*- エロチュウ -*
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#301 [亜夢]
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「俺はお前を信用してたのに……」
龍紀は切なそうに裕也の胸ぐらをつかんだ手を解いて言った。
「…俺にとって亜夢はすべてだった。 幼なじみで何年も一緒にいる子…この関係を壊したくない。 て、ただ俺は願うだけだった……」
でも、と裕也は続ける。
「あんたが俺から奪った!!! もっと魅力的になる亜夢をみるのが苦しかった。 …と同時に、悲しむ亜夢を見ると、あんたが憎かった…」
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:10/06/21 23:44
:F02B
:d897jUrM
#302 [亜夢]
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「―…」
龍紀は言い返せなかった。
確かにあたしは人を好きになることが出来た…でも同時に相手に対する嫉妬心や不安で押しつぶされそうになった…
と…
「…あっ皐月くん!!! 今電話しようとおもったところだったのよ。 時間がないから急いでっ!!!」
はやくはやく、とスタイリストの女の子が呼ぶ。
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:10/06/21 23:52
:F02B
:d897jUrM
#303 [亜夢]
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龍紀は聞こえないように舌打ちすると素早くスタジオへと走る。
「―…」
あたしと裕也の間で沈黙という重い空気が流れる。
「…亜夢…」
裕也はゆっくりあたしの肩に触れようとする。
「やだっ…」
あたしはその手を振り払う。
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:10/06/21 23:56
:F02B
:d897jUrM
#304 [亜夢]
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あたしが龍紀を信じればこんなことにはならなかった。 あたしが、裕也の優しさに甘えたから、こんなことになったんだ…
「―…」
あたしは何も言えなかった。
裕也との今までの関係が音をたてて崩れていった。
あたしを想ってしてくれたことかもしれない。 でも、あたしのことを考えずに自分の気持ちを優先したんだ、裕也は―…
あたしは何も言わず店に戻った。
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:10/06/21 23:59
:F02B
:d897jUrM
#305 [亜夢]
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休憩時間なんて一瞬で終わったように思えた。 龍紀が隣のブースで撮影しているとおもうと胸がバクバクいった。
外をちらっとみると裕也の後ろ姿が見える。 あと数時間あるのに、待ってるつもりなんだろう。
「お疲れさまです―…じゃあ髪の毛お願いします。」
担当がたまたまあたしがアシストしてる人だった。
「お願いします。」
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:10/06/22 00:02
:F02B
:y0EXPsFg
#306 [亜夢]
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龍紀があたしの目の前でセットされている―…
視線はあたし、携帯の行き来をしてた。
あたしは赤の他人なんかじゃない。 龍紀は初めての恋人…すべて一緒にしてきた。
異性とのはじめての…
嬉しい気持ち、楽しい気持ち、もどかしい気持ち、切ない気持ち、恥ずかしい気持ち、いやな気持ち、不安な気持ち…
たくさん、たくさん…
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:10/06/22 02:41
:F02B
:y0EXPsFg
#307 [亜夢]
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「こないだ雑誌読みましたよー皐月さん。」
担当の西川さんが【響皐月】に声をかける。 それはどうも、と愛想笑いする龍紀。
「なんか…恋愛のおはなし…切なくなりました。」
「ああ…お客さんにはうまいこと話作ったね、て言われたけどね…」
くすくす笑って龍紀が言った。
「私も正直…作り話かと思いましたけど…あたしが過去にあった体験と似てたので。」
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:10/06/22 02:45
:F02B
:y0EXPsFg
#308 [亜夢]
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「そのときの彼氏が置き手紙して、さよなら…とだけと、鍵がテーブルの上にあったこと…今でも忘れられないです……」
西川さんが苦笑いをして言った。
それ…あたし?
「俺は1ヶ月くらい…なにも喉に通らなくて、やっと吹っ切れそうになって…過食症ですよ。 だから少し太りましたけど。」
でも…と龍紀が続ける。
「彼女が今おれを必要とするなら……すぐにでも連れさらいたい……」
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:10/06/22 02:48
:F02B
:y0EXPsFg
#309 [亜夢]
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「彼女にほかの男がいても?」
「…そのときに彼女が幸せなら、俺はなにもいいませんよ…」
切なそうにあたしを見て微笑んだ。
「あたしっ……」
「亜夢、いま幸せか?」
龍紀がそっと言う。
西川さんは驚いた顔であたしを見る。 また【響皐月】をみて、え?て表情をつくる。
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:10/06/22 02:51
:F02B
:y0EXPsFg
#310 [亜夢]
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「……」
沈黙が広がる。
「今お前は裕也といて幸せなら…それでいいんだ。 たとえ、故意に俺たちの別れがあったとしても……おまえが、"今"幸せなら俺はいいんだよ。」
幸いほかのお客さんは店内にいなかった。
ただ、流れる音楽だけが耳にはいった。
外にみえる裕也の背中。
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:10/06/22 02:54
:F02B
:y0EXPsFg
#311 [亜夢]
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「あたしは―…」
裕也がいいの?
龍紀と戻りたいの?
ううん…違う。 あたしは裕也を龍紀の代わりにしてたの?
龍紀に会って、すぐに裕也への感情がなくなってしまったの?
「―…」
答えなんてすぐでなかった。
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:10/06/22 02:55
:F02B
:y0EXPsFg
#312 [亜夢]
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「俺は…一目惚れしてどうしようもなくて、ホストていう職業だからお前には相手にされないって思ってた。 でも違った。 俺のこと……まるごと愛してくれた。」
けど、と続ける。
「俺はお前が悩んでることに気づいてやれなかった。」
ごめん…頭をさげれないからか、龍紀は目を閉じてそうあたしに伝えた。
西川さんはただただビックリしてて、ただただ仕事に集中してた。
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:10/06/22 02:58
:F02B
:y0EXPsFg
#313 [亜夢]
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「ごめん…あたし、わかんない。 龍紀のことで悩んでるときに裕也があたしの支えだった。 けど…裕也があたしに心配にさせるようなことをしてたんなら……」
あたしの頭の中は何年も掃除されてない倉庫みたいになってた。
「わかんない……」
幸せか、幸せじゃないか。
分からないはずなんてないのに、あたしははぐらかしてしまった。
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:10/06/22 03:01
:F02B
:y0EXPsFg
#314 [亜夢]
-
撮影が終わり、あたしも片づけをすれば帰れるというときだった。 ガラス越しに裕也と龍紀の姿が見えた。
もしかして―…
あたしは素早く片づけをしてタイムカードをきると、たばこを吸うふたりが何も喋らず立ってこちらに目を向ける。
どっちか…選べってこと?
