-Castaway-
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#440 [◆vzApYZDoz6]
京介「どした?」
藍「…その、お礼忘れてたし…助けてくれてありがと」

俯いたまま小さく呟く藍を見て、京介の表情が柔らかく綻んだ。

京介「いいよ、俺がしたくてした事だし」
藍「…なによ、格好つけちゃって!」
京介「って、それはちょっとひどくね?」
内藤「いいじゃないか、ツンデレ」
京介「いやいや、一体何の話?」
ライン「いいねぇ、若いって」
レイン「いや、俺達も十分若いぞ。と言うわけで嫁にならんか?」
リーザ「丁重に、お断りしますわ」
ガリアス「…恋愛、か。全くついていけんな」
ブロック「右に同じく。俺にとってはバイクが恋人さ」
フラット「上に同じく。俺にとっては以下略」

⏰:08/02/13 04:52 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#441 [◆vzApYZDoz6]
藍の一言をきっかけに、さっきまでの戦闘が嘘のように場の雰囲気が和む。
皆を一頻り見渡して、ハルキンが満足そうな笑みを浮かべた。

ハルキン「一件落着、だな」
アリサ「帰りましょ、バニッシちゃん♪」
内藤「おいやめろ、くっつくな」
レイン「あーうぜぇうぜぇ」
ライン「おもいっきりひがむな」
京介「……ま、何はともあれ、これで終わったんだな」
ラスダン「いいや。…まだ終わってないみたいだよ」

1人浮かない声のラスダンに、全員が振り返る。
ノートパソコンを具現化し、自分が今しがた頭の中で見ていた映像をディスプレイに表示させ、皆の方に向けた。

⏰:08/02/13 05:11 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#442 [◆vzApYZDoz6]
そこに映っていたのは、携帯型のミサイル等とは比較にならない程の大きなミサイル。
1基の大陸間弾道弾が、京介達がいるこの基地へ、猛スピードで飛んできていた。基地との距離を見る限り着弾まであと僅かしか無いだろう。

内藤「あいつの言ってた道連れとは、これのことか…!」
リーザ「早く逃げましょう!」

一行が踵を返し、屋上の扉へ向かう。
その時、要塞内部で大きな爆発が連続して発生した。
ハルキン「ちっ!誰かが自爆スイッチでも押しやがったか!?」

続いて起こる激しい縦揺れに要塞が耐えきれず、京介達の足下から真っ二つに分かたれた。

⏰:08/02/13 12:22 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#443 [◆vzApYZDoz6]
亀裂が走った要塞屋上で、一行は完全に2手に別れた。

内藤「全員無事か!?」

内藤が辺りを見回す。
亀裂を挟んで内藤がいる側は、自分の腕にくっついていたアリサと、後ろで傍観していたハル兄弟、ガリアス。ジェイト兄弟とバイクも居た。
階段は、亀裂を挟んだ向こう側。間に走る溝は深く、階段からは脱出出来そうにもない。

ブロック「みんな掴まれ!!」

だが、内藤側には鉄の巨人がいた。屋上から飛び降りて脱出するのは可能だろう。
内藤が爆音に掻き消されまいと、声を張上げた。

内藤「ハルキン!川上!そっちは頼んだぞ!」

⏰:08/02/14 01:28 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#444 [◆vzApYZDoz6]
任せろ、という京介の叫びが返ってくる。内藤はそれを確認し、鉄の巨人の元へ駆け出した。
既にエンジンを吹かして準備万端整う巨人の右腕にガリアスが、左腕にハル兄弟が掴まっている。

アリサ「早く!♪」

アリサが大振りに手招きする。自爆の影響で激しく縦に揺れる屋上を這うように走り、アリサを抱え込んで、ちょうど巨人の肩にあたる突起に手を掛けた。

フラット「しっかり掴まってろ、舌噛むなよ!いくぜ!」

アクセルを吹かし、クラッチを弾くように離す。
駆け出した巨人がフェンスを突き破り、内藤の体に浮遊感が生まれる。
次に訪れるであろう落下感に備え、内藤が片目を強く瞑った。

