人生の案内板
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#800 [わをん◇◇]
わたしのからだを取り巻く熱が引くまでに、かなり時間が掛かった。


 とっぷりと暮れた夜空の下、公園のベンチにいた。さっきの公園とは違う公園。いまにも切れそうな街灯に視線を送りながら、あたまを抱える。

⏰:23/01/06 18:44 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#801 [わをん◇◇]
>>800-999

⏰:23/01/06 18:44 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#802 [わをん◇◇]
>>900-999

⏰:23/01/06 18:44 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#803 [わをん◇◇]
>>950-999

⏰:23/01/06 18:44 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#804 [わをん◇◇]
変わっていない。九年前と。あの頃は子供だった、なんて、笑ってしまう……わたしは、いまも子供だ。変わっていない。九年前と。九年前に、気持ちを置いてきてしまったのかもしれない。だけど、気付いてしまった。

⏰:23/01/06 18:45 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#805 [わをん◇◇]
九年もの間、全く気付かなかったことに、わたしは、気付いてしまった。じわりじわりと熱が蘇ってくる。


 わたしは、

 孝が、

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#806 [わをん◇◇]
満天の星空の下、わたしはこころの奥底に秘めた気持ちを隠した。暗い暗いこころの奥に。二度と上がってこないように。気付いてしまった以上は、仕方がない。わたしは死んだのだ。わたしにはもう、道は残されていない。希望はないのだ。失望することがわかっている以上、封印してしまおう。

⏰:23/01/06 18:45 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#807 [わをん◇◇]
それが良い……そうしよう。その日、わたしはベンチで夜を明かした。



 月曜日の朝になった。

 退屈とは拷問に近い。

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#808 [わをん◇◇]
孝がいるから学校に行く気もしないし、家に帰る気もしない。わたしはいつか消えるのだろうか。その時は、昨日の気持ちも消えていくのだろう。その先には、天国か地獄があるのかな。その時は、昨日の気持ちも一緒に持って行くのだろう。

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#809 [わをん◇◇]
そこで、初めて自分が女々しいことに気付いた。こうした考えを巡らすのは、隠したはずの気持ちが漏れだしている証拠ではないか。振り出しに戻った気がして。こころが空っぽになった気もした。膝をぱんっ、と叩いて立ち上がる。

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#810 [わをん◇◇]
「わたし、これからどうしようかな」

気が重いが、とりあえず家に帰ろうか。ふらふらと家の方角に歩き出した。家の前に着いた。玄関先には父と母の姿があった。

「じゃあ、行ってくる」

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#811 [わをん◇◇]
スーツ姿の父が、鞄を下げて手を上げる。

「行ってらっしゃい」
「今日は早めに帰るよ」

父がそう言うと母は笑った。

「早く帰りたい、でしょ?」
「まぁ、そうだな。じゃ、そろそろ行ってくる」

⏰:23/01/06 18:46 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#812 [わをん◇◇]
「はいはい。私もこのまま出ますよ」
「良枝。これから、頑張ろうな」

微笑む父に母はまた笑った。その様子に何故か違和感を覚えたが、父に「いってらっしゃい。頑張ってね」と、届かない声を掛けると玄関に向かう。リビングに上がると違和感が一気に増した。

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#813 [わをん◇◇]
あれ。違う。何かが違う。仏壇にわたしの写真がない?母の笑顔があたまにちらつく。父の言葉があたまを過ぎる。


「頑張ろうな」


頑張ろうな?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#814 [わをん◇◇]
昨日から何かが変だ。前向きだが、何かが違う。わたしは母が家に入って来ないことに気付いた。母の声が再生される。


「私もこのまま出ます」

 出る?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#815 [わをん◇◇]
何処へ?何故、一昨日帰ってこなかった?何故、一昨日普段着だった?

 何かに弾かれたように家を出る。キョロキョロと辺りを見渡せば、彼方に母の後ろ姿が見えた。わたしは走って後を追う。おかしい。人間のあたまで考えるのも変だが、どうもおかしい。わたしは死んだ。それならば。消滅するのはいつだ?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#816 [わをん◇◇]
三途の川はどこ?そこにはいつ行くの?それに、まだ見ていない。わたしという死者が存在しているのに、わたし以外の死者の姿を。


 わたしは何だ?

