ぼくらのみかた
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#301 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『別にいいよ…』
…と、そう一言だけ言った。
それから俺は二人に詳しい話をした。
茜さんが携帯サイトで知り合い告白した相手が、彼女の父親が働いている学校の生徒だと言うこと。
父親が、言い寄ってきたのは久保の方からだと勘違いをしている事も伝えると、彼女はわかってくれたようで…
『お父さんには、あたしからちゃんと事実を伝える』
…と俺に約束してくれた。
:11/08/24 00:30
:T005
:EjU97vFg
#302 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ、行こう』
『ど、どこに…?』
俺は行く場所を伝えずに茜さんを外に連れ出した。
行く先は決まっている。
吉田さんのマンションから数十分歩いて、久保のいる病院に到着した。
『ここは…?』
茜さんが不思議そうに問う。
『久保とはメールはしてたけど、会うのは初めてでしょ?』
『あ、いえ…。一回だけ会った事あります』
…これは予想外だ。
まさか会った事があるとは。
:11/08/24 00:43
:T005
:EjU97vFg
#303 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、久保が初めて俺に彼女ができたと言ってから半年は経っている。
一回や二回会っていても不思議ではないだろう。
それにしても、吉田さんなりの優しさなのだろうか、茜さんが原因で久保が謹慎になったりした事は伝えていなかったようだ。
俺はそんな吉田さんをちょっと見直した。
…ちょっとだけだけど。
:11/08/24 00:58
:T005
:EjU97vFg
#304 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保の病室をノックして茜さんと二人、中に入った。
『久保、遅くなったな』
軽く手を振りながらそう言って、茜さんの背中をポンと押して久保の姿を見せた。
『…ひ、久しぶり…だね』
なんだこの雰囲気…
かなり気まずいではないか。
久保は側にある俺が昨日あげたノートと鉛筆を手に取ると、何かを書き始めた。
:11/08/24 01:11
:T005
:EjU97vFg
#305 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ほら茜さん…いや、茜ちゃん。久保が何か伝えたいみたいだよ』
彼女はノートに書く久保に首を傾げながらも、側にかけ寄った。
俺は気をきかせて二人とは離れた所で何も見てないフリをする事にしよう。
『失声症…!?』
茜ちゃんの驚いた声が聞こえてくる。
…そりゃ驚くだろうけど。
俺も正直、木下先生からそう聞かされた時は言葉を失った。
:11/08/24 01:19
:T005
:EjU97vFg
#306 [輪廻◆j6ceQ96kak]
…いや、待て。
木下先生が久保の失声症の事を知っていた理由がハッキリしていない。
…でも、なんとなくわかるような気がする。
木下先生も木下先生で少しくらい罪悪感があったのだろう。
だから暇を見てこっそりお見舞いに来ていたのかもしれない。
俺はそう思う事にした。
例の木下先生の勘違いの件は茜ちゃんに任せよう。
今の彼女なら自分自身の言葉でちゃんと伝えられる。
そして木下先生もわかってくれるはずだ。
:11/08/24 01:29
:T005
:EjU97vFg
#307 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして…
俺は久保と茜ちゃんを二人にさせてこっそりと病室を出た。
少し悔しいが、俺はやっぱりこのままの草食系男子でいいと思っている。
『自分は自分でいい』
…そう言い聞かせて。
さて、次は俺の番だ。
4月に親の仕事の関係で北海道に行く事を、来週から3日間行われる期末テストが終わってからクラスの皆に報告する―
:11/08/24 01:40
:T005
:EjU97vFg
#308 [輪廻◆j6ceQ96kak]
皆と別れるのは辛いけど、だからといってこれまでやってきた事は消えたりはしない。
ずっと忘れられない思い出として心の中に留まり続ける。
―4月 春
…あれから期末テストが終わった後、担任は久保の事をクラスの皆に全て話した。
一方、娘の茜ちゃんに事実を伝えられた木下先生は、さすがに自分のした事を後悔したみたいで、自分は教師失格だと言い残して辞職した。
これらの事で、しばらく各クラス内で大騒ぎが続いたのは言うまでもない。
:11/08/24 01:56
:T005
