浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#701 [笹]
:10/02/18 00:32 :D905i :4LI2ZH.E
#702 [笹]
:10/02/18 00:34 :D905i :4LI2ZH.E
#703 [笹]
:
:
目の前で繋がった手と手
真っ赤な着物が背を向けて
貴方に詰め寄る
見たくもない光景
だけど目が離せない
今すぐ追い払いたい
だけど今のあたしは無能
もどかしさと悔しさに
涙を浮かべても
貴方は気付いてくれなくて‥
:10/02/18 20:11 :D905i :4LI2ZH.E
#704 [笹]
「彼女は、首筋に
黒子がありました‥」
「‥やめとくれよ
もうあの子は居ないじゃないの」
頬を這った赤い爪
それに手を添えて微笑した
:10/02/18 20:12 :D905i :4LI2ZH.E
#705 [笹]
壱助さん‥やだよ
あたしが子供だから?
あたしじゃ満たされないから?
あたしは‥貴方がいいのに
:10/02/18 20:12 :D905i :4LI2ZH.E
#706 [笹]
「まぁ、まぁ」
そう言うと壱助さんは
赤い爪を優しく払いのけ
睫を伏せた
「‥壱助さん、抱いとくれよ」
甘ったるい声が響く
暴れすぎて食い込む縄
じりじりと痛みが熱さに変わる
:10/02/18 20:13 :D905i :4LI2ZH.E
#707 [笹]
悔しくて悔しくてたまらない
思いきり噛み締めると
布に滲んだ鉄分が
舌に流れ込んだ
「あの子と同じだろう?
あの子と何一つ変わらない‥
それとも何だい‥
あんな小娘を慕ってるとでも?」
挑発的に腕を首に絡ませて
紅に染まった唇を
壱助さんの首筋に寄せた
:10/02/18 20:14 :D905i :4LI2ZH.E
#708 [笹]
あの子って誰だろう‥
壱助さんの恋仲だった人?
あたしとは
恋仲でも何でもないのに
どうしてこんなに
気になっちゃうんだろう‥
壱助さんには
あたしなんか釣り合わない
わかってるのに
:10/02/18 20:14 :D905i :4LI2ZH.E
#709 [笹]
「香夜さんを‥ご存知で?」
微動だにせず唇だけ動かした
「まだまだ子供じゃないか‥
あんなのよりも‥ねぇ?」
そうだ‥
誰から見ても
あたしはまだ子供
壱助さんも
あたしのことなんて
相手にしてないかもしれない
:10/02/18 20:14 :D905i :4LI2ZH.E
#710 [笹]
蛇のように絡みつき
舌を頬に這わせた
「そうです、ね
確かに‥子供だ」
ほらやっぱり
期待して盛り上がってるのは
あたしだけなんだ
:10/02/18 20:15 :D905i :4LI2ZH.E
#711 [笹]
納得しようと
自らに語りかけても
溢れ出す涙は止まらない
今にも重なりそうな唇
思わず息をひそめた
「しかし‥」
―‥目の前で重なった
:10/02/18 20:15 :D905i :4LI2ZH.E
#712 [笹]
欲望をかき回すように
お互いを弄り
漏れる女の吐息と
冷静な顔つきの貴方
色がましいほどの接吻
耳にへばり付く音
その目にあたしは映らない
‥このまま消えてしまいたい
事が一気に重なりすぎて
自分を見失ってしまいそう
:10/02/18 20:16 :D905i :4LI2ZH.E
#713 [笹]
:
:
「ぎゃあぁああぁ!!!」
それは突然だった
いつの間にか二人は離れ
悲鳴を上げて悶える女の姿
ぺろりと舐めた壱助さんの唇には
真っ赤な血液
:10/02/18 20:17 :D905i :4LI2ZH.E
#714 [笹]
転がる女の口からも
同じ色の液体が滴る
「私は、好き者なもんで‥ね」
横目でその姿を見つめ
すぐさま腰を上げた
:10/02/18 20:17 :D905i :4LI2ZH.E
#715 [笹]
「げほっ‥んぐ
お前‥ふざけるな‥っ!!」
「連れを悪く言われては‥
流石に私も‥黙っちゃいない」
冷酷な視線が女を突き刺す
悲鳴に反応して
集まった男たちが刀を抜いた
「よくも‥貴様!!」
:10/02/18 20:18 :D905i :4LI2ZH.E
#716 [笹]
壱助さん‥殺されちゃう
逃げて壱助さん!!
