【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#24 [ゆびきりげんまん(2/2)]
でもいつだったっけ?結構幼い頃だったような気がする。
でも人生4、5年ぐらい生きてりゃあの歌には出会えるし。何とも確証がない。頭の中で壊れたようにあのフレーズがずっと流れる。
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。
「…あっ」
「…?どしたの?」
「思い出したのよ」
「誰と約束したかを?」
「ううん、約束した事を」
うそついたら、ね?
約束した相手の声だけが頭の中で再生される。
少し低い女の子の声。顔は忘れたけど、声は思い出せる。
赤いランドセルに黄色い帽子をかぶって、約束したんだ。
あれは多分初めての指切りげんまん。
「一緒に地獄へ堕ちよう、って約束したんだ」
あの子は、憶えてるのかな。
:08/03/03 04:20 :P903i :zBYy/l0.
#25 [[天の邪鬼]ふむ(1/3)◆s8/1o/v/Vc]
鬱蒼と生い茂る森を歩いていた。
真の闇に包まれた、夜の森であった。
月明かりすら、ない。
冷たい夜風が駆け抜ければ、木々たちが不気味な音を立てて森自体が一つの生き物のように怪しく蠢いた。
そんな中を歩く一人の男がいた。
凛とした表情に灯る鋭い眼光はしっかりと正面を見据えていた。
手には明かりらしきものはなかった。
真の闇だというのに、明かりなしで進んでいるのである。
悠然と進むその歩調には、まるで昼間に見晴らしの良い道を歩いているかのようにさえ感じさせる。
男の口元には、絶える事なく微笑が含まれていた。
男は今日の昼間、興味深い話を聞いた。
どうやら、この森には妖怪らしからぬモノがいるらしい。
それを初めて見たのは、この近くに住む老人だという。
老人は山菜採りが趣味で、よく山に登っていた。
農民であるために、なかなか早くは仕事が終わらず、大体山に登るのは日が没してからの方が多かった。
その日もいつものように松明と鎌を片手に籠を背負い、熊などに備えて知り合いから譲り受けた太刀を腰に携えた。
出掛けるに当たって、今日はどの山に行こうかと考える。
同じ山ばかりではその山の山菜を取り付くしてしまうし、何より楽しみが薄れる。
そこで老人は考えついた。
ちと遠いが、あの山なら良い山菜がよく採れるじゃろうて…
多少山を登らなければならないが、以前に山菜が山ほどなっている場所を見つけたのであった。
そうと決まれば早速そこに向かった。
:08/03/03 12:31 :SH905i :☆☆☆
#26 [雪(1/2)◆vzApYZDoz6]
昨日からずっと雪が降っている。そのおかげで外はなかなかの積雪量だ。
別に冬に雪が降るのは当たり前だが、基本的に雪が殆んど降らないこの地方で、雪が積もるのは珍しい。
住んでいるマンションから眼下を見下ろせば、近所の子供達がその珍しい積雪の上で大いにはしゃぎまわっている。
その子供達に混じって、俺の姉も遊んでいた。
「おい姉貴、遊んでないで手伝えよ!」
窓から身を乗り出して、子供達と雪合戦をしている姉に叫ぶ。
なんとも平和な光景だ。
「いつでもできる部屋の大掃除と、希にみる豪雪の元で思い切り遊ぶ事、どっちが大事!?」
姉が叫び返してきた。
ハタチを超えているというのに、そんなに雪遊びに夢中になれるものなのか。
なんとも平和な光景だ。
:08/03/03 12:46 :P903i :zBYy/l0.
#27 [雪(2/2)◆vzApYZDoz6]
「うるせぇ!いいから戻ってこい!」
「今日のお前は冷たい!そう、雪のように!」
こりゃ駄目だ、完全に雪に洗脳されてる。雪のように冷たいってなんだよそれ。
窓から身を引っ込めて、室内に視線を戻した。
乱雑に置かれた雑巾に掃除機、紐で縛られた雑誌類。
俺のすぐ横には漫画がいくつか置いてある。
そう言えば、タンスの奥から見付けて読んでたんだっけ。俺もサボってんじゃん。
外からは子供達のはしゃぐ声が聞こえてくる。
俺は漫画を纏めて、立ち上がった。
外はまだ雪が降っていた。
積雪に沢山つけられた足跡。出来るだけ足跡のない綺麗な場所を選んで歩き、足跡を残していく。
姉はまだはしゃいでいた。
こっそり後ろから近付いて、雪玉を当てる。
姉は驚いて振り返り、続いてあどけなく笑って手招きする。
その誘いに乗って、俺も本格的に雪合戦に参加した。
なんとも平和な光景だ。
:08/03/03 12:47 :P903i :zBYy/l0.
