【コラボ企画】秋のラノベ祭り投下スレ【withイラスト板】
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#201 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「…何のためにだ」

「…バーチャルワールド。確かにすごい発明だ。だが、それが開発されたことによってどれだけのゲーム会社が潰れたか。貴様にわかるか?貴様の親父もそうだ。このCOD開発部の責任者、開発部長だそうじゃないか。偉い身分になったものだ。あれ以来ここには侵入して来ないが、今頃は何をやっているのだろうなぁ」

この男はどうやら父の実状を知らないらしい。
そう思うとカイトの怒りは増してきた。

⏰:08/11/03 16:40 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#202 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「そんなのは逆恨みじゃないか!」

「だが事実だ!だから私は誓った!復讐してやろうと!だが流石はバーチャルワールドと造った会社だけある。有能な人材が多いらしくてね。私が開発したプロテクトでバグワールド自体を破壊することは阻止出来たが、その他の所で思わぬ反撃を喰らってしまった。奴らの反撃で、体力や戦闘能力は高められても無敵のバグモンスターは造れなかった」

⏰:08/11/03 16:41 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#203 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「バグモンスターを造って…どうする気だ?」

「放つのさ。この世界にね。君も身を持って体験しただろう?こいつらの強さを!このバグモンスターの軍勢、約五百万体があればいくら君たちでもどうすることも出来まい!さぁ、どうする?君達に決定権はない。戦ってやられるか、戦わずしてやられるかだ。全面戦争と行こうじゃないか!」

男は両手を仰いで叫んだ。

⏰:08/11/03 16:42 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#204 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「おい、いい加減やばいぞ!」

「全く…この僕が君なんかと背中を合わせて共闘することになるなんて…」

「うるせーな!俺だって本当はお前なんかに背中預けるのは嫌だっての!」


bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/47

背中を合わせに文句を言い合う二人の周囲じりじりと詰め寄る魔物の群れ。

⏰:08/11/03 16:42 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#205 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「さて、どうするか…」

「見渡す限り魔物魔物…万事休すだな」

ガイアはまだ余裕があるのか、笑みを絶やさない。
ラルティスは体力的に疲労があるのか、歯を食いしばる。

「ライトニング!」

内部に轟音が響くと、光の束がいくつも地面に突き刺さっていく。
魔物たちを串刺しにしながら光は止まらずに降り注ぐ。

⏰:08/11/03 16:43 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#206 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「クロスファイアストーム!」

再び聞き覚えのある声がすると、今度は巨大な炎の竜巻が追い撃ちを掛けるかのように魔物を一掃していった。
唖然としている二人の元に、苦もなく魔物を斬り捨てながら無表情の青年がやってきた。

「ガイア様、シンが足止めをしている間にお退きください」

⏰:08/11/03 16:44 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#207 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「クーロン、おまえよく無事だったなぁ」

傷一つ負っていない部下を見て、感心の声を上げた。

「私はともかく。正直、シンは厳しい所でしたが増援が参りましたので」

「増援だと?」

ラルティスが訝しげに眉を寄せる。

「えぇ、あのお二方です」

クーロンが振り向くと同時に走り去る二つの影。

「…え?今の、まさか…」

見覚えのある姿。
ガイアとラルティスは顔を見合わせた。

⏰:08/11/03 16:45 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#208 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
強く弾かれたカイトの体は軽々と宙を舞い上がった。
空中で体を捻って体勢を立て直し何とか着地する。
体には致命傷といえるほどの傷はないが、ダメージは結構ある。

「…ちっ」

カイトの正面には巨大な魔獣が待ち構えていた。
人間の数倍はある巨体に、鋭い牙と爪。
特別な剣でなくては傷すら付かない強靭な鱗。
暗闇で光る赤い眼光は常人ならば怯むだろう。
太く長い尾に、大きな双翼持つドラゴンであった。

⏰:08/11/03 16:46 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#209 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「さすがはドラゴン…といったところか」

カイトの感想に男は楽しげに笑った。

「その程度か?このドラゴンは四種類いるうちの最弱のドラゴンだぞ」

「馬鹿か。よく見ろよ」

カイトは小さく笑って皮肉を込めた。
指差す先にはドラゴンが。

「ご自慢の鱗が切り裂かれて、喉元から血が出てるぜ?」

⏰:08/11/03 16:46 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#210 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
言ってる間に、ドラゴンの傷はみるみるうちに癒えていった。

「最弱でも一応はドラゴンの眷属か。オート・リカバリーかよ…。それに…」

カイトは片膝を突いたまま、ダメージの回復を待つ。
カイトを囲うようにいくつもの巨大な影が揺らめく。

「いくら最弱のリトルドラゴンとはいえ、五体相手はきついっての…」

⏰:08/11/03 16:47 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#211 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
立ち上がろうとしたのもつかの間、けたたましい咆哮の次にドラゴンのブレスが五方向から襲う。

「くそっ…そりゃ怪我もするっつーの!」

大きく上に跳躍すると、岩を蹴りドラゴンとの間合いを取る、低い姿勢のまま着地して第二撃に備えた。
しかし次にきたのは攻撃ではなく、男性の声だった。

「カイト、交代の時間だ」

突然カイトとドラゴンの間に二つの影が立ち塞がった。

⏰:08/11/03 16:48 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#212 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
慌てて顔を上げると、そこには見たことのない二人がこちらに背を向けて立っていた。

bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/35

「な、何で…」

見たことはない。
だが、知っている。
聞き覚えのある懐かしい声。

「久しぶり…だな」

「助けにきたよ海斗」

五ヶ月前に失った…。

「本当に…父さんと姉ちゃん…?」

「そうだよ」と笑う姉の声をした女剣士。
信じられないが事実だ。

⏰:08/11/03 16:49 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#213 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「話は後だ」

「後は任せて!」

再び正面を向いた二人は剣を抜く。

「レイナ、アイテムで移動魔法エクステレポートの用意を。私がドラゴンを引き付けよう」

「了解、ケイ」

言うと、男がすぐに駆け出した。
ケイと呼ばれた父は、ドラゴンのブレスをぎりぎりだが素早い身こなしで避け、ドラゴンの体から体へ飛び移っていく。
装備が普通の剣だからか、決して攻撃はしない。

⏰:08/11/03 16:50 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#214 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
「行くよ、カイト」

bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/118

いつの間に詠唱を終えたのか、姉が声を掛けた時にはカイトの足元に魔法陣が出来ていた。
姉も父も足元に魔法陣がある。
カイトは灰色ローブの男に向き直った。

「俺は、父と姉が守ったこの世界を壊させはしない」

⏰:08/11/03 16:50 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#215 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
人差し指を突き付けて更に声を張り上げる。

「全面戦争だ!カオス・オブ・ドリームズの全ユーザー総勢二千五百万人が、貴様らバグワールドの軍勢に宣戦を布告する!」

発動した移動魔法の効果で、カイトの体は光の柱に包まれる。
ケイの声が聞こえた。

「カイト、強くなったな。だが、これからが正念場だな」

「わかってる」

⏰:08/11/03 16:51 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#216 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
ここは戦場だ。
俺は今まで人のために戦ってきた。
だから最後まで、人のために戦おう。
ただ今までと違うことが一つだけある。
今からは、人ためだけではなく、自分のためにも戦うのだ。

ここからは、俺の戦いだ。

⏰:08/11/03 16:52 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#217 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
>>142-216
『バーチャルワールド』
一応完結です

次の方どうぞ!

