【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#251 [No.015◆vzApYZDoz6]
「泣いてるの?」
「えっ?」
「それとも笑ってるの?」
「……どうだろ。わかんない」
「そう。でも気にしてない」
「うん……ごめんね」
「どうして僕にあやまるの?」
「……わかんない」
「そう。でも大したことじゃない」
「うん……そうだね」
「泣き止んだね」
「えっ?」
「なんでもない」
:08/11/03 19:41
:P903i
:LUmIhgZI
#252 [◆vzApYZDoz6]
>>251『私と涙』
なんか『僕と影』っぽくしようと思ったがネタが全部思い付かなかった。すまん。
:08/11/03 19:42
:P903i
:LUmIhgZI
#253 [No.016◆vzApYZDoz6]
「さぁ始まりました恒例の中の人シリーズ! 今回で早くも4回目となったこのシリーズですが、今回のゲストの制服の女の子さん、どうですかお気持ちは?」
「『早くも』って分かってるなら自重したほうがいいんじゃ…」
「これがNo.016だから、ざっと考えて4回に1回。まだ大丈夫…だと思います多分」
「いや大丈夫じゃないと思うんですが…だって私の中の人であるMIさんのイラスト4つ使った内、2回も中の人シリーズってのはさすがに…」
「……正直に言うとネタが思い付かなかっただけなんです。後回しにしまくった結果なんです。ごめんなさい」
「……まぁ、がんばってください…」
:08/11/03 19:43
:P903i
:LUmIhgZI
#254 [◆vzApYZDoz6]
>>253『中の人と対話、その4』
なんかもう何言っても言い訳にしかならないので何も言いません。ごめんなさい。
:08/11/03 19:44
:P903i
:LUmIhgZI
#255 [No.017(1/2)◆vzApYZDoz6]
これは、とある女の人のお話。
美しい緑野の丘。
暖かい陽気をもたらす太陽の下では、たくさんの色鮮やかな花が咲き誇り、甘い香りに誘われた蝶々がひらひらと舞い遊んでいます。
そんな緑野の片隅で、彼女は1人で住んでいました。
彼女は花を摘んだり蝶々と戯れながら、たった1人で住んでいました。
彼女が1人、周囲の人間から離れるには、理由がありました。
美しく平和な世において、彼女は調和を乱してしまうからです。
彼女の手にかかると、すべては正常に動きませんでした。
水を汲もうと井戸車を回転させれば、それは土を掘りました。
辺りを照らそうと松明を握れば、たちまち火が燻りました。
会話に混ざろうと隣人たちの中に入れば、いつも隣人たちを困惑させました。
だから、彼女は1人でいなければなりませんでした。
それでも丘の住人たちは孤立した彼女を憐れみ、手を引いて調和の中に引き戻そうとします。
でも、それに従った結果はいつも同じでした。
いつしか彼女は、手を引かれる事を拒むようになりました。
そうしても『孤立した存在がある』という事実が丘の住人たちを苛み、調和を乱してしまいました。
彼女と世界の間には、越えがたい隔絶が横たわっていました。
そんな彼女には、双子の妹がいました。
:08/11/03 19:46
:P903i
:LUmIhgZI
#256 [No.017(2/2)◆vzApYZDoz6]
世界に受容されない彼女に対し、妹は世界に寵愛されていました。
彼女は妹を介してでしか調和を手にすることができません。
土を掘った桶に妹が触れれば、土はたちまち水へと変わりました。
燻り煙が立つ松明を妹が握れば、みるみるうちに立派な火が灯りました。
妹が彼女の手を引いて隣人たちの中に入れば、そこには笑顔が溢れました。
情深く慈愛に満ちた人格の妹は、関わる全ての人々に幸福をもたらしました。
彼女も妹が側にいるとき、あるいは妹の呼び掛けに手を振るときなどは、気持ちが多く満たされていました。
いつしか彼女は、妹を欲し妹と共にありたいと強く望むようになりました。
それに連なり、彼女が妹の側にいる時間は長くなっていきました。
しかし、美しく平和な世において、彼女が正常者になることを、世界は拒みました。
世界が拒んだその瞬間、天に雷雲が立ち込めます。
雷鳴が轟き、彼女の側にいた妹は稲妻と共に雷に打たれました。
