闇の中の光
最新 最初 🆕
#1 [ゆーちん]
マイペース更新ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいm(__)m

>>2 アンカー・感想板
>>3 前作

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#2 [ゆーちん]
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感想板
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#3 [ゆーちん]
本当にあった×××な話
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9487/f

双子の秘密
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9512/f

冷たい彼女
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9538/f

⏰:08/12/28 20:44 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#4 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

自殺

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/28 20:49 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#5 [ゆーちん]
首を吊るか、それとも薬を大量に飲もうか。


手首を切って水の中に入れたままにしようか、どこかの屋上から飛び降りようか。


車や電車にひかれてしまおうか。


今までずっと我慢してきたんだ。


死に方ぐらい自分で決めたい。

⏰:08/12/28 20:50 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#6 [ゆーちん]
痛くない死に方がいいな。


静かに、楽に、安らかに。


だとしたら今考えた死に方は全てダメ。


拳銃で頭をぶち抜けば一瞬なんだろうな…。


でも、ここは日本。


拳銃なんか簡単に手に入る訳ない。

⏰:08/12/28 20:50 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#7 [ゆーちん]
「はぁ。」


自然にため息が出た。


「ため息ついてると幸せ逃げるよ、萌子!」

「あぁ、うん。そうだね。エヘヘッ。」


何が幸せだよ。


幸せって何?


人の気も知らないで、幸せ逃げるよ、とか簡単に言ってんじゃないよ。

⏰:08/12/28 20:51 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#8 [ゆーちん]
ムカつく。


何の悩みもなさそうに笑っている友達がムカつく。


その友達に合わせて、無理矢理笑顔を作った自分にもムカつく。


「今日買い物行かない?」

「あっ、いいね!」

「私も行く!」

「萌子は?」


聞かなくても、答えはわかるでしょ?

⏰:08/12/28 20:52 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#9 [ゆーちん]
「もちろん行くよ!」


得意の笑顔を咲かせた。


「じゃあ決まり!」


断れるわけない。


断ると、友達なくすから。


そもそも、こいつらを友達だなんて呼ぶのもおかしい話だ。


こんな…上辺だけの付き合いをしている女たちを。

⏰:08/12/28 20:52 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#10 [ゆーちん]
「彼氏がプレゼントしてくれてぇ。」

「いいなぁ。うちの彼氏なんて全然だもん。」

「でもイケメンじゃん!」

「まぁ顔はいいんだけどね。」


上辺だけの、その【友達】たちは恋愛話を楽しそうに繰り広げる。

⏰:08/12/28 20:53 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#11 [ゆーちん]
「萌子は?彼氏とどうなの?」

「順調だよー。」

「そっかぁ。よかったね!」

「うん。」


ちっともよくない。


彼氏なんか必要なの?


本当は彼氏いらない。


みんなが彼氏を作ったから、私も作った。


ただそれだけ。

⏰:08/12/28 20:54 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#12 [ゆーちん]
みんながいらないって言うなら、私も彼氏を作らない。


みんなが、みんなと、みんなで…。


誰かに合わせてないと生きていけない、そんな集団なの、私がいるグループは。


みんなが派手だから派手にする。


みんなが泣くから泣く。


みんなが笑うから笑う。

⏰:08/12/28 20:54 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#13 [ゆーちん]
正直、疲れた。


上辺だけの友達といるのも。


上辺だけの彼氏といるのも。


上辺だけの…家族といるのも。


もう、疲れた。


「ただいま。」


みんなと買い物に行って、晩ご飯を食べに行くという流れになったが、私はそれを断って家に帰って来た。

⏰:08/12/28 20:55 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#14 [ゆーちん]
「遅い。何してたんだ!」


父親が怒鳴った。


上辺だけの父親が。


「学校で居残りして、課題に必要な資料調べてた。」

「嘘つくな!」

「本当だよ。」

「ったく…さっさと夕飯の仕度しろ!」

「うん。ごめん。」

⏰:08/12/28 20:58 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#15 [ゆーちん]
部屋に荷物を置き、着替えを済ませてキッチンに向かった。


今日も母はいない。


また男のとこか…。


「焼きそばでいい?」

「何でもいいから早く作れ!」

「…うん。」


私の両親は、本当の両親ではない。


本当の両親は、知らない。

⏰:08/12/28 20:59 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#16 [ゆーちん]
私を生んですぐに施設に預けた本当の両親は、生きているのか死んだのか…そんなの全く知らない。


養子として今の両親である金河夫妻に引き取られたのは7才の時。


最初は仲のいい、本当の親子みたいだった。

⏰:08/12/28 20:59 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#17 [ゆーちん]
子供に恵まれる事はないといわれた母の体が理由で、私を養子として迎え入れてくれた。


本当の子供のように可愛がってくれてたのはいいが、数年前に父が浮気をした。


それがきっかけで仲のいい家族ごっこが終わった。

⏰:08/12/28 21:00 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#18 [ゆーちん]
母は怒り狂い、そのストレス発散方法として私を選んだ。


殴る、蹴る、引っ張る…何でもありかよって感じ。


毎日毎日、痛くて痛くて…この頃から私の心は暗闇に包まれた。


父は母に何度も謝った。


だけど母は父を許さなかった。

⏰:08/12/28 21:01 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#19 [ゆーちん]
母のストレス発散方法が変わったのは2年前。


私が高校生になった時だった。


父にされた事を、母もし始めた。


他所に男を作り、家事放棄。


そんな母に父は何も言わなかった。


なぜ何も言わないの。

⏰:08/12/28 21:02 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#20 [ゆーちん]
自分も浮気をしていたから?


自分に非があったから?


私のことを本当の子供として愛してるなら、また昔のように戻れるように努力してよ。


そう願ってはいたものの、願い損だと気付いたのは1年前だった。


父のストレス発散方法として、私が選ばれてしまった。

⏰:08/12/28 21:02 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#21 [ゆーちん]
母の暴力より痛かった。


殴る、蹴るは当たり前。


お腹に膝を入れられた時は気絶をしたぐらい。


首を締められた時は、死ぬ事を覚悟したぐらい。


痛いなんてもんじゃない。


「できたよ。」

「…おう。」

⏰:08/12/28 21:03 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#22 [ゆーちん]
暴力を振るう父だけど、普通に接してくれる事もある。


だから我慢する。


「仕事見つかった?」

「まだ。」

「そっか。」

⏰:08/12/28 21:03 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#23 [ゆーちん]
働かない父のせいで家計は苦しかった。


だから私はたくさん我慢をする。


お金がなくちゃ、何にもできない。


だから私は自分で稼いだ。

⏰:08/12/28 21:04 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#24 [ゆーちん]
高校生になった時、周りが派手だったから私も派手になった。


毛染め液、化粧品やアクセサリー。


全部、万引きした。


派手になった途端、父は私に言った。


体を売れ、と。


私は実の娘ではない。


だから父は簡単にそんな事を口にしたんだと思う。

⏰:08/12/28 21:05 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#25 [ゆーちん]
援助交際を親から勧められるなんて、思ってもみなかった。


体を売るって意味ぐらい、わかってた。


だけど私は処女だった。


処女は高く売れると噂では聞いていたけど、なぜか処女だけは売り物にしたくなかった。

⏰:08/12/28 21:05 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#26 [ゆーちん]
だから私は中学の時に付き合っていた元カレの宗太郎に頼んだ。


SEXしよう、って。


清く正しい付き合いだったから、キスしかした事のない関係だった。


別れた理由は、私がフッたから。


家族がぐちゃぐちゃになりだして、恋愛とか友情とか、そんなのに疲れたから。

⏰:08/12/28 21:06 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#27 [ゆーちん]
別れたはずなのに、宗太郎に頼ってしまうのは、未練とかそんなのじゃない。


ただ、宗太郎の気持ちを利用しただけ。


別れてからも私を好きだと言ってくれる宗太郎の気持ちを、利用しただけなんだ。

⏰:08/12/28 21:07 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#28 [ゆーちん]
初めてのSEXは痛かった。