⏰:23/01/06 18:47 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#817 [わをん◇◇]
ひとつの希望があたまに浮かんだ。希望を断たれた時に傷付くのは嫌だが、往生際が悪いのはわたしの性格だ。だが、それに賭けてみたかった。わたしは死んでしまった。だけど、夢くらいは見ても罰は当たらないだろう。希望くらいは持っても、神様は許してくれるだろう。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#818 [わをん◇◇]
母の隣を歩き、やがてある建物に着いた。ここは、


「病院?」

 白に統一された建物を見て、気持ちは高鳴った。落ち着け、わたし。まだ早い。答えは母について行けばわかるだろう。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#819 [わをん◇◇]
施設に入ると、内部を一瞥(いちべつ)してから母は受付を済ました。エレベーターで三階に上がると、廊下を通り抜け、ある病室の前で立ち止まる。母がドアを開ければ、中は個室になっていた。室内を見て、目を丸くした。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#820 [わをん◇◇]
「なんで?」

そこには。病室のベッドに身を埋めて眠る自分の姿があった。口元には呼吸を助けるためなのか、規則正しい音を出す機械が伸びている。呆然とするわたしの前で、母は、せっせと世話をし始めた。

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#821 [わをん◇◇]
花瓶の水を変えている母を眺めていたら、ふと我に返る。即座に病室の前の名札を見に行けば、桜井千恵と書かれていた。間違いない……わたしだ。もう一度目を向けると、ベッドの上の自分は眠るように胸を上下させていた。予想は当たっていた?わたしは死んでなかった?

⏰:23/01/06 18:48 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#822 [わをん◇◇]
夢を見ているのではないか。喜びと同時に疑問も溢れた。母や父が元気になった理由は頷ける。


 しかし、自分の葬式は確かにあった。

⏰:23/01/06 18:49 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#823 [わをん◇◇]
ならば。いつ、わたしは生き返ったのだろうか。いやそれより、何故、わたしは肉体に戻れないのだろうか。これは意識不明の昏睡(こんすい)状態というものか。それとも植物状態というものか。それより。

⏰:23/01/06 18:49 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#824 [わをん◇◇]
問題は“からだ”に戻れないこと。何度試しても、映画のように魂が肉体に戻ることはなかった。これじゃあ、生き返ったなんて言えない。肉体は生き返っても、わたしのこころはこうして死んだままだ。

⏰:23/01/06 18:49 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#825 [わをん◇◇]
でも、悲しくはない。ようやく希望が見えた。生きているとわかったその時から、わたしのこころの中心は、あるカンジョウに支配されていた。あの時、奥深くに封印したはずの想いが、いつの間にか溢れ出していた。

⏰:23/01/06 18:49 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#826 [わをん◇◇]
孝。

 この数日、孝は悲しんでいただけかも知れないけど、わたしは変わったと思う。孝には悪いけど、わたしはもう止まれない。例え希望が断たれても、突き進むと決めた。まだやり残したことがある。

⏰:23/01/06 18:49 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#827 [わをん◇◇]
孝の気持ちを聞いていない。盗み聞きはよくないと思うが、いまじゃなきゃ、出来ないのも事実だ。わたしはまた走っていた。学校に行ってみたが今日は孝はいなかった。ならばと、家まで押しかけたが、生憎(あいにく)の不在。

⏰:23/01/06 18:49 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#828 [わをん◇◇]
だったら、と、次の場所にすぐさま向かう。脱力感は最高潮に達していた。だって。もしあそこにいなかったら、しばらく動けなくなるに違いない。

⏰:23/01/06 18:50 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#829 [わをん◇◇]
一歩進む度に、孝に近付いているのだろうか。鎖(くさり)が巻き付いたような重い足を踏み出しながら、歩を進める。やがて足は動かなくなり、そして完全に停止した。


「も、動けない」

⏰:23/01/06 18:50 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#830 [わをん◇◇]
膝に手をつきながら顔を上げる。


「けど……間に合ったっ!」

正面にはあの公園。そしてベンチには大嫌いだったあの男。わたしは微笑みながら足を引きずって、隣に座った。

⏰:23/01/06 18:50 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#831 [わをん◇◇]
「あんたさあ、いい加減にしてよね。死んでからもわたしをいじめる気?」

笑ってみせるが、やけに清々(すがすが)しい。孝は静かに正面を見据えつつ、足を組んでいる。馬鹿馬鹿しい。わたしがこんなに一生懸命になるなんて、生きてた時は思ってもいなかった。

⏰:23/01/06 18:50 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#832 [わをん◇◇]
だが、悪い気分ではない。

「今日はいつもみたいに、退かないからね。答えを聞くまで、粘るよ」

ベンチに身を委ねて空を仰げば、隣から声が響く。

⏰:23/01/06 18:50 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#833 [わをん◇◇]
「不思議な気分だ」
「……え?」
「千恵がいなくなってから、たまに千恵を近くに感じる時がある」