⏰:08/11/03 16:53 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#218 [◆vzApYZDoz6]
乙!
そして俺も書ききったので投下するぜ

今回使うイラストは全部です!
といっても短編ではなく、1〜3レスの場面切り取り形式となっております
自分でもよく分からんやつがあるので、軽い解説も交えていきます
使用イラストは名前欄参照!
たぶん150レスぐらいありますw

今夜中に投下できるかな、しかし
場合によっては誰か2次投下スレを立ててくだされw

では投下スタート

⏰:08/11/03 19:03 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#219 [No.001◆vzApYZDoz6]
「君には世界を救う指名がある」

数年前のある日突然、学校帰りの駅のホームでそう言われた。
あぁ、そういやそろそろ総選挙だったか。こういう勧誘は迷惑極まりないな。

なんて思いながら無視して歩く俺の前に、話しかけてきた男はご丁寧に回り込んだ。

「君にしかできないことなんだ。拒否権は存在しない」

そう言って手にしていた小包を、半ば無理矢理押しつけてきた。
そのまま踵を返しながら、俺を睨むように一瞥した。

「それが世界を救う鍵となる」

山程ある聞きたい事を口にする前に、男は雑踏の中に消えた。

仕方なく家に帰って小包を開けると、『鍵』とやらが入っていた。
お玉とエプロンと鍋つかみ。意味が分からない。

だから、とりあえず味噌汁を作ってみた。
美味かった。



そして今、俺は世界の恵まれない子供達に味噌汁を配ってまわっている。

⏰:08/11/03 19:04 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#220 [◆vzApYZDoz6]
>>219
『救済者』

味噌汁で世界を救った男のお話。
この時期の層化は厄介

⏰:08/11/03 19:06 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#221 [No.002◆vzApYZDoz6]
閉めきった教室。
窓側の一番後ろの席が、彼の探偵事務所だった。

彼は依頼が来た時以外はいつも決まって、眼下に広がるグラウンドを腑抜けた顔で眺めていた。
人はそれを見れば頼りない印象を持つだろう。

だが一度依頼が来れば彼は豹変する。
冷静沈着に物事を見つめ、どんな難事件であろうとたちどころに解決してしまう名探偵となる。

彼の噂は方々に広がり、毎日依頼が絶えなかった。
そして今日も、難題を抱えた一人の少女が教室のドアを開ける。

「まだいたの? あなたも毎日よくやるわね。あたしもう帰るから、最後鍵かけてよね」

そう言って少女は手にしていた鍵を放り投げ、そのまま帰ってしまった。
ちなみにこの教室のドアは立て付けが悪く、鍵をかけづらい。

「これは難題だ」

独り言にツッコミを入れてくれる相方はいなかった。

⏰:08/11/03 19:07 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#222 [◆vzApYZDoz6]
>>221
『高校生探偵の苦悩』

立て付け悪いとイライラするよね。

⏰:08/11/03 19:08 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#223 [No.003◆vzApYZDoz6]
ジンベエ の こうげき!
マシンガントーク!

「ちゃーっす! 俺ァ巷で流離のジンベエってぇ呼ばれてる現代に生きる武士(もののふ)よ! ん? このデコの傷? こりゃ昔だな、市政を苦しめる流れモンを懲らしめた時に一発食らっちまってな! ま、最終的には俺が勝ったんだけどよ! まぁいわゆる男の勲章ってやつよ! え? なんで他に傷がないかって? いやさ、戦った連中はたくさんいるけどよ、どいつもこいつも弱いのなんのって! 打ち出す拳にハエが止まるんじゃねーかってぐらい遅い遅い! いや本当にさぁ…ん? 便所で転んだんじゃねーか、ってあるわきゃねーだろんなこと! …色白なのは体質だよ体質! ほら舞い散る落葉に映えるだろ? 俺って秋生まれだからさ、そこら辺は意識しとかねーと! カッコいいだろ? そうそう、近くにいい場所知ってるんだけどよければ行かない? 俺の手にかかれば3分で絶頂n」

「行くかボケ」

こうげきは しっぱいに おわった!

⏰:08/11/03 19:08 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#224 [◆vzApYZDoz6]
>>223
『ポケモン的なシュール』

ジンベエ は ハートブレイク に なった!

⏰:08/11/03 19:09 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#225 [No.004◆vzApYZDoz6]
暑い。冬なのに暑い。
とにもかくにも暑い。

ふと室温計を見ると、35℃を示していた。暑い。
隣の湿度計は80%の位置に針が振れている。蒸し暑い。

優勝者には海外旅行が貰えるらしいけど、これ以上絶えられそうにない。暑い。

奥からデブの男がお盆を持って現れた。暑苦しい。ついでに見苦しい。
お盆の上に乗っているのは湿度80%の環境でも湯気が出ちゃうくらい熱々のうどん。あれ絶対熱いよ。舌火傷するよ。

とりあえずふうふうしてみるが、果たして意味があるのだろうか。なんにせよ熱い。
とりあえず啜ってみた。案の定熱い。

もうやめよう。バカらしい。体調も悪くなってきた。大体暑い。当然だけど暑い。

「暑いですねぇ」

そりゃそうでしょ、誰よそんな素っ頓狂なこと口に出して言ってんのは…ん?

「この大会にはダイエット目的で参加したの。あなたも?」

何でだっけ?
なんか海外旅行目当てで軽いノリで来たような気がする。

「まぁ、お互い頑張りましょう」

うーん。
まぁこの際ダイエットもアリか。
とかって考えたら心なしか気分が優れた気がする。暑いけど。

⏰:08/11/03 19:10 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#226 [◆vzApYZDoz6]
>>225
『我慢大会にて』

我慢大会に参加して、友達みつけました

⏰:08/11/03 19:11 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#227 [No.005◆vzApYZDoz6]
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「腕、組んでもいい?」
「ああ、いいぞ」

「…ねぇパパ」
「どうした?」
「進路決まったよ」
「そうか。勉強頑張れよ」

「…ねぇパパ」
「どうした?」
「こないだ彼氏できたんだ」
「そうか。今度きっちり紹介しろよ」

「…ねぇパパ」
「どうした?」
「だし巻き玉子、ちゃんと作れるようになったよ」
「そうか。今度作ってくれよな」

⏰:08/11/03 19:13 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#228 [No.005◆vzApYZDoz6]
「…ねぇパパ」
「どうした?」
「こないだ、おばあちゃんに『お母さんに似てきた』って言われたんだ」
「そうか。それならお前は美人になるぞ」

「…ねぇパパ」
「どうした?」
「本当はね、ちょっと寂しかったんだ」
「そうか。俺は悲しかったけど寂しくはなかったぞ。お前がいるからな」

「…ねぇパパ」
「どうした?」
「今日はこのまま一緒にいてもいい?」
「ああ、いいぞ」


「…ねぇパパ」

「どうした?」



「……ありがと」

⏰:08/11/03 19:13 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#229 [◆vzApYZDoz6]
>>227-228
『父娘』

こういう父娘愛が、あってもいいと思います。

⏰:08/11/03 19:15 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#230 [No.006◆vzApYZDoz6]
「なあ」

「なぁにー?」

「水銀燈って何だ?」

「えっとぉ、ローゼンメイデンっていうアニメの登場人物なの。小馬鹿にしたような猫なで声で喋る子(Wiki情報)なんだって」

「それ+甘い感じがお前か…そんな感じで合ってんの?」

「そんなの分からないよ。私は、あなたに動かされているもの」

「いや、だって甘い感じの女なんて書いた事ねーしローゼンメイデンなんて見た事ねーし…まぁ大食いでもしてりゃ──」

「あっ、このシュウマイあと10人分おねがいしますぅ」

「あいよ! お嬢ちゃんよく食べるねぇ!」

「だぁって、おいしんだもん、このシュウマイ。生きててよかったぁ」

「あら嬉しいこと言うねぇ!ほら10人前だよ、たんとお食べ!」

「やったぁ♪ いただきまーすっ」

「──って、もう大食いやってたね。しかしカオスだなこりゃ、地の文が無いから誰が喋ってるのか分かりゃしねぇ」

「あれぇ?食べないの?」

「見てるだけでお腹一杯になりました」

「かわいそかわいそなのです☆」

「それはまた別のキャラだろ!」

⏰:08/11/03 19:16 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#231 [◆vzApYZDoz6]
>>230
『中の人と対話、その1』

要するに作者が力量不足でノータリンなだけです。ごめんなさい。

⏰:08/11/03 19:17 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#232 [No.007◆vzApYZDoz6]
体が沈む。
さっきから何度も何度も手を掻き回しもがいているが、浮き上がる気がしない。
確実に沈んでいる。