しかしそれには目もくれず
すたすたと此方に向かってきた
もしかして‥最初から
:10/02/18 20:18 :D905i :4LI2ZH.E
#717 [笹]
「ふざけるのもいい加減に‥!!」
そう言った一人の男が
刀を壱助さんの背中に振り上げた
「どいつもこいつも‥
騒がしいです、ね」
:10/02/18 20:19 :D905i :4LI2ZH.E
#718 [笹]
―‥ドカッ!
そう言い終わる前に
すぐさま振り返り
余裕の回し蹴り‥
壱助さん‥貴方強すぎです
怖じ気づいた他の衆に
睨みをきかせると
「何時まで其処に‥居る気で?」
:10/02/18 20:20 :D905i :4LI2ZH.E
#719 [笹]
場に似合わないような
美しい手が襖を開けた
「おや、おや
随分と悪趣味な‥」
悪趣味って‥
好きで縛られてるんじゃない!!
ぼろぼろ涙を零すあたしの
口を塞いでた布を
簡単に解いて
ひょいと抱き抱えられた
:10/02/18 20:20 :D905i :4LI2ZH.E
#720 [笹]
「壱助さぁあんっ!」
「‥全く、だらしない」
呆れ顔に呆れ口調
結局はどんな対応でも
壱助さんなら許せちゃう
:10/02/18 20:21 :D905i :4LI2ZH.E
#721 [笹]
「‥どうしてだい?!」
急に背中から聞こえた
女の叫び声
「あの子が居なくなったら‥!
あの子が死んだら、
振り向いてもらえると
‥思っていたのに!!」
:10/02/18 20:22 :D905i :4LI2ZH.E
#722 [笹]
後ろを覗き込めば
狂気に犯された女が
あの真っ赤な爪で頭を掻きむしり
急に老いぼれたようで
‥まるで化け物
「あの子さえ居なくなれば‥
あんたはあたしの物だった
あの子が邪魔をしたんだ!!」
:10/02/18 20:22 :D905i :4LI2ZH.E
#723 [笹]
立ち止まり
真っ直ぐ前を見据えた壱助さんは
黙ってそれを聞いていた
「‥今度はその娘かい?!
どうしてあたしじゃ‥」
俯き滴る雫
こぼれた血液と混ざり合い
怪しく濁る
:10/02/18 20:23 :D905i :4LI2ZH.E
#724 [笹]
‥この人は
壱助さんを愛してたんだ
あの涙は
さっきあたしが流したものと
きっと同じ
憎しみや嫉妬
嫌らしい欲情に埋もれた
透き通ってたはずの心
なんだか
わかる気がした‥
:10/02/18 20:23 :D905i :4LI2ZH.E
#725 [笹]
「‥ちょいと、貴女は
履き違えてしまった」
ぽつりそう言い残して
振り向きもせずに、
―‥そして悲しい顔をした。
_
:10/02/18 20:24 :D905i :4LI2ZH.E
#726 [笹]
:10/02/18 20:29 :D905i :4LI2ZH.E
#727 [笹]
:10/02/18 20:31 :D905i :4LI2ZH.E
#728 [笹]
誰かに対する愛情は
大きければ大きいほど
失った時の悲しみが
憎しみに変わる
人格をも変えてしまう
愛は何よりも暖かく
そして恐ろしくもある
:10/02/21 18:50 :D905i :lVW6ewV2
#729 [笹]
:
:
あたしの母親と
あの遊女さんは
同じ顔をしてた気がする
酷く狂気におかされて
憎しみが溢れ出して‥
だけどその目の奥は
不釣り合いなほどに
孤独の悲しみに濡れ
未来に瞳を曇らせていた
:10/02/21 18:50 :D905i :lVW6ewV2
#730 [笹]
愛されたいと思うのも
愛したいと思うのも
‥人間の本質で
愛する人がいて初めて
心の支えができる
母親を許すわけじゃない
妹を殺す事も許されない
