浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#201 [笹]
「あたしと壱助さんの‥
関係って‥何なんでしょう?」
どんな答えが返ってきても
怖じ気付いてはいけない
呼吸をやめた
取り込んだ空気を
体いっぱいに溜めたまま
その返事を待つ
:10/05/27 21:28
:D905i
:LasqqonI
#202 [笹]
少しの間だったはず
それなのに長く長く感じて
周りの音が止まった
「主従関係‥」
そう呟いた声は部屋中に響く
ぼやっとした灰色が中を漂って
:10/05/27 21:29
:D905i
:LasqqonI
#203 [笹]
だけど何故か納得してて
体がそれを拒否しなかった
"あぁ"と声を漏らし
一度だけ頷いた
:10/05/27 21:29
:D905i
:LasqqonI
#204 [笹]
「と、歯止めをかけてたんですが」
奇跡と言うものは
この世にあるのだろうか
:10/05/27 21:30
:D905i
:LasqqonI
#205 [笹]
「それじゃあどうも‥」
あるとしたら、それは‥
「物足りないもんで、ね」
今この時を言うのだろうか
:10/05/27 21:30
:D905i
:LasqqonI
#206 [笹]
「香夜さん‥
お慕い申し上げておりました。」
_
:10/05/27 21:31
:D905i
:LasqqonI
#207 [笹]
「お慕い‥お‥え何‥?何て?」
「貴女と言う人は‥
本当に、聞き分けがない」
「いやだって‥
だって‥お慕いって‥」
奇跡と言うものは‥
:10/05/27 21:31
:D905i
:LasqqonI
#208 [笹]
「いけない子‥ですね」
どうやら、あるようです。
_
:10/05/27 21:32
:D905i
:LasqqonI
#209 [笹]
「んん‥」
柔らかく上げられた前髪
二度目の唇は優しく包み込んで
高鳴る鼓動をそのままに
溶け合って、尚‥。
:10/05/27 21:32
:D905i
:LasqqonI
#210 [笹]
:10/05/27 21:37
:D905i
:LasqqonI
#211 [笹]
:10/05/27 21:38
:D905i
:LasqqonI
#212 [笹]
:10/05/27 21:39
:D905i
:LasqqonI
#213 [笹]
:
:
あんな感じで
甘ったるい時間を過ごしたのも
夢なんじゃなかろうか
彼は相変わらず
"主従関係"に手を染める
:10/06/01 21:05
:D905i
:yJ1SMPPQ
#214 [笹]
「恋仲なのか主従関係なのか
これじゃあ‥
今までと変わらないじゃない」
口々にそうつぶやき
漏れる言葉は不満ばかりだったが
内心晴れやかで
そんなことはどうでもよかった
:10/06/01 21:06
:D905i
:yJ1SMPPQ
#215 [笹]
「呉服屋さんはーっと‥」
茶屋の右隣、金物屋の前
辺りを見渡して何度も確認する
「あ、ここかな」
入り口の前で立ち止まり
中を覗き込む
様子を確認して一歩踏み出した
:10/06/01 21:07
:D905i
:yJ1SMPPQ
#216 [笹]
『浴衣を頼んでおきましたので』
此方に少し視線をずらし
"取ってこい"とそれが訴える
言動に無駄のない様は
壱助さん独特だ
「浴衣かぁ‥。」
:10/06/01 21:07
:D905i
:yJ1SMPPQ
#217 [笹]
自分の浴衣がどうこうよりも
真っ先に頭に浮かんだのは
彼が緩く着崩している姿
思わず頬が緩む
もう恋仲なんだし
これくらいの事を
想像するのは許されるはず
「すみませーん
頼んでた浴衣、取りにきましたぁ」
:10/06/01 21:07
:D905i
:yJ1SMPPQ
#218 [笹]
初めて壱助さんに
呉服屋に連れて行かれた時
怪しげなおばあさんに
胸鷲掴みにされたっけ。
そんなことはもう
とうの昔のように思えた
「はぁーい」
パタパタと出てきたのは
綺麗な娘さんだった
:10/06/01 21:08
:D905i
:yJ1SMPPQ
#219 [笹]
「浴衣‥」
「浴衣って‥貴女の?」
「あぁ、えっと‥
壱助さんが頼んだ‥」
そう言い終わる前に
彼女はぐいっと迫ってきて
思わず仰け反ってしまった
:10/06/01 21:08
:D905i
:yJ1SMPPQ
#220 [笹]
「今壱助さん、て言った?」
「はぁ‥まぁ」
その形相は素晴らしく恐ろしい
壱助さん‥
あんたは何をやらかしたんだ
:10/06/01 21:09
:D905i
:yJ1SMPPQ
#221 [笹]
「あんたが代わり?
