記憶を売る本屋 2
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#1 [我輩は匿名である]
こちらは、「記憶を売る本屋さん」の続編です

元の話をお読みになってからの方が、話こんがらがらなくて良いと思います

よろしくお願いします

元の話↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/11448/

感想はこちらへ↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4747/

⏰:10/04/18 12:12 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#2 [我輩は匿名である]
アンカーです
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⏰:10/04/18 12:17 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#3 [我輩は匿名である]
2学期になった。

「はぁ〜…」

ボサボサな頭で欠伸をしながら、直人は学校に向かって歩いていた。

昨日徹夜をしたが、夏休みの宿題は全く終わっていない。

「おはよ」

誰かがポンと、直人の背中を叩く。

横を見ると、飛鳥がいた。

「あぁ…久しぶり」

直人は弱々しく挨拶する。

⏰:10/04/18 20:18 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#4 [我輩は匿名である]
「何?珍しく元気ないじゃん。…宿題終わらなかったんでしょ」

飛鳥は見透かすように笑って直人に言った。

「終わるわけないだろ、あんなもん。お前終わったのかよ?」

「当たり前じゃん。答え見ながらやれば楽勝」

「最悪な奴だな、お前」

誇らしげに笑っている飛鳥に、直人は顔をしかめる。

⏰:10/04/18 20:49 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#5 [我輩は匿名である]
「…あ」

正面を見ていた飛鳥が声を上げる。

「何だよ」

「あの2人、相変わらずラブラブだね」

飛鳥が指差す先には、薫と響子の姿。

⏰:10/04/18 20:50 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#6 [我輩は匿名である]
「眠たいねー…」

響子は大きく欠伸をする。

「夏休みだらけてたからな…」

薫もいつもよりボーッとしている。

「んー…あっ、猫!」

響子は明るく言って、1人電柱に近づいていく。

それにつられて、薫も響子の後ろで立ち止まる。

⏰:10/04/18 20:50 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#7 [我輩は匿名である]
「…響子、犬好きじゃなかったか?」

「それは“昔”の話。今は猫のほうが好きなの」

響子は笑って言いながら、携帯電話のカメラで猫を撮る。

首輪を付けているので、どこかで飼われているのだろう。

勝手に撫でたり顎を触っている響子を見て、薫は穏やかな笑みを浮かべる。

「何朝からニヤけてんだよ、気持ち悪い」

薫に不機嫌そうに言いながら、直人は薫に寄り掛かる。

⏰:10/04/18 20:51 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#8 [我輩は匿名である]
「ニヤけてねぇよ」

「思いっきりニヤけてただろ」

朝から軽く言い合いを始める直人達の隣で、響子と飛鳥が「おはよう」と笑い合う。

「騒がしい」とでも思ったのか、猫は響子の手を離れ、どこかへ行ってしまった。

「あーあ、行っちゃった」

響子は残念そうにため息をついて、飛鳥と一緒に歩きだす。

⏰:10/04/18 20:51 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#9 [我輩は匿名である]
「どーせエロい事でも考えてたんだろ?そんな顔してたぞ」

「してない」

「そうよ!薫は頭の中では考えてても、顔には絶対出さないんだから!」

「それ、結局考えてるって事じゃ…」

4人は騒ぎながら登校する。

⏰:10/04/18 20:52 📱:N08A3 🆔:v3aiuClI


#10 [我輩は匿名である]
あれから、あの老人は現れなくなった。「見た」という話も聞かない。

薫はやっと鎖骨骨折の治療が終わり、相変わらず響子と、すでに夫婦のような雰囲気を醸し出している。

飛鳥は奏子に誘われたカフェでアルバイトを始め、もう4ヶ月になる。

奏子と響子を中心に、やっとクラスの女子達とも話せるようになってきた。

奏子も響子も飛鳥を受け入れ、いつも一緒に行動している。

直人も相変わらず、毎日ボーッとして過ごしている。

⏰:10/04/19 10:10 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#11 [我輩は匿名である]
「言っとくけどなぁ、男はみんなそういう事考えてしまう生き物なんだよ!」