だけど‥
:10/02/21 18:51 :D905i :lVW6ewV2
#731 [笹]
「‥壱助さん」
「気になります、か」
あの表情が頭から離れない
ずしりとした感覚が
頭の先から流れ出す
「あの遊女さん‥、」
「妹を‥殺しました」
「‥双子の?」
「えぇ、」
:10/02/21 18:51 :D905i :lVW6ewV2
#732 [笹]
「壱助さんは‥恐ろしいですね」
そう言うと
驚きもせずに
むしろ納得してるみたいに
ほくそ笑んで目を細めた
「それだけ‥
魅了してしまうんだもの」
「私が‥
殺めたような物です、よ」
:10/02/21 18:52 :D905i :lVW6ewV2
#733 [笹]
壱助さんが悪いのかな
誰が悪い‥?
「誰も‥悪くないと思います」
「ほぉう‥」
壱助さんは
興味深そうにこちらを見つめ
楽に足を崩した
「愛されたいじゃないですか‥
誰だって」
:10/02/21 18:52 :D905i :lVW6ewV2
#734 [笹]
だって‥
あたしは愛を知らないから
愛されたいって思います
愛しても見捨てられて
それでも無理矢理に追いかけて
あたしに向けられたのは
痛いほどの言葉たちと
たくさんの醜い傷
お父さんに対する母の愛情に
あたしは負けてしまったの
:10/02/21 18:53 :D905i :lVW6ewV2
#735 [笹]
これが愛だと言うなら
もう誰も‥愛したくない
「香夜さん、」
それはとても優しくて
だけど厳しくて
「見返りを求めてしまえば
‥それは、ただの欲望だ」
「欲‥望?」
:10/02/21 18:53 :D905i :lVW6ewV2
#736 [笹]
「愛されると言うことは
誰にとっても本望です、よ
しかし‥
此方が得するような愛などない」
得なんかしなくていい
ただ同じ重さのものが欲しくて
「初対面の人を愛せと言われて
愛せる人などいないでしょう
‥自然とそんなものは
生まれるもので、香夜さん」
:10/02/21 18:54 :D905i :lVW6ewV2
#737 [笹]
だから何だと言うの?
「相手もまた‥然り
愛してと言ったって
‥無理なものは無理です、ぜ
偽りとなれば
また話は別ですが‥」
「運命ってことですか?」
運命‥そんな不確かなものを
壱助さんは信じないでしょう
:10/02/21 18:54 :D905i :lVW6ewV2
#738 [笹]
「自らが与え続ければいい
‥それだけの事、ですよ」
壱助さんは色男だから
そんな事が言えるんじゃないのか
与え続けて成果がなければ
疲れてしまうじゃない
:10/02/21 18:55 :D905i :lVW6ewV2
#739 [笹]
「お律さんが‥
私を慕ってくれていた
それは自然と起こった感情で
自らの自由な思いです。
しかしそれを私にも求めて‥
都合のいい話じゃあないですか
関係のない彼女の自由をも犯し
‥それが愛だとでも?」
貴方は何処までも大人で
:10/02/21 18:56 :D905i :lVW6ewV2
#740 [笹]
「与えれば、必ず与えられる
そんな保証が此の世に有るなら
‥ソレは偽りと化す
彼女はちょいとばかり
‥求めすぎた」
いつもいつも
何かを教えてくれる
:10/02/21 18:57 :D905i :lVW6ewV2
#741 [笹]
「分からないからこその
本物だと思うのですが、ね」
「ソレが本物なら‥
どれだけ辛くても‥そっか」
辛くても耐えられる
耐えられなくなった時
ソレは偽りに変わる
:10/02/21 18:57 :D905i :lVW6ewV2
#742 [笹]
「時に泣き、時に憎しみ
‥それが浮き世と言うもんで