壱助さんは何処?いないの?」
息つく暇もなく
答える暇もなく
ぶつけられた質問から伺える
‥あの色男め。
:10/06/01 21:09
:D905i
:yJ1SMPPQ
#222 [笹]
:
:
『壱助さんの代わりです』
とはっきりそう言えば
狂ったように可笑しな声を上げ
胸倉を掴まれた
「どうしてあんたなのよ!!
今日を楽しみに
あたい、ずっと待ってたんだよう」
:10/06/01 21:10
:D905i
:yJ1SMPPQ
#223 [笹]
「あ‥あたしも別に
来たくて来た訳じゃ‥」
「つべこべ言わずに
壱助さんを出しなさいぃい!!」
出せと言われたって
当の本人は只今休憩中
大好きなお茶を啜って
さえずる小鳥にでも
目を細めて見入ってるのだろう
:10/06/01 21:10
:D905i
:yJ1SMPPQ
#224 [笹]
何て呑気な人なんだ‥。
もしやこれは作戦か?
この娘さんが厄介だから
あたしに事を済まさせようと?
「あの‥じゃあとりあえず浴衣!!
浴衣預かって宿戻って
また壱助さん連れてきますから!」
:10/06/01 21:11
:D905i
:yJ1SMPPQ
#225 [笹]
「浴衣だけ持って
逃げようってんじゃない?
彼を連れてきたら渡すわ」
交換条件ですか‥
承りましたー。
浴衣を緩く着崩している
壱助さんの姿が遠ざかる
色男も大変なんだなぁ‥
:10/06/01 21:11
:D905i
:yJ1SMPPQ
#226 [笹]
:
:
「回れ右」
「へ?」
襖を開けた瞬間吐き捨てられた
固まる体、間の抜けた声
「浴衣を取ってこいと
‥頼んだんですが、ね」
:10/06/01 21:11
:D905i
:yJ1SMPPQ
#227 [笹]
後ろを向いてるのに何故わかる‥
おそろしや、おそろしや
「だって呉服屋の娘さんが
壱助さん連れてこなきゃ浴衣‥」
「全く‥貴女と言う人は
"人並み以下"でありながら
更に無能‥と来ました、か」
"やれやれ"とため息をつかれ
つまらなそうな顔をしている
:10/06/01 21:12
:D905i
:yJ1SMPPQ
#228 [笹]
「な‥っ恋人に無能って‥
なら言わせてもらいますけど!!
恋人いるくせに
他の女性に色気振りまくのも
どうかと思 い ま す が !!」
こんなのは当てつけだ
しかし悔しいのが本音
自然と恋人となれば
独占欲も生まれてしまう
:10/06/01 21:12
:D905i
:yJ1SMPPQ
#229 [笹]
ただでさえ
あたしなんかとは本来
月とすっぽんのような差なのだ
「まぁ、まぁ
それは故意ではありませんぜ
"個性"の1つ‥ですよ」
にっこりヤらしい笑みを浮かべ
湯飲みを置いて横になった
:10/06/01 21:12
:D905i
:yJ1SMPPQ
#230 [笹]
「ちょ‥壱助さん!!
