禁断って何?
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#300 [シバ]
それ以上に怖い…
アイリを失うんじゃないかって気持ちが心の中で渦巻いてる。

気持ち伝えて、アイリとの今の楽しい時間が無くなるくらいなら、いっそ片思いでもこのままでいいんじゃないかって思った。

でも、今になってやっと分かった。
あの合宿の時に、アイリがシバに言った一言…

⏰:10/04/10 15:36 📱:F902iS 🆔:1zlk7pX.


#301 [シバ]
『アイリだけの物でいてほしい』

『シバさんには分かんない!アイリがどれだけヤキモチ妬いてるのか』



…あの時、シバにはその意味が分からなかった。何言ってんだコイツ…くらいに考えてたから、本当にどうでも良かった。

⏰:10/04/10 15:42 📱:F902iS 🆔:1zlk7pX.


#302 [シバ]
『だからシバさんには分かんないんですって…アイリ側の立場を経験してないから』


確かにその通りだった。
でもねアイリ…
こんな馬鹿なシバでも、やっと意味が理解できたよ。
あの時分かってやれなくて本当にゴメンね…

アイリ…シバだけの物でいてほしい…

⏰:10/04/10 15:47 📱:F902iS 🆔:1zlk7pX.


#303 [シバ]
シバの中で答えが出た。

真希はそれを察したかのように優しく笑っていた。



しばらく2人ともボンヤリしていると、昼休み終了のチャイムが鳴った。空き教室のドアを開け廊下に出る時に、真希は後ろからシバの腰をポンっと軽く叩いた。
「頑張れ」と言ってくれてるんだろう。

⏰:10/04/11 23:53 📱:F902iS 🆔:TgK0/xd.


#304 [シバ]
夕方になり、部活の時間になった。

アイリの事を考えて、どんな場面でも上の空状態だったシバ…

だけど、この日の部活は違った。
バスケット以外の事を考える事なく、練習に集中していた。

昼休みに真希と話せた事によって、心の中でモヤモヤしていた物がすっ飛んでいった気がした。

⏰:10/04/12 00:07 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#305 [シバ]
部活終了…

シバは、高いのか低いのか良く分からないテンションのまま体育館を出た。

体が緊張してる…
胸がドキドキしてる…

呼吸が浅くなっているのは自分でも分かった。
だから何度も深呼吸を繰り返したけど、落ち着く事はできなかった。

⏰:10/04/12 00:12 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#306 [シバ]
シバは鞄の中から大きな小銭入れ(アンパンマンのやつ)を取り出した。

異様にボコッと膨らんでいる…
この日の為に貯めてきた10円玉達だ。


シバは決心した。
この気持ちをアイリに伝えよう…
タイミング的に今でいいのか…?とか色々考えた。

⏰:10/04/12 00:17 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#307 [シバ]
この気持ち…というか、この勇気みたいな物が萎んでしまう前に、シバはアイリに気持ちを伝えたかった。
いつまでもオロオロソワソワしてた所で、実際は何も変わらないのだから…

この最高潮に達しそうな緊張感を無駄にはできない。
これを打開して、アイリに気持ちを伝えに行こう…

⏰:10/04/12 00:22 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#308 [シバ]
着替えて靴を履く。

真希に「行ってきます」と一言言おうと思ったけど止めた。
真希にいい報告ができればいいなぁ…

とか思っていると、少し離れた場所にいる真希は昼休みに見せた笑顔をシバに向けてくれた。
無言の中に真希の優しさと、真希からのエールみたいな物を感じる事ができた。

⏰:10/04/12 00:29 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#309 [シバ]
真希のおかげで力んでいた体が軽くなった。

こういう時に分かる真希の優しさ…

あー、自分って真希に助けられてばっかだなぁ…とか考えながら公衆電話へと向かった。

いつもなら少し遠くに感じる距離…
今日はまったくその逆…
心に余裕がなかったのだろう。
あっという間に着いてしまった。

⏰:10/04/12 00:35 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#310 [シバ]
小銭入れ(アンパンマン)を取り出した。
その中にはアイリの携帯番号を控えた紙が入ってる。

だけど、電話をしているうちに暗記していた為、この紙はもう必要ないな…って思って取り出さなかった。

とりあえず10円玉を10枚ほど取り出し、手に乗せた。
深呼吸を数回行ってから、10円玉をグッと握りしめた。

⏰:10/04/12 00:42 📱:F902iS 🆔:dB7zQ7P.


#311 [マユタン]
続き気になるょ〜また書いて下さい

⏰:10/04/18 11:18 📱:F02A 🆔:J0YEiBmw


#312 [シバ]
>>311
マユタンさん


ありがとうございますなかなか更新できず、すみません
今から更新しますね!

⏰:10/04/18 19:00 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#313 [シバ]
>>310


10円玉を公衆電話に入れていく。
これでもか!ってくらい入れまくると、途中で10円玉が落ちてきた。



よし…!
0…9…0…


アイリのケータイ番号をポチポチした。

⏰:10/04/18 19:04 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#314 [シバ]
しばらく沈黙が続き、数秒経ってからプルルルル…と鳴り出した。

やっぱりこの瞬間は緊張してしまう。
ドキドキの中に妙な期待とかワクワクしたような感情があって、何とも言い表せない気持ちでいた。

受話器を持ったままキョロキョロしていると、鼻の頭に何かが落ちてきた。

「あ、雨だ」

⏰:10/04/18 19:12 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#315 [シバ]
朝の天気予報では『晴れ』って言ってたじゃん!

あ、でも降水確率見てねーや…
今日1日曇ってたし、雨降っても可笑しくはないっか。
でも、雨降り出したら厄介だなぁ…
アイリ〜!!



ガチャッ…
「…もしもし」

⏰:10/04/18 19:15 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#316 [シバ]
愛しい声が聞こえる。
その声を聞いたら、自然と笑顔が出てくる。

その声がないと、今のシバは頑張れないよ…


「うぉい!アイリちゃん♪元気してましたか?(笑)」

「…あはは。シバさん」

「何してたんかい?」

「…何って…宿題?予習みたいなヤツ」

⏰:10/04/18 19:18 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#317 [シバ]
ふと思った…

今、アイリに『シバさん』って呼ばれた…?

『シバっち』とか呼んでなかったっけ?
何気ない瞬間だったけど、直感で思った。

嫌な予感がする…



「あ〜、宿題ね。ってか、アイリが宿題するとか何かウケる。意外で(笑)」

⏰:10/04/18 19:22 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#318 [シバ]
「…そうですかぁ(笑)」


そうですかぁって…

笑ってるけどお前、いつもなら『あはは。よく言われます』なんて言ってシバを笑わせてくれるじゃん。


「…あ、宿題するならまた後で電話するよ。今大変でしょ?」

「あ〜いや…大丈夫ですよ」

⏰:10/04/18 19:26 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#319 [シバ]
何かぎこちない…

年上のシバがリードしないと!

「ってか、この前リナからアイリのプリクラとか見せてもらったよ♪」

「…は?嘘…」

「いやいや、本当(笑)…え…どうしたの?」

「あ、いや…別に…」

胸のドキドキが異常だった。
緊張とかとは違う変なドキドキ…
シバ…焦ってないか?

⏰:10/04/18 19:30 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#320 [シバ]
「何何…何かあったのか?アイリ今日、元気ないね」

「う〜ん…」



何なんだよ…
何かあるなら言えよ!
次第に苛立ちを感じるようになった。


「どうしたのさ。恋の悩みか何かあるんかぁ?(笑)」

⏰:10/04/18 19:35 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#321 [シバ]
ちょっと唐突すぎたかな?
でも、シバは直感で感じた事を聞いたまで…

アイリの返事を待った。

「……………」

何も喋らなくなった。
アイリは風邪を引いているのか、受話器の向こうで鼻をグズグズ言わせている。
それしか聞こえない。

⏰:10/04/18 19:38 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#322 [シバ]
「おいって!(笑)もしも〜…」

「…はい」

「は…?」

「…そうですよ」


心臓がグワッと熱くなった。
シバは今、アイリに何を聞いた?
アイリは何て答えた…?

「…すみません」

⏰:10/04/18 19:40 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#323 [シバ]
何?
何で今謝った?

「…え?…へ?ってか…何?(笑)ごめん、何かよく分かんない(笑)」

シバのテンパり具合は最高潮に達した。

「シバさん…バカ」

「何がバカだよ(笑)」

「何となく」

「意味が分かんない(笑)」

⏰:10/04/18 19:43 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#324 [シバ]
しばらく沈黙…

しばらくってか大分…


10円玉が次々と公衆電話の餌食となっていく。シバは震える手で10円玉を入れ続けた。


こうして沈黙が続いても喋っても、10円玉はどんどん無くなっていく。
何か喋らないと…

「…アイリどうした?」

⏰:10/04/18 19:47 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#325 [シバ]
「あ…の…」

やっと喋ってくれた…とか思ってたら、アイリの様子がおかしい。

電話の向こうで泣いているようだった…
風邪なんか引いてない…

シバからの電話を取った時から泣いてたんだ。

嫌な予感は的中した…

「アイリ…彼氏が出来ました」

⏰:10/04/18 19:50 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#326 [シバ]
心臓が破裂するんじゃないかと思った…

耳が遠くなった気がした。
シバは立ち尽くした。

「…男?」

「はい…」

「え…何それ(笑)話違うじゃん(笑)」

「…何がですか?」

「アイリ…シバの事好きって…言ったよね?言ってくれたよね?」

⏰:10/04/18 19:54 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#327 [シバ]
「はい…」

「あれって嘘だった…とか?」

「…嘘なんかじゃないですよ」

「は…?じゃあ…ってか、マジで意味が分かんないんだけど」

「……………」

「何で?(笑)なんなワケ?(笑)シバからかわれてた?」

⏰:10/04/18 19:56 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#328 [シバ]
「からかってなんかない!」

電話の向こうでアイリは叫んだ。
ビックリした…

「一方的な片思いだったじゃないですか…アイリの…」

「……………」

「シバさんは気付いてないかもしれないけど、アイリ…相当辛いんですよ」

⏰:10/04/18 19:59 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#329 [シバ]
「アイリが辛い?何でアイリが辛いのさ!」


「あの合宿の時の事…覚えてますか?夜、2人で部室行ったじゃないですか」

「…忘れるワケないじゃん。覚えてるよ」

「シバさんは、アイリのキスを拒んだ」

「拒んだとかじゃなくて…ビックリしただけだよ!だっていきなり…」

⏰:10/04/18 20:02 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#330 [シバ]
「その後、あっさりフラれましたよね、アイリ…」

「…あぁ、まぁ」

「あれ、相当ショックだったんですよ…」

「…ごめん」

「アイリはずっとシバさんの事が好き…シバさんはアイリの事を友達とか後輩として見てる…そんな中、電話や手紙…複雑すぎました」

⏰:10/04/18 20:06 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#331 [シバ]
「何が複雑なのさ…」

「シバさんはアイリの事を好きでも何でもないのに、思わせぶりな態度で接してくる…こんな辛い事…もう嫌だよ…」

「電話とか手紙とか迷惑だったってワケ?」

「違う!そんなんじゃないよ…」


アイリの泣いてる顔が頭に浮かんできた…

⏰:10/04/18 20:09 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#332 [シバ]
「迷惑とかじゃなくて…嬉しかったです。冗談抜きで本当に…わがままなアイリに付き合ってくれて…」


「……………」



「これから先、シバさんにいつ会えるか分かんない…でも、会えなくても好きだ!っていう気持ちは強くなっていくばかりで…」

⏰:10/04/18 20:12 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#333 [シバ]
胸がジーンってなって、シバも泣きそうになった。

「でも、シバさんはアイリに対してそういう感情はないっていうのが分かって本当に辛くて…これ以上、シバさんに迷惑はかけられない…」

「…本当にそう思ってんの?」

「はい…だってシバさん、アイリに言ったじゃないですか…」

「何を…」

⏰:10/04/18 20:16 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#334 [シバ]
「『シバもアイリも女同士だ!』って…」

「……………」


「だから無理なんでしょ?性別はやっぱり大事ですもんね…」






「この…ボケ!アホ!あ゙〜!」

⏰:10/04/18 20:19 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#335 [シバ]
「え…?」

シバの中で何かが爆発した。
いろんな感情が湧き上がってきた。
もう、こうなりゃ自分の気持ちをウザいくらいぶつけてやるよ!
本当の気持ちを…!


「あ゙〜!もう!シバはお前の事が好きなんじゃ!女とか男とかそんなん関係ない!アイリの事が好きなんだ!」

⏰:10/04/18 20:22 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#336 [シバ]
「……………」


「そりゃ、最初はビックリしたよ!『何言ってんだコイツ』とか思ってたよ!でもな!時間が経つにつれて、どんどんお前に惹かれていったよ!最終的に『好き』になったよ!いつかこの気持ち伝えようって思ってた矢先だよ、お前の『彼氏できた』発言…」


「シバさん…」

「何さ…」

⏰:10/04/18 20:26 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#337 [シバ]
「………」

「何?何か喋れよ!」





「……遅いよぉ」

そう言うと、アイリは号泣し出した。
シバは受話器を持ったまま、アイリの泣き声を聞く事しかできなかった。

⏰:10/04/18 20:29 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#338 [シバ]
物凄い後悔の嵐が襲ってきた…
自分を責めて責めて、責めた。


何アイリのせいみたいな事言ってんだ自分…
ホント馬鹿だろ…シバ。何でもっと早く気持ちを伝えなかった…?
何余裕ぶっこいてたんだ?