:EjU97vFg
#309 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それと…
北海道に行く事を打ち明けた後、雪乃ちゃんが俺に突然謝ってきた。
理由を聞くと、あの時久保の携帯電話の受信メールを削除したのは自分だと言ってきた。
更にその理由を聞いたが、なぜか今度は泣き出して、それを目撃した野村に『また泣かせたな』と言われてビンタされる始末。
…今となってはどうでもいいが。
:11/08/24 02:10
:T005
:EjU97vFg
#310 [輪廻◆j6ceQ96kak]
失声症の久保は、まだ声は途切れ途切れで出るものの、身体はよくなったので3月の中旬頃、無事に退院した。
久しぶりの学校に久保は大いに喜んでいた。
そこで久保は一人テストを受けて、2学年への進級も決まる。
俺は久保達と一緒に2学年を過ごす事はできないが、最後にクラスの皆で撮った写真…
これを持っていれば、いつでも皆と一緒にいれる気がする。
:11/08/24 02:23
:T005
:EjU97vFg
#311 [輪廻◆j6ceQ96kak]
―4月10日 土曜日
俺ら家族は北海道に行く為に空港に来ていた。
ソファーに座って時間を待っていると、目の前に一人の人物が現れた。
『よっ、高見〜』
この声は…やっぱり…
『よ、吉田さん!』
『見送りに来てやったよ。一応世話になったしな』
…世話をした覚えはないけど、しいて言えば荷物持ちジャンケンで荷物を持ってあげた事くらいか。
:11/08/24 02:32
:T005
:EjU97vFg
#312 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そういえば吉田さん…進級はできたんですか?』
『は? バカにすんなよ? 俺だってやる時はやるし』
…という事は、進級できたらしい。
『でもさあ、進級できたのはいいけど、雪乃とはまたクラス別なんだよ』
『それはなんていうか…残念ですね』
俺はそう言う反面、少し安心した。
『あ、あのよ…えと…』
…なんだ?
吉田さんが口ごもる姿なんて初めて見たぞ。
:11/08/24 02:43
:T005
:EjU97vFg
#313 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どうしたんですか?』
そう言いながらふと彼の手元を見ると、何やら白い紙を手にしていた。
まさか…
いや、そんな訳ないよな。
何考えてるんだ俺は。
『あの、それ…』
その持っている紙を指さすと、彼はサっとそれを俺に差し出した。
その紙には、携帯電話の番号とメールアドレスが記入されているではないか。
でも番号もアドレスも吉田さんのものとは違うようだ。
:11/08/24 02:49
:T005
:EjU97vFg
#314 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あの…これは誰のですか?』
俺が首を傾げていると、吉田さんが背後を気にする素振りを見せた。
俺もつられて彼の後ろの方に視線をやる。
『あ…』
今、柱の影に誰かがいた。
『ちょっと待ってろ』
吉田さんはそう言って柱の方へ向かって、そこにいた人物の腕を引っ張って再び俺の元に戻ってきた。
:11/08/24 02:57
:T005
:EjU97vFg
#315 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼が連れてきた人物は、まぎれもなく雪乃ちゃんだった。
『雪乃、やっぱり言いたい事はちゃんと面と向かって伝えた方がいいぞ』
『そ、そうだね』
…という事は、この番号とアドレスはもしかして…。
『高見くん…それ私の携帯の。いつでも連絡してきてね』
『あ、うん。あ、ありがとう…』
こういう雰囲気はやっぱり苦手だ。
:11/08/24 03:04
:T005
:EjU97vFg
#316 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それとこれ…久保くんに言われて、高見くんに渡して欲しいって』
雪乃ちゃんがバッグから取り出したのは、見覚えのある一冊のノート。
…久保にあげたやつだ。
『ありがとう。久保によろしく言っておいて』
『…うん、わかったよ』
それからしばらく俺と彼女の間に何ともいえない沈黙が続いた。
:11/08/24 03:09
:T005
:EjU97vFg
#317 [輪廻◆j6ceQ96kak]
「午前10時10分発〜北海道行きの便〜間もなく出発致します。搭乗手続きがお済みの方は〜」
『順一、行くぞ!』
アナウンスが流れ、親父が俺を呼んだ。
『じゃ、じゃあ…二人共、元気で』
涙が出そうになるが、唇を思いっきり噛んで耐えた。
『いつでも連絡してこいよ!』
