よすが
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#300 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男は正気を取り戻す。我に返ってあたしを抱きしめた。
その時にはもう、男にとってあたしやハナは娘ではなく、衝動的に掠ってしまった見知らぬ女の子なのだ。

自分がした恐ろしい行いを詫び、コンクリートの箱に連れ帰って傷を手当てされた。
包帯を巻いたり消毒液を塗ったりしながら、男は自分に起きた不幸や誘拐の理由を語る。


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⏰:08/05/05 00:12 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#301 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
親子を装った会話・暴行・謝罪と手当て。
この一連の波が、日によってあたしかハナのどちらかに必ず訪れる。
あたしもハナも同じように怯えていた。真っ暗な闇の中で時間もわからないけれど、毎日昼が来るのを恨めしく思っていた。

けれど必ずどちらか一人はひどい目に合うのだと理解してから、ハナはあたしを庇い、食事の後自らドアの前に立ち男を待つようになった。
あたしはそれを止められなかった。
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⏰:08/05/05 00:13 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#302 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
違う。

止めなかった。


あたしは自分が大事だったんだ。

ハナがどんな思いでそこに立っているかなんて考えもせず、あたしはただ彼女の背中を罪悪感のこもった瞳で見つめるだけだった。
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⏰:08/05/05 00:13 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#303 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
正気を取り戻した時の男が言うには、あたしとハナは彼の娘に似ているらしかった。年齢も同じくらいで、髪もちょうど同じ長さだった。
特にハナは、雰囲気や仕草がとてもよく似ていると男は悲しげに笑っていた。

ハナはそれを知った上で、毎回、自ら狂った男の手を握りドアを閉めた。あたしに笑いかけながら。

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⏰:08/05/05 23:27 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#304 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは心のどこかでそれを喜んでいたのだ。ハナがあたしの身代わりになって暴行を受けることを、ラッキーだと思っていたのだ。

――あの時ハナを止めていれば……こんな結果にならなかったのかな……?


そしてこの事件はあたしとハナにとって最悪の終わりを迎える。
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⏰:08/05/05 23:28 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#305 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男の狂った行動に何度も何度も付き合わされ、あたしたちは憔悴し切っていた。
コンクリートの中の闇と寒さ、男の加減を知らない暴力、そして終わりの見えない不安は、あたしを絶望させるのには充分過ぎるほどだった。

四、五日目までは、いつか解放されるだろうと思っていた。
男が正気を取り戻した時の優しさは、あたしたち二人を両親の元に返してくれるかもしれないと思わせた。
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⏰:08/05/05 23:28 📱:SH903i 🆔:Nqg5T9kk


#306 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかし一週間を過ぎた頃から、男は「もう戻れない」、「死ぬしかない」、そんな言葉をぼそっと独り言のように呟くことが多くなっていた。
男は正気と狂気の間を行ったり来たりしているかに見えていたけれど、その頃にはもう完全に、狂気に飲み込まれていたのだろう。
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⏰:08/05/06 22:29 📱:SH903i 🆔:1bdF9NU6


#307 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
だんだんおかしくなっていく男の様子に、あたしはさらに絶望を感じ始める。
男の独り言がじわりじわりと洗脳のようにあたしの意識に染み込んで、「もう戻れない」、「死ぬしかない」、いつの間にかあたしもそればかり呟くようになっていた。
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⏰:08/05/06 22:30 📱:SH903i 🆔:1bdF9NU6


#308 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナはその頃、あたしや男のように絶望するでもなく常に何か考え事をしているようだった。
あたしは自分のことしか考えられない状態でそんなハナの様子など気にも留めていなかったが、ある雨の日、彼女が日々何を考えていたのかが明らかになる。

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⏰:08/05/06 22:30 📱:SH903i 🆔:1bdF9NU6


#309 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その日はあたしたちが誘拐されてから初めて雨が降った。雨足は強く、コンクリートに打ち付けられる雨粒の音がうるさかった。
箱の中はジメジメとして、寒さと合わさりあたしたちを一層凍えさせた。
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⏰:08/05/08 00:18 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#310 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナは懐中電灯を床に立てて天井を照らしたまま、体育座りした体に毛布を巻き付けて黙り込んでいる。
その頃にはあたしたちの体は傷と痣で埋め尽くされていた。ハナは痛みを口に出さないので解らないけれど、あたしは二日前から右脇腹に激しい痛みを感じていた。
あたしはハナの顔の痣をぼーっと見ながら、毛布に包まって寝転んでいた。
どうしようもないこの状況のせいで、あたしの頭は空っぽだった。何かを考える気力さえ失っていたのだ。
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⏰:08/05/08 00:19 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#311 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
時間は多分朝九時か十時ぐらいだったと思う。
雨音が室内に響く中、ハナが意を決したように口を開いた。

「家に帰りたい?」

こちらを見ることもなく彼女は突然問い掛けた。
あたしは彼女の顔を見つめたまま答えた。

「帰りたいよ」
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⏰:08/05/08 00:19 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#312 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう言ったものの、それは絶対に不可能なことだと思い込んでいた。
あたしにはもう希望のかけらも無かったのだから。

「ユキ、お母さんとお父さんを安心させてあげてね。あたしは帰れないけど、ユキ一人なら逃げられるから」

――逃げられる? まさか。無理に決まってる。

あたしはユキの言葉を胸中で否定してから耳を疑った。
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⏰:08/05/08 00:20 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#313 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「あたし一人……? それどういう意味? ハナは帰れないってどういう意味!?」

ハナの腕を掴んで問い質(ただ)す。自分の体に巻きつけていた毛布が滑り落ちたのにも気付かなかった。
ハナが自分の腕を掴むあたしの手を優しく外し、毛布をかけてくれる。
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⏰:08/05/08 20:45 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#314 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「あたしが逃げようとしたらあの人多分追いかけて来ると思う。でもユキだけなら大丈夫。あたしが何とかするから」

「何とかって……何とかってなによ!? ハナだけ置いていける訳ないじゃない! っつう……」

大声を出すと右脇腹に刺されたような痛みを感じて床に倒れ込んだ。

「ユキ、わかってるでしょ? あたしよりユキの方が怪我酷いの。あの人、あたしには本気で殴れないんだよ。
……このままだとユキが死んじゃう」
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⏰:08/05/08 20:46 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#315 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナの表情に悲しみと戸惑いが見えた。
薄々は気付いていた。ハナの傷があまり多くないこと。
やっぱりハナの方が亡くなった娘に似ているから……。

あたしは手をついて体を起こした。

「でも……やっぱりハナを置いていけないよ。あたしが逃げたってわかったら、ハナ……何されるかわからないじゃない」
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⏰:08/05/08 20:47 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#316 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「お母さんとお父さんが心配なんだよ。ユキが帰れば二人も少しは安心すると思う」

ハナは頑として譲らなかった。
でも、でも、とあたしは反論したけれどハナの意志は強かった。

結局、あたしだけが逃げると二人で決めた。
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⏰:08/05/08 20:47 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#317 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

――あの時どうにかしてハナを説得出来ていれば……あたしが逃げないと言い張れば……

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⏰:08/05/08 20:48 📱:SH903i 🆔:hl2laBBQ


#318 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
どうやってあたしを逃がすつもりなのかハナに問うと、ハナはゆっくりと説明を始めた。
懐中電灯を二つ点し、あたしたちは慎重に作戦を練る。
成功するかどうかは賭けだ。男の反応に全てがかかっていた。

ハナは必ず成功すると信じていたから、あたしもハナを信じることにした。

――今日、男が来た時が勝負だ。


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⏰:08/05/10 01:36 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#319 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
鉄製のドアにガチャガチャと鎖のぶつかる音がして、それが聞こえなくなると暗闇の中に一筋光が射した。

――来た。

ドアに繋がれていた鎖とスーパーの袋を手に持って、男が部屋に入ってくる。いつもの光景だ。
無表情な男は惣菜やパンが詰められた袋を床にドサッと置いてその隣に鎖を投げた。
金属とコンクリートがぶつかり合う嫌な音が響いて、あたしは体を強張らせた。ひどく緊張している。
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⏰:08/05/10 01:37 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#320 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男が部屋を出てドアを閉めたのを確認してハナがこちらを向いた。大丈夫か、とその目が問い掛けていた。
あたしはハナの目を見つめたまま頷く。

――大丈夫。


袋の中から昼に食べる分だけを取り出し、残りは夜に取っておく。今日の夜にはあたしはいないけれど。
そう思うとまた少し不安になった。

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⏰:08/05/10 01:37 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#321 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
食事を終え、あたしはドアの前に立つ。ハナは部屋の隅で毛布に包まっていた。
緊張と不安が増してきて、心臓の音が聞こえる。自分の息遣いが荒いのがわかる。
目線は丸いドアノブに集中していた。

銀色のノブがゆっくりと回った。あたしは瞬時に振り向いてハナを見たけれど、彼女の顔は毛布に埋(うず)められていた。
それだけ確認するとすぐにドアに目線を戻す。向こう側のノブにかけられた男の腕が見えた。
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⏰:08/05/10 23:39 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#322 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――上手くいきますように……。

そう願いながら、光のある外へと足を踏み出す。雨は止んでいた。
男が優しく微笑んであたしを見下ろしていた。自然とその大きな手を握る。
繋いだ手から緊張が伝わらないだろうか、そう心配になったけれど男はいつも通りだった。
あたしたちはいつものコースに向けて歩き出した。