できないよ―…
-
:10/06/22 03:03
:F02B
:y0EXPsFg
#315 [亜夢]
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裕也は…
龍紀からあたしを奪い取るくらい、自分のものにしたくて、ってことはあたしのことが凄く好きで…
でも
龍紀は…
あたしに無理強いしない。 でも想いはずっと強くて、すべてあたし優先で考えてくれてる… あたしが幸せなら、いいと。
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:10/06/22 03:08
:F02B
:y0EXPsFg
#316 [亜夢]
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あたしは…
…の手をとった。
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:10/06/22 03:09
:F02B
:y0EXPsFg
#317 [亜夢]
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「いいのか?」
後ろを振り返りながら彼は言った。
あたしは首を縦に振る。
やっぱり…あたしの手はこの手にフィットする。
彼があたしを求める。
同時にあたしも彼を倍求める…
手をつないでるだけでも幸せ。
…なら、いいんだよね?龍紀。
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:10/06/22 03:11
:F02B
:y0EXPsFg
#318 [亜夢]
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龍紀はあたしがほかの誰かと幸せになったらほんとに幸せなの?
ねえ……
「お前は俺のもんじゃないとだめだっ…」
ぎゅうっと抱きしめる。
ねえ、裕也……
あたしはあなたの手に簡単に落ちてお互い恋をしたのかな?
それとも…あたしは、ただ龍紀の想いを断ち切るため?
-
:10/06/22 03:13
:F02B
:y0EXPsFg
#319 [亜夢]
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あたしは
…龍紀の手を取った。
裕也があたし達にした行為が許せなかったとかではない。
ただ…
あたしは龍紀と居たかった。
あたしを一番に考えてくれる龍紀と…
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:10/06/22 03:16
:F02B
:y0EXPsFg
#320 [亜夢]
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まるでこの1年は…嵐のようだった。
龍紀との出会いから恋愛…不安と嫉妬…裕也からのアプローチに、よりかかってしまったあたし、…付き合って穴を埋めようとして…時間が経って…嘘が事実になる。
どちらとも居れる可能性があった今、あたしは龍紀といる。
「お、亜夢みてみて!!!」
旅行のパンフレットをみてはしゃぐ龍紀の肩のうえにあごを乗せてあたしはのぞき込む。
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:10/06/22 03:19
:F02B
:y0EXPsFg
#321 [亜夢]
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「わっ…」
屋久島の写真。
「すごくない?実はさ…今度店で慰安旅行があるんだけど、俺行く予定ないから…亜夢とどっかいこっかな〜と想ってさ☆」
わあい♪あたしは両手を挙げて喜ぶと龍紀は子供みたいに無邪気に笑う。
「それに…亜夢の誕生日じゃん?」
はじめて一緒に過ごせるの誕生日。
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:10/06/22 03:22
:F02B
:y0EXPsFg
#322 [亜夢]
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ふたりでソファに寝転がってあ―だこ―だいいながら旅行だったり他愛もない話をする。
たまにキスしたり、たまにふざけて龍紀が胸をさわったり、じゃれ合う…ただ、それだけで幸せ。
「あ……」
龍紀がなにかを思い出したように言った。
「ん?どしたの?」
いや、とTVをまじまじと見始める龍紀。
-
:10/06/22 03:26
:F02B
:y0EXPsFg
#323 [亜夢]
-
あたしは特に気にしなかった。
そのとき龍紀がなにを思い出したかも……
まさか、過去のあったことをまた、振り返るなんて…今しあわせ絶頂期のあたしには思いがけないことだったから―…
***
あいつの兄弟―…
俺は初めて会うんだっけ?
***
-
:10/06/22 03:29
:F02B
:y0EXPsFg
#324 [亜夢]
:10/06/22 03:32
:F02B
:y0EXPsFg
#325 [亜夢]
-
「あ.....」
俺は思った。
もうすぐマナブの命日だった。
あっという間に時間が過ぎる。
俺はもう22歳の年になってた。
-
:10/06/22 06:53
:PC
:vp.J4.Ao
#326 [亜夢pc]
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マナブの命日には勿論、亜夢も連れていく予定だった。
もう華も普通に生活出来ているくらいだし、ひさびさにマナブに会いにいくんじゃないだろうか。
マナブという名の親友がいなくなって7年もの時間が経ってしまっていた。
-
:10/06/22 06:56
:PC
:vp.J4.Ao
#327 [亜夢pc]
-
ひさびさに華に連絡をする。
<もうすぐマナブの命日だけど、あの坂...行くのか?>
勿論華にとってマナブの命日はいい日ではない。 あの日に彼女は4年もの眠りにつくことになってしまったんだから...