『体に気をつけてね』
…ダメだ。
このとどめを刺すような二人の言葉にやられ、涙を流してしまった。
:11/08/24 03:19
:T005
:EjU97vFg
#318 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん…私は何も見なかった事にするから』
『俺はバッチリ見たけどな』
二人が笑いながら言う最後の姿を見届け、俺は後ろを振り返る事なく飛行機に搭乗した。
北海道か…
そこで転入する高校でまた新たな出会いが待っているんだ。
俺には皆がついてるから大丈夫だ。
飛行機の中で久保からのノートを何気に開く。
その1ページ目には、クラスの皆からの寄せ書きが書かれていた。
:11/08/24 03:30
:T005
:EjU97vFg
#319 [輪廻◆j6ceQ96kak]
「高見、向こうの学校でも頑張れ 倉野」
「俺らの事忘れたら承知しない! 上野」
「向こうでも女の子泣かせたりしないよーに 野村」
「黒板に、高見は個人情報収集してるとか書いたのは俺です。本当にごめん! 島田」
他にも、あまり話した事のない奴らからも書かれていた。
涙を堪えながら最後のページを開いてみると、久保から一言…
「ぼくらのみかた 久保」
…と大きく書いてあった。
:11/08/24 03:43
:T005
:EjU97vFg
#320 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『…どういう意味だよ』
俺が笑い泣きに変わった瞬間だった。
数時間後―
北海道の空港に到着したようだ。
飛行機なんて初めて乗ったけど、皆の事を考えたり眠ったりしていて、外の景色など全く楽しむ余裕などはなかった。
空港から出ると、4月だというのに異様に肌寒いではないか。
北海道の冬は寒いと聞いた事があるけど、4月でもまだ寒いんだ…冬だったらこれの倍以上は寒いんじゃないかと思うと嫌になってきた。
:11/08/24 03:51
:T005
:EjU97vFg
#321 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ああ、地元が恋しい。
『よし、じゃあまずはお前の実家に寄ってくか』
…え?
親父が母さんに言った『お前の実家』という言葉がひっかかった。
『ねえ親父…母さんの実家って?』
『実家は実家だろ。…ああ、お前は知らないのか。葉子は北海道出身。出張でここに来た俺と出会って結婚して、お前が生まれたばかりの頃まではここにいたんだ』
という事は…
俺の地元は北海道だったって事…?
『んなバカなあぁぁぁぁッ!!』
〜Last episode END〜
:11/08/24 04:14
:T005
:EjU97vFg
#322 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■epilog■
親父から衝撃的な事実を聞かされて数日が過ぎ―
なんとか精神が落ち着いてきた俺は高校に転入した。
一応転校生という事になる。
自己紹介が緊張するではないか。
それに転校生が来ると聞くと、その教室内は皆が期待して騒ぐだろう。
そう…無駄にハードルをあげてくるのだ。
:11/08/24 04:20
:T005
:EjU97vFg
#323 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ行きましょうか』
俺の新しい学校のクラスの担任になる教師の後ろについていく。
…心臓がバクバクしている。
今は自己紹介よりも、変に期待されて俺の顔を見た途端にクラスの皆のテンションが下がるのが嫌だ。
男は『なんだ男かよ〜』
女は『イケメンじゃないじゃん〜』
そう言ってざわめき始めた日には、正直ヘコむぞ。
:11/08/24 04:29
:T005
:EjU97vFg
#324 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここは『人は顔じゃない』って事を自己紹介でわからせてやるしかない。
「2―C」
と書かれた教室の前で足を止めた。
ますます心臓が高鳴る。
担任がまず教室に入って、俺は呼ばれるまで廊下で待機していた。
『今日は親の仕事の都合で地方の学校から転入してきた生徒を紹介します。では入ってきてください』
…ついにきた。
もう後戻りはできない。
:11/08/24 04:37
:T005
:EjU97vFg
#325 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はゆっくりと歩いて、教室に入り担任の隣に立った。
『では高見くん、まずは軽くでいいので自己紹介をお願いします』
『は、はい…』
…もうやけだ。
こういう場合は皆の顔を大根だと思え、俺!