物言わぬ姿となった妹を見た他の住人たちは、とうとう耐えきれず、調和を乱す彼女を罵ります。
彼女は住人たちを拒みました。
住人たちの罵詈雑言に、耳を抑えて悲鳴を上げました。
その瞬間、再び雷鳴が轟き、雷が次々と住人たちを打ち付けていきました。
彼女は妹の亡骸を抱え、一晩中悲哀に暮れました。
いつの間にか眠ってしまった彼女が目を覚ますと、妹はおらず、さらには物言えず耳も聞こえなくなっていました。
代わりに調和を手に入れた事に彼女が気付くのは、彼女が永遠の孤独を認識する直後の事でした。
:08/11/03 19:47
:P903i
:LUmIhgZI
#257 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:48
:P903i
:LUmIhgZI
#258 [No.018◆vzApYZDoz6]
荒れ果てた大地で、男は限界に刻一刻と近づいていた。
敵は予想外に多い。だが、彼はそれでいいと思っていた。
でなければ自分がここにいる意味がない。
「でも…倒れる訳にはいかない…!」
殿軍とは厳しいものだ。
多勢を相手にしなければならず、決して帰還は許されない。
褒め称えるものがいたとしても、それを見るのは叶わない。
だが、それでもいいと思っていた。
少なくとも仲間を守るための覚悟は背負ってきた。
そしてそれは、彼だけではなかった。
「よう、ボロボロじゃねーか兄さん」
「!?」
:08/11/03 19:50
:P903i
:LUmIhgZI
#259 [No.018◆vzApYZDoz6]
目の前に現れたのは、同じ覚悟を背負った者。
己の命と等しく大切な戦友だった。
「お前ら……何しに?」
「何しにってそりゃー、てめーを助けに来たに決まってんだろ」
「さてと。後は私たちがやるけど…どうする?」
「ま、無理はしねー方がいいんじゃねーの?」
「……ふん。これぐらい…どうってことないさ!」
体に力が湧いてくる。
背負ったものが、少しだけ軽くなった気がした。
「そんじゃー、いっちょ暴れてやりますか!」
「2人とも気をつけてね」
「ああ。…生きて帰って、酒でも飲もうぜ!」
頷きあい、3方に別れて敵の元へ駆け出す。
勝ちは見えない殿戦闘。それでも3人は戦った。
例え彼らの望みが叶わなくとも、同じ覚悟を背負っている仲間がいるから。
:08/11/03 19:50
:P903i
:LUmIhgZI
#260 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:55
:P903i
:LUmIhgZI
#261 [No.019◆vzApYZDoz6]
「うーん……」
「どうしたの女将?」
「僕はなんで女将をやってるんだろう、って思って」
「そりゃあ女顔だからでしょ?」
「いや僕男だよ?女将って女性がやるものじゃないのかなぁ…」
「まぁ先代の女将が病気で引退したはいいけど、代わりがいなかったもんねぇ。あなた次男だしいいんじゃない?」
「いや次男だからといって女将になる必要はない気がするんだけど…」
「気にしないの。さ、お仕事、お仕事っと」
「はぁ…もしかしてずっと女将続けなくちゃいけないのかなぁ…せめて声がもっと低ければ断る理由も──」
「すみません、予約してた鈴木です」
「──はいはい、ありがとうございます。鈴木様ですね、あちらのお部屋ですよ!ご案内致しますね〜」
「……何だかんだでやっぱりサマになってるじゃない。さ、お仕事、お仕事っと」
「……はぁ…僕、本当にこれでいいのかなぁ…」
:08/11/03 19:56
:P903i
:LUmIhgZI
#262 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 19:59
:P903i
:LUmIhgZI
#263 [No.020(1/2)◆vzApYZDoz6]
「125、126、127・8・9…130!」
先程から数えているのは、倒した敵の数だった。
倒しても倒しても湧いてくる敵を前に、途中から数を数えて今のでちょうど130人目。
実際はもっと倒しているはずだ。
近くの敵を粗方倒したところで、仲間と背中合わせになった。
「オメー何人やった?」
「さぁ…いちいち数えていない」
「なんだ、つまんねーの」
言いながら、向かってくる敵に銃口を向ける。131人目。
