*- エロチュウ -*
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#2 [亜夢]
:10/05/17 05:18
:F02B
:Za81RYNg
#3 [亜夢]
-
「だ…だめだよ…」
アタシの働いてるBARに来る常連客には厄介なやつがいる。
同じビルの3階でホストをしてる“皐月”と名乗る男だ。
「―店長いいんですか?…」
またどうせトイレで女の子を“アッチ”で口説いてる。
「かなりお金使ってくれてるから、きつく言えないんだよなあ…」
-
:10/05/17 05:21
:F02B
:Za81RYNg
#4 [亜夢]
-
うちの店はカナリ小さな個人店だ。 だから働きやすくて数ヶ月、アタシもここにいるんだけれど―…
さすがにお客さんや彼女ていう役割についた何人もの女とトイレで“ナニ”をされるのは不愉快だ。
「1回言わないと、分からないんですよ!!!」
アタシはトイレに向かう。
「響サン!!!」
アタシは皐月サンのことを名字でよんでいる。
-
:10/05/17 05:25
:F02B
:Za81RYNg
#5 [亜夢]
-
「なあに?」
すぐさま、彼はドアをあけてニッコリ微笑む。
「あむむも混ざりたいの?」
響皐月はアタシのことを馬鹿にいて“あむむ”とか呼んでいる。
「なにいって―…」///
アタシは思いっきりドアを閉め直す。
ああ、また言おうとおもってたのにいえなかった。
「諦めるしかないですよ。」
苦笑する猫みたいな顔の店長。
-
:10/05/17 05:28
:F02B
:Za81RYNg
#6 [亜夢]
-
響皐月(ヒビキサツキ)―…
本人曰く21歳。
(アタシのふたつ上…)
身長は高くて足が長い。
どうみても細い体。
顔は、雑誌にのってるモデルさん並に小さいし、
3階にあるホストクラブでは常にナンバー1だとか!!!
月に稼いでる額がウン万円―…
ただ異常なくらいの女好きなことはみてとれる。
-
:10/05/17 05:32
:F02B
:Za81RYNg
#7 [亜夢]
-
「ねえ、あむむ〜ん☆」
俺を癒して♪と言いながらスコッチをロックで飲む渋い男だったりもする。
「はい…て呼び方なおしてくださいよ!!!」
「うん、なおすよ☆癒してくれたら。」
「いったい何したら癒されるんですか?」
う〜んとね、とイケメンは少し天井のへんをみながら、人差し指で氷をカラカラと回す。
「チュウしてくれたら絶対癒されるんだけどなあ〜」
-
:10/05/17 05:36
:F02B
:Za81RYNg
#8 [亜夢]
-
「お客さんに色かける際、してあげてください―…」
ナンバーにはいってるとは言え、色恋で落とすなんて最低。 だけど響サンがどんな営業してるかなんかどうでもいい。
「あむむ、知ってた?俺ね、ポリシーがあって好きじゃない子とはキスしないんだよ。」
「ほかはするのに?」
「そう!!!!」^^
笑顔で言う響サンに首を傾げながらもへえ、と言うアタシ。
-
:10/05/17 05:38
:F02B
:Za81RYNg
#9 [亜夢]
-
「だから、キスしていい?」
ドキッ―…
流れからして“俺はお前のこと好きだからキスしていい?”って聞くんだよオーラ満載だからね。
水商売のひとってこわいこわい。
それに比べてあのひとは―…
チリンチリン♪
「中谷さん、いらっしゃい。」
-
:10/05/17 05:41
:F02B
:Za81RYNg
#10 [亜夢]
-
「マスター今晩は。 おっ亜夢チャン、久しぶりだね。」
いつものカウンターの端に座って、赤ワインを飲む中谷サンに、アタシは胸きゅんなのだ。
肌は少し焼けてて、中肉中背でひげがいい感じ。 食通だし、いろんな話をしってる28歳の彼―…
「なに、あむむって俺よりあっちのが好みなの?」
「ええ!!!!」
勿論ですとも、と返事したかったけど、あえてやめといた。
-
:10/05/17 05:44
:F02B
:Za81RYNg
#11 [亜夢]
-
「ひっでえ〜…俺みたいなイケメンを目の前にして…ってコラ!!! 人の話聞けっ!!!」
アタシが熱い眼差しで中谷サンをみてると響皐月がわがままばっかり言って、相手してオーラをだしてくる。
子犬かっ!!!!
「わかりました〜どうしたんですかあ〜…」
「君、僕が真剣に君と付き合いたいっていったらどうする?」
「へ?」
-
:10/05/17 05:47
:F02B
:Za81RYNg
#12 [亜夢]
-
「もし俺が付き合ってって、あむむに告白したらどうする?
…
@付き合う
A無理っていう
Bちょっと意識する
C実はその台詞待ってたのよ…
さあどれだ!!!!」
「Aっすね。」
質問の3秒以内に答えるとまた子犬みたいにくうん、といって顔をカウンターにひっつける。
-
:10/05/17 05:50
:F02B
:Za81RYNg
#13 [亜夢]
-
「むしろなんですか…そのC番とかどう考えてもおかしいでしょ!!!」
「確かに。 俺ってそんなにお笑いのセンスあったっけ…イヒヒ。」
ひとりで響皐月が飲みにくるときは、客と来るときと全く違う雰囲気だ。
仕事の響サンはきりっとしてて男らしくて、いまみたいに甘えただったり面白いキャラだったりがなかなかない。
-
:10/05/17 05:53
:F02B
:Za81RYNg
#14 [亜夢]
-
ある日のことだ。
アタシが自転車をとめてBAR CIELに向かってると…
「よっ♪」
後ろから声をかけられる。
「この子が皐月サンのお気に入りのバーの子ですか?」
後輩ホストらしき子あわせて全部で10人くらい。
「いまからCIEL行くとこなんだよね♪」
-
:10/05/17 05:57
:F02B
:Za81RYNg
#15 [亜夢]
-
と、ダーツもありカラオケのある店を後輩ホスト君達も気にいった様子。
「しかもマスターのご飯まじうまあい!!!」
ココにはBAR CIEL特製の一品料理なんかもおいてある。
日によってマスターの腕と食材でかわるけれど。
マスターは愛嬌はいいし、サービス精神あるし、料理もうまけりゃ、カクテルつくらせれば最強だったり。
おまけにダーツはカウントアップで700をゆうにこえたりもする。
-
:10/05/17 06:00
:F02B
:Za81RYNg
#16 [亜夢]
-
「今日は俺のおごりだから、じゃんじゃん飲んで遊べよ。」
響皐月はそういうと、いつも通り一差し指でロックアイスをカラカラとグラスの中で遊ぶ。
「…皐月君、今日は何を悩んでるの?」
マスターと響サンは意外と色んな話をしてるみたい。
「わかった。 また《あの子》のこと?」
その質問にも答えない響皐月。
-
:10/05/17 06:03
:F02B
:Za81RYNg
#17 [亜夢]
-
[あの子って誰だろ…]
思わず気になりながらもアタシはほかのホスト君に頼まれて、ブルドックを作る。
[まさか響皐月、ちゃんと本命いるんじゃないの―?]
フフン、意外と純情なんだなあとおもいながら出来上がったブルドックをホスト君に渡す。
「お姉さん彼氏いるの?」
「いませんよ―…」
そんな軽いやりとりをしてる。
-
:10/05/17 06:06
:F02B
:Za81RYNg
#18 [亜夢]
-
カランカラン♪
「わっ―今日は混んでるね〜…」
中谷サンと同僚のひとが店にはいってきた。
アタシはすぐにおしぼりを渡して、いらっしゃいませ、と声をかける。
「亜夢チャンはいつみても元気でかわいいね。 癒される。」
ニコリと微笑む中谷サン。
アタシはその笑顔だけで元気になれます〜!!!
と…
-
:10/05/17 06:09
:F02B
:Za81RYNg
#19 [亜夢]
-
「お兄さんの左手の薬指って―…」
「あ、え…」
突然ロックグラスを持ったまま、響皐月が中谷サンに声をかける。 左手の薬指―…?
「中谷サン、新婚だもんなあ〜」
ほろ酔いの同僚がそう言う。
いつも中谷サンは家族の話はしないし、アタシには『一人は寂しいよ』と愚痴ってたのに、うそだったんだ―…
ううん、アタシが勝手に独身ておもってただけだ―…
-
:10/05/17 06:13
:F02B
:Za81RYNg
#20 [亜夢]
-
トイレで少し深呼吸する。
馬鹿だ、既婚者に恋してしまうところだった。
ハアと息をはいた瞬間に溜まってたもの一気に出ていったからか、涙もぶわあってあふれ出した。
「亜夢のばかあ〜…」
コンコン。
「いまでます―…」
アタシは涙をふいて、
「ごめんなさ―…」
-
:10/05/17 06:15
:F02B
:Za81RYNg
#21 [亜夢]
-
「わっ!!!」
出ようとしたのに響皐月にトイレにまた詰め込まれた。
「さっきの客帰ったぞ。 どうせ泣いてたんだろ…?」
「なっ、泣いてないもん…」
「強がるなよ。 目元みてみろよ。」
アイラインが崩れてこすった後が出来てる。
「だっ…あた…エーン…」
-
:10/05/17 06:18
:F02B
:Za81RYNg
#22 [亜夢]
-
「ほら。」
ふわっと、自然に響皐月がアタシを胸の中に包み込む。
「ちょっ…」
「このほうが泣きやすいだろ。」
確かにそうだ。
あったかくて、ほっとするからクシャクシャになるまで泣いた。
「大丈夫になった?」
眉頭を落としながら聞く響皐月…心配してくれてんだ。
-
:10/05/17 06:20
:F02B
:Za81RYNg
#23 [亜夢]
-
「お礼はチュウでいいよ。」
「冗談はやめてくださいっ…そんなファーストキスは簡単に奪わ―…」
あれ?
響皐月の顔がすごくちかくにある。 ながいまつげ。 お人形サンみたい…じゃなくて!!!!
く、く、唇が…!!!
「ファーストキスがどうしたって?」
「―――」///
アタシのファーストキスさよなら…
-
:10/05/17 06:23
:F02B
:Za81RYNg
#24 [亜夢]
-
「憂鬱だ…」
大学の授業中にアタシは、ぼそっと呟く。
「アンタ今日はさっきから上の空じゃん〜〜どしたの?」
右から高校からの親友アリサ。
「アリサ、たぶんアレだよ。 愛しの中谷ッチに、嫁がいた〜〜とかじゃにゃい?」
ちゃらけて左から幼なじみの裕也がそういった。
「…裕也ってまじKYだわ。」
アタシはそういって深くため息をついた。 冗談でいったことがリアル…笑いとれないよね。(苦笑)
-
:10/05/18 03:08
:F02B
:2tMYvgRI
#25 [亜夢]
-
裕也は謝らなかったけど、(むしろ謝らなくていいんだけど…)アタシの大好きな苺みるくとメロンパンを買ってそっと置いてくれた。
「でもさ!!! 初体験を既婚者に盗られなくてよかったじゃん!!!」
グサリ―…
「え…?アンタその顔…捧げちゃったとかやめてよ!!!?」
焦り出すアリサ。
既婚者にはあげなかったけど…初キスは、尻軽で有名な女たらしのナンバー1ホストに持ってかれました…
なんて口が裂けてもいいたくなかった。
-
:10/05/18 03:12
:F02B
:2tMYvgRI
#26 [亜夢]
-
しかも!!!
その初キス奪われ事件で、キスの後からずっと胸がぎゅうってなってたなんて、死んでも言えない。
相手はあの響皐月だ。
「絶対むりむりむり!!!」
「…なんか亜夢、すごい百面相だけど…思い詰めてる?心配なんだけど。」
アタシ、だいぶテンションがおかしいことになっている。
今日はCIEL休みだから、裕也とアリサと放課後ゆっくりデートしちゃうんだ!!!
わすれよっと。
-
:10/05/18 03:15
:F02B
:2tMYvgRI
#27 [亜夢]
-
でも神様って大体意地悪だったりする…
「俺ちょっとTSUTAYA寄ってくる!!! スタバいるでしょ?ちょっくら待ってて〜♪」
上機嫌に裕也がCDをあさりにいく。 このパターンはよくある。 裕也がひとりでCDとデートしてるときは、アリサとアタシで色んな他愛もない会話をしながらコーヒーを飲む。
「あれ…今日はカプチーノじゃないんだ…」
ふうん、といいながらアリサは怪しいぞ光線をおくってくる。
しまった―…アタシは悩み事があるときは無意識にチャイとかに浮気してしまうのをアリサはよく知ってる。
-
:10/05/18 03:22
:F02B
:2tMYvgRI
#28 [亜夢]
-
週末、中谷サンが既婚者だと分かったこと…泣いてしまったら不意打ちに響皐月にキスされたこと…
気づいたら全部アリサにぶちまけてた。
「はあ…」
「ご愁傷様でした。」
アリサはフラペチーノを飲み干してそう言った。 アタシも同じ状況なら同じこといっただろう。
「そのホストさんは…亜夢にとってどうなわけ?」
どうって―…
-
:10/05/18 03:26
:F02B
:2tMYvgRI
#29 [亜夢]
-
う―ん…
「どうって言われても分からないかなあ〜…」
「じゃあ嫌いとか興味がないってことではないんでしょ? 意識してるなら、なおさらだけど、少し知ってみてもいい相手なんじゃない?」
そうなのかあ…アタシは、甘ったるいチャイを飲んで少し、うってなってしまった。 やっぱりカプチーノがいいや…。
と、
「お姉さん♪なにやってるの?」
-
:10/05/18 03:32
:F02B
:2tMYvgRI
#30 [亜夢]
-
素無視しようとしたら回り込んできて、ねえねえ〜…と話しかける。 夕方からナンパとかお断りだっつうの!!!
「あれ?CIELのお姉さんじゃん!!! みたことあると思ったあ〜♪」
この子は響皐月のとこの従業員だ。 確か彼氏いる?とか聞いてきたブルドック飲む男の子。
普段物覚えが悪いアタシも店のお客さんの顔と飲み物は覚えられる。
「皐月サンもすぐそこにいるんすよ〜♪」
て…呼ばなくていいからあああああ!!!!!
-
:10/05/18 03:36
:F02B
:2tMYvgRI
#31 [亜夢]
-
黒いパーカーを頭に被って大きめのサングラスに見慣れないノーセット。 全身真っ黒なのに、シルバーアクセと真っ赤な派手な鞄で、お洒落にコーディネートされている。
「あれっ…あむむ☆ 可愛い子ふたりで何やってんの〜?」
そんな響皐月は相変わらずアタシをあむむ、とか不思議な呼び方をする。
「皐月サン、そんなにCIELのお姉さんと仲良くしたらエース怒るのもわかりますよっ!!!」
ケラケラ笑う後輩たち。
わけのわかってないアリサ。
ここから消えたいアタシ。
-
:10/05/18 03:43
:F02B
:2tMYvgRI
#32 [亜夢]
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「なに?…ナンパされてんの?この状況って。」
あっけらかん〜としながら裕也が分厚いショップ袋を両手に握りしめて帰ってきた。 な、ナイスタイミング!!!
「俺CIELの常連なんですよ。」
前々から裕也にはいってある。
どスケベ女たらしホスト響皐月がうちの店の常連サンだってことは。
「ああ、例のホストさんかあ。 噂はいろいろ亜夢から聞いてますよ。」^^
にっこり笑う裕也。
-
:10/05/18 03:46
:F02B
:2tMYvgRI
#33 [亜夢]
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「すいませんけど、僕の大事な子…あんまり遊んであげないでくださいね☆」
にこりと再び微笑む裕也。
その言い方って【アタシ、裕也の彼女でえす♪】になってないか!!!?
それも迷惑!!!
「大丈夫ですよ!!! 手は出さないんで♪」
丁寧に微笑んで会釈すると、手を軽くふって響皐月たちは去っていった。
-
:10/05/18 03:50
:F02B
:2tMYvgRI
#34 [亜夢]
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アタシ、妙に…響皐月がアタシと裕也が付き合ってるって思ってないかとか気にしてる。
裕也が言った言葉を、撤回して【うちら付き合ってないですよ?】なんていいそうにもなった。
なんなんだアタシ。
今日は月曜日。
シフトでは明日から4日連勤だ。
「次会ったらどんな顔しよ…」
-
:10/05/18 03:52
:F02B
:2tMYvgRI
#35 [亜夢]
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火曜の授業は、なんだかいつもより長く感じた。
「たぶん―…響皐月のことが気になってるからだ。」
っっっ!!!
「アリサ〜…アタシの気持ちを勝手にナレーションしないでよう…」///
「でも合ってるデショ?」
クスリと意地悪に笑うアリサ。
「も〜…」
丁度タイミングよく鳴ったチャイムで、裕也は背伸びをして起きる。 全く気楽なやつだ。
-
:10/05/18 04:00
:F02B
:2tMYvgRI
#36 [亜夢]
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8時に出勤。
シャツに黒いパンツ。 長い髪の毛をバレッタでまとめて、アタシは腰に黒いながめのエプロンをまく。 これがCIELのユニホーム。
そんな堅苦しいものはないけれど。
「店長おはようございます☆」
うん、おはようとマスターは言った。 このほんわかした雰囲気が好きなお客さんはかなり多い。
この店はリピーターが週に何回もくるくらい、ゆったりすごせるバーだ。
居心地がいいくせに、やたらいいムードが漂うこじゃれたバーだ。
-
:10/05/18 04:05
:F02B
:2tMYvgRI
#37 [亜夢]
-
珍しくギムレットがバーのところに置かれてある。
これを飲むとしたらうちのお客さんでは、何かの社長さんをしている村上さんだけだ。
「昨日村上サン来てたんですね!!!」
ううん、と首を横に振るマスター。
「昨日皐月クンがひとりで、ギムレット飲みにきてたんだよ。」
響皐月がギムレット?
「彼の癖を教えてあげようか、亜夢ちゃん。」
え?
-
:10/05/18 04:09
:F02B
:2tMYvgRI
#38 [亜夢]
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「彼はね…スコッチをロックで飲むでしょう?」
ひとりで来るときは、確かにそれ以外飲んでるのを見かけない。
「彼、少し悩んだり、照れくさかったりすると…アイスをね、…こうやって人差し指でカラカラ回す癖があるんだよね。」
あ、そういえば…
「あとはね、気分が病んでたりすると…ギムレットを飲むんだよ。 彼って意外と繊細でね…」
まえに信用してた後輩をかわいがっててお金を貸したら飛ばれたことがあったらしくて、真剣にへこんでたとき、ギムレットを片手にマスターとお話してたんだって。
-
:10/05/18 04:13
:F02B
:2tMYvgRI
#39 [亜夢]
-
「あとひとつあるけど…聞きたい?」
うん、と縦に首を振る。
「皐月クンはね…亜夢チャンがいるときに絶対ギムレットは飲まないんだよ。 と、違う言い方をすれば、…彼は僕に君が休みか電話してくるんだ。 やすみですよ、というとギムレットを頼んで…人生や恋愛について話したりしてくるんだよ。」
にっこり優しく微笑むマスター。
「でもそれって、アタシがいたら邪魔だから確認なんじゃないですか?」
アハハと軽く笑ってマスターは首を横にふった。
「亜夢チャンもまだまだだね。 …彼が君の存在を気にしてるからだよ。」
-
:10/05/18 04:18
:F02B
:2tMYvgRI
#40 [亜夢]
-
「〜…だからそれってアタシに話を聞かれたくないからですよね?」
「うん、それはそうだよ。 だって君について話してるんだから。」
え?
「それは皐月クンも、君に言えるなら僕に相談したりしないだろうね。」
どういう意味?