「はぁ!?お前だけだろバーカ!」

「でも水無月の方がエロ本とか持ってそうなイメージあるよね」

「読まねぇよエロ本なんか!」

直人は顔を赤くして否定する。

必死になる直人に、3人は大笑いする。

「つーか、さっきのこいつの発言はスルーかよ!?」

⏰:10/04/19 10:10 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#12 [我輩は匿名である]
「いいの。ちょっとやらしい方が男らしいでしょ?」

「え、月城って…」

飛鳥は意外そうに薫を見る。

「…なんか入院してる時にも安斎にそんな目で見られたな…」

薫は鬱陶しそうにため息をつく。

「そうだ、あん時照れて俺たちの事追い出したのに、何で今はそんな余裕なんだよ」

「もうどう思われようが、どうでも良くなってきた。

それに、響子の話だと俺は男らしいって事になるしな」

「何だよそれ…」

直人は呆れながら薫を見る。

⏰:10/04/19 10:11 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#13 [我輩は匿名である]
学校に到着し、4人はそれぞれ靴を履き換える。

「あっ!みんなおはよー!」

今度は明るい奏子の声が聞こえてきた。

「おう、久しぶり!」

直人も同じようなテンションで返事する。

「さっき聞いたんだけどね、響子のクラスの転入生来るらしいよー」

「は?転入生?」

直人達はきょとんとする。

⏰:10/04/19 10:11 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#14 [我輩は匿名である]
「へぇー、男かなぁ?私女がいいなぁ」

響子は期待しながら下履きを靴箱に入れる。

それに対し、奏子は「えー私イケメンがいい!」と反論している。

いつもの5人が揃った所で、直人達は教室に向かって階段を上る。

「ねぇねぇ、みんな宿題終わった?」

奏子が後ろを向きながら話し掛ける。

「終わった」

「え!?飛鳥はやっ!」

⏰:10/04/19 10:12 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#15 [我輩は匿名である]
そう言った瞬間、奏子が階段を踏み外した。

「うわっ……」

「えっ、ちょ…」

奏子のすぐ下にいた直人は、左手でとっさに手摺りを掴み、右手でバランスを崩した奏子の体を受け止めた。

薫も響子も飛鳥も、息を呑んでその状況を見つめる。

「お前…喋るか歩くかどっちかにしろよ…」

直人は「世話が焼ける」と、ホッと息を吐く。

⏰:10/04/19 10:12 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#16 [我輩は匿名である]
「ごっ…ごめん…」

奏子は体勢を立て直して直人から離れる。

「ありがと…」

「ん。気を付けないと、誰かさんみたいに鎖骨折るぞ」

「あー誰の事だろうな」

直人に見られ、薫はさっさと階段を上る。

⏰:10/04/19 10:12 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#17 [我輩は匿名である]
安心して、みんなも足を動かし始める。

しかし、奏子はなかなか足が動かなかった。

少し頬が熱くなっている。

奏子は一歩引いて、直人の背中を見ながら階段を上がった。

⏰:10/04/19 10:13 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#18 [我輩は匿名である]
全校集会で校長の話を聞いて来て、生徒達はぞろぞろ帰ってきて自分の席に座る。

響子もおとなしく、自分の席でボーッとする。

「はーいおはようございまーす」

チャイムが鳴り終わると同時に、響子達の担任が入ってきた。

学級委員の掛け声で、クラスメイト立ちが立ち上がり、礼をして着席する。

⏰:10/04/19 18:30 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#19 [我輩は匿名である]
「そうそう、今日からねぇ、このクラスに転入生が来ます。男の子ですー」