血が出た。


だけど虐待されていた痛みに比べると、蚊に刺されるようなもの。


比べものにならない。


処女を捨てた私は、すぐに援助交際を始めた。


たった1回、目を閉じている間に行為は終わり、簡単に3万〜5万円は稼げた。

⏰:08/12/28 21:08 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#29 [ゆーちん]
金周りのいい客なら、おこずかいもくれた。


1日に何人もの男の欲を満たし、金を稼いだ。


家に帰り、稼いだ7割を父に渡し、残りの3割は父に内緒で自分のおこずかいにした。


おこずかいがないと上辺だけの友達や彼氏と遊べないから。

⏰:08/12/28 21:08 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#30 [ゆーちん]
そんな生活を続けているうちに、もう何もかも疲れてしまったんだ。


育てたくないなら生まなきゃよかったのに、と見た事のない本当の両親を恨んだ。


育てたくないなら引き取らなきゃよかったのに、と金河夫妻を恨んだ。

⏰:08/12/28 21:09 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#31 [ゆーちん]
嫌なら嫌だと言えばいいのに、と自分の根性のなさを恨んだ。


周りの奴が嫌い。


自分も嫌い。


生きるのも嫌い。


だったらいっその事、死んでやろうと思う。


だから最近はどうやって死のうか考えるのが私の日課だった。

⏰:08/12/28 21:10 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#32 [ゆーちん]
いつ死んでも後悔はない。


援助交際の客に殺されてもいい。


父の暴力で死んだっていい。


不慮の事故でもいい。


だけど、こんな時に限って何も起きない。

⏰:08/12/28 21:10 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#33 [ゆーちん]
だったら最期ぐらい自分で決めようかな、っていう願望が生まれる。


どうやって死のうかな。


それを考えるのが、私の今の生き甲斐だった。

⏰:08/12/28 21:11 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#34 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

今日はここまで

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:08/12/28 21:11 📱:SH901iC 🆔:dum.zBc6


#35 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

ナイフ

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/29 15:43 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#36 [ゆーちん]
ある日の夜、何がきっかけだったのかわからないが父が暴れ出した。


母は今日もいない。


もう3〜4日は顔を見ていない気がする。


「ふざけるな!」


別にふざけてない。


ふざけてんのはあんただよ。

⏰:08/12/29 15:43 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#37 [ゆーちん]
背中を殴る父。


体を丸めて小さくなる私。


自分を守る為に丸まったんじゃない。


丸まっていないと、挑発してしまい、父の行為がエスカレートして、殺されてしまうかもしれないから。


最期は自分で、と決めたんだから、今死ぬわけにはいないの。


痛くない死に方をするんだから。

⏰:08/12/29 15:44 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#38 [ゆーちん]
髪を引っ張られ、無理矢理立たされた。


お腹を蹴り上げ発狂する。


「お前さえ、萌子さえいなきゃ!俺らは幸せだったんだ!」


だから…幸せって何。


私がいらないなら施設に戻せばいいじゃない。


「何なんだその顔は!」

⏰:08/12/29 15:45 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#39 [ゆーちん]
何なんだって言われても。


私を生み逃げした両親が作った顔だよ。


憎いでしょ?


あんたの人生を変えちゃったんだからね。


私なんかいなければ、幸せだったかもしれないもんね。


「この野郎…殺す!」


とうとう父の手が私の首を締めた。

⏰:08/12/29 15:45 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#40 [ゆーちん]
やばい。


こいつに殺される訳にはいかないの!


「やめ…て…」


苦しい。


息が出来ない。


「うるさい!黙れ!」


父の手に力が入る。


あぁー…もうダメだ。


私このままこいつに殺されるんだ。

⏰:08/12/29 15:46 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#41 [ゆーちん]
「おと…さ…」

「殺すーっ!」


はぁ…。


どうぞ。


もういいや。


殺して。


さっさと殺してよ。


それで私を開放して。

⏰:08/12/29 15:47 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#42 [ゆーちん]
天国かな、地獄かな。


きっと地獄だろうな。


万引きとか援交とかしてたし。


ゆっくりと意識が薄れてきた。


バイバイ、上辺だけのみなさん。

⏰:08/12/29 15:47 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#43 [ゆーちん]
だけど次の瞬間には、なぜか私の咳の声が聞こえた。


「ゲホッ、ゲホッ…」


あれ、なんで私むせ返してんの。


まさか…まだ生きてる?


「出て行け!」


これはこれでラッキーなのかな。


自分で死に方選べるんだし。

⏰:08/12/29 15:48 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#44 [ゆーちん]
でもどうせなら殺してくれたほうがよかったな。


もう苦しかったり、痛い思いはいやだよ。


ガチャ…


私は家から飛び出した。


フラフラの足取り。


…っていうか真っ直ぐ歩けてないし。


宛もなく、とにかく前に進んでみた。


だって…

⏰:08/12/29 15:48 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#45 [ゆーちん]
だってどこかに死ぬ方法が転がってるかもしんないでしょ?


体中痛くて、どこが痛いのかわかんない。


とりあえず、倉庫がたくさん立ち並ぶ場所に到着した。


ドサッ…


力尽きたかも。


地面に倒れてしまった。

⏰:08/12/29 15:50 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#46 [ゆーちん]
ふと夜空を見上げる。


…うざっ。


こんな日に限って、むちゃくちゃ星が綺麗だった。


自然に流れていた涙。


何泣いてんの私。


その時、思った。

⏰:08/12/29 15:51 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#47 [ゆーちん]
もうさ、痛いのも苦しいのもやだ。


今日、死のう。


方法なんて、もう何でもいい。


痛くてもいいから、もう…死にたい。

⏰:08/12/29 15:51 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#48 [ゆーちん]
もう一度だけ力を振り絞り、私は立ち上がった。


何か、何か死ねるもの。


その時、目の前に見えたのがナイフだった。


神様がいるのなら、感謝する。


この時、目の前にナイフを置いてくれたんだね。


ありがとう。

⏰:08/12/29 15:55 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#49 [ゆーちん]
フラフラとナイフまでたどり着き、手に取った。


案外綺麗なナイフ。


サビてないし、汚れてもいない。


ピカピカなナイフ。


痛いだろうけど、まぁいいや。


綺麗なナイフだし。


この星が見えなくなって、太陽が空にのぼった時には綺麗に死ねてるかな?

⏰:08/12/29 15:56 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#50 [ゆーちん]
そんなことを考えながら、私はナイフを高く振りかざした。


心臓の辺りをひとつきすれば、いいよね?


迷いはなかった。


今度こそ、上辺だけのみなさんバイバイ。


…。

⏰:08/12/29 15:57 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#51 [ゆーちん]
と、次の瞬間には場面が変わっていた。


あれ、私死んだ?


死んだら、こんな場所に来るんだ。


今から天国行きか地獄行きか決まるんのかな。


天国でも地獄でもどっちでもいいから、早く私を楽にさせて。

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#52 [ゆーちん]
死んだはずなのに、なぜか体が痛いよ。


「あ、起きた?」


えっ。


…誰。


…何。


…起きた?

⏰:08/12/29 15:58 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#53 [ゆーちん]
子鬼の声だろうか、天使の声だろうか。


だけど、どっちでもなかった。


なぜか私の目の前に映り込んだのは、金髪頭の人間だった。


「おい。大丈夫か?」


…は?


大丈夫じゃ困るんだけど。


私、死んだんだし。

⏰:08/12/29 15:59 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#54 [ゆーちん]
「医者に診てもらう?」


…医者?


死んだのに、まだ医者が必要なの?


「お前、名前は?」


ねぇ…。


もしかして私、死んでないの?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#55 [ゆーちん]
思わず体が起き上がる。


ゴツンッ…


「いってぇー!」


うん、痛い。


頭と頭がごっつんこ。


何で私、生きてんの。


てか、ここどこ?

⏰:08/12/29 16:00 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#56 [ゆーちん]
「地獄?」

「は?」

「生きてんの?」

「何言って‥」

「私、生きてんの?」


金髪頭の男は私の質問に答えた。


「生きてるよ。」


その5文字を聞いた途端、泣きそうになった。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#57 [ゆーちん]
死ねなかったんだ。


最悪。


心臓を狙ったはずなのに、まさか急所外れ…って、あれ?