カランカラン♪
「左渡さんいらっしゃい。」
焼酎ボトルを素早く出して、おしぼりをお客さんの手にそっとかけてあげる。
でも―…さっきのマスターが言ったことがすごく胸にひっかかる。
-
:10/05/18 04:21
:F02B
:2tMYvgRI
#41 [亜夢]
-
4連勤最後の日。
週2のアルバイトの子が月曜と土曜固定出勤なので、アタシは何かがない限り、火・水・木・金にCIELにいる。
―…結局、響皐月は来ない。
12時過ぎたときだった。
カランカラン♪
「やっほお―い☆」
裕也とアリサがふたりでカウンターに腰かける。 このふたりはアタシが仲良くさせたんだが、ふたりで飲みにいくほど仲がいい。
「今日も飲むぞお♪…とマスター!!! あれ食べたいっ!!!」
-
:10/05/18 04:26
:F02B
:2tMYvgRI
#42 [亜夢]
-
いつも裕也とアリサは、マスター特製のオムレツをたべたがる。 確かに美味しい。 本当に毎回食べるたびにおいしくなる。
「亜夢、アタシはね〜…カルアミルクくださあい。」
ふたりは自由に飲んで食べて、ダーツして遊んでる。 アタシはそれをみてただ笑ってるだけ。
と、
カランカラン♪
金曜の12時なのに珍しく響皐月がひとりでやってきた。
「あれっ…」
響皐月はアタシをみて目を丸くする。
-
:10/05/18 04:29
:F02B
:2tMYvgRI
#43 [亜夢]
-
「響サン、何飲まれます?」
なんでアタシをみて驚いたのかは知らないけれど…なんだか不愉快だ。
「えとギム〜…じゃなくて、いつもの…」
いつものとはスコッチ。
ギムレットて今言いそうになったってことは何かに悩んでるんだな?ふうん〜…
裏方からオムレツを持ったマスターがでてきて裕也とアリサに渡した。
「また何かほしかったら言ってね。」
もちろん響皐月は裕也とアリサをみて、あれ?て顔を作る。
-
:10/05/18 04:32
:F02B
:2tMYvgRI
#44 [亜夢]
-
「おまえの彼氏と友達じゃん…」
やっぱり勘違いしてた。
「あれ、アタシの幼なじみと親友。 どっちも長いつきあいのおともだちです〜…彼氏なんか出来た試しがないって前言ったじゃないですか。」
アタシが呆れながらそういうとスコッチをコースターの上に置いた。
「やあ、皐月クンおはよう。」
「マスター!!! あいついないってい〜〜〜〜〜」
ごにょごにょと内緒話をするふたりを背にしてアタシも裕也とアリサのオムレツに便乗しておいた。
-
:10/05/18 04:36
:F02B
:2tMYvgRI
#45 [亜夢]
-
「そろそろ皐月クンもはっきりしたほうがいいんじゃないかな、と思ってね。 君も子供ではないんだし。 あんな子を野放しにしておくと、後悔するよ。」
とマスターの声がはっきり聞こえた瞬間、
カランカラン♪
「亜夢チャン―…」
中谷サンが店にひとりではいってくると、響皐月と裕也&アリサの間にひとりで座る。
「赤ワインですか?」
「ああ、頼むよ。」
胸に針金がささったみたいに凄く痛む。
-
:10/05/18 04:39
:F02B
:2tMYvgRI
#46 [亜夢]
-
新しいボトルをあけて、それを中谷サンにそそぐ。
「亜夢チャン…ごめんね。 僕は君を傷つけたよね? 言い訳に聞こえるかもしれないが、きいてくれるかい?」
それは中谷サンがお嫁サンとうまくいってないこと、アタシをみると元気をもらえること、―…淡々と語られた。
「僕はたぶん、君にこうして会えるから、頑張れるんだよ。」
嘘つき。
大人はやっぱり嘘ばっかりなんだよ。
「ありがとうございます」
アタシは何の感情もいれずにその言葉だけを伝えた。 アタシが中谷サンに対するあこがれはとっくに消えてた。
-
:10/05/18 05:10
:F02B
:2tMYvgRI
#47 [亜夢]
-
そうこうしてるうちに、数十分すると中谷サンはチェックをして帰った。 アタシの態度でもわかったんだろう。
アタシって、まだまだ浅はかだなあ…と改めて思った。
「亜夢。」
へ?
思わず方向が違うとも裕也たちのほうをみる。 ふたりはふたりで、キャッキャ言いながら遊んでる。
てことは…
「亜夢って呼ばないから違和感…かな?」
ロックグラスを片手に苦笑いする響皐月。
-
:10/05/18 05:23
:F02B
:2tMYvgRI
#48 [亜夢]
-
「亜夢、俺と今度デートしない?」
ロックグラスの中にはいったアイスを見ながら響皐月は言った。
「いやですよ。 変なことされそうですもん。」
アタシは苦笑しながらそう答える。
響皐月は子犬が耳を下げるときみたいな顔を作る。 両肘をテーブルにつけてアイスをただ、じいっと見つめる。
「…べ、別にいいですけど。 甘いもの御馳走してくれるなら…」
「まじ?やった☆ 俺もさ〜甘いもの大好きなんだよね〜特にね―…」
カランカラン♪
-
:10/05/18 05:27
:F02B
:2tMYvgRI
#49 [亜夢]
-
「やっぱりココにいたの、皐月…」
胸元がセクシーに開いた服をきたお姉さんが響皐月の隣に座ると顎を肩に乗せる。
「こんなお子様騙しちゃかわいそうでしょう?」
と耳元で言うわりに、声がでかい。 わざとアタシの耳にはいるように話している。
「あむむはイイ子だから…俺の悪い誘いにはのってくれないよ。 からかってるだけだもん♪俺冗談の固まりだから〜☆」
クスリとほほえむと時計で時間を確認する響皐月。
「あやの、同伴してくれんの?」
「だからココにきたんでしょ」
アタシは蚊帳の外―…
-
:10/05/18 05:31
:F02B
:2tMYvgRI
#50 [亜夢]
-
お会計を済ませると、あやのって女の人は響皐月の腕に自分の腕を絡めてでていった。
【俺冗談の固まりだから☆】
【からかってるだけ…】
響皐月のいった言葉がアタシの胸をチクチク突き刺す。
また、泣いてしまいそう。
裕也もアリサも2時すぎには店をでて酔っぱらったまま自転車を押してかえっていった。
裏方でカチャカチャ洗い物をしてるマスター。
こっそりトイレに入るとまた涙が溢れてきた―…
「もお〜…亜夢のばかあ…」
-
:10/05/18 05:35
:F02B
:2tMYvgRI
#51 [亜夢]
-
コンコン。
「うわっ…ごめんなさいっ…」
お客さんはいないから、マスターが心配してノックしてくれたんだろう。 アタシはちゃんと涙をふいてアイラインを整えてトイレの扉をあける。
「なんで―…また泣いてるの?…」
数十分前に出ていった響皐月が悲しそうにアタシをみて言った。
そのまま又、トイレに押し込まれる。
「…なんで泣いてんの?」
「泣いてなんかっ…」
そのまま響皐月の胸の中にすっぽりおさまる。 あったかさに涙がまた滲む。
-
:10/05/18 05:39
:F02B
:2tMYvgRI
#52 [亜夢]
-
「俺…亜夢が泣いてるとこ、見るの嫌い―…」
ドキン―…
アタシを亜夢って呼ぶ響皐月。
アタシを大きな腕で包み込んでる響皐月。
「泣かないから離して…っ」///
突然照れくさくなる。
すうっと、右手がアタシの左の頬に触れる。 とても自然に響皐月の顔がまた、近くになる。
「亜夢。」
ああ、たぶんこれは好きにさせるための呪文か魔法だ。
-
:10/05/18 05:43
:F02B
:2tMYvgRI
#53 [亜夢]
-
―…
「もう行かなきゃ…」
あったかいものを唇に残して響皐月はそう言った。
「あ、これ…ココに載ってるの俺の番号とメアドだから…気がむいたら連絡頂戴よ☆」
な?とほほえみながらアタシの頭をクシャクシャとするとトイレを出ていった。
まだ―…胸がはずんでる―…
***
(

)今日の更新は
>>24からここまででした

-
:10/05/18 05:48
:F02B
:2tMYvgRI
#54 [亜夢]
-
>>003-053***
華の金曜は終わってお休みの日がきた。 4連勤のあとのこの週末は結構好きだったりする。
メリハリがつけれるしね。
でも―…今日はどうも考え過ぎて何もできない気がする。
響皐月から貰った彼の名刺。
アドレスと電話番号それから、いつもと雰囲気が違う響皐月の写真が名刺にのってある。
「はあ―…」
-
:10/05/19 07:46
:F02B
:aOzGAOJ.
#55 [亜夢]
-
かけるか…
かけないか…
携帯の画面を開いたまま、アタシは何度か携帯と名刺をみた。
一度番号をいれてみても、すぐに消した。
携帯に登録する?
…あ〜、わかんない…
「はあ〜…」
何回ため息をついただろう。
気づいてたらベッドでそのまま眠りについてた。
-
:10/05/19 15:58
:F02B
:aOzGAOJ.
#56 [亜夢]
-
せっかくの土曜日は、自宅で携帯と奴の名刺だけで終わってしまった。
目をさましたのは日曜の昼。
「あ…やば…」
アタシは2時に高校の同級生で仲良しの桜に会う約束してたんだった―…
時計は12時半。
「よかった…」
お風呂に急いではいって、そそくさと化粧をする。 ちょうどいい時間だ。
アタシは待ち合わせ場所にむかう。
-
:10/05/19 16:01
:F02B
:aOzGAOJ.
#57 [亜夢]
-
響皐月のこと考えずにすむ…
アタシはいつも待ち合わせにしてる、スタバにひとり座ってチャイを飲んだ。
(あっま〜…)
またカプチーノじゃない。
今回はアリサに言われなくても気づく。
「亜夢〜!!!」
夜の仕事をしてる桜は、キラキラしたアクセ達を身にまとい、長い爪…ばさばさなまつげに綺麗にセットされた髪の毛。
-
:10/05/19 16:05
:F02B
:aOzGAOJ.
#58 [亜夢]
-
ひさびさの再会だから、色んな話が次から次ぎとでてくる。
「てゆうか〜…アタシ彼氏できたんだっ♪」
桜は薬指に輝く指輪をこちらにみせてニコニコとほほえんだ。
「…よかったじゃん!!!」
でも内心不安になった。
桜の言う彼氏とは、ホストのことだ。
彼女が夜を始めた理由も、最近風俗にいこうか悩んでる理由も遊ぶお金だった。
-
:10/05/19 23:16
:F02B
:aOzGAOJ.
#59 [亜夢]
-
きっかけはある雑誌のモデルさんだった。 そのモデルの職業がホストだったため、会えるから―…という理由でホストクラブに足を運んだらしい。
容姿も頭もいい桜は、男で困ったことはなかった。
でも何か埋められない寂しさがあったんだろう。
それを埋めてくれる居心地のいい空間がホストクラブだったんだろう。
-
:10/05/20 06:02
:F02B
:uEyPQx6s
#60 [亜夢]
-
>>003-060***
アタシは行ったこともない空間だからだいぶ客観視してる。
別に響皐月を知ってるからといって、ホストという職業がどんなものかはわかってない。
でも…アタシは偏見してる。
それは知らないからだと思うけれど。
-
:10/05/20 06:07
:F02B
:uEyPQx6s
#61 [亜夢]
-
「でねでね、彼氏ったら…過去の女が最低だったらしくて、手も繋ぎたくなければ、キスも嫌なんだけど…愛しくってえ〜…」
桜が幸せならいい。
でもアタシは心配してしまう。
正直、頑張って水商売をしている桜には、1日で給料を使ってしまうような遊び方はしてほしくなかった。
就職率のかなり低い外資系の昼職をやめて、夜の世界にはいったんだから…
「あ〜、早く結婚したいっ☆」
-
:10/05/20 06:11
:F02B
:uEyPQx6s
#62 [亜夢]
-
「…あれ?」
スタバのテラスは硝子張りなので歩いてるひとたちを人間観察できる。
桜はアタシの後方をみて、あ―!!!と声をかけた。
「アタシの彼氏だっ!!!!」
浮かれた様子の桜。
ぶんぶん手を振ると、響皐月のあのとんがった靴の音がした。
カツカツカツ―…
「亜夢、紹介するっ♪」
-
:10/05/20 06:14
:F02B
:uEyPQx6s
#63 [亜夢]
-
「アタシの彼氏の皐月クン♪」
―…
「あ、どうも。」
間違えないよね。
これはあの響皐月だよね。
少し優しくされたからって図に乗ってたのかも。
彼女いて、当たり前だよね。
「えっ…俺らいつ付き合ったの?」
響皐月はアタシには全く触れない。
-
:10/05/20 06:16
:F02B
:uEyPQx6s
#64 [亜夢]
-
「ひっどお―い…こないだ飲みにいったとき付き合って♪て言ったらイイよっていったじゃん。」
「まじか〜酔っぱらうと女みんなに声かけちゃうからな☆」
やっちゃった、とちゃらけて舌を出す。
「なにそれえ〜…好きじゃないの?桜のこと。」
「まだ会うの3回目じゃん!!!」
ちょっと呆れたように笑う響皐月。
-
:10/05/20 06:19
:F02B
:uEyPQx6s
#65 [亜夢]
-
響皐月は、何度もアタシの様子を横目で伺ってた。
期待してしまう―…
でも女を騙すのが彼らの仕事。
女の子に嘘をつくのも、信用させるのも、得意技だ。
アリサは言ってた。
「騙されていいじゃん。 恋愛が怖くて出来ずに大人になるほうが怖いよ。」
って。
-
:10/05/20 06:22
:F02B
:uEyPQx6s
#66 [亜夢]
-
桜は響皐月にべったりくっついて片手に巻き付いて離そうとしなかった。
「俺いまスカウト中だし、また連絡するわ―!!!」
またね、と手をぶんぶん振ると、響皐月は人混みに消えていった。
「あ〜あ…いっちゃった…皐月ちは忙しいんだから…全然遊んでくれないし、連絡もまちまちなの!!! ずるい男だよね…」
きまずい。
アタシがあの男とキスしてしまったことや、自分の店の常連だなんて、口が裂けてもいえなかった。
-
:10/05/20 06:26
:F02B
:uEyPQx6s
#67 [亜夢]
-
帰宅―…
部屋に戻り、机をみると置いたはずの名刺がない。
おかしいなあ。
アタシは数分周辺を探したけれど、結局みつからず、あきらめて日曜に終わりを告げた。
正直…響皐月を桜が指名してるとなると、のちのち大変なことになりそう…
日が落ち、月がでて、また日がのぼると月曜の朝になる。
今日は授業は昼からたった数時間。
-
:10/05/20 06:29
:F02B
:uEyPQx6s
#68 [亜夢]
-
月曜は短時間の授業プラスCIELはお休みなので、まだゆっくりできる日。
「亜夢、おでかけしようよ♪」
たまにはね、と付け足してアリサがそう言った。
そんなことよりも、アタシは響皐月は何のためにアタシを口説いたり?抱きしめたり…好きっぽいそぶりを見せるの?
ホストだから?
わかんないよ。
どれが嘘なのか本当なのか…
***
>>054から
ここまで更新しました

-
:10/05/20 06:32
:F02B
:uEyPQx6s
#69 [亜夢]
:10/05/20 06:35
:F02B
:uEyPQx6s
#70 [亜夢]
-
【彼氏】の話をされてから、桜から頻繁にメールで相談されるようになった。
正直、全然携帯放置なアタシにとってマメに連絡をかえすのは疲れる。
特に、土日月曜日はいいんだけど、CIELと学校がある日なんて携帯に睡眠時間をとられるのは、きつい―…
「ごめんっ…話また今度でいいかな?今から仕事なんだよねっ…」
「え?夜に仕事いってるの?」
嘘はだめだ。
-
:10/05/20 17:14
:F02B
:uEyPQx6s
#71 [亜夢]
-
「アタシ今BARで働いてるよ。」
「まじ?じゃあ、今日行ってもいい?」
まずい、繋がってしまう。
…むしろ別に付き合ってる訳でもないから、隠す必要なんてないかあ。
気楽にいこう。
「いいよ。」
アタシは手短に伝えると準備してでかけた。
火曜の夜―…
今日から4連勤の日。
-
:10/05/20 17:17
:F02B
:uEyPQx6s
#72 [亜夢]
-
12時半くらいにメールが入って今から来る、と桜に言われた。
仕事あがりなんだろう。
チリンチリン♪
「うわあ〜酔っぱらったあ〜」
桜が若い男の人を引っ張って、カウンターに座らせた。
「あ、これアタシの新しい彼氏の遊星クン♪」
にゃはは、と可愛く笑う。
遊星ってひとはビールと言うと、ほんのり疲れた顔をした。
-
:10/05/20 17:21
:F02B
:uEyPQx6s
#73 [亜夢]
-
「もうね―…皐月は相手してくれないから無視してやるん…」
さえぎるように店の扉があく。
「いらっしゃいませ―」
入ってきたのは噂の響皐月。
最近になって女の人をつれてくることがなくなった気がする。
ひとりで出勤前に数杯だけ飲みにくる。
何も言わないあいだにアタシはロックグラスにスコッチを流し込む。 アイスがカラカラと音をたてる。
-
:10/05/20 17:27
:F02B
:uEyPQx6s
#74 [亜夢]
-
店内が暗いせいか、遊星サンの影で隠れてるせいか、響皐月はまったく桜の存在に気づかない。
「亜夢…」
アタシは、ドキンとする。
もう―…あむむって調子づいて呼ばれなくなったからだ。
「ああ、皐月クンいらっしゃい…」
マスターが大きな声でそう言った。
「皐月?」
遊星サンがぼそっと桜に聞く。
-
:10/05/20 17:29
:F02B
:uEyPQx6s
#75 [亜夢]
-
「あれ、桜じゃん。 彼氏?」
響皐月はアタシの渡したスコッチをカラカラさせながら、にんまりと桜をみつめた。
「えっと…」
桜は動揺してる。
「よかった。 俺より全然いい男ぽいし。 大事にしてあげてね。」
柔らかくほほえむと持っているスコッチを軽くのどに通す。
桜は何も言わず1万円を机に置くと無言で帰ってしまった。
-
:10/05/20 17:34
:F02B
:uEyPQx6s
#76 [亜夢]
-
その1万円を握りしめて追いかけても、名前をよんでも桜は振り向かなかった。
新しい彼氏という遊星サンもアタシの目先で彼女を追いかけてる。
しょうがない。
アタシはため息をついてそのまま店に戻った。
「おかえり…」
ネクタイを綺麗につけなおしてる響皐月。
もう出勤時間だ。
-
:10/05/20 17:38
:F02B
:uEyPQx6s
#77 [亜夢]
-
「あの子はね…お金で愛を買おうとしてるんだよ。 可哀相でみてられない…でも…」
でも、の後に間があく。
「俺は付き合おうて言葉にいいよ、というべきだったのかもしれないけど…」
ふう、と煙草の煙を吐く。
「俺…いま好きな女がいるから、ね。」
ドキン―…
嘘?本当?
-
:10/05/20 17:41
:F02B
:uEyPQx6s
#78 [亜夢]
-
それとも…
信じる?信じない?
「えと…」
「なんで連絡くれなかったの?亜夢。」
待ってた、と小声で言われる。
「あの…名刺、机置いてたら、どっかいっちゃって…」
「じゃあ俺来るの待ってた?」
ドキン―…
飲み込まれる。 このひとの、空気に。
-
:10/05/20 17:44
:F02B
:uEyPQx6s
#79 [亜夢]
-
「亜夢は俺がホストだから嫌?」
違う…
ホストだから嫌なわけではない。
ホストだから、こうなんじゃないか…ていう固定観念があるんだ…。
「たぶん、俺が本当のこと言ってるか、嘘を言ってるか…わかんないから?じゃないの。」
アタシは縦にうなずく。
-
:10/05/20 17:51
:F02B
:uEyPQx6s
#80 [亜夢]
-
「俺が仕事やめたら…俺と付き合える?」
アタシは考えた。
仕事とアタシを選ぶってこと?
「そんな…どっちが優先だなんてっ…」
「俺はお金がいるから、いまの仕事が辞められない。 …でも嫌なら考えるけど。」
彼は、はあ、とため息ついた。
「…いつからか、わかんないけど…」
目をみつめられる。
-
:10/05/20 23:03
:F02B
:uEyPQx6s
#81 [亜夢]
-
「亜夢に嫉妬してもらいたくて…女の客連れてきてた…」
時計がカチッカチッと音をたてて動いてる。
PPPP…
もちろん出勤時間ぎりぎりのナンバーワンの携帯は鳴り始める。
「なんでこう…〜〜」
響皐月はハアとため息をついて、また名刺をつきだした。
「…やめた。 携帯貸して。」
アタシの手から取り上げて耳元にあてる。
-
:10/05/21 07:32
:F02B
:na8HDJcY
#82 [亜夢]
-
PPPP…
また同じ着信音が響皐月の携帯から流れる。
「俺から連絡する。」
わかった?という目でじっと見られる。
「…あ、はい…」
圧倒されてアタシ、そんなに喋れてないというかまともに顔さえみれなかった。
ジャケットを素早く羽織ると会計分のお金を置いて響皐月は急いだ。
「ありがとうございました…」
-
:10/05/21 07:35
:F02B
:na8HDJcY
#83 [亜夢]
-
響皐月が去ってからマスターは言った。
「やっとか。」と…
「昨日もギムレット飲みにきてたんだよ。」
月曜日。
アタシがCIELを休みな日だ。
「ここ最近の悩み事の原因は君なんだよ。」
くすりと笑うマスター。
「そ…そんなの知らないですよっ…」///
でも、まだやっぱり思う。
本当?嘘?
