危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#601 [東脂ヤ転
「・・・・・・じゃねぇよ」

「お前は圭吾が好きなんだよ」

「好きじゃねぇ!!」

店内に俺の声が響いた。俺は今どんな表情(カオ)をしているんだろう。
きっと泣きそうな表情で静の前に立っているに違いない。

「何を根拠にそんな事言えんだよ・・・あんな奴が好きなワケねぇだろ!!
俺は静のことが好きなんだ・・・!」

そう思い込ませてくれよ。俺はもう傷付きたくないんだ。

⏰:08/05/27 08:28 📱:W52P 🆔:CJURlFNc


#602 [東脂ヤ転
「明・・・・・・」

静は俺を近くへ引き寄せた。

「思い残すことが無いってぐらい圭吾にぶつかってみたか?」

俺は少し顔を上げて静を見つめる。
静の瞳は思った以上に哀色を帯びていた。

「何もする前から"傷付く"だなんて決めつけたら明自身がかわいそうだよ」

静はそう言うと優しく微笑んで俺の頭を軽く叩いた。

⏰:08/05/27 08:57 📱:W52P 🆔:CJURlFNc


#603 [東脂ヤ転
「それに俺なんかより、圭吾の方がずっと優しいぞ?」

ちょっと皮肉にもとれる台詞をサラッと静は言う。

「・・・・・・知ってるよ」

静の言葉に俺はそう呟いて苦笑した。
嫌って程知ってるよ、圭吾が優しいことぐらい。優しさの欠片も知らない俺は、だから圭吾に惹かれたんだ。

優しさの限度を知らないお節介焼きな圭吾に。

⏰:08/05/27 16:35 📱:W52P 🆔:CJURlFNc


#604 [東脂ヤ転
「・・・・・・!!」

急に目を覚まし、俺は勢い良く体を起こした。
時計に目をやると昼の11時。通りで部屋が明るいワケだ。

「夢オチかよ・・・」

もう一度うつ伏せに寝転んで自分自身にツッコミを入れる。それにしても、余りにも"あの日"を忠実に再現した夢だった。
目を瞑って周りの音に耳を澄ませると人の居る気配がしない。どうやら圭吾は出掛けたようだ。

俺は小さく溜め息をつき、ベッドからゆっくりと身体を起きあがらせた。

⏰:08/05/28 08:27 📱:W52P 🆔:82RtP9ps


#605 [東脂ヤ転
静とあの話をしたのはどれくらい前の時だろう。
その頃突然、俺は圭吾のことが好きなんだと気付いてしまった。

それと同時に、俺はその気持ちから目を逸らしたくて堪らなくなった。

その当時から男遊びが激しかった圭吾を好きで居続ける勇気も根気も、俺には持ち合わせていなかったんだ。

それに俺は知っていた。
圭吾が男癖が悪いのは、アイツが手に入れたくて堪らない"静"という穴を埋め合わせする為だという事を。

⏰:08/05/28 11:10 📱:W52P 🆔:82RtP9ps


#606 [東脂ヤ転
「喉渇いた・・・」

俺は呟くと部屋から出てキッチンへと向かう。
リビングには日光がさんさんと入っていて暑い程だ。

その時テーブルの上にあった紙が目に入る。

『明〜♪朝ご飯作っといたから食べなぁ☆俺はちょっと出掛けてきまぁす♪ 圭吾(^-^)』

そう書いたメモ用紙の側にはラップのかかった皿があった。
中には卵焼きやら焼き魚やらが並べられている。
「・・・・・・・・・ハァ」

俺は深く溜め息をつく。圭吾のこういうところが好きなんだけど、同時にこういうところが嫌いなんだ。

こういう、能天気なところが。

⏰:08/05/29 14:54 📱:W52P 🆔:e/5pojH6


#607 [東脂ヤ転
「大体なぁ・・・!!昨日の今日でこんなテンション高く朝食を作れる神経が分かんねぇ!!!!」

誰も居ない部屋中に俺の声が響き渡る。
日頃から不満は声に出して言う事にしている俺は、お構いなしに独り言を続ける。

「しかも料理って言ったら毎回毎回和食ばっか作りやがって・・・俺は朝は洋食派だって言っただろうがぁぁ!!!!」

そう言いながらもご飯をよそっている自分に呆れながら、俺は食卓に座って皿のラップをはがした。

悔しくも卵の良い香りが食欲をそそる。

⏰:08/05/29 18:42 📱:W52P 🆔:e/5pojH6


#608 [東脂ヤ転
「・・・・・・旨い」

一口食べた瞬間から、そんな言葉が自然と口をつく。
圭吾の腕が確かなのは前から知っていた。何せあの静が、店の料理の大半を圭吾に任せたいとまで言っていたのだ。

まぁ肝心の圭吾は接客が好きだから、という理由で静の頼みをことごとく断っていたが。

[普通、静の頼みを断るか!?]

