よすが
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#640 [○○&◆.x/9qDRof2]
これじゃ…生き返ったなんて言えない。肉体は生き返っても、私の心はこうして死んだままだ。でも、悲しくはない。ようやく希望が見えた。生きているとわかったその時から、私の心の中心はある感情に支配されていた。あの時、奥深くに封印したはずの想いが、いつの間にか溢れ出していた。

.......孝。

⏰:22/10/25 18:05 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#641 [○○&◆.x/9qDRof2]
この数日、孝は悲しんでいただけかも知れないけど、私は変わったと思う。孝には悪いけど、私はもう止まれない。例え希望が断たれても、私は突き進むと決めた。私には、まだやり残したことがある。孝の気持ちを聞いていない。盗み聞きはよくないと思うが、今じゃなきゃ出来ないのも事実だ。私はまた走っていた。

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#642 [○○&◆.x/9qDRof2]
学校に行ってみたが今日は孝はいなかった。ならばと家まで押しかけたが生憎の不在。次に所に向かっていた。脱力感は最高潮に達する。もしあそこにいなかったら、私はしばらく動けなくなるに違いない。一歩進む度に孝に近付いているのだろうか。私は鎖が巻き付いたような重い足を踏み出しながら、歩を進める。

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#643 [○○&◆.x/9qDRof2]
やがて足は動かなくなり、そして完全に停止した。

「も…動けない」

膝に手をつきながら顔を上げる。

「けど…間に合った…!」

正面にはあの公園。そしてベンチには大嫌いだった男。私は微笑みながら足を引きずって隣に座った。

「あんたさぁ…いい加減にしてよね。死んでからも私をいじめる気?」

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#644 [○○&◆.x/9qDRof2]
笑ってみせるが、やけに清々しい。孝は静かに正面を見据えつつ、足を組んでいる。馬鹿馬鹿しい。私がこんなに一生懸命なるなんて、生きてた時は思ってもいなかった。だが、悪い気分ではない。

「今日はいつもみたいに退かないからね。答えを聞くまで、粘るよ」

ベンチに身を委ねて空を仰げば、隣から声が響く。

「…不思議な気分だ」
「…え?」
「千恵がいなくなってから、たまに千恵を近くに感じる時がある…」

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#645 [○○&◆.x/9qDRof2]
屋上や公園でのことだろうか。

「…今も」
「…うん」

しばらく沈黙が続く。
小さく息を吐いて次の言葉を待った。

「なぁ…」

私は孝を横目でみる。孝は相変わらず同じ姿勢を保っている。今日はやけに独り言が多いなぁ。いつもより饒舌ではないか。少し黙った孝に私は視線を送り続けた。

⏰:22/10/25 18:06 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#646 [○○&◆.x/9qDRof2]
「俺はおまえが嫌いだったよ」

うん…。
それはわかっていた。世界は灰色に変わる。悲しみも衝撃もない。でも大丈夫。私は、気付いてしまったから。

「……で?」

気付いたから、違うんだと今は信じれる。

「嫌いだって、思ってた。いや、思い込んでた」

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#647 [○○&◆.x/9qDRof2]
ほらね、信じることが出来る。

「あの日の延長線.......」

孝は一つ一つ言葉を落としていく。きっと私の高鳴りは最高潮に違いない。

「格好悪いって躊躇っていたら、後戻りが出来なくなっていた」

.......まただ。またあれが来た。気恥ずかしさが心を埋めていく。一刻も早くここから去りたい衝動に駆られる。少しずつ体が熱を帯びる。

⏰:22/10/25 18:06 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#648 [○○&◆.x/9qDRof2]
「でも、今になって俺は…」

でもね、もう大丈夫。逃げ出したりはしない。何より大切なものを見付けたから。

「好きなんだって、気付けたんだ」

そう言い終えた孝は切なそうな視線を空に映した。

「孝…」

私もね、気付いたんだ。孝が、好きみたいだって。だけど、ここまでだよ。私は初めから知っていたのかも知れない、こうなることを。

⏰:22/10/25 18:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#649 [○○&◆.x/9qDRof2]
間に合って良かった。最後に、答えを聞けて良かった。