それにしても数が多い。2人合わせて300人以上は倒してる筈だが、一向に減る気配がない。
敵の銃弾はほとんど当たらないが、さすがに集中力は続かない。
こちらの銃は弾装無限のコスモガンだから、弾切れはありえない。
しかし敵は一個大隊なので、向こうのネタ切れもありえない。
敵が弾を撃ち尽くすまでに、こちらの集中力が切れて撃ち殺されることも否めない。
なんとかする必要がある。
:08/11/03 20:01
:P903i
:LUmIhgZI
#264 [No.020(2/2)◆vzApYZDoz6]
「オメー何か考えろよ。このままじゃちょっとキツいぜ?」
「君が裸になればいいじゃないか。口調は男でも性別は女だしね」
「んなこと言ってるとオメーを先にブチ殺すぞ!!……チッ、湧いてくるんじゃねーよ!」
次から次へと襲いかかる敵を前に、軽口を叩く仲間を相手にする暇もない。
寄ってくる相手から順に撃ち落とす。135人目。
だが依然として数が減る気配はない。
こうやって確実に倒していくしか方法はないだろう。
135人目が地に臥したのを合図に、軽口な男も銃を構える。
「じゃ、そっちは頼んだよ。いつでも服を脱いでくれ」
「うるせー、大きなお世話だこのド変態が!」
それを口火に、群がる敵の中へ轟音とともに駆け出した。
:08/11/03 20:02
:P903i
:LUmIhgZI
#265 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:04
:P903i
:LUmIhgZI
#266 [No.021◆vzApYZDoz6]
日もどっぷり浸かった放課後の音楽室。
茜色の夕陽が射し込む部屋の片隅で、フルートを奏でる少女がいた。
軽やかでいて心に響く音色に誘われた1人の青年が、窓からその少女を眺めている。
演奏が終わると、青年は手を叩いて喜んだ。
「すげーすげー、感動しちゃったよ俺」
「ありがとう。…あなたは?」
「ああ、俺? これだよこれ」
そう言って青年は、おもむろに懐から1枚の布切れを取り出した。
否、布切れではない。淡いピンク色で、レースの装飾がついている。
「体育館のロッカー室でこれ盗ってきた帰りにフルートの音色が聞こえてさー、来てみたr」
「キャー!! 下着泥棒よ、誰かー!!」
:08/11/03 20:05
:P903i
:LUmIhgZI
#267 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:07
:P903i
:LUmIhgZI
#268 [No.022(1/2)◆vzApYZDoz6]
「隊長、敵襲です! 敵の数は1体、夜目の使いすぎによる疲労感が蓄積された充血眼です!」
『よし、疲れ目対応式ビタミン配合目薬を使うぞ。兵隊はリフトの用意、戦車隊は発射口の蓋を外す準備に取りかかれ! 機動隊は対象の瞼とまつ毛の固定だ! 総員、直ちに行動開始!』
「了解!」
「こちら機動隊、大変です隊長! 敵はドライアイも併発しているらしく、まばたきが多すぎて瞼を固定できません!」
『何だと!? 仕方ない、手が空いた隊員をいくらかそちらへ送る! 固定は目薬発射の瞬間だけでいい、俺が合図を出したら全力で固定にかかれ!』
「了解!」
「隊長! こちら兵隊、リフトの準備完了しました!」
「こちら戦車隊、蓋の取り外し完了しました!」
『よし、戦車隊は照準の補正に取りかかれ! 兵隊は5名で発射台の固定、それ以外は直ちに機動隊の援護に向かえ!』
「了解!」
「こちら機動隊! 照準補正完了しました! いつでも発射できます!」
『よし、発射準備! 機動隊総員、瞼の固定に取りかかれ!』
「了解!」
:08/11/03 20:08
:P903i
:LUmIhgZI
#269 [No.022(2/2)◆vzApYZDoz6]
「固定完了しました!」
『よくやった。戦車隊、目薬発射!』
「発射!!」
びちゃっ
『バカ、量が多すぎる…まぁいい! 機動隊、瞼の固定を解除! 目の周りを拭われる前に直ちにその場から待避だ! 総員、待避せよ!』
「了解!」
「総員、待避ー!!」
「隊長! 総員待避完了しました! 欠員ありません!」
『よし、よくやった。戦車隊は目薬の格納だ』
「あっ…申し訳ありません隊長!」
『どうした!?』
「蓋を現場に忘れてきてしまいました!」
『馬鹿野郎ー!!』
完…?