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⏰:08/05/10 23:40 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#323 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
はずだった。
けれど何時間か歩いた後、男はあたしの手を放した。いつもなら絶対に逃がさないあたしの手を、その日は何故か自由にさせた。

「パパちょっと疲れたから、向こうで遊んでおいで」

男は体を屈め目線をあたしに合わせてそう言った。その顔は本当に疲れているように見えた。
やつれているし、目の下のクマが濃い。
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⏰:08/05/10 23:41 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#324 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしとハナの企みがバレているのだろうかと不安になったけれど、男の目に怒りや憎しみは見えなかった。
むしろ寂しそうな、悲しそうな感じがして、あたしは男が可哀相に思えて言葉をかけた。

「パパ? ……大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。行っておいで……」
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⏰:08/05/10 23:41 📱:SH903i 🆔:c20X8gQs


#325 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
男はとうとう木の根に腰をおろして、頭を抱えてしまった。
あたしはこのまま逃げてしまおうか、そう考えたけれど、ハナに何も言わずここから去るのは嫌だった。

――戻ってこよう。

うずくまる男から視線を外して、あたしは自由になった体で歩き出した。

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⏰:08/05/11 22:15 📱:SH903i 🆔:1rttUfes


#326 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
一人で森を歩けるのが嬉しくて、あたしは随分遠くまで来てしまっていたらしい。
男が来てあたしに声をかけた。

『ユウコ、もう暗くなるよ』


――あぁ、あの夢はこの時だ。最後の日だったんだ。

指輪が光る手をとり、あたしたちはコンクリートの箱に帰ろうと山道を歩く。

木の向こうにコンクリートが見えてもう少しで着く、というところで男が豹変した。
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⏰:08/05/11 22:15 📱:SH903i 🆔:1rttUfes


#327 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
頬を平手打ち――痛い――また頬を――耳がちぎれそう――引っ張らないで!――押し倒され――頭を地面に打った――割れそう――背中に激痛――目に液体が――血!――お腹――肩――腿――頭――痛――止まらない――脇腹――嫌な音――もうやめて!


――意識を失いそうだった。
あたしはやはり謝り続けていたけれど男の手はいつまでたっても止まることなく、あたしは、死を覚悟した。
その時。

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⏰:08/05/11 22:16 📱:SH903i 🆔:1rttUfes


#328 [蜜月◆oycAM.aIfI]
「パパ!」


ハナの……声だ。


「パパ、やめて!」


あたしの体に降り注いでいた痛みが止み、男が振り向いた気配を感じた。血が目に膜を張ってよく見えない。

⏰:08/05/12 22:14 📱:SH903i 🆔:58D7rq3M


#329 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ユウコ……」

「パパ、やめて。あたしの大事な友達なの」

ハナの声が少し震えている。でもその言葉ははっきりとあたしの耳に届いた。

――やっと……きた。

これがあたしたちの考えた方法だった。
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⏰:08/05/12 22:16 📱:SH903i 🆔:58D7rq3M


#330 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「友達?」

「そう、あたしの、……ユウコの友達。だからやめて」

地面に倒されたまま、あたしは目だけを動かしてハナの姿を探した。
世界が赤い。流れてくる血が眼球にまとわりついて視界が赤くぼやけている。
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⏰:08/05/12 22:17 📱:SH903i 🆔:58D7rq3M


#331 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「友達……ユウコの……」

「そうだよ、もう帰らないといけないの」

涙が血を洗い、少しずつ周りの様子が見えてくる。
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⏰:08/05/13 21:48 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#332 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
暮れ始めた薄赤い空の下に男が立っていて、その顔は向こう側に向けられている。
男の視線の先には、ハナが立っていた。拳を握りしめ、強張った表情でじっと男を見つめている。
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⏰:08/05/13 21:48 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#333 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは体を支えようと腕に力を入れた。
ズキン、と右肩が痛む。
それでも歯を食いしばり、なんとか上半身を起こした。
まだハナと男は見つめ合っている。
あたしの荒い呼吸だけが、静かな森の中に響いていた。
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⏰:08/05/13 21:49 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#334 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……友達?」

男が同じ言葉を繰り返す。今度はあたしの方をチラリと見た。

「そう、友達」

ハナは男から目を離さない。ほとんど睨みつけるようにしながら震える声で呟いた。
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⏰:08/05/13 21:50 📱:SH903i 🆔:ih.RNmQk


#335 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「帰らなきゃいけない……?」

焦点の合わない目で男はあたしを見る。
あたしは祈るような気持ちで男を見上げていた。

――お願い……お願い!

あたしの呼吸が冷たい空気に響く。

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⏰:08/05/14 01:38 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#336 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……そうか。じゃあ近くまで送ってあげなさい、ユウコ」

男の目があたしからハナに移る。
それを追ってあたしもハナの方を見遣ったけれど、何だか視界がぼやけている。でも赤くはない。
安堵からか、痛みからか。意識が遠のく。
体を支えていた腕の力が抜けていく。
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⏰:08/05/14 01:39 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#337 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
倒れる――その瞬間、細い腕があたしの体を抱いた。
ハナだ。

「帰ろう?」

――うん。

あたしは小さく頷いた。
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⏰:08/05/14 01:40 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#338 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナの細く白い腕があたしの体を持ち上げる。
力を入れているのに、入らない。自分の体じゃないように感じる。
ハナの腕の力だけであたしは立ち上がった。

「早く帰ってくるんだよ」

男の声がした。感情を失ってしまったように抑揚の無い声が。
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⏰:08/05/14 01:41 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#339 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「必ず戻るから……待ってて、パパ」

そう言ったハナの声に、男への憐れみを感じた。

ハナの肩に腕を回し体重を乗せ、足を引きずるようにしてあたしは進む。
あの忌ま忌ましいコンクリートの箱から離れられる。男の呪縛から逃れられる。
その想いがあたしの足を動かしていた。
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⏰:08/05/14 01:41 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#340 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
コンクリートの箱に背を向け、あたしたちはゆっくりと土の道を歩む。
はっきりしない意識の中で、木々の向こうから背中に虚しい視線を感じていた。


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⏰:08/05/14 01:42 📱:SH903i 🆔:GAsvctc6


#341 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
途中何度か転びながらも、あたしたちは歩みを止めなかった。
コンクリートの箱から離れるに連れて、後ろから男が追ってくるんじゃないかという恐怖に襲われた。

覚束ない足取りで歩くあたしの意識はかなり前から朦朧とし始めていて、体を密着させているハナの温かみだけが頼りだ。
頭の中は空っぽで、あたしはただ足を動かすことだけに集中していた。
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⏰:08/05/15 00:13 📱:SH903i 🆔:vyDNGB6.


#342 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
気がつけば頭の上に覆いかぶさる木の葉はなく、一面オレンジの空が拡がっていた。
歩みを止めてしまうと立っていることが辛くなってきて、あたしはハナの肩から滑り落ちた。

「ユキ!」
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⏰:08/05/15 00:14 📱:SH903i 🆔:vyDNGB6.


#343 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ユキがあたしの腕を掴んで、そのままゆっくり降ろしてくれる。
ここは、二週間前に連れて来られた駐車場だ。
あたしは黒い地面に体重を預け、空を見上げていた。
休まず歩いてきたせいかあたしの呼吸はさらに早くなり、体中が脈打っている。

「ハナ……ありがと……」
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⏰:08/05/15 00:14 📱:SH903i 🆔:vyDNGB6.


#344 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ハナ……ありがと……」

呼吸の隙間に呟いた。

「ユキ、大丈夫? しっかりして、もう少し下まで行かないと――」

「ちょっとだけ……休憩……させて……」

ハナの言葉を遮ってそう言うと、彼女は「うん」とだけ答えてあたしの左手を握りしめた。

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⏰:08/05/16 03:36 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#345 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
冷たい北風があたしの頬を撫でる。頭から流れていた血は止まったけれど、涙と混じって顔中にこびりついていた。
脇腹と左腕が激しい痛みとともに熱を帯びて痺れている。
けれどそんな体の状態に反してあたしの気持ちは晴々としていた。
たった一つの悲しみを除いては。

「ねぇ……ハナ」
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⏰:08/05/16 03:36 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#346 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「なあに?」

「一緒に……帰れない……かな? ……このまま……逃げられないかな……?」

声を出すのも辛いけれど、どうしてもハナを置き去りにしたくなかった。
あたしの言葉を聞いたハナは悲しげに目を伏せて黙り込んでしまった。
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⏰:08/05/16 03:37 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#347 [蜜月◆oycAM.aIfI]


>>344
コピペミスです
レス頭の

「ハナ……ありがと……」

↑この部分スルーして下さい(;´д`)

⏰:08/05/16 04:35 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#348 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……ハナは……帰りたくない……?」

弾かれたように彼女はブンブンと首を横に振る。

「じゃ……帰ろう? ……一緒に……お父さんと……お母さんのとこに……」

俯いたハナの目に迷いが浮かぶ。けれどすぐには頷いてくれなかった。
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⏰:08/05/16 23:12 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#349 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
下から見上げたハナの頭の向こうに広がる空は、オレンジと紺色が混じり合ってところどころ紫色を滲ませていた。
あたしはどんどん増してくる痛みに耐えながら、ハナの答えを待つ。

沈黙が寒さを募らせる。
あたしが口を開こうとした時、一瞬早くハナが言葉を発した。

「あたし帰らない」
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⏰:08/05/16 23:12 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#350 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナの苦しげな表情があたしにのしかかる。
頭の中に疑問が渦巻いた。
あたしはそれを解くために重い口を開く。

「……どうして……ねぇ? ……今なら……帰れる……のに……ハナ……お父さんと……お母さん……安心……させたいんでしょ……?」

「あの人が……」

――あの人?
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⏰:08/05/16 23:13 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#351 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「あたしを必要としてるから」

ハナのいうあの人、それはあの男のこととしか考えられない。
必要としてる? ただ殴ったり蹴ったりするだけじゃないの?