返事はすぐには返ってこなかった。
<彼女つれていくの?>
-
:10/06/22 06:59
:PC
:vp.J4.Ao
#328 [亜夢pc]
-
俺は何にも戸惑うことなく、「うん」と返事をした。 すると次はすぐに返事がかえってきた。
<じゃあ行きたくない...>
やっぱり百合香が言ってた通りで華は多分俺に未練がある。 自分が命を落としかけた日に、大事な俺たちの思い出に、彼女を連れてくる意味が華には理解できないんだろう。
俺はマナブっていう大事な連れにはすぐに亜夢のことは紹介したかった。
-
:10/06/22 07:01
:PC
:vp.J4.Ao
#329 [亜夢pc]
-
「今週末、俺実家かえるけど....」
俺は伺うようにして亜夢に問いかける。
「うん?分かったよ〜。」
"一緒に行く"とか可愛らしく言ってくれれば誘いやすいのに〜と思いながら、すねた顔をする龍紀。
「誘ってくれればいいじゃん。」
-
:10/06/22 07:03
:PC
:vp.J4.Ao
#330 [亜夢pc]
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思わず笑う亜夢。 つられて龍紀も苦笑いしながら"一緒に帰る?"と聞く。
「龍紀ってたまに、甘えん坊だよね。 いつもオラオラ言うくせにい〜.....」
「エッチのときはね☆」
にかっと満面の笑みを見せる龍紀。 いまだに電気をつけてなんてとてもじゃないけど出来ないあたしにとっては、本当に恥ずかしいのが下ねたとかそっち系だ。
-
:10/06/22 07:04
:PC
:vp.J4.Ao
#331 [亜夢pc]
-
「実はさ...マナブの命日だから実家かえろうかなって。 まあ親父達にも紹介したいし、せっかくだからお前も俺と一緒に親友の墓参りきてくんない?...天国にいったやつだけど、紹介してやりたいからさ。」
会わせて欲しい、と正直に思えた。
しかも龍紀のご両親は初対面だから正直緊張する。
「俺の学生時代のときの、思い出の場所とかいろいろみにいこー?」
うん、と元気よく返事する。
思い出の地は、誰かにとっては思い出したくない地にもなるってことを、そのとき龍紀はさほど、気にしてはなかった。
-
:10/06/22 07:07
:PC
:vp.J4.Ao
#332 [亜夢pc]
-
時間が経ち、週末になった。
夏前の少しじめじめした季節だ。
あたしは龍紀の助手席に乗り込むとペットボトルを片手に元気よく『しゅっぱーつ!』と大声をあげる。
休みを取った龍紀とは2日ゆっくりできるってわけだ。
数時間運転しては休憩所にとまったりして、ふたりで遠出するのは初めてだったから運転中でも凄く楽しかった。
「わーもうすぐ?もうすぐ着くの?」
-
:10/06/22 07:10
:PC
:vp.J4.Ao
#333 [亜夢pc]
-
道路標識の案内のところに書かれた龍紀の地元の名前。
そうしてる間に車は停まって、立派な家の前であたしは、あっけにとられたまま、鐘を鳴らして、誰かが出てくるのを待つ。
早速ご両親?
「龍紀☆ おかえり〜!入りなさいっ。 あら...あらま!彼女?ま〜かわいい〜」
龍紀そっくりで長身のお母さんがあたしを手招きしている。
うわああ、緊張する。///
-
:10/06/22 07:12
:PC
:vp.J4.Ao
#334 [亜夢pc]
-
ご両親は沢山の手料理をテーブルにずらあっと並べるとあたしと龍紀を隣同士にして、ご飯を食べながらお喋りしましょう、となった。
龍紀がコソコソ、と耳元で言う。
「俺の親、こうして食べるときに上品かとか、出来てるかとか見るから、気をつけろよ。」
苦笑いして親指をたてると『頑張って』と口パクで言う龍紀。 そんなんなら、来るまえにレッスンでも受けておくんだったよ〜〜
馬鹿龍紀!
でもちゃんと作法はお父さんとお母さんに教えてもらったからいけるはず♪
-
:10/06/22 07:14
:PC
:vp.J4.Ao
#335 [亜夢pc]
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「へえ、龍紀の彼女にしては出来る女の子ね!びっくりだわ。」
にんまり微笑む御母さん。
お父さんは終止無言だし、あたし何を喋ったらいいの?
「明日こいつ連れてマナブに会いにいってくるよ。」
「あ、そういえば...マナブ君の双子の弟がこっちに帰ってきてるみたいなのよ。 顔も全然似てないみたいだけどね。 お墓参りで会うかもね。」
「忍ってやつだっけ?」
「そうそう。」
マナブさんには双子の弟さんがいたんだ...
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:10/06/22 07:17
:PC
:vp.J4.Ao
#336 [亜夢pc]
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その日の夜はご両親と龍紀とあたしで近くの銭湯になぜだか行った。
あたしの場合は家族で銭湯なんて入りにいったりしなかったので何故だか新鮮だったし、楽しみだった。
龍紀は何故だか銭湯がかなり好きみたいで、スキップしながらお父さんとじゃれあっている。
「うふふ、亜夢ちゃんのおかげかしらね。」
「え?」
「龍紀があんな風に子供みたいに、楽しそうにできるのは、亜夢ちゃんのおかげじゃないかなって。」
-
:10/06/22 07:19
:PC
:vp.J4.Ao
#337 [亜夢pc]
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「あの子はマナブの死から、いやな思いをしたりしたからね...考え方が皆を見下すようになってしまって、一時期は自分の子供でも可愛くない、と思えたわ。 でも今は楽しそう。 毎日充実してるのかしら?」
嬉しそうにお母さんは微笑むと長い黒い髪の毛を束ねてタオルで包み込んだ。
「そうだと嬉しいです。 でもあたしは龍紀さんから、たくさん元気を貰ってます。」
「そう。」
嬉しそうに微笑むお母さん。
-
:10/06/22 07:21
:PC
:vp.J4.Ao
#338 [亜夢pc]
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男同士もいろんな話をしたみたいで、さっきまで無口だったお父さんも何かとあたしに質問してくるようになった。
4人で家に戻っているときに龍紀が「あ...」とまた言葉をもらす。
「あら、華ちゃんじゃない。」
お母さんが気づいて玄関に近寄っていく。
ひさびさにみる華さんは何だか少し痩せた気がした。
「ご無沙汰してます。 皆さんで銭湯いってらしたんですね。 ごめんなさい、お邪魔してしまって。 久しぶりにお母さん達にご挨拶しようとおもって...」
-
:10/06/22 07:24
:PC
:vp.J4.Ao
#339 [亜夢pc]
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4年ぶりに目覚めてから龍紀の両親には会ってなかったようだ。
