【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#584 [【反映して(3/3)】我輩は人間である]
それが、今日の花見宴会だ。お酒も交える今日この日こそが絶好のチャンスなのだ。でもまさか、
「お前仕事出来なさすぎるんだよ!」
「はい…すいません…」
「酒まだあんだろぉ?出せよ」
「ダメですってもう止めましょ?!一回酔い冷ましましょうって…」
こうなるなんて。こんなんじゃお酒混じりに交流どころかお酒しか混じってない。司馬がまた新しい缶ビールに手をつけようとしている所を久野は焦って言い聞かせながら思った。
「うるさいな…まだ、いけ…る…」
「だから酔いが冷めたらに…って司馬さん……?」
手を出されると困るので缶ビールを手の届かない位置に置いて振り返った時には、もう、スースーとゆっくりとした寝息を立てて木の幹に寄りかかったまま眠りに着いていた。片手にはビールの空き缶が緩く握られている。それを見て久野は溜め息を吐いた、と同時に口元が緩んだ。酒が強い体質じゃない自分にとって缶ビール5本は大分体にきていたが司馬の心地良さそうな寝顔を見ていたら自然と笑みが溢れた。みんなの知らない酔っぱらった一面を見れただけでも良しとしよう。心が桜色に染まった気がした久野のだった。
:10/04/08 03:32 :S001 :☆☆☆
#585 [我輩は人間である]
:10/04/08 03:33 :S001 :☆☆☆
#586 [我輩は匿名である]
上げるぜ
:10/12/04 11:35 :P08A3 :wwvC.sEQ
#587 [隠謀(1/2)◆vzApYZDoz6]
目を覚まして最初に飛び込んできたのは、縦横に溝が走るタイル張りの白い天井と、ほのかに黄ばんだ蛍光灯。
耳に入るのは雑多な電子音と、機械が稼働するファンの音。
体を起こそうと上半身に少し力を込めようとして、そこで初めて自分がベッドに寝ている事に気付いた。
「お目覚めかね?」
ベッドの脇から、落ち着き払った男の声。
見ると、白衣を着た初老の男性が立っている。
「……ふん」
口角を片方吊り上げ目を半月状に細めてこちらを見る男から視線を外し、上半身を起こして辺りを見回す。
どこかの研究施設にでもあるようなコンピューターとコンソールの類の機械が、そう広くない室内の壁際にずらりと配置されている。
「第二の人生を手に入れた気分はどうかね?」
白衣の男が問い掛ける。
私は部屋を眺めながら男には目を合わせず、自嘲するように鼻で笑った。
「最悪だな。今すぐ貴様をぶち殺してやりたいくらいには」
「女性があまり汚い言葉を使うべきではないねぇ。ま、どちらにしろそんな事は不可能だけど」
:12/02/19 11:05 :P08A3 :9vitOHrA
#588 [隠謀(2/2)◆vzApYZDoz6]
そう言って白衣の男はくぐもったように笑い、側にあったテーブルのマグカップを手に取った。
薄く湯気が立ち上る中身を一口啜り、再び口を開く。
「死人に口なしと言うだろう?」
「………」
自分の手のひらに視線を落とす。
既に血の通わないそれは青白く澱んでおり、軽く握ると冷ややかな感触が返ってきた。
手のひらを自身の胸に当てる。
柔らく弾力があり、それなりの大きさもあるが、しかし心臓の鼓動は微塵も感じてはくれなかった。
「……ふん」
「ま、働きには期待しているよ。その為に君達を直したのだから」
そう言いながら、白衣の男が顎先で部屋の中央を指す。
そこにはベッドが二つ。即ち自分が今いるベッドと、その隣。
自分が着ている物と同じような、簡素な白い患者衣を着た男が、先刻までの自分と同じように眠っている。
その横顔を眺めながら、私は無意識のうちに冷たい手を伸ばした。
男の頬に指先が触れる。と同時に男の眉間に皺が寄り、頬に僅かな力が入る。
驚いて反射的に手を引いた私と、その様子を無表情に眺めていた白衣の男の見守る中、もう一人の屍が目を覚まそうとしていた。
:12/02/19 11:08 :P08A3 :9vitOHrA
#589 [我輩は匿名である]
上げついでに久々投下。
過疎よ去れーッ!