ここは何処だろうか。
遥か頭上で、小さく弱々しい光源が靄を湛えて揺れている。
体は無重力の最中にいるかのように浮わついていた。
見えない圧力が微かに全身の肌に伝わる。感触は酷く冷たく、水のそれに近い。
だが息苦しさはなかった。むしろ気持ちよくすらある。

脳は頭上の光を追えとしきりに叫んでいるが、体が底へ底へと導かれているようだった。

次第に脳も叫び疲れ、沈んでいく体に身を預けていく。
目がまどろみ、瞼が重くなり、意識が薄れていく。

「ねぇ」

透き通った女性の声。
閉じかけていた瞼を開くと、沈んでいく先の底に女が立っていた。

白装束を身にまとい、後ろ手に巨大な刀のようなものを持っており、異様な雰囲気を感じる。
何より肌が極端に白い。白すぎて青緑色に見えるくらい白い。

長い前髪で顔はよく分からないが、薄く微笑む口元も色がなく、生気が感じられない女だ。

⏰:08/11/03 19:18 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#233 [No.007◆vzApYZDoz6]
「抗わなくていいの?」

数メートル先に見えている底から俺を見上げ、無感情に聞いてきた。

「ここは意識の大海。底まで沈むことは、意識の底辺に辿り着いた事…つまり『死』を意味するの」

ふふふ、と不気味に笑いながら、女は後ろ手の刀を担ぎ面にふりかぶる。

「そして私の役目は、底辺に辿り着いた人間の命を刈り取る事」

女との距離はすでに1メートルもない。
切迫する死を避けようにも、すでに俺の体が脳の拘束を振りほどいていた。

女は足を広げ、柄を握る手を静かに引き絞る。
俺の体はその所作に導かれるままに、女の正面に向かっていった。

「さようなら。罪深き人間」

意識の海底に足がつく。
同時に、女が俺の体を肩から袈裟懸けに斬り裂いた。

⏰:08/11/03 19:19 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#234 [◆vzApYZDoz6]
>>232-233
『断罪する女』

自殺者を裁く女の子。
自殺は最も重い罪…

⏰:08/11/03 19:21 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#235 [No.008(1/2)◆vzApYZDoz6]
「よぉ」

「……誰? どこにいるの?」

「お前の後ろだ」

「後ろ…? 誰もいないじゃないか」

「当たり前だろ。俺は、お前の『影』だ」

「影…?」

「ここはお前の精神世界だ。お前は青く、俺は真っ黒で長い。お前は今、心に深い闇を抱えている。だがそれは不変的なものではなく、変えようと思えば変えられるものだ」

「……つまりは僕次第、か……」

「言ってみろよ。俺にはお前が何を抱えているかまでは判らない」

⏰:08/11/03 19:22 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#236 [No.008(2/2)◆vzApYZDoz6]
「……話したところで…君に何かできるのかい? この寂しさを救えるのかい?」

「甘ったれるなよ。さっきも言っただろう、変わるかどうかは他ならぬお前次第だ」

「判っているさ。でも、僕は君ほど強くなれそうにない」

「んなこたぁねーよ。俺はお前の影だぞ? 俺は、お前だ。俺にできることはお前にもできるんだよ。全てはお前次第だ」

「………」

「立ち上がれ。でなきゃ俺は…ひいてお前はいつまでも小さいままだ。前進しなくちゃ始まらないんだ。それでも不安なら一度後ろを向けよ。俺は、いつだってそこにいる」

「……そうだね。全ては僕次第なんだ…」

「たまに落ち込んだって誰も何も責めやしねーよ。だが、ずっとそのままじゃできることもできないんだぜ?」

「うん…思い出したよ。僕にはまだやることがあるんだ」

「1人でいたくなったらまた来な。ここにいるのはお前1人だが、独りぼっちじゃない」

「……ありがとう。もう起きるよ」

「そうしとけ。精々気張れよ」

「それじゃ」

「ああ。達者でな」

⏰:08/11/03 19:23 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#237 [◆vzApYZDoz6]
>>235-236
『僕と影』

影って意外といいヤツなんです。

会話だけだと行規制がウザいわw

⏰:08/11/03 19:25 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#238 [No.009◆vzApYZDoz6]
白い雲のはるか上、おとぎ話でよく見る空に浮かぶお城の庭に、2人はいた。

肩を並べて庭の端から足を投げ出して、今日も下界を眺めていた。
向かって右の気だるそうな男が悪態をつく。

「ひでぇよなー、神様にしてくれるっつーもんだからお願いしたら、その代償が『一生童貞』だもんな」

「ひどい…」

「神様つっても童貞卒業する権利くらいあるよな?」

「あると思う…」

「待てよ、神様なんだから何でもできるだろ? 女の子を作ればいいじゃん」

「試したけど無理だった…」

「試したのかよ…まぁでも、地上の女の子を拐えば問題ないよな?」

「拐ったけど無理だった…」

「拐ったのかよ…つうか何で神様を童貞にできるの? この話、誰に持ちかけられたんだっけ?」

「知らない…」

「あれ? あれは確か俺が女子更衣室に行こうとしたときに…あれ?」

「デジャヴ…」

2人は今日も童貞。
明日も明後日もその次も、2人はずっと童貞だ。

⏰:08/11/03 19:26 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#239 [◆vzApYZDoz6]
>>238
『the・童貞』

童貞はどこまで行っても童貞でした。

⏰:08/11/03 19:27 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#240 [No.010◆vzApYZDoz6]
日射しが強い。

見渡す限りの砂漠。渇いた砂粒が吹き荒ぶ中、幾重にもうねる砂丘の中腹に彼女はいた。
焼き付くように照りつける太陽の光を背に受けて、彼女はうずくまっている。

やがて小さなため息をつき、目の前にある中身のない宝箱の蓋を静かに閉じた。

「これもハズレかぁ……」

手にしていた巻き紙を広げ、目を細めて繁々とそれを眺めた。


1人の男が残した置き手紙。
祖国の英雄であり、実の父親でもあるその男が彼女の前から姿を消したのは、およそ2年前。

早朝、彼女が男を起こすために向かった時には、すでにもぬけの殻と化していた部屋。
その中央に置かれた羊皮紙には、ある大陸の地図に加えて男の筆跡で一文が記されていた。

『近く蛻と成るその日までここにいる。願わくば捜し当てよ』

当時は祖国から捜索隊が編成されもしたが、消えた目的すら不明なために暫くして捜索は打ち切られた。

だが彼女は捜し続けた。
『蛻』とは死者の事。つまりそれは、男の死期が近い事を示唆する手紙だった。

彼女は手紙が自分宛であると思っていた。
俗世を嫌った父親の最初で最後の我儘に、自分を付き合わせたのだろう、と。


「……次は何処だっけ」

物思いに耽る思考を振り払い、紙を丸めて立ち上がる。
コンパスを取り出して目指す指針を確認した。
次は、北だ。

「絶対に見つけてやるんだから」

果てなく続く砂漠の道を、彼女は1歩踏み出した。

⏰:08/11/03 19:28 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#241 [◆vzApYZDoz6]
>>240
『父を求めて三千里』

これは作者の中で設定が浮かびまくって、泣く泣くSSSにしました
なんか親父の手紙の暗号を考えたりしたなー

⏰:08/11/03 19:30 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#242 [No.011◆vzApYZDoz6]
先日、中学の同窓会があった。
僕は出席したけど、同じクラスのサラは諸事情で行けなかった。

「また机に座って…胸見えてるぞ」

「いいじゃねーか。触りたきゃ触ってもいいんだぜ?」

「馬鹿。…ほら、写真。みんなサラに会いたがってたよ」

「おおー、みんな元気そうだな…誰だこれ? え、岸田? すごい変わりようだな…やっぱ女は変わるもんだなぁ」

「あとは、水嶋と黒崎が付き合ってるんだってさ」

「そういや卒業前に告ってたなアイツ! そうか、うまくやってんだなぁ…」

「それで、今度サラんちに遊びに行きたいって言ってたんだけど…」

「あー…まぁ無理だな。ばーちゃんの事もあるし」

「様子は? どうなんだい?」

「あいっかわらず。俺が誰なのかもわかってねぇよ」

「……良くなるといいね。そしたら今度はサラも……」

「いや、いいんだ。良くならない病気だしな。

……俺さ、働くまでばーちゃんに恩返しなんてできやしねーとか思ってて、早く大人になりたいとか思ってたじゃん?