「今回のことで、龍紀にも大変迷惑をかけたので....」
なんだか変な雰囲気。
「全然迷惑じゃないよ。 俺、いまは全部貯金してるし。」
別に嫌味じゃないし、認めたくもないんだろう。
確かに愛し「た」けれど、もう愛し「てる」じゃなくなったってことをハッキリさせたかったみたい。 どうやら龍紀はね。
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:10/06/22 07:25
:PC
:vp.J4.Ao
#340 [亜夢pc]
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「龍紀、あしたマナブのとこにお墓参りいく?」
「当たり前だろ。」
「じゃあ待ち合わせしましょうよ。 亜夢ちゃんはいかないんでしょう?」
当たり前のように行かないことになってるあたし。 なんだか華さんは、龍紀に未練たらたらな気がする。
「亜夢は来るよ。 俺が紹介したいんだよ、マナブに。 だから無理矢理連れてかえってきた。」
-
:10/06/22 07:27
:PC
:vp.J4.Ao
#341 [亜夢pc]
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そのあとは沈黙だった。
華さんは適当に龍紀の両親とお喋りして帰っていった。 そうか、近所なんだものね。
「なんか華が明日、墓の駐車場に13時に待ち合わせだって。 何で一緒に墓参りしたいんだろう。 わかんね〜。」
龍紀はつまんなさそうに手足をのばすと寝ようっていってあたしの腕を引っ張った。
こういう元気があるときは龍紀がエッチしたい日だ。
-
:10/06/22 07:29
:PC
:vp.J4.Ao
#342 [亜夢pc]
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「亜夢......」
龍紀の部屋はちゃあんと残ってある。
ベッドも机もそのまんま。
それに帰ってくるって連絡を受けてたからか、お布団にはいい香りの芳香剤がいっぱい鼻にはいってくる。
「あっ...たっつ...」
実家でまで愛し合うなんてどうかしてる。///
-
:10/06/22 07:30
:PC
:vp.J4.Ao
#343 [亜夢pc]
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翌日13時。
この墓参りが終わったから夕方と夜は龍紀の思い出の街巡りにつきあって、そのまま車でふたりの家に戻ってくる予定だ。
13時をすぎても華さんは来なかったので、ふたりで早速マナブさんのお墓にむかった。
ばけつには水、花芝を持って、お墓を綺麗に掃除すると、夏前だからといって水をたくさんかけてあげた。 ふたりでお線香をあげて、しっかり手をあわした。
-
:10/06/22 07:32
:PC
:vp.J4.Ao
#344 [亜夢pc]
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「兄さんはお前のことなんて、もう親友とも思ってないはずだよ。」
と後ろから声が聞こえた。
マナブさんの双子の弟?
隣をみると龍紀がびっくりした顔でそのひとを見つめてる。 あたしには誰だか分からない。
「まさかだろ?俺もびっくりしましたよ。 まさか俺の兄貴の親友があんただったなんてね...うちの店のナンバーワン【響皐月】さん。」
-
:10/06/22 07:34
:PC
:vp.J4.Ao
#345 [亜夢pc]
-
***
マナブの双子の弟{忍}は
俺の店で一番俺を嫌っているあの男だった。
俺の太客を利用して爆弾して、関係を切れさせたりするような男。
こないだの裕也が起こした事件にもかかわっている男。
朝日だ。
-
:10/06/22 07:35
:PC
:vp.J4.Ao
#346 [亜夢pc]
-
朝日が俺の目の前で「兄貴」やら「兄さん」やら白々しく呼んでることさえ、血縁者じゃない俺にはイラっとさせた。
「お前なんか...マナブが死ぬときにも駆けつけなかったくせに...」
「そのときはそれより大事なことをしてたんですよ。【響皐月】さん。」
彼の後ろからひょこっと顔をだしたのは華さん。
もしかして、これを知って華さんは待ち合わせしようとか言ってたんじゃ...?
-
:10/06/22 07:37
:PC
:vp.J4.Ao
#347 [亜夢pc]
-
「あんたって酷いよね。 あの日...兄貴が何しにバイクを走らせたか、黙ってるんだろう?で、華さんと付き合った。 マナブが聞いたらどう思う?」
そうだ。
言わないほうがいいと勝手に判断した秘密。
それはマナブが15のとき亡くなった日...バイク運転してたのは、華に告白しにいくためだった。
でも俺は、それを華に言ってしまうと酷く傷つく、と思って心の箱のなかに閉まっておいたのだ。
-
:10/06/22 07:39
:PC
:vp.J4.Ao
#348 [亜夢pc]
-
「俺の口からはマナブの想いを伝えることができない。 だからこそ、今のいままで黙ってきた...」
「違うだろ。 あんたは華さんのことを独り占めしたかったんだ。」
「マナブを殺してまで俺は華を自分のものにしたかったって意味か?頭大丈夫かお前!」
死ぬ間際にも来なかった弟。
俺の幸せをぶち怖そうと必死な男。
-
:10/06/22 07:40
:PC
:vp.J4.Ao
#349 [亜夢pc]
-
「俺は絶対に許さない。 兄貴が死んで華さんと付き合ったのに事故にあって目が覚めたからってさよなら、するような男...俺は絶対に許さない!」
***
あたしには状況がよく把握できなかった。
過去の話は聞いたけど、誰が誰なんてわからない。
ただ、分かることは、マナブさんの弟が龍紀を恨んでいること、それから華さんはあたしが憎くてたまらないこと。
-
:10/06/22 07:42
:PC
:vp.J4.Ao
#350 [亜夢]
:10/06/22 07:45
:F02B
:y0EXPsFg
#351 [亜夢]
:10/06/22 07:46
:F02B
:y0EXPsFg
#352 [亜夢pc]
-
お墓参りを終えた後の龍紀は黙り込んだまま、ただ、煙草を不味そうに吸ってた。
あたしは状況の整理が出来ないままだ。 正直よく分からない。 理解出来ない。
かといって今龍紀に質問しても無駄なことくらいわかってた。
「ごめんな、亜夢。」
弱々しく溢れた龍紀の声。
大丈夫だよ、と言ってあたしは龍紀の手をぎゅうっと握りしめる。
-
:10/06/23 07:46
:PC
:gsVfLdww
#353 [亜夢pc]
-
龍紀は華さんよりあたしを選んだ。 それは華さんが目覚めてても必然的にそうなるはずだった。 形が違うとも、華さんが目をさましたのはあたし達が結ばれてしまったあと。
仕方ない、のかもしれない。
華さんにはフェアではないのかもしれない。
けれどもう「今」がある限り、あたし達のこの形は邪魔がないかぎり崩れることがない。
なんででも龍紀は動揺したの?