どこにも傷がない。

⏰:08/12/29 16:01 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#58 [ゆーちん]
何がどうなっているのか、全く理解できない。


「名前は?」

「え?」

「名前。」

「てゆーか、あんた誰よ。」

「俺?俺は天下無敵の哲夫様。」


…哲夫?


聞いた事のない名前。

⏰:08/12/29 16:02 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#59 [ゆーちん]
「誰?」

「だから哲夫だってば!千早哲夫。」


そう言って哲夫は笑った。


「で、あんたは?」

「私、死んだはずなんだけど!何で生きてんの?」

「はぁ?」

「ナイフで心臓ひとつきにして、私は死んだの!」

「頭でも打った?」

「てゆーか、ここはどこ?」

⏰:08/12/29 16:03 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#60 [ゆーちん]
完全にパニック状態だった。


そんな私に、哲夫は教えてくれた。


「俺がお前を見付けた時、右手にナイフ握ってたけど普通に息してたぞ。」

「嘘だ…。」

「お前が握ってたナイフ、これだろ?」


そう言って哲夫が取り出したナイフ。

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#61 [ゆーちん]
あぁ、そうだ。


その綺麗なナイフで、綺麗な星空の元、綺麗に死ぬつもりだったんだ。


「このナイフ、俺の。」

「え?」

「護身用に持ってんの。それがどうした事か、なぜか倉庫前に落として来ちゃったみたいで。探しに行ったらナイフ握ったあんたが倒れてたってわけ。」

⏰:08/12/29 16:04 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#62 [ゆーちん]
えっ、それじゃ私…自殺する前にマジで力尽きて気を失ってた訳?


何それ信じられない。


最悪。


「呼び掛けても起きないから、とりあえず俺んち連れて来た。」

「ここ、あんたんちなの?」

「救急車呼ぶにも、携帯は家に忘れてたし。お前運んでここ到着したのはいいけど、かなり疲れてたから、そのまま俺も寝ちゃったんだわ。」

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#63 [ゆーちん]
哲夫は煙草に火をつけた。


「助けてくれたの?」

「まぁ、そんなとこかな。」


何それ。


益々信じらんない。


「余計な‥」


ガチャッ…

⏰:08/12/29 16:05 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#64 [ゆーちん]
いきなりドアが開き、私の声を遮った。


「テッちゃん腹減っ…たっ…て…誰?」


いきなり入って来た男が私を見て驚く。


「ノックしてよ、ヤッちゃん。」

「この女子高生、誰!何でこんなに汚いの?」


なんで私が女子高生ってわかんだろ、と思ったら…ばっちり制服姿だった私。

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#65 [ゆーちん]
着替える前に父親に殴られたんだっけ。


「千早哲夫。」

「んあ?」

「私、助けてくれなんて言ってない。わざわざここまで運んで、ベットに寝かせてくれたなんて余計なお世話だよ。」

⏰:08/12/29 16:31 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#66 [ゆーちん]
私がそう言うと、哲夫とヤッちゃんと呼ばれた男は固まった。


「人助けしたかと思ったかもしんないけど、こっちにしたら、ただの迷惑。」


するとヤッちゃんと呼ばれた男が言った。


「おい、やめとけ。哲夫に助けてもらってそんな言い方するな。」

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#67 [ゆーちん]
「だから助けてなんて頼んでない。」

「お前、生意気してると哲夫に殺されるぞ。こいつこう見えてでっけぇ集団仕切ってる人間だから。」


殺される?


集団?


あぁ、乱暴な不良グループの頭みたいな事?


だったら調度いいや。

⏰:08/12/29 16:32 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#68 [ゆーちん]
「だから何。有難迷惑なんだよ、こんな事されちゃ。」

「お前いい加減にしとけよ。哲夫怒らすとマジで殺され‥」

「殺してよ。」


ヤッちゃんという男の言葉を遮ってやった。


哲夫と男の顔が、また変わる。

⏰:08/12/29 16:33 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#69 [ゆーちん]
「哲夫を怒らせれば殺してくれんの?だったら早く怒ってよ。そんで私を殺して。」


哲夫にそう言うと、なぜか視線を反らされた。


「ねぇ、殺して。」

「…。」

「聞こえない?殺してって言ってんの。」

「…。」

「ねぇってば。殺してよ。」

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#70 [ゆーちん]
何度も言い寄る私を、いきなりベットに押し倒した哲夫。


…痛い。


ベットが弾んだだけなのに背中の傷に響いた。


「殺して殺して、うるさい。」

「怒った?だったら早く殺して。」

「康。お前ちょっと出てって。」


ヤッちゃん並びに康と呼ばれた男は何も言わずに部屋から出て行った。

⏰:08/12/29 16:34 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#71 [ゆーちん]
二人きりになった部屋。


哲夫はさっきのナイフを取り出して、私の喉に近づけた。


「いいの?殺すよ?」

「うん、殺して。」

「お前、怖くないの?」

「何で?」

⏰:08/12/29 16:35 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#72 [ゆーちん]
私を見下ろす哲夫の目は力強かった。


「康孝に聞いただろ?俺怒らせたら、あんた殺されんだよ?」

「だから何。怒らせた方が私にとっては好都合。」

「何で、死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:36 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#73 [ゆーちん]
「あんたに関係ないじゃん。さっさと殺して。あ、殺してもらったのにあんたが捕まるのは可哀相だから自殺したように勝手に工作していいよ。自殺扱いになれば、あんたは捕まんないでしょ?」

「本当に殺すよ?」

「うん。」


ナイフを持つ手に力が入ったのがわかった。


やっと…死ねる。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#74 [ゆーちん]
「フッ…」


私が目を閉じた途端、哲夫が笑った。


何、笑ってんの。


早く刺せよ、と思い目を開くとナイフを床に落とした音がした。


次の瞬間には、哲夫の唇が私の喉に触れていた。

⏰:08/12/29 16:37 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#75 [ゆーちん]
「あんたじゃなくてナイフを刺して。」

「…お前、何あったか知らないけど死ぬなんて考えんな。」


哲夫の舌が喉やうなじをなめ回す。


気持ち悪い。


「やめて。」

「何で死にたいの?」

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#76 [ゆーちん]
「関係ない。」

「まぁいいや。いつか教えてね。」


いつか?


いつかなんてないよ。


私は死ぬんだから。

⏰:08/12/29 16:38 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#77 [ゆーちん]
「殺してくんないの?」

「お前は死んだ。」

「は?」

「今さっき死んだ。」

「意味わかんない…」

「今から俺のペットとして、お前飼うから。死のうとしてたんだから、別にどうなってもいいんだろ?」

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#78 [ゆーちん]
「何言ってんの。私は死にたいの。」

「お前に飽きたその時は、ちゃんと殺してやるから。それまで俺のペットになれ。」


私の首筋から上がって来た顔は、また下りて来て、私の唇を塞いだ。


まだ体中痛い。


頭も痛い。

⏰:08/12/29 16:39 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#79 [ゆーちん]
何で生きてんのか、何で殺されなかったのか、何でキスされてるのか。


頭が痛くて考えられない。


唇が離れると、哲夫は言った。


「名前は?」

「…萌子。」

「萌子、お前は今日からシホだ。」

「シホ?」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#80 [ゆーちん]
「萌子は死んだ。だからお前はシホだ。」

「シホ…」

「理由知りたい?」


私は頷いた。


「俺、星好きなんだ。星の反対はシホだろ?だからシホ。」

⏰:08/12/29 16:40 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#81 [ゆーちん]
そう言って笑った哲夫。


バカらしい。


こんなバカがでっかい集団をまとめている頭なら、その集団も長くないね。

⏰:08/12/29 16:41 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#82 [ゆーちん]
▽▲▽▲▽▲▽

ではまた

>>2

▽▲▽▲▽▲▽

⏰:08/12/29 16:42 📱:SH901iC 🆔:HNTi4Nys


#83 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

ペット

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:08/12/30 16:15 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#84 [ゆーちん]
携帯も財布も着替えもない。


「欲しいものある?シホ。」


シホと呼ばれてもしっくりこない。


私は17年間、萌子だったわけで、今もまだ萌子。


だからいきなりシホだって言われても、頭がついて行かなかった。

⏰:08/12/30 16:15 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#85 [ゆーちん]
「…特に何も。」

「とりあえず…風呂だな。汚すぎる。」


哲夫の手を借りて、浴室に向かった。


立っているのも辛い。


制服を脱がせてもらい、下着も取ってもらった。


微動だにしない哲夫。


「哲夫。」

「おっ、やっと名前呼んだね。何?」

⏰:08/12/30 16:16 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#86 [ゆーちん]
「何歳?」

「俺?22歳。シホは?」

「…。」

「おい。」


…あぁ、シホは私か。


「17。」

「ふーん、若いね。」

「17の裸見て、動揺とかしないの?」

⏰:08/12/30 16:17 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#87 [ゆーちん]
「して欲しいの?」

「別に。援交の客だった親父は、みんな嬉しそうに私の裸見てたから。」

「…。」


また力強い目で私を見た哲夫。


どう、引いた?


