・・悪魔なキミ・・
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#651 [みい]
寝ていたから何なんだ、とでも言いたげだ。
「あのババアは、寝ているお前を離さなかった。気違いみたいに物を破壊し、俺や親父に投げ付けてさ」
あの女も、本能的に悟ったのだろう。俺達が自分から離れていく、自分が一人にされてしまう、ということを。
だから、せめて淕だけでも自分の傍に置いておきたい。そう思ったのだろう。
:08/08/26 00:34
:SH905i
:fijO4rPk
#652 [みい]
しかし、そこに親としての愛情があったかというと、甚だ疑わしいが。
「身の危険を感じた親父は、一旦俺を新しい家まで連れていき、自分は急いで家に戻ったんだ。お前を迎えにな」
『お前はここで待ってろ、すぐに淕と戻ってくるから。』親父は俺の肩を掴んで、確かにそう言った。
「でも…親父は一人で俺のとこに戻ってきた」
:08/08/26 00:35
:SH905i
:fijO4rPk
#653 [みい]
「親父と俺が家を離れたわずかな隙に、あの女はお前を連れて行方をくらませたんだ」
あの時親父は涙を流しながら、俺にそう説明した。
「俺達は、お前の居場所を捜し続けた。でも、親父の転勤が決まって…」
淕は、俯いたまま静かに俺の話を聞いている。涙をこらえているのか、はたまた怒りに震えているのかはわからないが、小刻みに肩が揺れている。
:08/08/26 00:36
:SH905i
:fijO4rPk
#654 [みい]
「悪かった。俺達は結局、お前のことを諦めた」
淕がいきなり立ち上がり、再び俺の胸倉を掴む。目は赤く充血していた。
「…殴れよ。気が済むまで、俺を殴れ」
俺は淕の顔を見据えた。俺と、全く同じ顔を。
「……そんなんで、済むかよ」
:08/08/26 00:37
:SH905i
:fijO4rPk
#655 [みい]
淕の震える小さな声が、病室中に響く。
「…淕?」
俺が淕の肩に触れると、淕の目から、ぽろっと涙が一粒落ちた。
「俺はっ…!兄さんが嫌いだ!」
「…ああ」
淕が俺から離れ、泣きながら怒鳴る。顔を真っ赤にして。
:08/08/26 00:37
:SH905i
:fijO4rPk
#656 [みい]
「昔から何でも出来て、いつも落ち着き払ってすかしたような顔しやがって…」
「……」
淕の握りしめた拳が震え、しばしの沈黙のあと。
「……羨ましかった」
拳と同様に震えた淕の声が、ぽつりと宙をさ迷った。
「俺の欲しいもの全部、兄さんが持ってた。父さんの愛情も、親戚からの称賛も…全部」
:08/08/26 00:38
:SH905i
:fijO4rPk
#657 [みい]
「兄さんを見てると、俺は駄目なんだ。双子のうち、出来の悪いほうなんだ、っていつも思い知らされて…」
そこまで言うと、淕は嗚咽して言葉を詰まらせる。
「…淕、それは違う。俺だってお前を羨んでいた」
俺の言葉に、淕がえ、と掠れた声を漏らす。
:08/08/26 00:39
:SH905i
:fijO4rPk
#658 [みい]
「俺は感情を表に出すのが下手だ。淕みたいに泣いたり笑ったりするの、苦手なんだよ」
俺は、かわいくない子供だった。どこか冷めてるというか、子供らしくない、大人ぶった子供。
比べて淕は、それこそかわいらしい奴だった。無邪気で、悪戯とかが大好きで、俺とは正反対で。
親父の愛情は、間違いなく淕のほうへより多く注がれていた。
:08/08/26 00:40
:SH905i
:fijO4rPk
#659 [みい]
淕がいなくなって落ち込む親父のために、淕みたいに悪戯っ子になろうとして、柚をいじめたこともあった。
でも、何か違う。どこか無理してる自分がいた。
「どんなに頑張っても、俺はお前の代わりにはなれなかった」
どんなに子供ぶっても、どんなにガキくさく柚をいじめても。
俺は、『淕』にはなれなかった。
:08/08/26 00:41
:SH905i
:fijO4rPk
#660 [みい]
「…ばっっかみてえ!」
「は?」
いきなりの淕の大声に、俺は驚き目を丸くし、瞬きを繰り返した。
「お互いを羨む双子とか、気持ちわりーっつーの!」
「…ああ」
どちらも大して優れた人間なわけでもないし、な。
淕は顔を背けているから、表情はわからない。
:08/08/26 00:42
:SH905i
:fijO4rPk
#661 [みい]
「…父さん、元気?」
「ああ。大阪に単身赴任してるけど、今はこっちに戻ってきてる。…会うか?」
淕はちょっと考えたあと、
「…いいや。今更会っても、照れ臭いだけだし」