まだ30歳くらいの担任は、いつもの可愛らしい笑顔で言った。

教室内が一斉にざわめく。

「…奏子ちゃんが言ってたの、本当だったんだ…」

机に肘をついて、響子は呟く。

信じていなかったわけではなかったのだが、改めて驚く。

「(女の子が良かったのになぁー…)」

響子が考えていると、担任の「入ってー」の合図で、前のドアが開いた。

⏰:10/04/19 18:31 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#20 [我輩は匿名である]
入ってきたのは、少しロン毛がかった茶髪に細身で長身の、優しそうな顔の男子。

女子が再度ザワザワと声を上げる。

「(…ん…?あの子どっかで…)」

彼を見て、響子は1人首を傾げる。

桐生 良介。

担任が黒板に名前を書いた。

「…キリュウ…リョウスケ…」

名前にも聞き覚えがあるが、響子はどうしても思い出せない。

「桐生良介くんです。じゃあ簡単に自己紹介を」

「はい」

⏰:10/04/19 18:32 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#21 [我輩は匿名である]
転入生は笑顔で返事をして、生徒の方を向く。

「桐生良介です。5歳まで隣町に住んでたんですけど、父の転勤でアメリカにいました」

要するに、帰国子女ってやつだ。

響子の前の女子達が、嬉しそうにはしゃぐ。

「この辺もだいぶ変わってて何にもわからないんですけど、

楽しくやっていきたいと思うので、仲良くして下さい。よろしくお願いします」

桐生良介はそう言って一礼する。

クラスメイトが歓迎の拍手を送る。

⏰:10/04/19 18:32 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#22 [我輩は匿名である]
「(……隣町……アメリカ……)」

響子は手を叩きながら考える。

そして、ふと思い出した。

「(……もしかして…隣の隣に住んでた、あの“良介くん”…?)」

響子が幼稚園の時に、近所の同い年の男の子が引っ越していった気がする。

幼なじみだったのだが、すっかり忘れていた。

⏰:10/04/19 18:32 📱:N08A3 🆔:6hENWB/Y


#23 [我輩は匿名である]
休み時間になり、良介の周りは女子でいっぱいだ。

響子は暇なので8組にでも行こうと、席を立つ。

それを良介がたまたま見ていた。

「ねぇ、あの子は?」

ちょうど出ていく所だった響子を指差す。

「あぁ、あの子は香月響子ちゃん」

「えっ!?香月響子!?」

良介が驚いて立ち上がる。

そして、響子を追い掛けるようにして教室を出た。

⏰:10/04/20 10:09 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#24 [我輩は匿名である]
「あぁ、響子」

8組では、黒板の前であの4人が喋っていた。

薫に呼ばれて、響子も輪の中に入る。

「どうだった?転入生」

「それが…」

「響子ちゃぁぁぁん!」

廊下で誰かが叫ぶ声がした。

5人がぎょっとして見ていると、良介が走ってやって来た。

⏰:10/04/20 10:10 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#25 [我輩は匿名である]
「…誰?」

鬱陶しそうに奏子が尋ねる。

「てんにゅ…」

「君だね!?君が響子ちゃんだね!?」

良介はそう言って、目を輝かせながら飛鳥の手を握る。

「はぁ?何だよ、あんた」

「えっ?僕の事覚えてないの!?」

「…香月響子は私です…」

響子がしぶしぶ手を挙げる。

⏰:10/04/20 10:10 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#26 [我輩は匿名である]
良介は「へ?」と響子を見る。

「………えっ?君が響子ちゃん?」

「うん…」

「……さっきから『響子ちゃん、響子ちゃん』と馴れ馴れしい…」

歓声を上げる良介に、薫が顔をしかめる。

「ねっ!僕の事覚えてる!?君の隣の隣に住んでた良介だよ!