浴衣、これじゃあ‥」
だからと言って
またあたしだけで行ったら
絞め殺されるに違いない
無理矢理体を揺すっても
人形のようにぴくりともせず
手で"早く行け"と合図をするのみ
:10/06/01 21:13
:D905i
:yJ1SMPPQ
#231 [笹]
負けじと激しく揺すれば
あの鬼畜な唇は
"無能"と呟きやがった
恋人気分を味わう余裕もなく
喧嘩のようで実は
相手にされちゃいないだけで
‥先が思いやられます。
:10/06/01 21:13
:D905i
:yJ1SMPPQ
#232 [笹]
:10/06/01 21:16
:D905i
:yJ1SMPPQ
#233 [笹]
:10/06/01 21:18
:D905i
:yJ1SMPPQ
#234 [笹]
:10/06/01 21:18
:D905i
:yJ1SMPPQ
#235 [笹]
あげわすれ(´・ω・`)
:10/06/01 21:21
:D905i
:yJ1SMPPQ
#236 [笹]
:
:
わーっと叫んでも
うーっと唸っても
それはただの体力の無駄遣い
この男‥実は頑固なのか?
ちっくしょう
湧き上がる苛立ち
自然と脳内再生される自らの声は
ぶっきらぼうになる
:10/07/13 23:16
:D905i
:FnqGJxKs
#237 [笹]
「‥もう知りませんからね!!
あたしは悪くないです
なぁんにも!悪くないんですよ!」
応答なし。
「‥あの娘さんに絞められても
知りませんからっ」
応答せよ。
:10/07/13 23:16
:D905i
:FnqGJxKs
#238 [笹]
「あ‥あたしが
どうなってもいいんですか?
きっとあたしあの娘さんに
し‥絞め殺されちゃいますよ!?」
なんと達者な口だろう
恋人に昇格したからって
つけあがるのもどうかと思う
「あんたはそれくらいじゃ‥
死にやぁ、しないでしょう。」
やっと口を利いたかと思えば
いちいち腹が立つ
:10/07/13 23:16
:D905i
:FnqGJxKs
#239 [笹]
きっと全身の毛穴も血管も
開ききってるに違いない
体が熱くてたまらない
「んぅーっ!!
壱助さんのばかぁ!あほぉ!」
横になった背中に
思いっきり訴えて
背を向けて寝転がった
:10/07/13 23:17
:D905i
:FnqGJxKs
#240 [笹]
たまにはこうして反抗して
わからせてやらないと
きっといつまでたっても
本質的主従関係は抜け出せない
いつまでたっても子供扱い
歯が立たないのは分かり切ってる
:10/07/13 23:17
:D905i
:FnqGJxKs
#241 [笹]
:
:
煮えくり返った腸。
あたしは何に怒ってるんだろう
‥なんて今更
少し怒鳴りすぎたかな
ほんとはただのヤキモチ
男として魅力があるのは認める
だって実際かなりの色男
:10/07/13 23:18
:D905i
:FnqGJxKs
#242 [笹]
だけど、他の女の人にも
そういう目で見られてるって
考えたら‥どうしょもなく‥
ものすごい美人な人が
壱助さんに惚れ込んだら
こんな滑稽なあたしには
当然勝ち目がないのだから。
ヤキモチは自信のなさの表れね
:10/07/13 23:18
:D905i
:FnqGJxKs
#243 [笹]
気づけば、もう日が暮れていた
照らす夕日が
何となく虚しくさせた。
胸の奥がぎゅっとする。
取られたくなんかないんだ
どっかに行っちゃいやなんだ
だけど‥素直に言えない
:10/07/13 23:19
:D905i
:FnqGJxKs
#244 [笹]
後ろに在るはずの横になった背中
ちらりと盗み見れば
いつの間にかいつものように
胡座をかいて外を眺めてた
嫌なんだ。
この背中が離れていくのが‥
素っ気なくたって
あたしには貴方が必要、壱助さん
:10/07/13 23:19
:D905i
:FnqGJxKs
#245 [笹]
「壱す‥」
語りかけた背中の隣には
例の物であろう浴衣が
少し乱れて置かれていた。
「‥取りに?」
「流石に此では‥
夏が越せないもんで、ね」
そう言って背中越しに
胸元をぱたぱたさせていた
:10/07/13 23:20
:D905i
:FnqGJxKs
#246 [笹]
「壱助さん‥?」
「事実を述べたまで、なのですが
何と‥強引な‥」
何かをあざ笑うかのように
くすっと息を抜きながら
"いや、いや"と頭を掻く
嫌な予感がした。
まさか"喰らわれた"のでは‥?