と苦笑を含めた声で親父との再会を断った。
「母親は、どうしてる?」
:08/08/26 00:43
:SH905i
:fijO4rPk
#662 [みい]
こんな言い方をしたが、俺が気になっているのは淕のことだ。淕は、今でもあの狂った実母と一緒に暮らしているのだろうか。
「そんなの、とっくにどっかの施設にぶち込んでやったよ」
「…そうか」
ほっとしたのもつかの間、今度は淕は一人で大丈夫だろうかという不安に襲われる。
俺が口を開きかけた瞬間だった。
:08/08/26 00:43
:SH905i
:fijO4rPk
#663 [みい]
「言っとくけど、別に寂しくなんかないから」
淕の言葉が俺の口をつぐませる。
「一人も、なかなか気軽でいいもんだよ。働いてるから金だってどうにかなるし」
いつの間にこいつはこんなに大人になっていたんだろう。
俺達双子は、昔とは立場が逆転してしまったたらしい。
「…そうか」
:08/08/26 00:44
:SH905i
:fijO4rPk
#664 [みい]
「…うん。じゃ、俺そろそろ行くわ」
「…淕!」
俺を見ないまま病室を出て行こうとする淕を引き止める。
本能のままにそうしたのだが、次の言葉が出てこない。なぜだか、口が勝手に動いたのだ。
淕は、言葉を選びながら沈黙してしまった俺を振り返る。
:08/08/26 00:45
:SH905i
:fijO4rPk
#665 [みい]
「…兄さん」
口下手な俺より先に、淕が口を開いた。
俺が呼び止めたのに。気まずいながらも淕に顔を向ける。
「…また、来てもいいかな?」
何を言われるか予想していたわけでもないが、それでもやはりその言葉は想定外で、思わず目を見開く。
「……ああ」
:08/08/26 00:46
:SH905i
:fijO4rPk
#666 [みい]
なんとかそれだけ言うと、淕はにかっと笑い、病室を出ていった。
…眩しい笑顔。
「…馬鹿が」
淕はまたここへ来てくれるのだろうか。
そう思うとやけに嬉しくて、柄にもなく一人でにやけてしまった表情を隠すように、片手で顔を覆った。
:08/08/26 00:47
:SH905i
:fijO4rPk
#667 [みい]
・・・・・・・・・・・・・・・
Story10〜弱気。
・・・・・・・・・・・・・・・
:08/08/26 00:50
:SH905i
:fijO4rPk
#668 [みい]
淕はあれ以来、よく俺の病室にやって来る。
「でさ、そん時浩二が…」
内容はたわいもないこと。仲間の話だったり、バイトの話だったり。
それでも動けなくて退屈な俺には、有り難いことこの上ない。
「失礼しまーす…」
「おっ、柚ちゃんだーあ!」
:08/08/26 00:51
:SH905i
:fijO4rPk
#669 [みい]
柚は学校が終わると、必ずと言っていいほど見舞いに来てくれる。
「淕も来てたんだあ!」
「おうよ!」
そして、この二人もいつの間にか打ち解け、三人で喋ることが出来るようになった。
三人でいると、柚が学校での出来事を話し、淕がそれに対して相槌を打ち、俺は静かに聞いている、という役回り。
:08/08/26 00:51
:SH905i
:fijO4rPk
#670 [みい]
そんなことをしているうちに外は暗くなる。
「…あ、もうこんな時間!そろそろ帰らないと…」
…俺が一番嫌な瞬間。
「送ってったげるよ!」
「毎回ごめんね、淕」
柚は女だし、一人で帰すより淕が送ったほうが安全に決まってる。
:08/08/26 00:52
:SH905i
:fijO4rPk
#671 [みい]
…でも。
「蓮、また明日ね!」
「また来るから〜!」
仲良さ気に病室を後にするあいつらの背中を見ながら、俺はどうしようもない気持ちに駆られる。
無意識に嘆息を漏らしたとき、
「れーんっ♪」
楽しげな声とともに矢野がドアから顔を出した。
:08/08/26 00:54
:SH905i
:fijO4rPk
#672 [みい]
「廊下で会ったぞー、柚ちゃんと弟君。仲良く手なんか繋いじゃってさ〜…」
「は!?」
手を繋いでいた、だと?柚と淕が?
矢野の垂れ込みに、思わず身を乗り出し大声を出す。
そんな俺を見て、矢野は豪快に笑い出した。
「嘘だよ!冗談冗談〜!」
:08/08/26 00:55
:SH905i
:fijO4rPk
#673 [みい]
そうと分かると、矢野の悪戯にまんまとはまってしまった自分が恥ずかしくなる。
「…矢野、お前マジで殺すぞ」
「悪い悪い、んな怒んなよ!それにしてもあれだな、お前がそんな焦るとこ、初めて見たよ」
矢野は悪びれることもなく、さぞかしおかしいと言わんばかりに笑いこけた。
「…るせーよ」