⏰:08/02/14 01:38 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#445 [◆vzApYZDoz6]
京介「藍、走れるか!?」
藍「大丈夫!急ごう、京ちゃん!」

京介とハルキンの居る階段側に別れたのは、戦力はさして大きくない藍とラスダン、そして手負いのリーザ。
怪我人を守らねばならぬ状況で、懸命に非常通路の大螺旋階段を降りていた。
京介が藍の手を引きながら落ちてくる瓦礫から藍を守り、ハルキンが手負いのリーザに肩を貸しながら瓦礫を潰して道を開く。ラスダンが脳内で頭上を視て状況を見極め、出来るだけ落下物の少ない道を先導する。
そんな風に、出来るだけ全力で螺旋階段が終わる2階に到着した。

ハルキン「あと少しだ!」
京介「よし…うわっ!」

⏰:08/02/14 01:50 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#446 [◆vzApYZDoz6]
要塞のどこかで2次爆発が起きた。
立っていられない程の揺れと耳をつんざくような爆音。それに加えて、さっきよりも大きな瓦礫が、まるで壁のように落ちてくる。
1階へ降りる階段は廊下の端。だが、そこまでの道程の間に落ちてきた瓦礫が立ち塞がった。

京介「道が!」

行く手を阻まれ、全員が足を止める。
激しい縦揺れでまともに走れていなかった為、巻き込まれる事は無かった。
だが振り返るとそこにも降り注ぐ無数の瓦礫が。

ハルキン「こっちもか!」

瓦礫に挟まれ密閉空間となった廊下から脱出するには、床を壊すしかない。
だがそれよりも先に、瓦礫の塊が京介達の頭上に襲い掛かった。

⏰:08/02/15 01:05 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#447 [◆vzApYZDoz6]
京介「くそっ!」
藍「きゃっ!」

藍が咄嗟に目を瞑り、京介が落ちてくる瓦礫を叩き散らす為身構える。
ハルキンの空間制御は間に合わない。これだけの数と質量の瓦礫を潰しきるのは不可能に近い。
それが分かっていてもハルキンが構えた、その時。

廊下の壁を勢いよく突き破って、無数の隼が現れた。
その隼は全て純白で、体は肉ではなく紙吹雪の塊。
不意の出来事に京介の動きが止まるが、瓦礫の方は隼が次々と粉塵に変えていき、落ちてこない。
程無くして、隼が突き破り穴が空いた壁から、青い巾着袋を片手にクルサが出てきた。

クルサ「危ないところだった…」

⏰:08/02/15 01:15 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#448 [◆vzApYZDoz6]
京介「あっ!あんたは確か…えーっと…」
ハルキン「クルサ!助かったぞ!」
京介「それだクルサ!ありがとう!」
クルサ「うん…くっそ、バニッシの奴こっぴどくやってくれた」

クルサは右手に巾着袋を持ち、左手で右肩を押さえている。
片足を引き摺り苦し気な表情を浮かべるその姿は、内藤に倒された時のダメージを負ったままのようだ。
頭上では隼が最後の瓦礫に突進し、落ちてくる瓦礫は一段落した。
だがしかし、直ぐに次の瓦礫がやってくるだろう。
ラスダンがクルサに肩を貸したのを確認し、ハルキンが床を見据えて拳を振りかぶる。
だがそれは、壁が豪快に吹き飛んだ事によって邪魔された。

⏰:08/02/15 01:27 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#449 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「今度は何だ?」

吹き飛んだ壁は、クルサが出てきた穴の対面側。
ハルキンが舌打ちをして、むせ返りそうになる土埃に鼻と口を押さえながら、かなり派手に空いた巨大な穴の向こうを見る。
そこに居たのは鉄の巨人。だが壁を破壊したのは、巨人の足元にいるハル兄弟の双砲撃だった。

ライン「逃げ道は確保してやったぞ!」
レイン「次の瓦礫が来る前に降りてこい!」
ハルキン「ええい、余計な事を…」
京介「いいから行こうぜ!」

京介が、速く走れない藍を脇に抱えて駆け出した。
ハルキンもリーザを肩に担ぎ上げ走り出す。
しかし、別段身体能力の高くないラスダンと怪我人のクルサは、初動が遅れた。

