闇の中の光
最新 最初 🆕
#1 [ゆーちん]
マイペース更新ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいm(__)m

>>2 アンカー・感想板
>>3 前作

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#2 [ゆーちん]
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感想板
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#3 [ゆーちん]
本当にあった×××な話
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9487/f

双子の秘密
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9512/f

冷たい彼女
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9538/f

⏰:08/12/28 20:44 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#4 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

自殺

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/28 20:49 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#5 [ゆーちん]
首を吊るか、それとも薬を大量に飲もうか。


手首を切って水の中に入れたままにしようか、どこかの屋上から飛び降りようか。


車や電車にひかれてしまおうか。


今までずっと我慢してきたんだ。


死に方ぐらい自分で決めたい。

⏰:08/12/28 20:50 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#6 [ゆーちん]
痛くない死に方がいいな。


静かに、楽に、安らかに。


だとしたら今考えた死に方は全てダメ。


拳銃で頭をぶち抜けば一瞬なんだろうな…。


でも、ここは日本。


拳銃なんか簡単に手に入る訳ない。

⏰:08/12/28 20:50 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#7 [ゆーちん]
「はぁ。」


自然にため息が出た。


「ため息ついてると幸せ逃げるよ、萌子!」

「あぁ、うん。そうだね。エヘヘッ。」


何が幸せだよ。


幸せって何?


人の気も知らないで、幸せ逃げるよ、とか簡単に言ってんじゃないよ。

⏰:08/12/28 20:51 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#8 [ゆーちん]
ムカつく。


何の悩みもなさそうに笑っている友達がムカつく。


その友達に合わせて、無理矢理笑顔を作った自分にもムカつく。


「今日買い物行かない?」

「あっ、いいね!」

「私も行く!」

「萌子は?」


聞かなくても、答えはわかるでしょ?

⏰:08/12/28 20:52 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#9 [ゆーちん]
「もちろん行くよ!」


得意の笑顔を咲かせた。


「じゃあ決まり!」


断れるわけない。


断ると、友達なくすから。


そもそも、こいつらを友達だなんて呼ぶのもおかしい話だ。


こんな…上辺だけの付き合いをしている女たちを。

⏰:08/12/28 20:52 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#10 [ゆーちん]
「彼氏がプレゼントしてくれてぇ。」

「いいなぁ。うちの彼氏なんて全然だもん。」

「でもイケメンじゃん!」

「まぁ顔はいいんだけどね。」


上辺だけの、その【友達】たちは恋愛話を楽しそうに繰り広げる。

⏰:08/12/28 20:53 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#11 [ゆーちん]
「萌子は?彼氏とどうなの?」

「順調だよー。」

「そっかぁ。よかったね!」

「うん。」


ちっともよくない。


彼氏なんか必要なの?


本当は彼氏いらない。


みんなが彼氏を作ったから、私も作った。


ただそれだけ。

⏰:08/12/28 20:54 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#12 [ゆーちん]
みんながいらないって言うなら、私も彼氏を作らない。


みんなが、みんなと、みんなで…。


誰かに合わせてないと生きていけない、そんな集団なの、私がいるグループは。


みんなが派手だから派手にする。


みんなが泣くから泣く。


みんなが笑うから笑う。

⏰:08/12/28 20:54 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#13 [ゆーちん]
正直、疲れた。


上辺だけの友達といるのも。


上辺だけの彼氏といるのも。


上辺だけの…家族といるのも。


もう、疲れた。


「ただいま。」


みんなと買い物に行って、晩ご飯を食べに行くという流れになったが、私はそれを断って家に帰って来た。

⏰:08/12/28 20:55 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#14 [ゆーちん]
「遅い。何してたんだ!」


父親が怒鳴った。


上辺だけの父親が。


「学校で居残りして、課題に必要な資料調べてた。」

「嘘つくな!」

「本当だよ。」

「ったく…さっさと夕飯の仕度しろ!」

「うん。ごめん。」

⏰:08/12/28 20:58 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#15 [ゆーちん]
部屋に荷物を置き、着替えを済ませてキッチンに向かった。


