黒猫の棲むところ
最新 最初 🆕
#1 [イリア]


 黒猫の棲むところ


 クロネコノ スムトコロ


>>2

⏰:09/03/22 12:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#2 [イリア]

>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

 感想などお待ちしてます(゚∀゚)★

⏰:09/03/22 12:12 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#3 [イリア]

『―…雨よ、猫』

あの人の声が、響く。

『雨は好きよ
 雨の音は嫌いだけど』

懐かしい、これは…夢?

『貴方に声をあげる
 生きていくための、声を』

⏰:09/03/22 12:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#4 [イリア]



第一話: opening


⏰:09/03/22 12:14 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#5 [イリア]


――…………?


目を開けた。
知らない景色。

空が見える
雨でも降りそうな曇天…

⏰:09/03/22 12:15 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#6 [イリア]

「…ん?」

何で空が…

―…ガバッッ!!

体を起こすと、
あちこちに痛みが走った。

⏰:09/03/22 12:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#7 [イリア]

「痛ったぁ…
てか、どこよここ…
って、キャッッ?!!」

ふと体を見ると、
私の体は血まみれ。

⏰:09/03/22 12:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#8 [イリア]

「え?え?何?
何でこんなに血が…」


でも、


「体は痛いけど…
それにしちゃ血ですぎ…
これ私の血じゃなくない?」

⏰:09/03/22 12:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#9 [イリア]

あ、そっかー
これ違う人の血だ!
良かった良かった…なんて

「思えるはずないし!
誰の血だよー気持ち悪っ」

そう言いながら、試しに
左腕の血を拭う。
傷はなかった。

⏰:09/03/22 12:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#10 [イリア]

「何なの本当…
てか、ここどこだよー」

見渡す限りの木、木、木。
林か森か、そのあたりだろう。
林と森の違いなんて
分かんないけど。

⏰:09/03/22 12:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#11 [イリア]

空を仰ぐ。
さっきは気づかなかったけど
上のほうに崖が見えた。

「あそこから落ちたのかなぁ?
…まさかね、なら死んでるか」

周りには誰もいないので、
もちろん独り言。

⏰:09/03/22 12:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#12 [イリア]

「とにかく帰ろ…」

私は立ち上がった。

⏰:09/03/22 12:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#13 [イリア]

あ、ものすごく紹介遅れました。

私の名前は七衣(ナナイ)。
漢数字の七に、衣(コロモ)。

⏰:09/03/22 12:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#14 [イリア]

「ふ…ん――ッ!!」

立ち上がり体を伸ばす。
うん、痛いし血は生臭いけど
まぁ歩けるくらいには健康。

⏰:09/03/22 12:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#15 [イリア]

「てか臭いんだけど…
誰の血か知んないけどさ…」

そう言いながら川を探す。
こんだけ深そうな森(林?)なら
川の一本や二本
流れてそうなところ。



早く、洗い流したい。

⏰:09/03/22 12:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#16 [イリア]

少し歩くと川があった。
曇天で光のない場所でも、
その水が透明だと分かる。

「ラッキー!
綺麗な水はっけーん!」

私は水に近づくと、
ボロボロの衣服を捲(メク)りながら
体から血を洗い流す。

⏰:09/03/22 12:22 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#17 [イリア]

流石に全裸は嫌なので
胸などは洗えなかったが、
見えるところは大分綺麗になった。

⏰:09/03/22 12:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#18 [イリア]

「もうそろそろいいかな…
ほんじゃ行くかぁ」

誰かに言った訳じゃないけど、
まぁ気持ちを高めるために声を出す。
私は川を逆流するように歩き始めた。

⏰:09/03/22 12:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#19 [イリア]

何分か歩くと、川から流れる水の色に
少し赤が混じっていた。

血かなー
今日は何か、血にご縁が…

⏰:09/03/22 12:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#20 [イリア]

「―…て、何で冷静なの私!」

一人突っ込みを入れると走り出した。
体は痛かったが、川の赤色からして
川上に傷を持った人がいるのだろう。

⏰:09/03/22 12:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#21 [イリア]

「ハァッ…ハァッ…誰かいますかー?」

―…


返事はない。

⏰:09/03/22 12:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#22 [イリア]

「んー?確かに血だと
思ったんだけど…」

霧がかってきたのか、
少し見えずらい前を
必死に見据える。

⏰:09/03/22 12:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#23 [イリア]

すると、赤黒いものが
川と地面ギリギリのところ見えた。


「―…?何あれ…」


ゆっくり近づこうとすると、
それが川に流されかける。

⏰:09/03/22 12:27 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#24 [イリア]


「あ!待って!」


私はそれに走って近づき、
両手で抱き上げた。

⏰:09/03/22 12:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#25 [イリア]



「猫……?」


最初は人形かなんかだと思ったが、
抱き上げてみるとそれは
確かに熱をもった…生きた猫だった。

⏰:09/03/22 12:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#26 [イリア]

「すっごいぐったりしてる…
傷だらけだし…この子の血が
流れてきてたのか…」

私は猫の体を水で少しずつ洗う。

意識はないようだが
水が傷に染みて痛いのか、
たまに体をビクッと跳ねさせた。

⏰:09/03/22 12:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#27 [イリア]


「ごめんね?痛い?
でもばい菌入っちゃ大変だから…」


その前にこの川、本当に綺麗だろうな?
でも、見る限りは透明だし…うん。

⏰:09/03/22 12:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#28 [イリア]

猫の体は、私と違って傷だらけだった。

だけど血は既に止まっているらしく
洗い流すと美しい黒毛が見えた。

⏰:09/03/22 12:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#29 [イリア]


「…うわ…綺麗な毛並み…
金持ちの猫だね、これは」


クシュン!