考えれば考えるほど、頭の中がグルグル回っておかしくなりそうだった…

⏰:10/04/18 20:34 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#339 [シバ]
「彼氏…名前何ていうの?」

「…………」

「あは…(笑)教えたくないなら別に…」

「…秀一(しゅういち)」


ああ、やっぱりだ…
あのプリクラの『S』のイニシャルはシバの『S』じゃない…

シバは無理やり笑った。

⏰:10/04/18 20:37 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#340 [シバ]
「秀一君っていうのかぁ…シバと付き合えなかったのは、その秀一君と出会う運命だったんだよ、きっと(笑)運命は誰にも変えられないからねぇ(笑)」

この辺りからシバは泣いてた。
もちろんバレないように…




「シバさん…」

⏰:10/04/18 20:40 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#341 [シバ]
「アイリは可愛いよ。可愛いし、なんだかんだ言ってしっかりしてる!でも、わがままだよね(笑)」

「………」

「そのわがままなアイリを幸せにできるほど、シバは人間できちゃいないからなぁ〜(笑)秀一君の方がしっかりしてるかもよ(笑)おい秀一!アイリの事守ってやれよ!…なんてね(笑)」

⏰:10/04/18 20:43 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#342 [シバ]
「…ふふ(笑)」

アイリは泣きながら笑った。


「あ〜、そろそろ10円玉切れるわ…じゃあそろそろ…ね」

…本当は10円玉なんてまだまだ腐るほどあったんだ…


「まぁ、あれだ…その〜、何ていうか…負けを認めるワケじゃないけど…幸せになれよ!」

⏰:10/04/18 20:46 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#343 [シバ]
「…もね」

「え…?」

「シバっちもね。幸せになって…」


この場面でシバっちとか反則だろ〜…
一気に涙が出てきた。


「はいはい!じゃあ、またね。また会う日まで…」

「うん。シバっち、元気でね。ありがとう」

⏰:10/04/18 20:52 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#344 [シバ]
電話を切った…
ありがとうじゃねーよ…


受話器を置いた瞬間、たくさんの10円玉が出てきた。
あんた達ももう必要ないんだね…
10円ガムでも大量に買おうかな…

雨は激しく降り続けていた。
いつからこんなに激しくなったんだろ…

⏰:10/04/18 20:55 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#345 [シバ]
顔を上げたら容赦なく雨が降り注いでくる。

真希…
シバも『遅い』ってフラれたよ…

こんな中泣く事になるなんて思いもしなかったよ…
楽しかった毎日にも、これでピリオドを打ったな…


情けないけど、みっともないけど、ビショビショになりながら思いっきり泣いた。

⏰:10/04/18 21:01 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#346 [シバ]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:10/04/18 21:25 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#347 [シバ]
「おかえりー…うわっ!あんたどうしたの?ビショビショ…」

気がつくと家の玄関に立っていた。
母さんが出迎えてくれた。
バスタオルを持ってきてくれ、シバは鞄を置き、体を拭いた。


「もー、一言言ってくれれば迎えに行ったのに…」

⏰:10/04/18 21:35 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#348 [シバ]
「大丈夫だよ」

「大丈夫じゃないから言ってるんでしょ。も〜、おバカ」

「ごめんなさい」

「ほら、上がって…靴下脱いでね。すぐ脱衣所行きなさい」


ボンヤリしたまま脱衣所へ…

⏰:10/04/18 21:37 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#349 [シバ]
リビングに置いてあった洗濯物の中から、適当にTシャツと短パンを取り出して着た。

廊下の方からはご飯食べなさい的な母さんの声が聞こえた。

無視したワケじゃないけど、とりあえずボンヤリしながら自分の部屋へと向かった。
泣きすぎて目の周りが痛い…

部屋のドアを開けた…

「真希…?」

⏰:10/04/18 21:41 📱:F902iS 🆔:22c57y5w


#350 [我輩は匿名である]
あげるよん

⏰:10/04/24 22:27 📱:F02A 🆔:ZfVpRBLY


#351 [シバ]
>>350さん
あげありがとうございます!

更新します。




>>349

ドアノブを持ったまま、シバは呆然とした。
そこにいたのは真希…
制服姿で、ビショビショになった髪をタオルで拭いている所だった。

⏰:10/04/25 23:13 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#352 [シバ]
「ビショビショになっちゃったよぉ(笑)」

真希は笑った。

「…え?真希…なんで?ってか、何してんの?」

「傘忘れた(笑)」

「いやいや。アンタの家逆方向だし、真希ん家の方が近いでしょ、明らかに」

真希はタオルをシバに向かって投げた。

⏰:10/04/25 23:15 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#353 [シバ]
「それで拭きな!シバも頭ビショビショじゃん」

人ん家で偉そうにしている真希は、誰の家でも我が家のようにくつろげる。
それは昔から変わっていない。

これシバのお気に入りのブラウンのタオル…

フワフワ生地で吸水性に優れているから、シバの入浴後に小さな幸せを与えてくれるベストアイテムだったのに…

⏰:10/04/25 23:21 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#354 [シバ]
「そのタオルいいね。あたしも買おうかな♪部活中とかに使うと絶対癒される(笑)」


「…これ、シバのお気に入り」


「だろうなぁ…シバ、茶色系の物好きだもんね♪」


「………」

「………」

⏰:10/04/25 23:24 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#355 [シバ]
沈黙…



外の雨は更に激しくなっていた。
雨音しか聞こえない。
でも、この沈黙の中に音があって良かった…
シーンとしてたら絶対オロオロしてた。


シバはびしょ濡れになった小銭入れを机の上に放り投げた。

⏰:10/04/25 23:29 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#356 [シバ]
真希は小銭入れ(アンパンマンのやつ)を見つめている…

「それ、ちゃんと乾かさないとカビ生えちゃうよ」

「いいよ別に…もう使わないから」

「使わないの?」

「うん…もう、必要ない」

「そんな寂しい事言わないの!アンパンマンは顔が濡れると力が出ないんだよ!今のシバと一緒」

⏰:10/04/25 23:33 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#357 [シバ]
誰が上手い事を言えと言った?

でも、この時のシバは笑えなかった。
ってか、その言葉からして真希にはバレバレだったんだな…

フラれたって事…


「お疲れ様」

真希は笑顔を向けてくれた。
それに対してシバは無言…

⏰:10/04/25 23:36 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#358 [シバ]
ありがとう♪とか言えればなぁ〜…
多少は大人っぽい様に見られてたんだろうけど…


「あたしから『どうだった?』なんて聞かないよ。聞かないから…シバが落ち着いてからでいいから話して欲しい…嫌なら嫌って言ってね(笑)無理に話せ!なんて言わないからさ」

そう言うと、真希は立ち上がった。

⏰:10/04/25 23:41 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#359 [シバ]
目で追っていくと、真希はドアの前に立っていた。

「…もう帰るの?」

「シバが帰ってくるの待ってただけだから(笑)無事で何より♪」

「あのさ…」

「ん〜?」


本当はこのタイミングでアイリの事を話したかった。
だけど、真希と目が合った瞬間、目頭がジーンと熱くなって涙が出そうになってしまった…

⏰:10/04/25 23:45 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#360 [シバ]
「…………」

「無理しないで。今日は早く寝るんだよ♪また明日ね。オヤスミ」


真希は、シバの頭に置いてあったブラウンのフワフワタオルを優しく持ち上げた。

「あ、それ…」

「自分で使った物はちゃんと洗って返すよ(笑)これ基本♪じゃあね」

⏰:10/04/25 23:49 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#361 [シバ]
真希は優しくドアを閉めた。
廊下をトントンと歩いていく音を聞いていた。


母さんと真希の話し声がしばらく続き、玄関のドアが閉まった。

シバはベッドに寄りかかって、電話の事を思い出していた。
本当は思い出したくないのに…
でも、頭の中はその事でいっぱい…

⏰:10/04/25 23:56 📱:F902iS 🆔:nqEBLkDE


#362 [シバ]
泣きすぎて目が痛い。
気分も悪い。

ふと鏡に目をやる。


「…変な顔(笑)」

自分の泣き疲れた顔がくっきりと映っている。
プリクラ機みたいに修正がまったく効かないから、これが素の顔。

一瞬笑えた。
んで、また涙が出てきた。
ティッシュを何枚も何枚も出して、目と鼻を拭いた。

⏰:10/04/26 00:01 📱:F902iS 🆔:Xlk1up9c


#363 [シバ]
翌日…

目はボッコリと腫れ、鼻の下は赤くなり、ティッシュで擦り切れてとんでもない事になっていた。

泣きすぎて気分は悪いし、心はズキズキと痛むような変な感じだし…
最低最悪のコンディションだったけど、学校も部活も休むわけにはいかない。

とりあえず着替えて、家を出た。

⏰:10/04/27 22:11 📱:F902iS 🆔:gfQbMhcI


#364 [シバ]
玄関のドアを開ける。


歩く。


いつもと変わらない風景が続く。

あの公衆電話の前は、嫌でも通らないと学校には行けない…

公衆電話通過…

うわぁ〜涙出そう…

⏰:10/04/27 22:18 📱:F902iS 🆔:gfQbMhcI


#365 [シバ]
毎日こんな気持ちのまま、公衆電話の前を通らないといけないのか…

部活よりも遥かに憂鬱だ。
憂鬱というか、切ない。切ないっていうか、虚しい。

ネガティブな言葉しか浮かんでこない…

そんな自分に腹が立つ。でも…
このショックは大きすぎる…

⏰:10/04/27 22:21 📱:F902iS 🆔:gfQbMhcI


#366 [我輩は匿名である]
あげるよん

⏰:10/05/14 19:06 📱:F02A 🆔:LufTqZdM


#367 [我輩は匿名である]
>>100-150
>>150-200
>>200-250
>>250-300

⏰:10/05/15 04:30 📱:W61CA 🆔:vUHF1Odg


#368 [我輩は匿名である]
あげ

主さん頑張ってくださいね\(^O^)/

⏰:10/05/17 23:08 📱:N02A 🆔:c4U2fRXU


#369 [シバ]
みなさん上げありがとうございます(*^_^*)
シバです!
ケータイ変えました。

なかなか更新できずすみません
今日の夜あたりからまた更新していきます!

よろしくお願いします!

⏰:10/05/22 13:42 📱:F02B 🆔:mZlOmohk


#370 [シバ]
久々更新します!


>>365
教室に着いた。
ボーっとしてみても、溜め息を吐いてみても、心の中のショックは何も変わらない。

このまま死んでもいい…誰かシバを殺してくれないかな…


…な〜んて恐ろしい事考えてたりもした。

⏰:10/05/22 18:34 📱:F02B 🆔:mZlOmohk


#371 [シバ]
そんな時は1人でいても、マイナスなスパイラルに陥ってしまうだけだ。

心に蓋をして1人で考え込んでも、ただただ辛いだけ…

ふと真希の方に目を向ける。
さっきも「おはよ」って一言交わしただけで、今日は何も喋ってない事に気付く…

ビショビショになりながらも、心配してシバのもとに来てくれた真希…

⏰:10/05/22 18:40 📱:F02B 🆔:mZlOmohk


#372 [シバ]
「(…真希に話そう)」


そう決めた。
この前みたいに、

「真希にアイリの事話そうかな?どうしようかな?」

なんてオロオロしなかった。
即決だった。



昼休み…

「真希〜話がある!」

⏰:10/05/22 18:43 📱:F02B 🆔:mZlOmohk


#373 [シバ]
弁当箱を包んでいる最中だった真希は、一瞬ビックリしたような表情を見せた。
(多分、あの顔はビックリした顔だったと思う)


「え?あ、うん」

真希は片言で答えた。

隣の空き教室に呼び出した。


真希は黙ったまま、古い机に腰掛けた。

⏰:10/05/27 21:23 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#374 [シバ]
無言の空間…
なんか痛い…この空気…


「あのね、真希」

「うん」



フラれたよ…



心の中で呟いてみる。
でもなぜか、口に出せない…
心臓が飛び出しそう。

⏰:10/05/27 21:25 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#375 [シバ]
緊張みたいな、フラれた事実を認めたくないみたいな、同情されたくない!みたいな、変な感情が自分の中で渦巻いている感覚だった。

「………」

無理に笑顔を作ろうとしたら、逆に泣きそうになる。
親友の前で何強がろうとしてんだろ…
馬鹿かシバ…

真希からも何も喋ろうとはしない。

⏰:10/05/27 21:30 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#376 [シバ]
その時だ…

「ぶぅぇあっくしょい!」


教室中に響き渡るようなくしゃみ…

真希だった。

真希は可愛い顔して、オッサンのような勢いのあるくしゃみをする。


シーンとした教室だったから、尚更おかしく感じた。

⏰:10/05/27 21:34 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#377 [シバ]
「え?あははははは〜!ぎゃはははははは〜!ごめんちゃい♪」


シバが笑う前に笑い出す真希。
顔は可愛いのに…

「え?え?くしゃみ…ぎゃはははははははははは」

真希のくしゃみで笑わない時はない!

顔とくしゃみがマッチしていないから尚おかしい。

⏰:10/05/27 21:38 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#378 [シバ]
重苦しい雰囲気が一瞬にして吹き飛んだ。

あ〜…
やっぱ真希に助けられてばっかりだ。


「あ〜可笑しい(笑)あのね、シバね、アイリにフラれたよ…」

「ごめんごめん(笑)そっかぁ…」

何この会話…


シバは無理やり笑顔を作った。

⏰:10/05/27 21:41 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#379 [シバ]
「ま、でもさ!シバにしちゃあ、よく頑張ったよ。シバって小心者だからさ♪こういう経験も必要なんだよ!きっと」


笑って話してくれる真希。

「そうだね。ん〜…でも、レアだよね?こういう経験」

「そうだよ。またこれから頑張ろうよ♪」


モヤモヤが完全に消えたわけではない。
でも、なんか変なスッキリ感があった。

⏰:10/05/27 21:48 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#380 [シバ]
アイリの事で、いい意味でも悪い意味でも色々と悩んでいたから、解放された気持ちになった。

でも、やっぱりフラれたっていう事実は変わらないワケであって…

立ち直るのには時間がかかりそう。

だけど、終わってしまった事はしょうがない。
だから前に進もう!

そう考えていた。

⏰:10/05/27 21:51 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#381 [シバ]
それから数ヶ月が過ぎた。

夏真っ盛り。
体育館での練習は灼熱地獄と化した。
窓開けても風なんて入ってこない…
監督の話の最中に外からのセミの鳴き声…
着替えても着替えても、無駄に出てくる大量の汗…


鬼だ…
暑すぎる…

だけど…

⏰:10/05/27 21:57 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#382 [シバ]
バスケに集中していた。3年生はこの時期は卒業後の進路が関わってくる。
シバはバスケで進む!
だから大学に行く!


そう決めていたくらい、バスケに夢中だった。


アイリの事を忘れようと決めたあの日から、自分で言うのもなんだけど、一回り成長できた。
人生は出会いと別れ!
そうなんだよ…うん!