今日も母はいない。


また男のとこか…。


「焼きそばでいい?」

「何でもいいから早く作れ!」

「…うん。」


私の両親は、本当の両親ではない。


本当の両親は、知らない。

⏰:08/12/28 20:59 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#16 [ゆーちん]
私を生んですぐに施設に預けた本当の両親は、生きているのか死んだのか…そんなの全く知らない。


養子として今の両親である金河夫妻に引き取られたのは7才の時。


最初は仲のいい、本当の親子みたいだった。

⏰:08/12/28 20:59 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#17 [ゆーちん]
子供に恵まれる事はないといわれた母の体が理由で、私を養子として迎え入れてくれた。


本当の子供のように可愛がってくれてたのはいいが、数年前に父が浮気をした。


それがきっかけで仲のいい家族ごっこが終わった。

⏰:08/12/28 21:00 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#18 [ゆーちん]
母は怒り狂い、そのストレス発散方法として私を選んだ。


殴る、蹴る、引っ張る…何でもありかよって感じ。


毎日毎日、痛くて痛くて…この頃から私の心は暗闇に包まれた。


父は母に何度も謝った。


だけど母は父を許さなかった。

⏰:08/12/28 21:01 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#19 [ゆーちん]
母のストレス発散方法が変わったのは2年前。


私が高校生になった時だった。


父にされた事を、母もし始めた。


他所に男を作り、家事放棄。


そんな母に父は何も言わなかった。


なぜ何も言わないの。

⏰:08/12/28 21:02 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#20 [ゆーちん]
自分も浮気をしていたから?


自分に非があったから?


私のことを本当の子供として愛してるなら、また昔のように戻れるように努力してよ。


そう願ってはいたものの、願い損だと気付いたのは1年前だった。


父のストレス発散方法として、私が選ばれてしまった。

⏰:08/12/28 21:02 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#21 [ゆーちん]
母の暴力より痛かった。


殴る、蹴るは当たり前。


お腹に膝を入れられた時は気絶をしたぐらい。


首を締められた時は、死ぬ事を覚悟したぐらい。


痛いなんてもんじゃない。


「できたよ。」

「…おう。」

⏰:08/12/28 21:03 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#22 [ゆーちん]
暴力を振るう父だけど、普通に接してくれる事もある。


だから我慢する。


「仕事見つかった?」

「まだ。」

「そっか。」

⏰:08/12/28 21:03 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#23 [ゆーちん]
働かない父のせいで家計は苦しかった。


だから私はたくさん我慢をする。


お金がなくちゃ、何にもできない。


だから私は自分で稼いだ。

⏰:08/12/28 21:04 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#24 [ゆーちん]
高校生になった時、周りが派手だったから私も派手になった。


毛染め液、化粧品やアクセサリー。


全部、万引きした。


派手になった途端、父は私に言った。


体を売れ、と。


私は実の娘ではない。


だから父は簡単にそんな事を口にしたんだと思う。

⏰:08/12/28 21:05 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#25 [ゆーちん]
援助交際を親から勧められるなんて、思ってもみなかった。


体を売るって意味ぐらい、わかってた。


だけど私は処女だった。


処女は高く売れると噂では聞いていたけど、なぜか処女だけは売り物にしたくなかった。

⏰:08/12/28 21:05 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#26 [ゆーちん]
だから私は中学の時に付き合っていた元カレの宗太郎に頼んだ。


SEXしよう、って。


清く正しい付き合いだったから、キスしかした事のない関係だった。


別れた理由は、私がフッたから。


家族がぐちゃぐちゃになりだして、恋愛とか友情とか、そんなのに疲れたから。

⏰:08/12/28 21:06 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#27 [ゆーちん]
別れたはずなのに、宗太郎に頼ってしまうのは、未練とかそんなのじゃない。


ただ、宗太郎の気持ちを利用しただけ。


別れてからも私を好きだと言ってくれる宗太郎の気持ちを、利用しただけなんだ。

⏰:08/12/28 21:07 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#28 [ゆーちん]
初めてのSEXは痛かった。


血が出た。


だけど虐待されていた痛みに比べると、蚊に刺されるようなもの。


比べものにならない。


処女を捨てた私は、すぐに援助交際を始めた。


たった1回、目を閉じている間に行為は終わり、簡単に3万〜5万円は稼げた。

⏰:08/12/28 21:08 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#29 [ゆーちん]
金周りのいい客なら、おこずかいもくれた。