⏰:08/02/15 01:37 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#450 [◆vzApYZDoz6]
一番に穴に辿り着いたのは京介と、脇に抱えられた藍。振り返ると、すぐ後ろにハルキンが走ってきていた。
まだ奥にいるラスダンとクルサが気になったが、早く穴から飛び降りろ、と顎で指示するハルキンに促され、眼下の地上へ飛び降りた。
続けざまにハルキンが穴に到着し、担ぎ上げていたリーザを降ろす。

ハルキン「1人で飛び降りれるか?」
リーザ「…何とかいけそうですわ」
ハルキン「よし。俺はあいつらを連れて来る」

ハルキンがリーザを送り出し、まだ穴から距離のある場所にいるラスダンとクルサを見る。手助けに行こうと踏み出そしたその時。

とうとう、ミサイルが着弾した。

⏰:08/02/15 01:46 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#451 [◆vzApYZDoz6]
ミサイルの直撃によって、要塞は完全に崩壊した。
7階建の要塞、その2階から上の部分を支えていた床や壁が瓦礫となって、全てがラスダンとクルサのいる場所に落ちてくる。その数は筆舌に尽くしがたい程。
ハルキンの足が止まる。恐らく駆け寄るよりも先に、瓦礫が滝の如く落ちてきて、巻き込まれるだろう。
だが、ハルキンのいる穴からラスダンとクルサがいる場所までの道に、瓦礫は降ってこなかった。
隼の大群が、瓦礫を体で止めていた。まるで穴までの道に純白の屋根が架かったように。

ラスダンが振り返る。
そこには、巾着袋の口をラスダンに向けている、満身創痍のクルサがいた。

⏰:08/02/15 18:36 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#452 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「うわっ!」

ラスダンの体が、巾着袋から飛び出した紙の龍に飲み込まれる。
紙の龍がそのまま純白の屋根の下を駆け抜けて、ハルキンに向かってラスダンを吐き出す。
ハルキンがラスダンを受け止めるのと同時に、純白の屋根が崩れ落ちた。

ハルキン「クルサ!!」

押し潰される紙吹雪の上に、大量の瓦礫が落下する。
瓦礫の僅かな隙間から見えたクルサの顔。小さく微笑んで、顎で行けと指示する。最後にまた小さく笑って、瓦礫の山に見えなくなった。

ハルキン「ちっ…くしょうが!!」

ラスダンを抱え穴から飛び降りる。
ハルキンが着地して振り返る頃には、既に2階も崩れ落ちていた。

⏰:08/02/15 18:52 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#453 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「あいつに、助けられたか」
ラスダン「…助けられたね」
ハルキン「全く…どいつもこいつも格好付けやがって」

手負いの体では間に合わないと判断したのか、それともハルキンが空間転移を使って助けようとしていたのが分かっていたのか。
何れにせよラスダンとハルキンは、自分の身を犠牲にしてクルサに助けられたのだ。

ハルキン「またいつかここに来てやらないとな。…車に戻るぞ」
ラスダン「…了解」

2人が、他のメンバーが待つ車の元へ向かってひた走る。
背後でまだ続く崩壊。その轟音が、2人の耳に少し悲しくこだましていた。

⏰:08/02/15 19:06 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#454 [◆vzApYZDoz6]
京介達の元に2人が到着する。
基地の端、車のそばの雪原で、崩壊する要塞を眺めていた。

京介「今度こそ、終わったのか…」
内藤「ああ、終わった。どっと疲れたな」
ラスダン「クルサは…助からなかったけど、ね…」

ラスダンが静かに呟く。
内藤とアリサは、少し表情を暗くした。

内藤「ああ…見ていた」
アリサ「クルサちゃん…最後までちょっと不憫だったわね…♪」
内藤「お前が言うな」

原型をとうに失い、それでもなお崩壊し続ける要塞。
暫くの間全員が沈黙して、要塞が崩れ落ちるのを最後まで見届けた。

⏰:08/02/15 19:16 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#455 [◆vzApYZDoz6]
やがて完全に崩壊し、音も止んでいく。
ハルキンが伸びをしながら切り出した。