-
:10/05/21 07:39
:F02B
:na8HDJcY
#84 [亜夢]
-
でも―…
アタシみたいに利用価値のない人間を騙さなくてもいいわけだもんね。
お金持ってて、自由に彼の店で飲めるわけでもない。
アタシを彼のものにしても得ではないはず。
「信じてもいいかなあ…」
ドキン―…
少しだけ携帯を確認することに過敏になった。
センター問い合わせが趣味になりそうなくらい。
-
:10/05/21 07:44
:F02B
:na8HDJcY
#85 [亜夢]
-
あのキスのせい―…
彼を意識しまってる。
アタシは仕事を終えて鞄の中に携帯を放り込んだ。
営業中は連絡よこせないくらい忙しいはずだ。
でも何度も携帯が光っているかを確認する。
それも響皐月のせい―…
-
:10/05/21 07:48
:F02B
:na8HDJcY
#86 [亜夢]
-
水曜日。
あのワン切り以来、響皐月は電話をかけてこなかった。
着信履歴から登録した名前。
そのまま【響皐月】とはいっている…
「はあ…」
ちらっと携帯を見る。
「恋してる子みたい♪」
右からコソコソと耳打ちするアリサ。
-
:10/05/21 18:10
:F02B
:na8HDJcY
#87 [亜夢]
-
「えっ…」///
アタシの顔はたぶんりんごみたいに紅く染まったんだろう。
アリサはニターとしながら指でアタシの頬をつつく。
「〜〜…」///
恋してるのかな?
でも告白された訳じゃない。
ただ、携帯の番号を知ってるのと…キスを2回交わしただけ。
だけ…じゃないのかもしれないけど…。
-
:10/05/21 18:13
:F02B
:na8HDJcY
#88 [亜夢]
-
今日最後の講義。
アタシは外で煙草を吸う友達たちと一緒にたむろっている。
BBBB…
突然ポケットにいれてた携帯のバイブが鳴り始める。
もしかして…
知らない番号からだ。
「はい、もしもし―…」
-
:10/05/21 21:55
:F02B
:na8HDJcY
#89 [亜夢]
-
「あ、亜夢…?」
声が、―…響皐月だ。
「ごめん…俺携帯落としちゃってさ。 ちゃんと頭にいれといたんだ、亜夢の番号。」
ドキン―…
「もしかしたら俺の連絡待ってたかな、とおもって―…」
まさかな、と鼻で笑う響皐月。
「いや―…あのっ…」///
「待ってた?」///
なんかすごく恥ずかしい―…
-
:10/05/21 22:01
:F02B
:na8HDJcY
#90 [亜夢]
-
「今日俺、休みなんだよね。 まあ今起きたんだけどさ―…遊びにいかないかなあ、とか思ったりして。」
響皐月からの誘い。
ちょうど今日は自宅に帰ろうとおもってたころ。
「あ、―…空いてます。」
と言った瞬間、響皐月はよっしゃと小声でいった。
それがまたアタシの気持ちをぐいぐいっとあげる。
「そしたらさ―…」
-
:10/05/21 22:05
:F02B
:na8HDJcY
#91 [亜夢]
-
最後の講義なんて頭になんかはいってこなかった。
アタシにとって、男の人とのデートは…高校や中学んときにした遊びに行くことくらいしか知らない。
大人の人―…
アタシの知らない世界を知ってる、そんなひととどこに遊びにいくんだろう―…
ドキドキしっぱなしのアタシ。
しかも待ち合わせ場所と時間。
大学の前に、アタシが講義を終えたら、すぐ―…
-
:10/05/22 00:04
:F02B
:Qn3qwYdw
#92 [亜夢]
:10/05/22 00:08
:F02B
:Qn3qwYdw
#93 [亜夢]
:10/05/22 00:12
:F02B
:Qn3qwYdw
#94 [亜夢]
-
「亜夢。」
校門の前。
ヒラヒラと手を振るモデルみたいな男、響皐月。
もちろん周りの子達はチラチラ彼をみたり、さえないアタシを見たり。
ぺこっとお辞儀する。
「まだ堅いなあ…キスもした仲なのに♪」
にんまり微笑んで響皐月は言う。
―…///
-
:10/05/22 06:19
:F02B
:Qn3qwYdw
#95 [亜夢]
-
「乗って?」
キーを片手にピュンピュンて音がすると遠隔操作で車が光る。
これってかなりの高級車、のはず。
詳しくはないけどそれなりにわかる。
「ありがとうございます…」
アタシは助手席のドアの開け閉めまでしてくれる響皐月にどきどきする。
紳士的だなあって。
-
:10/05/22 06:22
:F02B
:Qn3qwYdw
#96 [亜夢]
-
「ね、俺の名前よんで。」
「響サン…」
ハンドルを握りしめたまま、響皐月はハアとため息をつく。
「俺のほんとの名前は龍紀ってかいて…たつき。 本庄龍紀。」
「龍紀…サン。」
「違うよ亜夢。 たつきって呼んで。」
「たつき…」///
よく出来ましたと言いながら優しくアタシの髪の毛を撫でた。
-
:10/05/22 06:27
:F02B
:Qn3qwYdw
#97 [亜夢]
-
「亜夢は、今日夜仕事だろ?」
「はい…」
これで5回目。
さっきから響皐月…じゃなくて本庄龍紀がずっと敬語禁止っていってくる。
年上でしかもお客さんだから龍紀には、すぐにタメ口では話すことができなかった。
「ちょっとずつでいいから…俺は亜夢と仲良くなりたい。」
ドキン―…
アタシの心臓は夜までもつかな?
-
:10/05/22 06:31
:F02B
:Qn3qwYdw
#98 [亜夢]
-
「次俺に敬語で話したら、キスするよ…?」
車のハンドルを握りしめたまま、まっすぐ前に目を向けて龍紀はいった。
「えと…」///
「夜仕事あるなら俺一緒にCIELいってもいい? どうせ暇だろ。」
店がね、と笑った。
水曜日は確かにノーゲストのときもある。
ふたりで行くとかなんだか照れくさい。
-
:10/05/23 23:11
:F02B
:UUkC3.iQ
#99 [亜夢]
-
「はい。」///
あ―…
目の前は赤信号。
ブレーキで止まると同時にシートベルトをはずす龍紀サン。
「おしおき☆」
つぶった目が近づいてくる。
鼻と鼻がぶつかりあったそのときに、後ろからのクラクション。
「ここの信号…せっかちだなあ…」
子供みたくふてくされる龍紀サン。
-
:10/05/23 23:14
:F02B
:UUkC3.iQ
#100 [亜夢]
-
ちがうちがう―…
龍紀サンじゃなくて【たつき】だし、はいじゃなくてうん、だ。
慣れるのに一苦労しそうだけど…
でもドライブ中の龍紀はたくさん自分のことを話してくれたり、たくさん質問をしてくれて、途中から全く気を使わずに会話できた。
「わっ…もうこんな時間か。 いこっか☆」
ぱらぱら雨が降ってる。
手をぎゅっと握られ、駐車場から店のビルまで走る―…///
-
:10/05/23 23:18
:F02B
:UUkC3.iQ
#101 [亜夢]
-
BBBB…
「亜夢ちゃん、おはよう。 もう来てる?」
「今エレベーター待ってますよ!!!」
「じゃあ今日はこなくていい。 響皐月クンのお客さんが君に会いたがってる…酔っぱらってるから少し面倒なんだよ。」
「あ…わかりました。」
どしたの?て顔で龍紀はアタシを見つめた。
タイミングよくエレベーターが1階に到着する。
-
:10/05/23 23:22
:F02B
:UUkC3.iQ
#102 [亜夢]
-
「店長いわく、龍紀のお客さんが酔っぱらってきてて…アタシのこと聞いてくるみたいで…とりあえず帰りなっていわれた。」
到着したはずのエレベーターは2階へとあがっていく。
「やば…」
階段の脇のところに引っ張られて龍紀と隠れる。
背中に密着してるよ―///
チーン…
中からでてきたのは確か【あやの】ってお客さんだった。
-
:10/05/23 23:26
:F02B
:UUkC3.iQ
#103 [亜夢]
-
「朝日…アンタ情報はほんとなんでしょうね。」
携帯で話しながらエレベーターを降りてくる【あやの】。
「今日は欠勤みたいだけど―…アタシ、皐月の女があんなしけたbarの女だったら潰してやるんだからっ!!!
…絶対皐月に媚び売ったにきまってるわよ。 皐月みたいないい子は、ああゆう子受け止めちゃいそうだしね。」
ふんっと彼女はいった。
アタシそんな風にしたつもりなかったのに―…
-
:10/05/23 23:29
:F02B
:UUkC3.iQ
#104 [亜夢]
-
後ろからぬくもりが消えた。
と、振り向いてまた覗くと龍紀があやのさんの携帯を取り上げてた。
「朝日―…おまえそんなことまでして、俺を潰したいのか?」
優しい笑顔と声が消えてる。
「とりあえず明日ミーティングで話そうか。 じゃあな。」
「さ…皐月…」
「たまたま資料とりに店よったらこれか。」
-
:10/05/23 23:32
:F02B
:UUkC3.iQ
#105 [亜夢]
-
取り上げた携帯を彼女にかえす。
「じゃあな。」
「皐月っじゃあなって―…」
龍紀は彼女の腕を振り払う。
「爆弾したり、店に迷惑かけたり、そういうことする客は俺は要らない。」
龍紀はポケットから煙草をとって火をつける。
「俺…人のことを金と思えるほど人間腐ってないけど、普通にできないやつは死ぬほど嫌いだ。」
-
:10/05/23 23:55
:F02B
:UUkC3.iQ
#106 [亜夢]
-
あやのって女の人は泣いてそのまま走っていった。
確か彼女は龍紀の大事なお客さんだったはず…なのに―
「亜夢? もういいよ。」
アタシはきょろきょろしながら龍紀のそばによった。
「龍紀…大丈夫?」
「ん…」
少し苦笑する龍紀。
-
:10/05/23 23:58
:F02B
:UUkC3.iQ
#107 [亜夢]
-
「大丈夫♪俺には亜夢がいるからさっ☆」
困った顔から一瞬に可愛い笑顔にかわる龍紀。
「…告白がこのビルってのは嫌だから…仕事休みになったことだし、ご飯いこっか☆」
龍紀はしっかりアタシの手を握って駐車場にむかう。
「なに食べる?」
「なに食べる?」
ふたりで恋人みたいに時間を過ごす。
-
:10/05/24 00:05
:F02B
:mV7d2WvI
#108 [亜夢]
-
龍紀が連れてってくれたご飯屋さんは、綺麗で少し暗めの洒落たお店だった。
海辺の近くで、barカウンターから見える景色は夜でも最高だ。
「おなか空いたっしょ?何でも食べなさい☆」
すっとアタシの座ってる椅子に手を置く龍紀。 アタシは背中にその存在をかんじてドキドキする。
いまもたれ掛かったら…肩抱かれるのかな、とかいろいろ。 短い時間に考えてしまう。///
-
:10/05/24 03:28
:F02B
:mV7d2WvI
#109 [亜夢]
-
好きなものをお互い頼んで、アタシがワイン好きだからといって、白を一本空けてくれた。
ふたりで乾杯をする。
薄い照明で見える彼のまつげ、鼻、瞳、くちびる―…
いつからアタシはこんなに意識するようになんだろう。
やっぱりあのキスの日から?…
「ん、これ美味しいね。」
あーんして、といってくる龍紀の言うことをきいて口を開けるアタシって、なんだか自然だった。
-
:10/05/24 03:31
:F02B
:mV7d2WvI
#110 [亜夢]
-
「門限とかないの?」
「ないよ。 いつも朝まで仕事してるからぜんぜん。」
「…じゃあもうちょっとだけ、ゆっくりする?」
龍紀はグラスをまわしながら言う。
彼の癖だ。
「うん―…」///
「亜夢。 俺、好きだよ。 亜夢のこと…」
ドキン―…
-
:10/05/24 03:34
:F02B
:mV7d2WvI
#111 [亜夢]
-
「今すぐ自分の物にしたい。 ほんと、…会ったときからずっと、気になった。」
初めてアタシ達が会ったのは店じゃない。
たまたま、酒屋に行ってたアタシが戻ってくるときにエレベーターの前にいたのが【響皐月】だった。
エレベーターのなかで話しかけてきて「今度いくね☆」といわれてから同伴の待ち合わせでよく使われるようになった。
「俺は亜夢がホストを偏見してると思ってたから、正直こわかったよ。 亜夢を好きになることも。」
-
:10/05/24 03:38
:F02B
:mV7d2WvI
#112 [亜夢]
-
「でも―…もうどうしようもないんだ。 好きな気持ちを食い止める自信がない。」
男の人からの告白。
こんなに心臓がバクバクして、どうしようもないものなの?
「大事にする自信はあるよ。 でも―…仕事のことは理解してほしい…亜夢に理解してもらえたらそれが支えになる。」
透明にすきとおった白ワインをのどに通す。 ひんやりして思考回路をまともにしてくれる。
いまのアタシはパニックだ。
-
:10/05/24 03:41
:F02B
:mV7d2WvI
#113 [亜夢]
-
「つきあってくれないかな…?」
龍紀はアタシの手を握りしめて言った。
「―…」///
アタシは火照ってる。
たぶん答えは決まってるけどでてこないんだ。
「駄目?…」
肩を落とす龍紀。
「………さい。」
-
:10/05/24 03:44
:F02B
:mV7d2WvI
#114 [亜夢]
-
###
ちょっとまって、俺…
今“ごめんなさい”って言われた?
最後の語尾しか聞こえなかった。
たぶん嫌々て今日もきてくれたんだろうし、彼氏いないとかいって、居たりするんだろうなあ…
聞き直したほうが余計傷つくかなあ…
「なんて?…」
「だ、大事にしてください…〜」///
え///
###
-
:10/05/24 03:47
:F02B
:mV7d2WvI
#115 [亜夢]
-
大事にしてください、と言った瞬間、龍紀はポカーンと口を開けた。
ええと…///
「龍紀?」
名前を呼ぶだけでも恥ずかしい。
「亜夢、それっておまえの彼氏は…俺ってこと?」
首を縦に振る。
「俺らつきあったってこと?」
また同じように頷く。
-
:10/05/24 03:49
:F02B
:mV7d2WvI
#116 [亜夢]
-
「うわっ…やば…」///
グラスに入ってた白ワインを飲み干す龍紀。
バーテンダーが空のボトルを持って、次の飲み物を聞く。
「あのさ、今俺が告白したらOKもらえたんだけど…」
「おお!!! おめでとうございます☆」
「お祝い事はやっぱシャンパンだね。」
子供みたいに顔をくしゃくしゃにして笑いかける龍紀がすごく可愛く思えた。
-
:10/05/24 03:52
:F02B
:mV7d2WvI
#117 [亜夢]
-
「じゃあこれからも宜しくってことで乾杯…☆」
散々スタッフに祝ってもらって乾杯を今ふたりっきりでしている。
「どうする?」
「えっ…」///
「俺、今日は亜夢を家に帰すつもりないんだけど…」
右手をアタシの左手に重ねる龍紀。
「ええと…」///
-
:10/05/24 03:55
:F02B
:mV7d2WvI
#118 [亜夢]
-
「俺のもんにするってこと…」
耳元で囁く龍紀。
「あ…えと…」///
アタシ初めてだよ?と耳打ちすると、優しくすると返事をかえす龍紀。
繋いでた手をはなすと肩を抱き寄せて自分の右肩にアタシの頭をよせる。
心臓の音が聞こえそう。
「代行よんでもらえます?」
バーテンにそう声をかけると頬にキスされた。
-
:10/05/24 03:58
:F02B
:mV7d2WvI
#119 [亜夢]
-
座席でもずっとアタシは龍紀と手を繋いでる。
キスもエッチも初めての人になるんだったら…重くないかな?
少し不安だった。
「ついたよ。」
車を駐車場までいれてもらって支払いをすると手を引っ張って、15階にある龍紀の玄関まできた。
エントレンスと外観からすでにいいマンションてのはわかったけれど。
-
:10/05/24 04:01
:F02B
:mV7d2WvI
#120 [亜夢]
:10/05/24 04:04
:F02B
:mV7d2WvI
#121 [亜夢]
-
>>094-120***
玄関をあけると物凄く綺麗な景色がひろがった。
廊下からすぐみえるのはガラス張り。 15階からの景色…きらきらと輝くネオンや、夜中なのにオフィスビルの電気がまだついている。
「すごい―…」
「綺麗?気にいった?」
後ろからぎゅうっと抱きしめる龍紀。
-
:10/05/24 04:08
:F02B
:mV7d2WvI
#122 [亜夢]
-
「たっ龍紀―…」///
驚いて振り向くと、すっと唇が重なる。
アタシは、ぎゅっと龍紀の腕のところを掴んだ。 背中はガラス張りにもたれかかる。
「亜夢…」
右手を腰のところに絡みつけ、左手で頭を優しく持ち、抱き寄せられる。
「亜夢、抱きしめたら折れちゃいそう…」
頭をなでなでされる。
気持ちいい―…
-
:10/05/24 04:13
:F02B
:mV7d2WvI
#123 [亜夢]
-
「明日講義は?」
「ん…お休みだよ…」
なら大丈夫だな、と言って龍紀は軽くアタシを抱き上げるとどこかに向かった。
ドアをあけると広がったのは、ひとりでは不十分すぎる空間。
クイーンサイズあるであろうベッドに優しく寝かされると、龍紀は自分が着ていたパーカーを素早く脱ぐとTシャツも脱ぎ捨てた。
「亜夢、抱いてもいい?」
耳元であつい吐息と共にそんな言葉をいわれる―///
-
:10/05/24 04:16
:F02B
:mV7d2WvI
#124 [亜夢]
-
「まっ…前も言ったけど、アタシ…キスもその…エッチも龍紀がはじめてだから…えと、そのお…」///
「ほんとに?…俺が最初の男で後悔しない?」
「龍紀がアタシでもいいなら…アタシは大丈夫。」
アタシは多分終始赤面だ。
「いいに決まってるじゃん。 俺はずっと亜夢とこうしたかった。」
-
:10/05/24 04:20
:F02B
:mV7d2WvI
#125 [亜夢]
-
寝転がってるアタシに多い被さるように龍紀が唇を重ねてくる。
「…龍紀、電気とかって…」
「俺は亜夢をみたいけど、恥ずかしいなら切ろうか?」
もちろん頷く。
裸をみて嫌いになられたら困るもん。
「亜夢…」
耳元を触りながら唇と唇がふれあう。
-
:10/05/24 05:41
:F02B
:mV7d2WvI
#126 [亜夢]
-
何度キスを交わしただろう…
唇をあわせながら、優しく胸を触る彼の手。 そこから服が脱がされてって、くすぐったいけれどお互い下着だけになった。
変な気分―…
キスすればするほど、もっとほしくなる、彼のことを。
「亜夢、すごっ…」
パンツに手をのばした龍紀は言った。 火が口からでるほど恥ずかしい。 でもキスをされると絡みつく体と体―…
-
:10/05/24 05:44
:F02B
:mV7d2WvI
#127 [亜夢]
-
ブラのホックを外される。
アタシは思わず両手で乳房を隠すけど、駄目だよ、と両手を剥がされて大きな手が代わりに包みこんでくる。
「やだっ…はずかしっ…」
アタシは手で顔を隠す。
「亜夢お願い…そのかわいい顔は見せて。」
熱い息をはきなから、龍紀の舌はアタシのすべてを這う。
「あっ…」///
-
:10/05/24 05:48
:F02B
:mV7d2WvI
#128 [亜夢]
-
「…―」///
キスを何度も重ね、体中を味わわれ、何度も好きといわれ、
アタシは龍紀と初体験をした。
それは痛かったけれど、龍紀が優しくしてくれたのと、何度も愛撫してくれたからか、そんなに緊張もせずに結ばれた。
アタシは龍紀の腕に絡みつくようにして眠りについた。
ふたりとも裸のままで。
-
:10/05/24 05:51
:F02B
:mV7d2WvI
#129 [亜夢]
-
周りの子が言ってたのを思い出す。
体の関係になった瞬間に、相手のことをもっと独占したくなるって。 もっと相手が欲しくなるって。
そうかもしれない。
今龍紀がものすごく近くに感じる。
「ん…」
寝ぼけたまま、龍紀はごろっと転がるとアタシをぎゅうっと抱きしめた。
「あ―…む…」
-
:10/05/24 05:54
:F02B
:mV7d2WvI
#130 [亜夢]
-
ふたりが起きたのは昼すぎだった。
「おはよ…」
アタシはふにゃふにゃ言いながら、龍紀の胸元に飛び込む。
「亜夢…だめ…」///
男の子なんだから、ね?という龍紀。
「朝はたっちゃってるんだから…したくなるだろっ―」
龍紀はアタシの上に乗っかっていった。
ああ、そゆこと。 ///
-
:10/05/24 05:57
:F02B
:mV7d2WvI
#131 [亜夢]
:10/05/24 05:59
:F02B
:mV7d2WvI
#132 [亜夢]
-
昼に起きたのに、何度も愛しあって、お話して―…てしていると勝手に時間がすぎた。
「龍紀、そろそろ準備しなきゃじゃないの?」
「まだ大丈夫…どっかご飯でも食べにいこっか〜☆」
龍紀はキーと財布だけ持つとグラサンをかけて、行こうといった。
「アタシすっぴん…」
「これ貸しといたげる♪むしろあげる。」
ずっと欲しかったでかサングラス。
-
:10/05/24 11:59
:F02B
:mV7d2WvI
#133 [亜夢]
-
「…!!! 龍紀、だめだよ。 こんな高価なものいただけないよっ…」
結構いい値段するブランドだ。
「だってつけないもん。 俺のために使ってよ。 俺のもの、使うのはいや?」
龍紀はそういうとこやっぱりホストだ。
「ありがと…」
素直にお礼を言うと手を繋いで外にでた。
「うわっ…雨ふってる。」
ふたりでひとつの傘に入ってコンビニまで走る。
-
:10/05/24 12:02
:F02B
:mV7d2WvI
#134 [亜夢]
-
「あそこの喫茶店でランチするかっ!!!」
もう夕方。
でも寝起きでそんなにがっつり食べれるわけでもなく、そんなこんなでマンションの目の前にあるカフェでご飯。
「でも亜夢、化粧しててもスッピンでもかわいいんだけど…」///
龍紀はアイスコーヒーを飲みながら言う。
「やっぱり変わるよっ…」
「ささっとご飯食べて家送るよ。 出勤だろ?」
あ―…!!!