俺はまたそんなことを考えながら、次々とおかずを口に運んでいく。

⏰:08/05/30 09:06 📱:W52P 🆔:yd0e2mNE


#609 [東脂ヤ転
「・・・・・・ハァ」

ひとしきり朝食を平らげた後、何故か俺は溜め息をついた。
小さくついたつもりの溜め息も、独りしか居ないこの部屋にはやけに大きく聞こえる。

[何か・・・何かダメだ・・・・・・俺]

言いようの無い苛立ちや焦りが、こういう時に限って襲ってくる。

俺はもっと圭吾と向き合いたいのにアイツはいつも、そんな俺の想いを受け流してしまう。
いとも簡単に。

それが俺には凄くもどかしくて、悲しくなる。

ちょうど今日みたいに。

⏰:08/06/01 16:31 📱:W52P 🆔:TNnSlajw


#610 [東脂ヤ転
[らしくない・・・らしくないぞ・・・俺・・・!!]

俺は必死に自分に言い聞かせながら皿を片付ける。
端から見れば痛々しく映るかもしれない。
こんな俺は。

ふと顔を上げると、カーテンからは溢れる程の日光が射し込んでいる。

「・・・そうだ、出掛けよ」

俺は急にそう思い立つと、急いで着替えに部屋に戻った。

こんな所に一人で居るからダメなんだよ。そうだ外に出よう。
そしたら何か変わるかもしれない・・・。


なーんて、まるでどっかの乙女みたいな考えに俺が苦笑したのは言うまでもない。

⏰:08/06/02 08:39 📱:W52P 🆔:.GyN4aPs


#611 [東脂ヤ転
「・・・・・・ハァ」

家からそう離れていないカフェで、俺はいつもより少し多めに砂糖が入ったコーヒーを飲んでいた。
只今午前11時。店に入ったのが9時だからかれこれ2時間程度、俺はずっとこうしている。

「あ"ーー頭イタぁーー」

前に垂れてきた長い前髪をかきあげながら、俺はうなだれる。

[明の奴・・・調子狂うこと言いやがって・・・一体何やねん!!]

俺はまた溜め息をつくと冷めたコーヒーを一気に飲み干した。

⏰:08/06/02 08:50 📱:W52P 🆔:.GyN4aPs


#612 [我輩は匿名である]
>>1-100

⏰:08/06/02 18:07 📱:W51H 🆔:TbG/Yd8A


#613 [東脂ヤ転
アンカーありがとうございます(ρv-)o。+'*・。,*
***********「イッチー!!もう一杯!!」
俺は近くのカウンター越しにサンドイッチを作っている子に声を掛けた。