1日に何人もの男の欲を満たし、金を稼いだ。


家に帰り、稼いだ7割を父に渡し、残りの3割は父に内緒で自分のおこずかいにした。


おこずかいがないと上辺だけの友達や彼氏と遊べないから。

⏰:08/12/28 21:08 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#30 [ゆーちん]
そんな生活を続けているうちに、もう何もかも疲れてしまったんだ。


育てたくないなら生まなきゃよかったのに、と見た事のない本当の両親を恨んだ。


育てたくないなら引き取らなきゃよかったのに、と金河夫妻を恨んだ。

⏰:08/12/28 21:09 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#31 [ゆーちん]
嫌なら嫌だと言えばいいのに、と自分の根性のなさを恨んだ。


周りの奴が嫌い。


自分も嫌い。


生きるのも嫌い。


だったらいっその事、死んでやろうと思う。


だから最近はどうやって死のうか考えるのが私の日課だった。

⏰:08/12/28 21:10 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#32 [ゆーちん]
いつ死んでも後悔はない。


援助交際の客に殺されてもいい。


父の暴力で死んだっていい。


不慮の事故でもいい。


だけど、こんな時に限って何も起きない。

⏰:08/12/28 21:10 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#33 [ゆーちん]
だったら最期ぐらい自分で決めようかな、っていう願望が生まれる。


どうやって死のうかな。


それを考えるのが、私の今の生き甲斐だった。

⏰:08/12/28 21:11 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#34 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

今日はここまで

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:08/12/28 21:11 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#35 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

ナイフ

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/29 15:43 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#36 [ゆーちん]
ある日の夜、何がきっかけだったのかわからないが父が暴れ出した。


母は今日もいない。


もう3〜4日は顔を見ていない気がする。


「ふざけるな!」


別にふざけてない。


ふざけてんのはあんただよ。

⏰:08/12/29 15:43 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#37 [ゆーちん]
背中を殴る父。


体を丸めて小さくなる私。


自分を守る為に丸まったんじゃない。


丸まっていないと、挑発してしまい、父の行為がエスカレートして、殺されてしまうかもしれないから。


最期は自分で、と決めたんだから、今死ぬわけにはいないの。


痛くない死に方をするんだから。

⏰:08/12/29 15:44 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#38 [ゆーちん]
髪を引っ張られ、無理矢理立たされた。


お腹を蹴り上げ発狂する。


「お前さえ、萌子さえいなきゃ!俺らは幸せだったんだ!」


だから…幸せって何。


私がいらないなら施設に戻せばいいじゃない。


「何なんだその顔は!」

⏰:08/12/29 15:45 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#39 [ゆーちん]
何なんだって言われても。


私を生み逃げした両親が作った顔だよ。


憎いでしょ?


あんたの人生を変えちゃったんだからね。


私なんかいなければ、幸せだったかもしれないもんね。


「この野郎…殺す!」


とうとう父の手が私の首を締めた。

⏰:08/12/29 15:45 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#40 [ゆーちん]
やばい。


こいつに殺される訳にはいかないの!


「やめ…て…」


苦しい。


息が出来ない。


「うるさい!黙れ!」


父の手に力が入る。


あぁー…もうダメだ。


私このままこいつに殺されるんだ。

⏰:08/12/29 15:46 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#41 [ゆーちん]
「おと…さ…」

「殺すーっ!」


はぁ…。


どうぞ。


もういいや。


殺して。


さっさと殺してよ。


それで私を開放して。

⏰:08/12/29 15:47 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#42 [ゆーちん]
天国かな、地獄かな。


きっと地獄だろうな。


万引きとか援交とかしてたし。


ゆっくりと意識が薄れてきた。


バイバイ、上辺だけのみなさん。

⏰:08/12/29 15:47 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#43 [ゆーちん]
だけど次の瞬間には、なぜか私の咳の声が聞こえた。


「ゲホッ、ゲホッ…」


あれ、なんで私むせ返してんの。


まさか…まだ生きてる?