でも今さ、高校生のままで恩返しできてるわけじゃん? 超ラッキーじゃね?」

その言葉が強がりなのは痛い程に判っていて、僕は何も答えられなかった。
いくらか本心が混ざっていたとしても、掛ける言葉が見つからなかっただろう。

僕はこの粗野で乱暴で愛に溢れる口の悪い少女を、今のクラスメイトと同じように嫌うなど、考えられなかった。

いつまでも一緒にいたいと、そう強く願った。

⏰:08/11/03 19:31 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#243 [◆vzApYZDoz6]
>>243
『クラスメート』

仲良くなるには、何だかんだで時間がいる
高校の友達だって、最初はそういうもんだと思う

⏰:08/11/03 19:33 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#244 [◆vzApYZDoz6]
>>242だたwすまん

⏰:08/11/03 19:34 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#245 [No.012◆vzApYZDoz6]
ξ゚听)ξ「あら、中の人じゃない。あんた傘もささずに何やってんのよ」

(;^ω^)「……おっ!? 僕なんでブーンになってるお!? ってなんか喋り言葉も変わってるお!」

ξ゚听)ξ「知らないわよ。にしても携帯でブーン小説は厳しいものがあるわねー、AAが行の半分埋めてるじゃない」

( ^ω^)「確かにせまっ苦しいお。『イラストがツンとブーンみたい』って言われたからやってみたけど、どうにも携帯には向いてないお…タグ使えば大丈夫かお?」

ξ゚听)ξ「一応知らない人のために説明すると、ブーン小説ってのは2chはニュー速VIP板で投下されてる小説よ。会話が多いのと、AAが会話の頭にくる以外は普通の小説と変わんないけど。まぁこんな感じだと思えばいいわよ」

( ^ω^)「3行で」

ξ゚听)ξ「VIPで投下
      AAあり
      あとは一緒
……なんか産業説明も端っこすぎてしまらないわね…っていうか産業するほど難しいこと言った?」

(;^ω^)「ところであまり2ch用語は使わない方が…」

ξ゚听)ξ「って、じゃあなんでこんなテイストなわけ?」

( ^ω^)「僕が投下したイラストだからやりたい放題だおwww読者の期待?知らねーおwww」

ξ#゚听)ξ ビキビキ

(;^ω^)サーセン

⏰:08/11/03 19:35 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#246 [◆vzApYZDoz6]
>>245
『中の人と対話、その2』

『ツンとブーンっぽい』って言われたからやってみた。後悔はしていない。反省はしてる。

ブーン系は容量も食うなぁ…

⏰:08/11/03 19:37 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#247 [No.013◆vzApYZDoz6]
どれくらい時間が経ったか。
夜中の河川敷。真ん中に立っている木刀を持つ男の周囲には、少なくとも50人は倒れている。

「ちっ…いい加減諦めろよ!」

それでもなお、100人近い人間が男を囲っていた。
男への攻撃がないわけではないが、殆んど当たっていなかった。
当たっても致命傷にすらなっていない。

この抗争が終わるには、群がる人間がごめんなさいもうしませんと謝って帰るか、もしくは男に全員倒されるか、その2つしかなかった。

「俺は途中でやめる気はない。抜かれるわけにはいかないからな」

男は1人ではなかった。だが、戦えるのは男1人しかいなかった。
背後には、絶対に抜かれてはならない場所がある。

「俺は死なないぜ。いつか俺が俺を殺すまでな!」

体当たりしてきた相手の頭を木刀で叩き割り、男は再び前進した。

⏰:08/11/03 19:37 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#248 [◆vzApYZDoz6]
>>247
『殺し屋さん』

人は大なり小なり護るものを持っています。

⏰:08/11/03 19:39 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#249 [No.014◆vzApYZDoz6]
「俺はエスプレッソください」

「じゃあ俺は牛乳で。冷たいヤツね」

「はいっ? …あ、かしこまりました、牛乳ですね」

「……おい中の人よ、やる気あんのか?」

「不細工な店員ならあんな注文はしないぜ俺は」

「じゃなくて中の人シリーズやりすぎだろ! まだ14なのに3回目ってさすがに多いぞ!」

「おk、把握したから時に落ち着け。ほら来たぞエスプレッソと牛乳」

「仕方ないな。…お、美味い」

「僕はコーヒー飲まないんですよ。嫌いじゃないんですけどね」

「いきなり敬語になるなよ。読者が困惑するぞ」

「いやどっちがどっちか分かりづらかったからさ。ところで俺には君がDir en grayの京くんにしか見えないんだが」

「また何て言えばいいのかわからんことを言うな…」

「まぁこれが言いたかっただけなんだけどね」

「絶対やる気ねーだろてめぇ!!」

⏰:08/11/03 19:40 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#250 [◆vzApYZDoz6]
>>249
『中の人と対話、その3』

いや……似てない?
とりあえず反省はしてます。ごめんなさい。

⏰:08/11/03 19:41 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#251 [No.015◆vzApYZDoz6]
「泣いてるの?」

「えっ?」

「それとも笑ってるの?」

「……どうだろ。わかんない」

「そう。でも気にしてない」

「うん……ごめんね」

「どうして僕にあやまるの?」

「……わかんない」

「そう。でも大したことじゃない」

「うん……そうだね」

「泣き止んだね」

「えっ?」

「なんでもない」

⏰:08/11/03 19:41 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#252 [◆vzApYZDoz6]
>>251
『私と涙』

なんか『僕と影』っぽくしようと思ったがネタが全部思い付かなかった。すまん。

⏰:08/11/03 19:42 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#253 [No.016◆vzApYZDoz6]
「さぁ始まりました恒例の中の人シリーズ! 今回で早くも4回目となったこのシリーズですが、今回のゲストの制服の女の子さん、どうですかお気持ちは?」

「『早くも』って分かってるなら自重したほうがいいんじゃ…」

「これがNo.016だから、ざっと考えて4回に1回。まだ大丈夫…だと思います多分」

「いや大丈夫じゃないと思うんですが…だって私の中の人であるMIさんのイラスト4つ使った内、2回も中の人シリーズってのはさすがに…」

「……正直に言うとネタが思い付かなかっただけなんです。後回しにしまくった結果なんです。ごめんなさい」

「……まぁ、がんばってください…」

⏰:08/11/03 19:43 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#254 [◆vzApYZDoz6]
>>253
『中の人と対話、その4』

なんかもう何言っても言い訳にしかならないので何も言いません。ごめんなさい。

⏰:08/11/03 19:44 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#255 [No.017(1/2)◆vzApYZDoz6]
これは、とある女の人のお話。


美しい緑野の丘。
暖かい陽気をもたらす太陽の下では、たくさんの色鮮やかな花が咲き誇り、甘い香りに誘われた蝶々がひらひらと舞い遊んでいます。

そんな緑野の片隅で、彼女は1人で住んでいました。
彼女は花を摘んだり蝶々と戯れながら、たった1人で住んでいました。


彼女が1人、周囲の人間から離れるには、理由がありました。
美しく平和な世において、彼女は調和を乱してしまうからです。

彼女の手にかかると、すべては正常に動きませんでした。

水を汲もうと井戸車を回転させれば、それは土を掘りました。
辺りを照らそうと松明を握れば、たちまち火が燻りました。
会話に混ざろうと隣人たちの中に入れば、いつも隣人たちを困惑させました。