-
:10/05/24 12:05
:F02B
:mV7d2WvI
#135 [亜夢]
-
すっかり自分のこと忘れてしまってた。
あぶないあぶない…
「龍紀はしっかりしてるよね。 安心するよ…」
とため息をついて自分の情けなさを自覚する。
「おまえの面倒は俺がみるから大丈夫♪…てか実家出れるなら一緒に住もう?」
―…ドキン。
初キスで初体験、ちゃんとした初彼氏と初☆同棲てやつですかっ?!!!
展開はやくないっ?
-
:10/05/24 12:08
:F02B
:mV7d2WvI
#136 [亜夢]
-
「まあ…俺はいつでも一緒に住めるから、心と…体の準備できたらおいで?」
毎日こんな日が続くと思うと、体はもちそうにない。
「わかったよ…」///
アタシは頷いてサンドウィッチをほうばる。
「まだ余裕はあるから、急がなくていいんだよ。」
2つ上の男性てこんなに落ち着いてて、出来る人で優しいんだろうか?
アタシはある意味、龍紀のことを不思議におもえた。
-
:10/05/25 03:36
:F02B
:/lfQaG8k
#137 [亜夢]
-
家の前まで送ってくれた龍紀は頬に軽くキスをして、後でな…と頭を撫でた。
「あっあとさ…」
ポケットから何もついてない鍵を渡される。
「?」
「これ俺ん家の鍵。 寂しいときや、会いたいとき…待っててくれるときは、これ使ってはいって。」
キュン―…
「わかったよ。」///
大事なありがとう、を言いそびれてアタシは車から降りた。
-
:10/05/25 03:39
:F02B
:/lfQaG8k
#138 [亜夢]
-
結構ぎりぎりに出勤して、急いでタイムカードを切った。
「あっぶない―…」
はあはあ、と息を切らしながらアタシは店長に挨拶をする。
「…皐月クンも悪いひとだね…」
苦笑しながらバンドエイドを持ってきた店長。
―…?
「変な虫寄せ付けないようにか、たんに忘れてたかどっちかだけど。」
といって首もとを指さすマスター。
-
:10/05/25 03:42
:F02B
:/lfQaG8k
#139 [亜夢]
-
洗面所で自分の首筋を眺めると赤いシミみたいなのが2つも並んであった。
アリサが元彼のとき言ってた気がする―…
キスマークの話。
(昨夜彼氏激しくって首とか胸とかキスマークだらけで、ファンデで隠すの大変だったよお…)
「あ―…」///
店長から貰ったバンドエイドでうまく隠れた。
変な虫を寄せ付けないため…か。
だといいな。///
-
:10/05/25 03:57
:F02B
:/lfQaG8k
#140 [亜夢]
-
いつもまったり飲みにくるお客さん達が早い時間にくると、終電前にだいたいの常連さんは、帰宅する。
12時前に満卓だったのに、もう最後のお客さん。 彼も会計をカウンターに置くとまた、といってドアを出た。
「ありがとうございます。」
と言って頭を下げる。 頭をあげると龍紀が手をひらひらさせてカウンターの決まった場所に座る。
「あ…いらっしゃいませ。」///
なんか照れくさい。
-
:10/05/25 04:02
:F02B
:/lfQaG8k
#141 [亜夢]
-
アタシはロックグラスに氷をカラカラと入れる。 そのうえからscotch whiskyを注ぐ。
「はい…」
ありがと、といつもの笑顔の龍紀。
「今日同伴だからココで待ち合わせ…」
そっか、とアタシは微笑む。 カウンターははさんでいるのに、―龍紀に触れたい…。
「こんな近くにいるのに触れたら駄目って、まじで鬼だよなあ〜カウンター嫌いになりそう。」
―…///
同じこと考えてるんだ。
-
:10/05/25 04:05
:F02B
:/lfQaG8k
#142 [亜夢]
-
「まあ亜夢が家に着てくれたら、そばで居れるからぜんぜんいいよ。」
毎日はでも無理だもんなあ〜…と龍紀はすねた子供になる。
「親に相談してみるよ。」
アタシはカウンターに両腕を置いてにっこり微笑むと龍紀の曇った顔も太陽に照らされる。
「ありがと…亜夢。」
このときはアタシは耐えれると思った。
彼の職業のことを絶対に受け止めれるとおもってた―…
-
:10/05/25 04:10
:F02B
:/lfQaG8k
#143 [亜夢]
-
同伴というと、普通1時に出勤なのに、遅くに店へ行けるという特権がある。
龍紀が同伴のときにココを使う理由は、ある程度飲ませておかないと、お金がないのにお酒を卸したりするからだそうだ。
ホストといえば、もちろん人気になればなるほど、忙しいときは時間をきっちり区切ってローテーションさせなくてはならない。
もちろん違う卓で女の子が龍紀にシャンパンを卸す。 ライバル意識で卸す子もいれば…
別卓にいかせたくないために、席を離れようとすると高価なものを卸したりする。
ちゃんとしたホストはその女の子の性格や発言で、どうなるかをインプットしてある。
-
:10/05/25 04:15
:F02B
:/lfQaG8k
#144 [亜夢]
-
もちろん嘘だってつく。 綺麗じゃなくても綺麗と言わなくてはならないし、会いたくなくてもきてもらわなくては困る。 …会いたいと言う。
その営業方法はいろいろだ。
色をかける(気を持たせるような素振りや発言をして相手をその気にする)や、枕(色プラス肉体関係で彼女である、や特別である、と思わせるやり方)
本営(一番彼女に近い存在。 一緒に住んでまるで彼女。 でもほんとはお金しかみず、用なくなればさよならする)
友営(友達みたいな感覚でただホストを楽しむだけ。 お互い厚い信頼関係でできている)
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:10/05/25 04:21
:F02B
:/lfQaG8k
#145 [亜夢]
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解釈の仕方を人それぞれなので、一色単にはいえない。
「今から来るお客さんは嫉妬すんなよ…」
携帯でメールを打つとパチンと閉じてそう言った。
チリンチリン♪
「さ〜つ〜き〜っ☆」
小柄でモデルみたいに細いお客さん。 うさぎみたいにピョンピョン跳ねてて、すごくかわいい。
「おはようのちゅ、は?」
-
:10/05/25 04:31
:F02B
:/lfQaG8k
#146 [亜夢]
-
「ドンペリ卸してくれるならいいよ。」
「今日持ち合わせないも〜ん…皐月は未収させてくれないし〜…」
「金ないなら来るなよ…」
この子には凄く冷たい龍紀では…なく【響皐月】。
「ねえねえ、お姉さんど〜おもう〜?アズミに超つんつんしてない〜?」
「おいアズミ。」
「あんっ…皐月ちゅう〜…」
「もしもし?おお、どうした?」
-
:10/05/25 04:44
:F02B
:/lfQaG8k
#147 [亜夢]
-
電話をとり、龍紀はすぐに店外にでていった。
「あ〜あ…どうしたら相手してくれるんだろう…」
ね、と苦笑しながらアタシはグラスを布巾で綺麗に拭く。
「アズミね〜…もう2年も皐月のこと知ってるけどねえ〜…キスしたことないの…」
しょんぼりしながらカルアミルクを飲む彼女は、大きなため息をつく。
「2年も片思いして、それから皐月には頑張って貰いたくて風俗いってるんだもん…」
-
:10/05/25 04:47
:F02B
:/lfQaG8k
#148 [亜夢]
-
「みてみてっ☆」
携帯の待ち受けにはキメ顔をしてる龍紀の顔とピースしたうさぎみたいな彼女。
「かあ〜いいでしょ〜♪」
嬉しそうにキラキラした目で待ち受けを見つめてる。
アタシ―…優越感、なんて思えなかった。
なんだか話を聞いてて切なくなってしまった。
「彼女いるなら…あきらめつくし、その子がいい子なら…否定しないんだけどなあ〜やっぱ居たらショックかなあ〜…」
-
:10/05/25 04:52
:F02B
:/lfQaG8k
#149 [亜夢]
-
「アズミ頑張るからっ☆ お姉さん応援してねっ!!!」
はい、と一応答えた。
龍紀がこのお客さんが必要なら、仕方ないのかもしれない。
「おまたせ。」
店いこっか、とジャケットをさっととる。
「いいよっ!!! 皐月のぶんも払うんだからっ〜♪」
ありがとうございました、の言葉とともにふたりは3Fにある店に向かった―…
-
:10/05/25 04:58
:F02B
:/lfQaG8k
#150 [亜夢]
:10/05/25 05:00
:F02B
:/lfQaG8k
#151 [亜夢]
:10/05/25 05:04
:F02B
:/lfQaG8k
#152 [亜夢]
-
彼女と【響皐月】が店から出た後、アタシの胸に針金が刺さったような気分になった。
―…嫉妬してるわけじゃない。
ただ、あの子が龍紀にむけた目が、表情が…かわいすぎて純粋すぎて、アタシは決していい気分にはなれなかった。
やっぱり龍紀のお客さんだったとして幸せになってもらいたい。
でも…
そういう考えなら龍紀と別れる…ことになるよね。 みんなの【響皐月】なのだからアタシだけで独占しないもの。
-
:10/05/26 06:55
:F02B
:fatKJEd6
#153 [亜夢]
-
無意識のうちに気づいたら家の布団に寝転がってた。
考え事をすると、すごく眠くなるのはなんでだろう。
アタシは目をゆっくり閉じるとすぐに眠りの森の中に住みました。
BBBB…
バイブが耳元で鳴ってるけどアタシは無視した。
-
:10/05/26 07:00
:F02B
:fatKJEd6
#154 [亜夢]
-
偽善者なのかな―…
あれからなぜかアタシは龍紀の家に足も踏み入れなくなった。
会う場所は此処だけ。
「いらっしゃいませ―…」
「亜夢、なんでメールも電話もとってくれないの?」
泣きそうになりながら龍紀は言う。
答えは、【わからない】んだ。
-
:10/05/31 03:47
:F02B
:RUsf33YU
#155 [亜夢]
-
アタシは、龍紀を知ってしまったから、いまでは【響皐月】は嫌い。
彼のお客さんを見るのは抵抗はない。 【響皐月】は女を見下してる。 相手にしようとしない。 ―…興味がない。
龍紀は、甘えたなのに独占欲が強くて、常に連絡をとりあいたい。
それがたまに混合してわからなくなる。
「…なんで龍紀は、ホストをはじめたの?」
あたしは率直に聞いた。
-
:10/05/31 04:01
:F02B
:RUsf33YU
#156 [亜夢]
-
「…」
いつものスコッチをじいっと見ながら眉毛を下げる。
「そうだな…俺、言ってないもんな…」
ため息をはあ、と吐いた。
「まず簡潔に言うと俺にはかなりの額の金がいる。」
理由は…?
「17のときの彼女が、植物状態なんだ―…」
-
:10/05/31 04:04
:F02B
:RUsf33YU
#157 [亜夢]
-
カシャン!!!!―…
マスターがいる奥からグラスが落ちる音がした。
「店長?…」
「ん…何もないよ。 ぼおっとしてただけさ。」
にっこり微笑むマスター…また話は龍紀に戻る。
17歳の彼女だったひとが
植物状態であること。
-
:10/05/31 04:07
:F02B
:RUsf33YU
#158 [亜夢]
-
「その日…
俺の親友の命日だった。
15のときに1トントラックの下敷きになった親友は、顔をみても確認できないほどだったよ。
いまだに思い返してしまう…
そんな彼が亡くなった場所へバイク2台走らせて行ったんだ。
花を添えて…
でも俺は知ってた。
俺の親友が華のことを好きだったことを…ずっと前から。
-
:10/05/31 04:10
:F02B
:RUsf33YU
#159 [亜夢]
-
「華はそのときの俺の彼女だった。
だいたいつきあって2年くらいだったかな。 親友が亡くなってからずっとそばにいた。
親友の想い人をつれてきたのが間違えだったのかは、わからない…
俺と華は一緒に並んで帰ってたんだ。
交差点で別れるときに華が俺は浮気者だとか何度も言ってきて…なぜか喧嘩になったんだ。
俺はカッとなって、『おまえなんか消えてなくなれっ』て笑いながら言うとその場を去った―…」
-
:10/05/31 04:13
:F02B
:RUsf33YU
#160 [亜夢]
-
「その次の日―…突然の全校集会だった。 なぜか悪い予感がした。 全身虫唾が走った…
『2年B組の笠屋華さんが○×交差点付近で酒酔い運転した男にはねられました…今は重体で病院で検査をしているところです。 お見舞いなどはできる状態じゃないから担任に確認してからいくように。』
―…
絶句だったよ。
自分が言った消えてなくなれて言葉が怖くなった。
俺はすぐに体育館を飛び出した。
-
:10/05/31 04:18
:F02B
:RUsf33YU
#161 [亜夢]
-
「華の家族には会ったことがなかったから、病院で初めて両親にあった。
『はじめまして…おつきあいさせてもらっている龍紀と言います…』
俺は真っ赤に腫れた目をこすりながら頭をさげたよ。
そしたら華のお母さんにこう言われたんだ。
『なんでなの?なんで家まで送らないのよっ…彼氏だったんでしょ?ねえ!!!!!』
涙があふれてる彼女の目をまともにみることができなかった…」
-
:10/05/31 04:21
:F02B
:RUsf33YU
#162 [亜夢]
-
ふうとため息をついてスコッチをのどに通すと龍紀はまた話し出す。
「―…全部俺のせいにされたよ。
そうなのかもしれないけど、17の俺にはつらかった。
高校にいっても悪い噂は広がり、
華と付き合ってる間にも女が他にいるだとか…実は少年院にはいってたとか…
わけのわからない噂で埋め尽くされた。
白い目で見られ続けたよ。」
-
:10/05/31 04:24
:F02B
:RUsf33YU
#163 [亜夢]
-
「だから俺は逃げてきた。
そんな地元で暮らす自信がなかったんだ。
でも重みを感じた俺は華の両親にいったんだ。
『目が覚めるまで、治療費は僕が全部しますから…!!!!』
それは両親も喜んでくれた。
でも俺が莫大な医療費を払えることに驚いた華の両親だが、俺が気にしてることを知って、お金をゆするようになった…」
-
:10/05/31 04:28
:F02B
:RUsf33YU
#164 [亜夢]
-
―…
15歳で味わった親友の惨い死に方。
17歳まで2年も付き合った彼女の交通事故。
白い目でみられ世間から逃げなくては耐えきれなかった龍紀の心。
そして彼女の両親からの龍紀に対するお金の要求…
「だから金は死ぬほど欲しい…」
龍紀は前にいってた。
人をだましてるわけじゃない、彼女たちがお金で俺達を買いにくるだって…
-
:10/05/31 04:31
:F02B
:RUsf33YU
#165 [亜夢]
-
「すぐにこの位置にまでのぼりつめた。 それからまだ上がる時なんだよ。」
ここは、ただの俺の意地だけどね、と口元をゆるませる龍紀。
「でもつくづく嫌になるときもあるよ…俺嘘なんてつきたくないもん、ほんとは。」
煙草に火をつける。
「金をもらってるから優しくするわけでもない。 ホストなんか擬似恋愛の世界に、ただ女の子が一線を飛び越えてしまっただけなんだよ。」
頭をかかえる龍紀にアタシはなにもいえなかった。
-
:10/05/31 04:35
:F02B
:RUsf33YU
#166 [亜夢]
-
なんで龍紀は全部背負い込もうとしてるんだろう。
「だから彼女は作れなかった…」
彼女が起きないままだからかな。
「でもお前に落ちてしまった。」
ホストが言う臭い台詞なんていらない。
ただその胸に頭をうずめて、大きな腕で包みこんでほしい…
「過去のこと話すのつらかった…?」
まあね、と苦笑いする龍紀。
-
:10/05/31 04:38
:F02B
:RUsf33YU
#167 [亜夢]
:10/05/31 04:40
:F02B
:RUsf33YU
#168 [亜夢]
-
あたしって…そう考えるとあまりにも平凡で、あっけない人生なのかもしれない。
龍紀はいろんな悲しいこと、苦なことを経験してるからこそ、いまの龍紀があって【響皐月】がある。
「俺…何度も恨んだよ。 俺の親友を殺したドライバーや華をこんな状態にした飲酒運転した奴―…それから、華の両親を狂わした金…」
全部嫌いだよ、と言った。
そのときから、4年が経っての今…
龍紀はこれからをどうするんだろう?
