他人の情事(18禁)
最新 最初 全
#901 [我輩は匿名である]
:11/03/27 08:50 :SH06B :zGYSXOoM
#902 [らん]
あげます
:11/04/01 21:43 :940P :m3a8hG.k
#903 [我輩は匿名である]
あげま
:11/05/13 23:45 :N04B :9NFqv91A
#904 [我輩は匿名である]
:11/05/28 09:54 :W62SH :9k4rt1XY
#905 [我輩は匿名である]
あげる
:11/07/02 11:32 :SA001 :vC9DWE36
#906 [我輩は匿名である]
:11/08/08 15:54 :SH001 :sP3BiKwk
#907 [我輩は匿名である]
ほしゅ
:11/08/27 14:03 :SH005 :ujx3QRnM
#908 [我輩は匿名である]
:11/09/15 10:00 :W64SA :IUebSndo
#909 [我輩は匿名である]
:11/09/15 13:48 :W64SA :IUebSndo
#910 [我輩は匿名である]
あげげ
:11/11/29 09:22 :SH02A :83vIn37s
#911 [我輩は匿名である]
ほしゅ
:12/01/15 09:11 :N02A :4xo.DeA.
#912 [我輩は匿名である]
:12/01/16 16:47 :N03B :☆☆☆
#913 [我輩は匿名である]
あげ。
:12/03/21 01:29 :iPhone :NCrM7Kyw
#914 [我輩は匿名である]
:12/04/02 00:31 :iPhone :752tOqpc
#915 [我輩は匿名である]
:12/05/03 12:47 :N04B :j/hqpD7I
#916 [我輩は匿名である]
アッー!
:12/05/06 08:41 :P06C :reewsxtc
#917 [、]
51-100
:12/05/12 16:03 :iPhone :9zYgfP7o
#918 [、]
〉〉51-100
:12/05/12 16:04 :iPhone :9zYgfP7o
#919 [我輩は匿名である]
:12/05/27 11:40 :K002 :e6se7X1w
#920 [我輩は匿名である]
あげます
:12/09/14 00:38 :S007 :KdYy4Csc
#921 [我輩は匿名である]
かなや
:12/10/29 16:46 :P06C :IEDvjHoA
#922 [我輩は匿名である]
:14/04/14 20:56 :SC-06D :TYgjQeRk
#923 [我輩は匿名である]
:14/05/09 19:18 :D705imyu :KZwf/OpQ
#924 [&◆JJNmA2e1As]
(´∀`∩)↑age↑
:22/10/01 19:35 :Android :rYsbLV12
#925 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age
:22/10/02 03:31 :Android :Ltpo.xA.
#926 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/04 23:13 :Android :nH.OoPsQ
#927 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの彼女は、とんでもない猫かぶりだった。
容姿はこれといって秀でていたわけではない。ただ、コミュニケーション能力は抜群にあったし、声と笑顔はめちゃくちゃかわいかったもので、おれはすぐさま虜になった。
「ねえね、きみ、頭いいの?」
:22/10/18 21:49 :Android :h3l12Mig
#928 [○○&◆.x/9qDRof2]
それがおれと彼女の、初めての接触だった。猫みたいなふうに首を傾げながら、それでもすこし高慢な雰囲気を漂わせながら、彼女はおれに話しかけてきた。
「え、ああ、まあ、うん」
「ふうん、勉強すき?」
「う、うん」
:22/10/18 21:49 :Android :h3l12Mig
#929 [○○&◆.x/9qDRof2]
「じゃ、今度教えて?」
おれは言葉もなく頷くほかなかった。きらきらした瞳に見つめられると、言葉が恥ずかしがって喉元から出てこなくなってしまうのだ。
