†horror†
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#551 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

蓮『それに麗奈は3番地の廃工場で殺されたんだろ? 麗奈はなんでそんな所にいたんだ?』


響歌『そ、それは…』

もちろん答えようがなかった。


蓮『とにかく俺、明日またあの男の面会に行ってくる。デスネットの仕組みを全て聞き出してやる』


響歌『じゃあ私も…』

だが蓮は首を横に振った。

⏰:11/09/23 12:37 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#552 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

蓮『お前はしばらくここにいろ。何か嫌な予感がするんだよ…』


響歌『嫌な予感…って?』


蓮『とにかく、アパートには帰るな。着替えも麗奈の服使っとけ』

蓮はそれ以上何も言わなかった。


2人は再びリビングに戻る。


蓮の父はソファに座って麗奈の遺留品のバッグの中を見ていた。

⏰:11/09/23 12:44 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#553 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

蓮『何やってんだよ?』

蓮の声に気が付くと、手を止めた。


『ああ…何か手がかりになるようなものがないか探してたんだ』


蓮『…麗奈の事には必死になれるんだな。兄ちゃんの時とは違って』

そうポツリとヒヤヒヤするような言葉を投げ掛けると、父は駆け寄る事も殴りかかってくる事もなく、再びバッグの中を探る。

⏰:11/09/23 12:56 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#554 [我輩は匿名である]
更新待ってます(^O^)/

⏰:11/09/29 00:25 📱:SH01B 🆔:s1zt/l4g


#555 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>554さん
前にあげてくれた方ですかね?(違ったらごめんなさい)

ありがとうございます。

仕事が忙しくなってきたのでしばらくは不定期亀更新になりますが、どうか最後までお付き合いください(^^)

アンカー
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550

⏰:11/09/29 13:12 📱:S004 🆔:3UOUz5M2


#556 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
蓮『チッ』

父親に聞こえるように大きく舌打ちをしてから、キッチン側のテーブルの椅子に座る。


響歌『わ、私ちょっと外の空気吸ってくるね』

この重い空気に今にも押し潰されそうな響歌は下を向く蓮に言って玄関に向かった。


外へ出ると冷たい風が襲い、それが夏の終わり、そして秋の始まりを示している。

⏰:11/09/29 13:26 📱:S004 🆔:3UOUz5M2


#557 [我輩は匿名である]
>>555
そうです(^O^)/
気長に待ってます★

他の読者様達に悪いのでsageにしときます。

⏰:11/09/29 21:35 📱:SH01B 🆔:s1zt/l4g


#558 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>557さん
そう言って頂けると力が湧きます。
ありがとうございます(^^)
――――――――――


何かに導かれるように、すっかり日が落ちた住宅街を歩く。


見慣れない風景に新鮮さを感じつつ麗奈の事を思い出しながら。


響歌『…………』

初めて出会った時の事や、自分の事をまるで身内のように扱ってくれた事を思うと、やがて涙が溢れ出しこぼれ落ちていった。


自分は麗奈に何もしてあげられなかった。


ただ隣にいて話を聞く事しかできなかった自分を呪いたい気分だった。

⏰:11/09/30 00:41 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#559 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
麗奈の代わりに自分が死ねばよかったんだとさえ思う。


自分の無力さをつくづく思い知り、人目を阻からずその場で泣きじゃくった。


まるで小さな子供のように―

⏰:11/09/30 13:23 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#560 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
どれくらいの時間泣いただろうか。


辺りはすっかり暗く、人の姿が見当たらない。


そんな中、響歌の背後から足音が聞こえてきた。


それは段々とこっちに近づいてくるようだ。


なぜか後ろを振り返ってはいけない気がし、響歌はその場で固まっていた。


響歌『(こ、この感じ…)』

この気配には覚えがあった。

⏰:11/09/30 13:31 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#561 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
数週間前に山で起こった出来事。


背後から近づいて襲いかかってきた、とある旅館のこの世に存在しないはずの女将。


あの体験と同じ感じがした。


響歌『(逃げなきゃ…)』

雪乃や麗奈の顔を思い浮かべた途端、さっきまで動かなかった足が動き、考えるより先に走っていた。


“あの時”と同じく―

⏰:11/09/30 18:44 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#562 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
以前は雪乃、そして今回は麗奈と導かれるように走った末、足を止めて上を見上げると蓮の家にたどり着いていた。