-
:10/05/31 10:06
:F02B
:RUsf33YU
#169 [亜夢]
-
「―…」
そのとき、誰かの心の中の火が消えてしまったことを私たちは気づく余地もなかったんです。
龍紀が過去を話してくれた日は、あたしは龍紀の家にいた。
別にそれ以上を聞くわけじゃない。
ただ、抱きしめてあげたら楽になるんじゃないかと想った。
-
:10/05/31 10:09
:F02B
:RUsf33YU
#170 [亜夢]
-
***
今日も仕事がおわったのは朝方。 俺は後輩たち何人かをつれて、よく行ってる定食屋にいった。
夫婦で切り盛りしてる小さな軒だ。
「はいっ…スタミナ焼き一丁ね〜」
「おばちゃん俺頼んでないよ?」
するとふんわり微笑むおばちゃんが鼻をこすった。
「あんた今日元気ないからね!!!! 美味しいご飯食べて元気になってもらわないと、あんたらしくないでしょっ!!!!」
-
:10/05/31 10:14
:F02B
:RUsf33YU
#171 [亜夢]
-
―…涙が出るかとおもった。
ここ数年、ずっとこの話は誰にも言わずに隠していた。
なぜか亜夢にはいえる、受け止めてくれる気がした。
なんの予想かもわかんないけど。
「おばちゃん…サンキュ…」
たぶん俺は目が潤んでたのかもしれない。 子供みたいだったのかもしれない。
でも今日ぐらいイイ気がした。
今日は我慢しなくていい…
-
:10/05/31 10:16
:F02B
:RUsf33YU
#172 [亜夢]
-
おなかいっぱいで家に帰るとまだ、見慣れない女性物の靴に…美味しそうなにおい。
まさか…
「亜夢―…」
そこには毛布にくるまってソファで寝ている亜夢がいた。
テーブルには朝ご飯みたい。
ラップを小皿全部にかけて手紙もかいてある。
『今日はつらかったよね…ごめんね。 でも亜夢がそれを溶かしてあげるからね。』
-
:10/05/31 10:20
:F02B
:RUsf33YU
#173 [亜夢]
-
俺たちの初夜みたいに、亜夢を抱き上げてベッドルームにつれていき、布団をかける。
普段あまり食べない俺だけど…
おばちゃんの愛情と同時に、亜夢の愛情までたくさんはいってきて、俺は小皿を全部きれいに食した。
おなかは膨れて動きにくいけど、心は満たされた気がした。
-
:10/05/31 10:22
:F02B
:RUsf33YU
#174 [亜夢]
-
それからふたりは亜夢の両親にちゃんと挨拶をして、同棲することがきまった。
先月末で全部の荷物が運びこまれた。
あたしは毎日、龍紀の嫁みたいなことをしている。
洗濯に料理でしょ、それから掃除に買い物しにいったり…すごく充実してる。
「もう子供欲しいもん、俺。」
あたしを後ろからしっかり抱きしめながらそう言う龍紀。
あたし達は幸せの絶頂期だった。
-
:10/05/31 10:28
:F02B
:RUsf33YU
#175 [亜夢]
-
でもある日のことだった。
たまたま月曜に忘れ物に気づいて出勤ではないけれど、CIELに行ったときだった。
こそおりとドアを開ける。
これが唯一のドアの鐘をならさない方法だった。
「―…なんだ…」
なんと龍紀の声がした。
またマスターとお話してるんだろう、アタシは勢いよくドアを開けようとしたときだった…
-
:10/06/01 04:05
:F02B
:69y7jz22
#176 [亜夢]
-
「週に1回でもいいんだ…」
マスターから聞いたことない必死なお願い。 それが龍紀に対してだった。
「もしかしたら…目をさますかもしれない…」
この展開って―…
「華はずっと君を待ってるのかもしれない…」
マスターって実は―…
「育てた親はああかもしれんが、華を誰よりも愛してるのは僕だよ。」
-
:10/06/01 04:07
:F02B
:69y7jz22
#177 [亜夢]
-
***
俺は華の両親を知ってる。
でも母親と離婚した昔の旦那の子供だとはしらなかったし、
…ましてやマスターが華の父親だったなんて想いもしなかった。
たしかに、
俺は目を覚ました華をどうするんだろう。 そして、今愛する亜夢をどうしたらいいんだろう。
わからない。
-
:10/06/01 04:10
:F02B
:69y7jz22
#178 [亜夢]
-
でも華に話しかけて起きるなら、キスして起きるならひとときの王子様になればいい。
でも彼女の記憶は17の俺に恋してる女の子のままなんだ。
「会わないほうが…いいに決まってますよ。」
4年も経って汚くなった俺を受け止めるのも、現在の彼女を愛してるのも、大きすぎて知らないほうがいい気がする―…
「そうなのかもしれない…けど…」
涙を流しながら、もう一度あの子の笑顔がみたいんだ…と言葉をこぼした。
-
:10/06/01 04:13
:F02B
:69y7jz22
#179 [亜夢]
-
俺と親友のマナブは最強だった。
学校で目立ってたし喧嘩は強いし、大変女にもモテた。
「C組のちかちゃん頂きっ☆」
「いいよ〜俺味見しといてあげたし…上手だったよ?」
いつもライバル視してるのはお互いだった。
それが普通で楽しかった。
華はそれを遠くから見て微笑んでるような柔らかい女の子だった。
-
:10/06/01 04:16
:F02B
:69y7jz22
#180 [亜夢]
-
「A組の坂本華ね〜…」
じいっと見つめながらいつもマナブはそう言った。
いつもなら【食われる前に食べておかなきゃ】とか面白いこと言って調子狂わすのに、出来てなかった。
もちろん俺はすぐわかる。
「〜…お前ああゆうのがタイプか?」
えっと驚いた顔する少年マナブ。 顔真っ赤にして大丈夫か?(笑)
-
:10/06/01 04:19
:F02B
:69y7jz22
#181 [亜夢]
-
俺は知ってた。
意外と照れ屋で見栄っ張りで…女の子の前ではかなり強いのをアピールしたりする。 ただの自慢だが。
「俺が声かけてあげる☆」
ノリノリの俺は向こう側の廊下にいる華に手をぶんぶん振った。
「ねえ〜君が華ちゃん?」
「はい〜☆」
ドキンと胸がはじまる…
…
:10/06/01 04:31
:F02B
:69y7jz22
#182 [亜夢]
-
ほんわりした笑顔。
色素の薄いさらさらの髪の毛。
華奢なからだ。
すらっとのびる足。
俺までその返事だけで坂本華にドキンとしてしまった。
「お…俺らと仲良くしてよ」
「え〜…ふたりともチャラくて有名だから嫌だよっ!!!!」
華はくすくす笑いながらいった。
-
:10/06/07 05:12
:F02B
:kZ685P4M
#183 [亜夢]
-
それから俺、マナブ、華と華の親友:百合恵とよく遊ぶようになった。
廊下ではなしたり放課後遊びにでかけたり。
「ねえ、華て好きな人いる?」
百合恵が聞いてるところをたまたま階段で耳にする俺とマナブ。
このときはお互いわかってた…
お互いが華を好きなことくらい。
「…まあ、ね?」
-
:10/06/07 05:15
:F02B
:kZ685P4M
#184 [亜夢]
-
「あのふたりのどっちかでしょ?」
「さあ〜…」
百合恵と華はきゃっきゃ言いながら教室にはいっていった。
俺たちはいつもどおり学校の屋上にむかってねころがった。
気持ちいい風―…
「恨みっこなしだもんな…」
「ああ。 マナブ告白しね〜の?」
首を横に振るアイツ。
-
:10/06/07 05:17
:F02B
:kZ685P4M
#185 [亜夢]
-
「…絶対無理だ。」
自信がないと顔を伏せた。
「俺…華の好きなやつはお前なんだよ。 凄い好きだからわかる。 見てると実感する…」
俺はなにもいえなかった―…
翌日に電話が鳴った。
「今から華の家行って告白してくる!!!」
決心がついたのかマナブはそう言った。
-
:10/06/07 05:20
:F02B
:kZ685P4M
#186 [亜夢]
-
「駄目で元々だろっ…」
たぶんいつもみたいにニカッと笑ったんだろう。
また後で報告の連絡をいれるから、と言ってマナブは電話を切った。
数時間経っても電話は鳴らない。
ああ、もしかしたら付き合って何かしてるのかもしれない―…
どうせ明日会うし、
聞けばいいんだよな。
聞けば。
-
:10/06/07 05:22
:F02B
:kZ685P4M
#187 [亜夢]
-
…夜中に電話が鳴ってる。
俺は目を擦りながらドアをあけるとパジャマを着たお母さんが顔を真っ青にして飛んできた。
「龍紀っ…―」
お母さんはそのまま何もいわずに車を出すとなぜか病院に向かった。
いやな予感がする―…
「先にいって…」
俺は母さんに言った。
「亡くなったの…」
-
:10/06/07 06:06
:F02B
:kZ685P4M
#188 [亜夢]
-
「マナブ君が亡くなったのよ、龍紀…」
嘘だ。
俺さっき電話したし。
「悪い冗談だな…夜中に。 あの横田おじさん?体調ずっと悪かったもんな?」
マナブのお母さんとお父さんが目に入る。
なんで泣いてるの?
マナブのお母さんは電話してる。
「忍…はやくかえってきなさいっ…」
-
:10/06/07 06:09
:F02B
:kZ685P4M
#189 [亜夢]
-
俺は会ったことないがマナブには双子の弟がいる。
すぐに家をでて年上の女と住んでるとか変なことは聞いた。
「…おばちゃん、マナブは?」
「たっちゃん…」
仲良しだったからマナブのお母さんとは色々話したり、ご飯をごちそうになったりした。
笑顔のおばちゃんが
俺にみせたくしゃくしゃな顔。
-
:10/06/07 06:11
:F02B
:kZ685P4M
#190 [亜夢]
-
「あの子…いってきます!!! て笑顔で出かけたの。 夜にでるなんかいつもだし、なにも心配してなかったわ… 無免許を止めなかったあたしが悪いんだけど…
トラックの運転手が居眠り運転で反対車線にでたらしいのよ… 運悪くマナブはタイアの下敷き…」
俺は首を横に振った。
「…顔はみないほうがいいわ…」
俺は激しく首を横に振る。
ここからでも見える。
白い布をかぶった誰かが寝てるくらいわかってる。
-
:10/06/07 06:14
:F02B
:kZ685P4M
#191 [亜夢]
-
「…マナブ?…」
告白できなかったのか?
俺はそっと白い布をとる。
「―――!!!!!」
思わず絶句してしまった。
顔が確認できる状態ではなかった。
「おばさん、マナブじゃないよ…うん、やっぱ違うんだよ…」
「たっちゃん…」
おばさんの赤くなった目をみればみるほど俺はその場から逃げたかった。
-
:10/06/07 06:16
:F02B
:kZ685P4M
#192 [亜夢]
-
まさか。
そんなはずはない。
日があけて…学校にいかなくてはならない時間になった。
「まさかな…?」
俺は普通に登校して席についた。
バタバタと華と百合恵が俺の元にやってくる。
「嘘でしょ?…」
「ねえ、龍紀…マナブが死んだなんて嘘だよね!!!!」
-
:10/06/07 06:18
:F02B
:kZ685P4M
#193 [亜夢]
-
「き…昨日会った…」
病院で、白い布をかぶってた、息をしてない…あれがマナブ?
「わかんないよ…俺マナブがいなくなった実感なんてこれっぽちもないんだよ!!!」
なんであいつの席が空っぽなんだ?
なんで朝会であいつの名前が何度もでてくるんだ?
なんであいつが俺の隣にいないんだ?
なんで?
「お〜いマナブ…」
-
:10/06/07 06:21
:F02B
:kZ685P4M
#194 [亜夢]
-
もう返事がかえってこなくなって1か月が過ぎた。
学校に行く意味もなくなった。
百合恵は酷く精神的に落ち込んでしまった。
華は俺と百合恵を交互に心配しては連絡をくれたり家まできたこともあった。
まさかいえない―…
あの日マナブは華に告白しに行こうとしてたってことは、とてもじゃないけど口に出せなかった。
-
:10/06/07 06:23
:F02B
:kZ685P4M
#195 [亜夢]
-
華が俺の家にほぼ毎日来るようになった。
俺たたは言葉を交わすこともない結ばれた。 マナブの命日もふたりで手をあわせにいった。
あとから知ったことは…
百合恵がひどくマナブのことを好きだったということ。
それから華はずっと俺のことを好きだったということ。
秘密は
マナブの最後の想い…
-
:10/06/07 06:26
:F02B
:kZ685P4M
#196 [亜夢]
-
***
華は好きだ。
俺らにとってあの時間は大事だった。
いまだに覚えてる。
あの日の笑顔や俺に絡みつく愛しい体。
忘れられない場所や言葉。
忘れてしまいたい痛い過去。
華は好きだったんだ。
でも華はまだ俺の夢をずうっとみているんだ。
-
:10/06/07 06:28
:F02B
:kZ685P4M
#197 [亜夢]
-
気づいたら2031号室の前にいた。
坂本華―…
あのときはそうだったのに17のときに笠屋になったんだな。
マスターの名字が坂本だ、それですべてのつじつまがあう。
「―…」
コンコン。
もちろん誰も返事をしない。
「華―…」
真っ白い病室にはちょこんと痩せた華がいた。
-
:10/06/07 06:31
:F02B
:kZ685P4M
#198 [亜夢]
-
起きたら、奇跡がおきたら俺はどうしたらいいんだろう―…
じっと見つめる華の寝顔。
看護婦のお姉さんがはいって俺に挨拶をした。
「あら…お見かけしたことがないですが…」
俺は軽く会釈をする。
「事故当時に付き合ってた本庄です…華がお世話になってます…」
まあ、と看護婦さん。 過去形にしたほうがいいのか現在進行形がいいのかなんてわからなかった。
-
:10/06/07 06:35
:F02B
:kZ685P4M
#199 [亜夢]
-
もう数時間経っただろう。
動かない華のまつげをじいっとみてた。
俺は時計をみて席をたつ。
(もう行かないと遅刻するよな―…)
俺は荷物をもって去ろうとした。
いや、もしかしたら…
俺は華の唇のちかくに可愛いキスを残した。
華は俺の初恋の相手。
もしかしたらおとぎ話みたいなことがおきるんじゃって少し期待はしてた。
-
:10/06/07 06:38
:F02B
:kZ685P4M
#200 [亜夢]
:10/06/07 06:40
:F02B
:kZ685P4M
#201 [亜夢]
-
グラスを拭いていてもいつも来る【響皐月】はこなかった―…
こないだの話、
マスターと龍紀のはなし…
聞かなかったほうが幸せだったのかもしれない。
もし、龍紀の華っていう彼女さんが目を覚ましたら、あたしの存在がじゃまでたまらないだろうし…
優しすぎる龍紀はどうすることもできずに苦しむだろう…
-
:10/06/07 18:37
:F02B
:kZ685P4M
#202 [亜夢]
-
どうしたいんだろ…
「亜夢ちゃん…?」
マスターは心配そうにあたしの顔をのぞき込む。
思わず言葉につまりそうになりながらもあたしは作り笑顔をする。
大丈夫、なにがあっても平凡に生きてきたあたしは平気だ。
「大丈夫ですよっ♪」
龍紀を失うことなんて、付き合ってから考えたこと…これっぽちもなかった。
-
:10/06/07 18:40
:F02B
:kZ685P4M
#203 [亜夢]
-
〔今出勤したよ〜…俺さ今日華が寝てる病院にいってきた。〕
ドキン―…
そうなんだ。
やっぱり連絡がないと思ったからそんなことじゃないかと思ってた。
〔そっか…〕
あたしはそれしか言えなかった。
それ以外の言葉がみつからなかった。
-
:10/06/07 18:48
:F02B
:kZ685P4M
#204 [亜夢]
-
そういう日に限って気を紛らわす出来事がないんだ。
珍しくノーゲストで閉店時間10分前。
あたしの返信には龍紀は返事をしてこなかった。
たぶん彼も何を言えばいいのかわからないんであろう。
複雑…
ただ目を覚まさないでほしいなんて不吉なことは考えなかった。
彼女は夢の中でしか龍紀にあえなかったのに…4年間も。
-
:10/06/07 18:51
:F02B
:kZ685P4M
#205 [亜夢]
-
4年間思い続けて頭の中が彼でしかないひとから、取り上げてしまうことをあたしはできる?
ただでさえ【響皐月】という人物を"お客さん"たちから盗んでしまっているのに。
あたしは大事な彼女から、龍紀を奪ってしまう余裕なんて自信なんてある?…
「おいっ…亜夢っ…」
寝ていると龍紀が肩を揺らす。
「たつき…?」
「一緒にきて!!!!」
-
:10/06/08 04:41
:F02B
:1VXwHH.6
#206 [亜夢]
-
龍紀はあたしの右手を強くつないだままタクシーで病院に向かってる。
嫌な予感がしてる…
龍紀は無言でじっと右の窓から景色を眺めている。
ほんのり開いた窓からはいる涼しい風…
「龍紀…」
「着いたよ…」
病院をみれば顔もしらない華さんの存在があたしを恐縮させた。
-
:10/06/08 04:43
:F02B
:1VXwHH.6
#207 [亜夢]
-
「華…さん、目が覚めたの?」
こくり、と龍紀は頷く。
「あたしをつれてっちゃ駄目っ…龍紀…」
あたしは握られた右手をふりほどこうとする。
やだやだ…
「だめっ…」
龍紀はなんで華さんとあたしを会わせたいの?
-
:10/06/08 04:45
:F02B
:1VXwHH.6
#208 [亜夢]
-
3021号室…
笠屋華と書かれたネームプレート。
あたしは右手を未だにほどこうとしている…もう堪忍するしかないのだろうけれど。
「入る前に聞かせて…なんのために、あたしをつれてきたの?」
「華に会わせるため。」
それだけ言うと龍紀はそのドアを開けた。
-
:10/06/08 04:47
:F02B
:1VXwHH.6
#209 [亜夢]
-
「龍紀いらっしゃい!!!! あっ―…」
あたしはどうしていいか分からなかった。
華さんの両親であろうひと、友達、たくさんのひとで病室はいっぱいだった。
「龍紀の彼女さんね。 初めまして。」
え―…
「これからあたしが面倒みれないぶん、龍紀を宜しくね。 あたしは4年彼をみれなかったけど、彼女さんは龍紀と会うまでに10年以上会えなかったんだもんね… どう龍紀が変わったか知りたいから、仲良くなろうね!!!!」
-
:10/06/08 04:50
:F02B
:1VXwHH.6
#210 [亜夢]
-
あたしは華さんに龍紀をとられないということに安心したのか、ただ言われたことに感動したのか、…どんな感情だったかよくわからないけれど…
涙がこぼれて止めることができなかった。
華さんは病室で若い頃の龍紀や親友で亡くなったマナブさんのはなしをして大笑いしてた。
楽しい思い出ってずっと昔なんだね…て切なく遠い目をした華さんが気になったけれど、あたしは何も言えなかった。
-
:10/06/08 04:53
:F02B
:1VXwHH.6
#211 [亜夢]
-
あたしと龍紀が安心して病院を出てタクシーを拾おうとしたときだった。
「龍紀―っ」
「百合恵………」
少しきりっとした目つきと目尻にたまった涙。
「龍紀ばっかりなんで幸せになるのよっ!!!! マナブから華を奪って…つぎは華を捨てるの? どうかしてるわよっ!!!!」
「…俺は思ったように生きてけないやつだよ。 それに華は俺が責任感じて彼女と別れて華と一緒にいることは望んでないよ。」
-
:10/06/08 04:56
:F02B
:1VXwHH.6
#212 [亜夢]
-
「だって…華はあんたたちが病室出たあと泣きじゃくって…」
「俺は華のために医療費を出して、華のことをおもってきたよ。 金の話をしていやらしいけど…あいつのために一生懸命寝る間をおしんで仕事した。 これが俺の愛情だよ…」
華さんに嫉妬しそう―…
「でも華はっ―…」
「そんなに心配なら今泣いてる華のそばにいてやれよ…」
-
:10/06/08 05:00
:F02B
:1VXwHH.6
#213 [亜夢]
-
タクシーに乗った瞬間、龍紀はすこし困った顔をしてあたしに笑った。
「…ごめんな…」
仕事終わってすぐ連絡に気づいて病院にむかうと目を覚ました華さんがいたらしい。
もちろん戸惑う龍紀をみて華さんはすぐに気づいたみたい。 なにを察知してか、あたしをつれてくるように彼女からお願いしてきたんだとか。
なにかの踏ん切りだったのかな…
あたしって幸せになってもいいのかな?
-
:10/06/08 05:02
:F02B
:1VXwHH.6
#214 [亜夢]
-
数週間後―…
「なあ、亜夢…」
講義中に裕也があたしをつついてくる。
「どしたの?」
これ、と言って指を指した先は女の子が下着でエロいポーズをしてる…
「なっなにみせるのっ…」///
違うくて、と苦笑いする裕也。
「これ…桜ちゃんじゃない?」
-
:10/06/08 05:05
:F02B
:1VXwHH.6
#215 [亜夢]
-
あれから…華さんは栄養をつけてもうすぐ退院というところまできた。 龍紀には相変わらずちょくちょく連絡をしているみたい。
あたしはそれに対して嫌な気持ちはなかった。
それから…
裕也が見せてきた、雑誌の桜…
どうみても風俗誌だった。 下着姿で胸をつきだして可愛い笑顔の桜―…
あの日以来連絡も不通のままだった。
-
:10/06/11 17:51
:F02B
:d95nv8bA
#216 [亜夢]
-
受講がおわってすぐに席をたつとあたしは外にでて携帯から桜の名前を見つける。
かなり親しいわけではないけど―…けど、桜のことはもちろん心配だ。
RRRR
「―…」
受話器があがった。
「もしもしっ?」
「…亜夢…?」
-
:10/06/11 17:53
:F02B
:d95nv8bA
#217 [亜夢]
-
活気もない声。
「…桜?だいじょうぶ?」
「大丈夫じゃない…助けて…あたしだまされたの…」
あのキラキラ輝いてる桜の明るく通る声なんてなかった。 いつか潰れて消えてしまいそうな声…
「あれからね、響皐月にね…あやまりにいったの。 そしたら金のない女には興味ないって…」
え?龍紀が?
-
:10/06/11 17:56
:F02B
:d95nv8bA
#218 [亜夢]
-
「響さんってそんなひとだっけ…」
「亜夢はなにもわかってないよ。 彼の頭にあるのなんて金だよ? 家だって数件もってて、お客さんと寝て…利用してるんだよ…?」
そんなわけ…
「あたしなんて抱かれた途端、【応援してくれるよな?】て半ば強制で…いま体売ってる……」
龍紀が桜を抱いた?
-
:10/06/11 17:59
:F02B
:d95nv8bA
#219 [亜夢]
-
「亜夢は何もされてない?…あたし、言おうとおもいつつ、仕事でバタバタしてたから言えなくて……」
嘘にきまってる…
「響皐月に会ってもこのこと言わないでほしいの!!!! あたし殴られたり…蹴られるのは…もう、嫌だから………」
龍紀が暴力?
「皐月は…最初優しくてお前だけだよって言ってくれてたから、信じてたんだけど…こないだ店の廊下でみたの………ほかの女とキスしてるの……」
-
:10/06/11 18:02
:F02B
:d95nv8bA
#220 [亜夢]
-
「うそっ……」
「なんで嘘つかなきゃいけないの……あたし、後でそれを言ったの。 他にも女いるんでしょって…そしたら、喧嘩になって……」
あたし以外にも?