それは。
突然やってきた。身体に暖かさを感じる。死んでから一度も感じなかった温もりだ。身体が小さく細かい光の粒に変わっていく。目に映る景色も白くなり始め、視界の端から崩壊していった。それらの感覚はじわりじわりと私の身体を侵食していく。

⏰:22/10/25 18:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#650 [○○&◆.x/9qDRof2]
少しずつ、少しずつ。もう、時間か。どうやら、ようやくお迎えがきたようだ。九年前に止まった時計は、九年の時を経て再び刻み始めた。



 十八年間。短いようで長い人生だった。今から行くのは天国だろうか、地獄だろうか。

⏰:22/10/25 18:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#651 [○○&◆.x/9qDRof2]
色々あったが、ようやく私の臨死体験は終わりを告げるようだ。




死んでから気付いた大切な人。


もし生き返ることが出来たなら、きっと私は告白することが出来るだろう。でも後悔するのは嫌だから、今言えるだけ言っておこう。

⏰:22/10/25 18:07 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#652 [○○&◆.x/9qDRof2]
今までありがとう。貴方が大好きでした。そして最後に、



 さようなら。


 薄れゆく意識の中で、私はゆっくりと微笑んだ。



死んでから気付く大切な人

[完]

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#653 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>620-630

⏰:22/10/25 18:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#654 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>620-650

⏰:22/10/25 18:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#655 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>620-660

⏰:22/10/25 18:08 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#656 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>650-680

⏰:22/10/25 18:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#657 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>680-710

⏰:22/10/25 18:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#658 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>710-740

⏰:22/10/25 18:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#659 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>740-770

⏰:22/10/25 18:09 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#660 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>770-800

⏰:22/10/25 18:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#661 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-200
>>200-400
>>400-510

⏰:22/10/25 18:10 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#662 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>510-600
>>600-700

⏰:22/10/25 18:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#663 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>700-800
>>800-900

⏰:22/10/25 18:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#664 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>900-930

⏰:22/10/25 18:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#665 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>930-960

⏰:22/10/25 18:11 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#666 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>960-990

⏰:22/10/25 18:12 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#667 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>970-999

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#668 [○○&◆.x/9qDRof2]
『ねぇ、わたしを殺してみて』


 その日。
 ぼくは、彼女を殺した。

------------------------

『すき』

 彼女のくちびるから零れ落ちる言葉は、いつだってぼくだけの鼓膜を揺らす。

『あなたが、すき。例えあなたの気持ちがわたしになくても』

⏰:22/10/25 18:14 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#669 [○○&◆.x/9qDRof2]
『目も、耳も、鼻も指も、ひとつ残らず愛おしい、』

『だけど、一番愛おしいのは、その、くちびる。わたしのそれと触れたとき、わたしはきっと死んでしまうでしょうね』

 何故だい?薄く微笑み、彼女に問うた。

『幸福死。信じられないけれど、本当にあるみたいよ。夢のような、現実では有り得ないような、けれど、こころのどこかでそれを待ち望んでいる.......』

⏰:22/10/25 18:14 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#670 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女の瞳が、熱を持ち始める。

『そして。それが現実に起こったとき、わたしは死ぬの。そう例えば、あなたのくちびるの熱を、わたしのここで感じることができる、とかね』

 そう言って彼女は微笑み、人差し指で自分のくちびるに触れた。

『ねぇ、わたしを殺してみて?』

⏰:22/10/25 18:14 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#671 [○○&◆.x/9qDRof2]
五秒後、ぼくはきみを殺した。




 まだ息をしているきみのくちびるが、柔らかく、柔らかく微笑んだ。

fin

⏰:22/10/25 18:15 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#672 [○○&◆.x/9qDRof2]
愛しているんだ、
 例え誰が死んだって。