:10/07/13 23:20
:D905i
:FnqGJxKs
#247 [笹]
もう居ても立ってもいられずに
膝を擦って彼との距離を縮めた。
夕日の逆光に照らされた横顔は
絵になりそうな程美しく
影に染まったその姿は
すぐさまあたしを虜にした。
:10/07/13 23:20
:D905i
:FnqGJxKs
#248 [笹]
「なぁに‥
喰われちゃいませんぜ?」
余程不安げな顔をしていたのか
此方を覗き込んで微笑んだ。
「‥あ、」
:10/07/13 23:21
:D905i
:FnqGJxKs
#249 [笹]
その瞬間、目に飛び込んで来たは
彼の頬に綺麗な紅葉。
不謹慎だと叱られてもいいや。
可笑しくて、嬉しくて、可愛くて
「浴衣に紅葉じゃあ‥
季節外れじゃないですか?」
思わず吹き出してしまった。
夕日の橙がそれを柔らかく
包み込んでいたのが幸いだろう
:10/07/13 23:22
:D905i
:FnqGJxKs
#250 [笹]
「綺麗な紅葉ーっ!
今年は二人で紅葉狩りにでも‥」
さっきまでの不安もヤキモチも
どこかにやってしまうほど
それは鮮やかだったから。
「馬鹿にして、いるんですかい?」
目を細めて睨みをきかせたって
今はちっとも怖くない
:10/07/13 23:22
:D905i
:FnqGJxKs
#251 [笹]
ねぇ、それって‥
「‥恋人が居るって?」
そう言ってくれたと思うと
思わず頬が緩んでしまうの
「いえ‥妻がいると、ね」
「‥ばーか。良くできました。」
そっと紅葉に手をやれば
まだじんじんと熱を帯びていた
:10/07/13 23:22
:D905i
:FnqGJxKs
#252 [笹]
あぁもう‥愛おしいよ、壱助さん
「子供扱い‥ですかい?」
「たまには、いいでしょ?」
「えぇ‥。香夜さん」
甘えたい盛りなのか、
娘さんの一発が効いたのか
少し寂しそうな顔で
困ったように笑って見せて
:10/07/13 23:23
:D905i
:FnqGJxKs
#253 [笹]
「‥ん?」
黙って此方を見つめて
胡座をかいた膝の上を叩いた。
その中に黙って収まり
身を寄せれば満足そうに笑って
:10/07/13 23:23
:D905i
:FnqGJxKs
#254 [笹]
「褒美を‥頂けませんか、ね」
あの唇は甘えたって艶容だ。
緩く開けられた唇は誘い上手
―‥そっと触れる位のご褒美を
_
:10/07/13 23:24
:D905i
:FnqGJxKs
#255 [笹]
:10/07/13 23:28
:D905i
:FnqGJxKs
#256 [笹]
:10/07/13 23:30
:D905i
:FnqGJxKs
#257 [笹]
:
:
「うわ‥雪だぁ!