「出て行け!」


これはこれでラッキーなのかな。


自分で死に方選べるんだし。

⏰:08/12/29 15:48 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#44 [ゆーちん]
でもどうせなら殺してくれたほうがよかったな。


もう苦しかったり、痛い思いはいやだよ。


ガチャ…


私は家から飛び出した。


フラフラの足取り。


…っていうか真っ直ぐ歩けてないし。


宛もなく、とにかく前に進んでみた。


だって…

⏰:08/12/29 15:48 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#45 [ゆーちん]
だってどこかに死ぬ方法が転がってるかもしんないでしょ?


体中痛くて、どこが痛いのかわかんない。


とりあえず、倉庫がたくさん立ち並ぶ場所に到着した。


ドサッ…


力尽きたかも。


地面に倒れてしまった。

⏰:08/12/29 15:50 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#46 [ゆーちん]
ふと夜空を見上げる。


…うざっ。


こんな日に限って、むちゃくちゃ星が綺麗だった。


自然に流れていた涙。


何泣いてんの私。


その時、思った。

⏰:08/12/29 15:51 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#47 [ゆーちん]
もうさ、痛いのも苦しいのもやだ。


今日、死のう。


方法なんて、もう何でもいい。


痛くてもいいから、もう…死にたい。

⏰:08/12/29 15:51 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#48 [ゆーちん]
もう一度だけ力を振り絞り、私は立ち上がった。


何か、何か死ねるもの。


その時、目の前に見えたのがナイフだった。


神様がいるのなら、感謝する。


この時、目の前にナイフを置いてくれたんだね。


ありがとう。

⏰:08/12/29 15:55 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#49 [ゆーちん]
フラフラとナイフまでたどり着き、手に取った。


案外綺麗なナイフ。


サビてないし、汚れてもいない。


ピカピカなナイフ。


痛いだろうけど、まぁいいや。


綺麗なナイフだし。


この星が見えなくなって、太陽が空にのぼった時には綺麗に死ねてるかな?

⏰:08/12/29 15:56 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#50 [ゆーちん]
そんなことを考えながら、私はナイフを高く振りかざした。


心臓の辺りをひとつきすれば、いいよね?


迷いはなかった。


今度こそ、上辺だけのみなさんバイバイ。


…。

⏰:08/12/29 15:57 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#51 [ゆーちん]
と、次の瞬間には場面が変わっていた。


あれ、私死んだ?


死んだら、こんな場所に来るんだ。


今から天国行きか地獄行きか決まるんのかな。


天国でも地獄でもどっちでもいいから、早く私を楽にさせて。

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#52 [ゆーちん]
死んだはずなのに、なぜか体が痛いよ。


「あ、起きた?」


えっ。


…誰。


…何。


…起きた?

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#53 [ゆーちん]
子鬼の声だろうか、天使の声だろうか。


だけど、どっちでもなかった。


なぜか私の目の前に映り込んだのは、金髪頭の人間だった。


「おい。大丈夫か?」


…は?


大丈夫じゃ困るんだけど。


私、死んだんだし。

⏰:08/12/29 15:59 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#54 [ゆーちん]
「医者に診てもらう?」


…医者?


死んだのに、まだ医者が必要なの?


「お前、名前は?」


ねぇ…。


もしかして私、死んでないの?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#55 [ゆーちん]
思わず体が起き上がる。


ゴツンッ…


「いってぇー!」


うん、痛い。


頭と頭がごっつんこ。


何で私、生きてんの。


てか、ここどこ?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#56 [ゆーちん]
「地獄?」

「は?」

「生きてんの?」

「何言って‥」

「私、生きてんの?」


金髪頭の男は私の質問に答えた。


「生きてるよ。」


その5文字を聞いた途端、泣きそうになった。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#57 [ゆーちん]
死ねなかったんだ。


最悪。


心臓を狙ったはずなのに、まさか急所外れ…って、あれ?


どこにも傷がない。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#58 [ゆーちん]
何がどうなっているのか、全く理解できない。


「名前は?」

「え?」

「名前。」

「てゆーか、あんた誰よ。」

「俺?俺は天下無敵の哲夫様。」


…哲夫?