「殴られて……」
電話先でううっ、と桜が泣き出しそうになる。
「桜……」
「亜夢もお願いだから気をつけて?」
-
:10/06/11 18:05
:F02B
:d95nv8bA
#221 [亜夢]
-
弱々しい声…
「桜ごめん……気づいてあげられなくって……」
「大丈夫!!! 話聞いてもらったら少しすっきりした…またゆっくりお喋りしよ?」
「うん…」
そういって電話を切った。
嘘…
でも桜はうちらが付き合ってることを知らないはずだから、本気で心配しているはず。
-
:10/06/11 18:07
:F02B
:d95nv8bA
#222 [亜夢]
-
「……」
龍紀の甘い声や笑顔を思い浮かべる。 …あたし、響皐月がどんな人間かは知らないけれど…龍紀のいいとこいっぱい知ってる。
でも…
悪いところ、ひとつも知らない…
「もしもし?」
思わず龍紀に電話をするあたし。
「うん?…おはよ。 どしたの?」
龍紀が寝てる時間に電話することは滅多にないあたし…
-
:10/06/11 18:09
:F02B
:d95nv8bA
#223 [亜夢]
-
「…今なにしてる?」
「ん〜?今亜夢と電話してるよ〜…」
小さく笑う寝ぼけ声の龍紀。
「どこにいるの?」
「…お布団のなか♪」
ふかふかあ〜と言ってガサガサと音が聞こえる。
「ふうん〜…」
「なに?亜夢が心配してくるの初めてだねえ〜」
-
:10/06/11 18:12
:F02B
:d95nv8bA
#224 [亜夢]
-
「そう?」
「俺はうれしいけどね♪」
ん〜と背伸びしてる声。
「なんか悪い噂でも耳にしたの?なんでも言ってよ。 ちゃんとはなすからさ。」
「……」
桜には言わないでといわれた。
もしあたしがそれを言ったとしても、絶対龍紀はそれは違うよ、という。
それは嘘でもホントでも。
-
:10/06/11 18:18
:F02B
:d95nv8bA
#225 [亜夢]
-
「ん…なんでもない…」
あたし達は他愛もない話をして会話は終わった。
なんだか胸がむかむかする…あたしの心が何か気になっている証拠だ。
龍紀の悪いとこって…なんだろう?
「亜夢…?」
裕也が後ろから声をかけてきた。
「あっ…裕也…」
-
:10/06/11 19:32
:F02B
:d95nv8bA
#226 [亜夢]
-
「大丈夫か?…」
幼なじみの裕也には表情ひとつであたしの感情を読まれてる気になる…
「あは、なんか…わかんない…」
優しい柔らかい声に安心したのかあたしは涙が目からこぼれた。
「…も…わかんない…」
泣きたくないのに。
龍紀の仕事を理解してたはずなのに…あたし、怖い―…
-
:10/06/11 19:36
:F02B
:d95nv8bA
#227 [亜夢]
-
「やめろよ―…」
え―…
いつも明るい笑顔ばっかりの裕也が眉間にしわを寄せて、あたしをみた。
腕をきゅっと掴んで…
「裕也……」
「やめろよ、もう―…」
少し悲しそうな顔をする裕也にあたしの胸が痛む。
-
:10/06/11 19:39
:F02B
:d95nv8bA
#228 [亜夢]
-
「お前を泣かす男なんか、認めない。」
あたしの腕を掴む、裕也の手が…強くなった。
「―不安とか心配しか残らない恋愛なんて…幸せになれるはずがないじゃないか!!!」
裕也の真剣なまなざしに、あたしは何も言えなかった。
「…俺なら…」
裕也なら…
「あっ!!! いたいたあ〜」
-
:10/06/11 19:42
:F02B
:d95nv8bA
#229 [亜夢]
-
「…何処いるかとおもった!!!」
アリサが間にはいる。
ぱっと素早く裕也は腕を離すといつもの顔でにこっとほほえんだ。
「てか!!! 腹減ったあ…飯くいにカフェテリア行こうぜっ!!!」
裕也はおなかをぽんぽんたたきながら言った。
「―…うん。」
あたしも普通に笑った。
-
:10/06/11 19:44
:F02B
:d95nv8bA
#230 [亜夢]
-
3人でご飯をたべて、それからカラオケに行った。
このときだけ忘れよう…
あたしはアリサや裕也の笑い話を聞いて腹を抱えて笑った。
楽だ…
楽しいほうがいい…
でも、いまの時間、龍紀はなにをしてるんだろう?
「あ…ちょっとごめん…」
-
:10/06/11 19:46
:F02B
:d95nv8bA
#231 [亜夢]
-
カラオケの個室から出て携帯を開く。 センター問い合わせしても何も変化はない。 メールボックスは空のまんまだ。
あたしと龍紀はそんなに連絡をとらない。 出勤してから龍紀は「いまから仕事がんばるよ〜」と電話かメールをしてくる。
あたしから、そんなに連絡をすることがなかったから…
だいたいCIELに来るか、家にかえってからお喋りしたり、休みは一緒にいたり…そんなかんじ。
今日は月曜。
-
:10/06/11 19:49
:F02B
:d95nv8bA
#232 [亜夢]
-
RRRR
何十秒鳴らしたんだろう。
電話にでる様子がない。
あたしは留守電になる前に電話をきると個室に戻った。
「おかえり〜☆」
アリサは上機嫌にあたしに声をかける。
うん、と返事はしたものの…
考えているのは
『龍紀は今何してるの?』
-
:10/06/11 19:51
:F02B
:d95nv8bA
#233 [亜夢]
-
折り返しの電話は数分経ってもこなかった。
お風呂にはいってるの?
まだ寝てるの?
家にいるの?
セットしてるの?
…誰かと一緒にいるの?
-
:10/06/11 19:53
:F02B
:d95nv8bA
#234 [亜夢]
-
アリサがトイレに立ったときに隣の裕也が言った。
「…携帯ばっかみて、そんな心配?」
「……」
やっぱり裕也には隠せない。
「馬鹿じゃないの?お前…」
ため息をつくと背をばんっと椅子につける裕也。
「馬鹿だよ…なんでそんな男が好きなんだよっ…」
-
:10/06/11 19:56
:F02B
:d95nv8bA
#235 [亜夢]
-
「俺…」
なんか、だめだ…飲まれそう。
「…裕也、大丈夫だからっ…」
あたしはそれ以上裕也に言わせることを拒否した。
確かにあたしは馬鹿だし、信用できない…難しい職業を龍紀がしていることを、最初からわかってたはずなのに…
なのに…
「無理だったのかな…」
-
:10/06/11 19:59
:F02B
:d95nv8bA
#236 [亜夢]
-
最初からこんな恋愛無理だったのかもしれない…
あたしみたいな恋愛未経験ができるはずなかったんだ。
「恋愛ってつらいものなの?」
「楽しいのは最初だけだよ…合うか合わないかだよ、あとは。 安心できる相手なら心配なんかしない…」
たとえば、と裕也が続けた。
「俺がいまの彼氏の状況ならどうだ?」
裕也が龍紀だったら…
-
:10/06/11 20:02
:F02B
:d95nv8bA
#237 [亜夢]
-
裕也が響皐月になってホストをしはじめて…てなったら、あたしは…
「なにも心配しないよ?」
「だろ? それはお前が長年俺のことを知ってるから安心できるわけじゃん?」
確かに。
「でもお前の彼氏はホストで出会って今素でいるわけだけど…大事な女がいるならやめるんじゃないの?」
でもそれは…
「元カノの入院費だったんなら、元カノが退院する今…なんで働いてるんだろ?」
-
:10/06/12 06:50
:F02B
:lAMYoGcg
#238 [亜夢]
-
確かに…
【響皐月】の収入は月にしてウン百万とからしい。 そのすべてが華さんの入院費につかわれるわけではない…
「疑問におもったことないのか?」
あたしは首を横に振る。
「別に高い買い物をしてるわけでもない…車も家もある…なのに残りのお金は、ただの貯金?」
そんなはずないだろう。
-
:10/06/12 06:53
:F02B
:lAMYoGcg
#239 [亜夢]
-
「お前は奴の悪いとこをみないようにしてる。 ある意味いいとこなのかもしれないけどそれで幸せなら、目につくぐらい嫌になったときどうする?」
別れちゃう…のかな。
「別れたら時間や思い出って無駄な気がしないか?こういう恋愛もあるって、お前のためになるけど…険悪な感じで別れたら傷つくのはおまえじゃん。」
裕也は言い切った。
「俺…あいつの店で働く!!!!」
-
:10/06/14 06:52
:F02B
:ha1IKwQo
#240 [亜夢]
-
***
俺の考えはこれだった。
【響皐月】の本質を探るために奴の職場に忍び込む。
俺は奴に2回ほど会っているが気づかれない自信があった。
V系の化粧をすれば男だって多少は変わる。
面接にいって雇ってもらうことになった。
俺は【桜木暁】―…
-
:10/06/14 06:55
:F02B
:ha1IKwQo
#241 [亜夢]
-
何度も亜夢はバレたらどうするの?とか心配してたけど、もう働いて一週間だ。 奴とも何度も接触があるが、気づかれてない。
「なんかみたことあるようなあ〜…」
が、龍紀こと【響皐月】の俺と会ってすぐの一言だった。
「俺のチームの子だもんな!!! あかつき…あっき〜でいい?」
よくしゃべる男前。
奴は一言で表すとそれだった。
-
:10/06/14 06:58
:F02B
:ha1IKwQo
#242 [亜夢]
-
売れるホストになるためには…
周りをよくみれる。
誰とでもどんな年齢でも気軽に喋られやすいタイプでいること。
清潔感をちゃんと保つこと。
名前やお客さんの特徴をちゃんと覚えておくこと。
しゃべりがうまければ顔は関係ない。
キスは拒まない。
-
:10/06/14 07:00
:F02B
:ha1IKwQo
#243 [亜夢]
-
ホストクラブでは『男メニュー』というものがある。
彼らの源氏名や年齢、パネル写真…それからキャラのタイプまでのってある。
それをお客さんがみてどのひとがいいか決めるのだ。
俺は入ったその日からポンポン新規のお客さんが指名してくれた。
でもこの店ではパネルで選べる男の子が3人で、その中からしか選べない。
3人のバトルになるわけだ。
-
:10/06/14 07:03
:F02B
:ha1IKwQo
#244 [亜夢]
-
「いらっしゃいませ〜」
今日も新規のお客さんから声がかかった。
2人組だ。
俺はほんわりした感じの女の子で、その相方は少しツンとした感じのお姉さん系。
俺が名刺をふたりに渡してるちょうどのそのときに【響皐月】が席につこうとする。
「お待たせしました…あれ、姫…俺が遅れたから怒ってるの?ごめんね…」
【響皐月】の法則。
お客さんが怒ったりすねてたら自分のせいにしてすぐ謝る。
-
:10/06/14 07:07
:F02B
:ha1IKwQo
#245 [亜夢]
-
さっきまでツンとしてたお姉さん系がはっとする。
「えっ…違いますよっ…考え事してて…」
失礼といって目の前の席からお客さんの隣に自然に座るナンバー1。
「俺…ちゃらけてるっぽいとかよく言われるけど意外と真剣に相談受けたりするから、いつでも言ってね?」
【響皐月】の法則。
時間は明確にはいわない。 すぐ、いつでも、いつも、ずっとが女は好き。
-
:10/06/14 07:10
:F02B
:ha1IKwQo
#246 [亜夢]
-
「いつでもって言いましたね。 じゃあ迷惑な時間に電話しちゃう!!!」
くすくす笑いながら女の子は言う。
「いいよ。 じゃあ番号頂戴☆ 着信音いちばん起きやすいやつにしとくから♪」
爆音でね、といって携帯を出す奴。
ためらいもなく携帯をだしたあの女の子はもう落ちた。
いま何の職業をしてるかわからないけど、必死で【響皐月】に会いに来るようになる。
「もう指名していい?」
-
:10/06/14 07:13
:F02B
:ha1IKwQo
#247 [亜夢]
-
うんとかいいえを言う前に奴は大声でご指名いただきました〜と、言った。
その瞬間ほかの2人の敗北が決まる。
俺もその日はなんとか送り指名をもらえたので番号を交換したり、残りの初回の時間をお喋りに費やした。
「シャンパンのもーっ!!!!」
「いいよ初回で…卸すなよ。」
肩に腕をまわしてる【響皐月】に甘えているツン女。
-
:10/06/14 07:16
:F02B
:ha1IKwQo
#248 [亜夢]
-
「今馬鹿みたいな金卸すんなら、焼酎のボトルとかにして。 あんま値段しないし、俺好きだし…それに…」
え?て顔をする女の子。
「シャンパンてその日になくなるけど、ボトルなら残るじゃん? 俺…シャンパン卸された日には、もう戻ってこないかもな…て思ってしまう。」
シャンパンのレベルは2万・6万・10万等と上がっていく。
焼酎のボトルは単価が低い…
けどキープボトルだからこそ、女の子なまた会えると思うのだ。
-
:10/06/14 07:21
:F02B
:ha1IKwQo
#249 [亜夢]
-
まるで女の子が得した気分になるような言いぐさ。
どのみち次来るときは、ほかのお客さんにシャンパン開けさせて、ツン女の席につけない。
だからツン女も対抗してあける。
ボトルがヘルプのお酒に消えてまた新しいボトルをあける。
それの繰り返し。
それからもっと好きなり連絡がないと不安心配…会いたくなる…そのためにお金をためる、使う。 酔っぱらって忘れる。
悪循環の連鎖だ。
-
:10/06/14 07:24
:F02B
:ha1IKwQo
#250 [亜夢]
:10/06/14 07:30
:F02B
:ha1IKwQo
#251 [亜夢]
-
ツン女の連れで俺に送り指名をくれた子も俺にうまくはまってくれた。
2コ1で週何度もきてくれるいいお客さんになった。
【響皐月】からすれば、そんなお客さんは、悪い言い方をすれば腐るほどいる。
けど育てるの大事だ。
どれだけ短期間にハマらせるか、どれだけ自分の良さに気づいてもらうか、…勝負がつく。
-
:10/06/18 17:39
:F02B
:feUpZZhU
#252 [亜夢]
-
「おはよ☆」
少しほろ酔いの【響皐月】がツン女事《渚》の隣に座ってヘルプに水を頼む。
「よかったあ〜…渚いてくれて……」
自分の頭を彼女の肩にのせる。 ふうと言いながら目をこすって彼女を見上げる。
ここで女はドキッとする―…
「ね、俺ら会ってどれくらいだっけ?」
「今日で1か月〜☆」
そっかあ…と言って天井を見上げる。
-
:10/06/18 17:43
:F02B
:feUpZZhU
#253 [亜夢]
-
「え―…覚えてないの? やっぱりお客さん多いもんね〜」
嫌みと嫉妬ででる言葉。
「忘れてるとおもった?」
ポケットに手を突っ込んでごそごそし始める。
「ほら…」
小さい箱に可愛いリボン。
ラッキーなことに俺のお客さんはトイレに席をたっていたから、俺はその状況を回避できた。
-
:10/06/18 17:46
:F02B
:feUpZZhU
#254 [亜夢]
-
「これからも仲良くしようなってことで。」
ネックレスにTとNが入ったペンダントがついてる。
「え…Sじゃないの?」
「でかい声で言うなよっ…俺の本名龍紀だからさ…」
こそこそっと言う。
「うれしい…」///
その何分後かには彼女は数え切れないくらいシャンパンを《お祝い》という名目でおろした。
-
:10/06/18 17:49
:F02B
:feUpZZhU
#255 [亜夢]
-
馬鹿なのかアホなのか…
純愛なのか恋愛なのか…
よくわからない。
けれど、確かにここで渚は【響皐月】にはまった。
―裏方―
「あ〜疲れたあ〜」
お客さんをボックスに何組か置いた状態で彼は少しの間、裏方で休憩する。
-
:10/06/18 17:51
:F02B
:feUpZZhU
#256 [亜夢]
-
この店では裕也ではなく【桜木暁】な俺。
「あっき〜?」
突然奴に呼ばれる俺。
開店して直ぐからシャンパンの嵐だった土曜日に、さすがの【響皐月】もばてばてだったみたいだ。
「俺の客は当分大丈夫そうだし、2コ1やからがんばって売り上げあげろよ〜」
はい、とにっこり微笑む。
-
:10/06/18 17:58
:F02B
:feUpZZhU
#257 [亜夢]
-
「今日飯いこっか!!!」
携帯をかちかち打ちながら【響皐月】は俺に声をかけてきた。
「あ…いいんですか?彼女さんとかいませんでしたっけ?」
「後輩とご飯行くくらい大丈夫だって。 そんな心狭い女じゃないし。」
にこにこしながら奴は言う。
確かに亜夢は心広いよな。
「時雨とタツトもいくぞっ!!!」
-
:10/06/18 20:38
:F02B
:feUpZZhU
#258 [亜夢]
-
一番下の俺達を誘って近くにある食堂にきた。
他のふたりは、完全に【響皐月】教徒だ。
「まぢ皐月さんかっこいいすわ〜」
「やばいっすよ、まじで。」
皐月さん、は確かに仕事面ですごいけど…俺の目的はそうじゃない。
皐月さん、の裏をとるために…亜夢のためにここで働いて、近づこうとしてるんだ。
-
:10/06/18 20:41
:F02B
:feUpZZhU
#259 [亜夢]
-
「皐月さんの彼女とか可愛いんだろうなあ…」
時雨がふとそんなことを言う。 ナイスだ。
「あ〜あのひとでしょ?店によく来てる…《彩羽》さん?」
え…
違うよコイツの彼女は亜夢だよ?
「あはは…」
否定しない―…
-
:10/06/18 20:44
:F02B
:feUpZZhU
#260 [亜夢]
-
「彼女ね…」
かちかち携帯を打ちながら奴は少し遠い目をした。
このひと…
従業員までも嘘で突き通してるのか?
それともほんとに…
食事が終わり頭をさげてタツトと時雨は先に寮にむかって歩き出した。
「皐月さん……」
「ん?」
-
:10/06/18 20:46
:F02B
:feUpZZhU
#261 [亜夢]
-
「たぶん新人で下っ端の俺に…言うのはあれだと思うんですが知りたいんです。 彼女を店に呼ぶんですか?」
「…あっき〜は…なんだか、信用あるんだよなあ。」
あはは、と笑って言った。
「俺は彼女を一度も店に呼んだことないよ。 働いてるところみせて不安にしたくない……」
少し切ない顔をする。
「…でも、店にくる女を《彼女》て言わないとだめなんだ。 じゃないとつぶしがかかる。」
-
:10/06/18 20:49
:F02B
:feUpZZhU
#262 [亜夢]
-
「俺のことをよく思わない人間なんて腐るほどいる。 はいってすぐにナンバー1になって…それから、幹部になって…長年やってる上の人間からしたら、腹立つわけだよ。」
と苦笑い。
「こんなこと新人に言う俺って情けないよなあ―…」
はあ、とため息を吐く。
「ま、俺にはちゃんと大事にしたいとおもってる奴がいて…だから貯金して、やめたときには何でもしてやりたいんだ。」
-
:10/06/18 20:54
:F02B
:feUpZZhU
#263 [亜夢]
-
俺は何も言えずに、ただただ彼の言葉をかみしめるように聞いた。
大事にされてるじゃん…
俺…
あいつらの間に入り込む隙なんてなかったってことだな。
―――
裕也は辞めた。
あっさりきっぱりと。
新たなる思いを秘めて…
-
:10/06/18 20:56
:F02B
:feUpZZhU
#264 [亜夢]
:10/06/18 21:01
:F02B
:feUpZZhU
#265 [亜夢]
-
裕也は全部話してくれた。
龍紀の店で働いたことも…そのときの彼の接客や彼が裕也に伝えたことばも。
でも未だにあたしには桜の言った言葉がひっかかった。
女の勘ていうのかな?
あたしはどこかで引っかかった。
-
:10/06/20 05:27
:F02B
:B.Qm7yB6
#266 [亜夢]
-
裕也には見えなかった部分。
お客さんと体の関係があるのかもしれない。
本当に桜が言ってたとおり暴力をふるっているのか?
もしかしたら―…
裕也のことを分かり切ってあえて演技してたのかもしれない。
なんとも言えない…
答えは本人か構図をかいた誰かだ。
-
:10/06/20 12:59
:F02B
:B.Qm7yB6
#267 [亜夢]
-
もう付き合って半年が過ぎた。
あっという間といえばそうだけれど、亜夢のほうは桜のことから、龍紀との間に自然に壁をつくってしまっていた。
龍紀はそれに気づいていたが、『一緒にいれるなら』と思ったんだろう…
特になにかすることもなかった。
「亜夢、今日おやすみだし…ご飯食べいこっか☆」
車のキーをくるくるまわしながら龍紀は亜夢に言った。
-
:10/06/21 03:06
:F02B
:d897jUrM
#268 [亜夢]
-
「そだね。 どこ行く?」
あたしは龍紀とお揃いのグラサンをかけて手をつなぐと外に出た。
車に乗り込んでふたりはイタリアンレストランに向かう。
――
「ん〜…」
おいしい!!!