⏰:10/05/27 22:03 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#383 [シバ]
毎日が充実していたと思う。
キツい事もたくさんあったけど、バスケができる!っていう事に幸せを感じていた。

真夏の灼熱地獄の体育館を後にするのは、夜8時過ぎ…
その頃には外はだいぶ暗くなっている。
決して涼しいワケじゃないけど、この瞬間をシバはこよなく愛していた。

風流だなぁ〜…
夏のこの時間帯…
一句読もうかしら…

⏰:10/05/27 22:09 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#384 [シバ]
そんな時、シバをどん底に陥れる出来事が起こった。

「先輩方!監督が集合だそうです!」

3年生全員で、外の部室の前で練習後の一時を楽しんでいた。
って言っても、ただ暑い暑い言いながら群がってただけだけど。


「集合?じゃあ、2年も呼んできて」

また灼熱地獄の体育館に逆戻りとなった。

⏰:10/05/27 22:14 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#385 [シバ]
ムシムシする…
頑張れば茶碗蒸しくらい作れるんじゃない?

っていうくらい、暑かった。

せっかく着替えたTシャツも意味を成さない。
背中の生地がピタッと肌に触れると不快感MAX…


肝心な監督が出てこない。
クーラーガンガンの部屋でアイスでも食ってんのかい?
早くしてくれ…

⏰:10/05/27 22:18 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#386 [シバ]
5分くらい経った頃、監督は出てきた。
手には数種類のプリント用紙。

それを1人1人に配り終えると、床に座るよう指示した。

暑いのに…



プリントは1人に3枚ずつ。
1つ目は、練習メニューの項目。
2つ目は、夏の対策としての食事の栄養メニューとか、水分補給とか…

⏰:10/05/27 22:23 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#387 [シバ]
3つ目は…

夏休みの日程。
1日練習とか、休みとか、行事とか、登校日とか、合宿とか…


8月の頭、一週間の合宿が入っていた。
うわ〜、ハードだなぁ…


え…?




目を疑った。

⏰:10/05/27 22:27 📱:F02B 🆔:Jyle7NeE


#388 [真沙也]
自分もバイです
すごく気持ちが分かります

更新頑張って下さい

⏰:10/05/28 09:22 📱:930CA 🆔:02M4dgR2


#389 [シバ]
>>388さん

ホントですか?
なんか心強いです(^^)笑

よろしければ、感想板の方にも遊びにきてくださいね!!

⏰:10/05/28 20:02 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#390 [シバ]
>>387


プリントに書かれていたのは…


『○○高校と合同合宿』


○○高校…





アイリのいるチーム…

アイリに会うって事か…?

⏰:10/05/28 20:05 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#391 [シバ]
すぐ隣に真希がいる。
真希も日程表を見たまま動かない…

真希に話しかけようか…?

でも、何を話せばいい?





この後も監督の話は続いていたけど、耳に入ってこなかったのだろう。

何も記憶がない。

⏰:10/05/28 20:08 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#392 [シバ]
帰り道…


後輩のリナが話かけてきた。

「シ・バ・さ・ん♪夏休みの日程表見ました?」

「え?あ〜、うん。見たよ」


「あのアイリのチームと合宿ですよ♪なんかウケますね(笑)」


何もウケないよ〜…

⏰:10/05/28 20:11 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#393 [シバ]
「そうだね(笑)」

笑うしかない。
ちゃんと笑顔で話せてたかな?


「久しぶりですね、アイリに会うのって♪またシバっちシバっちうるさいんだろうなー…」


「どうだろ…(笑)あれから時間も経ってるし、もうそんなノリじゃないんじゃない?」

「え〜?だって、あのアイリですよ?(笑)」

⏰:10/05/28 20:15 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#394 [シバ]
「あはははは(ハァ…)」


リナはシバとアイリの事を知らない。
だからアイリの話なんてすんな!なんて言えない。


せっかく忘れてたのに…


「あたし(リナ)が思うに、アイリはシバさんの事が好きなんだと思いますよ!」

ドキッとした。

⏰:10/05/28 20:20 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#395 [シバ]
「なんて言うんだろ…あたしとか他の人に対する絡みと、シバさんに対する絡みが明らかに違いましたもん!」


「そんな事ないよ(笑)」

「いや…あれはlikeじゃなくてloveな絡みですよ〜!」


心臓がバクバクしてきた…


「あれですよ、あれ!世間で言う『レズ』!」

⏰:10/05/28 20:26 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#396 [シバ]
レズ…
シバってレズなのか?



この頃は、レズとかホモとか聞いたら素で引いていた。
気持ち悪いとか、有り得ないとか…


アイリに出会うあの日まで…

アイリに出会って、180°考えが変わった。

⏰:10/05/28 20:32 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#397 [シバ]
そういう恋愛もあるんだ!
悪い事じゃないんだ!って。


それ以前に、男も女も同じ人間であって、ただ世間ではそれが認められていないだけで…



リナからのレズ発言にオロオロしながらも、とりあえず否定はしておいた。

アイリには普通に男の彼氏がいるよ!と…

⏰:10/05/28 20:36 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#398 [シバ]
リナは驚いた素振りを見せたけど、すぐに笑顔になった。


「え?そうなんですかぁ?(笑)」

「うん…だから…ってか、前〜にプリクラの話したじゃん?」

「あのイニシャルですか?」

「そう!あれね、シバの『S』じゃないんだよ(笑)」

「なぁんだ…そうなんだ♪」

⏰:10/05/28 20:40 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#399 [シバ]
「そうそう(笑)」

「シバさんを取らないで〜!って心配してたんですよ(笑)あ、変な意味じゃなくて、シバさんを変な方向に連れて行かないで!みたいな(笑)」


ああ、なんかゴメン…ってなった。

「とりあえず、夏合宿が楽しみですね♪クソ暑いからかなりキツいんだろうけど、またみんなに会えるから楽しみだぁ♪早く8月にならないかな〜」

⏰:10/05/28 20:44 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#400 [シバ]
シバ的には8月なんて来ないで頂きたい…
むしろ抹消してもらいたい…


リナと一通り話をしてから帰宅。
真希から何か連絡がくるかなー?って思ってたけど、特に何もなく…


モヤモヤが蘇ってきた。でも、過ぎた事なんだし、もう終わった事なんだ!だからもう関係ない!

いや…しかし…but…
頭の中がゴチャゴチャしていた。

⏰:10/05/28 20:50 📱:F02B 🆔:WeEmfU6s


#401 [シバ]
風呂と食事を済ませ、部屋に戻る…

音楽でも聴こうかな〜っと思ってコンポの電源を入れた。

コンポの後ろにアンパンマンの小銭入れが落ちているのを発見した…

なんだかんだで、雨で濡れてびしょびしょになった小銭入れをキチンと干して乾燥させてたから、カビなどは生えてなかったみたいで…

⏰:10/05/29 21:57 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#402 [シバ]
小銭入れのアンパンマンは微笑んでいる…
そんな顔でシバを見ているような気がして、なんかイライラしてきた。


「お前フラれたのによく笑ってられるな…」

って思った。


アンパンマンを見て、またアイリの事が思い出される…
アイリの声を聞きたいがために、一生懸命10円玉を貯めた事。

⏰:10/05/29 22:01 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#403 [シバ]
余った10円玉で駄菓子を大人買いした事。

泣きながら、うま○棒をむさぼり食った事…

あぁ情けない…



しょうもない思い出に浸っていると、ふと思い出した。

アイリからの手紙とプリクラを封印した箱がある事を…
クローゼットの奥を探した。

⏰:10/05/29 22:05 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#404 [シバ]
小学校の時に使っていた絵の具セットが頭に落ちてきてイライラしながらも、箱を発見した。


「あった…」

中を見ると、あのアイリ独特の癖字で書かれた便箋が大量に出てきた。

今思うと、あの短期間でよくこんな量になったなぁと感心する。


一番最初の手紙…
アイリの自己紹介。

⏰:10/05/29 22:17 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#405 [シバ]
「アイリはこんな人間ですよ♪」

と、一生懸命伝えてくれてる気がして、何故か笑顔になれた。

2通目からは、敬語を遣わなくなっている事に気付いた。

4通目からは、次第に『好き』という言葉を遣う事が多くなっていた。
プリクラとアイリの写真が同封されるようになったのもこの時。

11通目には「結婚しようね」なんて書かれてた。
あら…

⏰:10/05/29 22:24 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#406 [シバ]
30通目かな?
31通目からかな?

「好き」って言葉が次第に減っている事に気付く。

たぶんリナに、イニシャル入りのプリクラを送ってきたのもこの辺。



そして、今に至る。



…………………。

言葉が出なかった。

⏰:10/05/29 22:27 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#407 [シバ]
そして、気付いた事がもう1つ…

シバ、アイリの事何も分かってやってないって事…


手紙もらって、電話して、『好き』って言ってもらって、シバは浮かれてたんだ。
アイリは本気だった…

今になってやっと分かった。
逃げていたのはシバの方。
なのに、アイリが悪いみたいな事を言ってしまった。

⏰:10/05/29 22:33 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#408 [シバ]
捨ててやろうと思っていた手紙達だったのに、沢山の事に気付かせてくれた。

でも、時既に遅し…

気付いた所で、もう失っているのだから…


男じゃないから?
女同士だから?
逃げていたのは自分じゃないか!
この大馬鹿野郎が…!


涙が出てきた自分の顔を思いっきり叩いた。

⏰:10/05/29 22:39 📱:F02B 🆔:twI8aYUI


#409 [シバ]
鼻水垂れ流しながら、また箱の中にしまい、クローゼットの奥に戻した。

捨てないといけないのに…
捨てれる事ができたら、どんだけ楽なんかな〜?でも、今は捨てちゃいけない気がする…

いつか捨てれる日がくることを願って、翌日を迎える。


またいつものように、「いってきます」「ただいま」の繰り返しの日々…

⏰:10/06/01 21:01 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#410 [シバ]
真夏の暑さ…
体育館の灼熱地獄…
酸欠になりそうな空気…


こんな日々が続く事を考えただけでクラクラしてしまう。
だけど、アイリに会うよりはマシかもしれない。

嫌でも会わなきゃいけない日がくる。
しかも、『その日』はもう目の前まで来ている。

⏰:10/06/01 21:06 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#411 [シバ]
別に会いたくないワケじゃない。
あからさまに避けるつもりもない。


だけど…


どう接しろと?
今更…


普通に『久しぶり〜』とかの絡みでいいなら、多少無理してでも笑顔は作れる。



…ハズ。

⏰:10/06/01 21:09 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#412 [シバ]
そして迎えた8月…


体育館で準備をしていた。
1年生がモップをかけている時だ。
外を眺めていた1人が、ふいに笑顔になった。

数人を呼び寄せて、体育館の入り口へ走っていった。


その雰囲気に気付いたシバも、ガラス張りの入り口に目をやった。

⏰:10/06/01 21:14 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#413 [シバ]
1台のバスが入ってきた。

見たことのある独特な色をしたバス…

アイリのチームのチームカラーのバス…


一瞬心臓が止まるんじゃないかと思った。
無駄にドキドキが激しくなった。

この辺では見かけない車のナンバープレート…

『懐かしい』って素直に喜べない自分が腹ただしい…

⏰:10/06/01 21:19 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#414 [シバ]
大量の荷物を抱えた連中がゾロゾロと降りてくる。

懐かしい面々…

向こうも嬉しそうな表情で…
というより、照れくさそうな表情で体育館へと入ってきた。

久しぶりの再会は、多少照れてしまう。

暑さとだるさでシンとしていた体育館が一気に賑やかになった。

⏰:10/06/01 21:23 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#415 [シバ]
ほんで、会いたくないバスなのに心と体は正直なもので、自然と目はアイリを探していた。


ゾロゾロ続いた行列が終わった。


アイリがいない…


アイリと仲の良いメンバーはみんな入ってきたのに、あいつだけがいない…


なんでショック受けてんだ?自分…

⏰:10/06/01 21:27 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#416 [シバ]
また授業中にケータイいじったり、校則破ったり、部の規則破ったりして連れてきてもらえなかったのだろうか…?


あのクソガキならやりかねない…

心が焦ってる事に気づく。
意味が分からない…





「アイリ!急げって!」

⏰:10/06/01 21:31 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#417 [シバ]
そんな声が聞こえた。
先輩から激を飛ばされていた。


…え?
アイリ?


入り口をガン見した。
最後に入ってきたのは、紛れもなくアイリ…


うわぁ…

胸の高鳴りが異常だった。
ダルそう〜にして、荷物引きずって入ってきた。

⏰:10/06/01 21:35 📱:F02B 🆔:FeOF/AwI


#418 [シバ]
時が止まったかと思った!とか、周りの声が聞こえなくなった!とか、こういう事を言うのだろうか…

不思議だ。


アイリだ…
あのアイリだ…

だけど、あの頃とは何かが違う。
髪型がショートカットになっている。
あの時は長袖を着ていたけど、今は夏真っ最中。だから、移動着の半袖ポロシャツを着ている。

⏰:10/06/03 22:21 📱:F02B 🆔:tQMAtrqk


#419 [シバ]
あの頃と違うのは、お互いの気持ちだけじゃないんだ。

服装だって容姿だって、周りを取りまく環境だって変わるんだ。


だから、あの頃と同じアイリを求めてはいけない。

それは分かってる。
分かってるつもりなんだけど…
この胸の高鳴りは一体何なんだろう…

⏰:10/06/03 22:26 📱:F02B 🆔:tQMAtrqk


#420 [シバ]
リナが走ってきた。

「シバさん!アイリがいますよ♪後で絡みに行きましょうよ!」


無理無理…



「あ〜、時間があればね。たぶん時間ないから無理だよ(笑)」

「な〜に言ってるんですか(笑)昼休みとか帰りとか、時間はいくらでもありますよ!」

⏰:10/06/03 22:30 📱:F02B 🆔:tQMAtrqk


#421 [シバ]
「あ〜、そうね。そうしようかね」

アイリ達は更衣室へと入っていった。

キャプテンの指示を出す声とか、急げ!とかの声が忙しく飛び交っているようで、着替えたメンバーは素早く出てきてバッシュの紐を結んでいた。


アイリが出てきた。
めんどくさそうにしてたけど、ちゃっかり素早く行動していたみたいで…

⏰:10/06/03 22:34 📱:F02B 🆔:tQMAtrqk


#422 [シバ]
相変わらず練習着がダボダボだ…
サイズのチョイスミスなのか?