―…くしゃみ?

⏰:09/03/22 12:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#30 [イリア]


「猫ってくしゃみするんだ…
てか、寒いよね。
どこか暖まれるとこ…」

私は猫を腕で抱きかかえながら
歩き出した。

⏰:09/03/22 12:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#31 [イリア]

するとさっきまで曇天だった空から
ポツポツと雨が降ってきた。


「雨ー?!もう最悪じゃん!!」

⏰:09/03/22 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#32 [イリア]

走ってどこか雨を
凌(シノ)げる場所を探す。

少しすると、洞穴が見えた。
すぐにそこに走り込む。

⏰:09/03/22 12:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#33 [イリア]


「ふー良かった…
とりあえずこれで濡れずにすむね。
猫さんごめんね、大丈夫?」


猫はまだ意識が戻ってないらしく
ぐったりとしていた。

⏰:09/03/22 12:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#34 [イリア]


>>23

×川と地面ギリギリのところ見えた
○川と地面ギリギリのところに見えた


すいません(゚д゚)

⏰:09/03/22 12:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#35 [イリア]

「…大丈夫かな、猫さん…」

少しでも寒くないように
猫を覆(オオ)うよう抱きしめる。

「…早く元気になってね」

⏰:09/03/22 15:16 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#36 [イリア]



ザ―…


本格的に降り出した雨が
私の心を軽やかにした。

⏰:09/03/22 15:17 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#37 [イリア]

「…♪ラララ…♪」

唄を歌う。
懐かしい唄。

⏰:09/03/22 15:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#38 [イリア]



 その揺りかごが風に揺れて
 私は大きくなった

 私は風にさらわれて
 もうあなたは見えない―…


⏰:09/03/22 15:18 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#39 [イリア]


「懐かしいなあー…イタッ!」



―……?

一瞬、頭に痛みが走る。
何か、何か…

私は―……?

⏰:09/03/22 15:19 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#40 [イリア]



ビクッ


猫が腕の中で跳ねた。
ハッとする。

「…あ…起きた…?
こんにちはー…こんばんは?」

⏰:09/03/22 15:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#41 [イリア]

さっきの変な感じに
少し焦りながらも
私は目覚めた猫に話しかける。


タッ


「…あ」

猫は私の腕から飛び出し、
洞穴の向こう側で私を見据えた。

⏰:09/03/22 15:20 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#42 [イリア]


「…何よー
そんなに威嚇(イカク)しなくても…
私は一応、
あんたを助けたのにさーって
まぁ猫に言っても仕方ないか…」


独り言。


そろそろ誰かと
会話がしたい頃だけど
生憎(アイニク)そんな相手はいない。

あ、でも猫に言ってるから
ふたりごと?

⏰:09/03/22 15:21 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#43 [イリア]



ザ―…


「雨だねー…」

一応、少し遠くで私を威嚇する
黒猫さんに話しかけてみる。

⏰:09/03/22 15:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#44 [イリア]



「私、雨は好きなんだ。
雨の音は嫌いだけど。」


⏰:09/03/22 15:23 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#45 [イリア]



ピクッ


猫の私を見る瞳(メ)が変わる。

何も映さなかった漆黒の瞳に、
私が映った。

⏰:09/03/22 15:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#46 [イリア]

少し私を見つめたあと、
ゆっくりと一歩
猫は私のほうに足を進めた。


「どうしたの…?」


その時


⏰:09/03/22 15:24 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#47 [イリア]



ピカッ


「キャッ!」

雷が光った。
すぐに大きな音がする。

「…びっくりしたぁ…
落ちたよね、近そうだな…」

⏰:09/03/22 15:25 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#48 [イリア]

すると猫は私からまた体を遠ざけ、
タッ と洞穴の外に駆け出す。


「…え?ちょっ!危ないよ!
雨降ってるから!雷も落ちたし!
戻りなよーッ!!」


すぐに猫の姿は視界から消え、
私の声だけ虚(ムナ)しく響いた。

⏰:09/03/22 15:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#49 [イリア]









⏰:09/03/22 15:26 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#50 [イリア]

数時間経っただろうか。

雨は上がり、
空は元の曇天に戻った。


「…そろそろ私も行くかぁ」

⏰:09/03/22 15:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#51 [イリア]

それにしても…


「さっきの黒猫、大丈夫かなぁ?
血は止まってたけど
傷だらけだったし…」


まぁ今更心配しても仕方ない。

それに猫は死ぬとき
誰にも見られない場所に
行くというし…

⏰:09/03/22 15:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#52 [イリア]

「…なに物騒なこと
考えてんの私…
とにかく」


あの猫が、生きてますように。


私は足を止め、空を仰ぎ、
いるかも分からない神に祈った。

⏰:09/03/22 15:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#53 [イリア]

さっき私と黒猫の体を清めてくれた、
あの川まで戻る。


「…帰ろう」



ガザッ

木の揺れる音がして
後ろを振り返る。

⏰:09/03/22 15:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#54 [イリア]



「―…誰?」


誰かいる。
それは分かる。
でも、誰?