マナブさんの双子の弟さんの言われたことについて心配してるの?
-
:10/06/23 07:48
:PC
:gsVfLdww
#354 [亜夢pc]
-
「ほんと、ごめん。」
龍紀はその日はそれしか言わなかった。
帰り道の車の中も耳にはいるのは音楽だけ。 でもあたしも無理強いして話を聞きたくなかったし、龍紀の頭の中で整頓が終わったらすべてを話してもらおうとおもってた。
龍紀の実家に帰省して、こちらに戻ってきて一週間。
龍紀は出勤していない。
鳴りっぱなしの電話をも取らないようにしている。 あたしは何度も質問してもボーとした顔であたしを見つめる。
-
:10/06/23 07:50
:PC
:gsVfLdww
#355 [亜夢pc]
-
朝日は【響皐月】の同期で
親友マナブの双子の弟。
そのかわり全く似ていない。
マナブの弟、忍(朝日)は
華のことがずうっと好きだった。
でも
マナブが好きなことを知って身をひいたというか、応援するようになった。
マナブが亡くなってーー
その親友である龍紀が華と付き合いだしたときいたときは発狂しそうだった。
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:10/06/23 07:52
:PC
:gsVfLdww
#356 [亜夢]
-
マナブが亡くなって一回忌のときに弟、忍はそれを知った。
喪服に身を包んだ顔が整ったふたりが並んで座ってる。 時折泣き出す華を抱き寄せる龍紀。
許せなかった…
忍は確信していた、龍紀はマナブが華を好きだったこと知っていたと。
憎しみしかあふれてこなかった。
マナブが生きていればこんなことにはならなかったんだろう…
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:10/06/27 14:56
:F02B
:.KPl7Ugs
#357 [亜夢]
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生前前から言ってた。
「―華はやっぱり龍紀が好きなんだよ。 俺が好きだから好きな女の見てる…目で追いかけてるものがいやってくらいわかる。」
だからつき合えよ、遠慮せずに…それがマナブがいつも龍紀に言ってたことば。
すっきりしないからと言ってマナブは華に告白しにいく途中だった―…
でも今想えば華が助かったのは奇跡だ。 マナブが守ってくれたのかもしれない……
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:10/06/27 14:59
:F02B
:.KPl7Ugs
#358 [亜夢]
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―――
出勤しなくなった龍紀は見る度になんだか痩せた。 もともと筋肉がいい具合についてて、ガタイはいいほうだったのに、長身痩せ型になってしまっていた。
「なあ、亜夢…」
たまに口を開いたかとおもうと首を横に振って"なんでもない"とだけ言う。
あたしもどうしていいかわからない。
「龍紀…あたし実家かえるね?」
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:10/06/27 15:04
:F02B
:.KPl7Ugs
#359 [亜夢]
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ご無沙汰の更新です

お待ちしてくれてた方、
申し訳ありませんでした。
これからまた
コツコツ出来る限り
更新していきます


よろしくお願いいたします

亜夢

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:10/07/14 05:35
:F02B
:u5edCtoU
#360 [亜夢]
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>>002-358***
実家に帰ると言ったことは、あたしにとって精一杯の優しさだった。
あたしの存在=龍紀の彼女であることが思考回路の妨げになるなら、離れてあげればいいと思えた。
仕事に対する意欲や自分へのプライドの高さがトップレベルの彼が、なにも考えれないくらい落ち込んでるんだ。
―…過去を知らない部外者は、そっとしてあげるのがいい、と勝手に判断した。
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:10/07/14 05:40
:F02B
:u5edCtoU
#361 [亜夢]
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家からでるときにおでこに軽くキスを残してあたしは部屋を後にした。
ひさびさに実家に帰ってきた。
「…ただいまあ。」
連絡もせず帰宅したのにも関わらず、家族みんな喜んで突然おかえりパーティみたいになってた。
喧嘩したの?とかさんざん聞かれたけど、恋しくなったから少しこっちにいる、と理由をつけておいた。
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:10/07/14 05:42
:F02B
:u5edCtoU
#362 [亜夢]
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「あ、あたしコンビニ行ってくる〜」
夜中にふと愛読してる雑誌が先日発売したことを思い出して近所のコンビニに走った。
コンビニの前でたむろしてる人たちにどこか見覚えがあった。
と同時に「あっ!!!!」と声がそろう。
「えっ…亜夢だよな?」
「わっ!!!! 夏川くん?」
高校の同級生の夏川力(りき)とその友達だった。
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:10/07/14 05:49
:F02B
:u5edCtoU
#363 [亜夢]
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「何年振りだろっ…」
コンビニの外で思い出話をたくさんして、今××くんはだれだれと付き合ってるとか誰かが結婚したとか、いろんな話をした。
「俺も亜夢に振られたしなあ〜〜」笑
夏川くんが頭をぽりぽりかきながら言う。
あたしの記憶が確かなら体育祭の日だ。 係で同じになった夏川くんからの突然の告白…あたしはもちろん受けることはできなかった。
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:10/07/14 05:52
:F02B
:u5edCtoU
#364 [亜夢]
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「俺は仲良くしてくれてたから完全に舞い上がってたなあ。 実は俺に気あるんじゃないかって。」
バカだろ、と笑いながら夏川くんは言った。
あたしは首を横に振る。
確かにクラスも3年間一緒で、隣の席になる率も高かったし、親しい男の子の友達部類にははいってた。
あたしはあのころ恋なんてものの意味さえも知らなかった。
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:10/07/14 06:02
:F02B
:u5edCtoU
#365 [亜夢]
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「今彼氏は?」
すぐさま返事をしようとするとメールが受信した。
送信者:龍紀
《別れよう。》
今彼氏はの答えは、現在別れ話をしてる感じと答えたほうがいいの?