依然として苦しげな表情をしたハナの向こうの空はオレンジ色を失いつつある。
あたしが険しい顔をしていたからか、ハナは言葉を続けた。

「うちの家族は……幸せだよね? ユキも幸せだったよね?」
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⏰:08/05/16 23:14 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#352 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナが何を言いたいのか解らず、あたしは戸惑いを隠せなかった。何も言えずにハナの顔を見つめる。

すると、ハナはふっと表情を柔らげてあたしに微笑みかけた。

「あたしは……幸せだって思い込んでただけみたい。ユキとかお父さんお母さんを嫌いなんじゃないよ、大好きなんだけど……大好きだから……」
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⏰:08/05/16 23:15 📱:SH903i 🆔:kSaLjsmM


#353 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
微笑んだまま、ハナの目に涙が溢れ出す。一筋流れた涙が、ポツリ、あたしの頬を濡らした。

「……ハナ……?」

「辛かったの。お父さんとお母さんがユキを可愛がるのも。ユキがお父さんとお母さんに甘えるのも。あたしには無かったから」
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⏰:08/05/17 23:05 📱:SH903i 🆔:r2FaV5hA


#354 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナの顔にはさっきまでと同じ微笑みが浮かんでいたけれど、そこには苦しみが混じって見えた。
優しい顔。だけど、恐ろしくもある。

ハナにそんな苦しみがあったなんて、考えもしなかった。
あたしは我が儘な子どもだったと思う。父と母はいつもそれを許してくれた。
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⏰:08/05/17 23:06 📱:SH903i 🆔:r2FaV5hA


#355 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
でもハナはいつもいい子だった。両親の言うことをよく聞く真面目な子どもだった。
おもちゃが欲しくてあたしが駄々をこねても、ハナは何も言わずに下を向いていた。
結局父や母が折れておもちゃを買ってくれることになり、ハナに何がいいかと聞いてもハナは首を横に降って「あたし、いらない」と言うのだった。
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⏰:08/05/17 23:07 📱:SH903i 🆔:r2FaV5hA


#356 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしはそれがハナだと思っていた。普段から真面目で親に迷惑をかけることのない、しっかりした妹だと。そう思っていた。

それにあたしはハナが羨ましかった。あたしより成績もよかったし、親戚が集まった時なんかに褒められるのは決まってハナだったから。
父や母が親戚からハナを褒められて嬉しそうにしているのがすごく羨ましかった。
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⏰:08/05/17 23:08 📱:SH903i 🆔:r2FaV5hA


#357 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
でもハナは、親戚から褒められることよりも父と母の愛情を欲していたのだ。
両親がハナよりもあたしに多くの愛を注いでいたとは思わない。

けれどハナにはそう思えてしまったのか。
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⏰:08/05/18 22:09 📱:SH903i 🆔:eMAjbdcw


#358 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「家族四人でいても、真ん中にはいつもユキがいた。あたしが何か言っても、すぐユキの話になっちゃうでしょ?
お父さんもお母さんもユキの話に夢中だったしあたしの話なんていつも聞いてくれなかった。
あたしがテストで毎回百点とるより、ユキがとった一回の八十点の方がお母さんは喜んでた」

ハナの微笑みは消えない。でもあたしの顔は崩れる一方だった。
呼吸はさらに激しくなり、胸の上下運動は速度を増していく。
.

⏰:08/05/18 22:10 📱:SH903i 🆔:eMAjbdcw


#359 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「あの人にここへ連れてこられるまで気付かなかったの……あたしはあの家にいても独りぼっちだった。誰も必要としてくれなかった」

――違う、そんなことない!

そう言おうとしたけどあたしの声は出なかった。寒さと痛みで唇が動かない。
.

⏰:08/05/19 23:06 📱:SH903i 🆔:t3uEDHYM


#360 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……でもあの人は、あたしのことだけ考えてくれる。あたしを必要としてくれてる。
あたしがいなくなっちゃうとあの人死んじゃいそうなの」

辺りは真っ暗で、駐車場を照らす街灯が遠くにいくつか見える。
その光はここまで届かず、ハナの表情はよくわからなかった。
でも一定の間隔を置いてあたしの頬に落ちる雫が、ハナが泣いているということを教えてくれる。
.

⏰:08/05/19 23:06 📱:SH903i 🆔:t3uEDHYM


#361 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……ハ……ナ……」

あたしの喉がやっと音を出した。

「……ハナ……お父……さんも……お母さん……も……あたしも……ハナ……の……こと……大好き……だよ……」

「わかってる」

暗闇の中に、今までの微笑みとは違う、ニッコリ笑った顔が見えた気がした。
.

⏰:08/05/19 23:07 📱:SH903i 🆔:t3uEDHYM


#362 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「でもね、あたし、あの人のこと心配で仕方ないの……ごめんね、ユキ。……あたしのこと、許してね」

何も、言えなかった。
顔の温度が高まるのを感じ、あたしの目にも涙が溢れ出す。
ハナの涙とあたしの涙が頬の上で同化する。
.

⏰:08/05/20 23:34 📱:SH903i 🆔:p18Ru3ZA


#363 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしの体は泣くことでさらに体力を失い、息は乱れ、喉が鳴る。目を開くのも億劫になり、耳の中には自分の呼吸の音だけが響く。
体の表面に澱んだ液体で膜を張られたように全ての感覚が鈍る。

「……、……。……」

ハナの声が聞こえる、けれどくぐもって何を言ってるかわからない。あたしの耳は息の音しかとらえない。
.

⏰:08/05/20 23:35 📱:SH903i 🆔:p18Ru3ZA


#364 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
急に、あたしの体に力が加わる。
ハナがあたしを起こそうとしているようだ。
あたしは抗うでもなく力を入れるでもなく、されるがままだった。
ハナの肩に手を回され背中を抱えられ、再び歩く体勢に戻る。
ハナが歩き出すと、引きずられるようにしてあたしの足は動く。あたしの意思じゃない、ただ体重を支えようとする反射運動だけで進んでゆく。
.

⏰:08/05/20 23:36 📱:SH903i 🆔:p18Ru3ZA


#365 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
駐車場からはふもとに繋がる車道と頂上に続く歩道が下と上に向かって延びていた。
薄く開いた瞼の間からは、歩道らしき景色が入り込んでくる。
どうしてふもとじゃなく頂上に向かうのか疑問に思ったけれど、口に出して尋ねるのも辛いほどあたしの体は弱っていた。
.

⏰:08/05/21 18:17 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#366 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
緩やかな登りの細い道。靴の裏に伝わる感触は、コンクリートのそれではなく土の柔らかさがあった。
道の左側は岩肌が剥き出しの崖で、右側は傾斜のついた茂み。
.

⏰:08/05/21 18:17 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#367 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナに体を預けてあたしは歩く。が、歩いているという意識は薄かった。ひとりでに動く二本の足が体を運ぶ。
だらんと首を下げて進むあたしの足元は、明るくなり、暗くなり、明るくなる。
頭を少し上げてみると細い道の脇に街灯がひとつあり、三十歩程先にもひとつ、そのまた先にもひとつ。
それが無ければあたしたちは脇の茂みの中に落ちてしまっていただろう。

.

⏰:08/05/21 18:18 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#368 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしの喉はゼェゼェと音を立て、ハナの方からも微かだけれどハァハァと聞こえてくる。
黙々と歩き続けた。
目的地はどこ? いつまで歩けばいい?
そんなあたしの気持ちに気付かず、ハナは迷いなく進んでゆく。

.

⏰:08/05/21 18:19 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#369 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
痛いくらいの寒さが体を震えさせる。すでに指先は感覚を失っていた。
未だ登り坂の終わりは見えず、あたしたちは街灯の明かりを頼りに夜の山道をひたすら進んでいた。
細かった道幅はさらに狭まり、今ではあたしとハナが並んで歩くのがやっとだ。
ハナは茂み側を慎重に、しかし多少焦りながら歩いているようだった。
.

⏰:08/05/21 19:57 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#370 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けれどある場所で、ハナの歩みが止まった。
ここは道の途中だろうか?
少し先で街灯が白い光を浮かべている。
再び崩れ落ちるあたしの体を、ハナは同じようにゆっくりと寝かせてくれた。
体は限界に近づいていて、今すぐにでも眠ってしまいそうだ。
ダランと転がるあたしの横にハナがしゃがみ込んで、手を握りしめられる。

「……ハナ……」
.

⏰:08/05/21 19:58 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#371 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「お別れだね」

あたしの呼吸の間から、小さくくぐもったハナの声が聞き取れた。

「ヤダ……一緒じゃないと……」

「ごめんね、ユキ。あたしは帰れない」

「……嫌だ……!」
.