『えと…高見順一です。母親が一応北海道の出身らしいです。でも俺はそんな事を最近まで知らなくて、それ聞いてびっくりして…』
何言ってるのか自分でもわからないが、とにかくなんでもいいから言いまくるんだ、俺。
:11/08/24 04:44
:T005
:EjU97vFg
#326 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『えと…俺はいわゆる草食系男子です。でもそんな俺でも前の学校では好きな人が出来たけど、その人には彼氏がいて…』
『た、高見くん…そのくらいで結構ですよ』
…しまった。
担任がものすごい引いた目で俺を見ている。
いや、担任だけではない。
教室内の皆が、唖然とした表情で俺を凝視しているではないか。
:11/08/24 04:50
:T005
:EjU97vFg
#327 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ず、随所と個性的な生徒で賑やかになりそうですね。皆、仲良くしてあげてください…』
おーい担任よ。
声に全く感情がこもっていないのは何故?
『じゃあ高見くんは…あそこの空いてる席に』
運がいい事に、一番後ろの席だ。
これで授業中に目立つ事なく寝る事ができる。
…いや、その前に一人でも多く友達を作らなければ。
休み時間にでも、気が合いそうな奴に積極的に声をかけてみる事にしよう。
:11/08/24 05:00
:T005
:EjU97vFg
#328 [輪廻◆j6ceQ96kak]
できれば久保のような友達が欲しい。
朝の号令を終え、担任が教室を出ていった後、それを見計らっていたかのように教室がざわめき始めた。
当然といえば当然の光景なのだが、この騒ぎ様は尋常ではないぞ。
前の学校の倍はあるだろうバカでかい声が響き渡る。
こっちの学校では、前の学校とは逆で男子の方がうるさそうだ。
女子は、ほとんどが最初の授業の準備などをしていて真面目でおとなしいものだ。
:11/08/24 05:09
:T005
:EjU97vFg
#329 [輪廻◆j6ceQ96kak]
同じ男で気が合いそうな奴はこの教室にはいない気がする。
まるで、吉田さんが沢山いるみたいだ。
いつでも連絡してこいって言ってたから、暇がある時にでも相談するとしよう。
『ねえ転校生くん、転校生くん』
大騒ぎの中、突然俺の前の席に座る男子が失礼な呼び方をしながらこっちを向いてきた。
『…なに?』
人は第一印象でどんな性格か決まる…もしくは決められてしまう事が多い。
ここは強気にいかなければ、ナメられる。
:11/08/24 05:18
:T005
:EjU97vFg
#330 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『俺もどちらかって言えば草食系なんだよね。まあ仲良くしようぜ』
その男はそう言ってわざわざ手を伸ばして俺の肩をポンポンと叩いた。
この男…ぱっと見、肉食系にしか見えないが、人を見た目で判断してはダメだろう。
『転校生くん』と呼ばれるのは腹立たしいが。
こいつも俺にとって『味方』になるのか『敵』になるのか…まだわからない。
こうして北の大地、北海道での新しい高校生活がスタートした―
ぼくらのみかた【完】
:11/08/24 05:39
:T005
:EjU97vFg
#331 [輪廻◆j6ceQ96kak]
:11/08/24 20:53
:T005
:EjU97vFg
#332 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Side Story■
俺は高見順一。
この世には草食系と肉食系と呼ばれる人が存在する。
それは男子にも女子にもいるらしい。
一体誰がこんな言葉を作ったのだろうか。
そんな俺は恋愛には特に興味も関心もないので、草食系だと思っている。
自分が恋愛に興味がないんだと自覚をしたのは、俺が中学1年生の時だ。
これは、そんな俺の中学校生活の話―
:11/08/24 21:14
:T005
:EjU97vFg
#333 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Side episode1■
『高見順一、13才』
4月は別れの季節であり、同時に出会いの季節でもある。
様々な出会いと別れを繰り返して人は成長していく。
そんな俺は今日から中学1年生。
小学校生活はいたって平凡だった。
友達もそれほど多くはなく、あまり目立ない存在として6年間を過ごしてきた。
これから始まる3年間の中学校生活も、何事もなくただ平凡に過ごしていくのだろうな。
:11/08/24 21:33
:T005
:EjU97vFg
#334 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そしてこれは中学1年生の1年間に焦点を当てた俺の物語だ。
中学校から初めて着ることになる制服。
小学生の時はずっと私服だったから、いきなり制服になると最初は慣れないかもしれないが悪くはなさそうだ。
私服は1日1日で別の服を着て来なくてはいけない。
何日も同じ服を着ていたらひかれるだろう。
上下のコーディネートが少しでも変だと『合わない』とか『似合わない』とか言われて面倒くさい。