「ちょっとごめんっ……」
あたしは少し離れてから電話をかけた。 もちろん龍紀にだ。
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:10/07/14 06:05
:F02B
:u5edCtoU
#366 [亜夢]
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「もしもし龍紀?」
「…うん。」
かすれて聞こえにくい声。 この間まであたしの誕生日やマナブさんに相談するといってた元気のある雰囲気はもちろんない。
「…どういうこと?」
「やっぱマナブは裏切ることができない…別れて欲しい…」
華さんはあたしと別れてもらいたい。 当然、あたしが現れなかったら目を覚ました華さんと結ばれるのは必然的に龍紀だもの。
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:10/07/14 06:25
:F02B
:u5edCtoU
#367 [亜夢]
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でも思った。
じゃあ、あたしはあのとき手を取る人間を間違ったということ?
「…で責任とるために華さんと付き合うの?」
「それもしない…俺は天涯孤独だよ。」
龍紀のマイナス面をこれほどみれる機会なんてない。
「あたしを幸せにしないの?」
……と沈黙が続く。
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:10/07/14 06:28
:F02B
:u5edCtoU
#368 [亜夢]
:10/07/14 06:30
:F02B
:u5edCtoU
#369 [亜夢]
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あたしはその後なにを話したかなんて覚えない。 ごめん、としか言わない龍紀に泣きじゃくってあたしはもういい、と確か電話を切ったはず…
内容なんて覚えない…
たぶんただのこじつけ。
「亜夢…」
後ろから夏川くんが手を肩に置いた。
今あたし多分ひどい顔してる。 あたしは両手で顔を押さえた。 みられたくない。 やだ、やだ、やだ…
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:10/07/14 22:33
:F02B
:u5edCtoU
#370 [亜夢]
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「亜夢は笑顔のほうが素敵だよ?」
夏川くんは昔と変わらない綺麗な笑顔であたしに言った。 急に涙が止まる。 満面の笑みがあたしのなかであふれてくる。
「ふ…ふふっ……」
あたしはなぜか笑えた。
「ちょ…/// カッコつけて言ったんだから笑うなよ〜!!!!」
夏川くんがアタフタしながら言った。
その挙動不審な彼にまた笑えてきてあたしは涙を拭きながら笑い続けた。
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:10/07/14 22:37
:F02B
:u5edCtoU
#371 [亜夢]
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夏川くんの友達は気づけば帰ってた。 ふたりでコンビニの前でだらだらしながらしょうもないことを話した。
夏川くんは電話の内容とか、あたしが泣いてた理由とか聞かなかった。
安心する―…この空気…
「はあ、笑い疲れてきちゃったあ…」
あたしは貸してもらったうちわでパタパタさせながら言った。 涙はとっくの前に蒸発して消えてってた。
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:10/07/14 22:41
:F02B
:u5edCtoU
#372 [亜夢]
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「純江いく?」
懐かしい名前。 純江(すみえ)とはあたしたちの地元にある海の場所を言う。
「…行きたい…!!!!」
夏川くんはわかった、と言うと止めてあったバイクにまたがってエンジンをかけた。
「しっかり掴まって。」
後ろからぎゅっと夏川くんの腰から腹に手を回すと何故だか涙がでた。
人の温もりは時に悲しくもさせる……
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:10/07/15 03:35
:F02B
:rTWU1lSc
#373 [亜夢]
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龍紀が来ていたあの席。
龍紀がカラカラと指で氷をまわす夏っぽい音。
龍紀がくるくると鍵を回す仕草。
龍紀が寝ぼけてあたしを離してくれない時。
龍紀が嬉しそうにあたしの髪の毛をなでる顔。
龍紀と飲んだあのシャンパンの味。
龍紀としたこの恋……
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:10/07/15 03:38
:F02B
:rTWU1lSc
#374 [亜夢]
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バイクにのって数十分あたしは思い出のなかを駆けめぐった。 楽しかったことや悲しかったこと…
エンジンの音が消えたときには、あたしの涙は消え去っていた。
「懐かしの純江だぞ〜…て俺はよく来るけどなっ…」
ヘルメットをはずして片手に持つとあたしたちは波際まで足を進める。
ふわふわの白い砂。
月の光でほんのりきらきらしている深い色の海。
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:10/07/15 03:41
:F02B
:rTWU1lSc
#375 [亜夢]
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ふたりでお尻をつけて、じい―っと海を眺めた。
静かにはいってくる波の音と、時折聞こえるチャポンという音。
サアーサアー…
「……はあ。」
ふたりで同時にため息をついたので、夏川くんもあたしも目を丸くして向き合った。
「すごいね…いまのタイミング。」
「だね。」
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:10/07/15 03:43
:F02B
:rTWU1lSc
#376 [亜夢]
-
「実はさ〜…俺3日前に彼女に振られちゃったんだよね〜…」
苦笑いしながら夏川くんが言った。
それから彼は彼と彼女の恋愛話を淡々としてくれた。
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:10/07/15 03:45
:F02B
:rTWU1lSc
#377 [亜夢]
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***
「り〜きっ!!!!」
可愛くてキラキラした笑顔で俺の名前を呼ぶのは佳織(かおり)。
出会いは親友の開いた飲み会でたまたま居た子だ。
すぐ仲良くなり何度か遊んでるうちに俺たちは彼氏と彼女になった。
わがままの彼女の言うことをきいてあげるのは苦痛ではなかった。 優しいと言われるのがいいことだとおもった。
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:10/07/15 03:49
:F02B
:rTWU1lSc
#378 [亜夢]
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居酒屋でアルバイトしてた佳織はいつのまにか水商売に興味を持つようになった。
それからすぐにキャバクラに勤務するようになり、数ヶ月後には、十分なお給料をもらって新しい鞄や靴、洋服に囲まれてた。
「…あ、りき〜…あたし今からお客さんとご飯いかなきゃ!!! またね〜♪」
一緒にいてもそんなことが多くなった。
俺は迎えにきてと言われたら店まで迎えにいった。 泊まっていっても起きたら佳織はいないことが多かった。
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:10/07/15 03:52
:F02B
:rTWU1lSc
#379 [亜夢]
-
ある日のことだ。
俺の親友の彼女は佳織の仲良しの友達だった。 ふたりで同時に水商売をはじめたため、愚痴や相談はお互いちょこちょこしてた。
「お前ってさあ〜…心広いよなあ…」
え?なんでと聞き返すとため息を深くついてから奴は言った。
「だってホスト通ってるんだぜ?俺んとこの女と佳織ちゃん…知ってるんだろ?俺まじ言われたときひいた。 彼氏いるのに行くかよ……」
ホストってなんだ?