⏰:08/05/21 19:59 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#372 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
胸が苦しくなって涙が溢れてくる。
ハナに伝えたいことはたくさんあるのに、声にならない。

「……ハナ……行かないで……」

「ユキ、よく聞いてね」
.

⏰:08/05/21 19:59 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#373 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしの手を握るユキの力が強まった気がした。
聞こえてくる音が水中にいるように感じさせる。
少し上にあるハナの顔を見つめて小さく頷いた。

「あたしとユキはここで一旦お別れなの」

その言葉に、また涙が溢れる。
けれどあたしは口をきつく結んでまた頷く。
もうこれで最後かもしれないハナの声を、聞き逃す訳には行かなかった。
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⏰:08/05/21 20:00 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#374 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ユキはきっと助かる。誰か大人の人が見つけてくれて、病院に運んでくれる」

一言も聞き漏らさないように、無心で耳を傾ける。
涙をしゃくり上げる声を押し殺し、ハナの声だけに意識を集中する。

「助かって、目が覚めたら、あたしのことは忘れて。絶対に忘れてね」
.

⏰:08/05/21 20:01 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#375 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
催眠にかけられたように、あたしは空っぽの頭で何を考えることもなく、ただハナの言葉に頷く。
彼女の声があたしの脳を直接震わせる。

「お父さんとお母さんのことは忘れないで、二人を心配させちゃダメだよ? あたしのことだけ、全部忘れて」

忘れる。ハナを、忘れる。
.

⏰:08/05/21 20:02 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#376 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「あたしは一緒に帰れないけど、ユキはあの町で、みんなと一緒に生きてね、あたしの分まで生きて……いっぱい生きてね」

生きる。ハナの分も、生きる。

「それでもし、この先あたしのことを思い出すことがあったら、」


……あったら?

.

⏰:08/05/21 20:04 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#377 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……その時は、迎えに来て。あたしはいつまでも待ってるから。何年先でもあたしはあそこで、ユキを待ってるから」


その時、静寂に包まれていた森の中、冬の冷たい空気を震わせて大きな爆発音が響いた。
と同時に真っ黒だった空が一瞬にして真っ白に光る。いや、黄、赤、青、何色もの光が混じり合った明るい空……。
.

⏰:08/05/21 20:04 📱:SH903i 🆔:5BNBitiM


#378 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
花火。
それに続いて、いくつもの光の花が空に舞う。体の芯を揺さぶる低い爆発音とともに。
あたしの薄く開いた目に、無限に散らばる光の花びらが舞い込んできた。

花火が弾ける度に、辺りの景色は明るく照らされた。
いきなり現れた花火に驚き目を奪われているハナの横顔も、鮮やかに染められる。
あたしは赤や青の光をうけて輝くハナの顔を見ていた。
.

⏰:08/05/22 00:09 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#379 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「お祭りかな……」

音と光の洪水の中、見つめていた顔がぽつりと呟く。
あたしの頭は体に響く振動と眩しい閃光で朦朧とし始めていた。
ハナの顔がこちらに向けられたような気がする。
.

⏰:08/05/22 00:10 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#380 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「忘れてね、あたしを。でも、あたしはいつでも待ってるから」

再びあたしの体に力が加わる。
けれどあたしはその直後、全ての感覚を断ち切って闇の世界へと旅立った。

.

⏰:08/05/22 00:11 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#381 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナを忘れる。あたしは生きる。


その言葉だけが頭をぐるぐると巡り、あたしの意識は完全に途絶えた。
けれどハナとの最後の会話は、あたしの中にしっかりと刻み込まれていた。

.

⏰:08/05/22 00:12 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#382 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

――ハナ……忘れても……忘れないよ……



.

⏰:08/05/22 00:12 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#383 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ(・ω・*)

プロローグ
>>4

―T―
>>5-46

―U―
>>47-118

―V―
>>119-141

―W―
>>142-220

―X―
>>222-267

―Y―
>>272-382

⏰:08/05/22 00:18 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#384 [蜜月◆oycAM.aIfI]
まとめ(・ω・*)

プロローグ
>>4

―T―
>>5-46

―U―
>>47-118

―V―
>>119-141

―W―
>>142-220

―X―
>>222-267

―Y―
>>272-382

⏰:08/05/22 00:18 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#385 [蜜月◆oycAM.aIfI]
ミスりまくりごめんなさいorz

※まとめ
プロローグ
>>4
―T―
>>5-46
―U―
>>47-118
―V―
>>119-141

⏰:08/05/22 00:21 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#386 [蜜月◆oycAM.aIfI]

※まとめ続き
―W―
>>142-220
―X―
>>222-267
―Y―
>>272-382

⏰:08/05/22 00:23 📱:SH903i 🆔:D09uoF5Q


#387 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

―Z―


気がつくと、あたしはまた眠ってしまっていた。
ゆっくりと目覚めていく頭に合わせてゆっくりと瞼を開けると、白い光の筋が天井を丸く照らしていた。
それ以外に光は無く、黒い天井に丸く開いた白い穴はさしずめ闇夜に浮かぶ満月のようだ。
.

⏰:08/05/26 01:39 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#388 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
首を動かして光の元へと視線を落とすと、寝かされているあたしの右側に懐中電灯らしきものが立てられていて、そのすぐ横にはサトルが座り込んでいた。
あたしが目覚めたのに気付いて、光に薄く照らされたサトルの横顔が笑顔に変わった。
子犬みたいな、無邪気な笑顔。

「あぁ、よかったぁ! ユキ、大丈夫? 体辛くない? すごい熱だったんだよー! あ、ちょっとみせてね」
.

⏰:08/05/26 01:40 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#389 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
まだ頭がぼーっとしていて、サトルのたたみかけるような問いかけに一つも答えられないままあたしは口をパクパクさせていた。
そんなことはお構いなしにサトルの手の平があたしの額にピタッとくっつく。
冷たくて気持ちいい。
と思ったらすぐに離れていった。

「まだちょっと熱いけど、さっきよりは下がったみたいだね。よかった! あ、お腹空いてる? なんか食べる?」
.

⏰:08/05/26 01:40 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#390 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ん……大丈夫、ありがと」

やっと返事できた、と思いながらあたしは体を起こした。
闇に慣れてきた目で部屋の中をぐるりと見回してみて気付いた。
何か物がたくさん置かれて雰囲気は変わっているけれど、間違いない、ここはあたしとハナが監禁されていたコンクリートの箱の中だ。
辺りに置かれているものはよく見えないけれど生活用品――ティッシュペーパーや小さな鍋、ごみ箱などのようだ。ここで人が生活している気配がする。
それに気付いてしまったあたしは心が大きく揺れた。
.

⏰:08/05/26 01:41 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#391 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
――あの犯人の男が今もここで……?


あたしの横にいたサトルが自分のリュックの中をがさごそとかきまわして何かを取り出すと、あたしの手をとって小さな包みを握らせた。

「レモンキャンディ、ユキの好きなやつだよ!」

――サトル……。
.

⏰:08/05/26 01:42 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#392 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
昔から好きだったレモンキャンディ。どれでもいい訳じゃなくて、あたしは袋に特徴のある顔をした大きなレモンが描かれたものが一番好きなのだ。
ほっとした。
サトルがついていてくれるならどんな状況でも大丈夫だと思える。

あたしはサトルに謝らなければいけないことがあったのを思い出した。
.

⏰:08/05/26 01:42 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#393 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「サトル、あたし……忘れててごめんね」

手にレモンキャンディを握りしめたままあたしはサトルの瞳を見つめた。
あたしは物心つく前から同じ時間を過ごした友達を記憶から消していたのだ。
あたしがサトルの立場なら……ショックを受けるに違いない。

「思い出したんだ?」
.

⏰:08/05/26 01:44 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#394 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「思い出した。……ずっと近くにいてくれたのに、あたし……本当にごめん」

あたしは頭を下げた。
どうしてサトルは自分のことを忘れてしまったあたしの近くにいてくれたのかはわからない。
でも十年もそばにいてくれたのにちっとも思い出してあげられなかったことが申し訳無かった。

「いいんだ、僕のことは。ユキが笑っててくれたら、それでいいんだ」
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⏰:08/05/26 01:45 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#395 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう言いながらあたしの顔を上げさせたサトルは、やっぱり笑顔だった。
いつもの笑顔。まぶしく輝く、とびっきりの笑顔。

「飴、食べなよ」
.

⏰:08/05/26 01:46 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#396 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
優しく促されて、あたしはコクリと頷くと包みを破ってレモンキャンディを口に含ませた。
舌の上で転がすと、レモンの酸味と飴の甘味が口いっぱいに広がる。
口の奥の方がキュッと縮こまる感じがした。これが大好きなのだ。

サトルが穏やかな表情で見守ってくれていたので、あたしは小さく笑い声を零してしまった。

「おいしいよ」
.