それとも、単に細いだけ?


アイリを見て、いろんな事を考えていた。
アイリの事ばっかり考えてる。
そんな自分に腹が立つ。




忘れる!って決めたのに、未練タラタラじゃないか…

⏰:10/06/03 22:37 📱:F02B 🆔:tQMAtrqk


#423 [我輩は匿名である]
あげま

⏰:10/06/14 15:08 📱:F02A 🆔:dmztYGo2


#424 [真沙也]
頑張ってください

⏰:10/06/25 12:56 📱:930CA 🆔:VyUqrzvg


#425 [我輩は匿名である]
>>0-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:10/06/26 14:35 📱:auKC3X 🆔:uzu8Eojo


#426 [我輩は匿名である]
>>000-100

ミスった

⏰:10/06/26 14:36 📱:auKC3X 🆔:uzu8Eojo


#427 [シバ]
皆さんありがとうございます!

しばらく更新できずすみません(>_<)
今日からまた更新していきます♪

⏰:10/06/26 15:00 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#428 [シバ]
>>422


アイリのチーム全員がコートの端に立って、コートに向かって挨拶をした。

「よろしくお願いします!」

(部活をしていた人は分かると思います)


シバのチームも並んでアイリのチームと向かい合った。

「こんにちは!よろしくお願いします!」

⏰:10/06/26 18:56 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#429 [シバ]
久しぶりの再会で、両チームともニヤニヤがハンパなかった。

久しぶりだね〜♪みたいな笑みを浮かべながら、チームごとに円陣を組んだ。


一瞬、アイリと目が合った。
ドキッとした。


…だけど、シバは反射的に目をそらしてしまった。
意気地なしにも程がある。

⏰:10/06/26 19:00 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#430 [シバ]
今、アイリが微かに笑った気がした。
気のせいかな?


…気のせいですな。
あはははは。


リナはアイリと少しだけじゃれて円陣に入ってきた。

まぁ、いいや。
気持ち切り替えよう。

⏰:10/06/26 19:03 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#431 [シバ]
練習が始まる…


「ファイトー!」
「1本1本!」
「声出してー!」


いろんな声が飛び交う灼熱地獄の体育館。
何十人といる中、やっぱりアイリの声だけはすぐに分かる。
そんな自分の微妙な賢さと、訳の分からないアイリへの感情に何とも言えない気持ちでいた。


練習に集中しないといけないって事は分かってる。

⏰:10/06/26 21:22 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#432 [シバ]
だけど…
目は自然とアイリを追っている。
だから、ちょっとしたアイリの変化にすぐに気付く。

「アイリ、ドリブル上手くなったなー」

とか、

「キツくてもちゃんと走るようになったなー」

とか。


そんなシバは、アイリの目にはどう映っているのだろうか…

⏰:10/06/26 21:26 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#433 [シバ]
そんなこんなで昼休み。

みんな暑い暑い言いながら、弁当を食べ始めた。暑いから食欲ないなんて言おうもんなら、マネージャーが黙っちゃいない。
だから嫌でも食べないと!


アイリのチームの3年生がシバ達の所へやってきた。


「シバ久しぶり!」
「みんな元気だった?」
「マキータ相変わらず可愛いな♪」

⏰:10/06/26 21:32 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#434 [シバ]
マキータとは、真希のニックネーム。
人懐っこい真希はアイリのチームから人気があった。

そこからはダラダラしながら思い出話に耽った。
こういう瞬間があるから、シバは他校との合同合宿が好きだった。


アイリの事がなければ…アイリともこうやって笑いながら話ができていたハズだ。
複雑だ…

⏰:10/06/26 21:36 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#435 [シバ]
「そりゃあそうと、シバ!うちのアイリと話したかぁ?(笑)久々の再会でしょ?」

ドキッ!なんてもんじゃない。
もう心臓が引きちぎられるんじゃないかと言わんばかりの勢いでドッコンバッコンした。

え?
みんなシバとアイリの事知ってんの?
ってか、アイリがバラした?

「アイリさぁ、シバの事大好きだったじゃん(笑)毎日毎日シバシバだったからさ♪」

⏰:10/06/26 21:40 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#436 [シバ]
「え?あ、あ〜!まだ話してないよ(笑)」

あたふたしながらの返答しかできない。


「でもさ、最近はあんまり言ってなくない?」

「ちょっと前までは毎日うるさかったけどね」

「大人になったんだって。アイリも(笑)」


向こうの3年生で話が盛り上がっている中、シバは笑顔を作っている事がやっとだった。

⏰:10/06/26 21:43 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#437 [シバ]
「アイリも彼氏ができたもんね♪」

その一言で心はグサッと撃ち抜かれたように痛んだ…


「あの子あの子!ほら〜、あの、サッカー部の」

「秀ちゃん♪」

「そうそう秀一君♪超カワイイ系の♪」

「カワイイ系っていうよりイケメンだよ、あれは」

⏰:10/06/26 21:48 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#438 [シバ]
「ヤバいよね〜!秀一君が笑った顔見たら惚れそうになっちゃった(笑)」

「2、3年からも人気あるもんね♪あたしもあんな彼氏欲しい〜」



その秀一とかいう奴の顔すら知らないシバ…

「え〜?イケメン?いいなぁ、見たい見たい♪」

便乗して話に乗るシバのチームの3年生。
笑ってるシバだけど、心ん中はイライラと悲しみだらけ…

⏰:10/06/26 21:54 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#439 [シバ]
イライラしながらも、秀一とかいう奴の顔を想像していた。

市○隼人系?
山下○久系?

勝手に架空の『秀一』を作り出してはイライラ。

もう、そんな話聞きたくねぇよ!


乙女チックな恋バナをしてる連中の目を盗んで、こっそりその場を離れた。
トイレ行こう…

⏰:10/06/26 22:00 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#440 [シバ]
トイレも灼熱地獄…
灼熱トイレとか終わってる。
ただでさえ暑いのに、ゆっくりケツすら休ませられないじゃないか!

全部のトイレが使用中だった。

「あはー♪ここのトイレ流れが悪い(笑)」

なんて声が聞こえてきたから、

「う○こでもしてたんか!早く出ろや!」

って言ってやろうかと思い、また地味にイライラ…

⏰:10/06/26 22:06 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#441 [シバ]
遅っ!
なんで女ってこんなにトイレが長いんだ?

まぁ、シバも女だけどさ!
トイレくらいパパっと終わらせろや!




ガチャン…
誰かがトイレに入ってきた。
誰だろうと関係ない。
近くの鏡をチラっと見た。



ドッカーン!

⏰:10/06/26 22:10 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#442 [シバ]
ア、ア、アアアアアアアアアイリ…

アイリ?

アイリ〜!!


そこに立っていたのはアイリ。
体が凍りついてしまった…
こんな偶然が起こっていいものなのか?
神様ってホントに意地悪だな…
意地悪すぎる…


これは偶然なのか?運命?
シバにどうしろと?

⏰:10/06/26 22:13 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#443 [シバ]
アイリはシバに気付いている…ハズ。

なのに、シバの姿を見ても何も言ってこない。

って事は、もう他人になってしまったんだ。
友達でも何でもない。

赤の他人なんだ…


こんなに近くにいるのに、こんなに悲しい事があっていいのだろうか?


だって、その距離はたったの1・2歩しかないんだぞ?

⏰:10/06/26 22:18 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#444 [シバ]
もう、電話とか手紙とかのそんな距離じゃなくて、リアルにアイリがすぐそこにいるんだぞ?

手ぇ伸ばせば届くんだよ?

何度自分に問いかけた事か…



悲しさのあまり、俯いてしまったシバ。
この意気地なし!


「気付いてんのかと思った」

⏰:10/06/26 22:22 📱:F02B 🆔:prxZMi5Q


#445 [シバ]
…は?


後ろから声がした。

だけど、振り向けない。そのままジッとしていた。


「気付いてんのかと思った!ってば。ねぇ…」

誰に言ってんの?
シバに?


「相変わらずだね(笑)」

⏰:10/06/27 22:52 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#446 [シバ]
顔を上げると、鏡越しにアイリと目が合った。

シバはどんな表情をしていたのだろう…
アイリは真っ直ぐにシバの目を見ている。


「…気付いてるよ」


ボソボソと話してみた。んで、また俯いた。


「あっそ」

そっけないアイリの言葉。

⏰:10/06/27 22:56 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#447 [シバ]
お前に「相変わらずだね♪」なんて言われる覚えはねーよ…

とか、とにかく緊張とイライラがマッチして妙な気持ちでいた。


トイレが1つ開いた。
ナイスタイミングだ!


そのままトイレに直行しようと、ズカズカと歩き出してみた。


「ちょっ…!」

⏰:10/06/27 23:02 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#448 [シバ]
アイリは一瞬何かを言いかけた。

思わず振り向いてしまいそうだったけど、こらえた。
そんなシバを見たアイリは何を思ったのか、シバの左腕を強引に引っ張った。


「?!」


そのままトイレを出ようとするアイリ。

「いってぇ!何…おい、ちょっと!」

⏰:10/06/27 23:05 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#449 [シバ]
アイリに引っ張られながら、外に出た。

「いてぇよ!何してんの?!」

腕を取っ払ってやった。アイリは不満そうな表情で、シバの顔をジッと見ている。

「あそこ行こう」

アイリが指差したのは、校舎内の教室。

「は?校舎内は立ち入り禁止だから」

「そんなん関係ないし」

⏰:10/06/27 23:10 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#450 [シバ]
いや、お前他校の生徒だから人様の学校に入れないだろ!

「ダメだろ、普通に考えて」

「別にいいじゃん。荒らしにきたワケじゃないし。ってか、マジメな性格は相変わらずなんだね」

「悪かったね」

「別に」


あー嫌だ。こんな空気…

⏰:10/06/27 23:14 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#451 [シバ]
「何するつもり?今更」

皮肉っぽく言ってみた。

「別に何もないけど」

「じゃあ戻るわ。昼休みがもったいない。あ、トイレ行かなきゃ」


「…久しぶりに話がしたい!」


アイリは真剣な表情で訴えてきた。

⏰:10/06/27 23:18 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#452 [シバ]
「だから…今更何を話すのさ?」
「とりあえず話がしたい」

「何話すの?」
「分かんない」

「ふざけてんの?」
「ふざけてない」


「馬鹿にしてんの?」
「馬鹿にしてない」


そんなひょうひょうと答えるなよ…
余計イライラする。

⏰:10/06/27 23:21 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#453 [シバ]
いい加減にしろ!


次の言葉はそれだったけど、出せなかった。
なぜなら…

あの最後の電話の時…
アイリと秀一を応援するよ♪
みたいな事を話したのは、シバの方だったから。

例えそれが嘘だったとしても…

だからアイリに冷たく当たっても、それこそ『今更』だった。

⏰:10/06/27 23:26 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#454 [シバ]
「…………」

黙り込んでしまった。


「…行こうよ」

アイリに手を引かれながら、2階の教室目指して、階段をのぼった。



…教室は静かだった。
人がいないんだから当たり前か…

教室の一番後ろの席の影になっている所へ行き、床に座った。

⏰:10/06/27 23:31 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#455 [シバ]
沈黙を破るかのように、アイリはケータイを開いた。


アイリのケータイ操作の音だけが聞こえていた。メールを打っているらしい。

しばらくすると、アイリはケータイを閉じた。


「…秀一君?」

何気なく聞いてみる。

「そうだよ」

⏰:10/06/27 23:34 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#456 [シバ]
「順調そうだね」

「今あっちも合宿中なんだって」

シバの問いかけを無視したような答えが返ってきた。


「順調そうじゃん」

だからこんな返事を返した。


「別に…普通だよ」

「そっか」

⏰:10/06/27 23:37 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#457 [シバ]
外からはセミの鳴き声と、陸上部の元気なかけ声が聞こえる。

シーンとした場所にいると、そういう音や声に敏感に気付くようになる。


横をチラッと見ると、そこにはアイリがいる。
もう二度と会う事はないと思っていたアイリが一緒に肩を並べて…

尚更悲しくなる…

その時のアイリの横顔はキレイだったのを覚えてる。

⏰:10/06/27 23:43 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#458 [シバ]
「合宿きつい?」

話題を変えてみる。

「そうですね。移動時間も長かったし…って、まだ初日始まったばかりだけどね(笑)」


お互い向き合わずに会話を進める。

「アイリ、髪切ったんだね」

「ああ、気付いてくれたんだ(笑)」

「そりゃ気付くわ(笑)あの時は肩より長めだったからね」

⏰:10/06/27 23:48 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#459 [シバ]
「さっきさ、何でシカトしたの?アイリの事」
「何が?」

「トイレでさ」
「シカトってか…うん(笑)だって、話す事ないじゃん」


「冷たいんですね」
「いきなり敬語使うのやめれ」

「冷てーなぁ」
「それもやめれ」

「多少ショックだよ」
「しゃーないじゃん」

⏰:10/06/27 23:53 📱:F02B 🆔:WsJJQz56


#460 [シバ]
「何がしゃーないの?」
「…しゃーないモンはしゃーない」

「変なの」
「だろうね」

「ねぇ…何で無視したの?本気で答えてよ」
「…………」


「ねぇ…」
「フラれたから」

「え…?」
「そんだけ!以上」

アイリはしばらく体育座りのまま動かなくなった。

⏰:10/06/28 00:00 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#461 [シバ]
「シバさん…フラれたの?」

まさかの言葉だった。


「あのさ、ホントに馬鹿にしてんの?」

「え?だって…意味が分かんない」

「はぁ?」

「なんでシバさんがフラれたからって、アイリがシカトされなきゃいけないんですか?」

「お前…マジ…ありえねぇ」

⏰:10/06/28 00:04 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#462 [シバ]
イライラを通り越して力が抜けた…

「そんな事言ったって…」

「もうお前には秀一がいるでしょ?はい、解決!終了!」

「あの、シバさん…もしかして、そのフラれたってヤツ…アイリの事?」

「それ以外に何がある?」

「シバさん…何か勘違いしてません?」

「してないよ」

⏰:10/06/28 00:09 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#463 [シバ]
「いや、勘違いしてる(笑)」