汚いと思った?


捨てるなら捨ててもいいよ。


突き放される事なら慣れてるから。

⏰:08/12/30 16:17 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#88 [ゆーちん]
「シホは援交なんかしてないよ。」


哲夫はそう言って自分の服を脱ぎ出した。


何、言ってんの、こいつ。


意味わかんない…。

⏰:08/12/30 16:18 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#89 [ゆーちん]
お互い、素っ裸になって、温かいお風呂に入った。


湯舟につかりながら、哲夫は言った。


「おいで。」


何で行かなきゃなんないの。


無視していると、哲夫自ら私の方に寄って来た。


「しつけが必要だな。」

⏰:08/12/30 16:18 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#90 [ゆーちん]
私の後ろに周り、私を抱え込む。


何してんだ。


そんなうっとーしい事しないで欲しい。

⏰:08/12/30 16:19 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#91 [ゆーちん]
「どっかの野良犬と喧嘩でもした?痛かっただろ。」


そう言うと哲夫は私の背中を撫で始めた。


「は?」

「お腹も青アザあったし。大丈夫?」


さっき、私を殺そうとしていたのは、この哲夫だよね?

⏰:08/12/30 17:46 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#92 [ゆーちん]
声や態度が優し過ぎて、別人のような気がする。


「野良のくせに跳び蹴りのできる犬だったの。」

「そりゃおっかないね。」


哲夫が後ろで笑った。


私も、なぜか笑ってしまった。

⏰:08/12/30 17:47 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#93 [ゆーちん]
作り笑顔以外でちゃんと笑ったのはいつぶりだろう。


そんな私の背中やお腹を、何度も何度も哲夫は撫でてくれた。

⏰:08/12/30 17:47 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#94 [ゆーちん]
死にたかった理由とか、傷の理由を深く聞いて来ないので助かる。


「風呂から出たら、まずは買い物だな。色々必要なんだな、ペット飼うって。」


髪や体を綺麗に洗い終わり、お風呂から出ると、裸のまま部屋中をうろついてやった。

⏰:08/12/30 17:48 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#95 [ゆーちん]
「服着ろよ。」

「汚いもん。」


脱衣所にある脱ぎ捨てた制服しかない私。


「あ、そっか。着替えないんだっけ。」


そう言った哲夫は、クローゼットから上下繋がった服を取り出した。

⏰:08/12/30 17:49 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#96 [ゆーちん]
「何これ。」

「つなぎ服っつーの?見た事ない?」

「工事現場の人みたい。」

「いや?」

「いや。」

「もぉー、ペットのくせに文句言うなよ。」


そう言って哲夫は携帯電話で誰かに電話をかけた。


「お前、戻って来れる?…うん…うん…そう、じゃあ。」


簡単な電話を済ませた哲夫は、服を探すのをやめて、再びつなぎ服を私に手渡した。

⏰:08/12/30 17:50 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#97 [ゆーちん]
「康が来るから車出して貰おう。いるものとか欲しいものとか何でも買ってやるよ。」

「康って…」

「さっきのバカヅラ男。康孝って言って、みんなから康とかヤッちゃんて呼ばれてる。」

「そうなんだ。」

⏰:08/12/30 17:51 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#98 [ゆーちん]
パンツ一枚のまま、哲夫は煙草を吸い始めた。


「康が来るまでに服着ろよ。」

「…何で?」

「何でって…主人の命令だからだよ。」

「ふーん、主人ねぇ。」


下着もつけずに、言われた通りつなぎ服を着た。


「おっきい。」

「仕方ねぇだろ。男物なんだから。」

⏰:08/12/30 17:52 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#99 [ゆーちん]
「普通のTシャツとかないの?」

「あるけど…Tシャツのがいいのか?」

「うん。」

「…わがままな奴だな。買い物行ったら、しつけ本も買わないとなー。」


そう言って笑うだけで、結局哲夫はTシャツも出してくれなかった。

⏰:08/12/30 17:53 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#100 [ゆーちん]
しばらくすると、さっきの男が来た。


康孝だ。


「お待たせ〜。」

「悪いな。ちょっと車出してくれる?」

「えぇ!来ていきなり?」

「シホを飼うのに色々必要でさ。」

「…シホ?犬でも飼うの?」


キョトンとする康孝に、哲夫は言った。


「犬じゃない。人間だ。」

⏰:08/12/30 17:53 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#101 [ゆーちん]
アゴで私をさす哲夫。


「えっ、飼うって…この子?」


哲夫は笑う。


私は何も言わない。


驚いている康孝は私に言った。


「あんた、テッちゃんに飼われんの?」

⏰:08/12/30 17:54 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#102 [ゆーちん]
私は何も言わず、康孝を見た。


「シホってあんたのこと?」

「…。」

「何で?つーか、死んだんじゃないのかよ。」

「死んだよ。」

「え?」


私が口を開くと、康孝はまた驚いていた。


「さっきの汚い女子高生は死んだ。」

「えっ…何言ってんの。」

⏰:08/12/30 17:55 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#103 [ゆーちん]
「私はシホ。哲夫に飼われてんの。ただのペットだよ。」


もう、死のうだなんて考えは1ミリもなかった。


今はただ、哲夫のペットなんだって自分で自分に言い聞かせている。


私はシホなんだ、って。

⏰:08/12/30 17:55 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#104 [ゆーちん]
全然理解のできていない康孝を見て、哲夫は笑った。


「どうよヤッちゃん。面白いペットだろ?」

「いや…つーかさ…」

「詳しい事はまた集会の時にでも教えてやるよ。とりあえず車出してよ。早くしないと日が暮れる。」


哲夫の頼みに、康孝は納得のいかないまま、頷いていた。

⏰:08/12/30 17:56 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#105 [ゆーちん]
「シホ、おいで。」


哲夫に呼ばれ、床から立ち上がった私。


いきなり目の前が暗くなった。


「はい、サングラス。すっぴんは嫌だろ?化粧品買ってやるから、それまでこれで我慢な。」

⏰:08/12/30 17:57 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#106 [ゆーちん]
「別にいらない。」


化粧品なんかいらない。


化粧なんか、みんながしていたからしていただけ。


萌子が死んだ今、もうみんなの真似っこは必要ない。


私はシホなんだ。


「遠慮すんなって。女の子なんだからおめかしは必要でしょ。あとこれ、被ってろ。」

⏰:08/12/30 17:58 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#107 [ゆーちん]
目深くキャップ帽を被せられた私。


どこからどう見ても…怪しいでしょ。


つなぎ服に、サングラス、キャップ帽。


「靴は?」

「あぁ…これ履いて。」

「裸足で?」

「嫌かよ。」

「うん。」

「もぉー!本当わがままな奴だな。」

⏰:08/12/30 17:58 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#108 [ゆーちん]
さすがにこの格好にローファーは合わないでしょ。


ていうか、半殺しされてフラフラだったのに、ちゃっかりローファー履いて出て来た自分が偉いと思った。


…あっ、違う。


自分じゃない。


萌子が、だ。


「ほれ。おっきいかもしんないけど我慢しろ。」

⏰:08/12/30 17:59 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#109 [ゆーちん]
哲夫が靴下を貸してくれたので、私は座って履いた。


予想通り、めちゃめちゃ大きい。


「行くぞ。」


靴も大きい。


歩きにくい。


「何ちんたら歩いてんだよ、もう。」


そう言って哲夫に手を引かれた。


おっきな手だった。

⏰:08/12/30 17:59 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#110 [ゆーちん]
康孝の車に乗り込むと、勢いよく発車した。


…やけに、うるさい、この車。


流れている音楽も、デカい音だし英語だしで何言ってるかわかんないし、何より車自体の音がうるさかった。


「ごめんね、うっさいだろ。」

「うん。」

⏰:08/12/30 18:00 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#111 [ゆーちん]
「いじりすぎなんだよ、康の車は。」

「いじり?」

「改造っつーの?マフラーとかってわかる?」

「首に巻く?」

「あぁ、わかんないか。じゃあいいや。」


首に巻くマフラーじゃないの?