 -------------------------

 何日もかけて選んだ婚約指輪。君は気にいってくれるかな?君が琥珀色を好きだというのは知っていたけど、なかなかいい物が見つからなかった。だけどこの水色も綺麗だろう?君がよくしてる、ネックレスに似ている。

どんな顔をするだろう。

⏰:22/10/25 18:15 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#673 [○○&◆.x/9qDRof2]
笑って、笑って、笑うだろう。キスをして、抱きしめて。それからやっぱり、琥珀色が良かったわ、なんて言うのかな。想像の中の君は少しふてくされて、だけどとても満ち足りた笑顔で。そして僕は言うんだ。


『結婚指輪は、琥珀色にしよう。』

女性はロマンチックが好きだろう?夜景なんかどうだろう?今日のために洗車もしてきた。そんなことは、言わないけどね。

⏰:22/10/25 18:16 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#674 [○○&◆.x/9qDRof2]
さぁ乗って、未来の話をしよう。

予想通り君は少しふてくされて、だけど幸せそうだった。

幸せにするからね。

そういう僕の言葉に重なるように、白い光と車のブレーキ音が僕たちを包んだ。明るすぎるその光に、助手席に座る彼女の顔が白くなる。明るすぎるよ、彼女の顔が見えないじゃないか。


--- 気がつくと目の前には、見慣れた人の顔。白くはなかった、赤かった。彼女の目は閉じられていた。嘘だろう。この、赤は、なんだ。嘘だろう。ねぇ起きて。

⏰:22/10/25 18:16 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#675 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女の体を揺さぶろうにも、僕の体も動かない。いくら大声で名前を叫んでも、彼女はぴくりとも動かない。それはまるで、僕の声なんかこの世界に響いていないような、そんな気がして。


動かない、意識だけ。
動けよ僕の躯、動け。

救急車を呼ぶんだ、彼女を助けて。

⏰:22/10/25 18:16 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#676 [○○&◆.x/9qDRof2]
まだ生きてるかもしれない。呼吸の音が聞こえない?僕の耳がおかしいんだ。名前を呼んでも届かない?僕の声が、枯れてるんだ。どうして僕が生きてるんだ。生きるべきは、彼女だろう。お願い神様、僕はどうなってもかまわないから。

ほら左手の薬指。僕が買った指輪はそんな色じゃない

⏰:22/10/25 18:16 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#677 [○○&◆.x/9qDRof2]
抱きしめて、キスしたい。
指輪に関する話を聞いてほしい。結婚指輪は、きっと琥珀色にするから。


彼女の目が、開いた。
生きて、いる。


ありがとう神様、ありがとう。本当にありがとう。これから何があっても僕が彼女を幸せにする。さぁ、元気になって、未来の話をしよう。

⏰:22/10/25 18:17 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#678 [○○&◆.x/9qDRof2]
僕たちこれから、幸せになるんだ。彼女の目が完全に開く。ただ僕だけを映してくれる瞳は、あの日からずっと、変わらないね。良かった、もう大丈夫。体は動くかい?悪いけど、救急車を呼んでもらえる?

⏰:22/10/25 18:17 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#679 [○○&◆.x/9qDRof2]
僕はさっきから、何故だか体が動かない。彼女の目に涙がたまる。嗚呼、心配しないで。意識ははっきりしてるから。君のことずっと、考えられるくらいには。彼女は何か叫びながら、僕の体を揺さぶった。揺れる視界に、君の泣き顔だけが映る。

⏰:22/10/25 18:17 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#680 [○○&◆.x/9qDRof2]
綺麗な瞳だ、泣かないで。覗きこんだその瞳に映るは、僕。真っ赤な色をした、僕。


ああ、死んだのは僕か。

どうりでさっきから、呼吸をしていないと思った。良かった。死んだのが僕で良かった。さぁ降りて、僕という船から。未来の話をしよう。君が幸せになるための話だ。指輪は捨ててくれ。君はやっぱり、琥珀色が似合うと思う。

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