誰かの幸福が
誰かの不幸になる‥」
じゃあ、あたしが
辛い思いをした時に
誰かが幸せになってたのかな
:10/02/21 18:58 :D905i :lVW6ewV2
#743 [笹]
他人の幸せを
願える人になれたなら
自分の幸せを
そっちのけにできたなら
‥それが一番の幸せ
偽りのない本物が手に入る
:10/02/21 18:58 :D905i :lVW6ewV2
#744 [笹]
『あの子さえ居なくなれば‥!!』
本物の愛を見つけて
"貴方が幸せなら其れでいい"
‥そのことに気付けたなら
「不幸は幸せに‥
変わるもんです、よ」
_
:10/02/21 18:59 :D905i :lVW6ewV2
#745 [笹]
:10/02/21 19:03 :D905i :lVW6ewV2
#746 [笹]
:
:
「それより‥!!」
「まだ、何か」
貴女は素直な娘だと
思うのですが‥
ちょいと怒った様子で
此方に詰め寄ってきた
ふわり、香る貴女
:10/02/21 19:04 :D905i :lVW6ewV2
#747 [笹]
「何ですかあれ!!」
大人の色気とは程遠い
首筋のあどけなさ
自然に染まった唇の色が
何とも‥柔らかく
「あれ、とは?」
じっと睨みをきかせても
今回ばかりは
怖じ気付かずに‥強気、と来た
:10/02/21 19:05 :D905i :lVW6ewV2
#748 [笹]
「さっき遊女さんに‥」
「はい、はい
近頃、あのような行為からは
疎遠だったもので‥
ついつい‥力んでしまい」
くすっと鼻であしらえば
不満そうに顔をしかめる
:10/02/21 19:05 :D905i :lVW6ewV2
#749 [笹]
確かにアレは
意図的なもので
思いの外、血が出てしまい
しかし
一体‥何だって言うんで?
「そうじゃなくて!!」
随分と今日は
はっきりと物を言う
:10/02/21 19:06 :D905i :lVW6ewV2
#750 [笹]
私に睨みをきかせるとは‥
何様のおつもりなのか、ねぇ
「誘惑に負けたんですか?!」
「‥誘、惑」
あぁ‥なるほど、ねぇ
:10/02/21 19:06 :D905i :lVW6ewV2
#751 [笹]
「妬いていらっしゃるんで?」
貴女は本当に
‥可愛らしい人だ
しかし、何時もは此処で
違うと頬を染めて声を張る
:10/02/21 19:07 :D905i :lVW6ewV2
#752 [笹]
「そりゃ‥妬きますよ」
「ほぉう」
どうしたもんか‥ねぇ
珍しい話だ
一向に目を逸らそうとせず
潤んだ瞳の色に魅了され
‥自分に呆れるもんで
:10/02/21 19:07 :D905i :lVW6ewV2
#753 [笹]
「よし、よし」
誤魔化そうと頭を撫でても
機嫌は直らず
‥しぶとい、ですね
「子供扱いしないでくださいぃ!」
そんなつもりは
さらさら無いのですが‥
:10/02/21 19:07 :D905i :lVW6ewV2
#754 [笹]
子供を相手にするほど
暇じゃあない
「では、何ですか
あのように‥されたいとでも?」
言い寄られては立場がない
やれやれと睫を伏せれば
:10/02/21 19:08 :D905i :lVW6ewV2
#755 [笹]
――――‥
やられだもんだ
_
:10/02/21 19:08 :D905i :lVW6ewV2
#756 [笹]
押し当てられた唇
随分と‥強引な方だ
盛りの猫ですか、貴女は
堅く閉じられた瞼が
時折ぴくりと動く
数秒押し当て満足したのか
急に離して頬を染めた
:10/02/21 19:09 :D905i :lVW6ewV2
#757 [笹]
「‥消毒ですかい?」
羞恥に溢れた熱を