:08/11/03 20:09
:P903i
:LUmIhgZI
#270 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:10
:P903i
:LUmIhgZI
#271 [No.023◆vzApYZDoz6]
「ないてるの?」
「……ちがうもん」
「ねぇ、あるいてもあるいてもおつきさまのいちがかわらないのって、なぜかしってる」
「えっ?」
「きみがさみしくないように、だって」
「……さみしくなんかないもん」
「そうだね、きみにはかえるおうちがある。おかあさんがさみしいよ」
「……うん。じゃあかえるね。ばいばい、くまさん」
「うん、ばいばい」
:08/11/03 20:11
:P903i
:LUmIhgZI
#272 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:13
:P903i
:LUmIhgZI
#273 [No.024◆vzApYZDoz6]
「おーっし、揃ったな。点呼!!」
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「欠員なし! お前ら、準備はいいか!」
「はいっ!」
「よし、行くぞ野郎共!!」
「おおー!!」
「え、サッカーは11人いないと参加できませんよ」
「なにー!?」
完…?
:08/11/03 20:14
:P903i
:LUmIhgZI
#274 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:15
:P903i
:LUmIhgZI
#275 [No.025、026、031(1/3)◆vzApYZDoz6]
かつて無力だった人間は、神に祈り力を求めた。
そして神は望むように力を与えた。
しかし、人間はその与えられた力で争いを始めた。
「……出てこい、そこにいる者」
そしてまた今日も、新たな争いが始まろうとしている。
「よく分かったな」
「その手に握られた木刀、見紛うわけがない。『猛虎』画竜点睛、手合わせ願う」
「その呼び名いつも思うけど虎か竜どっちかにしろよ。俺?俄然タイガースwww」
「うるさい! 一瞬で息の根を止めてやる!!」
「やってみな。最強のケチャップ使いの実力、思い知らせてやるよ」
互いに、未開封のケチャップを懐から取り出した。
素早く封を開ける。
「ちゃんと内ブタも剥がさねぇとな」
「遅いッ!! 死神の大釜と言われた実力見せてやる!」
内ブタを剥がしている猛虎なんちゃらさんに死神の大釜が詰め寄る。
「必殺・ケチャップキーック!」
大釜さんの右足がドゴオォォ!とかいうなんか凄い音を立て画竜さんの腹に突き刺さった
いや大釜使えよ大釜
つうかケチャップはどうした!
:08/11/03 20:16
:P903i
:LUmIhgZI
#276 [No.025、026、031(2/3)◆vzApYZDoz6]
「おぅふ!!」
崩れ落ちる画竜さん、勝利を確信し笑う大釜さん。
「口ほどにもない…最強のケチャップ使いが聞いて呆れる」
しかし画竜さんは、何事もなかったかのように起き上がった。
「うっそぴょーんwwwwwwww」
「なっ…!?」
「どうした? 夏休みの宿題を7月中に終わらせて9月1日に意気揚々と宿題を提出しようとしたら1教科まるまるやり忘れてる事に気付いた時みたいな顔して」
「うるさい! だがなぜ? 今のケリを食らって立てるはずが…」
「落ち着けよ。自分の足見てみな」
言われるがままに足を見ると、ケチャップがたっぷりと付着していた。
「ケチャップを壁にした。ただそれだけ」
「ケチャップが…服に…貴様アァァ!! よくもこの私の服を汚したn」
「まぁこんなくだらない話にレス数使ってられないしお前死刑でいい? よし分かった」
「待て! まだ何も言ってn」
「奥義・ハイドロケチャップ!!」
思い切りケチャップのボトルを握りしめた。
フタが飛び、大量のケチャップが吹き出す。
大釜さんはケチャップまみれになって死んだ。ケチャップ(笑)
:08/11/03 20:17
:P903i
:LUmIhgZI
#277 [No.025、026、031(3/3)◆vzApYZDoz6]
こうして争いは幕を閉じた。
「姉さん!? 姉さん!!」
だが、争いは新たな争いを呼ぶ。
「あっ、おっぱいでかい可愛い子が。そして舌を出している!」
「ケチャップまみれで死んでる…あなた、姉さんに何をしたの!?」