しかしそれきり、彼女と会話を交わすことはなかった。おれは至極ふつうな男子生徒だったし、彼女はクラスメイトとのコミュニケーションで、毎日駆け回っていた。
:22/10/18 21:50 :Android :h3l12Mig
#930 [○○&◆.x/9qDRof2]
すこし、寂しい。いや、かなり寂しい。
彼女がほかの誰かに笑いかけるたびに、おれのなかの焦燥感が鎌首をもたげた。どうしようもなく愛しいその姿に、ただ一度でも触れてみたいと思った。いけないと知りながらも、情欲の炎は燃え上がるばかり。
:22/10/18 21:50 :Android :h3l12Mig
#931 [○○&◆.x/9qDRof2]
そしておれは、見てしまった。
彼女が、泣いている。斜陽を一身に浴びながら、ただただ泣いているのだ。
音はない。しゃくりあげる様子もない。ただ静かに、口元をかたくつぐんでいる。
「……見ないでよ」
:22/10/18 21:50 :Android :h3l12Mig
#932 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれの存在は、いつの間にか彼女にバレていたらしい。彼女はおれをねめつけて言った。
「あんたなんかには、ぜったい分かりっこないんだから」
おれはもうどうすればいいのかわからなかった。いつも愛らしい笑顔を振りまいている彼女が、泣きながら牙を剥いているのだ。
:22/10/18 21:50 :Android :h3l12Mig
#933 [○○&◆.x/9qDRof2]
おれは彼女にとって気の許せる人間でないから、触れることなんてできない。当然ながら同情さえも、いまの彼女にとっては余計なお世話といったところか。
:22/10/18 21:50 :Android :h3l12Mig
#934 [○○&◆.x/9qDRof2]
ほんとうは、その涙を拭ってやりたいと思ったし、冷え切った心身を抱き締めてやりたいと思った。行き場を失った衝動が、彼女のうちを食い破るのなら、それがすべておれに向けばいいのにと思った。
:22/10/18 21:51 :Android :h3l12Mig
#935 [○○&◆.x/9qDRof2]
それでも、おれは彼女にとって他人であり、さしたる会話を交わしたわけでもない。彼女からすればおれは日常を彩るただの記号で、下手をすれば踏み台にすらならない程度の存在なのだから、今のおれには彼女のためにしてやれることなど、なにひとつないのだ。
:22/10/18 21:51 :Android :h3l12Mig
#936 [○○&◆.x/9qDRof2]
どうしようもない沈黙がおれと彼女を包み込む。それでも彼女の涙が止むことはないし、おれの緊張が治まることもない。どうすればいいのだろうと思案したところで、おれにはなにも出来ない。
「出てって」
:22/10/18 21:51 :Android :h3l12Mig
#937 [○○&◆.x/9qDRof2]
そのときのおれには、彼女の言葉に従うのが精一杯だった。動揺が喉元でせせら笑って、声すら出せない状況において、むしろなにが出来たというのだろうか。
おれは彼女を救いたいという衝動に後ろ髪を引かれながら、やむなく背を向けた。
:22/10/18 21:51 :Android :h3l12Mig
#938 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女の特別になりたい。もう二度と泣くことのないよう、おれの胸で暖めてやれるよう。彼女がおれだけを、見てくれるように。
:22/10/18 21:51 :Android :h3l12Mig
#939 [○○&◆.x/9qDRof2]
そう一度覚悟を決めてしまえば、もうなにも躊躇うことなどなかった。
まず真っ先におれは彼女の友達になった。いや、友達というのはいささか無理があるかもしれない。彼女のグループの一員となった、というのが正しい。
:22/10/18 21:51 :Android :h3l12Mig
#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
まだ彼女はまっすぐにおれを見ることはなかったけれども、おれは確かに彼女の周囲に溶け込み、また、上辺といえども定期的に彼女と談笑を交わすようになった。
:22/10/18 21:52 :Android :h3l12Mig