ここらへんの道は全くわからないというのに迷いもせず、そして背後から近づいてきた人物と鉢合わせする事もなく家に戻ってきた事を不思議に思った。


今度は麗奈が助けてくれたのかもしれないと思うと再び涙が溢れてくる。


蓮『村井?』

響歌の泣き声を聞きつけたのか、蓮が家のドアを開けて駆け寄る。

⏰:11/09/30 18:57 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#563 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
その後に続くように中から1人の警官と、蓮の父親も出てきた。


『大丈夫かい?』

警官がそう言って響歌の肩をトンと叩く。


響歌『……!!』

その時、何かゾクっとするような寒気を感じて警官の方に目をやると、そこには響歌の見覚えのある顔があった。

⏰:11/09/30 19:19 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#564 [我輩は匿名である]
めちゃくちゃ面白いです!
一気に読んでしまいましたw
続きが気になるけど終わってほしくない…そんな気持ちです。
本当におもしろいです!
今後の更新楽しみにしていますので、無理をなさらず頑張ってくださいね\(^-^)/

⏰:11/10/02 04:52 📱:Android 🆔:eCyYU7o.


#565 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>564さん
そんなお言葉…私にはもったいないです。

でも嬉しいです(^^)
ありがとうございます!

これから過去篇など入る予定なのでお話はまだまだ続きます!

どうか最後までお付き合いください(^^)

⏰:11/10/02 21:44 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#566 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『…あ、あの時の…』

震えた手で警官を指さしながら言うと、彼はニヤリと微笑んだ。


蓮『村井、この人の事知ってんの?』

響歌と警官の顔を交互に見ながら聞く。


響歌『こ、この人…』


『とにかく、またお話を伺う事になるかと思うので、その時はご協力よろしくお願いします』

警官は響歌の言葉を遮り、蓮の父に向かってそう言うと、早々とその場を後にしていった。

⏰:11/10/02 21:46 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#567 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
『村井さん、寒いから家に入りなさい』

蓮の父に言われ、蓮と一緒に家に入った。


リビングのソファに3人座り、少しの沈黙の後、最初に口を開いたのは蓮だった。


蓮『村井、さっきの警官知り合い?』


響歌『…あの時の…』

数年前の記憶が今、蘇ろうとしていた。


5年前…


響歌が高校生だった頃の記憶が今―

⏰:11/10/02 21:49 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#568 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
 
 
 
追憶〜村井 響歌 16才〜
 
 
 
 
 
 

⏰:11/10/02 21:51 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#569 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
中学校3年間の内の2年を共に過ごしてきた桐谷蓮が中学卒業を機に遠くに引越し、小学校の頃から親友だった井本七瀬とは中学卒業後、それぞれ別の高校へ。


新しい高校生活のスタートは、響歌にとっては魔のスタートとなった。


全てのはじまりは、当時ほとんどの学校で話題になっていた


『出会い系殺人ネット』


先ほど見た警官の顔が響歌を過去へと誘った―

⏰:11/10/02 22:39 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#570 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
生徒A『ねえ、昨日のニュース見た?』


生徒B『見た見た! 女子高生が出会い系で会った男達に殺されたんだよね』


生徒C『やっぱ出会い系殺人ネットじゃない?』

…まただ。

デスカメラの時と同じ。


“デスカメラで撮影された者は1週間以内に必ず死ぬ”


普通の人にしてみればそんなのはただの迷信、実にくだらないと思うかもしれない。


私も最初はその一人だった。

⏰:11/10/03 00:57 📱:S004 🆔:2Pxn6/H.


#571 [我輩は匿名である]
全然怖くない。

内容がよくわからない。


=面白くない。

⏰:11/10/04 19:31 📱:W62P 🆔:.ni/x2UA


#572 [りん]
めっちゃ面白いし
話しわかりやすい

↑の人が理解出来てないだけ(笑)

⏰:11/10/05 00:05 📱:P08A3 🆔:8YJtt5.A


#573 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>571さん
はい、自分が一番わかっておりますm(_ _)m

意見などは以後どうかこちらでお願いします。

感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4968/


>>572さん
ありがとうございます。

もっとわかりやすいように書いていきますので、最後までお付き合いくださいm(_ _)m

⏰:11/10/06 12:51 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#574 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
でも今の私はデスカメラの効果を信じざるを得なくなっている。


