.。改]恋愛成就の洞窟で。.
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#301 [桔妁]
―――――――
―
その頃、電車に五月蝿いノイズがかかり、五月蝿い声が響いた。
吉原たちの目指す駅を言う声だった。
そしてそんな声のかかる一時間前、柳園は夢を見ていた。
そう、彼女の特異能力ともいえる異波動を掴んだ事によって見る夢の事…。
:08/04/04 01:08 :SH903i :☆☆☆
#302 [桔妁]
柳園の目の前には倉が。
そして彼女は知らずのうちにその中へと侵入することを許されて、中にいた。
そこに広がるのは薄暗い中に微かに光る太陽の光と、時たまに舞う埃、沢山積まれた雑貨たちであった。
ただそのどれにも、柳園は目に止めはしなかった。
ただ一番上に忘れられたように置かれた、その本だけを除いては。
:08/04/04 01:13 :SH903i :☆☆☆
#303 [桔妁]
「…これが、今回の……」
それを手にする所で、柳園は慶に肩を揺すられて目を覚ましてしまった。
「慶、駅着いたの?」
夢見後の柳園は少し人格が変わる。…先輩の慶にも容赦なしに素っ気ない無表情な顔で、冷酷に言い放つ。
「…何か、見たのか?」
それを知る部員は特に何もおかしいとは思わない故に言葉を続けた。
:08/04/04 01:17 :SH903i :☆☆☆
#304 [桔妁]
「ん、部長…。本でしたよ。なんかボロボロな倉の中に置かれた。」
徐々に戻りつつある自意識の中で、その夢の記憶を辿り、柳園は言った。
「早速、ミステリー?」
くくっと嬉しそうに部長は微笑んだ。慶は明らかに冷たく、部長を見た。
「…もしも部長が部長じゃなかったら蹴りたいっス。」
そして無邪気な部長にそんな言葉を浴びせた。
:08/04/04 01:22 :SH903i :☆☆☆
#305 [桔妁]
―――――
―
寒い、寒い夕方だった。
なのに身体はポカポカしていて、家に居る所ではなかった。
そしてそれに付け加えて苛々の止まらない繭はとうとう家を出た。
「外なのにポカポカするっ………」
向かうは無意識ながらにきちんと意志を持ち、頼仲の墓であった。
:08/04/04 01:25 :SH903i :☆☆☆
#306 [桔妁]
死人に口無し。
頼弦に話すのも何か恥ずかしいので頼仲の所へ向かい、独り言を喋ろうと思っていたのであった。
――――
―
暁と別れ、再び落ち合った頼弦に酒を持たされて言われた。
「…天弥殿、今日は月が綺麗だから外で呑もう。」
そんな話は繭の知らない事。
:08/04/04 01:29 :SH903i :☆☆☆
#307 [桔妁]
―――…。
「…ははは、何か変だよねぇ…ごめんね、頼仲くん…」
繭はといえば、頼仲の墓前で泣き笑いをしていた。
気が付けば、夏が過ぎ秋が流れて冬を越してきていた。
一周分の季節を此処で、過去で過ごしてきていた。
皆と、天弥と。
:08/04/05 00:19 :SH903i :☆☆☆
#308 [桔妁]
「…早川先輩、もう表情が思い出せないんだもん…」
しばらく色々と繭は墓石(大きな岩だけど)に語りかけていれば、不意に後ろに気配がした。
繭はそちらの気配を確認しようと振り向こうとした。
だが、驚きの声によりそれは止められた。
「振り向くな、」
「―――…!?」
:08/04/05 11:28 :SH903i :☆☆☆
#309 [桔妁]
―――――――
――
「寒っ!!頼弦山ん中に用事があるとか言ってたけど…何だ?」
しばらく二人で呑んでいた訳であるが、突然頼弦は山の中へと入って行った。
確かそっちは頼仲の墓…。
「俺放って、弟の墓参りか!?」
いても立ってもいられなくなってきた天弥は墓へと向かった。
:08/04/05 11:43 :SH903i :☆☆☆
#310 [桔妁]
――
―――――――――
(そん、な…)
繭は言われた直後から微動さえ出来ない状況に居た。
「そうそう、振り向いたら、いけんよ?……繭、」
少し、訛ったような口調が繭の耳に入ってくる。
「な、…よ、頼仲くん……!?」
:08/04/05 12:18 :SH903i :☆☆☆
#311 [桔妁]
繭の心臓は以外にも静かに、静かに動いていた。