瞳に目一杯溜めて
不満そうな唇
「‥下手くそ」
「へ?」
そう吐き捨てて含み笑い
:10/02/21 19:09 :D905i :lVW6ewV2
#758 [笹]
香夜さん‥
あんたは本当に
子供じみた事をするもんだ
「ちょいと‥
大人になったらどうです、か」
‥あんたが悪い
:10/02/21 19:10 :D905i :lVW6ewV2
#759 [笹]
その不満そうな唇に
思い知らせてやりましょう、か
「ふぁっ」
漂う桃色に、本日は‥身を任せ。
_
:10/02/21 19:10 :D905i :lVW6ewV2
#760 [笹]
:10/02/21 19:15 :D905i :lVW6ewV2
#761 [笹]
:10/02/21 19:19 :D905i :lVW6ewV2
#762 [笹]
:10/02/21 19:20 :D905i :lVW6ewV2
#763 [笹]
:
:
春になって
辺りの木々が鮮やかになる
新芽が生えて鶯が鳴く
暖かな空気と
鼻をくすぐる梅の香り
「‥香夜さん」
いろいろあったけど
壱助さんとは
一応仲良くやってる‥つもり
:10/02/26 16:21 :D905i :ABxgeLMY
#764 [笹]
相変わらず
意地悪してくるけど‥
「何ですか?」
突拍子もないことを言う
何を考えてるのかは
未だによくわからない
「行きます、よ」
とりあえず
肝心なところを言わないのが
壱助さん流なんだと思う
:10/02/26 16:22 :D905i :ABxgeLMY
#765 [笹]
「行くって‥何処へ?」
そんなあたしの質問には
耳も傾けず
流れるような細い指が
腕に絡まる
どきっとしてしまう
恐ろしいほどの貴方の色気
:10/02/26 16:23 :D905i :ABxgeLMY
#766 [笹]
:
:
怒ってるわけじゃないみたい
‥売られることはなさそう
いつもよりゆっくりと
下駄の音を緩くして
艶容な口元が柔らかい
だからと言って
笑ってるわけでもなく
いつもの仏頂面
:10/02/26 16:24 :D905i :ABxgeLMY
#767 [笹]
「もう春ですねぇー」
小鳥のさえずりに耳を傾ける
「えぇ‥そのようです、ね」
春が嫌いなのか何なのか
ちっとも嬉しくなさそう
:10/02/26 16:24 :D905i :ABxgeLMY
#768 [笹]
「壱助さんは
四季で一番いつが好きですか?」
そう問えば
横目でちらり此方を覗く
「‥貴女は?」
繋ぎ目から伝わる温かさ
春はさすがに
冷え性も治るのかな?
:10/02/26 16:25 :D905i :ABxgeLMY
#769 [笹]
「あたしは春が好きです!!」
だから今こうして
外を歩いているのが楽しい
「‥ほぉう
それはまた‥何、故?」
珍しく壱助さんが
あたしに興味をしめしてる
:10/02/26 16:25 :D905i :ABxgeLMY
#770 [笹]
春だから?暖かいから?
そんなことが理由なら
壱助さんはとても単純な事になる
「ぽかぽかして暖かいし、
ほら!小鳥のさえずりって
聞くと何だか幸せになるし!!
‥あとは、お花が綺麗っ」
「‥へぇ」
:10/02/26 16:26 :D905i :ABxgeLMY
#771 [笹]
‥自分から聞いておいて
そりゃぁないよ‥壱助さん
いつもと同じ無関心な声が
たった一言そう告げる
「で、壱助さんは?」
少し歩幅を大きくして
顔を覗き込む
:10/02/26 16:26 :D905i :ABxgeLMY
#772 [笹]
「ご存知ですかい?」
「‥何を?」
「春の陽気にさそわれて
動物たちが活動を、始める」
「だからいいんですよ春!!