⏰:09/03/22 15:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#55 [イリア]




見えない
見えない
見えない



怖い


⏰:09/03/22 15:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#56 [イリア]


「…誰か…ッ…いるの…?!
誰か…キャッ!!」


私の声は、誰か、によって遮られた。

後ろから手のひらで
口を塞(フサ)がれているような
感触はあるが、姿は見えない。

⏰:09/03/22 15:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#57 [イリア]



「…フッ…ン―ッ!!」


必死に声を出し、
手を退かせようと抵抗するが、
まったく力ではかなわない。

⏰:09/03/22 15:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#58 [イリア]



「――……やっと見つけた…
麗しの君…いや…元、君主…
…雨原(アマハラ)の血―…!!」


「??!!」


後ろから声がした。
低く、暗く、響く声。

⏰:09/03/22 15:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#59 [イリア]

声を出すと同時に
一瞬緩められた手を
思いっきり口からずらし
声を張り上げる。


「…プハッ!離して!離してよ!
何あんた…何で見えないの…
誰がいるの…
私の目がおかしいの…?」

⏰:09/03/22 15:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#60 [イリア]



泣きそうになる。
ただ、怖かった。


前にもいつか、
こんなことを体験した気がして。
そしてその後、
闇に落ちた、気がして。

⏰:09/03/22 15:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#61 [イリア]


「ははは…そうだ、
お前の目がおかしい…
人の目は常に、
大事なものから目をそらす。
そう特に、お前ら雨原一族はな。」

すぐ後ろから声がする。

⏰:09/03/22 15:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#62 [イリア]


「…アマハラ…?
何訳分かんないこと言って…
痛いのよ!…さっさと離して!!
私は帰らなきゃいけないんだから!」


「どこへ?」

どこへ?


⏰:09/03/22 15:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#63 [イリア]

さっきも思った。

帰らないと。
みんな待ってる。


帰ろう
帰ろう
帰ろう

⏰:09/03/22 15:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#64 [イリア]




どこへ?
誰が、待ってる?



⏰:09/03/22 15:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#65 [イリア]


―……!!

さっき黒猫と一緒にいたとき
思ったこと。


私は―…
私は………





誰?

⏰:09/03/22 15:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#66 [イリア]


「お前に帰る場所は、もうない。
お前たちは裏切った。
俺たちを…妖(アヤカシ)を…」


「―…?!」

⏰:09/03/22 15:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#67 [イリア]



「あぁ君主、我らの新しい君主よ。
今、過去の憎しみの一欠片(ヒトカケラ)
壊してみせましょうぞ……!!」


ゾクッ..

後ろにいる誰かの声に
恐怖を覚える。

⏰:09/03/22 15:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#68 [イリア]

刃が見えた。
鋭く尖った、銀色の。
ただ真っ直ぐに
私に向かってくる。



「―……イヤッッ!!!!」



目を、閉じた。

⏰:09/03/22 15:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#69 [イリア]



キーン―…


――……?

痛くない…

金属と金属がぶつかる音。

恐る恐る目を開くと、
私のすぐ前に誰かの背中が見えた。

⏰:09/03/22 18:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#70 [イリア]

私に向けられていた刃は
その人の持つ刃と交差(コウサ)し
動けないようだ。


「キャッ!」


目の前にいる人が、
私の腕を引っ張る。

⏰:09/03/22 18:28 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#71 [イリア]


少年?
青年?


「―…誰?」

「――…ッッ!!お前は!!
アスタリスクの――ッッ!!」

私の傍(ソバ)で、
さっきの低い声がする。

⏰:09/03/22 18:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#72 [イリア]


「…へぇ、俺を知ってるの?
劇団の常連さんかな…」


その人はクスッと笑い、言葉を続ける。


「でも、お客様。
マナーがなっていませんね、
俺と会話がしたいときは」

⏰:09/03/22 18:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#73 [イリア]


ザッ


刃の矛先を変える。
私のすぐ横に。

「あっ危なッ!!
何するんです―…」


「ギャアアアア!!!!!」


「…え?」

⏰:09/03/22 18:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#74 [イリア]




「…姿を見せてくれないと。
アンフェアは嫌いなんだ。
特に、俺が不利になることなんて。」



⏰:09/03/22 18:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#75 [イリア]

横を見ると、
刃に貫かれ左腕から血を流す……


「…え…鬼ッ…?」


そこにいたのは、
人間ではなかった。

鬼のような…
そういえばさっきこいつ、
妖がどうのこうのって……

⏰:09/03/22 18:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#76 [イリア]


「ウウウ…アスタリスクの…
まさかこんなところに…」


「鬼か…人間を襲う妖なんて
俺たちの舞台の客に相応しくない」

⏰:09/03/22 18:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#77 [イリア]

舞台?客?何の話…?


「…クッ…アスタリスクッッ!!!!!」


目の前の鬼が叫ぶ。

⏰:09/03/22 18:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#78 [イリア]


「何故…何故、貴様等は
人間を庇う!
半妖とて、妖は妖!!
ずっとこちら側で生きてきた…
何故いまお前らは、
人間の側に立つ!!」

⏰:09/03/22 18:33 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#79 [イリア]


「クスッ、どうだろう?
俺としては、人間の側に
立ってるつもりはないし…」


少年は妖艶に微笑むと、
また刃を振り下ろす。

⏰:09/03/22 18:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#80 [イリア]



「…てめぇら(妖)の側に
立ってたつもりもない」


刃は無惨にも鬼を貫き、
鬼は砂のように落ちる。

⏰:09/03/22 18:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#81 [イリア]


「…ソノ、女……アマ…ハラ」




「…クシュン!!」

少年がくしゃみをしたとき、
鬼は形をなくし、砂になり
空に舞った。

⏰:09/03/22 18:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#82 [イリア]


「…知ってるよ」


少年はポツリとそう呟いた。

⏰:09/03/22 18:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#83 [イリア]

「…あ、あの…」

私は声をだし、
目の前の少年に話しかける。

聞きたいことだらけで、
あー何か…現実だよね?ここ…

⏰:09/03/22 18:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#84 [イリア]



