人になった。
少なくともアイツの100倍‥ううん。1000倍は。
「じゃあ、おやすみ」
そうやって、暗闇の中、だんだん見えなくなっていくその姿を眺めながら、
なんだか切ない、
蒸し暑い日。
:09/05/29 23:25
:N703iD
:9TMx6ROY
#61 [七瀬]
『ただいま〜』
「おかえりー。牛乳買ってきてくれた?」
『うん、はい。』
林原に送ってもらう途中、“まつはし”に寄って牛乳を買った。
“まつはし”というのは、PM.11:00には、閉まってしまう個人営業のコンビニ。
あたしの家からは徒歩5、6分というところだ。
:09/05/30 00:01
:N703iD
:N5IrhVj6
#62 [七瀬]
24時間営業じゃないって…
さすが、
THE 田舎って感じ。笑
「ありがとー、ゆず」
すると、お母さんはビニール袋から、牛乳を取り出した。
あたしの手が、自然と、
低脂肪の牛乳に伸びたのは
「30円が惜しい!」っていうお母さんのドケチが移ったみたい。
:09/05/30 00:06
:N703iD
:N5IrhVj6
#63 [七瀬]
「これでやっと作れるわぁ」
そういって、台所に立ったケチんぼ、自己チュー
マイマザー。
『“大至急で牛乳”って、いったいなに作るのさ』
あたしが同窓会を放ってまで買ってきたんだから…
その牛乳の使いどころを、しっかり聞かせてもらおうじゃないですか。
:09/05/30 00:08
:N703iD
:N5IrhVj6
#64 [七瀬]
「んー、シチューを作るのよ。ホワイトシチュー」
ほ・わ・い・と!!
し・ち・ゅ・ー!?
『そ…そそそそ
それだけのために、わざわざあたしの同窓会を邪魔したの!?』
「だぁってねぇ〜」
お母さんは、じゃがいもとニンジンの皮を剥きながら何食わぬ顔で言った。
:09/05/30 00:11
:N703iD
:N5IrhVj6
#65 [七瀬]
「お母さん、柚子が同窓会行ってるなんて知らなかったし」
まりがうちに来たとき、
いたじゃないですか。
「だいいち、今日なんの日か知ってる?」
‥‥へ?
『なんの日なの??』
:09/05/30 00:12
:N703iD
:N5IrhVj6
#66 [七瀬]
「あら、やだ。
知らないの?柚子」
眉を寄せるお母さん。
カレンダーに目を向ける。
今日は8月4日。
ん?
8月4日?
:09/05/30 00:13
:N703iD
:N5IrhVj6
#67 [七瀬]
なーんか、引っ掛かるんだよなあ‥
8月4日
8月4日…
出かかってるのに、出なくて、もどかしい。
「お父さんの誕生日」
うしろから声が聞こえたと思ったら、
『お姉ちゃん‥』
鬼のマイシスターの姿が。
:09/05/30 00:14
:N703iD
:N5IrhVj6
#68 [七瀬]
「8月4日。
お父さんのバースデー」
『あっ、忘れてた』
再度言われ、ようやく脳が理解してくれたみたい。
「もぉ〜。お母さん、そんな親不孝な娘に育てた覚えないわよ〜」
‥親不孝で、どうもすみません。
:09/05/30 00:15
:N703iD
:N5IrhVj6
#69 [七瀬]
「ゆず〜っ、ひどいなあ〜!お父さん、ショック大!」
うん、古いよ。
死語だよ、パパ。
‥とりあえず、
お父さんは酔ってるみたいだし、
「ママのホワイトシチューはやっぱり最高だ」
あたしが完全に忘れてたこと、気にしてないみたいだし、いっか。
:09/05/30 00:22
:N703iD
:N5IrhVj6
#70 [七瀬]
これが、シラフだったら、お父さん、落ち込んでただろうな。笑
誕生日プレゼントには、
速急で、昔よく作った
“肩たたき券”をあげた。
行事のお知らせのプリントで。笑
「懐かしいなぁ〜」
って喜んでた。
これもシラフだったら‥
:09/05/30 00:26
:N703iD
:N5IrhVj6
#71 [七瀬]
「ははは〜、ママぁ〜!」
お母さんに、寄り掛かってるお父さん。
‥ラッキーってことで。
でも、ときどき思う。
あたしにも、この人の血が流れてるんだろうか。
‥流れてるんだろうが、
‥やだな。笑
:09/05/30 00:29
:N703iD
:N5IrhVj6
#72 [七瀬]
『‥お風呂入ろっと』
「もう入るの?」
『うん。明日、学校行かなきゃいけないし』
林原の部活、見に‥
「まー!まあまあ!