その点、制服はそんな面倒な事がないから楽といえば楽だ。
:11/08/26 00:44
:T005
:MydqyUME
#335 [輪廻◆j6ceQ96kak]
桜が満開だ。
桜の木の下を歩きながら、今日から始まる中学校へ向かう。
周りの歩いている人を見ていると、緊張した面もちで歩いている人、小学校で一緒だったのか友達同士で喋っている人など色々いる。
俺は特に緊張する事もなく、友達と一緒でもなく一人で無表情で歩く。
なんと悲しい光景だろうか。
自分でも少し虚しいと思う。
とにかく俺にとって大事な事はただ一つ。
もちろん、変なイメージを植え付けられない事である。
:11/08/26 10:16
:T005
:MydqyUME
#336 [輪廻◆j6ceQ96kak]
小学校で6年間過ごしてきて、俺は色々なイメージを植え付けられた奴らを腐るほど見てきた。
俺もその一人になりたくなく目立たずに小学校生活を送ってきた。
でもどこかで『変わり者』と思われていた可能性もある。
それはおそらく、女子と絡む事は滅多になかったからだと思う。
よく男友達から『好きな子いないの?』など聞かれた事があるが、その時の俺は異性はもちろん人に対しての好き嫌いなどの感覚がわからなかった。
:11/08/26 10:30
:T005
:MydqyUME
#337 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だから人の悪口や陰口を傍で聞いてても『こいつら何の話してるんだ?』程度にしか思わなかった。
時には『アイツってキモいよね』と聞かれても肯定も否定もしないでいたので、変わり者と思われても仕方がないだろう。
おかげで一部の女子からは『人の悪口に便乗しない純粋な人』というイメージをつけられた事もある。
そういった良いイメージは嬉しい限りだが、変なイメージをつけられるのは絶対嫌なので言葉などにはいつも注意を払っていた。
:11/08/26 10:40
:T005
:MydqyUME
#338 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな俺が変なイメージをつけられずに無事小学校を卒業できた事は奇跡に近いだろう。
でもこれから始まる中学校生活で、たった一人の人物が原因で俺のそんなイメージの経歴に傷がつく事になるとはこの時の俺は想像すらしていなかった―
中学校は俺の家から15分ほど歩いた所にある。
様々な人が校内に入っていく中、俺は門の前で足を止めてゆっくりと深呼吸した。
そして『無事に3年間を過ごせますように』と心の中で祈った。
:11/08/26 10:56
:T005
:MydqyUME
#339 [輪廻◆j6ceQ96kak]
玄関で上靴に履き替え、入学式の日に決まった1年2組の教室がある4階へ向かう。
『1―2』
…しっかりとそうプレートに書かれている事を確認して辺りを気にしながら教室の中に足を踏み入れた。
昨日の入学式の時に一度座った為、席は覚えている。
鞄を机の横のフックにかけて席に座って目を色々な所に泳がせていた。
辺りにはすでに何人かで固められたグループがいくつかできている。
ほとんどが同じ小学校だった奴らだろう。
いきなり入学式の翌日の朝から別の学校だった奴と仲良くなっている可能性はまず少ない。
:11/08/26 11:22
:T005
:MydqyUME
#340 [輪廻◆j6ceQ96kak]
昨日貰ったクラスの名簿を見た限り、俺と同じ小学校で友達だった奴は残念ながらこのクラスにはいない。
それもそれで一からスタートできるという意味で新鮮ではあるが。
一人くらいは、いてくれてもいいとは思った。
そうこう考えている内にチャイムが鳴って担任が教室に入ってきた。
見るからに小顔でロングヘアーのスラリとした体型の、このクラスの担任になる女性だ。
小学校の時はなぜだか男の担任ばかりだったので、一からのスタートで女性の担任とはこれまた新鮮である。
:11/08/26 11:42
:T005
:MydqyUME
#341 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『皆さん、おはよう』
…なんとも綺麗な事だ。
こんな声で朝起こされたら、気持ちの良い目覚めになるだろう。
教師でいるのがもったいないくらいの美貌。
その顔と声だったら歌手であってもおかしくないくらいだ。
『改めて…今日から皆の担任になる入江恭子、担当は国語です。よろしくね』
そう言って黒板に名前を書き始める。
字も国語の担当というだけあって達筆であり、どこか繊細さも出ていた。
:11/08/27 08:49
:T005
:KnYTPhDU
#342 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日は皆の事も知りたいので1時間目は一人一人、前に出て自己紹介の時間にします』
…来た来た来た。
この自己紹介でまず第一印象が決まる。
挙動不審な態度をとらないよう気をつけなければいけない。
『では自己紹介カードを配ります。一人一人、自己紹介が終わってから写真も撮ります。それで、私が皆のカードを集めて写真を貼ったそのカードは後日、後ろに提示します』
…写真だと?