意味不明。


午後3時、そんな意味不明な車は街を駆け抜けて行く。

⏰:08/12/30 18:01 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#112 [ゆーちん]
窓から見る景色は見た事のない景色だった。


「ここ、どこ?」

「あ?」

「見た事ない街。」


窓の外を眺める私に、哲夫は言った。

⏰:08/12/30 18:01 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#113 [ゆーちん]
「シホはこの街で生まれたんだから、この街からずっと出るなよ。」

「…うん。」


私の知らない街。


いや、これが私の街。


萌子がいた街と、私のこの街はあまりにも違っていて…何だか頭が痛くなった。

⏰:08/12/30 18:02 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#114 [ゆーちん]
何軒もの店を回って、大量の下着や洋服、化粧品などを買ってもらった。


帽子、アクセサリー、靴、歯ブラシ、シャンプーにリンス。


最後は携帯電話まで買ってもらった。


信じられない。


この人の金の使い方、ちょっと引く。

⏰:08/12/30 18:03 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#115 [ゆーちん]
全部カードで、カードがだめなら絶対一万円を渡す。


お釣りはなぜか受けとらず、隣にいた康孝が受け取って、小さな袋に入れていた。


「こんなもんか?」

「え?」

「何か欲しいものあるか?」


私は首を横に振った。


これ以上、もう何もいらない。

⏰:08/12/30 18:04 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#116 [ゆーちん]
「まぁまたいるものあれば明日来よう。帰るぞ。」


再び康孝の運転する車に戻り、うるさく唸りながら車は走る。


外はぼんやり暗くなっている。


「テッちゃん、このまま集会直行しない?」

「あぁー、いいわ。歩いて行く。荷物片付けないと。」

⏰:08/12/30 18:05 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#117 [ゆーちん]
「手伝おうか?」

「いや、いい。康は先に行ってて。」

「ほーい。」


私と哲夫とたくさんの荷物が車から降りると、康孝の車は走り去った。


「さぁ〜!気合い入れて、片付けるぞ!」

⏰:08/12/30 18:05 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#118 [ゆーちん]
なぜか意気込む哲夫と一緒に部屋へと戻る。


「とりあえずだな、シホのクローゼットを作らないと。」


ドサッと荷物を床に置き、自分のクローゼットの中を片付け始めた。


「ねぇ。」

「んー?」


作業をしながら、哲夫は私の質問に耳を傾けてくれた。

⏰:08/12/30 18:06 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#119 [ゆーちん]
「何でペットなんか飼いたかったの?」

「えー?」

「面倒なだけだよ、ペットなんて。」

「そうなの?俺ペット飼った事ないからわかんない。」

「いらなくなったら、いつでも殺していいからね。」

⏰:08/12/30 18:07 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#120 [ゆーちん]
すると作業していた手を止めて、哲夫はあの力強い目で私を見た。


「…わかってる。だからもうその話はするな。」


それだけ言うと、また作業を開始した哲夫。


私は何も言わないまま、ベットの上に座った。


しばらくの沈黙。

⏰:08/12/30 18:22 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#121 [ゆーちん]
さきに破ったのは哲夫だった。


「シホ。」

「はい。」

「お前もうサングラスとキャップ取れよ。何かオフの芸能人みたいだぞ。」


哲夫が笑った。


「芸能人?」

「お忍びで買い物ですか?」

「…まぁね。」

「ブハッ!何様だっつーの!」

⏰:08/12/30 18:22 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#122 [ゆーちん]
サングラスとキャップを外し、つなぎも靴下も脱いだ。


「何脱いでんだよ。裸族か?」

「下着つけないと気持ち悪い。」

「あぁ…。」


顔色1つ変えないで、買って来たばかりの下着を取り出してくれた哲夫。

⏰:08/12/30 18:23 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#123 [ゆーちん]
「お前の服はこっから右だからな。下着とか靴下はとりあえず1番下の引き出し。」

「うん。」

「服の片付けぐらいできるよな?」

「うん。」

「じゃあ俺、集会行ってくるから留守番してろよ。早めに帰って来るけど眠かったら先に寝ろ。腹へったら冷蔵庫漁れ。風呂に行きたきゃ勝手に行け。わかったな?」

⏰:08/12/30 18:24 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#124 [ゆーちん]
私が頷くと、哲夫が近付いて来た。


「いい子にしてろよ。」


そう言って、私の頬に哲夫は自分の唇を押し付けた。


「いってきマンモス。」

「いってらっしゃい。」


哲夫は振り返らずに出て行った。

⏰:08/12/30 18:25 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#125 [ゆーちん]
一人ぼっちになった部屋。


急に静かになった部屋。


…なんだか、疲れた。


死ぬつもりが、目を開けると金髪野郎がいて。


殺してと頼んだら、萌子を殺してくれた。


私は数時間前にシホになって、哲夫のペットであって…ダメだ、頭が痛い。


私は片付けもせず、そのまま眠ってしまった。

⏰:08/12/30 18:25 📱:SH901iC 🆔:Z9srDs2E


#126 [ゆーちん]
▲▽▲▽▲▽▲

集会

▲▽▲▽▲▽▲

⏰:09/01/01 10:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#127 [ゆーちん]
目が覚めると、人の温もりを感じた。


誰かに包まれている。


初めての感覚だった。


人の温もりに包まれてるなんて…。


少し、体を動かしてみた。


左肩が痛かったから。

⏰:09/01/01 10:31 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#128 [ゆーちん]
すると、私を包んでくれていた哲夫は低く唸った。


「んんーっ。」

「…。」


起こしちゃいけないと思い、また目を閉じてじっとしていた。


どうやらまた眠ってしまい、再び目を開けると、なぜか哲夫が私を見ていた。

⏰:09/01/01 10:31 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#129 [ゆーちん]
「あ、起きた。」

「…。」

「なぁシホ。片付けるって意味わかるか?」


哲夫が笑った。


「…あ。」


服も靴も何もかも、全く片付けないで眠ってしまった事を思い出した。


「やっぱ、しつけ本買うべきかなー?」

「…ごめん。」

「一緒に片付けっか。」

⏰:09/01/01 10:33 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#130 [ゆーちん]
哲夫が起き上がると、温もりが薄れた。


それもそのはず。


下着だけしか身につけていないんだ、私。


「パジャマ買っただろ?何で下着姿なわけ。もう初冬だぞ?」


煙草に火をつけた哲夫。


「シホは煙草吸わないの?」

「吸わない。」

「そ。」

⏰:09/01/01 10:33 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#131 [ゆーちん]
「哲夫。」

「はいよ。」

「いつ帰って来たの?」

「2時ぐらい。」

「今日も集会あるの?」

「あるよ。行きたい?」

「ううん。」

「そ。なら留守番ね。」

「うん。」

⏰:09/01/01 10:35 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#132 [ゆーちん]
時計を見ると12時を迎えようとしていた。


どうりでお腹が空くわけだ。


「シホ。お腹空かない?」

「空いた。」

「昨日の昼から何も食べてないんだわ、俺。」


私は、いつから食べてないんだろう。


一昨日の昼からだから…丸2日かな。

⏰:09/01/01 10:35 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#133 [ゆーちん]
最後の食事はサンドイッチだった。