あんた偉いわぁ!自分から進んで補習受けるなんて。お母さん、見直しちゃった!」
:09/05/30 00:34
:N703iD
:N5IrhVj6
#73 [七瀬]
……ん??
『ほ‥ほほほ補習!??』
ななな、なにそれ!!
「えーと、明日から毎週水曜日。お盆は除く…
教科は数学、理科、英語。自由参加……」
お母さんの手には、
例の“肩たたき券”
:09/05/30 00:38
:N703iD
:N5IrhVj6
#74 [七瀬]
「午前9時から、11時まで…だって」
肩たたき券め!
肩たたき券のくせに!!
あたしのハッピー夏休みライフ…すいません。
あたしの!
毎日ゴロゴロぐーたらライフを邪魔するつもりか!
『あ‥あたし、無理だよ!林原の部活見に行くし!』
:09/05/30 00:42
:N703iD
:N5IrhVj6
#75 [七瀬]
「何時から?何時から始まるの?その部活」
『え?』
そういえば‥
『‥‥わかんない』
時間、聞いてない!
「じゃあー、行ったってしょうがないじゃない。おとなしく補習受けなさい」
それだけは、
ぜっっったい!いや!!
:09/05/30 00:47
:N703iD
:N5IrhVj6
#76 [七瀬]
『‥やだよ』
「行きなさい」
『やだやだやだ!』
「行きなさい!」
『やだったら、やだ!!』
お互い、一歩も譲らない
仁義なき戦い。
その戦いの終止符を打ったのは、この酔っぱらいオヤジ。
:09/05/31 00:36
:N703iD
:U4z37/x2
#77 [七瀬]
「ゆず〜、
肩マッサージしてくれ〜」
………。
『‥お風呂
はぁーいろ、っと‥』
「ちょっと待ちなさい!
柚子!!」
「ゆず〜、肩たたき券使えないのか〜!?」
今日は営業中止だ。笑
ってか、マッサージ屋は、潰れたっつーことで。
:09/05/31 00:41
:N703iD
:U4z37/x2
#78 [七瀬]
とりあえず、
あたしはお風呂に逃げ込んだ。
なんか、中3ぐらいから、お風呂があたしの居場所みたいになってる気がする。
だって、
いちばん落ち着くし。
ゆっくり、
安らげるというか‥
だいたい、うちの家族は、うるさすぎるんだ。
:09/05/31 00:44
:N703iD
:U4z37/x2
#79 [七瀬]
『ふぅ〜‥』
明日、どうしよ‥
いつから、
部活始まるんだろうか。
剣道部だし、
そんなに長いこと、閣議室使えるわけじゃないし‥
遅くても
昼過ぎまでだろう。
もーっ!
林原も肝心なこと忘れちゃダメじゃん。
:09/05/31 15:25
:N703iD
:U4z37/x2
#80 [七瀬]
補習は9時から、11時までって言ってたしなあ‥
‥アイツもくるんだろうか。
久しく会っていない
アイツ。
この長い夏休み。
どう過ごしているのかな。
:09/05/31 15:28
:N703iD
:U4z37/x2
#81 [七瀬]
あー、のぼせちゃう!