アイリは意味深な表情で微かに笑った。

「アイリ…シバさんの事嫌いって言ってないですよ(笑)」



「………は?」


「だからフラれてないじゃん(笑)」

「は?意味分からん…」

⏰:10/06/28 00:13 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#464 [シバ]
「言葉のまんまっすよ!だってアイリ、シバさんの事フッた覚えないし(笑)」
「嘘つくな」

「ホントだって(笑)」
「…意味が分かんない」


アイリは可笑しそうに笑っている。
ムカつくけど、アイリから目が離せなかった。

「シバさんは、アイリの事好きだったんですか?」
「……………」

「お〜い(笑)」

⏰:10/06/28 20:11 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#465 [シバ]
「あー、そうだよ」

「そうなんだ!…いつからそんなに素直になったんですか?シバっち(笑)」

「お前、調子良すぎだろ…何なワケ?」

「だから前も言ったけど、アイリはシバさんの事好きですよ!シバさんはアイリの事、どういう『好き』で見てるの?」

「どういうって言われても…」

「単に『好き』なのか、ちょっと特別な感情の『愛』なのか…」

⏰:10/06/28 20:16 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#466 [シバ]
「言わなくても分かるだろうが」
「分かんない。だってシバさんって何考えてるのか分かんないもん(笑)」

「…愛…だと思う」
「素直だね」


「まぁ、今更だから隠しても意味ないしね(笑)」

無理やり笑ってみた。
アイリは真顔のまま、目線を落として何かを考えているようだった。

⏰:10/06/28 20:20 📱:F02B 🆔:iPaCEKqQ


#467 [シバ]
「好きだよ…シバさん」

ふいにアイリは口走った。
シバはビックリしたっていうか、は?みたいな怒りというか、その言葉を聴きたかったんだよ〜…っていう喜びみたいな感情が襲ってきた。

「いや、何…え?」

「アイリもシバさん好きだよ。忘れてないよ」

…泣きそうになった。
体が震えた。
全身がジワッと熱くなった。

⏰:10/06/29 22:47 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#468 [シバ]
アイリの方に顔を向ける。

アイリは身を乗り出して、シバの顔を両手で包み込んだ。
アイリの目を見続ける…

微かに潤んでいた。
そのままの体勢で、2人ともしばらく無言でいた。

セミの鳴き声も、外からの陸上部の声も聞こえなくなった。

「シバさん触るの久しぶりだなぁ(笑)」

⏰:10/06/29 22:51 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#469 [シバ]
「…うん」
「あの時みたいに嫌がらないの?嫌じゃないの?」

「…嫌じゃないよ」
「素直すぎて不気味なんだけど(笑)あの時は野良猫みたいに警戒しまくってたのに(笑)」

「誰が野良猫だよ(笑)」
「ごめんなさい(笑)」

「…もう会う事ないって思ってた」
「アイリも。ウケるね(笑)」

「ウケるのか?」
「ウケる(笑)」

⏰:10/06/29 22:56 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#470 [シバ]
「いや、ウケない」
「ウケるし。ま、どっちでもいいよ(笑)」

アイリの無邪気な笑顔を見るのは久しぶりだった。
それを見て、内心ホッとしている自分がいる。


「秀一…かぁ」
「?」

「もしシバが男だったら、アイリはシバと付き合ってた?」
「シバさんが男だったら出会ってないと思いますよ(笑)」

⏰:10/06/29 23:43 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#471 [シバ]
「そうかなぁ…」
「そうだよ。だって、お互い『女子バスケ部』だから、一緒に合宿できたんじゃん(笑)」

最もだ!
シバが男だったら、今頃何をしているかも分からないし、出会うハズもなかったアイリと、こうして出会えたのもバスケットを通してこそなのだから。


「ってか、アイリはね。シバさんが男でも女でもどっちでもいいんだよ。シバさんっていう人間が好きなんだから」

⏰:10/06/29 23:50 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#472 [シバ]
「……………」

黙ってアイリの話を聞いていた。
何より嬉しい言葉だった。

「ぶっちゃけて言うと、最初は一目惚れだったんだ…だから仲良くなりたくて絡みまくったし、どんな人なのか知りたくて仕方なかったし」

「女に一目惚れ?」
「うん。女の人に惚れたのとか初めてだったから戸惑いまくったけどね(笑)でも好きならしょうがない…みたいなね(笑)」

⏰:10/06/29 23:54 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#473 [シバ]
「そっか…」

「そっかって…(笑)嬉しくないの?」
「もうちょっと早く聞きたかったよ…その言葉」

「それはこっちのセリフ…シバさんからアイリの事『好き』って聞いて相当ビックリしたし」

「なんで?」

「いや、だってずっと後輩として見られてると思ってたから」

「ああ、そうね…」

⏰:10/06/29 23:59 📱:F02B 🆔:TPLahEEo


#474 [シバ]
「シバさんの馬鹿…これからシバカって呼ぶから!(笑)」

アイリは笑った。

「…じゃあ、秀一と別れろって言ったら別れられる?」

何てカッコ悪い事言ってしまったのだろう…
アイリの笑顔が消え、一気に真顔になった。

「…う〜ん。難しいね(笑)」
「なんで?」

⏰:10/06/30 00:03 📱:F02B 🆔:rwGxcRPs


#475 [シバ]
気がつくと、アイリの両手はシバから離れ、また体育座りの位置へと移動していた。

「秀…今は好きだもん」

アイリは秀一の事を『秀(シュウ)』と呼んでいるようだ。

「『今は』って…?」

「秀はね、入学してからずっとアイリの事好きだったみたいでさ。アイリとはクラスは違うけど、よく話すし、いい奴だったし…」

⏰:10/06/30 00:08 📱:F02B 🆔:rwGxcRPs


#476 [シバ]
「…そんなに好きなんだ」

「いや…うん。どうだろ」

「好きじゃなきゃ付き合わないよね…そっかそっか…」
「だからシバさんに『遅い』って言ったじゃん!シバさんからさっきの言葉もうちょっと早く言ってもらってたら秀とは仲良い友達で終わってたよ」

「嘘つけ(笑)」
「ホントだよ」

⏰:10/06/30 00:13 📱:F02B 🆔:rwGxcRPs


#477 [シバ]
「じゃあ、別れられるでしょ」
「今は無理だって(笑)」


「『今は』ってどういう意味さ?」
「アイリの事好きでいてくれてるのに、アイリから秀を振る権利はないって事!」


「アイリは秀一の事ホントに好きなの?」
「好きだよ。だから今付き合ってんじゃん(笑)嫌いだったら付き合うワケないし(笑)」

⏰:10/07/02 18:38 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#478 [シバ]
頭の中がこんがらがってしまった。
じゃあ、一言で答えてほしいから…

「秀一とシバ、どっちが好き?」

漠然とした事を聞いてしまったけど、シバが一番聞きたかった事だと思ったから聞いた。
もちろん、胸の高鳴りはハンパなかった。

アイリは微笑んで、


「シバさん」


そう答えた。
心の中のシバは『よっしゃ〜!』だった。

⏰:10/07/02 18:42 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#479 [シバ]
じゃあさ、だったら…

『秀一と別れてよ』


そう言いたかった。
だけど、なぜかアイリの微笑みを見るとそうとは言えなかった。


それだったら…

「シバ…アイリの事待っていいのかな?」

アイリは一瞬ビックリした表情を見せた。
そして…

「シバさんが辛くないなら待っててほしい…かな?」

⏰:10/07/02 18:46 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#480 [シバ]
アイリは俯いて、

「アイリ最悪だね(笑)秀がいるのに待ってて…とか(笑)うん…でも、アイリどうしていいか分かんないや」

笑ってるけど、困ってるようにも見える。
いや…むしろ困ってる。

「アイリごめんね」
「なんでそっちが謝るのさ(笑)」

「困らせちゃって」
「困ってないし(笑)」

⏰:10/07/02 18:52 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#481 [シバ]
ダボダボの練習着…
スラッと長い手足…
綺麗な横顔…

アイリに出会って、まだほんの数ヶ月…
離れてからの期間もほんの数ヶ月…

だけど、その期間はあの頃のシバにとって、それはそれは長くて…
長すぎて…


久しぶりのアイリを目の前にして、胸を締め付けられる感覚で…

人を好きになるってこんな気持ちになるんだって、自身の心に深く刻み込まれた。

⏰:10/07/02 18:57 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#482 [シバ]
今すぐ抱きしめたい。
許されるならキスしたい。
アイリに触れていたい。


目の前にいる、シバが想っている相手はシバと同じ『女の子』。
同じ性別の人間…


だけど、こんなに人を想う感覚を味わったのは初めてで…
戸惑いどころか、アイリという人間に向けるシバの気持ちは一直線で。

⏰:10/07/02 19:02 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#483 [シバ]
アイリはケータイを開いた。
んで、すぐに閉じた。

「シバさん、アイリそろそろ行かないと…」

「なんで?まだ休憩30分もあるよ?」

アタフタしてしまった。

「アイリ1年生だから、昼からの練習の準備があるんだ。もっと一緒にいたかったんだけど…」

アイリは立ち上がった。

⏰:10/07/02 19:06 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#484 [シバ]
教室を出ようとするアイリの腕を掴んで抱き寄せて…



っていうドラマみたいな事が出来れば、自分格好いいじゃん♪ってなるけど、小心者のシバにはそんな格好いい事出来るハズもなく…

ってか、こんな場面でそんな妄想が働くなんて、シバって一体…



「…そっか。じゃ、また時間がある時に話そ!」
結局いつもこうなる…

⏰:10/07/02 19:10 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#485 [シバ]
「うん♪」

そう言って教室のドアを開けるアイリ。

シバは時間差で教室を出ようと思い、まだ床に座ったまま、アイリの背中を見届けた。

アイリは立ち止まった。

「ね、シバさん」
「?」

「…大好きだからね♪」

満面の笑みだった。
恥ずかしそうに走っていくアイリ…

⏰:10/07/02 19:15 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#486 [シバ]
もう、クラクラした。
あいつ可愛すぎる…

…と同時に悲しくなった。
アイリはシバのものじゃない…
どんなに大好きと言われても、アイリには『彼氏』という名のパートナーがいる。
そう考えると、素直に喜べない。

別れてほしい別れてほしい別れてほしい…

頭ん中はそればっかり。

⏰:10/07/02 19:18 📱:F02B 🆔:ebsFfWeg


#487 [我輩は匿名である]
>>300-500

⏰:10/07/03 07:40 📱:SH906i 🆔:☆☆☆


#488 [シバ]
>>487さん
安価ありがとうございます!


>>486
シバも体育館へと向かった。
先ほど3年集団が話していたアイリの彼氏トーク…秀一の事が頭によぎりながら…


だけど、なんだかスッキリした気分だ。
あの場で聞いている時はイライラと悲しみがハンパなかったのに、アイリの話を聞いてから、心は落ち着きを取り戻したみたい。

⏰:10/07/04 13:02 📱:F02B 🆔:B.NoKtlU


#489 [シバ]
ただ、『別れてほしい』っていう気持ちは渦巻いたままだったけど…


体育館に入る。
アイリは準備を終え、ストレッチを行っているようだった。
前屈をしていた所を見た。

『アイリ…体固いな』

アイリは体を倒しては起き、倒しては起きを繰り返して、痛そうな表情を浮かべながらも一生懸命ストレッチをしていた。

⏰:10/07/04 13:09 📱:F02B 🆔:B.NoKtlU


#490 [シバ]
いざ練習が始まる。

頭ん中がアイリでいっぱいになってる気がしたけど、きちんと練習モードに切り替えられていたみたいで、集中していた。

…けど、やっぱりアイリが近くに来ると意識はしてしまう。
目が合うと、お互いニヤッてしてまたすぐ走り出したり、チョンッと後ろから突っつかれたり。

話はしない。
それでいい。
それだけで、幸せを感じられるのだから。

⏰:10/07/13 20:27 📱:F02B 🆔:ppuZUcHU


#491 [シバ]
コート上では敵同士だ。

シバがボールを持つと、これまた真剣な顔してディフェンスするアイリがいて、負けず嫌いな一面を見せてくる。
シバも真剣な顔になっていたと思う。

シバがアイリからシュート決めたら、『くそムカつく!』といわんばかりにやり返してくる。

アイリのplayはシバのチームの監督から定評があった。

⏰:10/07/13 20:32 📱:F02B 🆔:ppuZUcHU


#492 [シバ]
「あの1年(アイリ)、3年になった時が楽しみだな。能力が高い」


ってシバの前で言うもんだから、シバは自分の事のように嬉しくて、ニヤニヤしちゃうワケで…



数ヶ月前までは、
「アイリに会いたくない」
「来なくていい」

なんて言ってたけど、実際にアイリを目の前にすると、こんなにも胸が高鳴る。
いつも以上に頑張れる。

⏰:10/07/13 20:35 📱:F02B 🆔:ppuZUcHU


#493 [シバ]
こんな自分、調子良すぎるかもしれない…
だけど、仕方ない。

シバはやっぱりアイリの事が好きなんだ。
大切なんだ。
失っちゃいけないんだ。


やっと気付いた。
もっと早く気付く事ができていたら、どんなに良かったのだろう…

けど、まぁいい。
時の流れに身を任せた結果が今のシバなんだ。
今日までの時間は、無駄でもなんでもなく、必要だったんだ。

⏰:10/07/13 20:39 📱:F02B 🆔:ppuZUcHU


#494 [シバ]
外はゆっくりと薄暗くなっている。
昼間の体育館は、まさに灼熱。
夜になるに連れて、この灼熱地獄の体育館にも酸素というものがあったんだな…っていう事に気付く。
微かに涼しさを感じる。
体育館の小窓から見える、昼間のジリジリしたアスファルトからも熱のモヤは見えない。
当たり前の事だけど、チラッと見えたその光景に夏の涼を感じた。