⏰:08/05/26 01:47 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#397 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ほんとに好きだねぇ。持ってきてよかった!」

へへ、と笑ったサトルにあたしは心の底から感謝した。口では言い表せないくらいだった。

「ありがと、サトル!」

と、気持ちが抑え切れずにあたしは自然とサトルの体に抱きついていた。
サトルは驚いたような短い声をあげたけれど、嫌がることもなくあたしの肩をポンポンと優しく叩いてくれる。
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⏰:08/05/26 01:47 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#398 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

しばらくそのままの状態であたしたちは抱き合っていた。
あたしはサトルに恋愛感情を持ったことはないし、この先もないと思う。それはサトルの方でも同じだろう。
だからといってサトルに男としての魅力がない訳ではなくて、むしろサトルはモテる方なんだと思うんだけど、今やあたしにとってサトルはほとんど家族みたいなものなのだ。
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⏰:08/05/26 01:48 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#399 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
だからこうやって抱き合っていてもあたしは安心しか感じていなかった。
今の状況はあたしには謎だらけだけど、サトルがいるからパニックにならずにすんでいるのだ。
あたしは気持ちが落ち着くとサトルから体を離してこう切り出した。

「あたしたち、どうしてここにいるの? サトルが勝手に入ったんじゃないよねぇ?」
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⏰:08/05/26 01:49 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#400 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは出来るだけ重くならないようにサラっと聞いたつもりだったけど、少し声が震えてしまったかもしれない。

「うーん……」

サトルは何か考えているように視線を漂わせると、急に立ち上がってこう宣言した。

「自分の目で見た方がいい!」
.

⏰:08/05/26 01:49 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#401 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
自信満々に言い切るサトルを、あたしは布団の上からぽかんと見上げていた。

「体は? まだ辛い?」

体を屈めたサトルの手の平が再びあたしの額を覆う。やっぱり冷たくて気持ちいい。

「もう大丈夫だけど……見るって何を?」
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⏰:08/05/26 01:50 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#402 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「見ればわかるから、ほら、手貸して?」

あたしの額から剥がした手でそのままあたしの腕を掴み、立たせようと体を支えてくれるサトル。
あたしは言われるがままに毛布から這い出してサトルの手に体重をかけた。
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⏰:08/05/26 01:51 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#403 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
しかしまだ熱は下がり切っていなかったらしく、立ち上がった瞬間めまいに襲われた。
視界が真っ白になり立っていられなくなったあたしの体を、すんでのところでサトルの腕が支えてくれた。

「ユキ! 無理なら無理って言ってよ! フラフラじゃないか!」

「本当に大丈夫だから、急に立ち上がったからくらくらしただけだよ」
.

⏰:08/05/26 01:52 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#404 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
それでもサトルは心配なのか少し怒りながらあたしを寝かせようとしたけれど、なんとかなだめすかして外に出ることになった。
あたしは自分がどのくらい寝ていたのか全くわかっていなかったので今の時間がどのくらいなのか見当もついていなかった。

あたしが布団の横に置かれていた自分のバッグを肩にかけると、サトルもレモンキャンディの入ったリュックを背負ってドアに手を伸ばす。
そこであたしは自分の異変に気がついた。
.

⏰:08/05/26 01:52 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#405 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
服が違う。

家を出た時も、もちろん山を登っている時も、あたしは普段から着慣れたフリースパーカーとジーンズを身につけていた。
パーカーの下にはTシャツとトレーナーを着込んでいたはずだ。

しかし今着ているのは、どう見てもジャージである。いや、良くは見えていないけれど、この感触からすると間違いない。
上半身はジャージの下にTシャツらしきものを着せられているようだ。

――なんで……まさか?
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⏰:08/05/26 01:53 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#406 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルがあたしにこれを着せたのだろうか?
恋愛感情を持たないからといってもそうなると別問題で、あたしは一瞬にして顔に血が昇ったように感じた。

「ちょ、ねぇ、サトル、この服……あたしの服、脱がせた?」

目の前にあったサトルの背を軽く叩いてこちらを向かせた。
しかしサトルの顔を見ることが出来なくてあたしは俯く。
.

⏰:08/05/26 01:54 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#407 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そんな気持ちに気付いているのかいないのか、サトルは気の抜けた声で答えた。

「へ? ……あぁ、ジャージ? 貸してもらったんだよ。着替えまでしてもらっちゃって、ちゃんとお礼言わないとね」

「借りた……って誰に?」

「だから、会えばわかるから!」
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⏰:08/05/26 01:55 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#408 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そう言って、さっきまでしてくれていたあたしの体の心配はどこへやら、腕を掴まれて外へと連れ出された。


鉄製の錆びたドアがサトルの手で開かれると、外は一面闇だった。
腕を引かれて外に足を踏み出すと、そこは確かにあの場所だった。
今日の夕方サトルと見ていたコンクリートの箱、そして十年前ユキと共に監禁されていたその場所に違いなかった。
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⏰:08/05/26 01:55 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#409 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは掴まれていない方の手でサトルの服の裾をギュッと掴んだ。
それに気付いたサトルがその手を優しく握ってくれる。

「安心して、僕を信じて?」

サトルが俯き気味のあたしの顔を覗き込みながらそう囁いた。
あたしの瞳に差し込まれたサトルの視線には、不安など一切無く、むしろ喜びとか楽しさとかそういったものが込められていた。
.

⏰:08/05/26 01:56 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#410 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
もちろんあたしはサトルを信じている。信じない理由がない。
だからあたしはサトルに引かれるまま足を進めた。
サトルはコンクリートの箱を取り囲む木々の間に開いたわずかな隙間に体をねじこんでゆく。
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⏰:08/05/26 01:57 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#411 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
夕方の薄暗さとは比べ物にならないくらい真っ黒な闇が辺りを満たしていた。弱々しい月の光がかろうじて数歩先までの景色を瞳に映す。
電灯のひとつもなく、あたしは赤い上着を着たサトルの背中を見失わないようにとそれだけに集中して木々の間を縫い歩んでゆく。
.

⏰:08/05/26 01:57 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#412 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしとサトルとを唯一繋いでいる手の平に温かさを感じる。
真冬の山の中、しかも夜。
寒くない訳がないのに、あたしはその手に感じる温度と興奮からくる熱で寒さを忘れていた。
口から漏れる白い息ごしに赤い背中を見つめながら一歩一歩地面を踏み締める。
その行為だけを繰り返していた。

.

⏰:08/05/26 01:58 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#413 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
視線を集中していた赤い背中の前進が急に止まった。
それに倣いあたしも立ち止まると、サトルが顔だけをこちらに向けて小さく囁いた。

「やっと会えるね」


その表情は――暗さのせいで喜んでいるのか悲しんでいるのか判別出来ない。
あたしが戸惑い答えられずにいると、サトルは大きく一歩左に動いた。
繋いでいた手が解かれ、その手は前に進めと促すように先を指差す。
.

⏰:08/05/26 01:59 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#414 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしはサトルの側から離れるのが恐ろしくて、彼の顔を見つめたままその場に立ち尽くしてしまった。

「大丈夫だよ、さぁ」

背中を優しく押され、その力であたしはつんのめりながら二歩、三歩と進んで再び立ち尽くす。
.

⏰:08/05/26 01:59 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#415 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
真っ暗な闇の向こうを探るように目を這わせた。
何も見えない。そう思った瞬間、何かが落ち葉を踏み締めた音がした。

急に心臓の鼓動が激しくなる。息遣いも荒くなる。
サトルの方を振り返りたいという思いに駆られたけれど、あたしの目は闇の中の一点に引き付けられていた。

.

⏰:08/05/26 02:00 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#416 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

何か白いもの。


闇の中に白い何かが浮かび上がり、こちらに近づいてくるのが見える。
あたしはすぐ後ろにサトルがいることも忘れて、前方にいる何かから目が放せなくなってしまった。
ガサッ、ガサッ、と音を立てながらだんだんとはっきり見えて来る。
.

⏰:08/05/26 02:01 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#417 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
自分の唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。


近づいてきたそれは、


……人間だった。
しかも、あたしにはとても見慣れた姿が……そこにあった。



.

⏰:08/05/26 02:02 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#418 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ(・ω・*)

プロローグ
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#419 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ続き

―W―
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>>222-267
―Y―
>>272-382
―Z―
>>387-417

⏰:08/05/26 02:07 📱:SH903i 🆔:190zu.A6


#420 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
―[―


暖かい陽射しが差し込む放課後の教室。
自分達以外に誰もいなくなったその教室で、あたしとサトルは窓際に並べられた席に座って数カ月前のことを思い出していた。

「あの日さぁ、帰ったら父さんと母さんにすっっごく怒られたんだよぅ。まだ覚えてるよ、あの時の父さんの怒った顔」
.

⏰:08/06/07 23:55 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#421 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルが膝の上に置いた通学バッグをドスドスと叩きながら不服そうにため息をついた。
もうすでに三度は聞いた話だ。

「いつまで言ってるの?」

あたしはクスクスと笑いながらサトルの頭をこずく。

「だってさぁ、ホント怖くて……まぁいーや、でもよかったね!」
.

⏰:08/06/07 23:55 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#422 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしがまだ笑い続けているのを見てサトルは話題を変えた。

「うん。……ありがとね、サトル。本当にありがとう」

なんだか照れてしまうけれど、改めて感謝の気持ちを真っすぐに伝えた。
それを聞いたサトルは嬉しそうに笑っている。
あたしは照れ隠しに首から下げたチェーンに通されたシルバーの指輪を指先で弄んでみた。
.

⏰:08/06/07 23:56 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#423 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「そろそろ行こっか!」

前の席の机に腰掛けていたサトルがストンと床に降りて教室のドアに向かって歩き出した。

「そうだね」

あたしも椅子から立ち上がって、サトルの後に続く。
ドアのすぐ横にある電灯のスイッチを切りドアを閉めると、あたしたちはある場所に向かった。


.