あたしは、
急いで湯ぶねから出る。
‥なに赤くなってんの。
長いこと、湯に浸かっていたからか、
‥アイツのことを考えてたからか。
鏡の中の、あたしの頬は火照っていた。
:09/05/31 15:33
:N703iD
:U4z37/x2
#82 [七瀬]
『‥明日‥補習行くよ』
「どうしたの、急に。
さっきまで、あんなにいやだって言ってたじゃない」
『べっ‥別に』
アイツも行くかも
ってわけじゃないから。
『ただちょーっとは勉強する気になっただけ』
「あら‥そう」
:09/05/31 18:28
:N703iD
:U4z37/x2
#83 [七瀬]
バスタオルで、頭を無造作に拭きながら、
目を大きくしているお母さんに
『おやすみ』
そう言って、
部屋へ向かった。
ドキドキを
胸に秘めながら。
:09/05/31 18:32
:N703iD
:U4z37/x2
#84 [七瀬]
あ〜‥、
なんか、ほんと久々だぁ‥
この長い長い時間、
電車に乗ったのも、
学校へ足を運んだのも。
一年の補習は、
一階の多目的室で行うらしい。
ちなみに、閣議室は、
三階のいちばん端っこにあって、体育館を3分の1の大きさにした感じ。
:09/05/31 19:10
:N703iD
:U4z37/x2
#85 [七瀬]
『‥おはようございまーす』
少し緊張気味に多目的のドアを開けると、
長テーブルが横2列、
縦5列に並んでいる。
‥が、
「松田、おはよう」
そこには、マッキーが一人、相変わらずのいかつい顔で座っていた。
:09/05/31 19:16
:N703iD
:U4z37/x2
#86 [七瀬]
『ま‥マッキー』
「久しぶりだな、松田」
多目的室には、
あたしとマッキーだけ。
『ちょ‥ちょっと早く来すぎちゃいましたかね』
だって、誰も来てないし。
「いーや、ちっとも早くない。遅すぎるくらいだ」
そうやって、マッキーは
9時ちょうどを指している時計を指差した。
:09/05/31 20:28
:N703iD
:U4z37/x2
#87 [七瀬]
てことは‥
「じゃあ、松田が来たことだし、始めるか。補習」
てことは、
てことは!!
『あの‥あたし一人で、
ですか?』
「当たりめーだろーが。
誰も来ないんだから」
や、やややっぱり‥
:09/05/31 20:30
:N703iD
:U4z37/x2
#88 [七瀬]
こうして、始まった補習。
アイツどころか、
誰も来ていない。
みんな、貴重な夏休みを補習に埋める気はないようだ。
‥って、当たり前か。
もぉ‥‥最悪‥
あたしは、3時間、
この黒板に一人で立ち向かわなければいけなかった。
:09/05/31 20:34
:N703iD
:U4z37/x2
#89 [七瀬]
マッキーが、一生懸命、
数学を説明している。
ていうか‥
マッキーって、技術の先生だったんじゃ‥。
「おい、聞いてるのか!?」
『え!?あ、は、はい!』
でも、数学の先生より、
分かりやすかったし、いっか。
この3時間、
いつもの無駄ばなしは、出てくることはなかった。
:09/05/31 20:40
:N703iD
:U4z37/x2
#90 [七瀬]
「よーし、10分早いが、
今日はここまでだ。
松田、一人でよく頑張ったな」
あれから、理科、英語を
教わって、やっと解放された。
『ありがとうございました』
そうやって、
多目的室を後にした。
:09/05/31 20:45
:N703iD
:U4z37/x2
#91 [七瀬]
このまま帰るのも
なんだし‥
一応、閣議室行ってみよっかな。
なんて、考えながら
ボンヤリ歩いていると
バンッ
『わっ!』
「ごっごめんなさい!」
誰かが、後ろから
ぶつかってきた。
:09/05/31 23:12
:N703iD
:U4z37/x2
#92 [七瀬]
「す、すいません!」
相手は、