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:10/07/15 03:55
:F02B
:rTWU1lSc
#380 [亜夢]
-
ある日疑問に思った俺は佳織が風呂にはいってるときに携帯をみてしまった。
携帯をみていいことなんてない…わかってた。 でもどうしようもないくらいみたくなった。
電話帳のグループに【ホスト】という項目があった。
ずらっと並んだ源氏名。
何人いたかなんて覚えていない…
プロフには顔写真のせているひとやメモにいろいろかいてるひともいた。
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:10/07/15 03:59
:F02B
:rTWU1lSc
#381 [亜夢]
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メール…一番みてはいけないもの。 俺はその掟を破ってしまった。

受信メールの下に何個か振り分けでメールボックスがあった。
一番上には、


りきにゃん

…それをみて安心したのもつかの間、俺の下には


さあにゃん

と合った。
女かもしれない。
内容は男はふつうだったが、佳織が可愛いように思われたい感があふれ出てた。
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:10/07/15 04:02
:F02B
:rTWU1lSc
#382 [亜夢]
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翌日にホストに行ってることを説教したら「もういいっ、別れよ!!!!」と、あっけなく2年の恋が終了したんだ。
***
「イケメンに負けるなら納得かも……」
ははっと笑う夏川くん。 彼自身イケメンで優しく気配りもできるいい子なのに。
「…わかんない…あたしの彼氏、ホストだったけど、悪いひとじゃなかったよ。 あたし最初は軽蔑してたけど、そうじゃないひともいるから……」
狂ってしまう本人責任だよ。
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:10/07/15 04:05
:F02B
:rTWU1lSc
#383 [亜夢]
-
あたしと龍紀との間であった出来事なんて隅から隅まで話せる自信がなかった。
ちょっとの期間でも事件がおおすぎて…
「あ〜でも海みてると、どうでもいいやっ!!! てなる…」
あたしはそのまま背中を倒して綺麗にひかる星たちを眺めた。
月があるからこそ輝ける星……
あたしには月の存在が必要なんだ。
あたしみたいな不器用なひとに大丈夫な道を教えてくれる月の光が。
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:10/07/15 04:09
:F02B
:rTWU1lSc
#384 [亜夢]
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「だな…」
アホらしいよな!!!と元気に声をかけてくれる夏川くんにあたしは同じように元気よく返事をした。
「いい恋愛ってどんなだろうね…悩まない恋なんてあるのかな?」
「どーだろ…俺はいつも悲しく終わる恋だなあ。」
なんでだろ?と首を傾げる夏川くんが可愛くてあたしはケラケラと笑った。
「楽しい恋がしたいねっ!!!!」
ほんとに!!!!
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:10/07/15 04:12
:F02B
:rTWU1lSc
#385 [亜夢]
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「今度飲み会しようよ!!!! そんときに俺男メンツあわせるし、軽い合コンのりで★」
「いいねっ!!!! 来週の土曜は?」
いいじゃん、と言ってあたしは夏川くんと連絡先を交換した。
気づいたらもうすぐ日の出がみれる時間にまでなってしまっていた。
海がどんどん赤とオレンジを綺麗に混ぜ合わせた色になっていく―…
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:10/07/15 04:15
:F02B
:rTWU1lSc
#386 [亜夢]
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よし、と言うと両手を広げて夏川くんは腕をのばした。
「おしっ…電話帳からさよならしよ!!!!」
携帯をすっと出すとあたしに【佳織】ていう電話帳の1ページをひらいて消した。
《消去しました。》
「俺は新しい恋をするっ!!!! 過去にしがみついたらろくなことにならない〜でしょ?」
過去にさよなら…か。
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:10/07/15 04:17
:F02B
:rTWU1lSc
#387 [亜夢]
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夏川くんはさわやかすぎるほど笑顔であたしにそう言って笑った。
「正直…2年間なんでこんな女が好きだったんだろ?って思った。 後悔だってもちろんしたよ…」
けど、と続けた。
「俺もいいよ、別れよってすんなり言ったときに思ったんだ。 意地なのかわかんないけれど… そこまで好きじゃなかったんじゃないかって…」
龍紀もそこまであたしを必要としてなかったの―?