なぜそんな面倒な事をする必要があるのだ?
しかもその写真が貼られたカードを後ろの壁に貼るなど…。
:11/08/27 09:06
:T005
:KnYTPhDU
#343 [輪廻◆j6ceQ96kak]
写真を撮られるのならもう少しマシな髪型にしてくるんだったと後悔しても遅かった。
今の俺の髪はペタンコになっていて、いかにも印象の薄い人のような感じになっていると思う。
『皆、カードはいきましたね? 1時間目の最初の15分でカードに書いて、残りの時間を自己紹介に当てます。1時間目が始まる9時までまだ時間あるので今書いてもいいですよ』
先生の言葉にほとんどの人が時計に目をやる。
―8時46分
再び視線を戻しペン入れからシャープペンシルを取り出して書き始める人が大半だった。
:11/08/27 09:20
:T005
:KnYTPhDU
#344 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その皆につられるように俺も買ったばかりのシャープペンシルを出してカードに書く。
名前や趣味、特技など書く項目は沢山ある。
趣味はともかく、俺にこれといった特技はない。
あったとしても人に言えるようなものじゃなく、くだらない事だろう。
でもあえて自信がある特技はペン回しかな。
:11/09/10 10:22
:S004
:w1pFl2Mw
#345 [輪廻◆j6ceQ96kak]
小学生の時に流行っていたから得意な友達に聞いて練習した結果、その得意な友達よりも得意になってしまってなぜか縁を切られてしまったという悲しい過去があったりする。
たかがペン一本で友情が壊れてしまうなんて、俺はペンと自分を呪った。
それ以来ペン回しをする事はなくなって今に至る。
またペンが原因で友情が壊れるのは嫌だ。
俺は特技の項目に『特になし』と記入した。
:11/09/10 21:52
:S004
:w1pFl2Mw
#346 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>341 訂正
なんとも綺麗な事だ ×
なんとも綺麗な声だ ○
――――――――――
他の趣味や自己アピールを夢中で書いている内に1時間始業のチャイムが鳴って、担任が再び教室に入ってきた。
『自己紹介カードをまだ書き終えてない人は9時15分までに書いてください。書き終わっている人は、どう自己紹介するかを自分なりに考えておいてくださいね』
担任はニコニコ顔で言うが、そう言われても困る。
自分なりの自己紹介で自分を印象づけろという事なんだろうけど、あいにく俺はそこまで器用ではないのだ。
:11/09/10 22:32
:S004
:w1pFl2Mw
#347 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だから、残念だが先生の期待には応えられない。
自己紹介なんてヘタに飾らずに自然のまままに、ありのままを伝えるのが一番いいのだ。
『時間です。では一人ずつ前に出て自己紹介しましょう。そっちの席から順に男子からいきましょうか』
担任から見て左側のドアがある方の一番前の席の男子が、担任の合図で立ち上がって前に出た。
俺は女子の列を挟んで縦三列目の一番後ろの席。
縦一列が5人だから、俺は10番目になるわけか。
:11/09/10 22:57
:S004
:w1pFl2Mw
#348 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自己紹介一人目を飾るのは、背が小さく眼鏡をかけたインテリ系の奴だ。
趣味や特技などを言ってる最中に時々、眼鏡を中指でクイッとあげる仕草を見せる。
一見おとなしそうな奴だけど、プライドが高く勉強ヲタクという感じで俺とは気が合いそうもない。
彼のようなタイプだったら学級委員とか生徒会委員に喜んで立候補しそうだ。
彼の自己紹介が終わると、担任の拍手によって他の皆もつられて拍手をする。
:11/09/10 23:10
:S004
:w1pFl2Mw
#349 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『では石橋くん、写真を撮るのでそこに立ってください』
窓際に座る担任がピンク色の高級そうなデジカメを取り出して言った。
石橋とやらは、また中指で眼鏡をクイッとあげてから担任の方を向いて立つ。
その表情からは全く緊張している様子はない。
これがいわゆるポーカーフェイスというものだろうか。
:11/09/10 23:26
:S004
:w1pFl2Mw
#350 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然だけど俺も含め皆の視線は写真を撮られている奴に集中する。
担任のデジカメからシャッターが2回ほど押され、石橋は担任にカードを渡してやっと席に戻された。
自己紹介のうえに写真撮影なんて、そこまで大袈裟な事をしなくてもいいじゃないか。
ここまで時間が5分もかかったぞ。
一人の自己紹介に5分もかけるなんぞ時間の無駄だ。
:11/09/10 23:40
:S004
:w1pFl2Mw