「あーまじ風邪気味。」



少年は鼻を少しぐずつかせると
私のほうを見た。

うわ………

⏰:09/03/22 18:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#85 [イリア]


細身の体に

筋のいい鼻

綺麗な肌に

漆黒の瞳と、髪。


その全てがよく映える
滑らかな黒コートに
身を包んでいる。

⏰:09/03/22 18:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#86 [イリア]


俺、という一人称と
さっきの声から
男だとは思うが、
見た目は妖艶な女性といっても
間違いではないくらい


「―…綺麗…」


「は?」

目の前の人が不思議そうな顔で
私を覗きこんできた。

⏰:09/03/22 18:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#87 [イリア]


「ふぇっ?!いえ別に!
何でもありません!
あ、助けてくれて
有難う御座います!!」


一気にこれだけいうと、
私は顔を下に向けた。
少年の顔は私から近く、
なんていうか…

⏰:09/03/22 18:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#88 [イリア]


「恥ずかしい…」


「…だから、何」


「え?あ、すいません!
本当に何でもないです!」

⏰:09/03/22 18:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#89 [イリア]


あまりに貴方が綺麗すぎて
見とれてしまいました、なんて

初対面の相手に
言えるはずないでしょ!

⏰:09/03/22 18:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#90 [イリア]


「…まぁ何でもいいけど。
あんたさ、名前は?」


「あ…七衣です。」


「ふぅん…」


「あの…貴方は…?」

⏰:09/03/22 18:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#91 [イリア]


「俺?俺は名前なんていらないし」

「えー…でも、呼びづらいですよ…」

「…呼び名くらいはある
団員や客からは…」

⏰:09/03/22 18:40 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#92 [イリア]


そう言うと彼は、
少しずつ顔をあげてきた私の目を見て
こう言った。

「黒猫、って呼ばれてる」

⏰:09/03/22 18:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#93 [イリア]


「……黒猫?」


黒猫って…
さっきの傷だらけの
猫を思い出す。
感じは似てる気もするが、

でも…
まさか、ね。

⏰:09/03/22 18:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#94 [イリア]

「正確には、それをもじって
クロ、とかネコ、とかだけど。
まぁあんたも好きに呼べばいい」


「…あ、はい…
それでさっきから言ってる
劇団とか団員…て…?」

⏰:09/03/22 18:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#95 [イリア]


?「それは僕が説明しよう!」


ガザッ という音と同時に、
男性が一人、勢いよく
林の陰から飛び出してきた。

七「えッ??!!」

猫「…うぜー…」

⏰:09/03/22 19:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#96 [イリア]


?「やぁ、初めまして
可愛らしいお嬢さん♪
時にネコくん、
今うぜーって言った?
団長の僕に対して、
今うぜーって
言ったあああぁぁあ!!!!!!」

⏰:09/03/22 19:29 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#97 [イリア]


猫「うっせーんだよ狐(キツネ)!!
いい大人がそんくらいで
半べそかいてんじゃねえ!!」


狐「ふん、君も狼(ロウ)くんも
いい大人、いい大人って…
僕はまだ25ですぅー
ピチピチなんですぅー
結婚なんてまだまだまだ…」

⏰:09/03/22 19:30 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#98 [イリア]


猫「誰もてめぇの結婚論なんて
聞いちゃいねーんだよ、カス」


狐「うわ、今度はカスって
言ったあああぁぁあ!!!!!
ふんだ、もういいもんね。
次の舞台の主役は君じゃなく
狼くんに任せるもんね」


猫「好きにしろ」

⏰:09/03/22 19:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#99 [イリア]


狐「ふん、強がっちゃって…
時にお嬢さん」


七「…え?あ、はい!」


狐「僕と結婚しない?」




ボコツ!

黒猫さんが、
狐と呼ばれた人を殴った。

⏰:09/03/22 19:31 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#100 [イリア]


狐「今度は殴ったあああぁぁあ!!!」


猫「てめぇ本当、いい加減にしろよ。
何のためについてきたんだ、あ?」

⏰:09/03/22 19:32 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#101 [イリア]


「ふんだ、ふんだ…
よくもまぁこんな綺麗な顔して
カスだのてめぇだの
言えたもんだよ…
お客さんが君の本性知ったら
僕らの劇団終わりだね」


「…てめー」

⏰:09/03/22 19:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#102 [イリア]


「あーはい!ごめんなさい★
えーではさっそく、お嬢さん!」


「あ、はい!」


二人のやり取りを
口をポカンと開けて見ていた私は、
ハッと意識を戻す。

⏰:09/03/22 19:34 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#103 [イリア]


狐「いやぁさっきは怖かったね!
あれは悪い妖だから気をつけてね!
あ、そうそう、僕の名前は狐。
アスタリスクっていう劇団の
団長をやらせてもらってる。」


七「…アスタリスク…?」

さっきの鬼も、そんなこと…

⏰:09/03/22 19:35 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#104 [イリア]


狐「そう、アスタリスク。
聞いたことあるかな?
僕が言うのもアレだけど、
結構有名なんだよねー!!」


七「…あ…すいません…
私なんか…自分の名前くらいしか
覚えてなくて…ってことに、
今さっき気がついて…」

⏰:09/03/22 19:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#105 [イリア]




狐「………へぇ…?」


そう言うと狐は
さっきまでのちゃらけた感じとは
真逆の笑みで七衣を見た。

⏰:09/03/22 19:36 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#106 [イリア]


七「…狐さん…?」


狐「…ん?いや何でもないよ!
ごめんごめん!
いや、なに、アレさ!
僕らの劇団を知らないって
いうもんだから、
ちーとばかりショックをね…」

⏰:09/03/22 19:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#107 [イリア]


七「…ごめんなさい…」


狐「いや何!
記憶喪失というなら
いた仕方ない!!」


七「…はぁ」

⏰:09/03/22 19:37 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#108 [イリア]



狐「そんな七衣ちゃんに
軽ぅ〜く説明するとだね、
アスタリスク劇団というのは
巷じゃ人気、まぁ色んな意味でね!