「律儀にやるなぁ。まぁ安心しな、すぐにお姉さんのところへ行かせてやろう」
「許しません…あの世で姉さんに詫びなさい!」
「姉さんよりかは言葉遣いはいいな」
互いにケチャップの封を開ける。
だが互いに動かず、静寂が訪れた。
「……そろそろ帰っていい?」
先に静寂を破ったのは画竜さんだった。
手慣れたように間合いを詰める。
「くっ…!」
大釜さんの妹もケチャップで牽制する。
「うめぇ」
だが画竜さんはケチャップを食べていた。
「そんな…」
:08/11/03 20:21
:P903i
:LUmIhgZI
#278 [No.025、026、031(4/3)◆vzApYZDoz6]
「よし、もう2つ以上の意味で面倒だし殺しちゃうぜ!」
画竜さんが一瞬で間合いを詰める。
「秘奥義・木刀ケチャップ!!」
ケチャップが塗りたくられた木刀が振り下ろされ、大釜さんの妹は絶命した。
こうして、争いは幕を閉じた。
「ケチャップうめぇwwww」
最強のケチャップ使い、画画竜さん。
後の弁慶である。
:08/11/03 20:22
:P903i
:LUmIhgZI
#279 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:24
:P903i
:LUmIhgZI
#280 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:25
:P903i
:LUmIhgZI
#281 [No.027、036(1/3)◆vzApYZDoz6]
俺はここのところ毎日、放課後になると理科室に足を運ぶ。
今日も回転椅子に座って、片付け忘れられた試験管に入ったよく分からない液体を、ただただぼんやりと眺めている。
特に目的も意味もない。
人気のない旧校舎の端にある、薬品臭の漂うこの部屋が、何となく落ち着くだけ。
「まーた来てる、この子ったら。いつも私の椅子に座るんだから」
というのは建前で、本当は試験管ごしに俺を覗きこむ科学担当の美人教師に会うためだったりする。
別に好きだとかそんな訳じゃない。
学校嫌いな俺が話していて唯一落ち着くのが、この先生だからだ。
「別にいいだろ。それより何これ、ピンク色だけど」
「アンモニアとフェノールフタレインを混ぜた溶液よ。小学校でやらなかった?」
先生は答えながら近くの実験机からパイプ椅子を引っ張ってきて、俺の隣に腰掛けた。
「さぁ……どうだったかな」
「そんなことより。あなた、今日体育サボってたでしょ? ダメよ、遊んでないでちゃんと授業出なきゃ」
「んー……」
ほら、と先生が俺の手から試験管を取り上げた。
手持ちぶさたになった右手を腹の上に乗せて、今度は天井を眺めた。
先生は試験管立てに試験管を差して、奥の給湯室に向かった。
「今日はコーヒーか紅茶、どっちにする?」
「……コーヒー」
:08/11/03 20:27
:P903i
:LUmIhgZI
#282 [No.027、036(1/3)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。
「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」
「サンキュ」
角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。
先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。
「あなた最近元気ないわね」
先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。
%8
:08/11/03 20:29
:P903i
:LUmIhgZI
#283 [No.027、036(2/4)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。
「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」
「サンキュ」
角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。
先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。
「あなた最近元気ないわね」
先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。
