―温―
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#351 [向日葵]
バシン!

……へ?

何が起こったか分からなかった。
ガーゼを張っていない方の頬が熱を帯びている。
そして痛い。

「なぁ。お前何やってんの?」

静流の低い声を聞いて分かった。
私はひっぱたかれたんだと。

静流は私の胸ぐらを掴んで自分へ引き寄せた。

「おい静流?!」

そこで香月さんが私の後ろから止めに入ったが、静流の目は私しか捕えてなかった。

⏰:07/09/14 03:27 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#352 [向日葵]
「何やってんの?」

何が?
私が何をしたって言うの?

「私、静流が怒るような事した覚えないんだけど。」

「じゃあ香月何でいんだよ。しかも父さんは?」

紅葉はぎくっとした。

実は静流は玄関で源の靴が無いのを、今では犯人が分かった靴を見た時に気づいていたのだ。

「仕事で……昨日出て行ったっきり……。」

私がそう言うと、胸ぐらの手を外してくれた。
でも冷たい目からは解放してくれない。

⏰:07/09/14 03:32 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#353 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/14 03:33 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#354 [向日葵]
「なんであげた……。お前一人なら尚更だ。男をあげるなよ!」

は?

「何それ?」

私は呟いた。
怒りが、血となって頭に上りだす。

だってそうでしょ?
私は何も悪いことしてない。
ってかアンタよく自分を棚に上げて言えるわよね。
アンタはどうなのよ。

「私は別に静流の子供でもなければ恋人でもないの!何でアンタにそこまで束縛されなきゃいけないわけ?!」

⏰:07/09/14 11:06 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#355 [向日葵]
「お前な」

「自分だって何よ!こんな時間に帰って来てるくせに!私の事とやかく言う前にアンタ自ら見本見せてみなさいよ!」

まだ早朝なのを忘れて、起きたてであまり働かない脳を必死で動かして言葉を搾りだした。

「俺は……きちんと昨日連絡しただろ。」

「そうね。なら番号知らないのに私に電話かけろって言いたいわけ?私は超能力者じゃないの。」

そこで静流はカッとなったのか、また右手を振り上げた。

⏰:07/09/14 11:12 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#356 [向日葵]
「殴れば済むと思ってんの?」

そこで静流はハッとして、振り上げたまま静止した。

どいつもこいつも気に入らない事があればすぐに暴力なのね。
静流も最近おかしい。
まるで監視されてるみたいでイラつく。

「殴りなさいよ。それで気が済むんでしょ。何度でも殴りなさいよ。そしてまたゴミ捨て場に捨てればいいじゃない。」

静流は目を凍らせたまま右手をゆっくり下ろした。
今度は私が冷たい目で静流を見ている。

⏰:07/09/14 11:16 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#357 [向日葵]
香月さんは初めて聞く私のエピソードに驚いて私を見下ろしていた。

「ごめん……紅葉。」

叩いた方の頬を撫でようとした手を私は乱暴に振り払った。

「お風呂入ってもないのに触らないで。それ以前に、私には当分触れないで。」

そう言ってから久々にベランダへ出て、ピシャリと戸を閉めた。

静流は……何も分かってない。

********************

俺は後悔していた。

⏰:07/09/14 11:21 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#358 [向日葵]
暴力に敏感になってる紅葉に手を上げるなんて、出ていけって言った時と同じくらいしてはいけない事なのに…………。

叩いた右手をギュッと握りしめた。

「なぁ静流……。」

「ん?何?」

香月は紅葉の背中を指差しながら俺に聞いてきた。

「ゴミ捨て場って……。」

「ウン。……本当なんだ。」

香月は紅葉を見つめながら「そっか……。」と呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

香月も帰り、家には俺と紅葉だけになった。

⏰:07/09/14 11:26 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#359 [向日葵]
相変わらず紅葉は飽きもせずにベランダにいて、空を見上げている。