だから、彼女は1人でいなければなりませんでした。

それでも丘の住人たちは孤立した彼女を憐れみ、手を引いて調和の中に引き戻そうとします。
でも、それに従った結果はいつも同じでした。

いつしか彼女は、手を引かれる事を拒むようになりました。

そうしても『孤立した存在がある』という事実が丘の住人たちを苛み、調和を乱してしまいました。

彼女と世界の間には、越えがたい隔絶が横たわっていました。

そんな彼女には、双子の妹がいました。

⏰:08/11/03 19:46 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#256 [No.017(2/2)◆vzApYZDoz6]
世界に受容されない彼女に対し、妹は世界に寵愛されていました。
彼女は妹を介してでしか調和を手にすることができません。

土を掘った桶に妹が触れれば、土はたちまち水へと変わりました。
燻り煙が立つ松明を妹が握れば、みるみるうちに立派な火が灯りました。
妹が彼女の手を引いて隣人たちの中に入れば、そこには笑顔が溢れました。

情深く慈愛に満ちた人格の妹は、関わる全ての人々に幸福をもたらしました。

彼女も妹が側にいるとき、あるいは妹の呼び掛けに手を振るときなどは、気持ちが多く満たされていました。

いつしか彼女は、妹を欲し妹と共にありたいと強く望むようになりました。
それに連なり、彼女が妹の側にいる時間は長くなっていきました。

しかし、美しく平和な世において、彼女が正常者になることを、世界は拒みました。

世界が拒んだその瞬間、天に雷雲が立ち込めます。
雷鳴が轟き、彼女の側にいた妹は稲妻と共に雷に打たれました。

物言わぬ姿となった妹を見た他の住人たちは、とうとう耐えきれず、調和を乱す彼女を罵ります。

彼女は住人たちを拒みました。
住人たちの罵詈雑言に、耳を抑えて悲鳴を上げました。

その瞬間、再び雷鳴が轟き、雷が次々と住人たちを打ち付けていきました。

彼女は妹の亡骸を抱え、一晩中悲哀に暮れました。

いつの間にか眠ってしまった彼女が目を覚ますと、妹はおらず、さらには物言えず耳も聞こえなくなっていました。

代わりに調和を手に入れた事に彼女が気付くのは、彼女が永遠の孤独を認識する直後の事でした。

⏰:08/11/03 19:47 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#257 [◆vzApYZDoz6]
>>255-256
『緑野の追放者』

これの元ネタが分かった人はちょっとすごいかも。

⏰:08/11/03 19:48 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#258 [No.018◆vzApYZDoz6]
荒れ果てた大地で、男は限界に刻一刻と近づいていた。

敵は予想外に多い。だが、彼はそれでいいと思っていた。
でなければ自分がここにいる意味がない。

「でも…倒れる訳にはいかない…!」

殿軍とは厳しいものだ。
多勢を相手にしなければならず、決して帰還は許されない。
褒め称えるものがいたとしても、それを見るのは叶わない。

だが、それでもいいと思っていた。
少なくとも仲間を守るための覚悟は背負ってきた。

そしてそれは、彼だけではなかった。

「よう、ボロボロじゃねーか兄さん」

「!?」

⏰:08/11/03 19:50 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#259 [No.018◆vzApYZDoz6]
目の前に現れたのは、同じ覚悟を背負った者。
己の命と等しく大切な戦友だった。

「お前ら……何しに?」

「何しにってそりゃー、てめーを助けに来たに決まってんだろ」

「さてと。後は私たちがやるけど…どうする?」

「ま、無理はしねー方がいいんじゃねーの?」

「……ふん。これぐらい…どうってことないさ!」

体に力が湧いてくる。
背負ったものが、少しだけ軽くなった気がした。

「そんじゃー、いっちょ暴れてやりますか!」

「2人とも気をつけてね」

「ああ。…生きて帰って、酒でも飲もうぜ!」

頷きあい、3方に別れて敵の元へ駆け出す。

勝ちは見えない殿戦闘。それでも3人は戦った。
例え彼らの望みが叶わなくとも、同じ覚悟を背負っている仲間がいるから。

⏰:08/11/03 19:50 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#260 [◆vzApYZDoz6]
>>258-259
『覚悟とともに』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/35

戦時中ってこういう、死の『不可避』が多かったんだろうなぁ…

つうか今までイラストのウラル貼り忘れてたー!!
すまん!!

⏰:08/11/03 19:55 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#261 [No.019◆vzApYZDoz6]
「うーん……」

「どうしたの女将?」

「僕はなんで女将をやってるんだろう、って思って」

「そりゃあ女顔だからでしょ?」

「いや僕男だよ?女将って女性がやるものじゃないのかなぁ…」

「まぁ先代の女将が病気で引退したはいいけど、代わりがいなかったもんねぇ。あなた次男だしいいんじゃない?」

「いや次男だからといって女将になる必要はない気がするんだけど…」

「気にしないの。さ、お仕事、お仕事っと」

「はぁ…もしかしてずっと女将続けなくちゃいけないのかなぁ…せめて声がもっと低ければ断る理由も──」

「すみません、予約してた鈴木です」

「──はいはい、ありがとうございます。鈴木様ですね、あちらのお部屋ですよ!ご案内致しますね〜」



「……何だかんだでやっぱりサマになってるじゃない。さ、お仕事、お仕事っと」

「……はぁ…僕、本当にこれでいいのかなぁ…」

⏰:08/11/03 19:56 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#262 [◆vzApYZDoz6]
>>261
『頑張る女将』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/36

迷いながらも女将やってる長男。

⏰:08/11/03 19:59 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#263 [No.020(1/2)◆vzApYZDoz6]
「125、126、127・8・9…130!」

先程から数えているのは、倒した敵の数だった。
倒しても倒しても湧いてくる敵を前に、途中から数を数えて今のでちょうど130人目。
実際はもっと倒しているはずだ。

近くの敵を粗方倒したところで、仲間と背中合わせになった。

「オメー何人やった?」

「さぁ…いちいち数えていない」

「なんだ、つまんねーの」

言いながら、向かってくる敵に銃口を向ける。131人目。

それにしても数が多い。2人合わせて300人以上は倒してる筈だが、一向に減る気配がない。
敵の銃弾はほとんど当たらないが、さすがに集中力は続かない。

こちらの銃は弾装無限のコスモガンだから、弾切れはありえない。
しかし敵は一個大隊なので、向こうのネタ切れもありえない。

敵が弾を撃ち尽くすまでに、こちらの集中力が切れて撃ち殺されることも否めない。
なんとかする必要がある。

⏰:08/11/03 20:01 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#264 [No.020(2/2)◆vzApYZDoz6]
「オメー何か考えろよ。このままじゃちょっとキツいぜ?」

「君が裸になればいいじゃないか。口調は男でも性別は女だしね」

「んなこと言ってるとオメーを先にブチ殺すぞ!!……チッ、湧いてくるんじゃねーよ!」

次から次へと襲いかかる敵を前に、軽口を叩く仲間を相手にする暇もない。

寄ってくる相手から順に撃ち落とす。135人目。
だが依然として数が減る気配はない。
こうやって確実に倒していくしか方法はないだろう。
135人目が地に臥したのを合図に、軽口な男も銃を構える。

「じゃ、そっちは頼んだよ。いつでも服を脱いでくれ」

「うるせー、大きなお世話だこのド変態が!」

それを口火に、群がる敵の中へ轟音とともに駆け出した。

⏰:08/11/03 20:02 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#265 [◆vzApYZDoz6]
>>263-264
『いいコンビ』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/47

作者はこういう堂々とした変態野郎を書くのが大好きです。

⏰:08/11/03 20:04 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#266 [No.021◆vzApYZDoz6]
日もどっぷり浸かった放課後の音楽室。
茜色の夕陽が射し込む部屋の片隅で、フルートを奏でる少女がいた。

軽やかでいて心に響く音色に誘われた1人の青年が、窓からその少女を眺めている。

演奏が終わると、青年は手を叩いて喜んだ。

「すげーすげー、感動しちゃったよ俺」

「ありがとう。…あなたは?」

「ああ、俺? これだよこれ」

そう言って青年は、おもむろに懐から1枚の布切れを取り出した。
否、布切れではない。淡いピンク色で、レースの装飾がついている。

「体育館のロッカー室でこれ盗ってきた帰りにフルートの音色が聞こえてさー、来てみたr」

「キャー!! 下着泥棒よ、誰かー!!」

⏰:08/11/03 20:05 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#267 [◆vzApYZDoz6]
>>266
『侵入者』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/48