人間に言わせると
イケメン揃いの移動劇団、
妖に言わせると
裏切り者の殺戮奇術(サツリクキジュツ)、
アスタリスク劇団!」


⏰:09/03/22 19:38 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#109 [イリア]


七「裏切り者…?」


狐「うん、
さっきの鬼も言ってたけど
僕らは半妖。
普段は人間の姿でいるけど、
こうやって…」


そう言うと狐は、
左手で自分の頬に触れた。

⏰:09/03/22 19:39 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#110 [イリア]




ボンッ!

「キャッ?!
――……え?」


私の目の前にいたのは

⏰:09/03/22 19:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#111 [イリア]


七「…き、きつね…?」


狐はコクン、コクンと頷くと、
右手を自分の頬にあて、
またボンッ と人間の姿に戻った。

⏰:09/03/22 19:41 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#112 [イリア]


狐「まぁ、こんな感じ。
気持ちをこめて頬に触れると
僕らは元の姿に戻れる。」


七「…信じられない…でも…
…ってことは」


私は狐さんの横で
腕組みをしている少年に話しかけた。

⏰:09/03/22 19:42 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#113 [イリア]


「…あのときの…黒猫さん…?」


「………ふん」


黒猫が、鼻を小さく鳴らした。

⏰:09/03/22 19:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#114 [イリア]


狐「あ!そうそう!
ネコくんのこと、
助けてくれたんだってね!
いやぁ有難う!」


七「助けたなんて…
私別に何も…」

⏰:09/03/22 19:43 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#115 [イリア]


狐「いやいやいや!
川の水で血を清めて、
雨からも守ってくれたんだろ?

凄いよ君、
見ず知らずの半妖をさ!
ネコくんに話を聞いたときは
感動しすぎて鼻水が出たよ!
あ、もちろんその前に
涙も出てるよ?

さぁ、君の無垢(ムク)で
美しい心に乾杯!
流石ネコくんがスカウトしたいと
いうくらいだよ!!
マリア様と呼ばせてもらっても
いいかい?」

⏰:09/03/22 19:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#116 [イリア]


七「マリア様はちょっと…
っていうか、
川…雨…スカウト…?」


猫「あの川、俺たち妖にとって
怪我に何よりも効く薬なんだ。
あと妖は雨が苦手。
雨が降ってると
力があまり出せない。」

⏰:09/03/22 19:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#117 [イリア]


黒猫さんが答えてくれた。
いや、でもあなた
私が止めるのも聞かず、
雨の中飛び出して
いきましたよね…?

まぁ、それは言わないでおこ。

⏰:09/03/22 19:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#118 [イリア]


七「もう、怪我はいいんですか?」


猫「…あんたのお陰で、何とか。
もともと血は止まってたしな」


良かった…口には出さなかったが、
代わりに私は口元を緩めた。

⏰:09/03/22 19:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#119 [イリア]


狐「ちょっと、僕を置いて
ラブラブしないでくれる?」


猫「いつラブラブしたよ、あ?」


狐「またそんな
えげつない声出すぅー
もぉーネコくんったら
顔と声と性格が合ってないぃー

僕の劇団の花形俳優ってとこ、
もう少し自覚して
欲しいとこだよね、まったく」

⏰:09/03/22 19:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#120 [イリア]


>>115

続きになってしまった(゚д゚)

読んで下さってる方
もしいましたら
感想・アドバイスなど
頂けると嬉しいです(;_;)

⏰:09/03/22 19:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#121 [イリア]


猫「…狐…」

狐「コホン!
えー話が大分ズレましたが!
僕らアスタリスク劇団の主な仕事は
昼間は人間、たまに妖の
心のオアシスともなりえる
大人気!移動劇団!!」

⏰:09/03/22 19:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#122 [イリア]


七「…はぁ」


狐「しかし!もう一つの姿は
最近、罪なき人間を
襲うようになった
怖ぁ〜い妖を退治する
ハンター集団!

…さっきの、
ネコくんみたいにね♪」

⏰:09/03/22 19:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#123 [イリア]


七「…ハンター…」

狐「そう♪かっこいいでしょ★
って言っても、
悪い妖ばっかじゃないんだよ?
ちゃんと人間と共存しようと
努力してる妖もいる。」

⏰:09/03/23 13:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#124 [イリア]


七「…あの…それで…
さっきの鬼が言ってた、
アマハラ…?って、
何のことですか…?」


ピクッ


空気が変わる

狐さんからは
おちゃらけた笑みが消え、
黒猫さんは私から目をそらす。

⏰:09/03/23 13:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#125 [イリア]


七「…あの…?汗」


何か…聞いちゃいけない
ことだったかな?


でもでもでも!
鬼は間違いなく
私のことアマハラ一族だって…

⏰:09/03/23 13:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#126 [イリア]


七「あ、あの!
言いづらいことだったら
ごめんなさい!
でも私…さっきも言ったけど
自分のこと…何も覚えてなくて…」


猫「―……何も…?」


どもりながらも必死に言うと、
黒猫さんが、私に話しかけてきた。

⏰:09/03/23 13:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#127 [イリア]


七「何も!本当に何も!!
あ、名前と…あと、
日本語は一応喋れますけど!
なんていうか…どこに」

⏰:09/03/23 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#128 [イリア]



どこに


誰が



マ ッ テ ル ?