「何、泣いとるんじゃ?…やっぱり天弥じゃなくて、わしにしておけば、繭は泣かさないのに。」
「い、いやだな…頼仲くんはもう死んじゃってるし…。」
不思議と、普通に話が出来た。
…頼仲の声は少し低く聞こえたが、温かいものであった。
:08/04/05 12:25 :SH903i :☆☆☆
#312 [桔妁]
「あははは!!死んじゃってるからって、そりゃあそうじゃけど!」
「……はは、」
そんな繭の少し後ろの木の上、そこに頼仲の正体は居た。
(…頼仲の声、難しいな…)
誰より頼りになる兄、頼弦だ。
:08/04/05 14:30 :SH903i :☆☆☆
#313 [桔妁]
(だけどこうして、成功すれば繭殿と天弥殿がもう泣きに来ないからな…もう少し頑張ろう…)
実はきちんと、頼弦がここまで繭と天弥を応援するには理由があった。ただ、泣きに来られたら迷惑だという理由が。
それからしばらく繭の愚痴を静かに聞いていたが、
「…じゃけど、そらやは繭を好いてるのは丸分かりじゃ!」
:08/04/05 14:36 :SH903i :☆☆☆
#314 [桔妁]
「は!?」
耐え切れてとうとう核心をついてしまった。
「そりゃあ確かに頼仲くんは浮遊霊みたいにして天弥の様子を探ったりするけどさ……」
「いやいや、これは本当!…都ではこれを恋というらしいのじゃけど、つまり天弥は恋して愛してるんと思う!」
:08/04/05 14:44 :SH903i :☆☆☆
#315 [桔妁]
[何、言うんじゃ!違う!]
「!?」
それを言った直後だ。不意に、頼弦の真後ろから声が聞こえた。
「……な、天弥殿!!」
それは今まさに頼弦に追い付いて山に来た天弥だった。
:08/04/05 14:48 :SH903i :☆☆☆
#316 [桔妁]
「?」
急に聞こえなくなった声にしばし不安を覚える繭。
(なな何故天弥殿が!)
(だって頼弦遅かったからね?…それより!繭に何を吹き込んでるんですか?)
ニタニタと、見せた事もないような表情で頼弦に問い掛ける。
そして答えは聞かず、自分は木から飛び降りた。
:08/04/05 21:43 :SH903i :☆☆☆
#317 [桔妁]
「繭。」
はっ、と繭は振り向いた。
その向こうに、見慣れた小柄な少年が立っている。
「…天弥…!?」
さ、最悪!!!聞かれた!?今までの全部聞かれた!?
繭はみるみるうちに頭が熱くなるのを自覚した。
:08/04/05 21:46 :SH903i :☆☆☆
#318 [桔妁]
「怒ってるだろうけど…ちょっと聞いて?…前に頼仲にされた"恋愛話(コイアイハナシ)"について。」
「は!?」
まさか天弥からそんな恋やら愛やらの話が出るなんて!!
「き、聞いてたの!!!」
「…いいから聞いて。」
:08/04/05 21:49 :SH903i :☆☆☆
#319 [桔妁]
――――――――
なぁ、都じゃ最近好きな女子が出来たら[恋した!]と言うらしいんじゃー!
いや、知ってるけど?
でもな、こっちじゃ近くに住んでる夫婦たちが互いに[愛してる]と言うんじゃ。
うん、それで?
……それ、わしは間違っとると思うんじゃ。
うん、何で?
:08/04/05 21:57 :SH903i :☆☆☆
#320 [桔妁]
恋と愛は真逆!海に例えれば、恋は浅瀬じゃ。愛は深海。
浅瀬には魚が沢山居て、つまり皆が見ている環境、皆が知っとる中での戯れ事じゃ。
深海には、灯なんてものはなくて、存在するものも手探りで探し合わなくちゃならん。けど逆に"自分達しか知らない世界"になる。
つまり、愛は心の臓が高鳴るそれとは違うんじゃ。
:08/04/05 23:33 :SH903i :☆☆☆
#321 [桔妁]
ただし、恋と愛は恋愛となれば繋がるんじゃ。ある星では恋愛という単語が存在するらしいからのう。
浅瀬から深海まで知らんと、愛と恋は別物なんじゃ。
……俺にはさっぱりだな!
―――――――――
「―…っつうのが頼仲の話…。」
天弥は頭をポリポリ掻きながら繭の放をちら見した。
視線は繭がぼんやりと入る程度まで下を向いている。
:08/04/05 23:44 :SH903i :☆☆☆
#322 [桔妁]
繭はと言えば、頭の中で記憶の影がちらっと動いていた。
私は、頼仲くんの話を"知っている"――…
「……!」
そうだ、あれは確か恋愛成就の洞窟の、言い伝え!!