作者はこういう堂々とした変態野郎を書くのが(ry

⏰:08/11/03 20:07 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#268 [No.022(1/2)◆vzApYZDoz6]
「隊長、敵襲です! 敵の数は1体、夜目の使いすぎによる疲労感が蓄積された充血眼です!」

『よし、疲れ目対応式ビタミン配合目薬を使うぞ。兵隊はリフトの用意、戦車隊は発射口の蓋を外す準備に取りかかれ! 機動隊は対象の瞼とまつ毛の固定だ! 総員、直ちに行動開始!』

「了解!」


「こちら機動隊、大変です隊長! 敵はドライアイも併発しているらしく、まばたきが多すぎて瞼を固定できません!」

『何だと!? 仕方ない、手が空いた隊員をいくらかそちらへ送る! 固定は目薬発射の瞬間だけでいい、俺が合図を出したら全力で固定にかかれ!』

「了解!」

「隊長! こちら兵隊、リフトの準備完了しました!」

「こちら戦車隊、蓋の取り外し完了しました!」

『よし、戦車隊は照準の補正に取りかかれ! 兵隊は5名で発射台の固定、それ以外は直ちに機動隊の援護に向かえ!』

「了解!」

「こちら機動隊! 照準補正完了しました! いつでも発射できます!」

『よし、発射準備! 機動隊総員、瞼の固定に取りかかれ!』

「了解!」

⏰:08/11/03 20:08 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#269 [No.022(2/2)◆vzApYZDoz6]
「固定完了しました!」

『よくやった。戦車隊、目薬発射!』

「発射!!」

びちゃっ

『バカ、量が多すぎる…まぁいい! 機動隊、瞼の固定を解除! 目の周りを拭われる前に直ちにその場から待避だ! 総員、待避せよ!』

「了解!」

「総員、待避ー!!」



「隊長! 総員待避完了しました! 欠員ありません!」

『よし、よくやった。戦車隊は目薬の格納だ』

「あっ…申し訳ありません隊長!」

『どうした!?』

「蓋を現場に忘れてきてしまいました!」

『馬鹿野郎ー!!』

完…?

⏰:08/11/03 20:09 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#270 [◆vzApYZDoz6]
>>268-269
『目薬さすシュール』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/52

なんかこんなCMあったよね?

⏰:08/11/03 20:10 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#271 [No.023◆vzApYZDoz6]
「ないてるの?」

「……ちがうもん」

「ねぇ、あるいてもあるいてもおつきさまのいちがかわらないのって、なぜかしってる」

「えっ?」

「きみがさみしくないように、だって」

「……さみしくなんかないもん」

「そうだね、きみにはかえるおうちがある。おかあさんがさみしいよ」

「……うん。じゃあかえるね。ばいばい、くまさん」

「うん、ばいばい」

⏰:08/11/03 20:11 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#272 [◆vzApYZDoz6]
>>271
『おつきさま』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/53

絵本っぽさが平仮名でしか出せない、ってかそれでも出しきれてない

⏰:08/11/03 20:13 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#273 [No.024◆vzApYZDoz6]
「おーっし、揃ったな。点呼!!」

「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」

「欠員なし! お前ら、準備はいいか!」

「はいっ!」

「よし、行くぞ野郎共!!」

「おおー!!」





「え、サッカーは11人いないと参加できませんよ」

「なにー!?」

完…?

⏰:08/11/03 20:14 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#274 [◆vzApYZDoz6]
>>273
『行くぞ野郎共!』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/54

飛び入り参加する気でした。

⏰:08/11/03 20:15 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#275 [No.025、026、031(1/3)◆vzApYZDoz6]
かつて無力だった人間は、神に祈り力を求めた。
そして神は望むように力を与えた。

しかし、人間はその与えられた力で争いを始めた。

「……出てこい、そこにいる者」

そしてまた今日も、新たな争いが始まろうとしている。

「よく分かったな」

「その手に握られた木刀、見紛うわけがない。『猛虎』画竜点睛、手合わせ願う」

「その呼び名いつも思うけど虎か竜どっちかにしろよ。俺?俄然タイガースwww」

「うるさい! 一瞬で息の根を止めてやる!!」

「やってみな。最強のケチャップ使いの実力、思い知らせてやるよ」

互いに、未開封のケチャップを懐から取り出した。
素早く封を開ける。

「ちゃんと内ブタも剥がさねぇとな」

「遅いッ!! 死神の大釜と言われた実力見せてやる!」

内ブタを剥がしている猛虎なんちゃらさんに死神の大釜が詰め寄る。

「必殺・ケチャップキーック!」

大釜さんの右足がドゴオォォ!とかいうなんか凄い音を立て画竜さんの腹に突き刺さった
いや大釜使えよ大釜
つうかケチャップはどうした!

⏰:08/11/03 20:16 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#276 [No.025、026、031(2/3)◆vzApYZDoz6]
「おぅふ!!」

崩れ落ちる画竜さん、勝利を確信し笑う大釜さん。

「口ほどにもない…最強のケチャップ使いが聞いて呆れる」

しかし画竜さんは、何事もなかったかのように起き上がった。

「うっそぴょーんwwwwwwww」

「なっ…!?」

「どうした? 夏休みの宿題を7月中に終わらせて9月1日に意気揚々と宿題を提出しようとしたら1教科まるまるやり忘れてる事に気付いた時みたいな顔して」

「うるさい! だがなぜ? 今のケリを食らって立てるはずが…」

「落ち着けよ。自分の足見てみな」

言われるがままに足を見ると、ケチャップがたっぷりと付着していた。

「ケチャップを壁にした。ただそれだけ」

「ケチャップが…服に…貴様アァァ!! よくもこの私の服を汚したn」

「まぁこんなくだらない話にレス数使ってられないしお前死刑でいい? よし分かった」

「待て! まだ何も言ってn」

「奥義・ハイドロケチャップ!!」

思い切りケチャップのボトルを握りしめた。
フタが飛び、大量のケチャップが吹き出す。
大釜さんはケチャップまみれになって死んだ。ケチャップ(笑)

⏰:08/11/03 20:17 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#277 [No.025、026、031(3/3)◆vzApYZDoz6]
こうして争いは幕を閉じた。

「姉さん!? 姉さん!!」

だが、争いは新たな争いを呼ぶ。

「あっ、おっぱいでかい可愛い子が。そして舌を出している!」

「ケチャップまみれで死んでる…あなた、姉さんに何をしたの!?」

「律儀にやるなぁ。まぁ安心しな、すぐにお姉さんのところへ行かせてやろう」

「許しません…あの世で姉さんに詫びなさい!」

「姉さんよりかは言葉遣いはいいな」

互いにケチャップの封を開ける。

だが互いに動かず、静寂が訪れた。

「……そろそろ帰っていい?」

先に静寂を破ったのは画竜さんだった。
手慣れたように間合いを詰める。

「くっ…!」

大釜さんの妹もケチャップで牽制する。

「うめぇ」

だが画竜さんはケチャップを食べていた。

「そんな…」

⏰:08/11/03 20:21 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#278 [No.025、026、031(4/3)◆vzApYZDoz6]
「よし、もう2つ以上の意味で面倒だし殺しちゃうぜ!」

画竜さんが一瞬で間合いを詰める。

「秘奥義・木刀ケチャップ!!」

ケチャップが塗りたくられた木刀が振り下ろされ、大釜さんの妹は絶命した。

こうして、争いは幕を閉じた。

「ケチャップうめぇwwww」

最強のケチャップ使い、画画竜さん。
後の弁慶である。

⏰:08/11/03 20:22 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#279 [◆vzApYZDoz6]
>>275-278
『ケチャップ戦争』

bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/58No.025
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/65No.026
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/84No.031
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/85No.031