 屋上や公園でのことだろうか。

「いまも」
「うん」

⏰:23/01/06 18:51 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#834 [わをん◇◇]
しばらく沈黙が続く。ちいさく息を吐いて次の言葉を待った。

「なぁ、」

孝を横目でみる。孝は相変わらず同じ姿勢を保っている。今日はやけに独り言が多いね。いつもより饒舌ではないか。少し黙った孝にわたしは視線を送り続けた。

⏰:23/01/06 18:51 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#835 [わをん◇◇]
「俺はおまえが嫌いだったよ」


 うん。それはわかっていた。世界は灰色に変わる。悲しみも衝撃もない。でも大丈夫。わたしは、気付いてしまったから。


「……で?」

 気付いたから、違うんだと、いまは信じれる。

⏰:23/01/06 18:51 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#836 [わをん◇◇]
「嫌いだって、思ってた。いや、思い込んでた」

 ほらね、信じることが出来る。


「あの日の延長線、」

孝は、ひとつひとつ言葉を落としていく。きっとわたしの高鳴りは最高潮に違いない。

⏰:23/01/06 18:51 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#837 [わをん◇◇]
「格好悪いって躊躇(ためら)っていたら、後戻りが出来なくなっていた」

⏰:23/01/06 18:51 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#838 [わをん◇◇]
まただ。またあれが来た。気恥ずかしさがこころを埋めていく。一刻も早くここから去りたい衝動に駆られ、少しずつからだが熱を帯びていく。

⏰:23/01/06 18:52 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#839 [わをん◇◇]
「でも、いまになって俺は、」

 でもね、もう大丈夫。逃げ出したりはしないよ。何より大切なものを見付けたから。

⏰:23/01/06 18:52 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#840 [わをん◇◇]
「好きなんだって、気付けたんだ」


そう言い終えた孝は、切なそうな視線を空に映した。

⏰:23/01/06 18:52 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#841 [わをん◇◇]
「孝……」

 わたしもね、気付いたんだ。孝が、好きみたいだって。だけど、ここまでだよ。わたしは初めから知っていたのかも知れない、こうなることを。

⏰:23/01/06 18:52 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#842 [わをん◇◇]
間に合って良かった。最後に、答えを聞けて良かった。

⏰:23/01/06 18:52 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#843 [わをん◇◇]
>>850-999

⏰:23/01/06 18:52 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#844 [わをん◇◇]
>>850-950

⏰:23/01/06 18:53 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#845 [わをん◇◇]
>>1-30

⏰:23/01/06 18:53 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#846 [わをん◇◇]
>>600-630

⏰:23/01/06 18:53 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#847 [わをん◇◇]
>>630-660

⏰:23/01/06 18:54 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#848 [わをん◇◇]
>>660-700

⏰:23/01/06 18:55 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#849 [わをん◇◇]
>>700-720

⏰:23/01/06 18:56 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#850 [わをん◇◇]
>>700-730

⏰:23/01/06 18:57 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#851 [わをん◇◇]
>>730-760

⏰:23/01/06 18:57 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#852 [わをん◇◇]
>>700-732

⏰:23/01/06 18:57 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#853 [わをん◇◇]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:23/01/06 18:57 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#854 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:23/01/06 18:58 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#855 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑(∩゚∀゚)∩age

⏰:23/01/06 19:00 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#856 [わをん◇◇]
TITLE:「 終電の話 」

⏰:23/01/06 19:01 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#857 [わをん◇◇]
「かんぱーい♪」

 四方からグラスが当たる音がする。女の子独特の甲高い声が響いて、一方では女の子らしからぬ酒を手慣れたように"干す"光景。幹事のみきちゃんが立ったままで軽く挨拶をする。

⏰:23/01/06 19:02 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#858 [わをん◇◇]
「今日は本当にみんなお疲れ様!無事に終わることができましたぁ〜♪と、言うわけでみんな!たくさん食べて飲んで、楽しみましょう♪」

このクラスももう2年目。

⏰:23/01/06 19:02 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#859 [わをん◇◇]
何度か飲み会をしてるから、弱い子と強い子、だいたいを把握してる。初の飲み会は、半分が潰れるという大惨事。そんなんじゃあ、せっかくの楽しみも台無しなわけで‥

「あれー?」

⏰:23/01/06 19:02 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#860 [わをん◇◇]
席をたってこちらに出向いた芽衣ちゃんが、私の顔を覗き込む。