萌子として、友達と昼ご飯を食べた。


そして、昨日、萌子は死んだ。


私はシホになった。


シホになってから、まだ水一滴たりとも口にしていない。


今、やっと空腹感に襲われた。


あぁ、生きてるんだって思えた。

⏰:09/01/01 10:36 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#134 [ゆーちん]
「飯食い行くか。シホ昨日風呂入った?」

「入ってない。」

「俺も入ってないし、一緒に入るか。」

「…やだ。」

「お前に拒否権はない。」


ニッと笑い、私の頭を優しく叩いた哲夫は立ち上がり、浴室に向かった。

⏰:09/01/01 10:37 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#135 [ゆーちん]
私も立ち上がり、哲夫のあとを追った。


「ねぇ。」

「ん?」

「何でお湯、溜まってんの?」

「え?」

「いつ入れたの、お湯。」

「あぁ、機械が入れてくれんだよ。タイマーにして。俺毎日風呂入るの昼間だからさ、このくらいの時間になったら自動で溜まるように設定してあんの。」

⏰:09/01/01 10:40 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#136 [ゆーちん]
驚いた。


世の中そんな素敵な機能のついたお風呂があるんだ。


信じらんない。


「楽チンだね。」

「便利な世の中だよな。」


哲夫はポケットから携帯灰皿を取り出し、煙草の火を消した。

⏰:09/01/01 10:41 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#137 [ゆーちん]
「はい、脱いで。入るよ。」


下着だけの私は簡単に裸になった。


哲夫もすぐに服を脱ぎ捨て、私と一緒に湯舟につかる。


「うーっ、気持ちいい。俺風呂好きなんだわ。」

「どうして夜入んないの?」

「疲れてそのまま寝ちゃうんだよ。だからいっつも起きたら入る。」

⏰:09/01/01 10:58 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#138 [ゆーちん]
「一日の始まりはお風呂からなんだね。」

「そゆ事〜。」


今日も、哲夫に後ろから抱きしめられながら体を温める。


背中やお腹をずっと撫でてくれるんだ。


理由はわからないけど、なぜか哲夫が触れた場所は、痛みが和らいだ。

⏰:09/01/01 10:59 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#139 [ゆーちん]
お風呂から出て、買って来た服を身にまとった。


「おぉー、似合う似合う。化粧もしろよ。化粧は女の身嗜みって言うからな。」

「…面倒だよ。」

「じゃあスッピンで行くのか?もしくはピザでも頼む?」

「…私が、作る。」

⏰:09/01/01 11:00 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#140 [ゆーちん]
キッチンに行き、冷蔵庫の中を見ると、何とかなりそうだと思った。


「えっ、お前料理できんの?」

「…うん。」


萌子の時は、毎日料理していたから。


作りたくもない料理を、毎日毎日我慢して作ってたから。


「お好み焼きでいい?」

⏰:09/01/01 11:00 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#141 [ゆーちん]
「お好み焼き作れんの?お前なかなかやるな!」


哲夫が笑った。


「作れるよ。」

「じゃあお好み焼き作って〜。俺、シホの荷物の片付け始めててやるわ。」


萌子が嫌々作ってた料理。


だけど私、シホが今から作る料理は嫌じゃない。


初めてワクワクする。

⏰:09/01/01 11:01 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#142 [ゆーちん]
だってさ、笑ってくれたから。


父は私が料理を作っても、1ミリ足りとも笑わなかった。


苦痛だった。


もう…忘れたい。


忘れよう。


だって萌子は死んだんだから。


友達や彼氏、家族はきっと萌子が死んだって悲しまない。

⏰:09/01/01 11:02 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#143 [ゆーちん]
「出来た。」


大きなお好み焼きをお皿に盛って、テーブルに置いた。


湯気が立ち上る。


いい匂い。


「美味そっ!まさかの才能だな。」

「哲夫のお箸ってどこにあるの?」

「そんなもんないよ。いつも割り箸。」

「そうなんだ。」

⏰:09/01/01 15:26 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#144 [ゆーちん]
哲夫がキッチンの棚から割り箸を2つ取り出した。


あそこが割り箸入れか。


覚えておかないと。


「はい、いただきます!」

「…いただきます。」


哲夫は大きく切り取ったお好み焼きを頬張った。

⏰:09/01/01 15:27 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#145 [ゆーちん]
「んー!うめぇ!」


素直に嬉しかった。


自分が作ったものを褒めてもらえるのは嬉しい事なんだ。


「よかった。」

「酢豚とかも作れんの?」

「うん。」

「グラタンも?カツ丼も?エビチリも?」

⏰:09/01/01 15:28 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#146 [ゆーちん]
「…たぶん、作れる。」

「すげぇ。和洋中パーフェクトなんだな。いいペット捕まえたわ〜。」


笑いながら哲夫はお好み焼きをどんどん食べて行く。


私も食べた。


うん、お好み焼きだ。


自分が作ったものはなぜか美味しいと思わない。


不思議。

⏰:09/01/01 15:28 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#147 [ゆーちん]
シホになって初めての食事が済み、片付けに専念した。


買い過ぎたかな、と自分でもわかっているらしく、反省しながら片付ける哲夫。


「テッちゃん。」

「はい。」

「哲夫。」

「はい。」

「テツ。」

「はい。」

「ご主人様。」

「はぁ?何言ってんだ?」

⏰:09/01/01 16:10 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#148 [ゆーちん]
鼻で笑われた。


「どの呼び方がいい?」

「…ご主人様っての、なかなか気分いいな。」


不適な笑み。


「それ以外。」

「じゃあ候補に挙げるな。呼び方なんか何でもいいよ。」

⏰:09/01/01 16:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#149 [ゆーちん]
何でもいい、が1番困る。


でも、本人が何でもいいって言ってるんだから好きに呼ぼう。


「哲夫。」

「結局その呼び方かよ。」

「トイレどこ?」


シホになって初めてのトイレ。


「しょんべんずっと我慢してたの?」

⏰:09/01/01 16:12 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#150 [ゆーちん]
「ううん。我慢なんかしてない。今初めてしたくなった。」

「どうなってんだ、お前の体は。」


笑いながら哲夫に案内されたトイレに入ると、目を疑うように輝く便器があった。


初めて済ませたトイレから出て、哲夫に聞いた。

⏰:09/01/01 16:12 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#151 [ゆーちん]
「掃除とか自分でするの?」

「全然しない。」

「何であんなにトイレ綺麗なの。」

「誰かが掃除に来てるから。」

「誰かが?」

「俺って、周りから尊敬されてるんだって。だから、うちのチームの新人は俺の身の回りの世話を熟してこそ、初めてうちのチームに入れるってルールがあるらしくて。」

⏰:09/01/01 16:14 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#152 [ゆーちん]
「何それ…変わってるね。」

「だろ?俺も思う。新人なんて、まだ得体の知れない人間なのに、簡単に家に入れるなんて変な話だよな。でも悪い話じゃないから、そんなルールに甘えちゃってんの。」

⏰:09/01/01 16:15 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#153 [ゆーちん]
得体の知れない人間…かぁ。


「誰が決めたの、そのルール。」

「ヤッちゃん。あいつは管理職っつーか…まぁ簡単に言えば副リーダーだな。俺の幼なじみなの、康。」

「じゃあ昨日も来てたの?」

「来たみたいだね。」

⏰:09/01/01 16:16 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#154 [ゆーちん]
「いつ?」

「買い物行ってる間だろ。」

「今日も来るの?」

「さぁ知らない。」


どうやら、不定期で現れて、綺麗にしてから帰るってパターンみたい。


これからは下着姿でいられないな。


得体の知れない新人が、得体の知れない裸の女と鉢合わせになるかもしれないからね。

⏰:09/01/01 16:17 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#155 [ゆーちん]
何だかんだしていると片付けは無事終了。