ハルキン「さぁ、帰るぞ」
内藤「帰るか」
ブロック「帰ろ帰ろ。早く寝たいよ」

ぞろぞろと車に乗り込む一行。
最初のメンバーで定員だったのに、救出したイルリナやアリサ、車で待機していたバンと、面子が増えた車内は、当然のように狭かった。
仕方無いので、元の形体に戻ったジェイト兄弟の2台のバイクの後ろに、内藤とラスダンが跨がる。
最後に京介が崩壊した要塞を一瞥して、トンネルをくぐり抜け基地を後にした。

ガリアスやハル兄弟とその母親の姿は、いつの間にか消えていたが。

⏰:08/02/15 19:31 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#456 [◆vzApYZDoz6]
京介達の乗った車とバイクが通り抜けた後のトンネルを、何人かが肩を震わせ歩いていた。

レイン「うー、寒っ」
ライン「やっぱり、あいつらの車に乗せてもらった方が良かったんじゃ…」
レイン「無理だろ。乗るスペースもないし」
ハル母「そうだよ!だいたいあたしらは北のローシャの民だろう、これぐらい扇風機程度だよ!」
ライン「いや…捕まってたのに何でそんなに元気なんだよお袋…」

ガリアス「しかし南国育ちの俺らには堪えるな…母さん大丈夫?」
ガリアス母「大丈夫よ…ごめんねぇ、迷惑かけて」
ガリアス「母さんは悪くないよ。早く家に帰ろう」

彼らは、きっと今後も飄々と生きるだろう。

⏰:08/02/15 19:41 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#457 [◆vzApYZDoz6]
-帰りの車内-

ラスダン「結果的に殆ど無事だし、まぁよかったよね」
ラスカ「あたしは殆ど何もやってないけどね」
ハルキン「何人か死亡フラグが立ってたみたいだが」
リーザ「それは私の事でしょうか…」
京介「藍も危なかったなー」
藍「京ちゃん…それ終わった後だからそんな簡単に言ってるんだよね?」

何かよく分からない話題で盛り上がる車内。ちなみに内藤とラスダンとジェイト兄弟は外でバイクに跨がっているため、会話に不参加。

シーナ「あっ…!要塞に刀忘れてきた!」

シーナが唐突に声を上げる。
リーザが顔をしかめた。

⏰:08/02/15 19:55 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#458 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「まぁ…そう言えば私があなたを車に運んだ時、持っていなかったわね」
シーナ「どーしよう…あれ大事な刀なのに」
ハルキン「後で取りに行けばいいだろう」
ラスダン「僕が手伝うよ。瓦礫の下にあるんでしょ?」
シーナ「じゃあお願いするね…ジェイトにも頼んどかないと」

そうこう話している内に、車はバウンサー本部に到着した。
京介は車から降り、倉庫にバイクをしまうジェイト兄弟を藍と共にぼんやりと眺めていた。そこに内藤が声を掛ける。

内藤「疲れただろ」
京介「かなり、な」
内藤「今日は寝て、明日地球に帰るぞ」

それだけ言って、内藤はバウンサー本部に入っていった。

⏰:08/02/15 20:05 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#459 [◆vzApYZDoz6]
暫くして京介も本部に入る。
用意された部屋のベッドに1人寝転んで、天井を仰いだ。

考えてみれば、たった1日の出来事。
自分と藍がここへ来た事から始まり、藍が誘拐され、闘い、藍を取り返し、グラシアを倒すまで。
グラシアが起こしたその一連の事件の動機と、その裏にある過去。
それらは全て、特殊な力…スキルと、それを持つ人間…レンサーが関わっていた。

正直、もう関わりたくはない。藍もそう思っているだろう。
その為にどうすればいいか。考えた結果、京介は1つの答えを見つける。

無言でベッドから起き上がり、部屋を出た。

⏰:08/02/15 22:26 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#460 [◆vzApYZDoz6]
-次の日-