#941 [○○&◆.x/9qDRof2]
そして彼女の周囲にいて改めて気付いたことといえば、やはり彼女の笑みは花も綻ぶほどにかわいいということである。笑うと、ちいさく口角がへこむ。すると年中赤いほっぺがすこし持ち上がって、やけに突っつきたくなる衝動に駆られる。
:22/10/18 21:52 :Android :h3l12Mig
#942 [○○&◆.x/9qDRof2]
もしかしたらおれは、彼女のことを加護すべき小動物だと認識しているのかもしれないとも思う。背丈は小さいし、よく転ぶ。おまけにちょこまかと、動き回る。正直言ってしまえば、我が家のハムスターにそっくりである。
:22/10/18 21:52 :Android :h3l12Mig
#943 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 21:52 :Android :h3l12Mig
#944 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 21:53 :Android :h3l12Mig
#945 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 21:53 :Android :h3l12Mig
#946 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/18 21:54 :Android :h3l12Mig
#947 [○○&◆.x/9qDRof2]
木枯らし吹きすさぶこの季節。万年遅刻魔のこの俺。今日も軽快に裏門の奥にあるフェンスを越える。
:22/10/19 06:28 :Android :A4ZzuHng
#948 [○○&◆.x/9qDRof2]
間宮 カケル 十七歳。カケル。その名の通り、いつかこの大空を翔けるようなデッカイことをやらかしたいと思ってる。.......なんて。
:22/10/19 06:28 :Android :A4ZzuHng
#949 [○○&◆.x/9qDRof2]
鼻唄まじりに昇降口までスキップする。冬の匂いって何か好き。深呼吸するとキンッて冷たい空気が肺いっぱいに広がって、五感が鋭くなる感じも大好き。上履きをパタパタ鳴らして誰もいない廊下を歩く。
:22/10/19 06:28 :Android :A4ZzuHng
#950 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺のクラスは2−C、三階のグラウンド側。このタイミングだとホームルームとかぶるなぁ。なんて考えながら窓の外を眺める。枯れた木の枝に三羽の雀(すずめ)。
:22/10/19 06:28 :Android :A4ZzuHng
#951 [○○&◆.x/9qDRof2]
昔、雛太(ひなた)と圭太郎(けいたろう)と、誰が一番高いとこまで登れるか競ったっけなぁ。ガキの頃からふざけたことしか言わない圭太郎。それに比べて寡黙(かもく)で男気溢れる、雛太。二人とも俺の幼なじみなんだけど、雛太は小学校に上がると同時に転校しちゃってそれっきり。
:22/10/19 06:29 :Android :A4ZzuHng
#952 [○○&◆.x/9qDRof2]
圭太郎はまぁいいとして、ひなた.......元気でやってっかなぁ。なんてセンチに物思いに耽っていると。
「間宮ああ!お前は、まぁた遅刻かあ!?」
:22/10/19 06:29 :Android :A4ZzuHng
#953 [○○&◆.x/9qDRof2]
学年主任の武田先生、通称ハゲ先が首にぶら下げたホイッスルをカチャカチャ振り回しながら怒鳴ってきた。その音量ったら半端ない。思わず飛び跳ねちゃった俺。
:22/10/19 06:29 :Android :A4ZzuHng
#954 [○○&◆.x/9qDRof2]
すると、ハゲ先の陰から長い巻き毛を細かく揺らしてクスクス笑う女の子が見えた。幽霊!?ビビりな俺は、またもやビックリ。だけど、よく見るとちゃんと足だって付いてるし、ちらっと見えた笑顔が、笑顔が.......か、
「わいい.......」
:22/10/19 06:29 :Android :A4ZzuHng
#955 [○○&◆.x/9qDRof2]
は?俺、いま、何つった!?