散らかっていた部屋は綺麗になった。


「あぁーっ。疲れた。」


煙草に火をつけた哲夫。


「働いた後の煙草は美味いねぇ〜。」


そんなことをシミジミと言うから、なんだか笑ってしまった。

⏰:09/01/01 16:18 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#156 [ゆーちん]
「何笑ってんだよ。」

「何か、おやじ臭い。」

「お前と5つしか違わないだろ。」


ベットに座っている私の隣に、ドンッと座った哲夫。


「そうやって笑ってろ。」

「ん?」

「シホは笑った方が可愛いから。」

⏰:09/01/01 16:19 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#157 [ゆーちん]
哲夫はこうやって女を口説くんだろうか。


灰皿で煙草を消し、頬にキスをした哲夫。


「集会行くわ。」

「いってらっしゃい。」


哲夫が立ち上ると微かに弾んだベット。


振り返る事もなく、今日もまた哲夫は出掛けた。

⏰:09/01/01 16:20 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#158 [ゆーちん]
さて、私は何をしようか。


たくさん眠ったおかげで眠くはない。


体は痛いが、耐えられる。


そうだ、洗濯しよう。


新人の仕事かもしれないけど、そんなの知らない。


私だって何か仕事がないと、暇だもん。

⏰:09/01/01 16:20 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#159 [ゆーちん]
脱衣所には大きな洗濯機。


上からじゃなくて横から洗濯を入れるタイプ。


すごい。


洗濯を回している間、買い与えてもらった携帯電話を触った。


電話帳には哲夫と康孝の2件。


何かあった時、俺が電話に出なかったら康孝にかけろと哲夫に言われ、康孝の電話番号も登録してもらった。

⏰:09/01/01 16:21 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#160 [ゆーちん]
メールは0件。


着信履歴も発信履歴も今のところ0。


萌子じゃ、ありえない。


いつも誰かのメールや電話があった。


上辺だけの付き合いの友達や彼氏からの連絡があった。


だけど今は違う。


私はシホだ。

⏰:09/01/01 16:22 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#161 [ゆーちん]
あれだけ死にたかったのに、シホとして生きようと思ってる自分がいた。


それは死からの逃げなのか。


リセットされた人生を期待しているのだろうか。


私はこのままシホでいいのだろうか。


不安や疑問が襲う。

⏰:09/01/01 16:22 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#162 [ゆーちん]
あぁ、頭が痛い。


洗濯機が鳴っている。


洗い終わったんだ。


干さなきゃ。


でも頭が痛い。


なぜか、私はそのまま眠ってしまった。


あれだけ寝たのに、まだ眠いの?


変な体。


夢は見なかった。


起きた時は、また温もりに包まれていた。

⏰:09/01/01 16:23 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#163 [ゆーちん]
「哲夫。」

「…。」

「テッちゃん。」

「…。」

「テツ。」

「…。」


どれにも答えない。


「ご主人様。」

「…。」


よほど疲れていたのだろう。


私が動いても全く動かない。

⏰:09/01/01 16:24 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#164 [ゆーちん]
ベットから抜け出し、洗濯機を見に行くと、やっぱりそのままだった。


当たり前か。


哲夫が干す訳ない。


フタを開けて、洗濯物に触れた瞬間、目が覚めた。


何で?


確かに洗ったよ。


なのに、何で…乾いてるの。

⏰:09/01/01 16:24 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#165 [ゆーちん]
慌てて洗濯機の操作ボタンの付近を見た。


そこには乾燥機能のついた洗濯機だと現すボタンがたくさん並んでいた。


また、信じられない事を見つけた。


干さなくても、乾かしてくれんの?


しかもシワとかになってないし…。


驚きだ。

⏰:09/01/01 16:25 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#166 [ゆーちん]
どれだけ金河夫妻が時代遅れの生活を送っていたのか痛感した。


綺麗になった洗濯物を畳み、ご飯を作った。


ちょうど酢豚が出来たところで哲夫が目を覚ました。


「いい匂い〜。」

「酢豚作った。昨日なかったのに冷蔵庫に豚肉あったから。」

⏰:09/01/01 16:26 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#167 [ゆーちん]
「昨日、集会の時もらったんだ。掃除以外にも食料調達とかもしてくれんだわ。新人っつーのは。」

「ふーん。」

「何かいるもんあったら新人走らせるから遠慮すんなよ。」

「うん。」

「よし、風呂に入るか。入ってから飯だ。」

「冷めちゃうよ?」

⏰:09/01/01 16:28 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#168 [ゆーちん]
「温め直せばいいよ。シホも入るだろー?」

「…うん。」


今日も一緒にお風呂に入る。


一日の始まりはお風呂から。


そんな哲夫のペースに、私の体も合わせようとしていた。


お風呂から出るとご飯。


温め直した酢豚を美味しそうに食べてくれた。

⏰:09/01/01 16:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#169 [ゆーちん]
昨日は片付けをして時間を過ごした。


今日は何をして、集会までの時間を潰すのだろうか。


「テツ。」

「何だ。」

「私にも何か仕事ちょうだい。」

「仕事?」

「家にいる間、暇。料理だけじゃつまんない。」

⏰:09/01/01 16:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#170 [ゆーちん]
「大人しくしてろって。」


頭を撫でられた。


違う、そんな答えを望んでるんじゃない。


「体なまる。」

「んじゃ縄跳びでもしてろ。康孝が昔、縄跳びダイエットするとか言ってここに持って来たまま忘れてるんだ。だから探せばどっかに縄あるよ。」

「…やだ。」

「じゃあシホは何がしたいんだよ。」

⏰:09/01/01 16:31 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#171 [ゆーちん]
そう聞かれると何も答えが思い浮かばない。


「私も…」

「ん?」

「集会行きたい。どんなのか見たいな。」


哲夫は、本当に?大丈夫か?と笑いながら私に問う。


私は本当、大丈夫、と答えた。


「だったら着替えて化粧しろ。連れてってやるよ。」

⏰:09/01/01 16:32 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#172 [ゆーちん]
自ら行きたいと望んだ集会。


容易な気持ちだった。


人の集まりってのを見てみたい。


萌子では考えられない世界の話。


些細な好奇心を奮わせて、私は新品のコスメを使い、化粧をしたんだ。

⏰:09/01/01 16:34 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#173 [ゆーちん]
「シホ。」

「んー?」

「派手なメイクだな。もっとナチュラルビューティーを目指そうと思わないのかい?」

「はい?」

「だから、もっとこう…何つうの?上品な化粧しろって意味。」

「わかんない。」

「例えばだなぁ…」

⏰:09/01/01 18:04 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#174 [ゆーちん]
そう言って、なぜか哲夫は私に化粧をし始めた。


「化粧できるの?」

「ううん。見よう見真似。」

「誰の?」

「チームの女の子たち。集会の時、いっつも化粧直ししてんだわ。」

「ふーん。」


見よう見真似と言った哲夫の手つきは、見事なものだった。

⏰:09/01/01 18:05 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#175 [ゆーちん]
完成した私の顔は、初めての顔だった。


スッピンと、萌子での化粧の間って感じ。


ケバすぎたんだ、萌子が。


「ほら、やっぱこんくらいナチュラルのが可愛いよ。」


鏡を見て、自分でも今のメイクの方が可愛いって思う。

⏰:09/01/01 18:06 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#176 [ゆーちん]
萌子のメイクは、ただデカ目になればいいって感じのものだったから。


「ギャルはギャルでも、上品なギャルでないとね。」


そう言って、哲夫は笑いながら私の前に座った。


手にはハサミ。


「何。」

「前髪切ろっか。」

「え?」

「後ろも少し短くするぞ。」

⏰:09/01/01 18:06 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#177 [ゆーちん]
私に拒否権はない。


目の下まで伸びていた前髪を、目の上までパツンと切り落とした哲夫。


「おぉ!パッツンのが可愛いじゃん。人形みたいだそ、シホ。」


長くて傷んだ後ろの髪も、毛先が肩にかかるくらいの長さに切られた。

⏰:09/01/01 18:08 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#178 [ゆーちん]
「うん、完璧。俺って天才?」