地球に帰る京介らを見送る為に、バウンサーの面子が表に揃っていた。
ディフェレスに来て2日目。早くも地球に帰る日となった事が、京介には少し可笑しかった。

帰るには藍のスキルを使うらしいが、藍はスキルを使えない。
京介とグラシアが草原に飛ばされた時に、京介を戻すために藍のスキルを使ったのは内藤だった。
今回も内藤がスキルを使う。

京介「…ってあれ?内藤も地球に帰るのか」
内藤「当たり前だ。お前らが卒業するまで業務契約続いてるからな」
京介「そんな事務的な理由かよ…」

内藤はぶつくさと何かを言っている京介を無視して、藍のスキルを発動した。

⏰:08/02/15 22:41 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#461 [◆vzApYZDoz6]
最初に京介と藍がくぐった茶色い扉が、目の前に現れる。

京介「…本当に大丈夫か?」
内藤「大丈夫だ。早くしろ」
京介「よーし…」

京介が静かにドアノブに手を掛ける。藍が笑いながら、後ろから楽しそうに声を掛けてきた。

藍「おじゃましますって言った方がいいんじゃない?」
京介「いやー、大丈夫だろ?」

京介の顔が綻ぶ。
ノブを下げて押し開けるタイプの扉。その扉のノブである水平棒をゆっくりと下げて、ドアを開けた。
京介、藍、内藤の3人が中に入っていくと、蝶番が独りでに閉まっていく。
バタン、と閉まりきった瞬間に、扉が光を巻いて消えていった。

⏰:08/02/15 22:51 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#462 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「…行ったね」
ラスカ「行ったわね」
リーザ「行きましたね」
シーナ「行ったのね」
ブロック「行ったんだな」
バン「行っちゃったね」
イルリナ「行っt」
フラット「もういいよ!」
イルリナ「……」
フラット「あっ、いやその…ごめんなさい」
ハルキン「何をやってんだお前らは」

ハルキンが呆れたように振り返り、本部を眺めた。
グラシアに対抗する為の組織、その本部。グラシアを倒した今はもう必要ない。

ハルキン「バウンサーも…これで解散だな」
ラスダン「そうだね…」
イルリナ「さっ、私達も帰りましょうか」
バン「うん…あれ?」

バンが辺りを見回す。内藤の他に居る筈のパンデモの人間が1人、見当たらなかった。

⏰:08/02/15 23:00 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#463 [◆vzApYZDoz6]
京介らが扉をくぐったその先は、見慣れた風景。
白い壁に白い階段、側には郵便受け。そこは京介と藍の住まうマンションの1階。
元居た場所に…地球に、帰ってきた。

京介「って言ってもなんか実感ねぇな」
藍「地球とたいして変わらなかったもんね」
内藤「確かにな」
「私は初めてだからなんか新鮮ね♪」

「「「…はっ?」」」

3人が振り返る。
『何で?』と考える程度の驚きの京介と藍に対し、内藤は普段ではあり得ないぐらいに目を丸くして、開いた口がなかなか塞がらなかった。


後日、京介と藍の通う学校に、新しい保険医が着任した…とかなんとか。

⏰:08/02/15 23:11 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#464 [◆vzApYZDoz6]
-ディフェレスのその後-

バウンサーは解散した。しかし、ハルキン、ラスカ、ラスダンの3人は、衣食住揃う本部でずっと生活していた。
今日は自分の家に帰ったジェイト兄弟とシーナとリーザが、本部にやって来る日。
シーナが忘れてきた刀を回収するために、ジェイト兄弟のバイクで基地まで行き、ラスダンのスキルを使って探す予定だ。
本部で待っていたラスダンの耳に、聞き慣れたエンジン音が聞こえてきた。
窓から外を見る。バイクに跨がるジェイト兄弟と、バイクの後ろに乗るシーナとリーザが見えた。
外に出ようとするラスダンを、ハルキンが呼び止める。