「当分触るな宣言」をされていたけど、このままじゃいけないと思ってベランダに近づいた。

放っておくと、雨と一緒に紅葉がどこか行ってしまう気がして……。

紅葉の丁度後ろに座って、ガラス越しに背中に触れる。

「く……紅葉……。」

囁きは聞こえない。

「紅葉っ。」

声を大きめに名前を呼ぶと、聞こえたのか少し身じろぎした。

⏰:07/09/14 11:31 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#360 [向日葵]
戸をゆっくりと開ける。

「なぁ……紅葉。中に入れよ。」

その言葉を紅葉はことごとく無視した。
雨がまた少し強まって降っているのに気づく。

「な?ガーゼも貼り直さなきゃいけないだろ?」

俺は紅葉のすぐ側で膝まずいた。

********************

来ないでよ。
何で放っておいてくれないの。

予想通りだ。
やっぱり静流は帰って来たら優しくそう言うんだ。

⏰:07/09/14 11:37 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#361 [向日葵]
私は首を傾けて膝にフッつぶした。
静流の方は見ないようにして。

「紅葉。ごめんって。」

「そんな安っぽく謝らないで。」

機嫌をとるだけの言葉なんていらない。
でもだからって謝って欲しい訳でもない。

静流に、思い知らしてやりたい。
さっきの行動が、私をどれだけ傷つけたか。

「じゃあ……どうやったら、許してくれる?」

そこで頭を上げて静流を見た。

⏰:07/09/14 11:42 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#362 [向日葵]
静流はぎこちなく微笑む。
でもそんなの今の私にはイラつきの対象の他何でもなかった。

「言った筈よ。私に当分触れないでって。心の中まで触れてくんなって事。……いい?」

静流は傷ついた顔をして私を見つめる。

「紅葉、あの……。」

伸ばしてきた手をまた私は払うんじゃなく叩き落とした。

「日本語が通じるなら早くあっちへ行って。」

静流はゆっくりと立ち上がってベランダを後にした。

⏰:07/09/14 11:49 📱:SO903i 🆔:Bf6JTbxA


#363 [向日葵]
もういい。

私は何なの?
どうしてこんな扱いを?

これは罰?
幸せになろうとしている神様からの罰なの?

……ならば、私は受けるしかないのかもしれない。

少し身動きすると、クシャッと何か紙のような音がした。
ポケットに何か入ってる。
探ると小さな紙切れ。

「香月さんの……。」

そう。あのケー番が書かれた紙。

⏰:07/09/16 01:34 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#364 [向日葵]
お風呂に入った後、洗濯しちゃう服から抜き取って今の服のポケットに入れたのを忘れていた。

そういえば、いつの間にか香月さんがいなくなってる。
少し助けて貰ったのに、お礼言えなかった。

「…………。」

私は立ち上がって、リビングへ入った。
リビングにある電話の子機を持って、下へ降りようと階段へ向かった。

リビングだともし静流が来たら嫌だからだ。

「えっと……090の……。」

⏰:07/09/16 01:39 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#365 [向日葵]
ボタンを押しながら階下へ向かおうとすると、後ろで部屋のドアが開いた。

「紅葉?……あの、どうかした?」

「……。6739と。」

無視してボタンを押し終える。
耳に当てるとプルルルと呼び出し音が鳴っていた。

ガチャ

{ハイ。}

「もしもし。紅葉です。香月さん。」

*******************

「もしもし。紅葉です。香月さん。」

俺は耳を疑った。

⏰:07/09/16 01:44 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#366 [向日葵]
なんで香月の番号を紅葉が?

俺には目もくれず、下へ降りて行く紅葉。
階段を降りる際にチラリと見えた小さな紙。
きっとあれに書いてあるんだろう。

「マジか……。」

一旦ドアを閉めて部屋に入り、ドアにもたれて唖然とした。

香月は……紅葉に本気?

もしかして昨日、二人の間に何かあったとか?