:08/08/26 00:56
:SH905i
:fijO4rPk
#674 [みい]
「しかしさあ、蓮も希少な男だよなあ。淕と柚ちゃん二人にさせて、危機感とかないの?」
柚が、俺以外の男とふたりきり。俺が何も思わないわけないじゃねえか。
「…柚は、俺のもんだから」
言い聞かせるように声に出しても、やはり不安なところはある。
淕と楽しそうに話す柚を見ると、胸がもやもやする。
:08/08/26 00:57
:SH905i
:fijO4rPk
#675 [みい]
俺と二人でいるときに、あんな笑顔を見せてくれたことがあっただろうか?
俺といるより淕といるほうが、柚は…。
病室で一人、ベッドに寝ていると良からぬ考えばかり浮かぶ。
「…くだらないこと考えんのはよせよ」
まるで俺の頭の中を覗いたかのタイミングで、矢野が忠告する。
:08/08/26 00:58
:SH905i
:fijO4rPk
#676 [みい]
「ああ」
「ま、淕に取られないようにせいぜい気いつけるんだな」
「…分かってる」
分かってんだよ、んなこと。お前に言われなくたって。
「学校では俺が守ってやってるからさ、心配すんな!」
「むしろお前が近付くな」
女みたいに頬を膨らます矢野に苛立ちを覚えながら、俺は柚と淕の後ろ姿を思い出していた。
:08/08/26 00:59
:SH905i
:fijO4rPk
#677 [みい]
……………………………
「失礼しまーす…」
今日も学校帰りに制服のまま、病室に訪れる柚。
「柚、おかえり」
俺がそう言うと、いつもは「ただいま!」ってベッドまで駆け寄って来てくれる。
…いつもは。
:08/08/26 01:00
:SH905i
:fijO4rPk
#678 [みい]
なのに今日はこちらに近づこうとしない。
「柚?」
呼び掛けても、困ったような表情を浮かべ、俺をちらっと見たあと目を泳がせる。
…ああ、わかった。このせいか。
「柚、こっちにおいで」
:08/08/26 01:01
:SH905i
:fijO4rPk
#679 [みい]
「で、でも…」
柚は目線を俺に向けると、すぐに俯く。
「いいから。早く」
こう言われるともう抗えないのか、柚は覚悟を決めたかのようにゆっくりと俺がいるベッドに歩を進める。
上半身に何も纏っていない俺、に。
:08/08/26 01:01
:SH905i
:fijO4rPk
#680 [みい]
怪我のせいで風呂に入れない俺は、ベッドの上で自分で身体を拭いていたのだ。
で、幸か不幸か、ちょうどその最中に柚が来たってわけ。
「柚、拭いて」
自分で持っていた濡れタオルを柚に手渡す。
「えっ?」
:08/08/26 01:02
:SH905i
:fijO4rPk
#681 [みい]
柚は動揺を隠せないらしい。それを裏付けるように、みるみるうちに顔が紅く色づく。
「早く」
低い声で促せば、柚はぎゅっと目をつぶり、震える手で俺の胸板へタオルを押し付ける。
そのままゆっくりとタオルを滑らせる柚。
それでも欲張りな俺は、柚が目を閉じたままなのが気にくわない。
:08/08/26 01:03
:SH905i
:fijO4rPk
#682 [みい]
「柚、そこもう拭いた」
「あっ…」
不意にぶつけられた不満に驚き一瞬目を開けるが、またすぐに逸らされる視線。
「ちゃんと見ろよ」
手で柚の顎を捉え、自分のほうに向かせる。
…今にも泣きそうな顔。
:08/08/26 01:04
:SH905i
:fijO4rPk
#683 [みい]
違う。俺はこいつにこんな顔をさせたいわけじゃない…。
「…悪い、もういいよ」
俺は柚からタオルを取り返すと、手早く身体を拭き、パジャマを着た。
その間中、柚はずっと俯いていた。
着替え終わると、物音もなくなって苦しい沈黙。
:08/08/26 01:05
:SH905i
:fijO4rPk
#684 [みい]
「…り、淕、今日は遅いねっ?」
静まった病室に響く、柚の明るい声。
「あ、でも昨日来たもんね!今日は…来ないかな…」
俺は…
「そうそう、聞いて!淕ったら昨日の帰り…」
「俺は、『淕』じゃない」
:08/08/26 01:06
:SH905i
:fijO4rPk
#685 [みい]
「…え?」
柚の無理に作った笑顔が強張る。
「淕のほうがよかったか?」
あの時親父がこっちに連れてきたのも、
ガキの頃、お前に出会ったのも、
今、お前の目の前にいるのも。
全部、『淕』のほうが?
:08/08/26 01:07
:SH905i
:fijO4rPk
#686 [みい]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
更新すとっぷします