#351 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次は石橋の後ろの席の奴が立って前に出る。
俺は多少心臓をバクバクさせながら出番を待つ。
『桐谷蓮でっす! 趣味はゲーム。特技は野球とかサッカーとか。よろしく!』
インテリ系の次は、随分と調子のよさそうな男がきたか。
俺はスポーツは卓球とかバドミントンしか興味がない。
…これまた気が合いそうもないな。
:11/09/11 09:26
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#352 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『桐谷くんはお父さんが忙しい人で転勤する事が多く、よく転校やお引っ越しを繰り返していたのよね?』
『そうなんすよ! だからせっかく友達できてもすぐ別れてばっかりで!』
…それは辛いだろうな。
少し嫌味にも聞こえたが、実際俺も奴と同じ立場だったら悲しいだろう。
『だから多分、また転校するかもしれないからそれまでみんな仲良くしてくれよな!』
そう言って満面の笑みを浮かべてピースサインをした。
:11/09/11 23:49
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:ihm0PsH6
#353 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして桐谷とやらが写真を撮って席に戻る際、偶然にも俺と目が合ってしまった。
彼はなぜか顔をニヤつかせてきたが俺はすぐに目を反らす。
彼の存在が俺のイメージを変えていくなんてその時は想像もせずに。
自己紹介…ついに俺の番が回ってきた。
カードを持っておぼつかない足で黒板の前に立って皆の顔を見回す。
この視線が集中する感覚はやっぱり苦手だ。
例えば小学生の時だったら夏休みなどの自由研究で前に出て発表するという事があり、俺はそういうのがとにかく大嫌いだった。
:11/09/13 00:25
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#354 [輪廻◆j6ceQ96kak]
中学では自由研究はないものの、他の発表などあると思うと気が遠くなってくる。
『えと…高見順一です。趣味はゲームとかバドミントンで、特技は特にありません。よろしくお願いします』
これこそが俺流のシンプルな自己紹介だ。
『ではこちらに来てください』
担任の方を向いて写真を撮って貰い、カードを渡して早々と席に戻った。
:11/09/13 22:08
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:x0bAJc16
#355 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>354 訂正
気が遠くなる ×
気が重くなる ○
―――――――――
どんな顔をしているのかは写真ができるまではわからない。
でも多分、顔はひきつっていると思う。
そんな顔が後に皆に見られると思うと、更に気が重い。
そして次々に自己紹介が行われ、男子の最後の紹介が終わった所でタイミングよくチャイムが鳴った。
:11/09/13 22:16
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:x0bAJc16
#356 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あらら時間が来ちゃった。じゃあ女子の自己紹介は2時目にやりましょうか』
担任がそう言い残して教室から出ていき10分休みになった。
俺はあまり目立たないように机に突っぷして寝たフリをする仕草をする。
だがそれは数秒で無駄に終わった。
『なあなあ、ちょっといい?』
…といきなり声がして肩を数回叩かれた。
:11/09/13 22:35
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#357 [輪廻◆j6ceQ96kak]
心の中で溜め息をついて、ゆっくりと起き上がり声のした方を振り返る。
そこに満面の笑みを浮かべた彼がいた。
『なにか…? ええと…』
先ほど自己紹介したとはいえ、すぐに名前を覚えられるわけもなく、彼の顔を凝視しながら必死で思い出そうとした。
『…桐谷ね』
思い出そうとする努力は報われないまま、向こうから名乗ってきた。
:11/09/13 22:47
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#358 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ああそうだ…桐谷くん。桐谷…』
今度は下の名前が思い出せなくなる。
彼は一瞬困惑していたが、すぐに笑顔を見せて言った。
『蓮だよ、桐谷蓮』
『…そう! 桐谷蓮くん』
『絶対覚えてなかったしょ?』
今度は苦笑いで言う。
:11/09/13 22:55
:S004