「何だ間宮?わけわからんこと言ってないで、はよ教室入れ!」
ハゲ先に首根っこをつかまれ、半ば強引に教室に放り込まれた俺。何だ何だと駆け寄ってくる圭太郎を無視して、さっきの彼女を目だけで追う。真っ白な肌に栗色の巻き毛。化粧っ気はなくてナチュラルな感じ。だけど唇はぷるんぷるん。
:22/10/19 06:29 :Android :A4ZzuHng
#956 [○○&◆.x/9qDRof2]
「もう、ガッとしてギュッとして、チュウゥゥゥってしたい.......」
耳元でいきなり聞こえた圭太郎の声のせいで、背筋に気持ち悪い心地が走る。
「なっななな何言ってんの?バッカじゃねぇ!?ぶぁーか!ぶぁーあぁか!」
:22/10/19 06:30 :Android :A4ZzuHng
#957 [○○&◆.x/9qDRof2]
変な汗をかきながらうろたえまくる俺を、鼻で笑う圭太郎。
「ストライクゾーンどんぴしゃってとこですか!」
至って冷静に俺の感情を逆なでする。
「だぁかぁらぁー!」
ハゲ先にも負けないくらいの怒鳴り声で圭太郎にかみ付く。
:22/10/19 06:30 :Android :A4ZzuHng
#958 [○○&◆.x/9qDRof2]
教室中がしんとしたところでホームルーム終了のチャイムが鳴った。もちろん俺は担任から呼び出し。こってり説教をくらって教室に戻ると、ニタニタと嬉しそうに圭太郎が駆け寄って来た。
:22/10/19 06:30 :Android :A4ZzuHng
#959 [○○&◆.x/9qDRof2]
「女の子のケツばっか追っかけてるからこんな目に合うんだぜ〜?んっとしょうがねぇなぁ、カケルちゃんは」
「カケルちゃん言うな」
頭を撫でようとしてくる圭太郎の手を思い切りよく振り払う。
「はぁぁ‥昔は可愛かったのになぁ.......俺のカケルちゃんを返せ!!」
そう言って今度は首を絞めてくる。
:22/10/19 06:30 :Android :A4ZzuHng
#960 [○○&◆.x/9qDRof2]
「やめとけって!今じゃ俺のが十センチは背ぇ高いんだぜ?」
いつまでもガキのイメージ引きずられてちゃ困る!そう思ってわざと襟を正しながら、ぴんと背筋を張って見せた。
:22/10/19 06:31 :Android :A4ZzuHng
#961 [○○&◆.x/9qDRof2]
「くっそぉ!正確には9.8センチだけどな!!もぉいいや‥せっかく聞いてきてやったのに、転校生情報.......お前には教えてやんないっ」
ぷいっとあっちを向いたかと思うと圭太郎はそのまま教室を出て行ってしまった。転校生って.......さっきの美少女?うそうそ、気になる!
:22/10/19 06:31 :Android :A4ZzuHng
#962 [○○&◆.x/9qDRof2]
「待ってくれよ親友〜!」
「るせっ!しっしっ!あっち行けよ!俺は忙しいの」
足早に廊下をすり抜ける圭太郎。さすがチビっこなだけあるぜ。
「待てよ圭太郎ぉ!ごめんってば圭ちゃん許して〜」
いつもこう言えばたいていのことは許される。ほら今回もこうやって
:22/10/19 06:31 :Android :A4ZzuHng
#963 [○○&◆.x/9qDRof2]
「しゃあねぇなぁ.......俺がいないと生きてけなぁい!っつったら許してやるよ」
「それはさすがにキモいって!」
二人で笑って階段を下りる。向かった先は音楽準備室。ここが圭太郎と俺のおサボりスポットだ。
「で?情報って何?どうせ名前とかどっから来たとかだろ?」
:22/10/19 06:31 :Android :A4ZzuHng
#964 [○○&◆.x/9qDRof2]
焦る気持ちが口に伝わりついつい早口になってしまう。
「まぁまぁそうせっつくんじゃねぇよ」
すると圭太郎は準備室の椅子に腰掛け、足を組んでから大きく息を吸った。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
:22/10/19 06:31 :Android :A4ZzuHng
#965 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺の喉がゴクリと鳴った。沈黙に耐えれなくて目をそらそうとした瞬間、
「やっぱやめた!自分で聞いた方がいいよ、こういう事は」