「……そっか、そうなんだ…」
「?」
:08/04/07 02:58 :SH903i :☆☆☆
#323 [桔妁]
恋愛の神様は、きっと昔から私の側にいた。
私は天弥の方へと、立ち上がり、振り向き、走った。
「……天弥、!」
「は?」
天弥は分からないと言った表情で繭を見た。
「……何?」
「…天弥は、どっち?」
:08/04/07 03:02 :SH903i :☆☆☆
#324 [桔妁]
「な?」
「……恋と、愛なら!」
繭は若干顔を赤らめてはいるが、元から気の強い方なので目線は天弥へと向けられるまま、恥ずかしがる事もなく問う。
「どっち、?」
「………じゃあお前は。」
逆に聞かれれば繭はしばし悩み、言った。
:08/04/07 03:06 :SH903i :☆☆☆
#325 [桔妁]
「…………―両方!!!」
「―…んだよ、欲張りだな…。さすが繭だな。」
きらきらと笑う繭に吹き出して天弥は言った。
「……でも、ま、俺も両方がいいかな…なんてな。」
「……あはは!天弥だって欲張りじゃん!!……?」
不意に、繭は倒れかかった。……酒の効果だった。
―――――――――
――
:08/04/07 03:09 :SH903i :☆☆☆
#326 [桔妁]
――――…。
慶は天井の蜘蛛の巣をぼんやりと眺め、言う。
「寒いですね、部長…」
部長は何にも見えずにぼんやりと答える。
「あ、あぁ…」
柳園は思わずくしゃみが出てしまった。
「………クチョン!」
朝。朝日が綺麗な田舎の駅。
寝袋が三つ並んでいた。
:08/04/07 03:12 :SH903i :☆☆☆
#327 [桔妁]
「なんでホテルとかホテルとかホテルとか予約しないんスか!?」
持ってきたおやつのチーカマを慶はかじり、吉原を見た。
慶が問う理由は、慶自身も確信を持ち、わかっている事であった。
「…赤字ですよ、ね、先輩。」
「なるべくね、コスト削減?みたいな………」
の割に自分達は、なんかぬくぬくした服ばかりを着ているのに腹が立つ慶。
:08/04/07 03:16 :SH903i :☆☆☆
#328 [我輩は匿名である]
:08/04/07 03:31 :SH905i :8aXwg6ZU
#329 [桔妁]
?(・ω・)
:08/04/12 03:05 :SH903i :☆☆☆
#330 [てぃ-◆tr.t4dJfuU]
あげケx
:08/04/13 09:55 :auCA3A :n.GeXkaU
#331 [さちほ]
あげ\(^^)/x
:08/04/13 16:48 :W51P :/vzgfFLU
#332 [桔妁]
あげあげ有難う
ございまーすっ
!!
頑張っていきます(・ω・)ノ
更新
:08/04/14 22:46 :SH903i :☆☆☆
#333 [桔妁]
「いやですね。野宿だって事くらい、予測してたんじゃないですか?」
むぅ、そう言われると……それは慶の頭の片隅にはあった訳で。
だから何も言い返せない訳で。
「……………。」
チーカマをかじる速度を急速に早め、ふてくされてみるのであった。
:08/04/14 22:50 :SH903i :☆☆☆
#334 [桔妁]
………昼。
慶やその他メンバーはなんとかきちんとした食事にありついて、そしてその食後であった。
「はぁ、微妙なうどんだったね。あれはミステリー………」
「いや、だから定食を勧めたじゃないっすか!!何、ねばねばうどんって!!」
少々難有りの人も居たけれど、その他は普通にお腹を膨らませられた。
:08/04/14 22:54 :SH903i :☆☆☆
#335 [桔妁]
「と、そんなことはどうでもいいんだ。…村へ行こう!」
吉原のスイッチはここで入れ代わった。これは部活動を本格活動させるという意である。
「…地図はこれだ、さぁ慶!」
テンションの上がる吉原はなにかが違う。分からないが。
慶は渡された地図を、最大の集中力で約五秒見つめた。
そして、村へ続くであろう道を三秒見つめる。
:08/04/14 22:58 :SH903i :☆☆☆
#336 [桔妁]
「……………こっち、っすね。ここからなら十五分かかりませんよ!走れば!」
すぱっと指を差し、慶は言った。
そう、つまり。慶がこんな部活に居る訳といえばそれだった。
周りの風景と地図を数秒見比べただけでルートがわかるという"人間カーナビ"。
逆に、八秒で全てがわかるから、本物のカーナビよりも使えるかもしれない。
:08/04/14 23:02 :SH903i :☆☆☆
#337 [桔妁]
「ご苦労。さすが、絶対土地勘だね。」
ニッと笑う吉原は方向音痴だから、その笑みからは尊敬の意もとれる。
それから三人は小走りをしだした。
走って十五分、つまり小走りなら二十分くらいだろう。
たまに歩きながらも、着実に村に向かって近づいていった。
:08/04/14 23:06 :SH903i :☆☆☆
#338 [桔妁]
―――――――――
――
「――…繭さん、繭さん」
朝になり昼になり、すっかり寒そうな繭は囲炉裏の前に寝かしていた。
ただしかし、起こさない訳にもいかないので、つんつん突くのであった。
(…ていうか俺達は、よく考えたら昨日――…)
そんな繭をつつきつつ、天弥は逆に目覚めないでとも願っていた。
:08/04/14 23:09 :SH903i :☆☆☆
#339 [桔妁]
(考えたら恥ずかしーんじゃねーか!!?)