あーっ、やっと会えた!元気だった!?身長縮んだね!?」

良介は今度は響子の両手を握りなおす。

⏰:10/04/20 10:11 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#27 [我輩は匿名である]
「(…なんだこのテンション…うぜぇ…)」

「(…縮んだって…)」

「(イケメン…♪)」

3人がそれぞれ思っていると、薫が不機嫌そうに良介の手を振り払った。

「いきなり入ってきて何なんだ?馴れ馴れしく手なんか握りやがって…」

「…何って、僕響子ちゃんのフィアンセだよ?」

良介は当然のように言い放つ。

その一言に、直人達だけでなく、教室中が静まり返った。

⏰:10/04/20 10:12 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#28 [我輩は匿名である]
「…お前…ふざけてるのか…?」

薫は哀れみを込めた目で良介を見る。

「ふざけてないよ。約束したもん、響子ちゃんと」

「は!?」

響子がすぐさま「違う違う」と手を振る。

薫と響子が付き合っている事を知っているクラスメイト達が、良介を見て笑っている。

「違わないよ!幼稚園の時に『大人になったら結婚しようね』って言ったら、

響子ちゃんも『うん♪』って言ってくれたじゃないか!」

「お前…これ以上いい加減な事言ったらぶっ飛ばすぞ…!」

薫の怒りが頂点に達しかけている。

⏰:10/04/20 10:12 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#29 [我輩は匿名である]
が、良介は動じずに首を傾げる。

「っていうか、君誰?」

「俺は!香月響子の彼氏だ!!」

薫は思わず声を荒げる。

クラスメイト達が喜んで声を上げ、薫に拍手を送る。

が、薫は今それどころじゃない。

良介の胸倉を掴み、睨み付ける。

「これ以上響子に手ぇ出したら…殺す…!」

本気で殴り殺しそうな薫に、直人達もおろおろする。

⏰:10/04/20 10:13 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#30 [我輩は匿名である]
…が。

「ワーォ!ジャパニーズボーイこわーい☆」

良介はへらっと笑って言った。

薫の顔が引きつる。

「…地獄に落ちろぉぉぉぉーーー!!!!」

「わあぁぁぁっ!薫!!落ち着けー!!」

良介に殴りかかる薫を、直人や周りにいた男子が慌てて止める。

その間に、響子は奏子と飛鳥の後ろに避難する。

薫が押さえられているのを良い事に、良介は笑いながら、「響子ちゃん!また後でねー」と出ていった。

⏰:10/04/20 10:13 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#31 [我輩は匿名である]
「…何だったんだ…?」

飛鳥と奏子は呆れ返る。

「…許さん……絶対後で殺す…!」

薫は息を荒くしてドアの方を睨む。

直人は、「また何かややこしい事になりそうだ」とため息をついた。

⏰:10/04/20 10:14 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#32 [我輩は匿名である]
帰り道。

薫はまたもや顔を引きつらせる。

目の前には、満面の笑みを浮かべた良介の姿。

「……お前…ケンカ売りに来たのか…?」

「まさか♪」

「つーか、お前誰?」

薫の代わりに直人が尋ねる。

横には呆れている飛鳥と、ちょっと楽しんでいる奏子。

響子は薫の後ろに身を隠している。

⏰:10/04/20 21:30 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#33 [我輩は匿名である]
「僕かい?僕は桐生良介。響子ちゃんのフィ」

「響子の婚約者は俺だ」

良介が言い切る前に、薫が言い張る。

「なぁ、お前何か、勘違いしてねぇか?」

「そんな事はないよ!愛する幼なじみの顔を、僕が忘れるはずがない!」

「幼なじみって、5歳までじゃない!」

薫の後ろから、響子が顔を出して言い返す。

「えっ?やっぱり幼なじみなの?」

奏子がぽかんとして尋ねる。

⏰:10/04/20 21:31 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#34 [我輩は匿名である]
「お、幼なじみだったのは覚えてるよ!?

でも、私は結婚の約束なんかしてないし、私の婚約者はこの月城薫ただ1人よ!」

響子が言うと、良介は「オーマイガッ!」と頭を抱えた。

「(効いた…)」

直人、奏子、飛鳥は呆然とそれを見つめる。

「(…何なんだ、こいつのテンション…)」

薫は「はぁ…」とため息をつく。

しかしその直後、薫の鼻先に、良介の人差し指が伸びてきた。

⏰:10/04/20 21:31 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#35 [我輩は匿名である]
「まぁいいよ!今のうちに好きなだけKissでもSexでもやればいい!