七「…どこに…行けばいいか…」

⏰:09/03/23 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#129 [イリア]


狐「―…ふぅ…ネコくん、
どう思う?本当にこの子、
雨原の子かい?」


猫「フフン、頭だけじゃなく、
ついに嗅覚まで
イカれちまったか、狐。

お前は匂わないのか?
この血は…」

⏰:09/03/23 13:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#130 [イリア]


黒猫さんは私の腕を掴み
自分のほうに寄せた。


七「キャッ!」



猫「――……間違いなく、
雨原の血だ」

⏰:09/03/23 13:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#131 [イリア]


そう言うと黒猫さんは
掴んでいた私の腕を舐め、
血を拭った。

⏰:09/03/23 13:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#132 [イリア]



七「――ッッ!!!!!!キ!!キャアアー!!!!///」


キ――ン……


あたり一面に
私の叫び声が轟(トドロ)く。

⏰:09/03/23 13:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#133 [イリア]


狐「―…120dB(デシベル)…笑」


猫「…煩(ウルサ)いな、何だよ?」


七「な、何だよじゃないですよ!
いま…いま…私の腕、
舐めたでしょっ?!」

⏰:09/03/23 13:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#134 [イリア]


猫「フフン、何あんた、
こんくらいで照れるわけ?
顔真っ赤だよ?」


七「な、な、な、
慣れて…ないもんで…」


猫「って、ことは」

⏰:09/03/23 13:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#135 [イリア]



グイッ


顎(アゴ)をもたれ、無理矢理顔を
近づけさせられる。


猫「―…誰かと唇を重ねたことは?」

⏰:09/03/23 13:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#136 [イリア]


七「なっ…////」


綺麗な顔がすぐ目の前にある。
何この人!慣れすぎでしょ!//


七「はなはなはな、離して下さい!」


猫「クス、いいよ」

⏰:09/03/23 13:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#137 [イリア]


笑うともっと妖艶…
何なのこの人、本当に男?//

⏰:09/03/23 13:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#138 [イリア]


狐「ちょっとちょっとネコくん。
本当にキスするかと思ったよー
駄目だよ?七衣ちゃんって
何もかも処女みたいだしさ?
優しくしなきゃ〜」


七「何もかもって…
てか、処女っ…?!//」

⏰:09/03/23 13:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#139 [イリア]


猫「何あんた?記憶がないくせに
処女とか、そういう言葉は
覚えてるんだ、ふーん。」


ニッコリ笑って
こっちを見る黒猫さん。
さ、さっきまでは
私から目を
そらしてたくせに…!!///

⏰:09/03/23 14:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#140 [イリア]


狐「はいはい、お二方、
そろそろ話を
元に戻しましょうかね、

うん、確かに七衣ちゃんからは
雨原一族の血の匂いがする。」


七「…アマハラ…」

⏰:09/03/23 14:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#141 [イリア]


狐「雨に、原っぱの原で、雨原。

一人一人が雨に関する
何かしらの力を持ってて…
さっきも話した通り、僕ら妖は
雨が大の苦手。

だからその力で雨雲なんか
呼ばれた日にゃ、
僕らなんかまったく
太刀打ちできないって訳。」

⏰:09/03/23 14:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#142 [イリア]


七「なんか…おとぎ話みたい」


猫「現実だけどね」


狐「そう、まさしく現実。
僕らが生きてる世界だ。
―…だから僕らは今まで」


雲が出る。
もう一雨きそうな曇天。

⏰:09/03/23 14:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#143 [イリア]



狐「――……雨原一族を、
見つけしだい…殺してきた」





え…

いま何て…

⏰:09/03/23 14:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#144 [イリア]


狐「大丈夫、まだ続きがあるんだ。

もう何百年も昔から、
妖と人間は、戦い続けてきた。

共存なんて無理だ。
妖を人間を喰らうし、
人間は妖を恐れ殺す。

…僕ら半妖は一応、
妖側として戦争に参加していた。」

⏰:09/03/23 14:03 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#145 [イリア]


七「………」

狐「ずっと…ずっと、ね?
そこで少しずつ、
頭角(トウカク)を表してきたのが
雨原一族。君の一族だ。」

⏰:09/03/23 14:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#146 [イリア]


七「私の…?」


狐「妖にとっての最大の弱点。
雨を呼ばれ、妖は一時期
本当に滅亡しかけた。だけど」


七「…だけど?」

⏰:09/03/23 14:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#147 [イリア]


狐「…あるとき急に、
雨原一族が妖側に言ったんだ。

【そちらで丁重に扱って頂けるなら
私達、雨原一族は妖側に立ちます】

…って、ね。」

⏰:09/03/23 14:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#148 [イリア]



ポツポツ…


少しずつ、雨が降り出す。
黒猫さん、狐さん
大丈夫なのかな?