⏰:08/02/15 23:23 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#465 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「基地に行くなら、クルサも探してこい」
ラスダン「へっ?それなら一緒に来たら?」
ハルキン「俺はスティーブの散歩に行かないと」
ラスダン「ふぅん…分かった、探しとくね」

ラスダンが踵を返し部屋を出る。
エレベーターを降り、ジェイト兄弟らの待つ表へ出た、その時だった。
ズシン、という重い音。音がした瞬間だけ、地面が揺れた。
そしてその音は等間隔に響いていた。まるで巨人が地を踏みしめる足音のように。
そしてその音は、明らかに本部の建物内から聞こえてきいる。

ブロック「あー、スティーブか」
フラット「散歩は久々だから喜んでるんじゃない?」

⏰:08/02/15 23:32 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#466 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「はっ?スティーブって犬じゃ…」
ブロック「犬だぜ?」

ジェイト兄弟があっけらかんと言い放つ。その間にも、足音は響いていた。

ラスダン「えっ…シーナとか知ってた?」
シーナ「昔見たことあるわ」
リーザ「昔はもうちょっと小さくて、まだ愛嬌があったんですけど…」
ブロック「あんだけデカいんじゃ餌代も馬鹿にならねぇんじゃねぇか?」
フラット「体長余裕で5、6メートルはあるよな」
ラスダン「…早く行こう。嫌な予感がする」
フラット「え?」
ラスダン「いいから」

ラスダンに促され、兄弟がスロットルを回して走り出す。
少し走った所で、後ろからこの世の物とは思えない程の甲高い咆哮が響いた。

⏰:08/02/15 23:41 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#467 [◆vzApYZDoz6]
-地球のその後-

京介は学校の屋上で、仰向けに寝転がっていた。

地球から帰ってきた時は既に昼になっていたので、学校を休んだ。
藍と一緒に学校を1日休んだ程度では、クラスメイトに変な噂を立てられたりはしなかった。
親にも特に何も言われなかった。どうやら内藤がディフェレスに来る前に上手く言いくるめたらしい。

寝転がったまま、ポケットから1本の細い棒を取り出して太陽にかざす。
京介は地球に帰る前の日の晩、内藤に『スキルを消去する方法は無いか』と訪ねて、その棒を貰った。

京介「『耳に入れれば減衰させれる』…って言ってたけど…本当かな」

⏰:08/02/15 23:52 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#468 [◆vzApYZDoz6]
暫く棒を見詰めていると、屋上のドアが開いて藍が入ってきた。

藍「あっ、ここに居たんだ」
京介「どうした?」
藍「別に用事は無いんだけど…あっ、それ…」

藍が京介の持っていた棒に気付いた。
おもむろに制服のスカートのポケットに手を突っ込んで、何かを取り出す。
藍が見せたそれは、京介が持っている物と同じ細い棒。

京介「あっ、お前も?」
藍「抜け駆けは、許しまへんでー」
京介「…懐かしいなそれ。お残しは、だっけ」
藍「そうそう」

ちなみに、忍たま乱太郎ネタ。
知ってる人は知ってると思います。

⏰:08/02/16 00:06 📱:P903i 🆔:Nvi.CgcA


#469 [◆vzApYZDoz6]
以後、何事も無かったかのように再開。

藍「やっぱり、こういう争いを生む力なんて、無い方がいいもんね」
京介「だな。俺は普通に幸せに暮らせればそれで…」

言いかけて、言葉が止まる。
普通に幸せに暮らすために必要な物を1つ、忘れていた事に気付く。
必要な物、というより者は、京介の目の前で棒をどちらの耳に入れればいいか迷っている。
これを機に、いい加減ひねくれるのはやめようと思っていた。

藍「ねぇ、どっちがいいかなこれ?」
京介「どっちでもいいけど、その前に1ついい?」
藍「どうしたの?」


京介「――俺と付き合ってほしいんだけど」

⏰:08/02/16 00:14 📱:P903i 🆔:Nvi.CgcA


#470 [◆vzApYZDoz6]
それから半年が経った。

京介と藍は3年に上がり、学校はもうすぐ夏休みに入る。
3年でも京介と藍はクラスが一緒だった。
担任も同じく内藤。最近は休憩時間の度に保健室に入り浸る姿が目撃され、美人の保険医と仲睦まじいと生徒達の噂の的になっていた。