いやもうひたすらごめんなさいとしか…
特に絵師さんマジでごめんなさい。

⏰:08/11/03 20:24 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#280 [◆vzApYZDoz6]
No.026貼り直し
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/65

⏰:08/11/03 20:25 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#281 [No.027、036(1/3)◆vzApYZDoz6]
俺はここのところ毎日、放課後になると理科室に足を運ぶ。

今日も回転椅子に座って、片付け忘れられた試験管に入ったよく分からない液体を、ただただぼんやりと眺めている。

特に目的も意味もない。
人気のない旧校舎の端にある、薬品臭の漂うこの部屋が、何となく落ち着くだけ。

「まーた来てる、この子ったら。いつも私の椅子に座るんだから」

というのは建前で、本当は試験管ごしに俺を覗きこむ科学担当の美人教師に会うためだったりする。

別に好きだとかそんな訳じゃない。
学校嫌いな俺が話していて唯一落ち着くのが、この先生だからだ。

「別にいいだろ。それより何これ、ピンク色だけど」

「アンモニアとフェノールフタレインを混ぜた溶液よ。小学校でやらなかった?」

先生は答えながら近くの実験机からパイプ椅子を引っ張ってきて、俺の隣に腰掛けた。

「さぁ……どうだったかな」

「そんなことより。あなた、今日体育サボってたでしょ? ダメよ、遊んでないでちゃんと授業出なきゃ」

「んー……」

ほら、と先生が俺の手から試験管を取り上げた。
手持ちぶさたになった右手を腹の上に乗せて、今度は天井を眺めた。

先生は試験管立てに試験管を差して、奥の給湯室に向かった。

「今日はコーヒーか紅茶、どっちにする?」

「……コーヒー」

⏰:08/11/03 20:27 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#282 [No.027、036(1/3)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。

「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」

「サンキュ」

角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。

先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。

「あなた最近元気ないわね」

先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。

%8

⏰:08/11/03 20:29 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#283 [No.027、036(2/4)◆vzApYZDoz6]
俺が答えると、返事の代わりに陶器のカップの音がカチャカチャと聞こえてきた。
やがて先生が2人分のコーヒーをお盆に乗せてやって来る。

「はい、コーヒー。確かシロップとミルクは無し、砂糖が1つだったわね」

「サンキュ」

角砂糖を1つ溶かし、カップを口へ運ぶ。

先生がいつも淹れてくれるコーヒーも、俺が理科室に足を運ぶ理由の1つかもしれない。
ちょうどいい苦味が心を落ち着かせてくれる、そんな気がした。

「あなた最近元気ないわね」

先生がコーヒーにミルクを混ぜながら聞いた。

「うーん…」

「授業もサボりがちみたいだし。学校は楽しくない?」

「……どうなんだろ」

つまらない訳じゃない。
友達もそれなりにいるし、放課後の理科室も好きだ。

けど、何か物足りないというか、満たされる事がない。
やりたいことがあるわけでもない。
何もしていないのに疲れていくような感覚がある。

心から楽しいかと言われると、たぶん楽しくない。

⏰:08/11/03 20:30 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#284 [No.027、036(3/4)◆vzApYZDoz6]
「やっぱりアレね、女よ女。彼女作っちゃいなさい」

「いいよ、彼女なんて。めんどくさいし」

「いい若者が何言ってるの。あなた黙ってればそれなりにカッコいいんだから、彼女ぐらいすぐできるわよ」

「どういう意味だよ…」

「そのままよ。あなたのお守りも楽じゃないんだから」

「…そういう事ね」

コーヒーを一気に飲み干し、カップを置く。
少しだけ口に苦味が残っていた。

彼女ができたところで、俺の気分は晴れないと思う。
曇りの原因は分からないけど、そんな気がする。

「ご馳走さま」

「おかわりはいい?」

「うん」

俺はまた天井を仰いで、目を閉じた。

やっぱり、ここが一番落ち着く。
いつもボーッとしてるか先生と世間話をしてるだけだけれど、それだけで気分が良くなった。

ふと目を開けると、先生がかなり間近で俺を覗きこんでいた。

⏰:08/11/03 20:31 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#285 [No.027、036(4/4)◆vzApYZDoz6]
「…顔が近いよ、顔が」

「寝られでもしたら困るからね。ドキドキした?」

ふふっ、と笑いながら、カップとお盆を片付けに再び給湯室に向かっていった。

それを目で追っていると壁の時計が視界に入った。
すでに午後5時半を回っている。

俺は少ない荷物を持って立ち上がる。
ちょうど給湯室から先生が出てきた。

「んじゃ、帰るわ」

「うん、おつかれさま。気をつけてね」

そのまま踵を返し、ドアに向かう。
ドアノブに手をかけたところで、また呼び止められた。

「明日の放課後もちゃんと来なさいよ」

見ると、先生がひらひらと手を振っていた。

「……気が向いたらね」

帰り道、理科室の方に目をやると、俺が座っていた回転椅子に先生が座っているのが見えた。

たぶん、明日の放課後も俺はあの椅子に座っているのだろう。
俺は少しだけ笑って、自転車を漕ぎだした。

⏰:08/11/03 20:32 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#286 [◆vzApYZDoz6]
>>281
>>283-285
『放課後の理科室』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/68No.027
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/97No.036

>>282はスルーで。
作者のツレの実体験をちょっといじってみた。

⏰:08/11/03 20:35 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#287 [No.028◆vzApYZDoz6]
現代とはまた異なる世界。そこには、半獣と呼ばれる人達が暮らしていました。
ライオンの半獣ライとウサギの半獣ビイは仲良しです。

「ね、ライ。肩車して」

「肩車好きだな、ビイは。ほら」

「わぁ、高い高い!」

無邪気に喜ぶビイを、ライは微笑ましく眺めています。

そこへ、どこからか小鳥がやってきました。
鳥たちは楽しげに囀り、ビイの回りを飛び回ります。

「やっぱりライに肩車してもらうと楽しいね」

「そうか。それならいつでもしてあげるよ」

「やったぁ!」

ビイは喜び、鳥たちと一緒に口ずさみました。
ライは嬉しそうにそれを眺めていました。

⏰:08/11/03 20:37 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#288 [◆vzApYZDoz6]
>>287
『肩車』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/70
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/71

狐っぽい奴は話が思い付かなかったので出せませんでした。すまん

⏰:08/11/03 20:39 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#289 [No.029◆vzApYZDoz6]
(うおー! 待ちに待った初デート! どうしよう何喋っていいか分からないぞ…何の話題がいいんだろう? 趣味とか? いやそれじゃありきたりすぎるよな…いや、こうしてる間にも時間は過ぎていくんだ、何としても彼女が飽きないようにしなければ! 何を喋れば…いや、ここはひとまず行動だな…よし!)

(キャー! まさか彼から誘ってもらえるなんて…どうしよう緊張して何すればいいのか分からない…うわっ、いつの間にか変な歩き方してた! 恥ずかしー…彼は見てないっぽい、かな…どうしよう何か変な間ができちゃった、あたしのせい? あたしのせいよね? 謝った方がいいのかな、いやでもいきなり謝るのも何か変だし、でも何か変な空気だし、せっかく誘ってくれたのに…うん、とりあえず謝ってみよう…よし!)

「「…あのっ!」」

「…え? あ、いや…どうしたの?」

「ううんあたしは別に…あなたこそ… ……?」

「? …あっ、雪だ…」

「………ふふっ」

「………あははは」

「…綺麗ねー…」

「そうだね」

「…あの、今日は誘ってくれてありがとう」

「いや…うん。…じゃあ、行こっか」

「……うん!」

完…?