思わず前につんのめった俺はその勢いのまま圭太郎につかみ掛かった。
「そりゃないぜ圭ちゃぁぁあん!」
言ったと同時に口元を手で抑えられて「しー!」と人差し指を立てられる。こうなるとますます気になる謎の美少女。
:22/10/19 06:32 :Android :A4ZzuHng
#966 [○○&◆.x/9qDRof2]
「名前だけでも、」
「だぁめ!」
頑として口を開かない圭太郎に苛立ちながらも、こうなったら自力で聞きに行くしかないとよわっちい根性を奮い立たせていると
「なぁお前、とうどうひなたのこと覚えてる?」
急にトーンを抑えた圭太郎が神妙な面持ちで話し掛けてきた。
:22/10/19 06:32 :Android :A4ZzuHng
#967 [○○&◆.x/9qDRof2]
「え?あぁ、覚えてるよ。よく三人で木に登ったじゃん。お前と違って優しくてカッコよくて、俺の憧れだったよ」
それがいま、どう関係あんだよ!俺はそんな事よりどうやってあの美少女に近づくかを考える事に集中したいんだ。
:22/10/19 06:32 :Android :A4ZzuHng
#968 [○○&◆.x/9qDRof2]
「そっか.......お前、あれからあいつと会ったか?」
「だぁ!もぉ何なんだよ?会ってねぇよ!雛太が転校して、いまの一度も!見かけた事すらない!」
お願いだからシュミレーションの邪魔をしないでくれ。
「.......そっか、だったらいいんだ」
:22/10/19 06:33 :Android :A4ZzuHng
#969 [○○&◆.x/9qDRof2]
その時、圭太郎がどんな表情してたかなんて覚えてないけど、今なら想像がつく。きっと目新しいおもちゃを手にした子供のように、目をキラキラ.......いや、ギラギラ輝かせてたに違いない。
:22/10/19 06:33 :Android :A4ZzuHng
#970 [○○&◆.x/9qDRof2]
圭太郎の真意を知るのはこの数時間の後だった。まさか俺にこんな運命が待っていようなんて.......。
「ねぇねぇ、あの子の名前わかる?」
昼休み、まずは隣のクラスの女子にリサーチ。本当根性ないんだ、俺。こんな時だけ圭太郎のノリの良さが羨ましくなる。
:22/10/19 06:33 :Android :A4ZzuHng
#971 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あぁ、七川さん?なんか前にもこっちに住んでたことあるらしいよ」
思ってもみない名前以外の情報ゲット!七川さんかぁ.......名字もなんか可愛い。
「こっちに住んでたっていつ頃?」
「さぁ?あたしのクラスの子はみんな知らないって言ってたし、小さい頃じゃない?」
:22/10/19 06:33 :Android :A4ZzuHng
#972 [○○&◆.x/9qDRof2]
それだけ言うとナントカさんは行ってしまった。まだもうちょっと聞きたいことはあったけど、我慢我慢。次のターゲットを絞っていると、七川さんの周りに人だかりができているのが目にとまった。少しうつむいて顔を赤くしてる七川さん。そんな表情もたまらなく可愛い。
:22/10/19 06:33 :Android :A4ZzuHng
#973 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あぁあ〜お前いいの?あれ」
またも、俺の背後からちょうど耳元めがけて囁いてくる圭太郎。
「気持ち悪いなぁ、何がだよ?」
「あれだよあれ」
そう言って圭太郎が指さした方へ視線をたどれば、学年一、いや、校内一のモテ男、石橋一樹が視界に入った。何でも石橋に触れられたら、誰でもかれでもイチコロらしいのだ。その石橋が向かう先には.......なんと愛しの七川さんが!
:22/10/19 06:34 :Android :A4ZzuHng
#974 [○○&◆.x/9qDRof2]
「あっどうしよ!圭太郎!どうしたらいい?」
焦った俺は、やり場のない感情を圭太郎に訴えかける。
「知〜らね!自分で何とかすればぁ?」
そう言うと圭太郎は意地悪そうに歯を見せてヒヒヒと笑ってみせた。.......ぐ、ちぐじょー!どうすりゃいいんだこんな時!?俺はここでただただ指加えて見てる事しかできないのか?