「……あれ?」

無意識に握られた拳を見て、俺は頭に?を浮かべた。

⏰:07/09/16 01:48 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#367 [向日葵]
「なんで俺……。」

怒ってんの……?

掌をグーパーするのを繰り返して、手の力を抜く。

別に紅葉に恋人が出来たって……何らか関係無いじゃないのか?

なんで俺

「こんな胸……痛いんだろ。」

自分の胸に手を当てて、胸が痛まるのが治まるのを待つ。

[なら誰がいいんだよ。]

香月に抱きつかれた時、香月から聞かれた事だった。

⏰:07/09/16 01:53 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#368 [向日葵]
俺なんであの時

―――――紅葉の顔が…………?

********************

私は一番下の階段に座って香月さんと話していた。
香月さんにお礼を言ったら「気にすんな。」と帰ってきた。

{それより、ちゃんと覚えててね?}

「何を?」

{俺が君の恋人になりたいって事。}

返事に困った。
恋だの愛だのそんなもの知らなくて初めての私は上手く返す事が出来ない。

⏰:07/09/16 01:58 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#369 [向日葵]
しばらく沈黙でいると、受話器越しにクスクスと笑い声が聞こえた。

{クスクス。ごめん。困らせた。じゃあまたね。}

それだけ言って、香月さんとの電話は終わった。

好きと言われるのは正直悪い気はしない。

……でも。
この先、叶わない気持ちだと分かってても……やっぱり欲しいのは、一番好きな人がいい……。

上に上がって、静流の部屋の前で立ち止まる。

ドアを見つめながら思った。

⏰:07/09/16 02:02 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#370 [向日葵]
私が……香月さんと付き合えば、静流の事を忘れる事が出来るのかもしれないな……。

そうしたら、神様は許してくれるかな。

私も幸せになっていいって、認めてくれるかな……。

その時。

ガチャ

「!」

「!」

静流の部屋のドアが開いた。お互いに驚いて、見つめ合ったまま時間が流れた。

⏰:07/09/16 02:09 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#371 [向日葵]
「電話……終わった?」

苦笑気味に静流が聞いてくる。
私は何も言わず、ただ静流を見ていた。

一体、この人は私をどう見てるんだろう。
……決まってるか。
子供、もしくはそれに似たものだな。
ペットかもしれない。

「静流。」

「ん?何?」

「……。香月さんってどんな人?」

静流の表情が、何故か硬くなった。
なんだか少し悲しそうにも見える。

⏰:07/09/16 02:13 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#372 [向日葵]
「いい……奴だよ。」

「そーよね。……それなら、問題はないわよね。」

私は子機を置きにリビングへ戻った。
振り向くとすぐそこに静流がいた。
少し不機嫌気味に聞いてみる。

「何?」

「香月が好きなのか?」

……。だったら?
って言っても、その予想は外れているけれど。

好きな人はアンタだって言ったら静流どうするんだろ。

⏰:07/09/16 02:16 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#373 [向日葵]
そんな事、言うのは許されないけど。

「そうだとしても、静流には関係ないでしょ。」

冷たくあしらって、静流の横を通りまたベランダへ出ようとしたら、手を掴まれた。

――ドキ……。

「関係……無いけど。」

静流の顔がうつ向いてて、何か言ったみたいだけどあまり聞こえない。

「ねぇ何?」

静流は無言になる。
ちょっとイライラしてきた。

⏰:07/09/16 02:20 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#374 [向日葵]
「ちょっと!用がないなら離して!ってか約束と違」
「関係無いけど嫌なんだっ!!」

いきなり大きな声を出されて身がビクッとすくんだ。
ようやく上げられた静流の目はとても熱くて、私を射抜く。
まるでこの前ぬいぐるみの山から抱き上げられた時みたいに。

血がドクドクいって全身を駆け巡るのが分かる。
体が、静流の全てに反応してる。

「香月は友達だし……お前にも、幸せになってもらいたい。俺だって双葉がいることくらい分かってる……。」

⏰:07/09/16 02:25 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#375 [向日葵]
一部の言葉に胸がチクリとした。

静流の熱い視線はそのままだけど、悲しそうに、苦しそうに顔は歪む。

「――――分かってるけど……。……お前には、ずっと近くでいて欲しいんだ……。」

胸が震える。
どうしてそんな事言うの……?