聞いた事のない名前。

⏰:08/12/29 16:02 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#59 [ゆーちん]
「誰?」

「だから哲夫だってば!千早哲夫。」


そう言って哲夫は笑った。


「で、あんたは?」

「私、死んだはずなんだけど!何で生きてんの?」

「はぁ?」

「ナイフで心臓ひとつきにして、私は死んだの!」

「頭でも打った?」

「てゆーか、ここはどこ?」

⏰:08/12/29 16:03 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#60 [ゆーちん]
完全にパニック状態だった。


そんな私に、哲夫は教えてくれた。


「俺がお前を見付けた時、右手にナイフ握ってたけど普通に息してたぞ。」

「嘘だ…。」

「お前が握ってたナイフ、これだろ?」


そう言って哲夫が取り出したナイフ。

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#61 [ゆーちん]
あぁ、そうだ。


その綺麗なナイフで、綺麗な星空の元、綺麗に死ぬつもりだったんだ。


「このナイフ、俺の。」

「え?」

「護身用に持ってんの。それがどうした事か、なぜか倉庫前に落として来ちゃったみたいで。探しに行ったらナイフ握ったあんたが倒れてたってわけ。」

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#62 [ゆーちん]
えっ、それじゃ私…自殺する前にマジで力尽きて気を失ってた訳?


何それ信じられない。


最悪。


「呼び掛けても起きないから、とりあえず俺んち連れて来た。」

「ここ、あんたんちなの?」

「救急車呼ぶにも、携帯は家に忘れてたし。お前運んでここ到着したのはいいけど、かなり疲れてたから、そのまま俺も寝ちゃったんだわ。」

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#63 [ゆーちん]
哲夫は煙草に火をつけた。


「助けてくれたの?」

「まぁ、そんなとこかな。」


何それ。


益々信じらんない。


「余計な‥」


ガチャッ…

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#64 [ゆーちん]
いきなりドアが開き、私の声を遮った。


「テッちゃん腹減っ…たっ…て…誰?」


いきなり入って来た男が私を見て驚く。


「ノックしてよ、ヤッちゃん。」

「この女子高生、誰!何でこんなに汚いの?」


なんで私が女子高生ってわかんだろ、と思ったら…ばっちり制服姿だった私。

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#65 [ゆーちん]
着替える前に父親に殴られたんだっけ。


「千早哲夫。」

「んあ?」

「私、助けてくれなんて言ってない。わざわざここまで運んで、ベットに寝かせてくれたなんて余計なお世話だよ。」

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#66 [ゆーちん]
私がそう言うと、哲夫とヤッちゃんと呼ばれた男は固まった。


「人助けしたかと思ったかもしんないけど、こっちにしたら、ただの迷惑。」


するとヤッちゃんと呼ばれた男が言った。


「おい、やめとけ。哲夫に助けてもらってそんな言い方するな。」

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#67 [ゆーちん]
「だから助けてなんて頼んでない。」

「お前、生意気してると哲夫に殺されるぞ。こいつこう見えてでっけぇ集団仕切ってる人間だから。」


殺される?


集団?


あぁ、乱暴な不良グループの頭みたいな事?


だったら調度いいや。

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#68 [ゆーちん]
「だから何。有難迷惑なんだよ、こんな事されちゃ。」

「お前いい加減にしとけよ。哲夫怒らすとマジで殺され‥」

「殺してよ。」


ヤッちゃんという男の言葉を遮ってやった。


哲夫と男の顔が、また変わる。

⏰:08/12/29 16:33 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#69 [ゆーちん]
「哲夫を怒らせれば殺してくれんの?だったら早く怒ってよ。そんで私を殺して。」


哲夫にそう言うと、なぜか視線を反らされた。


「ねぇ、殺して。」

「…。」

「聞こえない?殺してって言ってんの。」

「…。」

「ねぇってば。殺してよ。」

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#70 [ゆーちん]
何度も言い寄る私を、いきなりベットに押し倒した哲夫。


…痛い。


ベットが弾んだだけなのに背中の傷に響いた。


「殺して殺して、うるさい。」

「怒った?だったら早く殺して。」

「康。お前ちょっと出てって。」


ヤッちゃん並びに康と呼ばれた男は何も言わずに部屋から出て行った。

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#71 [ゆーちん]
二人きりになった部屋。


哲夫はさっきのナイフを取り出して、私の喉に近づけた。


「いいの?殺すよ?」

「うん、殺して。」

「お前、怖くないの?」

「何で?」

⏰:08/12/29 16:35 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#72 [ゆーちん]
私を見下ろす哲夫の目は力強かった。