壱助さん!雪だよっ雪!」
もう新年を迎えて睦月
次の年になったからといって
何かが変わるわけでもないけど
気持ちの切り替えのいい機会
‥今年の抱負は何にしよう
:11/01/26 13:12
:D905i
:MmQRKSWw
#258 [笹]
「朝から‥騒がしい、ですね」
新年を迎えようが
壱助さんに変化はない
相変わらず冷静沈着です
この世が破滅の危機に直面しても
たぶん彼は変わらないだろう
:11/01/26 13:12
:D905i
:MmQRKSWw
#259 [笹]
「積もるかなー積もるかなー?」
真っ白な雪は
ひらひらと舞う花びらのようで
春を先取りした気分になる
灰色の厚くて遠くまで続く雲が
もう地面にくっつきそうだ
:11/01/26 13:13
:D905i
:MmQRKSWw
#260 [笹]
「雲って不思議ですよねぇ‥
ふわふわしてて綿飴みたいなのに
高い山に登ったって
絶対掴めないんですよ?」
「えぇ」
「それなのに、雨とか雪とか‥
一体どこに隠してるのかなー?」
囲炉裏から離れれば
空気はだんだん冷たくなって
鼻の先の感覚がなくなる
:11/01/26 13:14
:D905i
:MmQRKSWw
#261 [笹]
指先も冷たくて
‥去年のことを思い出す
残念ながら、
いや‥嬉しいことに
今年は囲炉裏の前を陣取る彼は
ぴしっと着物を着用
今年の抱負は、
"脱露出狂"なのかしら‥。
:11/01/26 13:15
:D905i
:MmQRKSWw
#262 [笹]
「そもそも雪って
何で降るんですかねー?
‥雨が凍ったの?
でもそしたら氷にならない?
あんなふわふわしないし‥」
脳を無理やりかき混ぜるように
あっちこっちに意識を飛ばして
無から有を作り出すのは
根本的に不可能だと落胆する
:11/01/26 13:15
:D905i
:MmQRKSWw
#263 [笹]
「餓鬼を喜ばせる為です、よ」
背中でぼそっと呟いた
低くて鋭いくせに、
どこか柔らかいその声は
何を言ったって不快感を与えない
「餓鬼?」
「が き ん ち ょ」
壱助さんの口から放たれた
"ちょ"が妙に新鮮味を帯びて
何だか可笑しかった
:11/01/26 13:17
:D905i
:MmQRKSWw
#264 [笹]
それを聞いてか何か、
色気を放ついつもの背中が
とても愛おしく見えた
「壱助さん、私もう‥」
性格は伴わないかもしれないけど
私も、もう十九だ
そもそも"がきんちょ"なんて
馬鹿にしてるようにしか思えない
:11/01/26 13:18
:D905i
:MmQRKSWw
#265 [笹]
互いに背を向けて暖と冷
囲炉裏でぱちぱち音が鳴る
すきま風がひゅうと鳴る
火の紅と雪の白
紅白めでたい色だけど
この2つは一緒にはなれない
‥神様が決めた定め
この世のことは
先に神様が全部決めている
神様はいいなぁ‥
好き放題できてさ
:11/01/26 13:19
:D905i
:MmQRKSWw
#266 [笹]
「‥香夜さん」
「っ‥何ですか?」
餓鬼じゃないなんて
言ったらたぶん笑われる
いや、壱助さんの場合は
笑いもせず
寝ぼけたことを言うあたしを
押し倒すに決まってるんだ
:11/01/26 13:19
:D905i
:MmQRKSWw
#267 [笹]
とかなんとか言いながらも
今でも、あたしが
生娘であるということは
大切にされてるんだなーと思う
「今年の抱負を
‥お聞かせください。」
背中を向けたままだった
壱助さんの手は
何やら棒みたいなものを握り
何かをかき回してるようだった
:11/01/26 13:20
:D905i
:MmQRKSWw
#268 [笹]
時折硝子に当たる音がする
瓶‥かな?