「おかしいよ静流……。その言葉……間違ってる。」
だって、それは大切な人に向ける言葉じゃないの……?

「分かってるよ。自分がこの頃おかしいことくらいな。」

⏰:07/09/16 02:29 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#376 [向日葵]
間違ってる。

でも私は今、とても嬉しい。
静流の気持ちが分からなくて、何故ぶたれるのかとか、怒ってるかとか……意味もない行動を取られるよりも……何よりも……。

でも、好きとは違うんだよね……。

「静流。知ってる?」

「何……が?」

掴まれている手首をやんわり外しながら、私は続けた。

「静流が私に構いすぎたら、彼女さんが傷つくの。ううん違う。もう傷ついてる。」

静流の熱い瞳は途絶え、彼女を思う愛しい気持ちが瞳に映る。

⏰:07/09/16 02:34 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#377 [向日葵]
そう……。

これでいい。

これで……。

「私は、言ってみれば赤の他人なの。私より香月さん。香月さんより彼女さんを大事にしてあげなさいよ。」

あぁ……。涙出そう。
昨日のケーキ食べてた時みたい。
すっごい惨め。
すっごい虚しい。

「だから、そんな言葉、私に言ってはダメ。言う相手間違ってんじゃないわよ。」

間違ってほしくなんかなかった。

⏰:07/09/16 02:37 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#378 [向日葵]
その言葉は、私だけに欲しかった。

分かってる。分かってるよ!何度も繰り返した。
私は静流と幸せになってはいけない。
なれっこない。
私のせいで、彼女さんの幸せを取っては駄目。

頭の…心の隅に……ちゃんと刻んで、覚えてる。

でも欲深なの。
幸せの味を覚えてしまえばしまうほど。

もっと――――
もっと……って――――

心が叫ぶのが分かる。
胸が軋むのが分かる。

⏰:07/09/16 02:42 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#379 [向日葵]
ほら……。

笑え……。

「ね?分かった?」

笑えてる?静流。
久々に笑顔を見せれた。

久々すぎて、おかしな事になってないかな?

静流は何度も私の闇を拭いさってくれた。
だからせめて……静流には幸せになってほしいから……。

私は、例え苦しんでくじけそうになっても、いくらでも我慢出来る。

いつまで頑張って笑顔を作ればいいんだろう。
静流の反応が気になる。

⏰:07/09/16 02:46 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#380 [向日葵]
静流を見れば、静流の顔がまるでどこか痛いかのように泣きそうな顔をしていた。

あの、彼女さんを思う愛しい気持ちは消えている。

静流は一歩一歩よろよろと近づいてくる。
そして……そっと大きな手で私の顔を包んだ。

息を飲んで、大きく目を開いた。
顔に熱が集まる。

「初めてだ。……紅葉が笑うの。」

まだ悲しそうな顔で私を見つめながら、静流は力無く微笑む。

⏰:07/09/16 02:51 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#381 [向日葵]
「でも。」と言いながら、静流は私を抱き寄せた。

更に息が出来なくなる。

「し……し、しず……っ。」

「そんな辛そうに笑う紅葉なんか見たくなかったよ……。」

辛そう……だった?私、隠せなかったんだ……。

自己嫌悪に陥っていると、静流の体が離れた。
肩に手を置かれて、またガーゼを貼り直そうとでも言うのかと思った。

でも違った……。
それは、とても予想外な事で、あってはならない事なのに……。

⏰:07/09/16 02:55 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#382 [向日葵]
静流は私に目線を合わすと、熱を帯びていてそれで真剣な目を私に向けてきた。