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:10/07/19 23:13
:F02B
:7ReKU.y2
#388 [亜夢]
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と、夏川くんの左手が明るく光った。
「知らない番号から…―て言いたいとこだけど、佳織だ…」
先ほど話にでてた彼女だった。
「…もしもし。」
少しためらった顔をしながら夏川くんは電話をとった。
うん、うん…と話を真剣に聞いてる夏川くんが突然立ち上がった。
「…相手と連絡がとれないから戻るってこと?」
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:10/07/19 23:16
:F02B
:7ReKU.y2
#389 [亜夢]
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「俺はもう戻る気ないよ…佳織のメモリーも消したからかけてこないで欲しい。」
いつも笑顔で爽やかな彼が見せた冷たい笑顔にあたしはヒヤッとするものを感じた。
嫌なことは顔にでるんだよ、やっぱり……
「じゃあ…」
夏川くんは一方的に電話を切ったように思えた。 パチッといって折りたたみを閉じたのに、またイルミネーションが光る。
「おかしいよね…自分のものじゃなくなった途端戻りたいなんて……」
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:10/07/19 23:19
:F02B
:7ReKU.y2
#390 [亜夢]
夏川くんは少し疲れたように笑った。
「夏川くん…佳織さんは大事なものに気づけたんじゃない? ただ寂しさを埋めるなら…誰だって埋めてくれるはずじゃない。」
「そうかもしれない…でもさ、大事なものって失ってから気づいても遅いってことくらい、誰だってわかってるはずだろ?」
確かにそうかもしれない。
「でも学べないから…人間て失敗してきづくんじゃないの?」
そうだよ…龍紀だって今一生懸命かんがえてるんだよ。
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:10/07/19 23:24
:F02B
:7ReKU.y2
#391 [亜夢]
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たぶん今すぐじゃない。 けれどいつか気づくはず。 あたしを必要としてくれること信じてる。
だから―…あたしは貴方を待ちません。
沢山恋愛をして、貴方以上のひとを見つけたいと思っているから…
それでも貴方が一番なら…あたしは貴方にもう一度声をかけたいと思っています。
それがどんな形でも。
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:10/07/19 23:26
:F02B
:7ReKU.y2
#392 [亜夢]
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―――
「おはよ〜夢ちゃんっ!!!」
あれから3年という月日が経った。 あたしはセットサロンで大学を卒業するまで働いてついこの間辞めた。
「今日も出勤して真面目だね、夢ちゃんは〜」
そして今…
あたしは水商売の女になった。
-
:10/07/20 02:04
:F02B
:xPuQ7aqs
#393 [亜夢]
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龍紀に別れを切り出されて以来、あたしはいろんな人沢山の人に出会った。
大学では教授や先輩、同級生…サークルの友達など。
地元では高校や中学の同級生や先輩。 またそのつながりが枝となって分かれていった。
また、セットサロンではスタッフをはじめ、水商売をしているお客さんや、一般の人でも美意識が高いお客さんなど…
いろんな人に会った。
なぜ水商売をしたか?…龍紀がどんな仕事をしているか興味があったからだ。
-
:10/07/20 02:07
:F02B
:xPuQ7aqs
#394 [亜夢]
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裕也とアリサには大反対された。 向いてないだとか…不器用たからやめとけだとか…でも、あたしは向いてるらしい。
お客さんは呼ばずともくる。
それから気づいたのはキャバクラで働く女の子の大半は見よう見まねだってこと。
ある程度の礼儀作法しか知らない子だって多々みえた。 ただ、可愛くて若ければお客さんがつく…てこともあった。
でもあたしはほかの水商売が長いお姉さんたちには負けたくなかった。 だから、お客さんに頼んでランクの高いクラブなどにつれてってもらった。
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:10/07/20 02:10
:F02B
:xPuQ7aqs
#395 [亜夢]
-
龍紀に負けたくない―…
あたしは働いて半年で店では一番売り上げをあげるキャストになっていた。
源氏名は《夢》。
自分のなまえからとってつけた。
あたしは【響皐月】に負けたくなかった。
あたしを幸せにするって言ったくせにあたしを手放した初恋の相手に、どうしてもいわせたかった。
「ごめん、俺が悪かった…」てね。
-
:10/07/20 02:13
:F02B
:xPuQ7aqs
#396 [亜夢]
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「夢ってホスクラとかいかないの〜?」
同期の《まゆら》が営業終了後にそう声をかけてきた。
「未だに行ったことないなあ。」
まゆらはあたしの元彼がホストとは知っていたけれど中身はちゃんと知らなかったので、ホスクラに行ったことないあたしにビックリしてた。
「営業されてもなかったんだあ…いるんだね、やっぱそうゆう子。 元彼はどこのひとなの?」
あたしは首を傾げてごまかした。
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:10/07/20 02:16
:F02B
:xPuQ7aqs
#397 [亜夢]
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知ってる…彼があたしに別れを告げてから数週間であの店に戻ってきたことをあたしは知ってる。
いきいきした顔で雑誌にのっていた。
病んでるときの龍紀を知ってたから、あたしは安心した。 いまだって彼のことは心配する。
どんなヒドいことされたって…あたしにとって龍紀はずっと大事なひと…。
「あたし、行きたいとこあるから付き合ってよ!!!!」
そう言ってまゆらはアフターがない日はたいがいホスクラに誘ってきた。
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:10/07/20 02:19
:F02B
:xPuQ7aqs
#398 [亜夢]
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「酔っぱらったあ〜…♪」
まゆらのおごりで2件ほどホストに行ってヘロヘロになっている帰り道だった。
「すいません〜初回2000円なんですけど…うち新規店なんですがお願いしますっ!!!!」
若い男の子がふたり頭をさげてきた。
「いいよっ♪ 夢ちゃん奢るし今日は朝までのもっ♪」
その男の子たちに連れられて少し小さめながらも白で装飾されている店にはいった。
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:10/07/20 02:22
:F02B
:xPuQ7aqs
#399 [亜夢]
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「いらっしゃいませ〜…」
あたしはグラサンをかけたまま席についておしぼりを手にとる。 渡された男メニューというものに手をかける…
【響皐月】
でかでかとパネル写真と彼の源氏名がのっていた。
まさか…
「まゆらちゃん…ごめん、あたし用事あったんだ!!!! 帰るねっ―…」
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:10/07/20 02:24
:F02B
:xPuQ7aqs
#400 [亜夢]
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マイペースなまゆらちゃんは分かった★と言って両手を振ってきた。
あたしは急いで荷物をもってでようとすると自動ドアが出ようとする瞬間にひらく。
「あっ―…」
あたしは思わず開きそうになった口を押さえてエレベーターのほうに駆け足で行く。
「待って!!!!!」
捕まれる右手。
「亜夢…?」
久しぶりに聞くその声。
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:10/07/20 02:27
:F02B
:xPuQ7aqs
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