⏰:08/06/07 23:56 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#424 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あの冬の日、あたしの目に映ったものは白いセーターを着た人間だった。
髪はほつれロングスカートは泥々。
だけどその顔はあたしのよく知る顔……いや、あたしそのものだった。

信じられなかった。目の前にあたしがいる。
現実に起こり得ないことだというのは解っている。
けれど、あたしはまさか生きているなんて微塵も思っていなかった。

.

⏰:08/06/07 23:57 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#425 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
……そう、あたしと同じ顔をした、ハナが。目の前にいたのだ。


信じられなかったけれどそれしか有り得ない。
思考がその答えにたどり着いた時には、地面に膝を落としたあたしの体をハナの腕が包み込んでいた。
.

⏰:08/06/07 23:57 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#426 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
僅かに月の光が辺りを照らす。
木々が立ち並ぶ中であたしとハナは再会を果たした。
あたしは申し訳無さと嬉しさと喜びと感謝と後悔とその他いろいろな感情が複雑に絡まりあって涙を抑え切れず声を上げて泣いた。
ハナはただ黙ってあたしの体を抱きしめている。

後ろからサトルが近づいてくる音が聞こえた。
.

⏰:08/06/07 23:58 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#427 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ユキ?」

あたしの名前を呼んだサトルの声は優しく、包みこむような穏やかさを感じる。
その温かさに少しずつ気持ちが落ち着いてゆく。
鳴咽が止み、ハナの肩に埋めていた顔を上げるとすぐ側にハナの顔があった。
小さな切り傷がたくさんついた真っ白な肌が痛々しくて、あたしの目にさらに涙が溢れる。

「ハナ……」
.

⏰:08/06/07 23:58 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#428 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
同じように膝をついたハナの腕があたしの背中から肩に移り、真正面から見つめ合った。

ハナの茶色の瞳は透き通っていて、その純粋な眼差しに全てを見透かされているような気分になる。
堪らなくなってあたしは下を向いて口を開いた。
.

⏰:08/06/07 23:59 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#429 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ハナ……ごめんね、あたしハナを犠牲にして今まで……ごめんなさい、本当にっ……忘れてたのに……あたしだけ……」

ハナに謝りたくて、でもどう伝えれば良いのかわからなくて、あたしは支離滅裂に言葉を吐き出す。

「ユキ、」
.

⏰:08/06/07 23:59 📱:SH903i 🆔:febosBlc


#430 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナの声。
昔より大人びた、でもほとんど変わらない落ち着いた声にあたしは顔を上げた。

「ユキ、いいんだよ」

もう一度あたしの名を呼び、ハナは話し始める。

「ユキは何も悪くない。ユキが負い目を感じる必要なんてないの。
あの時ここに残ることを選んだのは、あたしだから。ユキに忘れさせたのも、あたし。
それにユキは、あたしとの約束守ってくれたじゃない」
.

⏰:08/06/08 00:00 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#431 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「約束……」

「思い出したら迎えに来てね、って。思い出してくれた。こうして今ここに来てくれた。
こんなにフラフラになってまであたしを見つけ出してくれたんだもん」

ハナがあたしの額から頬を優しく撫でる。
目の前の顔は静かに微笑んでいて、暗闇の中でそこだけ輝いているみたいだった。
.

⏰:08/06/08 00:00 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#432 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「……幸せだった?」


ハナの問いかけに胸が詰まる。
ハナが全てを投げ出して忘れ去られていた時、あたしが何不自由ない温かい時間を過ごしていたのは事実なのだ。
.

⏰:08/06/08 00:01 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#433 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「あたしは怖くなかったよ。来てくれると思ってたから。何もかも投げ出したけど、何ひとつ諦めなかった。
ユキがあたしの分まで生きてくれてるって信じてたから、あたしはあの日から今まで、死んでるのと変わりないようなこの長い時間を耐えられた。
楽しかった? 普通の幸せを手に入れた? あたしの分まで全力で生きた?」
.

⏰:08/06/08 00:01 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#434 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしの目を見ながら一つ一つゆっくりと尋ねるハナの言葉に恨みや妬みは感じられなかった。ただ純粋に、離れていた時間を取り戻したいという気持ちだけがあたしに突き刺さる。

「……幸せだったよ。ハナの分まで、みんなから愛してもらったよ」

あたしの答えを聞いてハナは顔いっぱいに笑みを浮かべた。
.

⏰:08/06/08 00:02 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#435 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「もっと教えて、ユキの十年。何が楽しかったか、どんなことがあったか。全部知りたい」

そうだ。
別々に過ごした十年はあたしたちにとって分かち合うべき時間であって、あたしはハナの十年を、ハナはあたしの十年を知らなくちゃならない。
十年の全てを語り尽くすには長い時間がかかるけれど、それはこれから先にたっぷりある。
あたしたちが離れることはもう二度とないのだから。

.

⏰:08/06/08 00:03 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#436 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「うん、全部分け合おう。あたしの十年は、ハナの十年でもあるんだもん」

あたしは腕を広げてハナの体を思いっきり抱きしめた。

「ハナ、ユキー!」

叫びながらガバッと抱き着いてきたのはサトルだ。すっかり忘れていた。
ハナとあたしが抱き合っているところにさらに覆いかぶさってきたサトルは号泣している。
.

⏰:08/06/08 00:03 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#437 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「よかったー! あぁ〜もうホントによかったー! うあぁぁぁん」

さっきまで静かだったのは我慢していたからのようで、それがはち切れて大変なことになっている。
サトルを自分達からはがして、あたしとハナは顔を見合わせて吹き出した。
.

⏰:08/06/08 00:05 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#438 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「もう、サトルはホントに変わらないねぇ」

そんなことを言いながら楽しそうにしているハナを見てあたしは、これは夢じゃないんだと実感していた。
そして。

.

⏰:08/06/08 00:06 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#439 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「わぁー!」
「きゃあ!」

急に辺りが光に包まれ、大きな爆発音が響いた。
一瞬にして闇に戻ったかと思うと、再び空から眩しいくらいの光が降り注ぎ地面を揺らすような低い音が届いた。
.

⏰:08/06/08 00:06 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#440 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「花火だ!」

立ち上がって叫んだかと思うと、サトルはもと来た方向へと走り出す。
あたしたちが呆気にとられてその姿を見ていると、くるっと振り返ってパタパタと手招いた。

「二人とも何してるの、早く!」

サトルの焦った声にあたしとハナも慌てて立ち上がり、サトルの後に続いて走り出した。


.

⏰:08/06/08 00:07 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#441 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
再びコンクリートの箱がある場所へと戻ったあたしたちは、空を見上げて息を飲んだ。

どこから打ち上げられているのかわからない花火は、あたしの視界いっぱいに光の粒をばらまいた。
ぽっかりと木々を失った空間は、まるでその為に用意された特等席であるかのように空を切り取っている。
.

⏰:08/06/08 00:07 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#442 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは言葉を忘れたように、ぽかんと口を開けて明るくなったり暗くなったりする空を眺めていた。

しばらくそうして立ち尽くしていたら、ハナが口を開いた。

「あの時も、花火があがってたね」
.

⏰:08/06/08 00:08 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#443 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そういえば……十年前あたしがここを去った時、意識が途絶える直前に花火が打ち上げられていたんだった。
空に広がった光がハナの顔を照らしていたのをよく覚えている。

「うん」

今、あたしの隣にいるハナは、空の一点をじっと見つめている。
.

⏰:08/06/08 00:17 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#444 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「毎年この時期に花火があがるの。近くで花火大会があるんだと思うけど……。
ユキがいなくなって、何にもなくなったあたしの唯一の楽しみだったんだ、冬の花火」

「ハナ……」

見上げていた顔を隣にいたハナに向ける。
ハナは相変わらず空を眺めている。その表情は生き生きとして、希望に満ちていた。
.

⏰:08/06/08 00:18 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#445 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ハナ、あたし……」

「ストップ! ……今謝ろうとした? さっきも言ったけど、ユキが負い目を感じる必要はないんだよ? あたしがこうなることを望んで選んだんだから」
.

⏰:08/06/08 00:20 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#446 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしの顔を見てそう囁くと、笑顔のハナはまた明るく彩られた空を見上げる。
ハナはあたしが罪悪感を感じることを望んでいない。
それならあたしは謝らないでいよう。
そのかわり、これから先あたしはハナに感謝し続けよう。
ハナがこの十年間をあたしに捧げてくれたように、この先の全てをハナに捧げよう。
それがあたしの返し方だ。

「ハナ、ありがとう」
.

⏰:08/06/08 00:21 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#447 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その第一歩、あたしは感謝を言葉にしてハナに捧げた。
空で弾ける花火に照らされたハナの横顔は、穏やかで喜びに満ちていて美しい。
自分の顔と同じはずのそれは、全く別のものだった。
離れていた十年がそうさせたのだろう。
あたしとハナは見た目こそ同じだけれど、内側には絶対に重ね合わせることの出来ない違いがある。
どうやったって今のハナの気持ちをあたしが理解することは出来ない。
しかし、これから時間をかければ、もしかしたら。
.

⏰:08/06/08 00:21 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#448 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルがあたしとハナの周りを跳び回りながら花火に向かって叫んでいる。

あたしはハナの横顔から上空に視線を移し、この先の幸せな未来を明るく瞬く空に思い描いた。
火花が煌めく夜空の向こうに、温かくて希望に満ちた未来がはっきりと見えた気がした。



.