中学の時、私の親友がそのカメラで学校の担任を写した。


その担任は数日後、交通事故で亡くなった。


また、中学卒業を機に引っ越していった同級生の蓮のお兄さんもそのカメラを購入し、自分を撮影。


死にはしなかったものの、数日後に交通事故で脚を怪我し入院。


その夜、なぜか弟の蓮も原因不明の高熱で学校をしばらく休む事になった。

⏰:11/10/06 12:56 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#575 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
これだけ不幸が続くのはただの偶然だとは思えなくなった私は、ここへきてデスカメラの効果に半信半疑になった。


熱が治まって学校に復帰した蓮から見せられた写真。


そこにはデスカメラで撮られたであろう、暗い部屋で寝ている蓮が写っていた。


それでデスカメラの効果に半信半疑だったのが確信へと変わりつつあった。


でも連鎖はまだ終わらなかった…。

⏰:11/10/06 12:57 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#576 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
ある休日の夜、買い物の帰りに信号待ちをしていた私の身体を一台の車がはねた。


信号が青に変わり、渡ろうと足を一歩車道に踏み出したその一瞬に起きた出来事。


ボンネットにはね上げられた私の身体は軽く宙を舞い、やがて地面に思いきり叩きつけられた。


下半身に今まで経験した事のない激痛が走って、私はその場で意識を失った。

⏰:11/10/06 12:58 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#577 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
目を覚ますと病院にいて、生きている事を実感した。


これもデスカメラの効果かもしれないと思ったけど、私はそのカメラで撮られた覚えはない。


よって、ただの偶然だと思う事にした。


それからデスカメラの話題はピタリと止み、身近で誰かが事故に巻き込まれたり死亡したという話は聞かないまま中学を卒業し、高校へ入った。


でも高校ではまたしても別の『出会い系殺人ネット』という噂が広まりつつある。

⏰:11/10/06 13:00 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#578 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
この高校に入って数週間。


せっかく気持ちを切り替えて高校生活を過ごしていこうと思ったのに、こうもまた嫌な話が広まると正直嫌になる。


昨日、初めて噂になっている『出会い系殺人ネット』が関係した事件が起こったらしい。


でも私は出会い系サイトを通じた事件なんて珍しくはないだろうと特に気には止めていなかった。



『村井さん』

帰りの号令が終わり、教室を出ようとした私を誰かが呼び止めた。

⏰:11/10/06 13:02 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#579 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『…黒川さん』

黒川さん…黒川奈穂さんは、高校受験の時に受験会場でふとしたきっかけで知り合った子だ。


このクラスで一緒になってからは休み時間に喋ったり、お昼に一緒にお弁当を食べたりと、仲良くしている。


響歌『どうかしたんですか?』

向こうから『タメ口でいいよ』と言われないとタメ口になれない私は未だに敬語を使う。


黒川さんも、逆に私からそう言われるのを待っているかもしれない。

⏰:11/10/06 13:05 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#580 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
奈穂『村井さん…今日一緒に…帰れる…かな』

何やら困った様子で口ごもりながら聞いてくる。


響歌『いいですよ』

私が即答すると黒川さんはいつもの笑顔を見せた。


いつも通る河原を2人並んで歩く。


黒川さんに話しかけようと顔を見ると、なぜか辺りを警戒するように落ち着きなく左右を交互に見ている。

⏰:11/10/06 13:06 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#581 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『…黒川さん?』


奈穂『…あっ! な、なんでしょう?』

私の声に必要以上に驚く黒川さんを見て、いつもの彼女じゃないとすぐ感じる事ができた。


響歌『どうかしたんですか?』


奈穂『い、いや…なんでもないの…』

手を小さく振り苦笑いしながら言う。


黒川さんの態度に違和感を感じつつも、追求する事なく別れ際まで歩いた。

⏰:11/10/08 16:45 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#582 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
河原を過ぎると、私の家がある住宅街が見えてくる。


響歌『じゃあ、私こっちなので』


奈穂『一緒に帰ってくれてありがとうございます』


響歌『あの…そろそろ敬語やめませんか? タメ口で!』

流れ的にチャンスだと思い、言いたかった事を思いきって吐き出した。

⏰:11/10/08 16:46 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#583 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
奈穂『あ、うん、そうですね…。じゃあ…改めてよろしくね』