私はその目を見てからはもう何も考えれなくなって、静流の行動をただ見ておくしかなかった。

だから分からなかった。

静流が……私の唇に触れているだなんて……。

思ってもみなかった……。

触れているのが……静流の唇だなんて……。

⏰:07/09/16 02:58 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#383 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/16 02:59 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#384 [向日葵]
ひとまず安価しておきます良ければお使いください
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-385

⏰:07/09/16 03:12 📱:SO903i 🆔:2t8n8oBQ


#385 [向日葵]
―忘―










あれほど願った。

気持ちが欲しい。
でもそれは許されない。
だから静流。私に構ってはいけないと……。

―――――なのに。

⏰:07/09/17 00:45 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#386 [向日葵]
なのに今……

何が起こってるの……?

熱い……。
柔らかい……。

何これ。

静流の顔が目の前にあって、吐息が口の中に少し入って……。

なんで私……静流とキスしてるの……?

目を開いて、瞬きする事もなく私は固まっていた。

静流の顔が、ようやく離れた。
止まってた息がやっと出来る。でも上手く息が吸えない。

⏰:07/09/17 00:52 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#387 [向日葵]
「……。何……して、るの……。」

声がかすれる。
顔が熱くて、唇には感触が残ってて。

静流を見ると口元を手で隠して目を見開いていた。
まるで自分がしたことに驚いてるみたいに。

冷静になれ私。
動悸止まれ。

「こんなことして……いいと思ってんの?」

静流ん見ても、まだ床を呆然と見ているだけ。
言葉を発してくれない。

何で何も言ってくれないの?
後悔してるって言うの……?

⏰:07/09/17 01:04 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#388 [向日葵]
私は静流の横っ面をパシッと音が鳴る程度に叩いた。

その軽い痛みで静流は我に帰ったらしい。
目の色が変わった。
そして私の顔をゆっくり見る。

「聞いてる?……こんな事、していいの?駄目だよね?」

沈黙が私達を包む。
静流はぎこちなく目を動かして頭を働かせているみたい。

私は黙って静流の言葉を待つ。
隠した手から、口をパクパクとするのが見える。

⏰:07/09/17 01:13 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#389 [向日葵]
やっとの事で出てきたのが、次の台詞。

「……忘れろ。」

そう言って静流は自分の部屋に入ってしまった。

―――忘れろ。

今確かにそう言った。
何よそれ。
勝手に抱き締めて、勝手にキスして。
それで忘れろ?

さっきまでの静流に対する熱が怒りの熱に変わる。

いい加減にしなさいよ……。

バンッ!!

⏰:07/09/17 01:21 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#390 [向日葵]
気づけば静流の部屋のドアを開けていた。

ベッドで寝転んでいた静流は突然の訪問者に驚いて飛び起きた。

「……わよ。」

「え……。」

キッと静流を睨みつけて、顔や手に貼ってあるガーゼと包帯を乱暴に取ってやった。

それを、できるだけ静流の方に投げた。

「言われなくても忘れてやるわよっ!勝手にされて、何の感情もないキスなんか、すぐに忘れてやるわよこのスケベジジィ!!」

⏰:07/09/17 01:30 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#391 [向日葵]
バンッ!!

「ハァッ!ハァッ!」

私は口をゴシゴシ拭いた。

悔しい。
何でこんな思いしなくちゃいけないの?!
私ばっかり振り回されて、胸の中ぐちゃぐちゃにされて……っ!

ポタポタ。

フローリングに滴が落ちる。

こんなに泣いて……。
最近は泣いてばっかり。

静流を好きって知ってからずっと胸が軋む。

⏰:07/09/17 01:36 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#392 [向日葵]
********************

俺は投げ捨てたガーゼと包帯を拾いながら、反省していた。

忘れろと言った事。
抱き締めてしまった事。

……キスしてしまった事。

抱き締めたまでの自分は覚えてる。
でもキスは…………自分でも何故したか分からない。
そっと指先で、自分の唇をなぞる。

そして軽く叩かれた頬……。

⏰:07/09/17 01:42 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#393 [向日葵]
[ね?分かった?]