賑やかじゃないですかぁっ」
「ついでに‥変質者も、ね」
:10/02/26 16:26 :D905i :ABxgeLMY
#773 [笹]
つり上がった口元と
冷たい視線が訴えた
「あたしの何処がっ‥
変質者なんですかぁっ?!」
「おや、おや
わからないとは‥可哀想な方、だ」
吐き捨てた言葉がぐさり
意地悪!意地悪ーっ!
:10/02/26 16:27 :D905i :ABxgeLMY
#774 [笹]
:
:
もうだいぶ歩いて街から外れた
人がめっきりいなくなり
真っ青な空が一面に広がる
「んぅー‥」
ぷうっと頬を膨らませる
正直歩き疲れたし
何処へ向かってるかもわかんない
:10/02/26 16:28 :D905i :ABxgeLMY
#775 [笹]
ただただ手を引かれる
少しだけ心細い
「‥」
「んわっ!!」
急に壱助さんの足が止まり
背中に顔が埋まった
鼻‥痛い
:10/02/26 16:28 :D905i :ABxgeLMY
#776 [笹]
「急に止まんないでくださ‥」
―‥ガンッ!!!
目の前の鮮やかな緑が歪み
一気に真っ暗になった
:10/02/26 16:28 :D905i :ABxgeLMY
#777 [笹]
:
:
ふわり鼻をくすぐる
体の中が色づくような
華やかな梅の香り
「痛たた‥ったぁ‥あぁ?!」
頭を抑えながら体を起こせば
一面に広がる梅の花
:10/02/26 16:29 :D905i :ABxgeLMY
#778 [笹]
柔らかな赤い花
さわやかな白い花
愛らしい桃色の花
‥天国?
そう疑ってしまうほど
こんな景色‥見たことない
:10/02/26 16:29 :D905i :ABxgeLMY
#779 [笹]
「‥石頭」
「へ?」
隣から聞こえたその声は
不機嫌そうな壱助さん
「ちょいと踵が‥
痺れてしまいやした、よ」
胡座をかいて
右の踵を軽くさすりながら
呆れたようなため息を漏らす
:10/02/26 16:30 :D905i :ABxgeLMY
#780 [笹]
ってか‥踵って
踵落とししたんかいっ!!!
どうりで頭が
割れそうに痛むわけだ
「壱助さん‥此処‥」
いつもならそこで
"酷ーい!!"なんてわめくのに
不思議とそんな思いが
この景色の中に吸い込まれていく
:10/02/26 16:30 :D905i :ABxgeLMY
#781 [笹]
「冬が‥好きでしたが、ね」
長い睫を伏せて
膝に落ちた花びらを愛でる
なんだか一つの作品みたいに
壱助さんは
こんな素敵な空間に
あっという間に溶け込んでしまう
:10/02/26 16:31 :D905i :ABxgeLMY
#782 [笹]
「今は、春‥ですかね」
「春‥春やっぱりいいですよね!!」
初めて意見が合った気がする
春の力は素晴らしい
:10/02/26 16:31 :D905i :ABxgeLMY
#783 [笹]
「しかし、そのうち‥」
純白の指で摘んだ
真っ赤な花びらをじっと眺めて
「夏が好きに‥なります、よ」
ふっと息を吹きかけると
踊るように舞った
‥―梅の香りに誘われて
:10/02/26 16:31 :D905i :ABxgeLMY
#784 [笹]
:10/02/26 16:38 :D905i :ABxgeLMY
#785 [笹]
:10/02/26 16:39 :D905i :ABxgeLMY
#786 [笹]
:10/02/26 16:40 :D905i :ABxgeLMY
#787 [笹]
:
:
壱助さんは早起きだ
とんでもなく早起きだ
目が覚めたらいつも
着物をきっちり着付けて
正座をしてお茶を啜ってる
もちろん激痛を伴う
顔面平手打ちの目覚ましを
あたしに喰らわせてから‥
:10/03/08 17:28 :D905i :6zJg1U3A
#788 [笹]
だけど今日は‥
すっと目が覚めた
痛みはない。
春の柔らかな風が頬をくすぐった
「おはよ‥ございます」
:10/03/08 17:30 :D905i :6zJg1U3A
#789 [笹]
呂律の回りきらない
寝ぼけ眼でそう言った
珍しく着くずした着物
胡座をかいてぼうっとしてる
まさか‥寝起き?