「うーん…」
「授業もサボりがちみたいだし。学校は楽しくない?」
「……どうなんだろ」
つまらない訳じゃない。
友達もそれなりにいるし、放課後の理科室も好きだ。
けど、何か物足りないというか、満たされる事がない。
やりたいことがあるわけでもない。
何もしていないのに疲れていくような感覚がある。
心から楽しいかと言われると、たぶん楽しくない。
:08/11/03 20:30
:P903i
:LUmIhgZI
#284 [No.027、036(3/4)◆vzApYZDoz6]
「やっぱりアレね、女よ女。彼女作っちゃいなさい」
「いいよ、彼女なんて。めんどくさいし」
「いい若者が何言ってるの。あなた黙ってればそれなりにカッコいいんだから、彼女ぐらいすぐできるわよ」
「どういう意味だよ…」
「そのままよ。あなたのお守りも楽じゃないんだから」
「…そういう事ね」
コーヒーを一気に飲み干し、カップを置く。
少しだけ口に苦味が残っていた。
彼女ができたところで、俺の気分は晴れないと思う。
曇りの原因は分からないけど、そんな気がする。
「ご馳走さま」
「おかわりはいい?」
「うん」
俺はまた天井を仰いで、目を閉じた。
やっぱり、ここが一番落ち着く。
いつもボーッとしてるか先生と世間話をしてるだけだけれど、それだけで気分が良くなった。
ふと目を開けると、先生がかなり間近で俺を覗きこんでいた。
:08/11/03 20:31
:P903i
:LUmIhgZI
#285 [No.027、036(4/4)◆vzApYZDoz6]
「…顔が近いよ、顔が」
「寝られでもしたら困るからね。ドキドキした?」
ふふっ、と笑いながら、カップとお盆を片付けに再び給湯室に向かっていった。
それを目で追っていると壁の時計が視界に入った。
すでに午後5時半を回っている。
俺は少ない荷物を持って立ち上がる。
ちょうど給湯室から先生が出てきた。
「んじゃ、帰るわ」
「うん、おつかれさま。気をつけてね」
そのまま踵を返し、ドアに向かう。
ドアノブに手をかけたところで、また呼び止められた。
「明日の放課後もちゃんと来なさいよ」
見ると、先生がひらひらと手を振っていた。
「……気が向いたらね」
帰り道、理科室の方に目をやると、俺が座っていた回転椅子に先生が座っているのが見えた。
たぶん、明日の放課後も俺はあの椅子に座っているのだろう。
俺は少しだけ笑って、自転車を漕ぎだした。
:08/11/03 20:32
:P903i
:LUmIhgZI
#286 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:35
:P903i
:LUmIhgZI
#287 [No.028◆vzApYZDoz6]
現代とはまた異なる世界。そこには、半獣と呼ばれる人達が暮らしていました。
ライオンの半獣ライとウサギの半獣ビイは仲良しです。
「ね、ライ。肩車して」
「肩車好きだな、ビイは。ほら」
「わぁ、高い高い!」
無邪気に喜ぶビイを、ライは微笑ましく眺めています。
そこへ、どこからか小鳥がやってきました。
鳥たちは楽しげに囀り、ビイの回りを飛び回ります。
「やっぱりライに肩車してもらうと楽しいね」
「そうか。それならいつでもしてあげるよ」
「やったぁ!」
ビイは喜び、鳥たちと一緒に口ずさみました。
ライは嬉しそうにそれを眺めていました。
:08/11/03 20:37
:P903i
:LUmIhgZI
#288 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:39
:P903i
:LUmIhgZI
#289 [No.029◆vzApYZDoz6]
(うおー! 待ちに待った初デート! どうしよう何喋っていいか分からないぞ…何の話題がいいんだろう? 趣味とか? いやそれじゃありきたりすぎるよな…いや、こうしてる間にも時間は過ぎていくんだ、何としても彼女が飽きないようにしなければ! 何を喋れば…いや、ここはひとまず行動だな…よし!)
(キャー! まさか彼から誘ってもらえるなんて…どうしよう緊張して何すればいいのか分からない…うわっ、いつの間にか変な歩き方してた! 恥ずかしー…彼は見てないっぽい、かな…どうしよう何か変な間ができちゃった、あたしのせい? あたしのせいよね? 謝った方がいいのかな、いやでもいきなり謝るのも何か変だし、でも何か変な空気だし、せっかく誘ってくれたのに…うん、とりあえず謝ってみよう…よし!)