「抱負‥?えーっと
大人な女性になりたいです!」
「大人‥ほぉう」
尚もかき回す
その腕を上げたり下げたり
様子が把握できない
此方から見れば、変な光景
:11/01/26 13:21
:D905i
:MmQRKSWw
#269 [笹]
「内面的にはもちろんですけど
見た目も、女性らしく‥はい」
何をしているのか気になって
背後から、四つん這いになって
そっと覗き込む
何してるのか問ったって
大した答えが返ってくるとは
思えなかったのです。
:11/01/26 13:22
:D905i
:MmQRKSWw
#270 [笹]
今までの経験上
ちゃんとした返答があるのは
極々稀なことだから‥はは
「女性らしく、か」
何か引っかかるものがあるのか
壱助さんは
"なるほど"やら"はい、はい"やら
ぶつぶつ呟いている
:11/01/26 13:22
:D905i
:MmQRKSWw
#271 [笹]
その内
彼の横顔が見えるようになる
気のせいかな?
何だか楽しそうに見えた
仏頂面にも一応
喜怒哀楽があることを発見
宝物を発見したかのように
何故かわくわくした
:11/01/26 13:23
:D905i
:MmQRKSWw
#272 [笹]
「もう、
十九になったんですから‥」
呟くように、しかし手は止めず
少し開いた唇が色っぽく
着崩した襟元から覗く胸板は
男らしさを漂わせ
壱助さんは
人類最強な気がするもんです
:11/01/26 13:23
:D905i
:MmQRKSWw
#273 [笹]
「ちょいと、手をかけるだけで
‥十分に魅力はあります、よ」
急に此方を向くから
どきっとしてしまう
何をするにも急だ
振り向く時に随時報告されても
おかしな話だけれど
:11/01/26 13:24
:D905i
:MmQRKSWw
#274 [笹]
目を合わせて、あまりに彼が
真っ直ぐ見つめるものだから
急に恥ずかしくなって
あたしの視線は
彼と自分の手元に行ったり来たり
壱助さんは、微笑む
恐ろしいくらい美しかった
:11/01/26 13:25
:D905i
:MmQRKSWw
#275 [笹]
瓶の中には黄金の液体
綺麗に伸びたあの指がそこに沈む
包み込むように
まとわり付くように
待ちわびて居たかのように
たっぷり黄金が絡みつく
そして、もう片方の手が
あたしを引き寄せた
:11/01/26 13:25
:D905i
:MmQRKSWw
#276 [笹]
「冬は‥乾燥しますから、ね」
「ん‥」
黄金を纏った人差し指が
あたしの唇を優しく撫でた
甘ったるい香りと
ぬめっと貼り付くような感覚
隙間から流れ込んだものは
春が溶け込んだ甘みをおびて
:11/01/26 13:26
:D905i
:MmQRKSWw
#277 [笹]
「はちみつ‥?」
囲炉裏の熱に温められて
丁度人肌と同じくらいの心地よさ
どうやら‥
これを溶かしていたらしい
「保湿効果があるようで、ね」
十分にあたしの唇に塗りたくって
指に絡み付いた余りを
舌で丁寧に舐めとっていた
官能的で、胸騒ぎ
:11/01/26 13:27
:D905i
:MmQRKSWw
#278 [笹]
「保湿‥
確かに最近、乾燥してたかも」
「まぁ、関係あるのは
私だけですから‥
別に、乾燥していようがいまいが
どうってこと、ないのですが‥」
そう言い終わる前に
あっさり抱き寄せられてしまう
:11/01/26 13:28
:D905i
:MmQRKSWw
#279 [笹]
この人はいつも完璧で
何でもあっさりやってのけて
あたしの心を何度も奪う
‥時々、憎らしい
「ちょいと、
塗りすぎちまったようで‥」
柔らかい吐息が頬をかすめて
口元をゆっくり垂れる甘い蜜に
引き寄せられるようにして
彼の舌が唇の横を這う
:11/01/26 13:28
:D905i
:MmQRKSWw
#280 [笹]
「ん‥」
一度顔を離したかと思えば
今度は唇に吸い付いた
蜂蜜のねっとりした感触が
何故かあたしを高揚させる
体全体が熱くなって
どうしようもなく愛おしくなる