そして、合宿1日目を終える…

⏰:10/07/13 20:46 📱:F02B 🆔:ppuZUcHU


#495 [シバ]
「お疲れ様でした!」

その挨拶の後、アイリのチームはサッと帰り支度を済ませ、すぐにバスへと乗り込んだ。
一番行動の遅いアイリは、やっぱり最後の最後にバスに乗る。


シバのチームは、グッタリしながら着替えに行ったり、片付けしたりでバタバタしていた。

3年生は「暑い」だの、「疲れた」だの、グダグダ言いながら座って無言の空間を満喫していた。

⏰:10/07/13 20:52 📱:F02B 🆔:ppuZUcHU


#496 [シバ]
シバが着替えたTシャツを片付けていると、隣に真希が座った。

「今日の練習、走り過ぎでしょ〜…ってか、アイリちゃん、また上手くなってたね。もうバリバリのエースじゃん」

真希は笑いながら言う。

「そうかな?まだまだ頑張ってもらわにゃ!」

「シバ相変わらず素直じゃないね(笑)認めなよ。ってか、アイリちゃんと話したん?」

シバはタオルで顔を拭いた。

⏰:10/07/16 12:32 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#497 [シバ]
「話したよ」

真希は少しだけビックリした表情を見せた。

「あ、そうなの?普通だった?」
「別に普通だった…はず」

「何その意味深な答え」
「まぁ、ちょっとね」

「何笑ってんの。後で話聞こうか(笑)」
「うぃ〜」


ってな感じで、このあとはシバの家で真希に話をする事になる。

⏰:10/07/16 12:37 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#498 [シバ]
「流れは完璧にこっちじゃん!シバ、秀一君から取っちゃいな」

一通り話を聞いた真希は、目を輝かせていた。

「うん〜…でも、今は秀一と別れられないって事はさ、やっぱりあっちの事が好きなんだよね。しかもアイリ、秀一の事『シュウ』って呼んでた」

「そりゃ付き合ってる身だからね。でも、アイリちゃんは秀一君よりシバの事が好きって言ったんでしょ?」

「うん」

⏰:10/07/16 12:41 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#499 [シバ]
「今日の昼休みに話したって事でしょ?今日途中でいなくなったじゃん」

「そう。だって、秀一の話で盛り上がってる中にシバがいたら完璧awayじゃん…イケメンだの可愛いだの…これってヤキモチってやつだね。シバの方が年上なのに…カッコ悪」


「ま、いいじゃん♪合宿はまだまだ続くんだしさ。様子見てみな」

「うん」

しばらくそんな話をして、また明日…と真希は帰っていった。

⏰:10/07/16 12:46 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#500 [シバ]
翌日昼休み…

弁当を食べていると、アイリに小突かれた。

「シバさん。食べ終わったらソッコー昨日の教室ね。アイリ、今日も準備があるから早めに話したい」

「分かったよ」

アイリは微笑んで、ゆっくりと歩いて行った。
それからは、大好物の唐揚げやフライをゆっくり食べる主義のシバだけど、アイリに会いたいが為に無理くそかき込んで食べた。

⏰:10/07/16 12:53 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#501 [シバ]
教室に着く。
体育座りしてケータイをいじるアイリがいた。

シバに気付くと、パチンとケータイを閉じた。


「シバさん、おいで」

手招きされ、アイリの横へ。

しばらく無言でいて、アイリのケータイが鳴る。また開いて、すぐに閉じた。

「秀一かぁ?」
「うん。今日合宿から帰ってきたから遊ぼうだって。アイリも合宿だって言ったのに、バカじゃん」

⏰:10/07/16 13:00 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#502 [シバ]
心が痛んだ。
シバと離れたら、またいつものアイリの生活が始まる。
普通に学校に行って、バスケして帰って…またこうやって秀一とメールして…
休みの日なんかは2人で遊びに行くんだろうな…


「秀とアイリ、プリクラさえ撮った事ないんだ。だからプリクラ撮りに行きたいんだってさ」

「…は?」

「あっちはあっちでサッカー忙しいし、こっちはこっちでバスケバスケだし、学校以外ではほとんど会わないからね」

⏰:10/07/16 13:05 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#503 [シバ]
「あ、そうなの?」

変な安心感を感じた。
シバの表情を見て言ったのか、何となく言ったのかいまだに分からないけど…
アイリはボソッと話した。

「見る?秀の顔」

そんなもん見たくない!だけど、一目ならいいかな?
気になるし…


「見たいかも」

アイリはケータイをポチポチと操作して、秀一を探していた。

⏰:10/07/16 13:09 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#504 [シバ]
「4枚くらいしかないんだけど…」

そう言って、シバにも見えるようにケータイの画面を向けた。

1枚目…
体操服の2人が笑ってピース。
秀一はアイリより少し背が高いくらいで、日差しが強かったのか、眩しそうに笑っていた。
ゼッケンには『長崎』。秀一の名前は、長崎秀一。
日焼けして、小麦色に焼けた秀一は、確かにかっこよかった。

⏰:10/07/16 13:17 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#505 [シバ]
2枚目…

秀一が男友達とじゃれている場面だった。
どれが秀一か、言われなくてもすぐに分かった。鼻筋がスッと通ってて、クシャッと笑うあの笑顔は、誰よりも可愛くて、綺麗だったから。


3枚目…

秀一がサッカー部のユニフォームを着て、真顔で写っている。
1年生で唯一、ユニフォームを貰えたからその記念に撮ったんだとか。

⏰:10/07/16 13:22 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#506 [シバ]
真顔の秀一は、凛々しいなんてもんじゃない。
悔しいけど、こんなにカッコいい奴見た事がない…

4枚目…

制服姿の2人が写っている。
夜だったのだろう。
真っ暗な背景に、灯りがポツポツ。
シバはアイリの制服姿を初めて見た。
秀一は眼帯をしていた。練習中に部員の肘がもろに入ったのだという。



「こんだけ」
アイリはケータイを閉じた。

⏰:10/07/16 13:28 📱:F02B 🆔:r2DDek4c


#507 [我輩は匿名である]
頑張って

⏰:10/07/16 13:38 📱:W62H 🆔:2AczhaBI


#508 [シバ]
>>507さん

ありがとうございます(^^)v



>>506
初めてまともに秀一を見た。
こいつがアイリの彼氏…複雑というか、正直ムカついた。
シバの見えない所で、2人で一緒に帰ったり、ラブラブしたり…
想像しただけで、イライラする。

それと同時に、シバ自身にも苛立ちを覚えた。

⏰:10/07/24 22:42 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#509 [シバ]
なんでシバは男じゃないんだろう…
なんで自分は女なんだろう…

それ以前に、なんでシバは女を好きになってるんだろうって疑問を持つはずなのに、それがなかった。
男になりたい訳でもないのに。

変な矛盾だらけで頭の中はパニックだった。

「シバさん」

シバはしばらく俯いていたみたいで、アイリに呼ばれてハッとした。

⏰:10/07/24 22:46 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#510 [シバ]
アイリの方を向くと、アイリは心配そうな表情になっていた。

「見せない方がよかった?」

「いや、別…」

アイリの目を見れなかった。
アイリはどういう気持ちで秀一を見せてきたのか分からなかったし…

シバお得意の複雑な顔をしていたのだろう。
アイリは真顔のまま、シバに近づいてきた。

⏰:10/07/24 22:55 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#511 [シバ]
「嫌な気持ちにさせちゃったならごめんね」

そう言うと、アイリはシバにキスをしてきた。
不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

いや、むしろ求めていたのかもしれない。
目の前には、目を閉じているアイリの顔がある。

ずっと見つめていると、アイリは目を開けてシバから離れた。

「ごめんね。ってか、シバさんが嫌がらないから、つい…」

⏰:10/07/24 22:59 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#512 [シバ]
少し照れくさそうな仕草を見せたアイリに、シバは言った。

「前とは違うよ。嫌がる訳ないじゃん」

真剣に話すシバを見て、アイリは微笑んでいた。

「そ?じゃ、そっちからしてよ」

「何を?」

「チュー(笑)キスって言った方がムード出るかな?(笑)」

⏰:10/07/24 23:04 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#513 [シバ]
笑っているアイリにキスをした。

今度はアイリの方が目を開けていた。
自分からキスをした方が、相手の唇の感触とか、忘れられない感じがする。
そして、シバは生まれて初めて女の子にキスをした。

初めての事で、いろんな感情がこれでもか!ってくらい湧き上がってきて、涙腺が緩んだ気がした。

⏰:10/07/24 23:09 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#514 [シバ]
目を開けると、今度はアイリが真顔になっていた。
真顔のまま、視線をそらしていた。

あれ?
マズい事しちゃったかな?


無言のまま、お互い視線を合わせない。
しばらくすると、アイリは言った。

「シバさん…本当にシバさんからキスしてくれるとは思ってなかった。そんな…アイリおかしくなっちゃうよ」

⏰:10/07/24 23:13 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#515 [シバ]
え?
なんかごめん。


トンチンカンになった気がした。
シバの行動はまずかったのかな?
おかしくならないで…


「…アイリ本気になっちゃう」

ポツリと呟いた。
アイリは下を向いたまま、顔を伏せている。


オドオドしているシバに気づいたアイリは顔を上げた。

⏰:10/07/24 23:17 📱:F02B 🆔:9e1bBfHs


#516 [我輩は匿名である]
あげますメ

⏰:10/07/25 15:45 📱:CA004 🆔:Iq0kfHJ2


#517 [我輩は匿名である]
>>300-600

⏰:10/07/26 02:47 📱:F03A 🆔:upECO2Sc


#518 [(^_^)/]
あげます


ちょう面白い!
頑張って下さい

⏰:10/07/27 09:59 📱:P03A 🆔:PDnqEeQ6


#519 [うっちー]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

失礼しました

⏰:10/07/28 00:08 📱:SH04A 🆔:IiIdswLo


#520 [シバ]
>>516-519さん

あげ&安価ありがとうございます(・∀・)

>>518さん
ありがとうございます
もうちょいしたら更新します!

⏰:10/07/28 21:31 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#521 [シバ]
>>515

「アイリ…秀と別れる」

シバは更にオドオドした。
自分から別れろ!なんて言っておいて、実際アイリからそんな事を言われると慌てふためいてしまった。

「あ、そう?いや…でも…ああ…うん。…え?」

「だって、シバさんの事こんなに好きなのに、他の人となんて付き合えないよ」

⏰:10/07/28 21:46 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#522 [シバ]
「…………」

「…嫌ですか?」

「いや、嫌とかじゃなくて。めちゃくちゃ嬉しいよ…でも、確認するようでウザいかもしれないけど、シバは女だよ?男じゃないんだよ?」


「何度も言うけど、アイリはシバさんが好きなんです!シバさんが男でも女でも、アイリは好きなんです」

「遠距離になるんだよ?」

⏰:10/07/28 21:50 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#523 [シバ]
「そうだけど…寂しいけど、大丈夫。だからもう、離れていかないで」

心は1つ!
アイリはそう言いたかったのだろう。
真剣な表情だった。
シバもアイリのすべてを受け入れる!
秀一の事も含めて。
強くなる!

だから、シバからも言う。

「もう離れないで」

アイリは頷いた。

⏰:10/07/28 21:56 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#524 [シバ]
アイリアイリアイリ…

もうシバの中ではアイリしかいない。
めちゃくちゃ好きだ!

胸が熱くなった。
アイリが頷いた直後、シバはアイリを思い切り抱きしめた。

アイリも抱きしめてくれた。
シバの背中にアイリの長い腕がまわされる。


汗かいてるはずなのに、アイリはいい匂いがした。

⏰:10/07/28 22:00 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#525 [シバ]
目をギュッと閉じて、アイリのぬくもりを感じた。

顔を上げて、キスをした。
何度も何度も…何度も何度も。



「シバさん?」

アイリに問いかけられる。
シバは泣いた。
嬉しさとか、喜びとか、いろんな思いがこみ上げてきて、シバは泣いてしまった。

⏰:10/07/28 22:04 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#526 [シバ]
「なんで泣いてんだよ(笑)」

とか言うアイリも泣いていた。

報われた…

こんなに嬉しい思いをしたのは、ぶっちゃけ初めてじゃないかと思った。

それからは無言のまま、キスを続けた。
唇が腫れぼったい…
それでも続けた。
自然と舌を絡ませていた。
アイリがさっきまで噛んでいたガムの、ブルーベリーの甘い味がした。

⏰:10/07/28 22:13 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#527 [シバ]
今までブルーベリー嫌いだったシバ。

だけど、ブルーベリーはアイリの味。
それ以来、『ブルーベリー』というものをこよなく愛するようになった。

ガムを買う時はもちろん、ブルーベリー。
ヨーグルトを買う時もブルーベリー。
ブルーベリーブルーベリーうるさい!

っていうくらい、ブルーベリーを愛した。

キスを終えてしばらくボンヤリした後、アイリは準備の為、体育館へと向かった。

⏰:10/07/28 22:19 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#528 [シバ]
それから合宿中の昼休みは、ずっとあの教室へ行き、アイリとキスをした。

お互いの気持ちを確かめ合うかのように、抱き合った。
キスの最中、アイリは時折、


「…ン」

とか言う。
シバの中でドッカーンと何かが爆発したような気持ちになる。
可愛すぎだろ畜生!
このヤロー!
あぁ、もう!