しかし!すぐにこの僕が響子ちゃんを取り戻すからなっ!

覚悟してろよ!つ、…つ…つ……?」

「月城薫だよ…」

怒鳴る元気も無くなって、薫は呆れながら言う。

良介はフン!と鼻息荒く、走って帰っていった。

「…お前みたいなわけわかんねぇ奴に言われなくても、キスでも何でもやってるよ…」

薫は頭を抱える。

⏰:10/04/20 21:32 📱:N08A3 🆔:DuuM/8z6


#36 [我輩は匿名である]
「…薫…」

少し横を向けば、響子が不安そうに薫を見上げている。

「…大丈夫だよ、そんな顔しなくても、あの変人の言う事は信じてないから」

薫は少し笑って、響子の頭を撫でる。

そして、5人は学校を出ようと歩きだす。

「…何か、英語の発音は良かったな」

「うん」

直人達も呆れたように話し合う。

⏰:10/04/21 17:37 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#37 [我輩は匿名である]
「あの子、帰国子女なのよ。アメリカから帰ってきたんだ…」

「帰国子女!?」

薫以外の3人は声を上げて驚く。

「なんか、お父さんの転勤で5歳の時にアメリカに……」

言いながら、響子は足を止める。

『りょーすけくん、いっちゃうの?』

『うん。あめりかだって』

響子はうっすら思い出してきた。

⏰:10/04/21 17:38 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#38 [我輩は匿名である]
『あめりか?がいこくだね!』

幼稚園児の響子は、良介がアメリカに発つ日に、家の前で見送っていた。

『げんきでねっ♪』

『うん!もしまたあえたら、ぼくと…』

良介が何か言ったが、ちょうど近所の犬が大声で吠えたため、響子は聞き取れなかった。

『ねっ!?』

良介が笑って言った。

それに、響子は適当に『うん!』と返事をしたのだたった。

⏰:10/04/21 17:38 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#39 [我輩は匿名である]
「…ああぁぁぁぁぁ〜………」

響子は頭を抱えて、その場に崩れ落ちる。

急に座り込んだ響子に、直人達は驚いて「うわぁ!?」と声を上げる。

「ど、どうした!?」

薫もびっくりして、響子の前にしゃがみこむ。

「…どうしよう…」

響子は頭を抱えたまま小声で言う。

「え?」

⏰:10/04/21 17:39 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#40 [我輩は匿名である]
「あの時、あの子『結婚しようね』って言ったのかなぁ…?

だったら…だったらどうしよう…」

響子は思い詰めて涙目になる。

「響子…?」

「薫…どうしよう…?私…あの時適当に『うん』って言っちゃった…。

何て言ったのか聞こえなかったけど、適当に返事しちゃったの…。

どうしよう…?私…嫌だよぉ……」

響子はしゃがんだまま、今にも泣きだしそうな顔をしている。

⏰:10/04/21 17:40 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#41 [我輩は匿名である]
「響子」

薫が呆れたように笑う。

「そんな小さい時の事なんか、覚えてなくて当たり前だ。

それに、適当に返事したんならなおさら、そんな物約束だとは言えない。

そんな泣かなくても、俺は何とも思ってないよ」

「…本当…?」

響子は顔を上げる。

「……何とも思ってないわけないだろ…」

薫は低い声で言った。

⏰:10/04/21 17:40 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#42 [我輩は匿名である]
「へ?」