響歌『…こちらこそ』

吐き出した途端、肩の力が抜けていくのがわかった。


それから黒川さんを姿が見えなくなるまで手を振りながら見送った。


高校に入って初めてできた友達。


これから彼女との友情を大事にしていこうと心に誓い、家に帰った。

⏰:11/10/08 16:50 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#584 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
その夜、お風呂からあがって部屋でぐうたらしていると、久しぶりにナナからの電話があった。


お互いの高校生活について語り明かし、気が付くと髪が自然に半乾きになるまで話し込んでいた。


響歌『…じゃあね』

通話を切って中途半端に湿った髪をドライヤーで乾かし、その日は眠りについた。

⏰:11/10/08 16:52 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#585 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
次の日学校に来ると、いつも早く来ているはずの黒川さんが登校していない。


昨日はなんともなかったような気がしたけど、今日になって風邪でもひいたのかと思い席に座って携帯電話を取り出し、前に交換した黒川さんの携帯番号に電話をかけた。


「おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか…」

どうやら電源を切っているようだ。


なぜだか胸騒ぎがした。

⏰:11/10/08 16:55 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#586 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
“黒川さんに何かあったのではないか?”

不安が募る。


その時、あの名前が脳裏をよぎった。


“出会い系殺人ネット”


まさか次の被害者に黒川さんが…?


いや、単なる私の考え過ぎかもしれない。

⏰:11/10/08 17:00 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#587 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
でも昨日、下校途中の黒川さんの態度には終始違和感を感じていた。


黒川さんが私に一緒に帰ろうと言ってきたのは昨日が初めての事であることから、一人では帰りたくない理由が何かあったのだろうか。


それから休み時間やお昼の時間に彼女の携帯電話にかけたが、ずっと電源を切っているようで一向に繋がらない。


ここまでくると、ますます不安が高まる。


胸騒ぎが収まらず、真意を確かめたくなった私は休み時間、学校に黒川さんから連絡が来てるか確認する為に担任がいる職員室へ向かった。

⏰:11/10/08 17:02 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#588 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『失礼します…川島先生はいますか?』

ノックして入り担任の名前を呼ぶと、背を向けていた先生がすぐに振り向いた。


『村井…どうかしたか?』

私はすぐに先生の元に駆け寄って単刀直入に聞いた。


響歌『あの、黒川さんって今日はどうして欠席なんですか?』


『ああ、黒川か? 実は今、連絡が取れない状態なんだ。家にかけても誰も出ない』

それを聞いて、やっぱり黒川さんの身に何かあったんだと確信する。

⏰:11/10/08 17:04 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#589 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『あの、黒川さんの家の住所教えてください。帰りに行ってみます』


『おお、頼めるか。ちょっと待っててくれ』

先生は自分のデスクに行き調べものをした後、紙に何かを書いてそれを私に手渡した。


『ほい、ここな』

渡された紙には黒川さんの家の住所がボールペンで走り書きされている。

⏰:11/10/08 17:05 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#590 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
紙を制服のポケットにそっとしまって教室に戻った。


放課後、私は学校を出てすぐに住所が書かれた紙と携帯電話のナビを見ながら黒川さんの家へ向かう。


響歌『ここかな?』

どこにでもある木造二階建ての一軒家の前で足を止めて表札を見る。


“佐伯”

名字が“黒川”ではない事から家を間違えたのかと思ったが、携帯電話のナビは間違いなくこの場所を示していた。

⏰:11/10/08 17:07 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#591 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
インターホンを押して、もしも違ったらどうしようかと思いつつも、その佐伯と書かれた表札の家のインターホンを押した。


しかし数分たっても誰かが出てくる様子はない。


やはり留守なのだろうか。


仕方なく、先生から渡すように頼まれていたプリントを郵便受けにいれて回れ右をして帰ろうとした時、通行人のおじさんと目が合ってしまった。

⏰:11/10/09 12:31 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#592 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
怪しい人に見られたかもしれないという不安にかられる。


5秒くらい時が止まったようにおじさんと目を合わせた後、そのおじさんは私の元に歩み寄り一言切り出した。


『ここの人に何か用なのかい?』


響歌『え、えっと…』

やはり家を間違ったのかもしれない。

⏰:11/10/09 12:32 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#593 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
でもこのおじさんはここらへんに住んでる人っぽいので、もしかしたら黒川さんの事を知っているかもしれない。