あたしは大好きなカルボナーラを食べている。 隣でラム肉を食べながら赤ワインを飲む龍紀はやっぱりあたしより少し大人だ。
-
:10/06/21 03:08
:F02B
:d897jUrM
#269 [亜夢]
-
「龍紀―っ」
誰かが彼の名前を呼ぶ。
龍紀が振り向いた瞬間に女の人が平手打ちをした。
…一瞬何が起こったかわからなかった…
「今日実家に帰るって―…」
雰囲気が華さんに似てる。
「用事がなくなってお客さんとご飯してるの。 お前空気読めよ。」
え…
-
:10/06/21 03:11
:F02B
:d897jUrM
#270 [亜夢]
-
女の人は怒りながらどこかに向かった。
あたしはフォークとスプーンを置いてトイレに立った。
…さっき確かに龍紀はあたしのことをお客さんとよんだ。 それがいいわけで逃れやすいとしても、なんで彼女が龍紀ってよぶの?
「あの…」
トイレに行くと泣きじゃくっているさっきの女の人がいた。
「なによっ…」
-
:10/06/21 03:13
:F02B
:d897jUrM
#271 [亜夢]
-
「龍紀の…あなた何なんですか…?」
「あなたが何なの?」
「あたしは…」
あたしならはっきりと言える。
「彼女です。」
「…へえ…あたしは龍紀の嫁ですが。」
頭が真っ白になる。
-
:10/06/21 03:15
:F02B
:d897jUrM
#272 [亜夢]
-
そのあと、あたしが何を彼女と話したかはわからないけれど、なぜだか連絡先交換して、またと言って別れた。
あたしは彼女、あのひとは嫁…
あたしって不倫じゃん。
さっきの女の人のことについて謝る龍紀を無視してあたしは黙々と食事をした。
悲しいというより悔しかった。
あたしは不幸になるために誰がと付き合ってるわけじゃない。
-
:10/06/21 03:17
:F02B
:d897jUrM
#273 [亜夢]
-
あたしは荷物だけ持つと龍紀が寝てるあいだにこっそりと実家にかえることにした。
「亜夢…どこいくの…?」
「あ、ありさんとこ!!!!」
わかったよ、と弱々しい声で言うと龍紀は深い眠りについた。
すぐに電話した相手は裕也だった。
「……」
「…どした?」
-
:10/06/21 03:19
:F02B
:d897jUrM
#274 [亜夢]
-
気づいたらあたしは裕也の家にいて、彼の胸にしがみつくようにして大泣きした。
あたしからすれば、恋愛がすべてになってた。
龍紀の仕事や人柄をすべて理解しようとした。
でも耳をひらけば彼の悪い噂なのか真実なのかもわからないことが次々とはいってくる。
あたしの精神力はそんなところまで持つほど強くない…
-
:10/06/21 03:22
:F02B
:d897jUrM
#275 [亜夢]
-
「亜夢……」
優しく裕也があたしの頭をなでる。 安心できる。 ここにいれば何も怖くないって思える。
「亜夢、俺にしとけよ…」
裕也はぎゅっと抱きしめてきた。
あたしは流されそうになる…
「だめだよ……」
「ダメじゃないよ。 お前は男に甘えたいんだろ?…俺が不安を取り除いてやるから…」
-
:10/06/21 03:24
:F02B
:d897jUrM
#276 [亜夢]
-
唇が―…
意地悪に奪われる…
「裕也、だっ……」
駄目とも言えないくらいの余裕の無さ。
「亜夢、俺ずっと好きだった。 小さい頃からずうっと…」
抱き抱えられて地面に体を倒される。 裕也は無我夢中だった。 唇をうばい、手であたしを愛撫した。
「ゆう…っ」
-
:10/06/21 03:27
:F02B
:d897jUrM
#277 [亜夢]
-
あたしも不安や心配、嫉妬を取り除きたかったんだ…
気づけば隣には裸の裕也が寝てた。
すぐに腕を引っ張ってきてあたしに絡まった。
裕也は安心できる…
裏切るわけがない…
どんどん龍紀のせいであいた穴に、裕也が広がってゆく―…
-
:10/06/21 03:29
:F02B
:d897jUrM
#278 [亜夢]
-
次目を覚ましたときは裕也が頬にキスしてきたときのことだった。
「おはよ…」
裕也はどこか、いつもより柔らかい笑顔をつくった。
「ん…」
あたしはでている肩を布団でかくして、恥ずかしさを堪える。
幼なじみと…こんな関係になるなんて…
-
:10/06/21 03:31
:F02B
:d897jUrM
#279 [亜夢]
-
あたしはとりあえず裕也にすべてを話してから昨日会った女の人に電話をかけた。
「どうも……」
昨日の気性が激しい感じと違って、なにか弱々しい声がする。
「今大丈夫ですか?」
「いま…龍紀が帰ってきてて…電話切らないと…また殴られちゃう……」
折り返します、といって彼女は切った。
-
:10/06/21 03:33
:F02B
:d897jUrM
#280 [亜夢]
-
その30分後に龍紀から電話があった。
「亜夢、どこ?」
「いま…裕也んちいるよ。」
龍紀のなかでは裕也とアリサは大丈夫、安全だとおもっている。
「龍紀さっきまでなにしてたの?」
「風呂はいってTV見てた。」
…うそつき。
あたしはそう、とだけ答えるとすぐに電話を切った。
-
:10/06/21 03:36
:F02B
:d897jUrM
#281 [亜夢]
-
嫁の家にいってたはず…
お風呂にこの時間はいるわけがない…
あたしは携帯を閉じてから、数時間後してやっと『龍紀の嫁』から連絡がはいった。
「……もともとお客さんで、つきあうことになって、店にこなくていいって言われて…で、同棲して数ヶ月で妊娠したの。」
けど、と彼女は言う。
「ほかにもたくさん彼女はいたみたいだからね…あたしは見て見ぬ振りしてたのよ……」
-
:10/06/21 03:39
:F02B
:d897jUrM
#282 [亜夢]
-
「でも…あたしの思い出の場所にほかの女と来る神経がわからないのよ……」
涙声になった。
あたしは直ぐにでも別れるので安心してくださいと言いたかった。
「別れてとは言わないけど…あたしにも時間が欲しいのよ……子供もかわいそうでしょう…?」
不倫なんかする気もない…
人を傷つけてまで恋愛なんてしたくない。
-
:10/06/21 04:15
:F02B
:d897jUrM
#283 [亜夢]
-
それから数日後に、あたしは置き手紙と鍵をテーブルに置いて実家に戻った。
1年も経たないうちに終わってしまった恋。
それと同時に好きだったCIELのアルバイトも辞めた。
あたしは気がつけば毎日裕也と一緒にいるようになった。
形ではなく…あたしたちは自然に一緒にいることを選んだ。
-
:10/06/21 04:17
:F02B
:d897jUrM
#284 [亜夢]
-
龍紀へ。
あたしは龍紀と付き合ってゆく自信がありません。
あたしの前では素敵で優しくて紳士的で文句なしの彼氏…でもあたしは龍紀がどんな人間なのか未だによくわかっていません。
最近聞くのは龍紀の悪い噂ばかり…
あたしは本当に精神的に疲れました。
もうあなたと一緒にいれません…お願いです、あたしを大事におもうなら連絡しないでください…
今までありがとう。
-
:10/06/21 04:20
:F02B
:d897jUrM
#285 [亜夢]
:10/06/21 04:23
:F02B
:d897jUrM
#286 [亜夢]
-
***
時間は…了解、向かう先はmoet la roseに予約を取ったと。
あとは楓さんに連絡するのみだな。
「あ、朝日さん、ご無沙汰してます〜〜こないだの件で…」
電話した理由は【響皐月】のことについて。
桜のネタを使う、それから楓さん。
もう準備は完璧だった。
***
-
:10/06/21 05:18
:F02B
:d897jUrM
#287 [亜夢]
-
あたしと裕也が一緒にいるようになって、4か月が過ぎた。
あたしはCIELの仕事をやめて、大学に通いつつ、ヘアメイクのアシスタントのバイトを見つけて研修中だ。
貯金して近々旅行にいく予定。
あたしが龍紀と別れたことにアリサは突然すぎてびっくりしていたけれど、裕也とのことは、アリサ的に嬉しかったみたい。
「亜夢ちゃん、A4さんにお茶お出しして〜〜」
-
:10/06/21 05:21
:F02B
:d897jUrM
#288 [亜夢]
-
「はあい。」
バイトはすごく楽しかった。 夜の仕事をするお姉さんやホストさん達を接客ですごく勉強になることがある。
それに、ここはヘアとメイクのスタイリストもいれば…デザイナー・ムービーを制作するひと・カメラマン等と様々なことをやっているため、様々な面で勉強になった。
「亜夢ちゃん、休憩いいよ〜」
あたしは携帯をもって外にでると、裕也がシュークリームを片手に手を振った。
「お疲れ。 ほら…」
-
:10/06/21 05:25
:F02B
:d897jUrM
#289 [亜夢]
-
「パピヨンのシュークリームだあ☆ ありがと裕也。 今から自転車でかえるの?」
裕也はこの近くの本屋でバイトをしている。 丁度あたしの休憩時間より少し前に退勤するからほぼいつでも会えてる。
「えと…ここsparkさんですか?」
バイト先の名前だ。
はい、と答えると大荷物を持ったひとたちが店内へとはいっていった。
「なんか今日撮影があるとか…なんか言ってた気がする…」
-
:10/06/21 05:28
:F02B
:d897jUrM
#290 [亜夢]
-
モデルさんがスタジオにきて撮影するとかなんとか。 一度だけ現場をみたけれど凄く楽しそうだった。
コーディネーターのひとがたくさんの服をあわせたり、スタジオのスタッフさんがものを並べたりと、わくわくした。
「有名モデルなのかな?」
あたしと裕也はこそこそしゃべりながらガラス越しにスタジオを覗いたりした。
「あれ………」
見覚えのある顔…
-
:10/06/21 05:30
:F02B
:d897jUrM
#291 [亜夢]
-
神様、なんで引き合わすのでしょうか?あたしを彼は放っておいてくれないのでしょうか?
「亜夢……」
その声に裕也は反射的に振り向く。
「?! 暁がなんでここに……」
一段と疲れた顔をしている龍紀がびしっとスーツを着てsparkに足を運んでいる。
「暁と…亜夢がなんで…一緒に?」
切なそうな顔をする龍紀。
-
:10/06/21 05:33
:F02B
:d897jUrM
#292 [亜夢]
-
あたしの胸がぎゅうって締め付けられる。 龍紀のそんな顔みたくない―…
「最初からあんたの内部事情をしらべるために…俺が勝手に働き始めたんだよ。 …んで今は亜夢と俺は付き合ってる……」
付き合ってる、て言葉は裕也からはじめて聞いた。
「!…お前、もしかして…」
龍紀は裕也の胸ぐらをつかむ。
「やめて…龍紀…」
「亜夢!!! こいつはっ…こいつは……」
-
:10/06/21 05:36
:F02B
:d897jUrM
#293 [亜夢]
-
「あんなに簡単にことが運ばれるなんて俺も思いませんでしたよ。」
裕也?
「お前のせいで俺と亜夢は別れたんだろうっ!!!」
龍紀?
わけわかんないよ―…
***
俺の新たな決意。
強制的に別れさせる方法…それを考えた。
-
:10/06/21 05:38
:F02B
:d897jUrM
#294 [亜夢]
-
俺はすべてを紙に書き出した。
〇龍紀から亜夢に別れを告げることはまずない。
〇亜夢は不安で精神的に疲れている。
〇ちょうど倦怠期の時期。
〇桜が亜夢に吹き込む。(龍紀が暴力をふるう・家がほかにもある。)
〇結婚ネタ(楓さん)が掲示板で炎上している。
…とまあこんな感じかな。
〔まず亜夢の心を引き離さなくてはならない…〕
-
:10/06/21 05:41
:F02B
:d897jUrM
#295 [亜夢]
-
俺は店で一番【響皐月】を嫌いな人間に電話した。 朝日だ。 ほぼ同期ではいって…朝日から皐月に乗り換えた客がたくさんいた。
朝日は【響皐月】のつぶしで一度かなりの上客を消したって言ってたもんな。
「もしもし朝日さん、ご無沙汰してます。」
話は簡単だった。
朝日は…精神的に龍紀を追いつめたい。
俺は単にそれを利用して亜夢を自分のものにさたかった。
-
:10/06/21 05:45
:F02B
:d897jUrM
#296 [亜夢]
-
そこで朝日が提案したのが、結婚ネタがあがっている楓さんを利用することだった。
もちろん楓さんには亜夢のことを最近つきまとってるうざい客らしいから、追い払ってよ…と言う。
もちろん朝日が皐月さんはいい、て言うんですけどかわいそうだな、とおもって…
皐月に一途な楓はすぐにオッケーをだす。
オフの日。
俺はいつも以上に何してるかを亜夢に何時間おきに確認した。
-
:10/06/21 05:49
:F02B
:d897jUrM
#297 [亜夢]
-
〔7時にイタリアン食べにいくみたい☆〕
名前と場所を聞き出すとすぐに俺は楓さんに電話して至急むかうように指示。
脚本もキャストも準備が万端だった。
龍紀と亜夢がきて…悠長にご飯をたべているときに一番上客の楓さんに"それ"を言わせる。
龍紀のいちばん付き合いがながく、お金を持ってるひとだから、言い返すこともできない。
-
:10/06/21 05:52
:F02B
:d897jUrM
#298 [亜夢]
-
亜夢はうまいこと楓さんを追ってくれてすべて受け入れることにした。
精神的にへこんでるところを優しく、少し強引に誘うと流されるのが女だ。
「ゆっ…やあ―…」
俺の腕の中で狂う亜夢を龍紀に見せてやりたいぐらいだった。
俺は10年も前からこいつが好きなのに…
なんでホストに負けなきゃ駄目なんだよっ…
-
:10/06/21 05:54
:F02B
:d897jUrM
#299 [亜夢]
-
俺の計画通りにいくはずだった。
***
「お前か…朝日と楓が漏らしたよ。 まさか暁が亜夢の幼なじみだとは……」
あたしは理解できない。
裕也はあたしと龍紀を別れさせるために、そこまでしてたんだ…と思うと
なんだか切なくてどうしようもなくなった。
「亜夢……」
彼が呼ぶあたしの名前…
-
:10/06/21 05:57
:F02B
:d897jUrM
#300 [亜夢]
:10/06/21 05:59
:F02B
:d897jUrM
#301 [亜夢]
-
「俺はお前を信用してたのに……」
龍紀は切なそうに裕也の胸ぐらをつかんだ手を解いて言った。
「…俺にとって亜夢はすべてだった。 幼なじみで何年も一緒にいる子…この関係を壊したくない。 て、ただ俺は願うだけだった……」
でも、と裕也は続ける。
「あんたが俺から奪った!!! もっと魅力的になる亜夢をみるのが苦しかった。 …と同時に、悲しむ亜夢を見ると、あんたが憎かった…」
-
:10/06/21 23:44
:F02B
:d897jUrM
#302 [亜夢]
-
「―…」
龍紀は言い返せなかった。
確かにあたしは人を好きになることが出来た…でも同時に相手に対する嫉妬心や不安で押しつぶされそうになった…
と…
「…あっ皐月くん!!! 今電話しようとおもったところだったのよ。 時間がないから急いでっ!!!」
はやくはやく、とスタイリストの女の子が呼ぶ。
-
:10/06/21 23:52
:F02B
:d897jUrM
#303 [亜夢]
-
龍紀は聞こえないように舌打ちすると素早くスタジオへと走る。
「―…」
あたしと裕也の間で沈黙という重い空気が流れる。
「…亜夢…」
裕也はゆっくりあたしの肩に触れようとする。
「やだっ…」
あたしはその手を振り払う。
-
:10/06/21 23:56
:F02B
:d897jUrM
#304 [亜夢]
-
あたしが龍紀を信じればこんなことにはならなかった。 あたしが、裕也の優しさに甘えたから、こんなことになったんだ…
「―…」
あたしは何も言えなかった。
裕也との今までの関係が音をたてて崩れていった。
あたしを想ってしてくれたことかもしれない。 でも、あたしのことを考えずに自分の気持ちを優先したんだ、裕也は―…
あたしは何も言わず店に戻った。
-
:10/06/21 23:59
:F02B
:d897jUrM
#305 [亜夢]
-
休憩時間なんて一瞬で終わったように思えた。 龍紀が隣のブースで撮影しているとおもうと胸がバクバクいった。
外をちらっとみると裕也の後ろ姿が見える。 あと数時間あるのに、待ってるつもりなんだろう。
「お疲れさまです―…じゃあ髪の毛お願いします。」
担当がたまたまあたしがアシストしてる人だった。
「お願いします。」
-
:10/06/22 00:02
:F02B
:y0EXPsFg
#306 [亜夢]
-
龍紀があたしの目の前でセットされている―…
視線はあたし、携帯の行き来をしてた。
あたしは赤の他人なんかじゃない。 龍紀は初めての恋人…すべて一緒にしてきた。
異性とのはじめての…
嬉しい気持ち、楽しい気持ち、もどかしい気持ち、切ない気持ち、恥ずかしい気持ち、いやな気持ち、不安な気持ち…
たくさん、たくさん…
-
:10/06/22 02:41
:F02B
:y0EXPsFg
#307 [亜夢]
-
「こないだ雑誌読みましたよー皐月さん。」
担当の西川さんが【響皐月】に声をかける。 それはどうも、と愛想笑いする龍紀。
「なんか…恋愛のおはなし…切なくなりました。」
「ああ…お客さんにはうまいこと話作ったね、て言われたけどね…」
くすくす笑って龍紀が言った。
「私も正直…作り話かと思いましたけど…あたしが過去にあった体験と似てたので。」
-
:10/06/22 02:45
:F02B
:y0EXPsFg
#308 [亜夢]
-
「そのときの彼氏が置き手紙して、さよなら…とだけと、鍵がテーブルの上にあったこと…今でも忘れられないです……」
西川さんが苦笑いをして言った。
それ…あたし?
「俺は1ヶ月くらい…なにも喉に通らなくて、やっと吹っ切れそうになって…過食症ですよ。 だから少し太りましたけど。」
でも…と龍紀が続ける。
「彼女が今おれを必要とするなら……すぐにでも連れさらいたい……」
-
:10/06/22 02:48
:F02B
:y0EXPsFg
#309 [亜夢]
-
「彼女にほかの男がいても?」
「…そのときに彼女が幸せなら、俺はなにもいいませんよ…」
切なそうにあたしを見て微笑んだ。
「あたしっ……」
「亜夢、いま幸せか?」
龍紀がそっと言う。
西川さんは驚いた顔であたしを見る。 また【響皐月】をみて、え?て表情をつくる。
-
:10/06/22 02:51
:F02B
:y0EXPsFg
#310 [亜夢]
-
「……」
沈黙が広がる。
「今お前は裕也といて幸せなら…それでいいんだ。 たとえ、故意に俺たちの別れがあったとしても……おまえが、"今"幸せなら俺はいいんだよ。」
幸いほかのお客さんは店内にいなかった。
ただ、流れる音楽だけが耳にはいった。
外にみえる裕也の背中。
-
:10/06/22 02:54
:F02B
:y0EXPsFg
#311 [亜夢]
-
「あたしは―…」
裕也がいいの?
龍紀と戻りたいの?
ううん…違う。 あたしは裕也を龍紀の代わりにしてたの?
龍紀に会って、すぐに裕也への感情がなくなってしまったの?
「―…」
答えなんてすぐでなかった。
-
:10/06/22 02:55
:F02B
:y0EXPsFg
#312 [亜夢]
-
「俺は…一目惚れしてどうしようもなくて、ホストていう職業だからお前には相手にされないって思ってた。 でも違った。 俺のこと……まるごと愛してくれた。」
けど、と続ける。
「俺はお前が悩んでることに気づいてやれなかった。」
ごめん…頭をさげれないからか、龍紀は目を閉じてそうあたしに伝えた。
西川さんはただただビックリしてて、ただただ仕事に集中してた。
-
:10/06/22 02:58
:F02B
:y0EXPsFg
#313 [亜夢]
-
「ごめん…あたし、わかんない。 龍紀のことで悩んでるときに裕也があたしの支えだった。 けど…裕也があたしに心配にさせるようなことをしてたんなら……」
あたしの頭の中は何年も掃除されてない倉庫みたいになってた。
「わかんない……」
幸せか、幸せじゃないか。
分からないはずなんてないのに、あたしははぐらかしてしまった。
-
:10/06/22 03:01
:F02B
:y0EXPsFg
#314 [亜夢]
-
撮影が終わり、あたしも片づけをすれば帰れるというときだった。 ガラス越しに裕也と龍紀の姿が見えた。
もしかして―…
あたしは素早く片づけをしてタイムカードをきると、たばこを吸うふたりが何も喋らず立ってこちらに目を向ける。
どっちか…選べってこと?