⏰:08/06/08 00:22 📱:SH903i 🆔:aqXUJcpA


#449 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ(・ω・*)

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#450 [蜜月◆oycAM.aIfI]

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#451 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
―\―


歩道の端に植えられた桜は蕾を膨らませ、その下を歩く全ての人に春めいた空気を味わわせる。
あたしとサトルはバスに乗って街の端にあるマンションに向かっていた。
バス亭からマンションへと続く歩道には間隔を開けて桜の木が植えてあり、枝の間をくぐりぬけて落ちてくる太陽の光が時折あたしの目を眩ませる。

マンションまでは歩いて約二十分。ちょうど半分くらいまで来たところで、あたしは歩きながらセーラー服の上に着ていた黒いカーディガンを脱いだ。
もう、冬は終わったようだ。
.

⏰:08/06/12 05:10 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#452 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そしてそれと同時に、ハナを苦しめていた悲劇も終わりを迎えた。

「やっぱりまだ家には戻らないって?」

ふいにサトルがそう尋ねる。
ヒラヒラと桜の花びらがあたしの目の前を横切った。それを目で追いながらあたしは答える。

「うん、まだ……。でも体は良くなってるし、食事の間ぐらいなら一緒に過ごせるようになったし、もうすぐだよ」
.

⏰:08/06/12 05:11 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#453 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
風を受けながら地面に落ちてゆく花びらから視線を外し、サトルに笑顔を見せる。

「そっか。なら良かった!」

嬉しそうに表情を崩したサトルは軽い足取りで桜を見上げながら歩いてゆく。
.

⏰:08/06/12 05:11 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#454 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
悲劇は終わった。
けれど、なにもかもが元通り、という訳にはいかない。
ハナの心に深く刻まれた精神的な苦しみは今も彼女を攻め続けている。
あたしはその傷を塞ごうと、ハナの元に通い詰めた。

ハナの中に残った傷はこの数ヶ月で随分癒えたけれど、時折傷口を広げては血を流し、ハナを苦しませる。
あの犯人の男が、今もなおハナを苦しませているのだ。
.

⏰:08/06/12 05:12 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#455 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしとサトルが十年振りにハナと再会を果たしたあの時、犯人の男はいなかった。
あの場所にいなかったのでは無く、既にこの世にいなかった。

ハナの言うところによると、男は自分の過ちを悔い、自ら命を絶ったようだ。
しかも、ハナの目の前で。
.

⏰:08/06/12 05:13 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#456 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そのことを話した時のハナの様子は、まるで愛した相手がこの世から去ってしまったかというほどに落胆し、絶望し、哀しんでいた。
あたしが両親の元に帰ってから四年ほど後のことらしい。
その四年間で、ハナとあの男の間には他人が踏み入ることの出来ない繋がりが生まれていたのだろう。
四年も一緒に暮らせば誰だってそうなるのかもしれない。
.

⏰:08/06/12 05:14 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#457 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けれどあたしはやっぱりあの男を許せなかった。
いくらハナがあの男を慕っていたとしても、ハナをここまで苦しませている原因なのだから。

それに、苦しいのはハナだけではない。
父も、ハナと同じか、それ以上に苦しみ悲しんでいるのだ。

ハナは父という人間にあの男の影を見る。
共通するのは、大人で、男で、父親だということ。ただそれだけ。
.

⏰:08/06/12 05:14 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#458 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けれど、ハナは父を前にすると苦痛を感じてしまうのだ。
彼女は、犯人の男を憎んでいるつもりも恨んでいるつもりも、ましてや恐怖を感じているつもりもない。
そして彼女自身は自分の父とともに過ごしたいと望んでいるのに、心に残された傷痕が悲鳴をあげて暴れ出す。

長い間共に生活し、そのせいで心の表面は犯人の男を受け入れた。
しかし奥深く、心の深層では男に恐怖を感じているのだ。
そしてその恐怖の対象に、父も入れられてしまった。
.

⏰:08/06/12 05:15 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#459 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
父の悲しみは深く、あたしや母にもそれを埋めることは出来なかった。
そしてまたハナ自身も、会いたいのに会えない、自分の感情と苦しみの板挟みに哀しんでいた。

しかしここ数日の間に、ハナは父と会話し、お茶を飲み、食事をともにするところまで回復していた。
あたしは今希望を掴んでいる。また家族四人揃って一緒に暮らせる希望を。



.

⏰:08/06/12 05:16 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#460 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
サトルがドアの横のチャイムを鳴らすと、パタパタとスリッパの音が聞こえ、ドアが開かれた。

「お帰り」

「ただいま!」

ハナの出迎えにまずサトルが答えてドアをくぐる。
あたしもそれに続き、今ハナが一人で暮らしている部屋に入る。
.

⏰:08/06/12 05:16 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#461 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ただいま。これ、スーパーで買って来たよ。足りないものある?」

一人で暮らしていると言っても、今のハナは一人で外出もままならない。
生活費は両親に出してもらっていて、必要なものがあるとあたしが学校帰りに買って届ける。
初めは母が届けていたけれど、いつの間にか毎日来ているあたしが届けるようになっていた。

「ありがと。……シャンプーと、歯磨粉と……洗剤。うん、大丈夫、完璧だよ」
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⏰:08/06/12 05:17 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#462 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
今日もハナの笑顔が見られた。
十年間見ることが出来なかった笑顔を、これから先少しでも多く見ていたい。
あたしはそう思っている。

マンションは五階建てで、ハナは最上階の部屋を使っていた。
ワンルームキッチン付きのあまり広くはない部屋だけれど、荷物が少ないせいか狭くも感じない。
ベッドと、小さなテーブルと小さな引き出し式の棚。その上に電話機があり、洋服なんかはクローゼットにしまってある。
.

⏰:08/06/12 05:17 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#463 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「今日は僕が話したげる! ……ユキの失敗話、聞きたい?」

サトルはベッドにもたれながら、隣に座るハナに顔を向けた。

あたしたちはあの時の約束通り十年間を分かち合うべく、この部屋に来ては自分たちの今までに起きたいろいろな話を教え合った。
サトルが来た時はいつも、彼があたしの笑い話や失敗話を披露してくれるのだけれど、あたしは毎回必ず恥ずかしい思いをさせられる。
.

⏰:08/06/12 05:18 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#464 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「もういいよ〜あたしの変な話は……あ、サトルの話にしない?」

あたしは仕返しにサトルの恥ずかしい話をしてやろうとハナにニヤリと笑いかけた。
選択を迫られたハナは、あたしとサトルの顔を見比べながら悩んでいる。
.

⏰:08/06/12 05:19 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#465 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「うーん……どっちも聞きたい!」

まるでサトルのようなハナの答えに、あたしたちは小さなテーブルを囲んで笑いあう。

「じゃあ僕からね! あのねーユキが高校に入学した時に……」
.

⏰:08/06/12 05:19 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#466 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

あたしとサトルがお互いの暴露話を次々と繰り出しあたしたちは小さな部屋の中笑い転げていた。
そんな状態に一区切りついた時、ハナがおずおずと切り出す。

「あのね、昨日思い出したことがあるんだ……あの人が死んだ時のこと考えてたら」

さっきまで笑いが溢れていた空気が急にピン、と張り詰めた。
ハナは特に辛そうにするでもなく、必死に記憶を手繰り寄せているようだ。
.

⏰:08/06/12 05:20 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#467 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「ハナ、無理しないで」

失った記憶を取り戻すのがどれほど難しいか。あたしはよく知っている。
けれどあたしの心配をよそに、ハナは俯き気味に語り始めた。

「いつだったかはっきり覚えてないけど……多分あの人が死んですぐだと思う。あたし、一度家に帰ったの」
.

⏰:08/06/12 05:20 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#468 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
手に持つマグカップに落としていた視線を瞬時にハナへ向ける。
あたしの記憶にそんな出来事は無い。
あたしが驚きに固まっている中、ハナは言葉を続ける。

「でも……そこにいたのは知らない人だった。門にかかった表札も、あたしの知らない名前だった。それで初めて引っ越したんだって知ったの」

――そっか。……前に住んでた家に行ったんだ。
.

⏰:08/06/12 05:21 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#469 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
家族との再会を夢見て山を下り、懐かしい我が家へたどり着いたのに、それが叶わなかったハナを思うと胸が苦しくなった。
自分の顔が歪むのを止められなかった。
あたしが見つめるハナの顔は、歪んではいないけれど少し哀しさを含んでいた。

「それから電話帳でお父さんの名前を調べて、電話したの」

「え……」
.

⏰:08/06/12 05:21 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#470 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
電話? 家に?
じゃあハナはその後、父と母と連絡を取っていたのだろうか?
しかしあたしは全く知らない。
ハナがここに戻ってからも、そんな話は聞いていなかった。
驚きの目をサトルに投げかけると、サトルも「聞いていない」という風に首を振る。

「夜だった……お父さんが出たの。
引っ越したって何か事情があったのかと思ったから、自分だって言わないで、T小学校の同級生だって……」

「ハナ……っ」
.

⏰:08/06/12 05:22 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#471 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナがどんなに家族想いか、あたしは信じられない思いだった。
耐え切れず涙が浮かぶ。

どうしてこんなに優しいハナがあんな目に?