頭を下げて謝る。
『そ‥そんな‥、あたし、大丈夫だし、どこも怪我してないし‥‥顔、上げて下さい』
制服を着ていることから、ここの生徒らしい。
「あの‥ほんとすいません」
あたしが、そう言うと
顔を上げた。
:09/05/31 23:17
:N703iD
:U4z37/x2
#93 [七瀬]
わ‥かわいー‥。
「あの‥怪我、ほんとにしてませんか?」
身長は、あたしくらいしかないみたい。
目は、おっきくて、
くりくりしている。
髪は、ふわふわしたショート。
あたしと、正反対の白い肌が真っ黒な瞳をより美しく引き立てていた。
:09/05/31 23:21
:N703iD
:U4z37/x2
#94 [七瀬]
『ほ‥ほんと大丈夫ですから‥』
「ごめんなさい。
急いでたものですから、走っててつい‥‥」
そうやって、
頬に手をかざす、その女の子は、やっぱりかわいい。
『その‥急いでたんなら、早く行ったほうが‥』
「あ、そうですね。
ほんと申し訳ありませんでした」
:09/05/31 23:25
:N703iD
:U4z37/x2
#95 [七瀬]
ハッとしたように、
その女の子は言った。
「早く行かないと、剣道の試合が始まっちゃう‥
そ、それじゃあ、失礼しましたっ!」
そうやって、あたしが行こうとした階段の方へ慌てて走っていった。
剣道の試合‥?
あ‥、まだやってるんだ。あたしも早く行かなくっちゃ。
あたしも、女の子と同じ方へ足を走らせた。
:09/05/31 23:32
:N703iD
:U4z37/x2
#96 [七瀬]
「頑張れー」
「ファイトー!」
わ、始まってんじゃん。
ドアを開けた瞬間、
熱い喚声と、むわ〜んとした空気が身を包んだ。
こんな30度を軽く超える日に、
こんなクーラーも扇風機もないところで、
あんなの着て、のぼせないのだろうか。
:09/06/01 22:11
:N703iD
:L5M3MJSg
#97 [七瀬]
ピピーッ!
ホイッスルが鳴った。
勝負が決まったみたい。
次の試合は‥
パッと見ると、いちばん小さい姿が、フィールド上に見える。
林原だ。
あたしは、すぐに確信した。
:09/06/01 22:13
:N703iD
:L5M3MJSg
#98 [七瀬]
顔が、覆われて見えないけど、あれは絶対林原だ。
あんなに見てきたすがただもん。
間違えるはずない。
『はやしばらー!
がんばれーっ!!』
そう周りも気にせず、
大声で叫んだ。
すると、振り返って
「遅ーんだよ」って笑った。
顔は見えなかったけど、
絶対絶対笑った。
:09/06/01 22:17
:N703iD
:L5M3MJSg
#99 [七瀬]
ほらー、やっぱ林原だー。
なんだか、
うれしくなった。
が、次の瞬間には、
不安があたしの胸を過った。
‥でかっ。
林原の対戦相手は、
かなり長身の細い男だった。
軽く185は超えてると思う。
:09/06/01 22:20
:N703iD
:L5M3MJSg
#100 [七瀬]
‥大丈夫かな、林原。
そんな不安をよそに、
始まりの合図が鳴り響いた。
いくら、林原がうまくてもこんなに身長差あるんじゃ勝ち目がない。
早くも押され気味だし。
顧問の先生も、もうちょいそういうとこ考えてくれても、いいのに。
20p近く差がある相手なんて‥
:09/06/01 22:24
:N703iD
:L5M3MJSg
#101 [七瀬]
『がんばれ!がんばれ!
林原ー!』
あたしは、我を忘れて
かなり応援した。
今、振り返ると、
顔から火が出そう。
でも、それだけ
林原を応援したい気持ちがあった。
あたしの、叫びが通じたのか、林原は相手と互角に張り合っている。
:09/06/02 04:15
:N703iD
:crs90Bzo
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