「「…あのっ!」」
「…え? あ、いや…どうしたの?」
「ううんあたしは別に…あなたこそ… ……?」
「? …あっ、雪だ…」
「………ふふっ」
「………あははは」
「…綺麗ねー…」
「そうだね」
「…あの、今日は誘ってくれてありがとう」
「いや…うん。…じゃあ、行こっか」
「……うん!」
完…?
:08/11/03 20:39
:P903i
:LUmIhgZI
#290 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:41
:P903i
:LUmIhgZI
#291 [No.030◆vzApYZDoz6]
サンタクロース。
クリスマスの前夜に、子供たちへ夢と笑顔を運んでくるお爺さん。
出身地はデンマーク領のグリーンランド。
現在、公認サンタクロースは129人いて、クリスマスイブの夜にトナカイが引くソリに乗って子供たちにプレゼントを配る。
恰幅のよい体型に真っ白でふくよかな口髭、赤と白のサンタ服に身を纏った、夢と希望の象徴だ。
「──っていうのがサンタクロースだと思ってたんだけどな、俺は」
「ハン、そんなもん人間が作り出した偶像じゃろが。実際は赤いブーツと白い口髭以外自由じゃわい」
「口が悪いサンタだな…」
「知っとるか? サンタは良い子にはプレゼントを配るが、悪い子には豚の内臓を配るんじゃよ」
「やめてくれ、気分が悪くなる」
12月24日深夜、イギリスはマンチェスター郊外の小さな酒屋、その裏手。
俺は『本物の』サンタクロースに弟子入りした。
その修行として、今からヨーロッパ地区の子供たちにプレゼントを配るところだ。
:08/11/03 20:42
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:LUmIhgZI
#292 [No.030(2/3)◆vzApYZDoz6]
「0時ちょうどから始めて、5時までには終わらせなきゃいかん。チンタラしとる暇はないぞ」
小さな酒樽の上であぐらをかき、三つ編みの白い口髭をいじっているこのジジイが、本物のサンタクロースらしい。
「移動手段はこのバイクじゃ。ワシの力で排気音は聞こえんし、姿も見えないようにしておる。空も飛べるわい」
「リアリティーがあるのかないのかハッキリしろよ」
「空飛ぶバイクもファンタスティックじゃろ?」
「ファンタスティックの使い方間違えてるだろ…」
気にしたら負けじゃ、とジジイは高らかに笑った。
「今年はヨーロッパをお前さんに任せる。ヨーロッパと言っても、地中海周辺の国も入るから結構広い。回り方を確認するぞい」
ジジイはそう言って、懐から地図を取り出した。
ヨーロッパとその周辺の世界地図だ。
ジジイは言葉に合わせて地図をペンでなぞりながら説明した。
「まずはロンドン経由でフランス北部を迂回し、ベルギーじゃ。
そこからドイツとその周辺を時計回りに回ってスイスからフランス南部へ、今度は地中海沿岸の国を左回りじゃ。ポルトガルを忘れるなよ。
トルコまで来たら黒海を左回りでギリシャまで向かい、海を渡ってイタリアへ。
イタリアを北に抜けたらあとは内陸じゃ。回り方は自由じゃからな。
終わったらモスクワに入って、フィンランドからノルウェーまで経由、そこからアイスランドへ飛んで、最後にアイルランドとイギリス北部を回っておしまいじゃ。
分かったか?」
:08/11/03 20:43
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#293 [No.030(3/3)◆vzApYZDoz6]
「ちゃんと覚えてるよ」
「ならいい。さぁ、そろそろ0時じゃ、バイクに乗れ」
ジジイが地図をしまいながら、傍らにあるバイクのサドルをポンポンと叩いた。
俺はプレゼントの入った袋を担ぎ上げ、促されるままにバイクに乗り、エンジンをかける。
エンジンはかかったが、驚いた事に排気音はしない。ジジイが言ってたやつだろう。
たぶん、姿も見えていないはずだ。空の飛び方は分からないが何とかなるだろう。
「ワシは他を回らんといかんからついていかんぞ。まぁせいぜい頑張れや」
腕時計で時間を確認し、秒読みを開始する。
23時59分54秒。…5、4、3、2、1──
「──じゃあ、行ってくる!」
「失敗するんじゃないぞ」
0と同時に地面を蹴り、スロットルを回す。
ほとんど間もなく、車輪が地面から離れて車体が浮き上がった。
続いて急激な加速上昇。
こちらを見上げて手を振るジジイに続き、眼下に広がる郊外の街も、みるみる小さくなっていく。
「最初はロンドン経由でフランス北部、だったな」
頭の中で地図を確認し、後ろに目をやる。
プレゼントが詰め込まれた袋についているワッペンが、ニヤニヤといやらしくこちらを見ていた。