「ふ‥、」
息をつく隙を与えないほど
長い、甘い口づけ
頭がぼうっとする
:11/01/26 13:29
:D905i
:MmQRKSWw
#281 [笹]
自然と舌が侵入してきて
初めてなくせに
すんなりと受け入れてしまう
歯並びを確認するように
丁寧にゆっくり伸びてきて
上顎を優しく撫でられる
脳内まで犯されて、
思考が止まりそう‥
崩した足の先から
じわじわと快楽が込み上げる
:11/01/26 13:30
:D905i
:MmQRKSWw
#282 [笹]
羞恥に目を潤ませてみても
柔らかい唇を何度も重ねられ
少し斜めに傾いた
壱助さんの首筋が艶容で‥
やっと唇が離れた頃には
あたしはすでに彼の下
見下げる視線が柔らかい
つり上がった口元が
意地悪そうな笑みを作る
まるであたしをからかうように
:11/01/26 13:31
:D905i
:MmQRKSWw
#283 [笹]
「壱助さんって‥
甘いもの‥苦手なんじゃ?」
あっという間に
黄金に濡らされたはずの唇は
彼に染まって
もどかしい余韻を残したまま
「其れと、此とでは‥訳が違う」
「はちみつ、
‥わざわざ買ってくれたの?」
:11/01/26 13:32
:D905i
:MmQRKSWw
#284 [笹]
まだ整わない呼吸をよそに
目を細めて含み笑い
「食後の甘味として‥
今後、如何なものかなと‥ね」
「毎回、こうするんですか?」
優しく髪を撫でられる
これも神様が決めたこと?
:11/01/26 13:32
:D905i
:MmQRKSWw
#285 [笹]
「気に食わない、と」
「いいえ、
‥保湿は大事でしょう?
大人の女性にとっては」
時折あたしは素直じゃない
それは壱助さんも同じよね?
「まぁ、ね
今宵、十九になったのですから‥
後は老いて行く一方、ですよ」
「まだまだ若いですぅ!」
:11/01/26 13:33
:D905i
:MmQRKSWw
#286 [笹]
毒を吐く前にさらりと言ったけど
「壱助さん‥もしかして
今日があたしの‥」
「なぁに‥
それくらいの日付くらい
誰でも覚えられるもんです、ぜ」
本当は泣きたいくらい嬉しいよ
誰かに誕生日を
祝ってもらうのは約10年ぶりだ
:11/01/26 13:34
:D905i
:MmQRKSWw
#287 [笹]
これを祝ってもらったと
言うかどうかは別として
「‥ありがと、壱助さん」
大人ぶってみても
やっぱり頬が緩んでしまうの
「では、記念に"これ"‥
全身に塗りたくりましょう、か」
今度は手を丸々突っ込んだ
透き通った黄金が輝く
その奥で、いつもの怪しい笑み
:11/01/26 13:34
:D905i
:MmQRKSWw
#288 [笹]
「記念って‥何記念?!
ちょ‥壱助さんっ‥本気?!」
「大人記念、ですよ」
_
:11/01/26 13:35
:D905i
:MmQRKSWw
#289 [笹]
ねぇ、神様
何でも全部が既に決まってて
時々あたしは悲しくなります。
悔しくもなります。
だけど
この世に生を受けたことを
悲しいことだとは思いません
愛する喜びも、愛される喜びも
あたしは教えられたからです
:11/01/26 13:35
:D905i
:MmQRKSWw
#290 [笹]
「壱助さん‥?」
「何、か」
あたしの呼びかけに
答えてくれる人がいるからです
:11/01/26 13:36
:D905i
:MmQRKSWw
#291 [笹]
「‥大好き」
運命があってもなくても
ずっと一緒にいたいと思える人
_
:11/01/26 13:36
:D905i
:MmQRKSWw
#292 [笹]
:11/01/26 13:44
:D905i
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#293 [笹]
:11/01/26 13:45
:D905i
:MmQRKSWw
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