あたしは改めて神様を恨んだ。
膝の上で強くにぎりしめた拳に、ポタリと涙が落ちる。
唇を噛み締め、声を押し殺した。

――あたしが泣いてどうするの? ハナの方が辛いはずなのに……っ!
.

⏰:08/06/12 05:23 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#472 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
涙を堪えようと下を向いて強く目をつむる。

と、ふわりという感触があたしのまぶたを撫でた。
力を抜いて目を開けると、ハナがティッシュペーパーを一枚手にして微笑んでいた。
あたしの涙を拭ってくれたようだ。

「泣かないで、ユキ。ユキが笑っててくれないとあたしもサトルも悲しいよ」
.

⏰:08/06/12 05:23 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#473 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その言葉にサトルが頭をブンブンと振って頷く。
それがおかしくて、あたしは泣きながら笑ってしまった。

「んっ……大丈夫、ありがとう二人とも……。ハナ、続けて?」

あたしの目から未だ零れる涙をもう一度ティッシュで拭うと、ハナは続きを話し出した。

「えーと……そう、同級生だって電話して、お父さんが出て……それで、よくわからないままユキちゃんは元気ですかって言ったの。そしたら……記憶はまだ戻らないけど元気だよ、って……。それで、ユキがホントに約束守ってくれたんだってわかったの」
.

⏰:08/06/12 05:24 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#474 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナはそこで一度言葉を切り、テーブルに置いていた紅茶に口をつける。
あたしやサトルに返事を求める様子もないので、あたしたちは無言でハナを見守った。

「お父さんの声が懐かしくて……会いたくなって……。でもユキがあたしのことを忘れているなら会いには行けないと思った。それでいろいろ考えてたら……『ユキをよろしくね、お父さん』って言っちゃったの。すぐに電話を切ったけど……それからは寂しくて、何回も電話したくなっては我慢して……」

ハナの口調は最初から最後まで淡々としている。けれどやはり表情は悲しげで、切ない微笑みが浮かんでいた。
.

⏰:08/06/12 05:26 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#475 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
そんなハナの表情に気を取られる一方で、あたしはハナの話を聞いて何か頭に引っ掛かるものがあった。

「ハナ……それって、あたしが帰ってからどのくらい? 覚えてないかな?」

俯くハナの背中に手を当て、出来るだけ優しく尋ねる。
あたしの考えが当たっていれば、ハナの答えは、四年と半年――。
.

⏰:08/06/12 05:27 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#476 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「四年と……半年くらいかな。……あの人が死んだのがそれくらいで、すぐに電話をかけたから」

――やっぱり。

「ハナ」

そう呟いて、あたしはハナの首に両腕を回して抱き寄せた。
ハナの手があたしの髪を撫でる。

「その日、……きっとハナが電話した日だよ。お父さん酔っ払って……すごくイライラしてた……いつものお父さんじゃなくて、何かずっと考えてて……それであたしに昔のことを少しだけ話したの」
.

⏰:08/06/12 05:28 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#477 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
父は、きっと葛藤していたのだ。

ハナが生きている。

それを知ってしまった。
けれどあたしは事件とハナのことをすっぽりと忘れ去っている。
ハナを探し出しても共に暮らせるかどうか……けれどハナを放ってはおけない。

そうして、苦悩していたに違いない。
そしてあたしに引っ越したという話をしてしまったのだろう。
.

⏰:08/06/12 05:28 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#478 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
その結果父がどう行動したのか、母には話したのか、それらは全くわからないけれどきっと父もそれから約五年半の間、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて来たのだと思う。

「あたしが電話で『お父さん』なんて言わなかったら……お父さんの苦しみを増やすこと無かったのに……」

ハナが苦しそうに小さく漏らした。

「そうじゃない、ハナは悪くない! 自分を責めないで、ハナのせいじゃないから。お父さんもきっとそう思ってるよ」
.

⏰:08/06/12 05:29 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#479 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
あたしは抱きしめたハナの体をさらに強く抱きながら、ハナに語りかけた。

ハナが何をしたと言うのか。
ここまで自分を犠牲にしてきたのに、まだ自分を責めさせるの?

神様は残酷だ。

あたしはハナの体を抱いている手で撫で、目を閉じた。

神なんて……様付けで崇められているけれど、人間を弄んで喜ぶ変態だ。
あたしは神からもその他全ての悪からも、ハナを守る。
もう、二度と失いたくないから。
.

⏰:08/06/12 05:30 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#480 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
ハナがあたしの腕を抜けたのを感じた後に、チャリ、と言う音がした。

「これ……ちゃんと着けてくれてるんだね」

あたしは目を閉じたまま頷く。
ハナが手に取ったであろう物体は、あたしの首から提げられたリングだ。
チェーンを通して肌身離さず着けている。

「ずっと着けててね……あたしとユキはあの人を忘れないでいてあげないと……ダメだから……」
.

⏰:08/06/12 05:31 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#481 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
トン、と胸に重さを感じて瞼を上げると、ハナの体がもたれかかっていた。
顔を覗き込むと、目を閉じて穏やかな顔をしている。
眠ってしまったようだ。

「寝ちゃったね」

サトルが小声で囁きクスリと笑う。
あたしの顔にも自然と笑みが零れた。
静かに寝息を立てるハナを起こさないようにベッドに寝かせながら、あたしは自分の胸が温かくなるのを感じていた。
.

⏰:08/06/12 05:31 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#482 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

ハナとこうして普通の、ありふれた楽しい時間を過ごせることがあたしには奇跡みたいに思えていた。
毎日この部屋に来ては尽きることのない思い出を語り合う。
それだけなのに、あたしはそれまで感じたことのない幸福感に包まれていた。


記憶に穴があったせいか、無意識にハナを求めていたせいかはわからない。
けれど今になって思えば、あたしには何かが足りない、何か欠けているという喪失感があったような気がする。
.

⏰:08/06/12 05:32 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#483 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
けして不幸せだったとは思わない、むしろ両親やサトルに温かく守られてあたしはぬくぬくと生きてきた。
それでも、あたしは心のどこかでこれを――今のこの満ち足りた状態を、欲していたのだと思う。

ハナがいなかった世界と、今ハナが近くにいる世界とは、同じに見えて同じじゃない。
ただハナがこの街に帰ってきたというだけなのにその違いは、あたしの内部に大きな変化をもたらした。
.

⏰:08/06/12 05:33 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#484 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 
これが、この状態こそがあたしにとって、そしてハナにとってあるべき状態だと。そう感じている。
心には余裕が溢れ、些細なことにも心を動かされるようになった。目に映る全てのものに感謝の気持ちを持てるようになった。
.

⏰:08/06/12 05:33 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#485 [蜜月◆oycAM.aIfI]
 

ハナが側にいてくれることで、あたしは生きる意味を見出だせたような気がする。

あの時の誓い――この先の全てをハナに捧げるという誓いを、あたしは胸に刻んで過ぎ行く一瞬一瞬を消費してゆくのだ。

それが、あたしの生きるよすがだ。



―了―

⏰:08/06/12 05:34 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#486 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ(・ω・*)

プロローグ
>>4
―T―
>>5-46
―U―
>>47-118
―V―
>>119-141
―W―
>>142-220

⏰:08/06/12 05:39 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#487 [蜜月◆oycAM.aIfI]

まとめ続き

―X―
>>222-267
―Y―
>>272-382
―Z―
>>387-417
―[―
>>420-448
―\―
>>451-485

⏰:08/06/12 05:40 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#488 [蜜月◆oycAM.aIfI]
感想やアドバイスなどあれば、是非お願いします(´∀`)

●感想板●
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3515/

⏰:08/06/12 05:59 📱:SH903i 🆔:80/PBkxE


#489 [ぁぃチャン]
ずっとずっと見てましたッッッ
ぉ疲れサマです
終わってしまぅのが悲しいですが,,,
完成ぉめでとぅござぃます
ホントに良ぃ作品です
また最初から読み直したぃと思っています
完璧ハマってしまいました
本当に素晴らしいです
大スキです

⏰:08/06/12 23:48 📱:D902i 🆔:6dAmU67k


#490 [蜜月◆oycAM.aIfI]
>>489 ぁぃチャンさん

コメントありがとうございます!(´;ω;`)
以前から読んでいて下さったようで…すごく嬉しいです!
そこまで褒めていただくと何だか照れ臭いですがw
でも本当に嬉しいですっ。

私にはもったいないほどのお言葉と、最後までお付き合いくださったことに感謝します。
次はまだいつになるかわかりませんが、また読んでいただければ光栄です(´∀`)

⏰:08/06/13 03:49 📱:SH903i 🆔:cTmdYFDc


#491 [りり]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:09/11/16 20:33 📱:SH904i 🆔:6aLktzZI


#492 []
あげます

⏰:10/02/07 21:33 📱:SH01B 🆔:axv19xeU


#493 [我輩は匿名である]
最高だ

⏰:11/03/06 01:25 📱:SH02C 🆔:SNAb5Tjg


#494 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/07 11:58 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#495 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/07 12:13 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#496 [○○&◆.x/9qDRof2]
yosuga

⏰:22/10/07 12:32 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#497 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-250

⏰:22/10/07 12:36 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#498 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>250-450

⏰:22/10/07 12:36 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#499 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>450-470

⏰:22/10/07 12:53 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#500 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>470-490

⏰:22/10/07 12:55 📱:Android 🆔:GR1soPvw


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