遅くなってしまって本当
すみませんでした..

こんなふがいない主です
が、読者様の感想がパワ
ーの源ですので、是非一
言お願いします..


>>1みい感想板
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
:08/08/26 01:13
:SH905i
:fijO4rPk
#687 [アカリ]
:08/08/26 08:07
:SH903i
:☆☆☆
#688 [我輩は匿名である]
気になるぅ!あげヘy
:08/08/26 21:36
:W51SA
:NFVJSe3s
#689 [我輩は匿名である]
気になる〇2テあげ
:08/08/27 01:54
:W61SH
:yTgEusu6
#690 [我輩は匿名である]
あげる
:08/08/29 12:51
:W61SH
:WGOQlDg.
#691 [トモ]
あげぇ(*・∀・*)
:08/08/30 00:49
:SH906i
:6Z7l2hw.
#692 [ま]
あげ

:08/08/31 12:50
:SH903i
:☆☆☆
#693 [みい]
「蓮?何言って…」
「淕のほうがいいだろ?」
こんな妬いてるのが見え見えな台詞、みっともない。
「淕といたほうがお前は楽しそうだもんな」
違う。こんなことを言いたいんじゃない。俺は…。
柚はまた泣きそうな顔をしている。
:08/09/02 01:35
:SH905i
:FXcze9Wc
#694 [みい]
淕はお前を笑わせることができるのに。
俺はお前をそんな表情にしかしてやれない。
「…淕んとこに行け」
俺の言葉を聞き、柚はとうとう涙を流し始めた。
泣かせるつもりなんかなかった。なのにまた俺は…。
「…っ、嫌になった…っ?」
:08/09/02 01:36
:SH905i
:FXcze9Wc
#695 [みい]
途切れ途切れに、柚が声を発する。
「…は?」
「あた、しの事…っ、嫌いになっちゃった…っ?」
嫌いになった、だと?
んなわけねえだろ。嫌いになんか、ならない。なれるわけがない。
「……」
でも、何も言えない。
:08/09/02 01:37
:SH905i
:FXcze9Wc
#696 [みい]
こんな状況の今でさえ、お前が好きで、愛しくて。抱きしめてやりたくて堪らない。
「あたしはっ…あたし、は…」
でも、もう止める。柚を幸せにしてやれるのは、俺じゃない。
「あたしはっ…!蓮が好き、だもんっ…」
柚が駄々っ子のように泣きじゃくる。
:08/09/02 01:38
:SH905i
:FXcze9Wc
#697 [みい]
「蓮だもん…!意地悪だし、全然笑ってくれないし、冷たいけど…私が好きなのは蓮なの!」
どうしてこいつはこうも俺を困らせるんだ。
たった今ついたばかりの決心が、すぐに揺らぎ始める。
気持ちを落ち着かせるように、大きく息をついた。
「…俺といると、お前多分泣かされてばっかだぞ?」
:08/09/02 01:38
:SH905i
:FXcze9Wc
#698 [みい]
「泣かないもん」
今だって泣いてるくせに。大体お前は泣き虫すぎるんだ。
「やだ…お願いだから…別れるなんて、言わないで。…嫌いに、ならないで…」
柚が俺の腕を弱く握る。
…俺は、とことんこいつの涙に弱いらしい。
:08/09/02 01:39
:SH905i
:FXcze9Wc
#699 [みい]
俺の腕を握る柚の手に、ぎこちなく自分の手を重ねる。
「…ん、悪かった。嫌いになんかなってねえから」
前言、すべて撤回。
所詮俺には、こいつを手放すことなんて出来ないんだ。
「…ほ、んとに?」
:08/09/02 01:40
:SH905i
:FXcze9Wc
#700 [みい]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
祝
700
更新すとっぷします

少なくて申し訳ない

パワーの源となる、皆様
の感想お待ちしています


感想板に矢野の絵
をうpしたので、よかっ
たらご覧下さいませ

そちらの方も感想頂ける
とうれしいです(>Д<)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
:08/09/02 01:45
:SH905i
:FXcze9Wc
★コメント★
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