ギンリョウソウ
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#690 [向日葵]
淡いピンク色の花。
椿が前に種を植え、育ててきたのだ。
それに、じょうろで水をやる。

「花が開く瞬間が見れたらいいんですけど……。……っ?」

椿はお腹をおさえる。

確かに今、チクンと痛みがあった。
気のせいかと思えば、またチクンとくる。
それは段々と時間差がなくなり、痛みは、次第に増していく。

「椿さま……?椿さま!大丈夫ですかっ!?」

椿は顔をしかめる。

ああ、あなた、産まれてくるのね。

⏰:09/04/03 02:48 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#691 [向日葵]
――――――――――…………

分娩室に椿が入って、30分が経った。

椅子に座っても落ち着いていられない要は、先ほどから立ったり座ったりを繰り返していた。

そこに、椿の父が、病院へ来た。
要は一礼する。

「椿は?」

「まだです。30分ほど前に入ったままです」

「そうか……」

父も落ち着かず、近くの窓から外を眺めたり、壁によっかかったりする。

⏰:09/04/03 02:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
「椿は……」

「……え」

「とても、軽く産まれてきてね。なんグラムかは忘れてしまったけど、私は毎日心配だったよ」

要は黙って話を聞く。

「それでも、生きようと、力強く泣く姿に、私は涙が溢れたよ。命というのは、本当に素晴らしいものだと思えた」

「……そうですね」

要も、今は分かる。

自分が父親になるんだと思えば、椿の父のように、ああなんて素晴らしいと思った。

「椿は、体が危ないそうだね」

⏰:09/04/03 02:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#693 [向日葵]
やはり、体の事は、安心出来ないと明智に言われた。

それでも今日まで、二人は光を信じて過ごしてきた。

「でも、私は、椿は大丈夫な気がするよ」

椿の父は、いとおしそうに、分娩室のドアを見る。
その中の椿を見守るように。
もしかすると、妻に重ねているのかもしれない。

要も、ドアを見つめる。

頑張れ……。

それしか言えないけど、要は思った。

―――――――
――――――――――

⏰:09/04/03 03:00 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#694 [向日葵]
――――――どれくらい、時間が経っただろう。

時計を見るのも、落ち着きなく動くのも疲れてしまった要は、ただただ椅子に座り、祈るように手を組み合わせて、額に押しつけていた。

目を、ふと閉じた時だった。

(…………ま)

「要は目を開ける」

何故か要は、真っ暗な空間にいた。
でもその空間の四方八方には、星のようにチカチカと小さな光が瞬いていた。

どうなってる?
疲れて寝てしまったのか?

⏰:09/04/03 03:05 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#695 [向日葵]
(と……ま……)

また聞こえた。
可愛らしい声だ。

温かい、黄色い光が、要の腕に宿る。
触ってみれば、ふかふかとしていた。
それはまるで、羽毛のよう。

(父さま……やっと、会えた……)

その声は、その黄色い光から聞こえてきた。

「……君は……」

言いかけた時だった。
突然、大きな泣き声が聞こえてきた。

要はハッとした。
すると、そこは元の病院だった。

⏰:09/04/03 03:10 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#696 [向日葵]
腕の中に、もう光はなかった。

ガチャと開けられると、白い布にくるまれたものを、看護婦が抱いて歩いてくる。

近づくにつれ、泣き声は大きくなっていった。

「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」

要は顔を覗き込む。

小さな小さな口を、目一杯開けて、その子は泣いていた。

ああ……僕たちの光だ……。

「あの、看護婦さん、娘は……」

父に言われ、要はハッとした。

⏰:09/04/03 03:14 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#697 [向日葵]
「椿……っ!!」

要は分娩室に入ろうとしたが、明智に止められた。

「落ち着きな。アンタお父さんだろ。ちゃんと姫の事話すから」

明智は淡々と語り出した。

――――――――
――――――――――――

ギンリョウソウ。

今思えば、もう少しマシな植物があっただろうに。

苦笑しながら、要はある所へ向かっていた。

それは、小さな挙式場。

⏰:09/04/03 03:19 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#698 [向日葵]
「とうさま?」

小さな手で、愛娘が要の人差し指を引っ張る。

「いまからどこにいくの?」

「母さまのお友達の結婚式だよ。さっき言っただろ?希望」

希望(のぞみ)。
愛娘につけた名前だ。
要が絶対に希望がいいと言って、回りの意見もきかずにつけたのだ。

「ふうん?」

何度説明しても分からない希望に笑いかけて、頭を撫でてやる。

黒く、綺麗な髪は、椿にそっくりだ。

⏰:09/04/03 03:23 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#699 [向日葵]
「あ、要!こっちこっち!」

式場に着けば、美嘉が手招きする。

「あ、希望っ!大きくなったねーっ。いくつになったの?」

「よーんっ」

短い指で、必死に数を表す。

そう、もうあれから4年も経つのだ。
要ももう少しすれば24歳になる。

「とうさまー。かあさまはー」

「……きっと来るよ」

要は空を見上げた。
今日はいい天気だ。

⏰:09/04/03 03:28 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#700 [向日葵]
自分達の挙式も、そういえば天気が良かった。
そして椿は、今まで見た中で、思わず見とれてしまうほど、綺麗だった。