天弥の頭の中はそればかりが巡っていた。
「あああ、愛してる、なんて、なぁ!?」
おかしいだろう、と頭に手を当て言い、やり場のない気持ちを押し込んだ。
だが残念ながら繭にはそれが聞こえたようで、うぅ、と声をあげ薄目を開けていた。
:08/04/17 00:28 :SH903i :☆☆☆
#340 [桔妁]
「あ、天弥……………っ!」
ふいっと顔を背ける繭は同じ気持ちであろう。ただ天弥は起きた繭に対してはクールに接することにした。
「おはよ、う…」
様子を伺いながらの挨拶。クールにするはずがこうなってしまっている。
「おおはよう!…運んでくれたんだね?有難う!」
そんな上擦る繭の声からすれば、怒りや憎しみがないのはすぐにわかった。
:08/04/17 00:32 :SH903i :☆☆☆
#341 [我輩は匿名である]
:08/04/22 07:15 :SH905i :YinhVAd.
#342 [桔妁]
安価有難うです
!
更新します
:08/04/23 14:51 :SH902iS :☆☆☆
#343 [桔妁]
「いやいや、おいてけぼりにするのも…あれだから。」
上擦る繭の声に答えれば、急に繭は立ち上がった。
「……洞窟、行こ!!」
「は…?」
天弥はといえば、しばらく恋人同士ーみたいな、そんないちゃいちゃをしてみたかったわけだったが。
繭は急いで用意すると、口が半開きの天弥を引っ張り出した。
:08/04/23 14:56 :SH902iS :☆☆☆
#344 [桔妁]
家の前には、暁が居た。しばらく前から待っていたようで、その手は冷たそうであった。
「あぁ、おはよう二人とも。」
にっ、と微笑む暁は気取るわけでもなく、いつみても綺麗だ。
そして、暁は二人を見比べてニヤニヤと笑う。
「?」
繭と天弥はそんな暁に首を傾げるばかりだった。
:08/04/23 15:01 :SH902iS :☆☆☆
#345 [桔妁]
「いやぁ、お前たちの事を本に書いたらおもしろいだろう、とな!」
そう言い、端の揃っていない紙の束を二人に手渡す。
「……え、どういう事ですか?」
そこには色々と書いてあったが、何しろ昔の文字。二人には読めなかった。
―――――――――
―――
:08/04/23 15:04 :SH902iS :☆☆☆
#346 [桔妁]
「……これ、なんですけど…」
歩きながら、柳園は吉原に一枚の紙を差し出した。
「ん?…昔の雰囲気漂う本が沢山?」
そこには、白黒の書が五冊程並んだ写真がプリントされていた。
「そうなんです。それで、この左から二冊目の本なんですが。…"男女鬼穴物語"って書いてあるんです、多分。」
:08/04/27 22:11 :SH903i :☆☆☆
#347 [食]
:08/09/24 08:44 :SH905i :PrKIzmOA
#348 [桔妁]
しばらく休んでました!;
色々と事情があったもので..