⏰:10/07/28 22:26 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#529 [シバ]
あの一週間で、どれほど気持ちを確かめ合っただろうか…

「大好きだよ」
「ずっと一緒にいよう」
「離れてもずっと想ってるよ」
「将来一緒になろう」


一週間の合宿にピリオドが打たれた。
これからは離れるけど、アイリとの手紙や電話を大事にしよう。
シバが卒業したら、ケータイを買ってメールもしよう。
もちろん、アドレスにはアイリの名前を入れるよ。

⏰:10/07/28 22:30 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#530 [シバ]
ケータイも買うけど、それよりも先にアイリに会いに行きます。

車の免許だって頑張って取るし、車を買って一番にアイリを乗せるよ。

家は2人で住めるような、綺麗なマンションでもいいな。
そんな中に犬や猫もいればもっと最高になるなぁ…


高校3年でこんな夢を持って、あれから4年…

⏰:10/07/28 22:35 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#531 [シバ]
シバとアイリは一緒になる事はありませんでした。
合宿が終わって、帰りのバスの中でアイリはグシャグシャになりながら泣いていた。

「離れたくないよ…シバさん」

「いつか会いに行くよ。それまでお互い頑張ろう」

シバは無理やり笑顔を作ってアイリを送り出した。
大丈夫!っていう、何の根拠もない自信を持って。

⏰:10/07/28 22:39 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#532 [シバ]
離れてからの1ヵ月は手紙や電話のやりとりがあった。

それ以降、お互いプツリと連絡を取らなくなった。
何でなのか、いまだによく分からない。
だけどシバが思うに、お互い満足できていたのかもしれない。

合宿中の、あの昼休みの出来事…

我を忘れて、求め合って。
合宿までの数ヶ月間、ずっとお互いモヤモヤしていたから、それを晴らす事ができたから。

⏰:10/07/28 22:44 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#533 [シバ]
本当に幸せだった。
ものすごく大きな幸せだったから、一気に燃え尽きてしまった感じ。

時の流れって酷く冷たくて、残酷で、儚い。



高3で経験した、初めての愛。
相手は女の子。
こんな恋愛もあるんだ!って学んだ。
シバが愛だの恋だの語るには、まだまだ早過ぎたのかもしれない。

⏰:10/07/28 22:50 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#534 [シバ]
あれからアイリのチームと合宿をする事もなかった。
だからアイリとはまったく会えず終い。

その後の話として聞いた事…


アイリは今19歳になって、秀一とは別の彼氏ができて、お腹には赤ちゃんがいるっていう事。
近々結婚だってするでしょう。
リナから最近の写真だと送られてきた写メを見ると、髪は金髪?になっていて、少し太ったかなって感じで…

⏰:10/07/28 22:55 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#535 [シバ]
隣には微笑む男…
アイリと同級生で、生意気にも髭なんて生やして…

あの頃のアイリはもういない。
そう思うと、別に辛くもなけりゃ悲しくもならなかった。

幸せそうな顔してるアイリに言えるのは、幸せになってください。

ただそれだけ。

シバがそんな事言わなくても、十分幸せなんだろうけど。
だから、もっともっと幸せになってください。

⏰:10/07/28 22:59 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#536 [シバ]
そんな事言ってるシバだけど、2年前に新しい恋をしていました。

2年前のシバは二十歳。

高校3年生とか、かれこれ4年前の事なんですね。
懐かしい…





っていうワケで、これからは2年前のシバが経験した恋愛を語ります。
読んでくれたら喜びます。
めちゃくちゃ喜びます。

⏰:10/07/28 23:04 📱:F02B 🆔:iIM.gfE2


#537 [華]
アイリさん編??スゴィ良かったです!!

次のぉ話しも楽しみにしてますね

主さまのペースで頑張ってくださぃ

⏰:10/07/29 01:24 📱:P10A 🆔:J5S8J1IE


#538 [Sっ気]
ぜんぶ読みました!!!
次も頑張って下さい!!

⏰:10/07/29 06:39 📱:840P 🆔:IptZQHPk


#539 [我輩は匿名である]
楽しかったです
アイリちゃんと続いて
欲しかったです
次も楽しみにしてます

⏰:10/07/29 12:31 📱:SH05A3 🆔:mfZeqez2


#540 [我輩は匿名である]
面白かった〜
最後まで読みます

⏰:10/07/29 21:29 📱:P03A 🆔:l4cytRa2


#541 [福徳◆/nUhbtSemo]
面白かったあ!
お互い素直になれてて、なんか羨ましいな〜(笑)

⏰:10/07/31 01:27 📱:re 🆔:☆☆☆


#542 [シバ]
>>537-541さん
こんなに感想を貰えるなんて…(*´д`*)
シバ感動です!
よろしければ感想板にも遊びにきてくださいね

夜からまた更新しますんで、よろしくお願いします(^^)v

⏰:10/07/31 17:11 📱:F02B 🆔:7ghSDFkc


#543 [シバ]
>>536
高校卒業…
シバは進学せず、社会人になる事を決めた。

あれだけやる気に満ち溢れて燃えていた、バスケットも引退してしまえば、プツンとやる気の糸が切れてしまったようにピリオドを打った。
意外とあっさりだった。

あのまま大学に行って、バスケットを続けていたら、あの出会いはなかったと思う…

⏰:10/08/01 00:14 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#544 [シバ]
高校1年時…
「シバは体育教師になる!」

高校2年時…
「シバは美容師になる!」

高校3年時…
「なんとかなる!」


なんという間抜けな3年生だったのだろう…
高校1年の時は、とにかくバスケットが大好きで大好きで、体育の道で進み、自らがバスケットを通して学んできた事を、バスケットを通して今度は自分が未来の子供達に教えていきたい!
そういう夢を持っていた。

⏰:10/08/01 00:18 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#545 [シバ]
しかし…
体育教師は実技だけに限らず、保健の知識とか、その他諸々の事を教えられるようにならなければならない。
シバは口下手だ。

増してや保健の授業で『性について』なんて教えようもんなら、シバには無理がある気がした。

生徒達の前で、『セックス』とか、あんな事やこんな事を教えないといけないのだ。
セックスとか、自分より年下の子達に教えないといけないなんて、無理無理無理無理!
いやだ照れ臭い!

⏰:10/08/01 00:24 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#546 [シバ]
んで、体育教師への夢を断念…

高校2年の時の夢は、『美容師』。

根拠はない。
ただ、シバの行きつけの美容室の美容師さんのハサミ裁きに胸を打たれ、シバもあんな風に格好良くチョキチョキしたい!
そんな単純な理由で目指す事を決めた。

前髪を切るだけで失敗するシバには無理な話だと分かるまでに、そう時間はかからなかった。

⏰:10/08/01 00:27 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#547 [シバ]
少しだけカットする予定が、気がつけば斜めにざっくりと…

格好良く言えば、センスのないアシメントリー。悪く言えば…
もう、センスも糞もなく、美容師なんてとんでもない!っていうメッセージ。


んで、美容師の道断念。

高校3年…
理想と現実のギャップが凄すぎて、夢というより「なんとかなる!」精神で就職を考える事に。

⏰:10/08/01 00:39 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#548 [シバ]
就職難の中、就職が決まった事はもの凄くありがたい事だ。
だけど、シバがやりたい事はこんな仕事じゃない!とか、不満を抱きつつも社会人になる事に…

しかし、慣れていくにつれて生きがいに感じるようになった。
仕事が楽しい!っていう気持ちが2なら、不満やストレス等は8。

生きがいっていうのは大袈裟かもしれないけど、この仕事を選んでよかった!
そう思えるようにはなれた。

⏰:10/08/01 00:44 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#549 [我輩は匿名である]
アシメントリーじゃなくてアシンメトリーだよ(^^)

⏰:10/08/01 02:15 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#550 [シバ]
>>549

あ、本当だ(+_+)
入力ミスですね



>>548
そんなこんなで、卒業してからの約2年間は仕事に打ち込みまくった。

『8』ある仕事への不満は、嫌がらせとかイビリをする上司がいたり、仕事がキツ過ぎる事に対する不満だったり…
だから楽しいと思える気持ちは『2』。

⏰:10/08/01 11:04 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#551 [シバ]
…そんな事言ってみても、仕事に就けただけでもありがたい事だし、『これも1つの社会勉強!』と思って踏ん張ってみれば、それなりに頑張れた。

たまに高校時代の友達が恋しくなったり、1人暮らしを始めた為、猛烈に家族が恋しくなったり、精神的な面では最初のうちはズタズタだった。

たまに電話をして、父や母の声を聞くだけで泣けてきて、うわぁ〜!とかなるけど、寂しいなんて気持ちがバレないように陽気に振る舞ってみたり。

⏰:10/08/01 11:11 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#552 [シバ]
時間が経つに連れて、そういう事にも慣れてきた。
だから、2年も経てば、贅沢さえしていないが、それなりに充実した生活を送れていたハズだった。




シバには1人の姉がいる。
喧嘩も多かったけど、昔から仲良しで、シバの事をよく可愛がってくれていた。
シバもそんな姉の事が大好きだった。

⏰:10/08/01 11:19 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#553 [シバ]
二十歳の夏…
そんなシバと姉の間に亀裂が入った。
と言うより、シバが亀裂が入るような事をしてしまった。


姉から冷たくされ、シバも姉に対して必要以上に会話もせず、もう『喋る』という事さえ無くなってしまっていた。



それは、ちょうど2年前の今頃の季節…

⏰:10/08/01 11:27 📱:F02B 🆔:ppVpXW/o


#554 [我輩は匿名である]
前から見てました☆
文章能力あるしほんとに読んでて楽しいしこの小説大好きでブックマークしてます!!!!
更新待ってます!シバさんのペースで頑張って下さい!

⏰:10/08/01 17:51 📱:W63H 🆔:jWXVJYhA


#555 [シバ]
>>554さん

ありがとうございますブックマークまで…(/_・、)

匿名さんの期待に応えられるように頑張ります(^^)
長々と続いちゃいましたが、最後までお付き合いお願いします(笑)

⏰:10/08/02 23:11 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#556 [シバ]
>>553

姉はシバの1つ年上。
小さい頃から『ゆーちゃん』と呼んでいた(由香だから)。

ゆーちゃんは頭もいいし、運動もできる。
シバがバスケットを始めたのも、ゆーちゃんが先に始めていたから。

チームで一番上手いゆーちゃんに憧れて、その背中を追うようにシバもバスケット人生を歩むことに。

(ゆーちゃんはシバの事を名前で呼ぶけど、小説の中では『シバ』って呼ぶ設定で描いていきます)

⏰:10/08/02 23:20 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#557 [シバ]
ゆーちゃんは高校を卒業した後、社会人として働きながらもバスケットを続けている。


本当は大学に行きたかったらしいけど、ノリで社会人になったらしい。
頭がいいから、いい大学に行けたハズなのにもったいない…

シバもゆーちゃんも地元を離れ、別々の場所でお互い頑張っていた。
何かあった時は、すぐにゆーちゃんに電話をしたし、ゆーちゃんも寂しくなったらシバにメールや電話をしてくれた。

⏰:10/08/02 23:26 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#558 [シバ]
電話の内容は、だいたいこんな感じ。

「ゆ〜ちゃん…」
「何?」

「暇すぎる!相手してよ」
「あたしは暇じゃないよ(笑)」

「え〜?何してんの?」
「漫画読んでた」

「暇人じゃんか!」
「漫画読み終わったらまた電話するわ!じゃね」

プツっ…

「…………」

⏰:10/08/02 23:30 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#559 [シバ]
「ゆーちゃん!腹痛い…」
「あらら…う○こしておいで」


「そういう痛さじゃないんだよ…なんかこう、キリキリする」
「コーラックでも飲めば?」

「だからう○この痛さじゃないんだってば!」
「コーラック飲む時は寝る前の方がいいよ。昼間に飲むととんでもない事になるから(笑)」

「いや、だから…」
「あたし前よく飲ん…あ、誰か来た!ごめん、また後で」

プツっ…

⏰:10/08/02 23:34 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#560 [シバ]
「……(ゆーちゃん)」



…みたいな、なんかどうでもいいような会話ばっか。
むしろ、シバの相手してくれない。
だけど、シバが悩んだ時はとことん相談を聞いてくれる。
だから、ゆーちゃんの事は昔から好きなのだ。

一緒に馬鹿もするし、お互い親身になって支え合えるし、理想の姉妹だと思う。

⏰:10/08/02 23:39 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#561 [シバ]
そんなゆーちゃんだから、友達も多い。

どこに行ってもリーダー的存在のゆーちゃんは、シバにとって自慢の姉だった。

「シバのお姉さん格好いい!」
「あたしファンになっちゃおっかな♪」

なんて友達が言うもんだから、こちらは鼻が高い。

「シバと正反対だね」
「本当にシバは由香さんの妹なの?」

こんな事を言われる度に、高かった鼻をボキリと折られる。

⏰:10/08/02 23:47 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#562 [シバ]
ゆーちゃんはいいなぁ…なんでゆーちゃんばっかり…


普通はそんなヤキモチを妬いてしまうだろう…
だけど、シバはゆーちゃん大好きだ!
自慢の姉だ!

だから、シバもゆーちゃんみたいな人間になろう!
とか、素直にゆーちゃんの凄さを受け入れ、目標としていた。

こんな関係が大人になっても、ずっと続く事を夢見て…

⏰:10/08/02 23:51 📱:F02B 🆔:Fisee49s


#563 [シバ]
特にゆーちゃんと仲が良かったのが、高校時代からの付き合いだという『理彩(りさ)』ちゃん。

2人は高校は別々だったけど、地元も一緒だし、バスケの試合や合宿でよく顔を合わせていたから、長い付き合いができたらしい。

シバは理彩ちゃんと会う度に、よく絡まれていた。
最初はまったくの赤の他人みたいに関わりはなかったけど、仲良しのゆーちゃんの妹っていう事で、よく弄られていた。

⏰:10/08/03 00:02 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#564 [シバ]
最初…
「由香〜!休みの日できたら教えてね!ってか、隣の子…え?妹?由香の?へぇ〜、そうなんだ♪こんにちは〜♪」

時が経ち…
「なんて呼んだらいいかな?『シバ』でいいかな?なんか照れ臭いなぁ(笑)」

更に時が経ち…
「よぉ、シバ!」



理彩ちゃんの第一印象は、『馴れ馴れしい』だった。
出会って間もないのに、呼び捨て。

⏰:10/08/03 00:07 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#565 [シバ]
それをゆーちゃんに報告した所…

「へぇ〜!よかったじゃん♪」
「何が?」

「理彩ね、初対面の人に自分から話かけない主義の子なのよ。ってか、人見知りするから絶対に自分からは話そうとはしないハズなんだけど…」
「へぇ…」

「ま、理彩と仲良くしてあげて。ああ見えて寂しがり屋さんだから(笑)」

⏰:10/08/03 00:11 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#566 [シバ]
ああ見えて…と言うのは、理彩ちゃんの容姿。

背は低いけど、なんか強そうっていうかなんていうか…
気が強そう。

んで、顔と声はめちゃくちゃ可愛い。
こんなに顔のパーツが整ってる美人が世の中にはいたのかぁ…
日本も捨てたもんじゃないな。

っていうくらい、美人さん。
パッチリ二重の綺麗な目が強く印象に残った。

⏰:10/08/03 00:14 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#567 [シバ]
確か、シバが高校に入学する前にゆーちゃんのプリクラ帳で理彩ちゃんを見た事がある。