「随分と‥早いもんだ」
:10/03/08 17:31 :D905i :6zJg1U3A
#790 [笹]
よく見ればまだ日は昇りかけ
太陽の光がこちらに差し込む
「あぁ‥うんと
何か目が覚めちゃって」
胸元を整え髪を結い直せば
どことなく‥
穏やかな表情の壱助さん
:10/03/08 17:31 :D905i :6zJg1U3A
#791 [笹]
「おや、おや」
眠そうなその目は
とろんと睫で覆われ
無防備なまでの唇に
あたしの胸が鳴いた
どうしてこうも‥
いちいち色気を振りまくのか
いつだってあたしの鼓動は
忙しなく遊ばれる
:10/03/08 17:32 :D905i :6zJg1U3A
#792 [笹]
「夢でも‥見ました、か」
「‥夢、あぁ‥うぅん」
誤魔化すのは無駄だと
言わんばかりに
こちらに向けられた鋭い視線
「い‥壱助さんこそ!!」
:10/03/08 17:32 :D905i :6zJg1U3A
#793 [笹]
壱助さんこそ何だと言うのかしら
あたしの口は‥もう
とろけそうなあたしの頭の中は
まだまだ目覚めない様子
「何、か」
にこっとつり上がった口元に
応じるように瞳が笑う
:10/03/08 17:33 :D905i :6zJg1U3A
#794 [笹]
壱助さんが‥わ、笑ってる
相変わらず美しい手で
膝の上に頬杖をついて
うっすら浮かべた笑みを
惜しげもなく向けられた
何を企んでるのかしら‥?
「え‥ええっと」
:10/03/08 17:33 :D905i :6zJg1U3A
#795 [笹]
残念ながら寝起きの頭は働かず
‥もとから
働かす頭もないけれど
「‥ゆ、夢!
見たんじゃないですか?!」
訳の分からぬ発言を
壱助さんは軽く
クスッと鼻であしらった
:10/03/08 17:34 :D905i :6zJg1U3A
#796 [笹]
"壱助さんこそ
夢見たんじゃないですか?!"
うん‥意味がわからない
「ゆ、め‥
そうですねぇ‥見ました、ね」
珍しくあたしの問いかけに
まともに答えた‥!!
おかしい‥怪しいわよ
:10/03/08 17:35 :D905i :6zJg1U3A
#797 [笹]
ゆっくり昇る光が
壱助さんの頬を照らした
透き通るような肌
もう、恐ろしいくらい‥
「どんな夢?」
前のめりになり
興味津々に目を輝かせてみた
だって壱助さんが
自分の内を語るなんて
あり得ないことだから
:10/03/08 17:35 :D905i :6zJg1U3A
#798 [笹]
「ほぉう‥気になります、か」
勢いで突き出した顔は
案外大胆で‥
春風に揺られて
壱助さんの香りも運ばれてきた
:10/03/08 17:36 :D905i :6zJg1U3A
#799 [笹]
意地悪そうに
視線で体を撫でられて
急に帯びてきた熱を
誤魔化そうとまばたきを多めに
"はい"と頷けば
満足げに笑った
:10/03/08 17:36 :D905i :6zJg1U3A
#800 [笹]
:
:
それから少々の沈黙
なかなか開かない口
え‥まさか
このまま言わないつもり?
らしいと言えばらしいけど‥
:10/03/08 17:37 :D905i :6zJg1U3A
#801 [笹]
「そうです、ねぇ」
「早く教えてくださいよぉ!!」
「香夜さんは‥どんな?」
正座をして急かすあたしに
余裕たっぷりにそう言った
話をそらすのが本当に上手い
:10/03/08 17:37 :D905i :6zJg1U3A
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