マイペースになっておりますが
これからも&これから見て下さる方々も、
よろしくお願い致します。
:08/11/15 19:26 :SH906i :☆☆☆
#349 [桔妁]
「男女鬼穴…?何だ、それは。」
「もう、資料見てないんですか??…鬼穴…そこ、今は恋愛成就の洞窟とされているんです。」
柳園は本の題名、そして夢を頼りにそれを部長に言った。部長は、それを部長なりに読み取ったらしい。
「成る程、じゃあその本を探そうか。…昔の文章は読めるね?」
その質問に柳園は大きく、はい!と答えた。
:08/11/15 19:34 :SH906i :☆☆☆
#350 [桔妁]
――しばらく歩いていると、資料で見知っている景色が見えてきた。皆、一緒に周辺の家屋を見て回る。
と、柳園がある家屋の、倉の前で立ち止まった。
「あ―…此処よ。」
それだけで部員は分かった。ポイントになるその本がここにあるのだ、と。
そして、繭の祖母の家であることを知るのは少し先のこと。
:08/11/15 19:40 :SH906i :☆☆☆
#351 [桔妁]
一同は繭の祖母に暖かく迎えられた。家の中も暖かく、さらに食事まで分け与えてくれた。
「さぁ、たんと食いさね!こんな山奥までまぁ!」
「うぉぉ!暖かいご飯!ありがとうっス!」
慶なんて泣きながら食べている。そんな中、吉原は本題に入った。
「御祖母様の、蔵についてなのですが。」
にこりと、彼女は笑って、了解してくれた。
:08/11/15 19:47 :SH906i :☆☆☆
#352 [桔妁]
蔵を見た柳園は何故か愕然としていた。
「―違う、」
そしてただ一言、そう言った。
「な、似てる家屋だからか?柳園でも外れるときがあるんだな!」
慶は笑いながらそう言う。柳園は悔しくて泣きたくなった。
「――はぁ…、御祖母様、他に蔵のある家はこの村に幾つありますか?」
:08/11/15 19:52 :SH906i :☆☆☆
#353 [桔妁]
部長は目前にしたミステリーのカケラをまた引き離された落胆で、溜息をつきつつ聞いた。
「あるよ、何なら私が貰い受けた他の蔵でも見せますよ?」
また彼女は笑顔で言ってくれた。
「あ、溝浦天弥の、祖母の家…とか――?」
そんな慶の呟きは、当たっていた。
:08/11/15 19:56 :SH906i :☆☆☆
#354 [桔妁]
その第二の蔵に入って辺りを調べるという名目で漁る。
「…此処は多少、日当たりがいいんですね。」
吉原の他愛ない会話に繭の祖母は笑顔で答える。
と、柳園が一冊の本を見つけた。
それは、心霊非科学研究会の全員が求めていた本、
「男女鬼穴物語―――…!!」
:08/11/15 21:17 :SH906i :☆☆☆
#355 [桔妁]
―第9章―
――そして
僕等は知った―
_
:08/11/15 21:21 :SH906i :☆☆☆
#356 [桔妁]
――――――――
――――
「男女物語?」
繭は達筆なのか違うのかよく分からない文字のそれを、ようやくそうやって読んだ。
「そう!なかなかの出来だと思っているよ!何しろ頼りになるお兄さんが教えてくれたのだからね!」
笠から覗く口がニッと笑う。
「…書物?繭とか俺の名前ばかりじゃないですか?」
じっと中身を読んでいた天弥が不思議そうに暁の顔を見た。
:08/11/15 21:27 :SH906i :☆☆☆
#357 [桔妁]
「だから二人の物語だからだよ!」
暁はそれを乱暴に天弥から受け取る。するとそこに、何故か頼弦もやってきた。
「暁殿、それが完成か?」
きっと暁の言う兄さん、とは彼であると繭は確信をもって思うのだった。だって暁さんの笑顔が輝いてる。
「書けました!いやもう!本当に恋物語そのままのような二人ですね!」
小説(?)を語る様子を嬉しそうに語る暁、そこにまた繭は女の勘も見た。
:08/11/16 17:15 :SH906i :☆☆☆
#358 [桔妁]
(あ、暁さんはきっと頼弦さんに……)
私達の事を聞いているうちに、恋に落ちたに違いない。頼弦さんは気がきくし、落ち着いた物腰だし、恋する要素ならいくらでもあるのだから。
「…―じゃあ、私達も洞窟行こうか!二人の邪魔しちゃあ悪いし!」
気を遣ったつもりだったが、逆に赤くなり黙る暁さんを見て少し楽しくなったりして。
(可愛いな、)
率直にそう思えた。
:08/11/16 17:23 :SH906i :☆☆☆
#359 []
:09/09/08 23:54 :SH904i :ajjfHzhk
#360 [我輩は匿名である]
まさか私が数年前に書いていたものがまだあるとは…(゜_゜)
:13/05/15 00:37 :ISW16SH :qcnVGiJI
#361 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age
:22/10/02 03:26 :Android :Ltpo.xA.
#362 [我輩は匿名である]
久しぶりに本人巡回
:23/11/01 22:43 :Android :tGoPrgzQ
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