いつもと同じ朝。
いつもと同じように、マンションの一室、京介の家の前に藍が立っていた。
京介は、いつもと同じように遅刻ギリギリらしい。
待ちくたびれた藍が階段に座ろうとした時に、京介の家の扉が開いた。

藍「遅い!!」
京介「へい、すんません」
藍「まーたギリギリなんだから…早く行こ!」
京介「よっしゃ」

⏰:08/02/16 00:24 📱:P903i 🆔:Nvi.CgcA


#471 [◆vzApYZDoz6]
階段を駆け降りる。1階に着いた時に、ふと階段横の白い壁が京介の目に止まった。

ディフェレスに行った時を思い出す。
たった1日の出来事だったが、ディフェレスで出会った色々な人の顔が思い浮かんだ。その顔は、全員が笑っていた。
恐らく自分も同じ顔をしているだろう。

京介「ま、やっぱ普通が一番だな」
藍「え?」
京介「何でもない。早く行こう!」

駅に向かって小走りになる。卒業まであと半年、この道を通るのもあと半年。
だが大丈夫だろう。

2人の手はしっかりと、京介の方から握られていた。



Castaway  お わ り

⏰:08/02/16 00:44 📱:P903i 🆔:Nvi.CgcA


#472 [◆vzApYZDoz6]
アンカー
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-500

⏰:08/02/16 00:52 📱:P903i 🆔:Nvi.CgcA


#473 [◆vzApYZDoz6]
-後書き-

はい、と言うわけで御仕舞いです。
今日中に終わらせてやろうと頑張った結果少し微妙になったかもしれません。が後悔はしとらんw
続編があるか無いかは分かりませんが、一応は完結ということで。

このサイトでこんな小説はあまり無いし支持もされませんが、それでも読んで下さった方々、こんな駄文に最後まで付き合って下さってありがとうございましたm(__)m

次回作は今のところ考えてませんが、続編かもしくは似たようなの投下しようと思っております。

質問、感想、批判などは感想板へ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3130/


ではまた会う日まで
ありがとう、さようなら!

⏰:08/02/16 00:53 📱:P903i 🆔:Nvi.CgcA


#474 [アリス]
主さん,完結おめでとうございます(o>_<o)
そして,お疲れ様です

久しぶりに来たら完結してたので,びっくりしてしまいました

私はファンタジーのお話が大好きで,ここにはあまり無いので,とても楽しく読ませて頂きました
文章も読みやすく,話の構成など良く考えられている様で,凄く面白かったです

また,新作書かれるなら是非教えて下さい
楽しみにしてますね
宜しくお願いしますm(__)m

⏰:08/02/26 02:15 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#475 [◆vzApYZDoz6]
>>474
どうもです^^
結構最初から支援して下さってましたよね?
本当にありがたかったですm(__)m

ちなみに新作、というか続編がありますよw
数少ない読者様から続編書いてほしいと言われたので、期待に応えられればと…

Castaway-2nd battle-↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/7455/

もしかしたら気付いてるかもw
なんかgdgdになりそうな予感してますが、時間かかっても最後まで書こうと思ってますので
よろしければ引き続き支援くれれば嬉しいですorz

⏰:08/02/26 03:02 📱:P903i 🆔:i4wdI.cw


#476 [アリス]
あげ
凄く面白いから読んでみて下さい(〃ω〃)

⏰:08/03/07 14:16 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#477 [我輩は匿名である]
あげます☆

⏰:08/04/12 20:36 📱:PC 🆔:yaWiR6n6


#478 [◆Lv76252642]
面白かった!!
あげー

⏰:08/04/15 12:58 📱:F705i 🆔:ve948VJA


#479 [我輩は匿名である]
失礼しまーす
>>1-250
>>251-500

⏰:08/04/16 07:12 📱:SH905i 🆔:XLWPujF6


#480 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400

⏰:08/08/31 00:43 📱:W52SH 🆔:qZ0IvmPM


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