黒猫の棲むところ
最新 最初 全
#1 [イリア]
:09/03/22 12:11 :W61P :☆☆☆
#2 [イリア]
:09/03/22 12:12 :W61P :☆☆☆
#3 [イリア]
『―…雨よ、猫』
あの人の声が、響く。
『雨は好きよ
雨の音は嫌いだけど』
懐かしい、これは…夢?
『貴方に声をあげる
生きていくための、声を』
:09/03/22 12:14 :W61P :☆☆☆
#4 [イリア]
:09/03/22 12:14 :W61P :☆☆☆
#5 [イリア]
――…………?
目を開けた。
知らない景色。
空が見える
雨でも降りそうな曇天…
:09/03/22 12:15 :W61P :☆☆☆
#6 [イリア]
「…ん?」
何で空が…
―…ガバッッ!!
体を起こすと、
あちこちに痛みが走った。
:09/03/22 12:16 :W61P :☆☆☆
#7 [イリア]
「痛ったぁ…
てか、どこよここ…
って、キャッッ?!!」
ふと体を見ると、
私の体は血まみれ。
:09/03/22 12:17 :W61P :☆☆☆
#8 [イリア]
「え?え?何?
何でこんなに血が…」
でも、
「体は痛いけど…
それにしちゃ血ですぎ…
これ私の血じゃなくない?」
:09/03/22 12:18 :W61P :☆☆☆
#9 [イリア]
あ、そっかー
これ違う人の血だ!
良かった良かった…なんて
「思えるはずないし!
誰の血だよー気持ち悪っ」
そう言いながら、試しに
左腕の血を拭う。
傷はなかった。
:09/03/22 12:18 :W61P :☆☆☆
#10 [イリア]
「何なの本当…
てか、ここどこだよー」
見渡す限りの木、木、木。
林か森か、そのあたりだろう。
林と森の違いなんて
分かんないけど。
:09/03/22 12:18 :W61P :☆☆☆
#11 [イリア]
空を仰ぐ。
さっきは気づかなかったけど
上のほうに崖が見えた。
「あそこから落ちたのかなぁ?
…まさかね、なら死んでるか」
周りには誰もいないので、
もちろん独り言。
:09/03/22 12:19 :W61P :☆☆☆
#12 [イリア]
:09/03/22 12:19 :W61P :☆☆☆
#13 [イリア]
あ、ものすごく紹介遅れました。
私の名前は七衣(ナナイ)。
漢数字の七に、衣(コロモ)。
:09/03/22 12:20 :W61P :☆☆☆
#14 [イリア]
「ふ…ん――ッ!!」
立ち上がり体を伸ばす。
うん、痛いし血は生臭いけど
まぁ歩けるくらいには健康。
:09/03/22 12:21 :W61P :☆☆☆
#15 [イリア]
「てか臭いんだけど…
誰の血か知んないけどさ…」
そう言いながら川を探す。
こんだけ深そうな森(林?)なら
川の一本や二本
流れてそうなところ。
早く、洗い流したい。
:09/03/22 12:22 :W61P :☆☆☆
#16 [イリア]
少し歩くと川があった。
曇天で光のない場所でも、
その水が透明だと分かる。
「ラッキー!
綺麗な水はっけーん!」
私は水に近づくと、
ボロボロの衣服を捲(メク)りながら
体から血を洗い流す。
:09/03/22 12:22 :W61P :☆☆☆
#17 [イリア]
流石に全裸は嫌なので
胸などは洗えなかったが、
見えるところは大分綺麗になった。
:09/03/22 12:23 :W61P :☆☆☆
#18 [イリア]
「もうそろそろいいかな…
ほんじゃ行くかぁ」
誰かに言った訳じゃないけど、
まぁ気持ちを高めるために声を出す。
私は川を逆流するように歩き始めた。
:09/03/22 12:23 :W61P :☆☆☆
#19 [イリア]
何分か歩くと、川から流れる水の色に
少し赤が混じっていた。
血かなー
今日は何か、血にご縁が…
:09/03/22 12:24 :W61P :☆☆☆
#20 [イリア]
「―…て、何で冷静なの私!」
一人突っ込みを入れると走り出した。
体は痛かったが、川の赤色からして
川上に傷を持った人がいるのだろう。
:09/03/22 12:24 :W61P :☆☆☆
#21 [イリア]
「ハァッ…ハァッ…誰かいますかー?」
―…
返事はない。
:09/03/22 12:24 :W61P :☆☆☆
#22 [イリア]
「んー?確かに血だと
思ったんだけど…」
霧がかってきたのか、
少し見えずらい前を
必死に見据える。
:09/03/22 12:26 :W61P :☆☆☆
#23 [イリア]
すると、赤黒いものが
川と地面ギリギリのところ見えた。
「―…?何あれ…」
ゆっくり近づこうとすると、
それが川に流されかける。
:09/03/22 12:27 :W61P :☆☆☆
#24 [イリア]
「あ!待って!」
私はそれに走って近づき、
両手で抱き上げた。
:09/03/22 12:28 :W61P :☆☆☆
#25 [イリア]
「猫……?」
最初は人形かなんかだと思ったが、
抱き上げてみるとそれは
確かに熱をもった…生きた猫だった。
:09/03/22 12:28 :W61P :☆☆☆
#26 [イリア]
「すっごいぐったりしてる…
傷だらけだし…この子の血が
流れてきてたのか…」
私は猫の体を水で少しずつ洗う。
意識はないようだが
水が傷に染みて痛いのか、
たまに体をビクッと跳ねさせた。
:09/03/22 12:29 :W61P :☆☆☆
#27 [イリア]
「ごめんね?痛い?