「……。」

あの痛ましい笑顔……。
抱き締めずにはいられなかった……。

無理して笑ってるのが分かった。
何でそんなに辛そうなのかは分からない。
せっかくの初めての笑顔だったのに……。

「――ごめん……。紅葉……。」

忘れろなんて……本心じゃないよ。
でもその方が、紅葉の為だと思うから。

――ごめん。今はただ謝るしか出来ない。

⏰:07/09/17 01:49 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#394 [向日葵]
ピリリリリ

突然の着信音に、静流の体はビクッとして机に置いてある携帯に手を伸ばす。

サブディスプレイを見れば、双葉からだった。
どうやら電話。

「……もしもし。」

{静流。寝起き?何か元気ないね。}

「実は」

[彼女さんが傷つく。]

紅葉の事を話そうとした時、さっき言われた事を思い出した。

途端に無言になってしまう。

⏰:07/09/17 02:06 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#395 [向日葵]
[言われなくても忘れてやるわよ!]

「……。」

{静流?}

「……ごめん。何でもない。」

*******************

「ただいまー。」

源さんが帰ってきた。
現在の時刻、昼の一時。

「おかえり……なさい。」

ソファーに座っていた私は肩越しに振り返り、挨拶をする。

源さんは嬉しそうに笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
そこであることに気づく。

⏰:07/09/17 02:13 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#396 [向日葵]
「口赤いけどどうかした?それに傷の手当ては?」

「……。ちょっと、かぶれてきたから。外したの。」

源さんはそれ以上は追及せず「そっか。」と言ってシャワーを浴びに行った。
またリビングが静まりかえる。

するとガチャッとドアが開く音が聞こえて、足音がこちらに向かってくる。
大体予想はつく。

「父さん……帰ってきたのか?」

静流の呼び掛けに、私は背中を向けたまま応じた。

⏰:07/09/17 02:18 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#397 [向日葵]
「そうよ。」

そしてまた黙る。
静流は多分リビングの入口にいるんだと思う。

「……今から双葉が来るんだ。それで…紅葉と喋りたい」

「彼女が来るなら。」

そう言いながら私はベランダの戸を開けた。
雨はいつの間にか止んで晴天。青空が広がっていた。

「消毒してもらうといいよ。口。」

振り返って、静流を見る。見たらまた胸が痛んだ。

「過ちを消すには、好きな人からの消毒が一番でしょ。」

それだけ言って戸をピシャリと閉めた。

⏰:07/09/17 02:22 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#398 [向日葵]
きっと大丈夫……。

忘れれる。
違う。忘れろ。

忘れてまたいつもみたいに喋ればいい。
そしたらまたいつもの日常になる。

私が忘れることで、平和になるんだ。

私は空を見上げた。

また雨が降ればいいのに。そしたら全部流れて、無しになって、ゼロからのスタートだ……。

「……神様…。」

これも罰ですか?

⏰:07/09/17 02:28 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#399 [向日葵]
*********************

[過ちを消すには、好きな人からの消毒が一番でしょ。]

言葉を失った。
過ち?そんな…………。

「俺は……そんな事……。」

思ってないのに。

ルルルルルル!

今度は家の電話が鳴った。何だ今日は……。俺は電話係か……。

「もしもし。」

{あ、静流?俺俺。}

⏰:07/09/17 02:35 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


#400 [向日葵]
声の主は香月だった。

ってかお前さっき電話してたじゃん。

{紅葉いる?}

は?

「お前今なんつった。」

「だから……紅葉いるか?って。」

おいいつの間に呼び捨てしてんだよお前!
俺は許した覚えないぞ!
大体なんで俺じゃなく紅葉に用があるんだよ。

「いるけど……。」

{代わってくんない?}

⏰:07/09/17 02:38 📱:SO903i 🆔:3VM2u4cU


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