「あんなわけのわからないアメリカかぶれに…響子を渡してたまるか…。

『僕がフィアンセだ』ぁ?ふざけんじゃねぇぞ…」

思い出したら機嫌が悪くなってきたのか、薫の周りを黒いオーラが漂い始める。

「ヤべぇ…キレかけてる…」

直人が「どうしよう」と、奏子と飛鳥を交互に見る。

⏰:10/04/21 17:40 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#43 [我輩は匿名である]
しかし、直人の心配をよそに、響子がそっと、薫にキスをした。

奏子が「きゃあーっ♪」と声を上げる。

「……響子…」

薫は少し頬を赤らめる。

「…私が好きなのは、薫だけだから。絶対薫以外変わらないからね」

響子は困った表情をしていたが、それだけははっきりと、迷う事無く言った。

⏰:10/04/21 17:41 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#44 [我輩は匿名である]
「…うん」

薫も安心したようにまた笑い、響子を強く抱き締める。

「………ついていけねぇ……薫、先帰るぞ」

直人はそう言って、早足で歩きだした。

つられて、飛鳥と奏子も直人と一緒に歩き始めた。

⏰:10/04/21 17:41 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#45 [我輩は匿名である]
「いやぁー、純愛ですなぁー」

しばらく歩いて、奏子は腕を組みながら言った。

「どこのおっさんだよ、お前」

「だってさぁ、憧れるじゃない?ね?飛鳥」

奏子は飛鳥にも話を振る。

「…そうだね」

飛鳥も小さく笑って同意した。

その顔が、石川晶が喜んだ時の顔にそっくりで、直人は少しドキッとする。

⏰:10/04/21 22:05 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#46 [我輩は匿名である]
夏休みの前に言われた、響子の『やっぱりあの子が好きなの?』と言う言葉が甦る。

「(…って言われても…)」

直人は横目で、楽しそうに話している飛鳥を見つめる。

「そんな事聞かれてもなぁ…」

「ん、何か言った?」

直人の独り言が聞こえたのか、奏子がこっちを向く。

「へっ!?い、いや、別に…」

「怪しいな」

「怪しくねぇよ!」

怪しむ飛鳥に、直人は声を荒げて否定する。

⏰:10/04/21 22:05 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#47 [我輩は匿名である]
「…お前らにも、好きな奴とかいんの?」

直人は何気なく2人に聞いてみる。

「私は…まだそれどころじゃないしなぁ…」

飛鳥はふうっと一息つく。

「まだ親とも話してないし…4ヶ月経ってもバイトにはまだまだ慣れないし。

生きるのに精一杯って感じ…かな…」

そう言いつつ、飛鳥の表情は、どこか晴れ晴れとしている。

⏰:10/04/21 22:06 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#48 [我輩は匿名である]
直人はそれを見て、少し笑う。

それを、奏子は黙って見つめる。

「お前は?」

直人は奏子に聞き直す。

「えっ!?」

「お前イケメン好きとか言ってたから、あのアメリカかぶれとか、いんじゃねぇの?」

「はぁ!?何で私があんな奴と!」

奏子は全力で否定する。

「いいじゃん、お似合いじゃねーか」

直人は「うんうん」と自分で納得する。

⏰:10/04/21 22:06 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#49 [我輩は匿名である]
横では飛鳥が笑っている。

奏子はしばらくムスッとしていたが、何となく直人を見上げる。

「(…こいつは…好きな人いるのかなぁ…?)」

「あ、そういえば、バイト楽しいか?」

「うん、店長が相変わらず怖いけど、やっと一通り出来るようになったかな」

「へぇ。じゃあそろそろ行ってみねーとな!」

「来なくていいから!」

「何でだよ!いいじゃん別に!」

「来たら紅茶ぶっかけるから!」

「それ損するのお前だろ」

⏰:10/04/21 22:07 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


#50 [我輩は匿名である]
直人と飛鳥が仲良く言い合いをしている。

「(…やっぱり、飛鳥が好きなのかなぁ…?)」

そう思うと、何だか虚しくなってきて、奏子は首を振って考えないようにした。

⏰:10/04/21 22:07 📱:N08A3 🆔:S8dNuXTM


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