できないよ―…
-
:10/06/22 03:03
:F02B
:y0EXPsFg
#315 [亜夢]
-
裕也は…
龍紀からあたしを奪い取るくらい、自分のものにしたくて、ってことはあたしのことが凄く好きで…
でも
龍紀は…
あたしに無理強いしない。 でも想いはずっと強くて、すべてあたし優先で考えてくれてる… あたしが幸せなら、いいと。
-
:10/06/22 03:08
:F02B
:y0EXPsFg
#316 [亜夢]
-
あたしは…
…の手をとった。
-
:10/06/22 03:09
:F02B
:y0EXPsFg
#317 [亜夢]
-
「いいのか?」
後ろを振り返りながら彼は言った。
あたしは首を縦に振る。
やっぱり…あたしの手はこの手にフィットする。
彼があたしを求める。
同時にあたしも彼を倍求める…
手をつないでるだけでも幸せ。
…なら、いいんだよね?龍紀。
-
:10/06/22 03:11
:F02B
:y0EXPsFg
#318 [亜夢]
-
龍紀はあたしがほかの誰かと幸せになったらほんとに幸せなの?
ねえ……
「お前は俺のもんじゃないとだめだっ…」
ぎゅうっと抱きしめる。
ねえ、裕也……
あたしはあなたの手に簡単に落ちてお互い恋をしたのかな?
それとも…あたしは、ただ龍紀の想いを断ち切るため?
-
:10/06/22 03:13
:F02B
:y0EXPsFg
#319 [亜夢]
-
あたしは
…龍紀の手を取った。
裕也があたし達にした行為が許せなかったとかではない。
ただ…
あたしは龍紀と居たかった。
あたしを一番に考えてくれる龍紀と…
-
:10/06/22 03:16
:F02B
:y0EXPsFg
#320 [亜夢]
-
まるでこの1年は…嵐のようだった。
龍紀との出会いから恋愛…不安と嫉妬…裕也からのアプローチに、よりかかってしまったあたし、…付き合って穴を埋めようとして…時間が経って…嘘が事実になる。
どちらとも居れる可能性があった今、あたしは龍紀といる。
「お、亜夢みてみて!!!」
旅行のパンフレットをみてはしゃぐ龍紀の肩のうえにあごを乗せてあたしはのぞき込む。
-
:10/06/22 03:19
:F02B
:y0EXPsFg
#321 [亜夢]
-
「わっ…」
屋久島の写真。
「すごくない?実はさ…今度店で慰安旅行があるんだけど、俺行く予定ないから…亜夢とどっかいこっかな〜と想ってさ☆」
わあい♪あたしは両手を挙げて喜ぶと龍紀は子供みたいに無邪気に笑う。
「それに…亜夢の誕生日じゃん?」
はじめて一緒に過ごせるの誕生日。
-
:10/06/22 03:22
:F02B
:y0EXPsFg
#322 [亜夢]
-
ふたりでソファに寝転がってあ―だこ―だいいながら旅行だったり他愛もない話をする。
たまにキスしたり、たまにふざけて龍紀が胸をさわったり、じゃれ合う…ただ、それだけで幸せ。
「あ……」
龍紀がなにかを思い出したように言った。
「ん?どしたの?」
いや、とTVをまじまじと見始める龍紀。
-
:10/06/22 03:26
:F02B
:y0EXPsFg
#323 [亜夢]
-
あたしは特に気にしなかった。
そのとき龍紀がなにを思い出したかも……
まさか、過去のあったことをまた、振り返るなんて…今しあわせ絶頂期のあたしには思いがけないことだったから―…
***
あいつの兄弟―…
俺は初めて会うんだっけ?
***
-
:10/06/22 03:29
:F02B
:y0EXPsFg
#324 [亜夢]
:10/06/22 03:32
:F02B
:y0EXPsFg
#325 [亜夢]
-
「あ.....」
俺は思った。
もうすぐマナブの命日だった。
あっという間に時間が過ぎる。
俺はもう22歳の年になってた。
-
:10/06/22 06:53
:PC
:vp.J4.Ao
#326 [亜夢pc]
-
マナブの命日には勿論、亜夢も連れていく予定だった。
もう華も普通に生活出来ているくらいだし、ひさびさにマナブに会いにいくんじゃないだろうか。
マナブという名の親友がいなくなって7年もの時間が経ってしまっていた。
-
:10/06/22 06:56
:PC
:vp.J4.Ao
#327 [亜夢pc]
-
ひさびさに華に連絡をする。
<もうすぐマナブの命日だけど、あの坂...行くのか?>
勿論華にとってマナブの命日はいい日ではない。 あの日に彼女は4年もの眠りにつくことになってしまったんだから...
返事はすぐには返ってこなかった。
<彼女つれていくの?>
-
:10/06/22 06:59
:PC
:vp.J4.Ao
#328 [亜夢pc]
-
俺は何にも戸惑うことなく、「うん」と返事をした。 すると次はすぐに返事がかえってきた。
<じゃあ行きたくない...>
やっぱり百合香が言ってた通りで華は多分俺に未練がある。 自分が命を落としかけた日に、大事な俺たちの思い出に、彼女を連れてくる意味が華には理解できないんだろう。
俺はマナブっていう大事な連れにはすぐに亜夢のことは紹介したかった。
-
:10/06/22 07:01
:PC
:vp.J4.Ao
#329 [亜夢pc]
-
「今週末、俺実家かえるけど....」
俺は伺うようにして亜夢に問いかける。
「うん?分かったよ〜。」
"一緒に行く"とか可愛らしく言ってくれれば誘いやすいのに〜と思いながら、すねた顔をする龍紀。
「誘ってくれればいいじゃん。」
-
:10/06/22 07:03
:PC
:vp.J4.Ao
#330 [亜夢pc]
-
思わず笑う亜夢。 つられて龍紀も苦笑いしながら"一緒に帰る?"と聞く。
「龍紀ってたまに、甘えん坊だよね。 いつもオラオラ言うくせにい〜.....」
「エッチのときはね☆」
にかっと満面の笑みを見せる龍紀。 いまだに電気をつけてなんてとてもじゃないけど出来ないあたしにとっては、本当に恥ずかしいのが下ねたとかそっち系だ。
-
:10/06/22 07:04
:PC
:vp.J4.Ao
#331 [亜夢pc]
-
「実はさ...マナブの命日だから実家かえろうかなって。 まあ親父達にも紹介したいし、せっかくだからお前も俺と一緒に親友の墓参りきてくんない?...天国にいったやつだけど、紹介してやりたいからさ。」
会わせて欲しい、と正直に思えた。
しかも龍紀のご両親は初対面だから正直緊張する。
「俺の学生時代のときの、思い出の場所とかいろいろみにいこー?」
うん、と元気よく返事する。
思い出の地は、誰かにとっては思い出したくない地にもなるってことを、そのとき龍紀はさほど、気にしてはなかった。
-
:10/06/22 07:07
:PC
:vp.J4.Ao
#332 [亜夢pc]
-
時間が経ち、週末になった。
夏前の少しじめじめした季節だ。
あたしは龍紀の助手席に乗り込むとペットボトルを片手に元気よく『しゅっぱーつ!』と大声をあげる。
休みを取った龍紀とは2日ゆっくりできるってわけだ。
数時間運転しては休憩所にとまったりして、ふたりで遠出するのは初めてだったから運転中でも凄く楽しかった。
「わーもうすぐ?もうすぐ着くの?」
-
:10/06/22 07:10
:PC
:vp.J4.Ao
#333 [亜夢pc]
-
道路標識の案内のところに書かれた龍紀の地元の名前。
そうしてる間に車は停まって、立派な家の前であたしは、あっけにとられたまま、鐘を鳴らして、誰かが出てくるのを待つ。
早速ご両親?
「龍紀☆ おかえり〜!入りなさいっ。 あら...あらま!彼女?ま〜かわいい〜」
龍紀そっくりで長身のお母さんがあたしを手招きしている。
うわああ、緊張する。///
-
:10/06/22 07:12
:PC
:vp.J4.Ao
#334 [亜夢pc]
-
ご両親は沢山の手料理をテーブルにずらあっと並べるとあたしと龍紀を隣同士にして、ご飯を食べながらお喋りしましょう、となった。
龍紀がコソコソ、と耳元で言う。
「俺の親、こうして食べるときに上品かとか、出来てるかとか見るから、気をつけろよ。」
苦笑いして親指をたてると『頑張って』と口パクで言う龍紀。 そんなんなら、来るまえにレッスンでも受けておくんだったよ〜〜
馬鹿龍紀!
でもちゃんと作法はお父さんとお母さんに教えてもらったからいけるはず♪
-
:10/06/22 07:14
:PC
:vp.J4.Ao
#335 [亜夢pc]
-
「へえ、龍紀の彼女にしては出来る女の子ね!びっくりだわ。」
にんまり微笑む御母さん。
お父さんは終止無言だし、あたし何を喋ったらいいの?
「明日こいつ連れてマナブに会いにいってくるよ。」
「あ、そういえば...マナブ君の双子の弟がこっちに帰ってきてるみたいなのよ。 顔も全然似てないみたいだけどね。 お墓参りで会うかもね。」
「忍ってやつだっけ?」
「そうそう。」
マナブさんには双子の弟さんがいたんだ...
-
:10/06/22 07:17
:PC
:vp.J4.Ao
#336 [亜夢pc]
-
その日の夜はご両親と龍紀とあたしで近くの銭湯になぜだか行った。
あたしの場合は家族で銭湯なんて入りにいったりしなかったので何故だか新鮮だったし、楽しみだった。
龍紀は何故だか銭湯がかなり好きみたいで、スキップしながらお父さんとじゃれあっている。
「うふふ、亜夢ちゃんのおかげかしらね。」
「え?」
「龍紀があんな風に子供みたいに、楽しそうにできるのは、亜夢ちゃんのおかげじゃないかなって。」
-
:10/06/22 07:19
:PC
:vp.J4.Ao
#337 [亜夢pc]
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「あの子はマナブの死から、いやな思いをしたりしたからね...考え方が皆を見下すようになってしまって、一時期は自分の子供でも可愛くない、と思えたわ。 でも今は楽しそう。 毎日充実してるのかしら?」
嬉しそうにお母さんは微笑むと長い黒い髪の毛を束ねてタオルで包み込んだ。
「そうだと嬉しいです。 でもあたしは龍紀さんから、たくさん元気を貰ってます。」
「そう。」
嬉しそうに微笑むお母さん。
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:10/06/22 07:21
:PC
:vp.J4.Ao
#338 [亜夢pc]
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男同士もいろんな話をしたみたいで、さっきまで無口だったお父さんも何かとあたしに質問してくるようになった。
4人で家に戻っているときに龍紀が「あ...」とまた言葉をもらす。
「あら、華ちゃんじゃない。」
お母さんが気づいて玄関に近寄っていく。
ひさびさにみる華さんは何だか少し痩せた気がした。
「ご無沙汰してます。 皆さんで銭湯いってらしたんですね。 ごめんなさい、お邪魔してしまって。 久しぶりにお母さん達にご挨拶しようとおもって...」
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:10/06/22 07:24
:PC
:vp.J4.Ao
#339 [亜夢pc]
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4年ぶりに目覚めてから龍紀の両親には会ってなかったようだ。
「今回のことで、龍紀にも大変迷惑をかけたので....」
なんだか変な雰囲気。
「全然迷惑じゃないよ。 俺、いまは全部貯金してるし。」
別に嫌味じゃないし、認めたくもないんだろう。
確かに愛し「た」けれど、もう愛し「てる」じゃなくなったってことをハッキリさせたかったみたい。 どうやら龍紀はね。
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:10/06/22 07:25
:PC
:vp.J4.Ao
#340 [亜夢pc]
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「龍紀、あしたマナブのとこにお墓参りいく?」
「当たり前だろ。」
「じゃあ待ち合わせしましょうよ。 亜夢ちゃんはいかないんでしょう?」
当たり前のように行かないことになってるあたし。 なんだか華さんは、龍紀に未練たらたらな気がする。
「亜夢は来るよ。 俺が紹介したいんだよ、マナブに。 だから無理矢理連れてかえってきた。」
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:10/06/22 07:27
:PC
:vp.J4.Ao
#341 [亜夢pc]
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そのあとは沈黙だった。
華さんは適当に龍紀の両親とお喋りして帰っていった。 そうか、近所なんだものね。
「なんか華が明日、墓の駐車場に13時に待ち合わせだって。 何で一緒に墓参りしたいんだろう。 わかんね〜。」
龍紀はつまんなさそうに手足をのばすと寝ようっていってあたしの腕を引っ張った。
こういう元気があるときは龍紀がエッチしたい日だ。
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:10/06/22 07:29
:PC
:vp.J4.Ao
#342 [亜夢pc]
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「亜夢......」
龍紀の部屋はちゃあんと残ってある。
ベッドも机もそのまんま。
それに帰ってくるって連絡を受けてたからか、お布団にはいい香りの芳香剤がいっぱい鼻にはいってくる。
「あっ...たっつ...」
実家でまで愛し合うなんてどうかしてる。///
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:10/06/22 07:30
:PC
:vp.J4.Ao
#343 [亜夢pc]
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翌日13時。
この墓参りが終わったから夕方と夜は龍紀の思い出の街巡りにつきあって、そのまま車でふたりの家に戻ってくる予定だ。
13時をすぎても華さんは来なかったので、ふたりで早速マナブさんのお墓にむかった。
ばけつには水、花芝を持って、お墓を綺麗に掃除すると、夏前だからといって水をたくさんかけてあげた。 ふたりでお線香をあげて、しっかり手をあわした。
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:10/06/22 07:32
:PC
:vp.J4.Ao
#344 [亜夢pc]
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「兄さんはお前のことなんて、もう親友とも思ってないはずだよ。」
と後ろから声が聞こえた。
マナブさんの双子の弟?
隣をみると龍紀がびっくりした顔でそのひとを見つめてる。 あたしには誰だか分からない。
「まさかだろ?俺もびっくりしましたよ。 まさか俺の兄貴の親友があんただったなんてね...うちの店のナンバーワン【響皐月】さん。」
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:10/06/22 07:34
:PC
:vp.J4.Ao
#345 [亜夢pc]
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***
マナブの双子の弟{忍}は
俺の店で一番俺を嫌っているあの男だった。
俺の太客を利用して爆弾して、関係を切れさせたりするような男。
こないだの裕也が起こした事件にもかかわっている男。
朝日だ。
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:10/06/22 07:35
:PC
:vp.J4.Ao
#346 [亜夢pc]
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朝日が俺の目の前で「兄貴」やら「兄さん」やら白々しく呼んでることさえ、血縁者じゃない俺にはイラっとさせた。
「お前なんか...マナブが死ぬときにも駆けつけなかったくせに...」
「そのときはそれより大事なことをしてたんですよ。【響皐月】さん。」
彼の後ろからひょこっと顔をだしたのは華さん。
もしかして、これを知って華さんは待ち合わせしようとか言ってたんじゃ...?
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:10/06/22 07:37
:PC
:vp.J4.Ao
#347 [亜夢pc]
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「あんたって酷いよね。 あの日...兄貴が何しにバイクを走らせたか、黙ってるんだろう?で、華さんと付き合った。 マナブが聞いたらどう思う?」
そうだ。
言わないほうがいいと勝手に判断した秘密。
それはマナブが15のとき亡くなった日...バイク運転してたのは、華に告白しにいくためだった。
でも俺は、それを華に言ってしまうと酷く傷つく、と思って心の箱のなかに閉まっておいたのだ。
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:10/06/22 07:39
:PC
:vp.J4.Ao
#348 [亜夢pc]
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「俺の口からはマナブの想いを伝えることができない。 だからこそ、今のいままで黙ってきた...」
「違うだろ。 あんたは華さんのことを独り占めしたかったんだ。」
「マナブを殺してまで俺は華を自分のものにしたかったって意味か?頭大丈夫かお前!」
死ぬ間際にも来なかった弟。
俺の幸せをぶち怖そうと必死な男。
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:10/06/22 07:40
:PC
:vp.J4.Ao
#349 [亜夢pc]
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「俺は絶対に許さない。 兄貴が死んで華さんと付き合ったのに事故にあって目が覚めたからってさよなら、するような男...俺は絶対に許さない!」
***
あたしには状況がよく把握できなかった。
過去の話は聞いたけど、誰が誰なんてわからない。
ただ、分かることは、マナブさんの弟が龍紀を恨んでいること、それから華さんはあたしが憎くてたまらないこと。
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:10/06/22 07:42
:PC
:vp.J4.Ao
#350 [亜夢]
:10/06/22 07:45
:F02B
:y0EXPsFg
#351 [亜夢]
:10/06/22 07:46
:F02B
:y0EXPsFg
#352 [亜夢pc]
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お墓参りを終えた後の龍紀は黙り込んだまま、ただ、煙草を不味そうに吸ってた。
あたしは状況の整理が出来ないままだ。 正直よく分からない。 理解出来ない。
かといって今龍紀に質問しても無駄なことくらいわかってた。
「ごめんな、亜夢。」
弱々しく溢れた龍紀の声。
大丈夫だよ、と言ってあたしは龍紀の手をぎゅうっと握りしめる。
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:10/06/23 07:46
:PC
:gsVfLdww
#353 [亜夢pc]
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龍紀は華さんよりあたしを選んだ。 それは華さんが目覚めてても必然的にそうなるはずだった。 形が違うとも、華さんが目をさましたのはあたし達が結ばれてしまったあと。
仕方ない、のかもしれない。
華さんにはフェアではないのかもしれない。
けれどもう「今」がある限り、あたし達のこの形は邪魔がないかぎり崩れることがない。
なんででも龍紀は動揺したの?
マナブさんの双子の弟さんの言われたことについて心配してるの?
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:10/06/23 07:48
:PC
:gsVfLdww
#354 [亜夢pc]
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「ほんと、ごめん。」
龍紀はその日はそれしか言わなかった。
帰り道の車の中も耳にはいるのは音楽だけ。 でもあたしも無理強いして話を聞きたくなかったし、龍紀の頭の中で整頓が終わったらすべてを話してもらおうとおもってた。
龍紀の実家に帰省して、こちらに戻ってきて一週間。
龍紀は出勤していない。
鳴りっぱなしの電話をも取らないようにしている。 あたしは何度も質問してもボーとした顔であたしを見つめる。
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:10/06/23 07:50
:PC
:gsVfLdww
#355 [亜夢pc]
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朝日は【響皐月】の同期で
親友マナブの双子の弟。
そのかわり全く似ていない。
マナブの弟、忍(朝日)は
華のことがずうっと好きだった。
でも
マナブが好きなことを知って身をひいたというか、応援するようになった。
マナブが亡くなってーー
その親友である龍紀が華と付き合いだしたときいたときは発狂しそうだった。
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:10/06/23 07:52
:PC
:gsVfLdww
#356 [亜夢]
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マナブが亡くなって一回忌のときに弟、忍はそれを知った。
喪服に身を包んだ顔が整ったふたりが並んで座ってる。 時折泣き出す華を抱き寄せる龍紀。
許せなかった…
忍は確信していた、龍紀はマナブが華を好きだったこと知っていたと。
憎しみしかあふれてこなかった。
マナブが生きていればこんなことにはならなかったんだろう…
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:10/06/27 14:56
:F02B
:.KPl7Ugs
#357 [亜夢]
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生前前から言ってた。
「―華はやっぱり龍紀が好きなんだよ。 俺が好きだから好きな女の見てる…目で追いかけてるものがいやってくらいわかる。」
だからつき合えよ、遠慮せずに…それがマナブがいつも龍紀に言ってたことば。
すっきりしないからと言ってマナブは華に告白しにいく途中だった―…
でも今想えば華が助かったのは奇跡だ。 マナブが守ってくれたのかもしれない……
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:10/06/27 14:59
:F02B
:.KPl7Ugs
#358 [亜夢]
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―――
出勤しなくなった龍紀は見る度になんだか痩せた。 もともと筋肉がいい具合についてて、ガタイはいいほうだったのに、長身痩せ型になってしまっていた。
「なあ、亜夢…」
たまに口を開いたかとおもうと首を横に振って"なんでもない"とだけ言う。
あたしもどうしていいかわからない。
「龍紀…あたし実家かえるね?」
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:10/06/27 15:04
:F02B
:.KPl7Ugs
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