⏰:09/03/23 14:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#149 [イリア]


狐「そうして、雨原一族は
僕らの君主になった。
……雨だ、場所を変えよう」


猫「…いや…」


七、狐「?」

⏰:09/03/23 14:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#150 [イリア]


猫「ここで、話してしまおう。
どちらにしろ早く話さないと
そろそろ麗(レイ)が気づく」


狐「麗ちゃん嗅覚いいもんねー
もうバレてるかも…で、
どこまで話したかな?
あ、そうそう。それで数十年は
うまくいってた。」

⏰:09/03/23 14:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#151 [イリア]


七「…どうして雨原一族は
人間を裏切ったんですか?」


狐「―…さぁ…それは僕らにも
分かんないな。」



そう言った狐さんの横顔は
何故か少し寂しそうだった。

⏰:09/03/23 14:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#152 [イリア]


狐「うん、でもまたある時
雨原一族は僕ら妖を裏切った。」



七「―――……え?」

⏰:09/03/23 14:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#153 [ちー]
ここ好きー(゚∀゚)
続きまってるー

⏰:09/03/23 14:25 📱:SH902iS 🆔:☆☆☆


#154 [イリア]


>>153ちー様

 あわわ(゚д゚)
 もったいないお言葉
 有難うございます(;_;)
 初コメにものすごく
 感動してます(´;ω;`)←

 駄文だし更新もまちまちですが、
 最後まで頑張るので
 また見て頂ければ
 嬉しいです\(^O^)/

 コメントありがとう
 ございました★

⏰:09/03/23 23:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#155 [イリア]


>>152から

⏰:09/03/23 23:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#156 [イリア]


狐「驚いたよ、あれだけ仲良く…
って言っても、
主従関係だけどね。

何故?って思った。
雨原一族と妖で」



雨が本格的に降り出す。
川の表面にあたる雨は
広がり、波音を残し

…また、消える。

⏰:09/03/23 23:54 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#157 [イリア]


狐「…愛し合ってた人も、
いたのにさ。」



狐さんの声はもう、
雨音に混じりかき消され
聞き取りずらい。


猫「…関係なかったんだろ、
結局…雨原も人間だったってことだ
血には逆らえない。」

⏰:09/03/23 23:55 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#158 [イリア]


狐「妖は雨原一族を憎んでる。
新しい君主のもと、雨原の血を
途絶えさせるべく
全国に散らばってる。

だけど雨原だって
黙っては殺(ヤ)られない。
雨を呼び、妖を殺す。

そして、行き場のない
妖たちの憎しみは、
関係のない人間を殺す…
…悪循環だ」

⏰:09/03/23 23:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#159 [イリア]


七「―…私も殺すんですか?」


狐「え?」


七「なら、さっき
助けてくれないで良かったのに。
あのまま鬼に殺されておけば、
少しはあの鬼の憎しみも
取れたかもしれない。」

⏰:09/03/23 23:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#160 [イリア]


狐「…七衣ちゃん…」


七「だって、話だけ聞くと、
雨原一族って何なんですか。
あっち行きこっち行き…

そんなの妖に憎まれたって
文句言えないですよ、ね?」

⏰:09/03/23 23:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#161 [イリア]



猫「…まったく、正論だ」


狐「うん、記憶がないとはいえ
雨原の匂いがする人間に
こんなこと言われると…
不思議な気持ちだねぇ」


⏰:09/03/23 23:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#162 [イリア]


七「…あはは
殺すなら、殺してくれて
かまいませんよ。

…どうせさっきみたいな
鬼がきたら、
逃げられないんだし」

⏰:09/03/24 00:00 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#163 [イリア]


どうせ死ぬなら
今、死にたい。

私は貴方達には
殺されない。




…もう、
貴方達の思い通りには
ならないのよ。

⏰:09/03/24 00:02 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#164 [イリア]


頭の中で、美しい声が響いた。


いつか、どこかで、
誰かに言われた。


美しい人。
美しい唄。


⏰:09/03/24 00:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#165 [イリア]


ずっと前だった気もするし
つい最近のような気もする。





…誰だったかな?


⏰:09/03/24 00:04 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#166 [イリア]


猫「あんたを殺して、
それでおしまい。
そうしたい。簡単だ。

…ところが、
そうはいかない。」


七「え?」

⏰:09/03/24 00:05 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#167 [イリア]



黒猫さんは一瞬
私の目を見たあと、

空を仰ぎながら、喉を鳴らす。


⏰:09/03/24 00:06 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#168 [イリア]




 その揺りかごが風に揺れて
 私は大きくなった


 私は風にさらわれて
 もうあなたは見えない―…


 雨の音 風の声 聴いて
 揺りかごを揺らして
 早く私を迎えにきて――……



⏰:09/03/24 00:07 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#169 [イリア]



美しい声


この声を聞きながら死ねたら
どれほど幸福なんだろう。
どれほどの痛みで
魂と躯(カラダ)は
別れを告げあうのだろう。


それにこの唄…
さっき私が歌った…?

⏰:09/03/24 00:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#170 [イリア]


パチパチパチ


狐さんが拍手をした。


狐「いやあ!流石花形俳優!
美声だね〜思わず聞き惚れた!」

⏰:09/03/24 00:10 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#171 [イリア]



猫「フフン、当たり前。
あんたさ、さっきこの唄
歌ってなかった?

ほら、怪我した俺を洞穴に
連れてってくれたとき。」


⏰:09/03/24 00:11 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#172 [エ]
今めっちゃ読んでました

いいですね★

これからも読みます

⏰:09/03/24 01:03 📱:W51CA 🆔:☆☆☆


#173 [イリア]


>>172e様

(´д`⊂。)
コメントありがとうございます!
もう本当に本当に嬉しいです(;_;)
e様のコメ見て、眠気が
一気に吹っ飛びました。笑

これからも読んで頂けるとか
最高に嬉しい言葉です(;_;)★
今からがっつり(?)更新するので
読みづらいようでしたら
>>2の安価を使って下さい(^ω^)

コメありがとう
ございました(´;ω;`)☆

⏰:09/03/24 01:44 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#174 [イリア]


>>171から

⏰:09/03/24 01:45 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#175 [イリア]