:12/02/19 11:09 :P08A3 :9vitOHrA
#590 [青の中の家(1/3)◆WHAzwTTDUw]
家が激しく揺れ動くせいで目が覚めた。地震だ。
部屋は真っ暗だったが、ぼんやりとしていた目がだんだんと冴えてきて、激しく揺れ動く電気のスイッチの紐を見る事ができた。震度五、あるいは六かもしれない。とにかく、強烈な揺れだった。
揺れが収束する。妻がいなくてよかったと、私は思った。妻はひどく地震に弱い。震度三程度でもこの世の終わりかと思うほど、あたふたとする。何故そんなに地震を恐れるかというと、阪神・淡路大震災を体験しているからだ。あれが妻に強烈なトラウマを与えるきっかけとなった。
妻は訳あって実家に帰っている。私の家は東京にあるから、もしかすると微弱な地震が届いたかもしれない。しかし、まあ震度五、六の地震を味わうよりかはいいだろう。
私はベッドを降りて、居間に向かった。テーブルの上に置かれたリモコンを持ち、スイッチを押した。しかし、テレビは点かなかった。沈黙を保ち続けた。
どうやら停電したらしい。まあ、結構な揺れだったので、停電になってもおかしくないと、私は思った。
私は寝室に行き、布団にくるまった。眠るのにそう時間はかからなかった。
:12/02/19 19:03 :biblio :.BF1/ONc
#591 [青の中の家(2/3)◆WHAzwTTDUw]
目覚まし時計が泣き叫ぶ赤ん坊のようにけたたましく鳴り響いた。私はベッドから降りて、部屋の隅に置かれた目覚まし時計を止めた。ベッドの側に置かない理由は、手の届く場所に置いておくと、止めてからまた眠ってしまう事があるからである。
私は顔を洗おうと洗面所に行った。洗面所の窓からは明るい日差しが差し込んでいた。蛇口を捻った。しかし、水は出てはこなかった。まさか夜中の地震で断水してしまったのだろうか?
私は薄暗い居間に行き、電気のスイッチを押した。電気は点かなかった。まだ停電しているようだ。
私は窓を開け、シャッターを開けた。その時、驚きの光景が目に入った。空だ。青空が広がっていた。雲も漂っている。手を伸ばせば届きそうだ。家々や電柱、道路の姿はない。夏だというのに外気は上空にいるせいでひんやりとしていた。
私は下を覗いた。ミニチュアより遥かに小さい都市が広がっていた。
まだ夢でも見ているのだろうか。私は一度頭を引っ込め、目を閉じて深呼吸をした。そして、目を開けた。目先には水色の空がどこまでも広がり、綿菓子のような雲が所々浮かんでいた。
:12/02/19 19:03 :biblio :.BF1/ONc
#592 [青の中の家(3/3)◆WHAzwTTDUw]
一体何が起きたのだろう。何故家が浮いているんだ。理解の範疇(はんちゅう)を超えてる。
私は居間に置いていた携帯電話を取り、開いた。画面の左上には圏外の文字。無理だとわかってはいたが、妻宛に助けを求めるメールを作成し、送信を試みた。やはり送信に失敗した。
どうしたらいいのだろう。地上の人間は気付くだろうか? 家は点にしか見えないんじゃないか? 飛行機が通れば気づいてくれるかもしれない。いや、気づかない。旅客機は遥か上を飛んでいる。窓の外は零度近くだろうから、現在の位置は富士山の山頂かちょっと上といった所だろう。それならヘリコプターの飛行範囲内だ。
誰かが発見してくれるさ。私はポジティブに考えた。
腹が減ったのでパンを食べ、オレンジジュースを飲んだ。小便はトイレにした。
家は上昇を続けていた。何故なら外気が明らかに冷たくなっているからだ。私はシャッターを閉め、押し入れから毛布を取り出し、布団にくるまった。あまりの寒さに縮みあがり、ガクガクと震えていた。歯が音を立てる。
昼頃になると酸素が薄くなり始めた。苦しい。家の上昇は止まらない。私は酸素を激しく欲求した。
そして、遂に身体は体温を失った。
:12/02/19 19:04 :biblio :.BF1/ONc
#593 [我輩は匿名である]
:12/02/19 22:56 :P08A3 :9vitOHrA
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