これはジジイの趣味らしい。
「ヘマなんかするかよ。さて、と…行くか!」
高度が十分上がったところで、スロットルを回した。
今夜の俺は、サンタクロースだ。
俺が乗ったバイクは、イギリスの上空を静かに駆け抜けていった。
:08/11/03 20:44
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#294 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:48
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#295 [No.032(1/2)◆vzApYZDoz6]
「兄ちゃん、ミルクちょうだい」
「瓶1本だね。200セントだよ」
「え、高くない? もうちょっとまけてよ」
「そんな事言われてもねぇ…じゃあ10セントだけなら」
「んなもん消費税にすらならないじゃん! 200セントまけてよ」
「それじゃタダじゃないか…どこの子か知らないけど困ったねぇ」
:08/11/03 20:49
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:LUmIhgZI
#296 [No.032(2/2)◆vzApYZDoz6]
「アメあげるからさ。お願い、母ちゃんに安く買ってこいって言われてるんだよ!」
「すごい母ちゃんだな…仕方ない、じゃあ20セントおまけだ。これ以上は無理だよ」
「実は150セントしか持ってなくて…」
「絶対にそれが理由でしょ。……仕方ない、今回は150セントにしてあげるけど、次からはちゃんと持ってくるんだよ?」
「やりー! 150セントって言ったね!?」
ちゃりちゃりーん
「って200セントあるじゃん!」
「言ったんだから150セントで売ってよ」
「まったく仕方ないな。ほら、売ってあげるよ」
「へへへ、母ちゃん喜ぶぞー。じゃあね、兄ちゃん!」
「次からはちゃんと買うんだぞー!」
「分かってるってー!」
「……ふー、行っちゃったか。…お釣りを渡さなかった事には気付かれなかったな。大人を騙そうなんて20年早いぜ少年!」
完…?
:08/11/03 20:50
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#297 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:51
:P903i
:LUmIhgZI
#298 [No.033◆vzApYZDoz6]
今日も1人の夜がやって来る。
窓から見える月を眺めながら、今日も想う。
あなたはどんな未来を見るのだろうか。
私はどんな未来を見ていたのだろうか。
その未来はもう叶わない。
あなたはどんな未来を望んでいたの?
あなたはどんな未来を築こうとしたの?
「……ねぇ、あなたの──」
私が共に歩むのは駄目だったの?
あなたの未来はそこにしか無かったの?
絶対に、私はあなたの隣を歩けないの?
1人の夜は、もう嫌だから。
「──後を追ってもいいかな?」
:08/11/03 20:52
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:LUmIhgZI
#299 [◆vzApYZDoz6]
:08/11/03 20:53
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:LUmIhgZI
#300 [No.034、039◆vzApYZDoz6]
蝉の鳴き声をBGMに、真っ白な砂浜。
キラキラと光る方に目をやると、そこには波打つガラス。
空にはやたらめったらもこもこした積乱雲。なんか青雲のCMに出てきそうな。
「そう、海!」
「海だな」
「感動が薄いですよ、ワトソン君!」
「それは忝ない、何に感動すればいいか教えてくれんかね」
「だから海に!」
「うん、コンクリ抱えてダイブはきっと気持ちいいぜ姐さんよ」
「いえなんでもありませんアニキ! でもすごいねー、こんなところに海があったなんて」
「いや、でも車停めて見るほどか…?」
「これだから男は…この綺麗な海を堪能しようとは思わないの?」
「水着すら無いのに海で何するんだよ…」
「だから感d「よし帰ろう」
:08/11/03 20:54
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:LUmIhgZI
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