七「…歌って…ましたよね…
何となく覚えてたんです。
でも正確な歌詞までは…
この唄、何なんですか?」


猫「この唄が何かなんて
そんなの俺たちが聞きたい。

何でも…雨原一族の血に
受け継がれる
唄らしいけど…」

⏰:09/03/24 01:46 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#176 [イリア]


七「…黒猫さんは
何でこの唄を?」


猫「…俺は…」






あぁ私が目覚めてからの天候は
雨ばかりだな。

⏰:09/03/24 01:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#177 [イリア]


猫「―…教えてもらった、昔。
声をくれた人…
…もう何年も前の話だ」



そう言うと黒猫さんは
また、空を仰ぐ。

雨に濡れ、雫が伝う漆黒の髪は
どうしてか、私の鼓動を早める。

⏰:09/03/24 01:47 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#178 [イリア]


狐「君は雨原だ」


狐さんの声が響く。


七「―…私は…雨原…」

狐「ここまでは、いいかい?」

七「…はい」

⏰:09/03/24 01:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#179 [イリア]


狐「妖は雨原一族を憎んでる、
危険だよ…
例え、君に記憶がなくても。
君の体に流れる
その血は、その匂いは…



僕らに雨原の居場所を
教えてくれる」

⏰:09/03/24 01:48 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#180 [イリア]



危険


そうだろう

あんな鬼が次に私を襲い、
さっきみたいに
黒猫さんが守ってくれなかったら
私なんか、一瞬であの世行きだ。

⏰:09/03/24 01:49 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#181 [イリア]


死ぬなら


もし死ぬなら、私は
黒猫さんの唄を聞きながら
死にたいな。

痛みも苦しみもないだろう。
美しい声は
全てを消し去ってくれる。
何故か、そう感じた。

⏰:09/03/24 01:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#182 [イリア]




生きてきた痛みを
死ぬときの唄で



響く

響く

美しい声


⏰:09/03/24 01:50 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#183 [イリア]



さっきから…
頭の中で、声がする


誰?私の中に誰かいる?

教えて、雨原のこと。

私は何?

何故、一人ぽっちなの?

⏰:09/03/24 01:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#184 [イリア]



猫「―…ィ……………オイ!!」


七「…え?あ、はいッ!!」


⏰:09/03/24 01:51 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#185 [イリア]


猫「はい?じゃねえよ、
あんたさ、何ぼけっとしてんの。
狐の話聞いてる?
こいつにしては結構まともに
話してるんだぜ、これでも」


狐「おーい」

⏰:09/03/24 01:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#186 [イリア]



七「あ、すいません!
なんか…考えること、
いっぱいで…」









猫「―…アスタリスクに、入らない?」


⏰:09/03/24 01:52 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#187 [イリア]





七「…え?」



猫「だから、俺たちの劇団に
入らないかって聞いてるの。

劇団についての説明は
さっき一通り聞いただろ?」

⏰:09/03/24 01:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#188 [イリア]



狐「ネコくん自ら
スカウトするなんてねー
珍しいこともあるもんだ。

僕は歓迎だよ?
七衣ちゃん、可愛いし…
…ちょっと冗談だよネコくん、
いや七衣ちゃんは可愛いけど…
そんなに睨まないでくれる?

…軽口叩いてごめんなさい!」


⏰:09/03/24 01:53 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#189 [イリア]


七「…でも…あたし…」


猫「―…何?」


七「貴方達のこと、
何も知らない。」

⏰:09/03/24 01:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#190 [イリア]


猫「知ってるよ
俺は黒猫。クロやらネコやら
好きに呼んで。」


七「名前じゃなくて…」





猫「俺は今生きて、
あんたの目の前で呼吸をしてる」

七「………あ」

⏰:09/03/24 01:56 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#191 [イリア]



猫「…そんだけ知ってれば
充分だと思うけど?
仮にあんたがもっと俺のこと
知りたいと望むなら…」



黒猫さんが、私の目を見つめる。

⏰:09/03/24 01:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#192 [イリア]












猫「…これから、知っていけばいい」

⏰:09/03/24 01:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#193 [イリア]



カァァァ


顔が赤くなる

そんな自分を隠すように
私は声を張り上げる。


七「―…で、でもでもでも!!」


狐「なになに?」

⏰:09/03/24 01:57 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#194 [イリア]



七「…私…
雨原一族なんですよね…?
私は覚えてないけど…
一緒にいて…」


猫「フフン、あんたなんか
一人でほっつき歩いてたら
二秒で鬼の腹の中だよ」

⏰:09/03/24 01:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#195 [イリア]




七「な!何ですかそれ!
どういう意味「俺が守るよ」



⏰:09/03/24 01:58 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#196 [イリア]



え―……?


私が言葉を終える前に
黒猫さんが言葉を重ねる。

⏰:09/03/24 01:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#197 [イリア]




猫「…俺が、守る。


別に深い意味はないけど」



⏰:09/03/24 01:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#198 [イリア]



ボッ


そのキザだが、
美しい外見に似合う
台詞(セリフ)を言われたとき
私は顔は真っ赤だったらしい。

まぁ後から狐さんに
聞いた話だけど。

⏰:09/03/24 01:59 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#199 [イリア]



狐「ヒューヒュー」


狐さんが野次を入れる。

⏰:09/03/24 02:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


#200 [イリア]


狐「駄目だね、落ちたね
いやさ、ネコくんいいよー
今の台詞じゃないもんね?
素のネコくんだもんね?
うんうん、かっこいい!

やっぱアレだ。
次の舞台主役も
君にしてもらおっと♪

狼くんには悪いけど」

⏰:09/03/24 02:01 📱:W61P 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194