「どしたの?」

飲み干したグラスをカラカラと鳴らして応えた。もう何杯飲んだだろう。グラスが空けばすぐに満たされる。私の周りは酒豪が多い‥。

⏰:23/01/06 19:02 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#861 [わをん◇◇]
「さーちゃんって‥弱いんだっけ?」
「へ?弱くないよー。いつもみんなが酔っていく過程を見守ってるもん」

私も酒豪と呼ばれる1人かもしれない。これはたぶん父譲り。母はすぐに顔が赤くなる。けたけたと笑いながら答えた。

⏰:23/01/06 19:02 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#862 [わをん◇◇]
「‥見かけによらずだねぇ」
「芽衣ちゃんは見かけ通りだよ」

世間一般では、彼女を"サバサバ"していると言うだろう。細かいことにはこだわらないような、頼りがいがあるような‥さっぱりした人間。

⏰:23/01/06 19:03 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#863 [わをん◇◇]
「そりゃぁ、どーも」

皮肉たっぷりな笑顔を含ませて、芽衣ちゃんお得意の焼酎ロックがお出迎え。

「私、苦手なんだってばー」
「子供だなー」

水と同じ色をしてるのに、これは強烈。

⏰:23/01/06 19:03 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#864 [わをん◇◇]
昔、傷口に保健室の先生が塗ってくれた消毒液とまるで同じ。飲み物と呼ぶには無理がある。一口もらって、眉間にシワを寄せていると、早くもちらほら酔っ払いたち。陽気に歌い出し、抱き合ったり、自由な方々。

「酔っ払いって面白いよねー。可愛くってしょうがない」

⏰:23/01/06 19:03 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#865 [わをん◇◇]
"め〜い〜♪"と言って抱きついてきた幹事のみきちゃんを構いながら芽衣ちゃんは笑った。普段からどんな系統も着こなす彼女。今日と言う日にボーイッシュ。となれば、そこらの男性よりかイケメンなのかもしれない。

⏰:23/01/06 19:03 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#866 [わをん◇◇]
「なんかこう見ると、カップルみたいだよ?」

いや、本当に。素敵だと思う。

「女の子もいいと思うけどねー」
「‥え?」

「って、女子大にいたら出会いもないし‥最終手段的な?」

⏰:23/01/06 19:03 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#867 [わをん◇◇]
「あー‥なるほど。でも芽衣ちゃん女の子にモテそう」

だんだんと頭が重くなって、目の動きが鈍くなる。なんだか鼻歌を歌いたくなる。どうやら酒豪もさすがに‥

⏰:23/01/06 19:04 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#868 [わをん◇◇]
「よく言われるー。さーちゃんは羨ましいよ。彼氏いて。女子大生で彼氏持ちとか勝ち組だよ?」

「そかなー?ふふ」

むやみやたらに笑みがこぼれる。これ以上はやめておこう‥

⏰:23/01/06 19:04 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#869 [わをん◇◇]
「酔ってんの?」
「んー‥わかんない。んふ」

あー‥終電何時だったかな。
[終電の話/完]

⏰:23/01/06 19:04 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#870 [わをん◇◇]
>>880-920

⏰:23/01/06 19:04 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#871 [わをん◇◇]
>>920-999

⏰:23/01/06 19:04 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#872 [わをん◇◇]
>>1-30

⏰:23/01/06 19:04 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#873 [わをん◇◇]
>>1-40

⏰:23/01/06 19:05 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#874 [わをん◇◇]
 それは。
 突然やってきた。からだに暖かさを感じる。死んでから一度も感じなかった温もりだ。からだが小さく細かい光の粒に変わっていく。目に映る景色も白くなり始め、視界の端から崩壊していった。

⏰:23/01/06 19:06 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#875 [わをん◇◇]
それらの感覚はじわりじわりと、わたしのからだを侵食していく。少しずつ、少しずつ。もう、時間か。どうやら、ようやくお迎えがきたようだ。九年前に止まった時計は、九年の時を経て再び刻み始めた。

⏰:23/01/06 19:06 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#876 [わをん◇◇]
十八年間。

 短いようで長い人生だった。いまから行くのは天国だろうか、地獄だろうか。色々あったが、ようやくわたしの臨死体験は終わりを告げるようだ。

⏰:23/01/06 19:07 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#877 [わをん◇◇]
死んでから気付いた大切な人。



 もし、生き返ることが出来たなら、きっとわたしは告白することが出来るだろう。でも後悔するのは嫌だから、いま言えるだけ言っておこう。いままでありがとう。

⏰:23/01/06 19:07 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#878 [わをん◇◇]
あなたが大好きでした。そして最後に、