「康孝に聞いただろ?俺怒らせたら、あんた殺されんだよ?」

「だから何。怒らせた方が私にとっては好都合。」

「何で、死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:36 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#73 [ゆーちん]
「あんたに関係ないじゃん。さっさと殺して。あ、殺してもらったのにあんたが捕まるのは可哀相だから自殺したように勝手に工作していいよ。自殺扱いになれば、あんたは捕まんないでしょ?」

「本当に殺すよ?」

「うん。」


ナイフを持つ手に力が入ったのがわかった。


やっと…死ねる。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#74 [ゆーちん]
「フッ…」


私が目を閉じた途端、哲夫が笑った。


何、笑ってんの。


早く刺せよ、と思い目を開くとナイフを床に落とした音がした。


次の瞬間には、哲夫の唇が私の喉に触れていた。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#75 [ゆーちん]
「あんたじゃなくてナイフを刺して。」

「…お前、何あったか知らないけど死ぬなんて考えんな。」


哲夫の舌が喉やうなじをなめ回す。


気持ち悪い。


「やめて。」

「何で死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#76 [ゆーちん]
「関係ない。」

「まぁいいや。いつか教えてね。」


いつか?


いつかなんてないよ。


私は死ぬんだから。

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#77 [ゆーちん]
「殺してくんないの?」

「お前は死んだ。」

「は?」

「今さっき死んだ。」

「意味わかんない…」

「今から俺のペットとして、お前飼うから。死のうとしてたんだから、別にどうなってもいいんだろ?」

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#78 [ゆーちん]
「何言ってんの。私は死にたいの。」

「お前に飽きたその時は、ちゃんと殺してやるから。それまで俺のペットになれ。」


私の首筋から上がって来た顔は、また下りて来て、私の唇を塞いだ。


まだ体中痛い。


頭も痛い。

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#79 [ゆーちん]
何で生きてんのか、何で殺されなかったのか、何でキスされてるのか。


頭が痛くて考えられない。


唇が離れると、哲夫は言った。


「名前は?」

「…萌子。」

「萌子、お前は今日からシホだ。」

「シホ?」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#80 [ゆーちん]
「萌子は死んだ。だからお前はシホだ。」

「シホ…」

「理由知りたい?」


私は頷いた。


「俺、星好きなんだ。星の反対はシホだろ?だからシホ。」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#81 [ゆーちん]
そう言って笑った哲夫。


バカらしい。


こんなバカがでっかい集団をまとめている頭なら、その集団も長くないね。

⏰:08/12/29 16:41 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#82 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

ではまた

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:08/12/29 16:42 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#83 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

ペット

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/30 16:15 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#84 [ゆーちん]
携帯も財布も着替えもない。


「欲しいものある?シホ。」


シホと呼ばれてもしっくりこない。


私は17年間、萌子だったわけで、今もまだ萌子。


だからいきなりシホだって言われても、頭がついて行かなかった。

⏰:08/12/30 16:15 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#85 [ゆーちん]
「…特に何も。」

「とりあえず…風呂だな。汚すぎる。」


哲夫の手を借りて、浴室に向かった。


立っているのも辛い。


制服を脱がせてもらい、下着も取ってもらった。


微動だにしない哲夫。


「哲夫。」

「おっ、やっと名前呼んだね。何?」

⏰:08/12/30 16:16 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#86 [ゆーちん]
「何歳?」

「俺?22歳。シホは?」

「…。」

「おい。」


…あぁ、シホは私か。


「17。」

「ふーん、若いね。」

「17の裸見て、動揺とかしないの?」

⏰:08/12/30 16:17 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#87 [ゆーちん]
「して欲しいの?」

「別に。援交の客だった親父は、みんな嬉しそうに私の裸見てたから。」

「…。」


また力強い目で私を見た哲夫。


どう、引いた?


汚いと思った?