「あーっ!」

希望が指をさす。
その方を見て、要は微笑む。

「椿」

「かあさまーっ!」

「要さま、希望、美嘉ちゃん」

椿は、ゆっくりした足取りでこちらへ向かってくる。
希望は待ちきれないのか、走って椿を迎えに行く。

「お待たせしました」

⏰:09/04/03 03:32 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#701 [向日葵]
――――――――
―――――――――――

「椿は……っ!」

希望が誕生した日、要は明智の様子から、最悪の事態が起きたと思った。

あまりに、明智が話さないから、苛立つ。

「早く喋れっ!」

「わーった。わーったからあまり騒ぐな」

フゥとため息をついて、明智は口を開いた。

⏰:09/04/03 03:34 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#702 [向日葵]
「お姫はな……」

ドクンと、鼓動が不規則になる。
音が出るほど、唾を飲み込むのに力が入る。

「……。びっくりするぐらい元気だよ」

思わずこけそうになるのを要は必死に耐えた。

「いっやーあれだけ心配してた体力もなんのその。母の底力?すごいねー」

感慨深げに頷くから、要は歯を食い縛る。

「だったら……深刻な雰囲気醸し出すなあーっ!!」

迷惑なほど、病院に要の叫びが響き渡った。

⏰:09/04/03 03:39 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#703 [向日葵]
―――――――
――――――――――

「越と柴くんもやっと結婚かー」
チャペルに向かいながら、美嘉が言った。

「結婚しても、とりあえずはあの家にいるんだってー」

「柴くんが我慢させられるんじゃ……」

同じ男として、要が柴に同情する。

「今までそんなんだから慣れたって」

その言葉に、三人は笑う。
唯一、希望だけが首を傾げていた。

「そういえば椿、どうして遅れたの?」

⏰:09/04/03 03:43 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#704 [向日葵]
椿が遅れた理由を、美嘉は知らない。
椿は少し照れ臭そうに笑う。

「検診です」

「え、具合悪いの!?」

「いえ……赤ちゃんです」

一瞬、美嘉は固まり、跳び跳ねるようにして驚いた。

「え、ええーっ!!うっそーっ!!」

「もうすぐ3ヶ月だっけ」

「はい」

望まなかった婚約。
そしていつの間にか求めあって結婚。

人生も、運命も、どうなるかなんて分からない。
だから、楽しい。

⏰:09/04/03 03:49 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#705 [向日葵]
友がいて、愛する子供がいて、大切な人がいて……。

こんなに幸せな事はない。

「ねえ椿、そういえば、ずっと前に、ギンリョウソウって何?って訊いたよね。わかったの?」

椿はとびきりの笑顔で頷いた。

「心を照らしてくれる、大切な存在の事ですわ」











*Fin*

⏰:09/04/03 03:52 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#706 [向日葵]
上の続きは気にしないでください


*ギンリョウソウ*END

⏰:09/04/03 03:53 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#707 [向日葵]
*アンカー*

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-710

*感想板*
>>684

良ければ一言お願いします(●´∀`●)

⏰:09/04/03 03:56 📱:SO906i 🆔:☆☆☆


#708 [乃愛]
あげこの話めっちゃ好きです

⏰:09/05/04 21:39 📱:F01A 🆔:☆☆☆


#709 [ひな]
あげ(*´`*)

⏰:10/01/10 11:52 📱:N905i 🆔:☆☆☆


#710 [我輩は匿名である]
失礼します。
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700

⏰:10/01/10 13:08 📱:S001 🆔:☆☆☆


#711 [我輩は匿名である]
>>401-450

⏰:10/01/10 18:55 📱:S001 🆔:☆☆☆


#712 [我輩は匿名である]
あげる

⏰:10/01/24 14:54 📱:N905i 🆔:☆☆☆


#713 [我輩は匿名である]
>>700-750

⏰:10/04/08 15:49 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#714 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800

⏰:10/06/11 23:42 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#715 []
o(^-^)oo(^-^)o

⏰:12/04/11 12:22 📱:SH01B 🆔:☆☆☆


#716 [我輩は匿名である]
これすきー!!

⏰:12/05/14 14:53 📱:Android 🆔:☆☆☆


#717 [匿名]
あげる

⏰:12/12/28 15:09 📱:KYL21 🆔:☆☆☆


#718 [&◆JJNmA2e1As]
完〜👩‍✈️👨‍🚒👩‍🚒👨‍🎨👩‍💼👨‍💼

⏰:22/09/30 18:45 📱:Android 🆔:☆☆☆


#719 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/01 21:54 📱:Android 🆔:☆☆☆


#720 [○○&◆.x/9qDRof2]
【銀ーsilverー】

 見上げた空にはたくさんの星が輝いていた。その日僕は空に輝く星達に誓ったんだ。


「星の色だ」

 夜、独りきりで誰もいない空き地のベンチに座っていると、いきなり誰かが話し掛けてきた。驚いて俯いていた顔を上げると目の前にはその声の主。だが、そこに立つ少女を見て更に驚いた。こんな暗い夜でもはっきりと分かるくらい顔が腫れている。

⏰:22/10/02 19:35 📱:Android 🆔:☆☆☆


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