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#359 [輪廻◆j6ceQ96kak]
実に感情豊かな人だと思いつつ、そんな彼を見てニヤついてしまった。
『いきなりだけど高見くんさぁ…ゲームが趣味だって言ってたよね?』
…ほんとにいきなりだ。
そういえば彼も自己紹介でゲームが好きだって言ってた気がするな。
もしかして気が合うかもしれないと若干の期待をした。
:11/09/13 23:03
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:x0bAJc16
#360 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どんなゲームやってる?』
『えと…格闘ゲーとかアクションゲーとかかな』
『そか。じゃあ今度家行っていい?』
…なぜそうなる。
いや別に嫌というわけではないが、ちょっと馴れ馴れしいなとは思う。
それを本人に直接言えたら苦労はしないのだが。
:11/09/13 23:12
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:x0bAJc16
#361 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃ、そゆ事で! これからもよろしくな』
彼はそう言い残して去っていった。
めんどくさそうな人と知り合ってしまったようだ。
自己紹介の時に趣味をゲームと言わなければ彼も俺なんかに話しかけたりはしなかっただろう。
…俺は後悔した。
よりによってクラスで一番明るくてうるさそうな人と関わりをもってしまったのだから。
とにかく、こうして俺の中学校生活は彼との出会いで幕をあけた―
〜Side episode1 END〜
:11/09/16 10:13
:S004
:v7UPVMbU
#362 [輪廻]
■Side episode2■
『美人って、時には罪』
2時間目。
男の自己紹介から今度は女の自己紹介の時間。
女子のトップバッターが教壇の前にゆっくり歩いてくる。
男達はその女子を視線で追う。
俺は『早く終わらないかな』とか思いながらダルそうな顔でその女子を見ていた。
教壇に立った、黒く長い髪をしたおしとやかそうな女子が、恥ずかしそうに自己紹介を始める。
『橋田美波です。趣味は読書で、特技はピアノです。よろしくお願いします』
そう言い終えると、教室内は男達の拍手喝采の渦。
女子も多少は拍手しているのだが、顔はほとんど無表情…というか興味なさそうな顔をしている。
:12/01/10 14:25
:Android
:WcuhB.A.
#363 [輪廻]
橋田美波という女子は、まあパッと見て美人なので、他のそうでもない女子が嫉妬しているのだろうか。
それはこの男達の拍手喝采が証明している。
次に教壇に上がる女子が美人ではない場合、その女子が気まずくなるのは目に見えている。
その女子に今から同情を捧げておこうと思う。
『はい、じゃあ次』
橋田美波の写真を撮り終えた先生が言い、その後ろの席の女子が立って教壇へ向かう。
今度は橋田美波の長い髪とは違って短い髪の女子だった。
教壇に立ち、皆の方に顔を向ける。
その髪を見た瞬間、俺は吹き出しそうになった。
前髪はとても短く、しかも真っ直ぐに揃えられている。
コメカミ部分の髪も耳の上部分までで、そこもこれまた真っ直ぐに揃えられているではないか。
頭の上の髪も全体的に丸っこくて、それはまるでキノコのようだ―
:12/01/10 14:52
:Android
:x2BzVkhc
#364 [輪廻]
そう思っているのは、おそらく俺だけではないはずだ。
ここにいる半数近くの人間がそう思っているに違いない。
更に驚いたのは彼女の名前だ。
『ええと…木下実和子です。趣味はお母さんと一緒にやってる園芸で、特技は花の名前を沢山言える事です。よろしくお願いします』
変わった髪型のわりに声は意外と可愛らしい。
でも、まさか名前にも“キノコ”が入っているなんて…予想外デス。
『じゃあ木下さん、写真撮るからこっちに』
自己紹介が終わってキノコ…いや、木下さんは先生の元へ。
:12/01/11 23:51
:Android
:A9UR4Lis
#365 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑a
:22/10/02 03:19
:Android
:Ltpo.xA.
#366 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑
:22/10/07 12:34
:Android
:GR1soPvw
#367 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑
:22/12/17 16:57
:Android
:gTMgoNuA
#368 [わをん◇◇]
:22/12/17 16:57
:Android
:gTMgoNuA
#369 [わをん◇◇]
:22/12/17 16:57
:Android
:gTMgoNuA
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