年上だか年下だかのイケメン彼氏と2人で、海だか川だか山だか谷だか行ったみたいな事を落書きしてるやつ。

ゆーちゃんから、

「地元で有名な美男美女カップルだよ♪」

って聞いた記憶もない事はない。
何度見ても、理彩ちゃんはやっぱり可愛い。

⏰:10/08/03 21:57 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#568 [シバ]
だけど、ゆーちゃんだって普通に可愛い。
理彩ちゃんよりは背が高いけどスタイルがいいし、切れ長の目で、黒髪美人。

ゆーちゃんと理彩ちゃん2人で街を歩いているのは、なかなかの見物であるハズ。

そんなゆーちゃんの妹であるシバは、ゆーちゃんと理彩ちゃんに比べたら芋レベル。
あんた本当に由香さんの妹?って聞かれるのも無理はない。

⏰:10/08/03 22:02 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#569 [シバ]
理彩ちゃんに会うのは、ゆーちゃんと理彩ちゃんの社会人のクラブチームの試合がある時くらい。

ゆーちゃんと理彩ちゃんは別のチームだけど、シバはいつも試合の応援には行っていた。
大好きなゆーちゃんに会えるのが楽しみだからである。
理彩ちゃんとは、そこまで仲が良いってワケじゃなかったから、シバにとって理彩ちゃんに会えるのは、ゆーちゃんのオマケみたいに考えていた。

⏰:10/08/03 22:05 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#570 [シバ]
試合の日…

ゆーちゃんは試合前のアップや準備で、バタバタしていた。

「ゆーちゃんに会えるのは試合が終わってからかな?」

自販機でジュースでも買って、それまでゆっくり待とう!
体育館の玄関前のロビーの自販機に向かった。

財布を取り、小銭を入れる。

「リィ、炭酸飲みたい♪」

⏰:10/08/03 22:10 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#571 [シバ]
後ろから声がする。
振り向くと、黒い大きな椅子に、だらんともたれかかって座っている理彩ちゃんがいた。

理彩ちゃんは、自分の事を『リィ』と呼んでいる。
首にはカラフルなタオルをかけていた。

「ね、シバ!リィにも何か買って♪」

「いいけど…試合終わったんですか?」

「さっき終わった!もうすぐ由香の試合だよ♪」

⏰:10/08/03 22:14 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#572 [シバ]
ピョンっと椅子から飛び降りて、ニコニコしながらシバの方に近付いてくる。
その様子は、まるで幼い子供のよう…

「炭酸炭酸〜!試合中は甘ったるいポカリしか飲めないから、今ガンガン飲みたい気分♪」

シバは自分のサイダーを買って、理彩ちゃんの分の小銭を入れた。

「どうしよっかな〜…ペプシも飲みたいけど、やっぱコカ・コーラだね」

⏰:10/08/03 22:19 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#573 [シバ]
勢いよくボタンを押して、コーラを取り出した。

「ありがとうシバ♪座って一緒に飲もう」

シバの手を引いて走り出す様子も、幼い子供のよう。

「シバが買ってくれた初めてのコーラだから大事に飲むよ♪」


そう言って勢いよくプシュっと開け、勢いよく飲みだした。
どう見ても、大事に飲んでるようには見えないけど…

⏰:10/08/03 22:23 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#574 [シバ]
「由香の試合一緒に見ようよ!リィのチームの人みんな帰るみたいだから、1人は寂しいよ…」

泣きそうな顔を作る理彩ちゃん。

「別にいいですよ」

「ってかさぁ、敬語とか遣わなくていいよ!リィなんかに敬語遣ったってリィ、先輩に見えないでしょ?」

「確かに…でも、先輩は先輩だから」

「あ〜、そんなん全然気にしなくていいよ」

⏰:10/08/03 22:27 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#575 [シバ]
「はぁ…」

「あと、理彩ちゃんじゃなくて『リィ』でいいよ!ってか、そう呼んで♪理彩ちゃんって呼ぶ人ほとんどいないし」

「はぁ…」


圧倒された。
何に圧倒されたかというと、理彩ちゃんという人間の人柄。
よく分かんないけど、すべてが圧倒的だった。

顔は可愛いけど、多少怖そうなイメージがあった。

⏰:10/08/03 22:31 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#576 [シバ]
そんな人が、こんな子供みたいな笑顔を見せるなんて…
人間、見た目だけじゃ分からないってもんだ。


2人でしばらくまったりしていると、由香ちゃん達が体育館に入っていった。

「あ、ゆーちゃん!」

「シバ〜!来てたんだ♪また後でゆっくり話そ!」

ゆーちゃんが行ってしまうと、隣から強烈な視線を感じた。

⏰:10/08/03 22:35 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#577 [シバ]
「ホント仲良しだね、あんた達(笑)由香が来た瞬間、シバめっちゃ嬉しそうだったね」

「そうかな?」

「由香も由香で、リィの前でよくシバの話するんだよ」

「へぇ」

「なんかいいね。仲良し姉妹かぁ」


ダラダラ話しながら、体育館へと入った。

⏰:10/08/03 22:39 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#578 [シバ]
久しぶりに見るゆーちゃんのバスケ姿。

最近は仕事が忙しくて、ほとんど練習出来ていなかったらしい。
そのせいか、終盤で足が吊り、途中退場となってしまった。
その姿を見た理彩ちゃんは、隣で大爆笑。

「足吊ってるし。無理しすぎ(笑)」

ゆーちゃん大好きなシバだから、普通はこんな場面で爆笑する奴を見たら「何だコノヤロー」とか思ってしまう。

⏰:10/08/03 22:44 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#579 [シバ]
だけど、シバは知っている。

高校時代、由香ちゃん・シバのチームがAコート、理彩ちゃんのチームがBコートで試合をしていた時の事…

絶好調だった由香ちゃんが、突然膝を抱えて倒れ込んだ。
その姿を見ていたのか理彩ちゃんは、自分達も試合中だったにも関わらず、Aコートに走ってきて由香ちゃんに駆け寄ったのだ。
これには会場も騒然となった。

⏰:10/08/03 22:51 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#580 [シバ]
一番に駆け寄ってきたのが、隣で試合中の4番を着たキャプテンだったからだ。

シバはその姿をはっきりと覚えている。
怪我を負ったキャプテンに、別のチームのキャプテンが試合中に駆け寄ってくる…

病院に運ばれたゆーちゃんだったけど、軽い怪我で済んだようだ。

体育館に戻ってきたゆーちゃんに、一番に駆け寄ってきたのはやっぱり理彩ちゃんで、ゆーちゃんを見るなり泣きながら抱きついたのだ。

⏰:10/08/03 22:56 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#581 [シバ]
よかった…
よかった…

そう言いながら、小さい体でゆーちゃんに飛びついた。


その時は、シバと理彩ちゃんは、今こんな風に喋れる事が嘘のように、まったくの他人だった。

ゆーちゃんが足を吊った場面を見て、こんな事を思い出していた。

ゆーちゃんのチームは勝った。
試合が終わって、理彩ちゃんと一緒にゆーちゃんのもとへ。

⏰:10/08/03 23:00 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#582 [シバ]
「ダサすぎだよ、柴崎姉さん(笑)」

理彩ちゃんは意地悪な笑顔を浮かべながら、ゆーちゃんに絡む。

「だって、最近バスケしてなかったんだもん!ビックリしたわぁ」

そう言いながら、ゆーちゃんはストレッチをしている。

「シバ、来てくれたんだね。せっかく来てくれたのに、みっともないトコ見せちゃってごめんちゃい♪」

無邪気に笑うゆーちゃん。

⏰:10/08/03 23:04 📱:F02B 🆔:8mVFIB7c


#583 [暇人]
>>001-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600

⏰:10/08/04 01:08 📱:936SH 🆔:AOW40T3Q


#584 [シバ]
>>583さん
安価ありがとうございます(〃▽〃)


>>582
汗をかいて髪の濡れている美人2人が揃った。
シバは、なぜか心が弾んだ。
久しぶりの再会って、何かいい。
それで、多少照れ臭いけど、自然と接せられると尚いい。

ゆーちゃんも理彩ちゃんも笑ってる。
それに釣られたように、シバも自然と笑顔になる。

⏰:10/08/05 22:02 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#585 [シバ]
ゆーちゃんのチームが解散すると、3人でご飯食べに行こう!ってなって、近くのファミレスへ。

席について、メニューを配る。

「シバ、気が効くじゃん♪」

そう笑うのは理彩ちゃん。

「でしょ?だって、シバはあたしの妹だもん♪」

なんて言うのはゆーちゃん。

⏰:10/08/05 22:05 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#586 [シバ]
たった1個しか歳は変わらないのに、2人が随分大人に見える。

メロンソーダを飲みながら、しみじみしていた。


よくよく話を聞いていると、恋バナに入った。

「理彩もいい加減、彼氏作ればいいのに」

ゆーちゃんがコーヒーを飲みながら言う。
理彩ちゃんは全く動じないと言わんばかりに笑っている。

⏰:10/08/05 22:10 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#587 [シバ]
「そういう由香だって!いい加減彼氏作りなよ♪」

「あたしはちゃんといます〜!」

「…嘘?ああ、だったね。ダイチ君だっけ?」

「違う!タイキ!」

「ああ、そう♪」


大人な2人は、大人な会話をしている…
シバは知らなかった。
ゆーちゃんに彼氏がいる事を。

「嘘!ゆーちゃん彼氏いるの?」

⏰:10/08/05 22:14 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#588 [シバ]
「いるよ(笑)まぁ、最近出来たばっかなんだけどね。シバに言ってなかったっけ?」

「言ってない!」

何かショックだった。
喜ばしいとは思ったけど、やっぱりショックだ。自分の大好きな姉に彼氏がいるのだ!
シバのゆーちゃんを取るな!って思った。

「何?シバ、妬いてんの?」

意地悪に笑う理彩ちゃん。

「妬いてない!」

⏰:10/08/05 22:17 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#589 [シバ]
何を話しても、ニヤニヤしている2人を目の前ににすると、上手く話が出来ない。
だから、大人しく黙ってる事にした。

タイキ君との出会いは〜?
付き合ってどれくらい〜?

乙女達の恋バナはまだまだ続く。
そんな中、理彩ちゃんから意味深な言葉を聞いた。

「あたしは彼氏はいらない」

⏰:10/08/05 22:21 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#590 [シバ]
カプチーノだかカフェオレだかを、グチャグチャに混ぜながら理彩ちゃんは笑う。

「だってめんどくさいもん♪」

すかさず、シバは聞く。

「前、プリクラに写ってた人は?」

「いつの話してんの、アンタ(笑)」

ゆーちゃんが言う。

「地元で有名だったっていう、美男美女カップル」

⏰:10/08/05 22:25 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#591 [シバ]
「あ〜…あたしらが高1の時のやつだ!懐かしい(笑)とっくの昔に終わったしね。ってか、そんな風に言われてたんだ(笑)」

「ごめんね理彩〜。シバって情報古いから」

グダグダだ…
KYって、シバみたいなやつの事を言うのだろう。これもまた古いけど…


理彩ちゃんは続ける。

「あたし、誰か1人の物になるっていうのが嫌。無理!だって、完璧に相手だけの所有物みたいになるじゃん」

⏰:10/08/05 22:29 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#592 [シバ]
「それって…遊びたいだけ?とか…?」

ゆーちゃんは少しビックリした表情を見せる。

「遊ぶ事もめんどくさい。男は友達って思ってる。仲良い男友達はたくさんいるけど、恋人とか結婚とか、何か嫌。あたしの場合はだけどね」

乙女チックな恋バナが、一気に冷たい空気になった。
シバはアタフタした。

「シバは彼氏いないの?」

⏰:10/08/05 22:35 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#593 [シバ]
話題を変えるかのように、理彩ちゃんが話をふってきた。

「あ〜、シバは…いない」

去年まで彼女がいました!
なんて、口が裂けても言えない。
彼女って言えるかも分かんないけど…

アイリ…


「ふぅん」

興味なさそうに、理彩ちゃんはエビグラタンを口に運ぶ。

⏰:10/08/05 22:38 📱:F02B 🆔:ZHvgb/hM


#594 [Sっ気]
あげっ!!

⏰:10/08/09 21:09 📱:840P 🆔:KTvK2yBI


#595 [真沙也]
あーげ

⏰:10/08/09 23:15 📱:930CA 🆔:LkpLKr8I


#596 [Sっ気]
あげーい

⏰:10/08/12 13:10 📱:840P 🆔:oH2pR7ns


#597 [シバ]
>>594
>>596さん

あげありがとうございます(/_・、)
後で感想板の方にも顔を出します!
いつも感謝です!


>>595さん
お久しぶりです(^^)v
あげありがとうございます



更新します〜(´_ゝ`)

⏰:10/08/12 21:02 📱:F02B 🆔:ugU6qEbc


#598 [シバ]
>>593

しばらくぼんやりしていた。
理彩ちゃんの言う、『あたしは彼氏いりません発言』が、妙に気になってしまう。

ゆーちゃんはそこまで気にしていないっぽい感じだったけど、シバは…


動揺というか、理彩ちゃんがどういう意味を込めて、その言葉を放ったのか考えまくっていた。

⏰:10/08/12 21:08 📱:F02B 🆔:ugU6qEbc


#599 [シバ]
「何かお腹空いた」

そう言ってメニューを広げる理彩ちゃん。

ゆーちゃんはギョッとしながら言う。

「あんた、今グラタン食べたばっかでしょ!まだ食べるの?」

「だってグラタンだけじゃ足りないよ。お腹に溜まらないもん」

店員を呼んで、ポテトとコロッケを注文した。

⏰:10/08/12 21:12 📱:F02B 🆔:ugU6qEbc


#600 [シバ]
「美味しそうでしょ〜♪由香も食べる?」

「いや、あたしは…」


コロッケを熱い熱い言いながら嬉しそうに頬張る理彩ちゃんは、やっぱり子供に見える。
しっかり者のゆーちゃんと、ちょっと幼い感じの理彩ちゃん。
バランスの取れたコンビなのかもしれないな〜…とか思いながら、シバはおかわりのコーラを取りに行った。

⏰:10/08/12 21:16 📱:F02B 🆔:ugU6qEbc


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