 さようなら。


 薄れゆく意識の中で、わたしはゆっくりと微笑んだ。

⏰:23/01/06 19:07 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#879 [わをん◇◇]
しんでから気付く大切な人

fin

⏰:23/01/06 19:07 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#880 [わをん◇◇]
>>890-930

⏰:23/01/06 19:07 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#881 [わをん◇◇]
>>930-999

⏰:23/01/06 19:08 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#882 [わをん◇◇]
>>930-960
>>969-999

⏰:23/01/06 19:08 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#883 [わをん◇◇]
>>1-30

⏰:23/01/06 19:08 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#884 [わをん◇◇]
>>1-40

⏰:23/01/06 19:08 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#885 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:23/01/06 19:08 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#886 [わをん◇◇]
TITLE「 終電の話 」

⏰:23/01/06 19:10 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#887 [わをん◇◇]
「何、最近彼女とうまくいってないの?」

 輪切りされたレモン、グラスに入った焼酎、スーパーで買った焼き鳥。

「んー‥そうでもないんだけど。何て言うか‥うーん」

⏰:23/01/06 19:10 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#888 [わをん◇◇]
レンジから取り出した串刺しのそれを、可能な限り口に放り込む……うまい

「倦怠期‥なのかなぁ?」
「なるほどー‥。まぁ長いもんな。何年?」

「高1からだから、4年?」

⏰:23/01/06 19:10 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#889 [わをん◇◇]
申し訳ないけど、今のこの微妙な関係にも何とも思わない。何とかなるような気もするし、なるようになればいいと思うし‥どっかにきっと安心感がある。だって沙耶乃は女子大。

⏰:23/01/06 19:10 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#890 [わをん◇◇]
インカレにも入ってないし、バイト先も年近い人はいないらしいし‥ナンパされるような派手さもない。自然が彼女を縛り付けてるようだ。

「4年かー‥すげぇな。
沙耶乃ちゃん、いいお嫁さんになりそうだな。料理もできるし、しっかりしてるし、一途そうだし」

⏰:23/01/06 19:11 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#891 [わをん◇◇]
沈んだレモンをぼんやり見つめて無心で潰す。うっすらと濁り出す。

「そうかなー。嫁とか‥気が早くない?」

早くも、哲は3杯目。なんか今日ペース早いな‥大丈夫か?

⏰:23/01/06 19:11 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#892 [わをん◇◇]
「いやいやいや。もうここまで来たらさ、今後自分にそこまで尽くしてくれる人は現れないと思うよ?いい女なんて‥そうはいないし」

ふと、哲のグラスを持つ左手に目がいく。何だか以前より、さっぱりしたように見える。全体的に細いから関節の出っ張りが目立つ。

⏰:23/01/06 19:11 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#893 [わをん◇◇]
女の子の好きそうな手。


「あれ?‥指輪は?」

薬指についていたシルバーの指輪。ひとつ上の彼女とのペアリングだと聞いた。

「あぁ‥」

⏰:23/01/06 19:11 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#894 [わをん◇◇]
そう言うと、哲はどこか寂しげに笑って頭を掻いた。そして"フラれた"と、さらっと口にした。やってしまった、と、はっとしても……最早手遅れ。なんて言葉をかけるべきか。イケメンが振られる世の中。こんな俺に彼女がいていいのか?

⏰:23/01/06 19:11 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#895 [わをん◇◇]
「あぁ‥そっか。まぁ、哲はイケメンだしモテるし‥もっと‥」

恐る恐る顔をのぞくと、目が虚ろ‥違う。酒が回ってるのか。哲は眠くなるタイプなんだー‥ありがたい

「哲ー‥?」

⏰:23/01/06 19:12 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#896 [わをん◇◇]
「弘夢、やべ」

しばらくしてやっと口を開いた。空っぽのグラスと散らばった串、レモンの絞り粕、何だか急に寂しくなった。

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#897 [わをん◇◇]
「どした‥?吐く?吐いちゃう?」

おろおろして辺りを見渡し、何か受け皿を探していると

「いや‥そうじゃなくて」

あぁ‥終電何時だっけ?

⏰:23/01/06 19:12 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#898 [わをん◇◇]
[もうひとつの終電の話/完]

⏰:23/01/06 19:12 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#899 [わをん◇◇]
>>920-950

⏰:23/01/06 19:12 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


#900 [わをん◇◇]
>>950-999

⏰:23/01/06 19:13 📱:Android 🆔:pRdUKMH2


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