⏰:08/11/03 20:39 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#290 [◆vzApYZDoz6]
>>289
『初デートなシュール』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/73

人生初のデートって無駄に考えるよね。

⏰:08/11/03 20:41 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#291 [No.030◆vzApYZDoz6]
サンタクロース。
クリスマスの前夜に、子供たちへ夢と笑顔を運んでくるお爺さん。

出身地はデンマーク領のグリーンランド。
現在、公認サンタクロースは129人いて、クリスマスイブの夜にトナカイが引くソリに乗って子供たちにプレゼントを配る。

恰幅のよい体型に真っ白でふくよかな口髭、赤と白のサンタ服に身を纏った、夢と希望の象徴だ。

「──っていうのがサンタクロースだと思ってたんだけどな、俺は」

「ハン、そんなもん人間が作り出した偶像じゃろが。実際は赤いブーツと白い口髭以外自由じゃわい」

「口が悪いサンタだな…」

「知っとるか? サンタは良い子にはプレゼントを配るが、悪い子には豚の内臓を配るんじゃよ」

「やめてくれ、気分が悪くなる」

12月24日深夜、イギリスはマンチェスター郊外の小さな酒屋、その裏手。

俺は『本物の』サンタクロースに弟子入りした。
その修行として、今からヨーロッパ地区の子供たちにプレゼントを配るところだ。

⏰:08/11/03 20:42 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#292 [No.030(2/3)◆vzApYZDoz6]
「0時ちょうどから始めて、5時までには終わらせなきゃいかん。チンタラしとる暇はないぞ」

小さな酒樽の上であぐらをかき、三つ編みの白い口髭をいじっているこのジジイが、本物のサンタクロースらしい。

「移動手段はこのバイクじゃ。ワシの力で排気音は聞こえんし、姿も見えないようにしておる。空も飛べるわい」

「リアリティーがあるのかないのかハッキリしろよ」

「空飛ぶバイクもファンタスティックじゃろ?」

「ファンタスティックの使い方間違えてるだろ…」

気にしたら負けじゃ、とジジイは高らかに笑った。

「今年はヨーロッパをお前さんに任せる。ヨーロッパと言っても、地中海周辺の国も入るから結構広い。回り方を確認するぞい」

ジジイはそう言って、懐から地図を取り出した。
ヨーロッパとその周辺の世界地図だ。

ジジイは言葉に合わせて地図をペンでなぞりながら説明した。

「まずはロンドン経由でフランス北部を迂回し、ベルギーじゃ。
そこからドイツとその周辺を時計回りに回ってスイスからフランス南部へ、今度は地中海沿岸の国を左回りじゃ。ポルトガルを忘れるなよ。
トルコまで来たら黒海を左回りでギリシャまで向かい、海を渡ってイタリアへ。
イタリアを北に抜けたらあとは内陸じゃ。回り方は自由じゃからな。
終わったらモスクワに入って、フィンランドからノルウェーまで経由、そこからアイスランドへ飛んで、最後にアイルランドとイギリス北部を回っておしまいじゃ。
分かったか?」

⏰:08/11/03 20:43 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#293 [No.030(3/3)◆vzApYZDoz6]
「ちゃんと覚えてるよ」

「ならいい。さぁ、そろそろ0時じゃ、バイクに乗れ」

ジジイが地図をしまいながら、傍らにあるバイクのサドルをポンポンと叩いた。
俺はプレゼントの入った袋を担ぎ上げ、促されるままにバイクに乗り、エンジンをかける。

エンジンはかかったが、驚いた事に排気音はしない。ジジイが言ってたやつだろう。
たぶん、姿も見えていないはずだ。空の飛び方は分からないが何とかなるだろう。

「ワシは他を回らんといかんからついていかんぞ。まぁせいぜい頑張れや」

腕時計で時間を確認し、秒読みを開始する。

23時59分54秒。…5、4、3、2、1──

「──じゃあ、行ってくる!」

「失敗するんじゃないぞ」

0と同時に地面を蹴り、スロットルを回す。
ほとんど間もなく、車輪が地面から離れて車体が浮き上がった。

続いて急激な加速上昇。
こちらを見上げて手を振るジジイに続き、眼下に広がる郊外の街も、みるみる小さくなっていく。

「最初はロンドン経由でフランス北部、だったな」

頭の中で地図を確認し、後ろに目をやる。
プレゼントが詰め込まれた袋についているワッペンが、ニヤニヤといやらしくこちらを見ていた。
これはジジイの趣味らしい。

「ヘマなんかするかよ。さて、と…行くか!」

高度が十分上がったところで、スロットルを回した。
今夜の俺は、サンタクロースだ。

俺が乗ったバイクは、イギリスの上空を静かに駆け抜けていった。

⏰:08/11/03 20:44 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#294 [◆vzApYZDoz6]
>>291-293
『サンタクロースの実情』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/87

昔リアルサンタを考えた事があるけど、絶対ソリじゃ無理だよね


ちなみにこれは、『このジジイはサンタだ!』と思った瞬間に設定がドバーッと頭に浮かんで困ったSSS。
長編書ける自信がある。でも時間が無いから誰か書いて!

⏰:08/11/03 20:48 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#295 [No.032(1/2)◆vzApYZDoz6]
「兄ちゃん、ミルクちょうだい」

「瓶1本だね。200セントだよ」

「え、高くない? もうちょっとまけてよ」

「そんな事言われてもねぇ…じゃあ10セントだけなら」

「んなもん消費税にすらならないじゃん! 200セントまけてよ」

「それじゃタダじゃないか…どこの子か知らないけど困ったねぇ」

⏰:08/11/03 20:49 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#296 [No.032(2/2)◆vzApYZDoz6]
「アメあげるからさ。お願い、母ちゃんに安く買ってこいって言われてるんだよ!」

「すごい母ちゃんだな…仕方ない、じゃあ20セントおまけだ。これ以上は無理だよ」

「実は150セントしか持ってなくて…」

「絶対にそれが理由でしょ。……仕方ない、今回は150セントにしてあげるけど、次からはちゃんと持ってくるんだよ?」

「やりー! 150セントって言ったね!?」

ちゃりちゃりーん

「って200セントあるじゃん!」

「言ったんだから150セントで売ってよ」

「まったく仕方ないな。ほら、売ってあげるよ」

「へへへ、母ちゃん喜ぶぞー。じゃあね、兄ちゃん!」

「次からはちゃんと買うんだぞー!」

「分かってるってー!」

「……ふー、行っちゃったか。…お釣りを渡さなかった事には気付かれなかったな。大人を騙そうなんて20年早いぜ少年!」

完…?

⏰:08/11/03 20:50 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#297 [◆vzApYZDoz6]
>>295-296
『ミルク売りなシュール』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/90

最近のガキは生意気だけど、こういう風景は許せる

⏰:08/11/03 20:51 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#298 [No.033◆vzApYZDoz6]
今日も1人の夜がやって来る。
窓から見える月を眺めながら、今日も想う。

あなたはどんな未来を見るのだろうか。
私はどんな未来を見ていたのだろうか。

その未来はもう叶わない。
あなたはどんな未来を望んでいたの?
あなたはどんな未来を築こうとしたの?

「……ねぇ、あなたの──」

私が共に歩むのは駄目だったの?
あなたの未来はそこにしか無かったの?

絶対に、私はあなたの隣を歩けないの?

1人の夜は、もう嫌だから。

「──後を追ってもいいかな?」

⏰:08/11/03 20:52 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#299 [◆vzApYZDoz6]
>>298
『独りの夜』
bbs1.ryne.jp/d.php/illust/1144/92

愛したあの人はもういない──

⏰:08/11/03 20:53 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


#300 [No.034、039◆vzApYZDoz6]
蝉の鳴き声をBGMに、真っ白な砂浜。
キラキラと光る方に目をやると、そこには波打つガラス。
空にはやたらめったらもこもこした積乱雲。なんか青雲のCMに出てきそうな。

「そう、海!」

「海だな」

「感動が薄いですよ、ワトソン君!」

「それは忝ない、何に感動すればいいか教えてくれんかね」

「だから海に!」

「うん、コンクリ抱えてダイブはきっと気持ちいいぜ姐さんよ」

「いえなんでもありませんアニキ! でもすごいねー、こんなところに海があったなんて」

「いや、でも車停めて見るほどか…?」

「これだから男は…この綺麗な海を堪能しようとは思わないの?」

「水着すら無いのに海で何するんだよ…」

「だから感d「よし帰ろう」

⏰:08/11/03 20:54 📱:P903i 🆔:LUmIhgZI


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