捨てるなら捨ててもいいよ。


突き放される事なら慣れてるから。

⏰:08/12/30 16:17 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#88 [ゆーちん]
「シホは援交なんかしてないよ。」


哲夫はそう言って自分の服を脱ぎ出した。


何、言ってんの、こいつ。


意味わかんない…。

⏰:08/12/30 16:18 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#89 [ゆーちん]
お互い、素っ裸になって、温かいお風呂に入った。


湯舟につかりながら、哲夫は言った。


「おいで。」


何で行かなきゃなんないの。


無視していると、哲夫自ら私の方に寄って来た。


「しつけが必要だな。」

⏰:08/12/30 16:18 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#90 [ゆーちん]
私の後ろに周り、私を抱え込む。


何してんだ。


そんなうっとーしい事しないで欲しい。

⏰:08/12/30 16:19 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#91 [ゆーちん]
「どっかの野良犬と喧嘩でもした?痛かっただろ。」


そう言うと哲夫は私の背中を撫で始めた。


「は?」

「お腹も青アザあったし。大丈夫?」


さっき、私を殺そうとしていたのは、この哲夫だよね?

⏰:08/12/30 17:46 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#92 [ゆーちん]
声や態度が優し過ぎて、別人のような気がする。


「野良のくせに跳び蹴りのできる犬だったの。」

「そりゃおっかないね。」


哲夫が後ろで笑った。


私も、なぜか笑ってしまった。

⏰:08/12/30 17:47 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#93 [ゆーちん]
作り笑顔以外でちゃんと笑ったのはいつぶりだろう。


そんな私の背中やお腹を、何度も何度も哲夫は撫でてくれた。

⏰:08/12/30 17:47 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#94 [ゆーちん]
死にたかった理由とか、傷の理由を深く聞いて来ないので助かる。


「風呂から出たら、まずは買い物だな。色々必要なんだな、ペット飼うって。」


髪や体を綺麗に洗い終わり、お風呂から出ると、裸のまま部屋中をうろついてやった。

⏰:08/12/30 17:48 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#95 [ゆーちん]
「服着ろよ。」

「汚いもん。」


脱衣所にある脱ぎ捨てた制服しかない私。


「あ、そっか。着替えないんだっけ。」


そう言った哲夫は、クローゼットから上下繋がった服を取り出した。

⏰:08/12/30 17:49 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#96 [ゆーちん]
「何これ。」

「つなぎ服っつーの?見た事ない?」

「工事現場の人みたい。」

「いや?」

「いや。」

「もぉー、ペットのくせに文句言うなよ。」


そう言って哲夫は携帯電話で誰かに電話をかけた。


「お前、戻って来れる?…うん…うん…そう、じゃあ。」


簡単な電話を済ませた哲夫は、服を探すのをやめて、再びつなぎ服を私に手渡した。

⏰:08/12/30 17:50 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#97 [ゆーちん]
「康が来るから車出して貰おう。いるものとか欲しいものとか何でも買ってやるよ。」

「康って…」

「さっきのバカヅラ男。康孝って言って、みんなから康とかヤッちゃんて呼ばれてる。」

「そうなんだ。」

⏰:08/12/30 17:51 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#98 [ゆーちん]
パンツ一枚のまま、哲夫は煙草を吸い始めた。


「康が来るまでに服着ろよ。」

「…何で?」

「何でって…主人の命令だからだよ。」

「ふーん、主人ねぇ。」


下着もつけずに、言われた通りつなぎ服を着た。


「おっきい。」

「仕方ねぇだろ。男物なんだから。」

⏰:08/12/30 17:52 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#99 [ゆーちん]
「普通のTシャツとかないの?」

「あるけど…Tシャツのがいいのか?」

「うん。」

「…わがままな奴だな。買い物行ったら、しつけ本も買わないとなー。」


そう言って笑うだけで、結局哲夫はTシャツも出してくれなかった。

⏰:08/12/30 17:53 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#100 [ゆーちん]
しばらくすると、さっきの男が来た。


康孝だ。


「お待たせ〜。」

「悪いな。ちょっと車出してくれる?」

「えぇ!来ていきなり?」

「シホを飼うのに色々必要でさ。」

「…シホ?犬でも飼うの?」


キョトンとする康孝に、哲夫は言った。


「犬じゃない。人間だ。」

⏰:08/12/30 17:53 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


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