でもばい菌入っちゃ大変だから…」
その前にこの川、本当に綺麗だろうな?
でも、見る限りは透明だし…うん。
:09/03/22 12:30 :W61P :☆☆☆
#28 [イリア]
猫の体は、私と違って傷だらけだった。
だけど血は既に止まっているらしく
洗い流すと美しい黒毛が見えた。
:09/03/22 12:30 :W61P :☆☆☆
#29 [イリア]
「…うわ…綺麗な毛並み…
金持ちの猫だね、これは」
クシュン!
―…くしゃみ?
:09/03/22 12:31 :W61P :☆☆☆
#30 [イリア]
「猫ってくしゃみするんだ…
てか、寒いよね。
どこか暖まれるとこ…」
私は猫を腕で抱きかかえながら
歩き出した。
:09/03/22 12:31 :W61P :☆☆☆
#31 [イリア]
するとさっきまで曇天だった空から
ポツポツと雨が降ってきた。
「雨ー?!もう最悪じゃん!!」
:09/03/22 12:33 :W61P :☆☆☆
#32 [イリア]
走ってどこか雨を
凌(シノ)げる場所を探す。
少しすると、洞穴が見えた。
すぐにそこに走り込む。
:09/03/22 12:33 :W61P :☆☆☆
#33 [イリア]
「ふー良かった…
とりあえずこれで濡れずにすむね。
猫さんごめんね、大丈夫?」
猫はまだ意識が戻ってないらしく
ぐったりとしていた。
:09/03/22 12:34 :W61P :☆☆☆
#34 [イリア]
>>23×川と地面ギリギリのところ見えた
○川と地面ギリギリのところに見えた
すいません(゚д゚)
:09/03/22 12:41 :W61P :☆☆☆
#35 [イリア]
「…大丈夫かな、猫さん…」
少しでも寒くないように
猫を覆(オオ)うよう抱きしめる。
「…早く元気になってね」
:09/03/22 15:16 :W61P :☆☆☆
#36 [イリア]
ザ―…
本格的に降り出した雨が
私の心を軽やかにした。
:09/03/22 15:17 :W61P :☆☆☆
#37 [イリア]
:09/03/22 15:18 :W61P :☆☆☆
#38 [イリア]
その揺りかごが風に揺れて
私は大きくなった
私は風にさらわれて
もうあなたは見えない―…
:09/03/22 15:18 :W61P :☆☆☆
#39 [イリア]
「懐かしいなあー…イタッ!」
―……?
一瞬、頭に痛みが走る。
何か、何か…
私は―……?
:09/03/22 15:19 :W61P :☆☆☆
#40 [イリア]
ビクッ
猫が腕の中で跳ねた。
ハッとする。
「…あ…起きた…?
こんにちはー…こんばんは?」
:09/03/22 15:20 :W61P :☆☆☆
#41 [イリア]
さっきの変な感じに
少し焦りながらも
私は目覚めた猫に話しかける。
タッ
「…あ」
猫は私の腕から飛び出し、
洞穴の向こう側で私を見据えた。
:09/03/22 15:20 :W61P :☆☆☆
#42 [イリア]
「…何よー
そんなに威嚇(イカク)しなくても…
私は一応、
あんたを助けたのにさーって
まぁ猫に言っても仕方ないか…」
独り言。
そろそろ誰かと
会話がしたい頃だけど
生憎(アイニク)そんな相手はいない。
あ、でも猫に言ってるから
ふたりごと?
:09/03/22 15:21 :W61P :☆☆☆
#43 [イリア]
ザ―…
「雨だねー…」
一応、少し遠くで私を威嚇する
黒猫さんに話しかけてみる。
:09/03/22 15:23 :W61P :☆☆☆
#44 [イリア]
:09/03/22 15:23 :W61P :☆☆☆
#45 [イリア]
ピクッ
猫の私を見る瞳(メ)が変わる。
何も映さなかった漆黒の瞳に、
私が映った。
:09/03/22 15:24 :W61P :☆☆☆
#46 [イリア]
少し私を見つめたあと、
ゆっくりと一歩
猫は私のほうに足を進めた。
「どうしたの…?」
その時
:09/03/22 15:24 :W61P :☆☆☆
#47 [イリア]
ピカッ
「キャッ!」
雷が光った。
すぐに大きな音がする。
「…びっくりしたぁ…
落ちたよね、近そうだな…」
:09/03/22 15:25 :W61P :☆☆☆
#48 [イリア]
すると猫は私からまた体を遠ざけ、
タッ と洞穴の外に駆け出す。
「…え?ちょっ!危ないよ!
雨降ってるから!雷も落ちたし!
戻りなよーッ!!」
すぐに猫の姿は視界から消え、
私の声だけ虚(ムナ)しく響いた。
:09/03/22 15:26 :W61P :☆☆☆
#49 [イリア]
:09/03/22 15:26 :W61P :☆☆☆
#50 [イリア]
数時間経っただろうか。
雨は上がり、
空は元の曇天に戻った。
「…そろそろ私も行くかぁ」
:09/03/22 15:31 :W61P :☆☆☆
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