:22/10/19 06:34 :Android :A4ZzuHng
#975 [○○&◆.x/9qDRof2]
それでも動こうとしないこの足.......ヘタレにもほどがある。そうこうしているうちに何とも華麗な手さばきで、石橋が七川さんの白魚のような手にそっと自分の手を重ねた。
:22/10/19 06:34 :Android :A4ZzuHng
#976 [○○&◆.x/9qDRof2]
終わった。
さようなら俺の愛しい人。せめて一言だけでも会話したかった。だけど次の瞬間奇跡が起こった。石橋の手を物凄い勢いで払いのけた七川さんが、俺めがけて走って来たんだ。半泣きで頬を紅潮させた七川さん。スローモーションで再生されてるような感覚。ゆっくり、ゆっくりと俺の方へ翔けてくる。
:22/10/19 06:34 :Android :A4ZzuHng
#977 [○○&◆.x/9qDRof2]
そのたび揺れる栗色の巻き毛。俺の方へ伸ばされる腕は折れそうなほどか細くて、思わず一歩前に出ると同時に飛び込んできた七川さんを、からだごと抱きとめた。
「カケルちゃんっ!」
:22/10/19 06:35 :Android :A4ZzuHng
#978 [○○&◆.x/9qDRof2]
わずかに聞こえた七川さんの声も「ヒュ〜♪」という圭太郎の口笛のせいで掻き消された。.......え?いま、何つった?カケルちゃん?疑問符を飛ばしながらも俺の心臓は限界を優に越えていた。
:22/10/19 06:35 :Android :A4ZzuHng
#979 [○○&◆.x/9qDRof2]
絶対、七川さんに聞こえてるよなコレ。だけどわずかに動くたび鼻をかすめる七川さんの甘い香りが、俺の正気を奮い立たせる。
「あっあの、七川さん?」
俺の胸元に埋もれる七川さんに、恐る恐る話しかける。すると俺にしがみついた七川さんの手に、さらに力が入るのがわかった。
「大丈夫だよ、もう恐くない」
:22/10/19 06:35 :Android :A4ZzuHng
#980 [○○&◆.x/9qDRof2]
よしよし、と栗色の髪を撫でてやる。そんなに全身で頼られちゃうと、いくらヘタレな俺でもカッコイイセリフの一つくらい言えてしまった。もちろん耳まで真っ赤だろうけど。はっと我に返ったのか、急に俺から離れた七川さんは俺よりさらに顔を赤くして戸惑いを隠せないようだった。
:22/10/19 06:35 :Android :A4ZzuHng
#981 [○○&◆.x/9qDRof2]
まごまごしているその仕草も可愛いすぎる。
「おい、ひなたぁー、お前そんなに大胆だったっけ?」
圭太郎の言葉に、俺は自分の耳を疑った。
ひ、ひ.......
「ひなたぁ!?」
からかってるとしか思えない。何て失礼なこと言うんだコイツは!さてはヤキモチ妬いてるな。
:22/10/19 06:36 :Android :A4ZzuHng
#982 [○○&◆.x/9qDRof2]
「圭太郎、何言ってんだよ!雛太なわけないだろ?ごめんね七川さん、コイツたまに変なんだ!」
:22/10/19 06:36 :Android :A4ZzuHng
#983 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/19 06:36 :Android :A4ZzuHng
#984 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/19 06:36 :Android :A4ZzuHng
#985 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/19 06:37 :Android :A4ZzuHng
#986 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/19 06:37 :Android :A4ZzuHng
#987 [○○&◆.x/9qDRof2]
:22/10/19 06:37 :Android :A4ZzuHng
#988 [○○&◆.x/9qDRof2]
笑ってごまかそうにも俺の頭をよぎったのは、さっき呼ばれた「カケルちゃん」の一言。え?まさか?うそ、だって.......。
「そう、そのまさかだよ。正真正銘、藤堂 雛太、本人だ」
踏ん反り返る圭太郎に目の前の七川さんもコクリと頷く。は?え?有り得ないだろ?