#28 [[天の邪鬼]ふむ(2/3)◆s8/1o/v/Vc]
草木を掻き分けて森を進む。
今年齢六十七を迎える老人には厳しいものがあった。
しかし、それが山菜のためとなると、それすら楽しみに変わる。
手の松明の明かりを頼りに歩を進めていった。
山の中腹辺りまで来ただろうか。
もうそろそろ目的地が見えてくると心躍らされた時、頭上から声が下りてきた。
「ここを通りたいか…」
低い男のような声であった。
はて、誰ぞおるのか。
老人は小さく呟くと頭上を見上げた。
しかし暗い木々が不気味に風に靡いてるだけで、人の姿は見当たらない。
空耳かえ…。
老人は正面に顔を戻すと、溜め息を一つ吐いて再び歩を進める。
するとどうしたことか、また同じ声がする。
これはもはや空耳ではない。
老人は急に恐ろしくなった。
夜に森なんぞに入ったもんじゃから鬼に出くわしたのやも知れん…。もしくは夜道で良く見えなんだから、道を反れて鬼の巣窟に迷い込んでしまったか…。
老人は山に入ったことを後悔した。
これでは山菜採りどころではない。
引き返そうとすると、また声が問う。
ここを通りたいか…。
進もうとすれば、またまた声が問う。
これは答えねば帰して貰えぬやも知れぬ。
そう考えた老人は震える声で答えた。
通りたい。
声はすぐに返ってきた。
通らせない。
老人は絶望に打ちひしがれて尚も問う。
俺を帰らしてはくれぬのか。
帰らして欲しいのか。
帰りたいとも。
帰らしてやらぬ。
老人はそこで不思議に思った。
ある考えを思い付いた老人は声の主に再び問いた。
:08/03/03 12:54 :SH905i :☆☆☆
#29 [[天の邪鬼]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
この先には何があるのか。
何があると思う。
山菜じゃ。
何もない。
老人は確信した。
ここぞとばかりに最後の質問をする。
やはり帰してくれぬのかのぅ。
帰して欲しいか。
声の主が答えるとしばらくの沈黙の後、老人が返す。
いや、帰りとうない。
ならば帰れ。
あっさり承諾を得た老人は足早に山を下りていった。
そういう話であった。
さて…、
男はどのくらい歩いたのであろうか。
山の中腹に差し掛かった辺りであった。
不意に頭上から声が降り注がれた。
「ここを通りたいか…」
男は落ち着いた口調で答えた。
通りたくない。
声の主の答えが返ってくる。
ならば通れ。
声の主が言い終えるとすぐに男は問い掛ける。
俺を喰らうか。
喰らって欲しいのか。
喰らって欲しいさ。
喰らわぬ。
男は会話を楽しんでいるようにさえ伺えた。
口元に微笑を浮かべつつ、男はゆっくりと最後の質問のために口を開く。
俺の…使い魔にならぬか。
男は依然として微笑を含めたまま、静かに次の言葉を待った…。
:08/03/03 13:10 :SH905i :☆☆☆
#30 [[werewolf]1/2]
あぁ……
僕は何をしているのだろう。君にはずっと隠していたのに、君が満月が綺麗なんて言うから。君がこんな姿になったのは僕のせいじゃない。否、誰のせいでもないんだ。仕方なかったんだ。だって僕は【狼男】なんだから。満月を見た瞬間から僕の意志に関係なく、手足には体を切り裂き肉をえぐるための爪が生え、体には人間の体毛とは程遠い動物の毛が生えだす。口元は大きく裂け獲物をしとめる為の牙が生える。それから、のどの渇きを潤すために鮮血をを求め、空腹を満たすために肉を求め、欲望のままに女のゾクゾクするような悲鳴を求めてしまう。
:08/03/03 13:30 :F905i :☆☆☆
#31 [[werewolf]2/2]
そんな僕を見て君は『化け物!!』と叫んだね。そんな事は分かっていたんだ。自分は人間ではないことぐらい百も承知していたよ。それでも人間の姿の時だけは君と同じ時間を過ごし些細なことで幸せを感じられた。幸せだったんだ。こんな淡い時間がずっと続くと思ってた。でも狼になった僕は僕の意志では止められない。ふと我に返ったとき僕が噛みついたであろう君の首筋から溢れ出す朱色の血、命が切れる前の微かな呼吸、赤みをなくした小さな唇、全てが美しいと思ってしまった。
あぁ……
本当に僕は狼なんだな。
もうこれで人を殺したのは4人目だろうか。だがそんな事はもうどうでもいい。僕の愛した人はこの世にいない。否、僕の牙が君をこの世から去らせた。
あぁ……
僕は狼。
人間でもない
狼でもない化け物さ。
ーーーendーーー
:08/03/03 13:31 :F905i :☆☆☆
#32 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/03 13:58 :SH905i :☆☆☆
#33 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
>>32←まとめ
ナナシさん多いですね…
書き溜めってやつですか
:08/03/03 13:59 :SH905i :☆☆☆
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