「…。」

「よかったなシホ。お前は顔ちいせぇからこの髪形のが似合うぞ。」

「…。」

「何だよ。文句あるか?」

「ない。」

「よし。明日美容院行ってその明るい金髪をもう少し上品にしてもらおうな。」


脱色しすぎた私の髪を見て言った哲夫。


「テツだって、金髪。」

⏰:09/01/01 18:09 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#179 [ゆーちん]
「俺は目立たないと。でもシホは目立っちゃダメ。また野良犬と喧嘩でもされちゃ困るから。」

「美容院に行くなら、何でテツが髪切ったの?」

「シホの初披露なんだぞ?あんなボサボサ頭じゃ飼い主の俺のプライドが許さない。」


哲夫はそう言って笑った。

⏰:09/01/01 18:10 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#180 [ゆーちん]
「プライド…」


私にはそんなもの、ない。


「毛先傷みすぎでしょ。」


切り落とした私の髪を見て、哲夫が呟いた。


「バッサリ切ったから、綺麗な髪になったぞ。」


哲夫に褒められると、なぜか心が痛かった。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#181 [ゆーちん]
名前も見た目も生まれ変わった私。


このメイクが、この髪がシホなんだ。


なんだか少し、自分が好きになった。


「歩いて行くか、バイクで行くか、車で行くか、お迎えに来てもらうか。さぁ、どれにする?」


哲夫に質問に『歩く。』と答えた。

⏰:09/01/01 18:11 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#182 [ゆーちん]
「元気だな。」

「体なまるの嫌だもん。」

「そここだわるんだね。」


笑って頭を撫でた哲夫。


今日は私も一緒に家を出るんだ。


哲夫の背中を見送らずに済む。


肩を抱かれて、暗くなった道を歩く。


どこに向かってるのかは、わからない。

⏰:09/01/01 18:12 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#183 [ゆーちん]
しばらく歩くと雑音が耳に入った。


昨日乗った康孝の車のように騒々しい音。


「…うるさいのが聞こえてきた。」

「アハハ。そのうるさい集まりのボスは俺だからね。」


大きい音が苦手。


怒鳴り声も怖い。


心臓が痛くなる。

⏰:09/01/01 18:24 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#184 [ゆーちん]
萌子の時に受けた傷のトラウマなんだ。


早くこの心の傷も癒し切って、シホに生まれ変わりたいよ…。


角を曲がると、そこには今までの街とは別の世界が広がっていた。


明るい。


賑やか。


うるさい。


ついつい目を背けたくなるような世界だった。

⏰:09/01/01 18:25 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#185 [ゆーちん]
「哲夫さん、お疲れ様です!」

「テツさん、お疲れ様でーす!」

「テッちゃん、お疲れ。」


たくさんの声が哲夫にかかる。


たくさんの呼び名を持つ千早哲夫は、『お疲れ。』と返事した。


「シホちゃん?」


見覚えのある顔が近付いて来た。


康孝だ。

⏰:09/01/01 20:29 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#186 [ゆーちん]
「康、みんなにシホ紹介してやって。」

「おぉ、わかった。」


そう言って康孝は、哲夫の隣に立ち、みんなの方を向いた。


「はぁーい、ちゅうもぉーくっ!」

⏰:09/01/01 20:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#187 [ゆーちん]
大きな声。


静かになった集団。


小刻みに震える車やバイクのエンジン音だけが、響いていた。


たった一言で全員を黙らせる康孝。


さすが管理職。


「こちら、シホちゃん。テッちゃんの女だ。」

⏰:09/01/01 20:30 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#188 [ゆーちん]
女?


彼女って意味?


だったら間違ってる。


昨日、私をペットだって哲夫が言ってたでしょ?


何にも覚えてないのかな、康孝は。


「テッちゃん何か一言。」

⏰:09/01/01 20:31 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#189 [ゆーちん]
康孝に話を振られた哲夫は言った。


「たまに集会に来るだろうから仲良くしてやって。過去の事を聞き出すのは禁止。あと新人、シホは俺んちで住んでっから、これからは掃除ルール廃止。もう俺んち勝手に来るなよ。以上。」

⏰:09/01/01 20:33 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#190 [ゆーちん]
哲夫が話し終えると、全員の低い声が唸った。


『はい。』と。


「掃除ルールやめちゃうの?」


小声で哲夫に聞くと、小声で答えをくれた。


「これからはシホの仕事。料理だけじゃつまんないんだろ?だったら家事全般、シホの仕事な。掃除して、体のなまり防止。頼んだぞぉ。」

⏰:09/01/01 20:34 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#191 [ゆーちん]
大きく頷いた。


与えられた私の仕事。


家事なら得意だ。


でも好きじゃない。


萌子の時、嫌ってほど家事ばかりしていたから。


だけど私はシホ。


家事は嫌いじゃない。


家事は楽しい事なんだ。

⏰:09/01/01 20:35 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#192 [ゆーちん]
哲夫のために掃除や料理をする。


与えられた仕事への意気込みは半端のないもの。


頑張ろう。


そう思わずにはいられなかった。


「テッちゃんからの話は以上。じゃあミーティング始めるから報告のある奴はいつも通り挙手な〜。」

⏰:09/01/01 20:35 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#193 [ゆーちん]
康孝の大きな声が、エンジン音と奏であう。


次々に手が挙がった。


地面に座り込んでいるみんなと対して、突っ立ってんのは私と哲夫と康孝だけ。


康孝が手を上げた男を指名して、何の報告かわからないけど指名された男は声を張り上げていた。

⏰:09/01/01 20:36 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#194 [ゆーちん]
「座らないの?」


哲夫に小声で聞くと『お前は座ってていいよ。』と言った。


「哲夫は?」

「哲夫様はリーダーだから座らない。」

「ふーん。康孝は?」

「副リーダーちゃんだから座らない。」


あぁ、そうなんだ。


そう思いながら、笑ってる哲夫の隣に座り込んだ。

⏰:09/01/01 20:38 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#195 [ゆーちん]
その後の【集会】と呼ばれるものは退屈だった。


どこの地区で喧嘩があって警察がどうとか、新入りの紹介とか、そんなもの私には関係なかった。


しばらくすると【集会】はお開き。


みんな、またそれぞれに騒ぎ始めた。


「テツさん、ちょっと来て下さーい。」


哲夫が呼ばれた。

⏰:09/01/01 20:39 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#196 [ゆーちん]
「シホ、ちょっと待ってて。暇なら適当に康孝に遊んでもらってて。」

「大丈夫、待ってる。」

「ん。」


小さく笑い、哲夫は呼ばれた方に歩いて行った。


哲夫の後ろ姿を見つめる。


「シホちゃん。」

⏰:09/01/01 20:39 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#197 [ゆーちん]
哲夫が呼ばれた人に笑いかけているのを見た瞬間、私は隣から名前を呼ばれた。


「…あ、はい。」


まだ慣れない名前。


振り向くと康孝だった。


「賑やかだろ?」

「…うん。」

⏰:09/01/01 20:40 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#198 [ゆーちん]
「ここにいるのはまだ全員じゃねぇよ。まだ他にもいるんだ。その全員をまとめてんのが哲夫。あいつはすげぇよ、マジで。」


見渡すと、本当にたくさんの人がいる。


「ヤッちゃんも管理職なんでしょ?すごいじゃない。」

「俺なんてまだまだ。哲夫がいないと何もできないし。」

⏰:09/01/01 20:41 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#199 [ゆーちん]
哲夫がどれほどすごい人なのか、やっぱりまだよくわかんないな。


こんなたくさんの人をまとめているのは大変だろうけど、なぜ哲夫がリーダーなのかとか…そんなの全然わかんない。


「ヤッちゃん。」

「ん?」

「楽しい?」

「何が?」

⏰:09/01/01 20:48 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


#200 [ゆーちん]
「ここにいて。」

「ここ…って集会?」

「こんな風に集まって、喋ったり騒いだり笑ったり…みんな楽しいのかな?」

「そりゃ楽しいっしょ。だから来てんだし。」

「何が楽しいんだろ。」

「んー、仲間に会えるからじゃね?」

「仲間?」

⏰:09/01/01 20:49 📱:SH901iC 🆔:XAv2cR7M


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