響歌『あ、あの…ここらへんに黒川さんという人の家はありませんか?』


『黒川? それならそこでいいんだよ』


響歌『あ…そうなんですか』

おじさんの言葉を聞いた限り、黒川さんの家はここで間違いはないらしい。


ホッと胸を撫で下ろしてから、私は更に話を聞く事にした。

⏰:11/10/09 12:34 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#594 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『あの、黒川奈穂さんはここに一緒に住んでるんですか?』


『そーだよ。ばあさんとお母さんと3人で暮らしてるよ。奈穂ちゃんの兄ちゃんもいるけど、かなり前に家を出ていってもういないみたいだよ。どこで何をしてるんだかね』

お父さんがいないのが気になるけど、何か事情があるのかもしれないと深くまで聞かなかった。


『お母さんはいつも朝から仕事で家を空けてるよ。だから奈穂ちゃんも寂しいだろうさ』


響歌『でもおばあちゃんもいるんですよね?』

私がそう言うとおじさんはかゆそうな顔をし案の定、首筋をポリポリとかいた。

⏰:11/10/09 12:36 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#595 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
『ここだけの話、ここのばあさんはちょっとおかしいんだよね。たまに朝散歩してるの見かけるけど、近所の人と会っても挨拶もしない。それになんか魚が死んだような目でぼーっとしながら歩いてるんだよ。あれは完全にイっちゃってるだろうね』

嬉しそうに話すおじさんに少し腹が立ってきたが、なんとか抑えた。


響歌『そうなんですか…。ところで奈穂さんってどこにいるか知りませんか? 今日学校に来てなかったんで…』


『あれ、おかしいね。奈穂ちゃんとなら今日の朝会ったよ。制服もちゃんと着ていたし、ワタシにもちゃんと挨拶していったし』


黒川さんを見たのは朝。

制服は着ていたものの学校へは登校していない。

⏰:11/10/09 12:38 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#596 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
家の人に、学校へ行ってくると嘘をついてまでどこか行く所があったのか、それとも学校へ向かう途中で彼女の身に何かが起きたのか…。


電話が繋がらないのも、もしかしたら家や学校から黒川さんの携帯電話に連絡が来るのを断つため?


それとも、何者かに襲われて携帯電話を手にして警察へ電話しようとした所で犯人に取られて電源を切られてしまったのか…?


いや、嫌な方向へ想像を膨らませても仕方がない。


響歌『あの! 奈穂さんが行きそうな場所とか…心当たりとかありませんか?』


『…さあね。でも奈穂ちゃんが学校を休むなんて珍しいな。何か事情があるんじゃないかい?』

おじさんに聞けるのはこれくらいだろう。


私は軽く礼をし、黒川さんを探す為、その場から走り出した。

⏰:11/10/09 12:40 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#597 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
電話を何度もかけながら探した結果、結局黒川さんを見つける事はできないまま夜を迎えた。


響歌『はあはあ…』

こんなに走ったのは、小学校の時のマラソン以来だ。


あの河原に座り込んで呼吸を落ち着かせる。


なんとか落ち着いてきたと思っていた時、後ろから『ガシャン』と自転車を止める音がして誰かが私に近づいてくるのを感じた。

⏰:11/10/09 12:41 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#598 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
その気配に私は反射的に後ろを振り返る。


もしかしたら黒川さん?という期待を膨らましたが、そこにいたのは中年の男の警察官だった。


『こんな所で何をしてるの? 制服着たままだけど、どこの学校?』

警官の職務質問は厄介だが、答えなければすんなりと帰れそうにもないので、生徒手帳を提示してから警官の出す質問に全て答えた。

⏰:11/10/09 12:42 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#599 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
『…ふうん、なるほどね。で…そのいなくなった友達は名前なんていうの?』


響歌『はい、黒川奈穂さんといいます』


『黒川奈穂ね…。わかった。警察の方でも調べてみるから、君はもう帰りなさい』

10分ほどの職務質問を終えた後、私は解放された。

⏰:11/10/09 12:43 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#600 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
家に着いてからも、黒川さんの事が頭から離れない。


女子高生が1日中ずっと携帯電話の電源を切っているなんてあり得るのだろうか。


ただの電池切れという可能性はあるが、今はもう夜9時で普通ならば家に帰っているはずだ。


その日は当然、眠れるはずもなかった。


ベッドの傍で体育座りになり携帯電話を片手に黒川さんから連絡がくるのをずっと待っていたんだ―

⏰:11/10/09 12:44 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


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