:22/10/19 06:40 :Android :A4ZzuHng
#989 [○○&◆.x/9qDRof2]
「だって、雛太は男だし!一緒に木ぃ登ったし!だいたい名字が違うじゃん!アイツ藤堂!目の前にいるの七川さん!!」
「親が離婚して.......こっちに帰ってきたの」
申し訳なさそうに上目使いでそう言ったのは七川さん。
「あはは、あ、そう、そうなんだ?」
多分俺いま、涙目。
「改めまして。七川雛多です。ただいま、カケルちゃん」
:22/10/19 06:40 :Android :A4ZzuHng
#990 [○○&◆.x/9qDRof2]
そういって、本人である証明の学生証をおずおずと見せる。刹那に、はっとした。ひなたは、女で.......七川さん?しかも“雛多”って!なになに?いつから漢字を間違ってたの?遠ざかる意識の中で“雛多”と圭太郎の手が俺を支えてくれるのがわかった。
:22/10/19 06:40 :Android :A4ZzuHng
#991 [○○&◆.x/9qDRof2]
いつかもこんなことあったっけ。嗚呼、そうだ、あの時。
それは。俺達がまだ木に登ってじゃれ合っていた日のこと。俺が木の枝にひっついてた何かのサナギを取ろうとして、木から落ちそうになったのを二人が支えきれずに三人一緒に落っこちて、仲良く病院送りになった日までさかのぼる。
:22/10/19 06:40 :Android :A4ZzuHng
#992 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺だけ処置が長引き、あとの二人は待合室で俺のことを待っててくれた。その時、まさかこんな会話がされてたなんて、当時の俺が知るはずもなく、
「転校、するんだ.......」
雛多のいきなりの告白にうろたえる圭太郎。
:22/10/19 06:41 :Android :A4ZzuHng
#993 [○○&◆.x/9qDRof2]
「もう会えないの?」
「わかんない.......だけど、次会う時にはちゃんと女の子らしくなってるから」
大きな目をさらに大きくして驚く圭太郎。
「カケルちゃんには、そのいつかまで言わないで。いまはまだ、このサナギにもなれてないけど。絶対、蝶々みたいに綺麗になって、綺麗に、なって.......カケルちゃんのとこへ戻ってくるから!」
ーーー「てな事があったわけよ!」
:22/10/19 06:41 :Android :A4ZzuHng
#994 [○○&◆.x/9qDRof2]
なんとか意識を保った俺は、引き続き昼休みの音楽準備室で昔話を聞かされた。俺の隣には、雛太改め、雛多がいる。もちろん俺と同じくらい顔を真っ赤にして。
「何て言うかその.......」
まごつく俺を見るに見兼ねた圭太郎が「ま、そういう事だから!後は二人でごゆっくり!」と、また意地悪そうにヒヒヒと笑って俺達を残し準備室から去って行った。
:22/10/19 06:41 :Android :A4ZzuHng
#995 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......ひ、雛多?」
ここにいるのがあの、ひなた?信じられない思いでいっぱいの俺を、雛多が笑顔で包んでくれる。
「あの時は、おてんばだったし、みんなわたしのこと男の子だって思ってたから.......でも、騙すつもりはなかったの、ごめんなさい」
:22/10/19 06:41 :Android :A4ZzuHng
#996 [○○&◆.x/9qDRof2]
そんな事はどうでもいい!
「俺んとこに戻ってくるって.......どういう意味?」
ヤベっ、圭太郎の意地悪がうつっちゃったかな。
「えっ」と小さく呟くと、さらに顔を赤くしてうつむく雛多。
「こっこういう意味って思っても、いい?」
:22/10/19 06:42 :Android :A4ZzuHng
#997 [○○&◆.x/9qDRof2]
そんなきみがめちゃくちゃ可愛い過ぎて、思わず日向を抱き寄せる。コクンとわずかに首が揺れて、きみの甘い香りが俺達を包む。人ってこんなにあったかいんだ。窓から漏れる光に反射して、きみの髪がキラキラ光る。
:22/10/19 06:42 :Android :A4ZzuHng
#998 [○○&◆.x/9qDRof2]
そういえば、雛太の髪も、柔らかかったっけ.......だけど、こんなにいい匂いはしなかったな。なんて、幼い頃の“雛太”の面影を、俺の傍らで小さくなってる“雛多”の姿に重ねてみる。すると、わずかに白い息を吐きながら、雛多がぽつりと呟いた。
:22/10/19 06:42 :Android :A4ZzuHng
#999 [○○&◆.x/9qDRof2]
「.......カケルちゃん、知ってる?」
その声が少しかすれてて、思わず耳を傾けると同時に、雛多の肩をもう一度強く引き寄せた。
「知ってる?青虫はね、空に恋い焦がれて一生懸命綺麗になるの。少しでも空に近づきたくて、羽まで伸ばして空を翔けるの.......」
:22/10/19 06:42 :Android :A4ZzuHng
#1000 [○○&◆.x/9qDRof2]
俺の胸にうずくまりながら、雛多が窓の外を見る。
「ねぇカケルちゃん.......わたし、蝶々になれた?」
「あぁ、俺にはもったいないくらい、綺麗.......に、なったよ」
自分で自分が恥ずかしい。俺ってこんなセリフ言えるんだ。
「まさか蝶に帰省本能があるとは知らなかったけどな!」
:22/10/19 06:42 :Android :A4ZzuHng
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194