「圭ちゃん飲み過ぎちゃいます?」

深めに被った帽子から覗く大きな瞳が、俺のことを心配そうに見つめ返す。

「飲み過ぎって、俺が飲んでるのコーヒーやぁん」

「カフェインも取り過ぎは良くないですって」

都心で関西弁全開な言葉を交わしていることが何か凄く可笑しくて、俺は思わず笑ってしまった。

⏰:08/06/04 14:41 📱:W52P 🆔:lHjWF9hA


#614 [東脂ヤ転
「俺が関西弁やからて、イッチーまで合わせることないんやで〜
イッチーはもう標準語喋れるんやろ?」

俺が笑いながらそう言うと、イッチーも笑って俺を見た。

「こっちの方が楽ですもん。それに圭ちゃんと標準語で話すとか、考えられへん!!」

イッチーはそう言って笑うとまた手元に目線を落とした。

俺は相変わらず変な敬語交りで喋るイッチーが可愛くて、しばらくその姿を見つめていた。

⏰:08/06/05 08:38 📱:W52P 🆔:tmWuc2p6


#615 [東脂ヤ転
早乙女 壱(サオトメ イチ)。
静の店の元従業員で、今はこのカフェのオーナーをやっている。

同じ関西出身でよく面倒を見てやっていた事もあり、その付き合いは今も続いている。

サラサラの短髪にいつも決まって野球帽。
長身で爽やかな風貌の、俺より2歳年下の可愛い後輩。

明とは大違いで言うこと無しのイケメンなのに、一度も抱きたいと思ったことは無い。

その理由はきっと、イッチーが静に少し似ているからだと思う。

⏰:08/06/06 09:59 📱:W52P 🆔:HGVBkB5M


#616 [我輩は匿名である]
面白い

⏰:08/06/09 12:01 📱:F703i 🆔:BkKUwbvU


#617 [東脂ヤ転
「イッチーってさぁ、ほんまに静に似とるよねぇ」

俺は固くなった身体をほぐすように、大きく伸びをした。
その様子を見つめながらイッチーは微笑して手を止める。

「俺はちっとも静さんみたいな大人ちゃいますよ」

俺は笑ってイッチーの方を向く。

「静が大人ぁ〜!?アイツは今も昔も子供やで!」

そう言って空いたカップをカウンターまで持って行く。

[大体あんなワガママで、独占欲の強い大人見た事ないわ!!]

俺はイッチーが注いでくれるコーヒーを横目に、そんな事を思った。

⏰:08/06/10 16:02 📱:W52P 🆔:WOiJr.Uc


#618 [東脂ヤ転
「圭ちゃんみたいな人を未だに雇ってるだけで十分"大人"やと思いますわ」

「・・・みたいな人!!??それどういう意味やねん!?」

俺はイッチーからの意外な言葉に反応して、コーヒーをこぼしそうになる。
イッチーは楽しそうに笑うと俺の近くのイスに腰掛けた。

「圭ちゃん未だ男遊び激しいんでしょ?」

突然イッチーの声色が変わったのに驚いて顔を上げると、さっきとは違う真面目な眼をしていた。

⏰:08/06/10 22:41 📱:W52P 🆔:WOiJr.Uc


#619 [東脂ヤ転
俺はそんな眼を前にして思わず目を逸らした。

「また明さん怒らしたから、ウチの店に来たんでしょ?」

イッチーは相変わらず俺を見つめながら、尚的確な問いをぶつけてくる。その度に静によく似た黒髪が揺れるのを、俺は気にしていた。

「明さんはもどかしいやろなぁ・・・」

しかしイッチーが不意にそんな事を言い出したので、俺は思わず顔を上げた。

⏰:08/06/11 00:51 📱:W52P 🆔:vTGc.C5A


#620 [東脂ヤ転
「明が何やって?」

俺はよほど怪訝そうな表情をしたのだろう。
イッチーはちょっと呆れたように笑うと、俺のコーヒーカップに手をかけた。

「例えばコーヒー大好きな圭ちゃんが、ほんまに好きなコーヒーには高くて手が出せへんとするやん?」

「・・・は?」

突然の例え話に俺はポカンとしてしまう。

「せやからただ安くて手に入れ易い、そこら辺の缶コーヒーばっか飲んで、その欲を満たしていたとする」

しかしそんな俺をよそに、イッチーは意外にも真面目な顔で例え話を続ける。

⏰:08/06/11 08:51 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#621 [東脂ヤ転
「圭ちゃんは毎日毎日缶コーヒーを美味しそうに飲むけど、それはただの"穴埋め"だって事を気付いている人がいるとして・・・」

そこで突然言葉が切れた。俺は不審に思いイッチーの顔を覗き込むと、さっきよりも表情が曇っていた。

「イッチー?」

「・・・アカン・・・」

「・・・・・・何が?」

イッチーは不安げな眼で俺を見つめながらゆっくり口を開く。

「この話の・・・・・・オチが見つけられへん・・・」

⏰:08/06/11 11:08 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#622 [東脂ヤ転
「プッ・・・アハハハハ!!何やそれ!?
自分で始めた例え話やろ!!オチまで考えてから話しぃや!!アハハハハ!!」

さっきまで真剣な眼差しだっただけに、やけにツボに入って笑いが止まらなくなってしまった。

「話しだしたら言いたい事まとまらんようになってしまったんですもん!あんま責めんといて下さいよぉ!!」

店内には俺とイッチーの笑い声が響く。

⏰:08/06/11 11:29 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#623 [東脂ヤ転
「ハァ・・・せやから、僕が言いたかったのは・・・」

ひとしきり2人で笑った後一呼吸置いて、イッチーがまた口を開いた。

「圭ちゃんが男遊び激しいんは、静さんの"穴埋め"をするためやって、明さんは分かってますよ」

イッチーは何気なくさらっと、しかし結構重要なことを言ってのけた。
俺は思わず口に含んだコーヒーを吹き出しそうになる。

「おま・・・ッ!!いつからそんなこと知って・・・!!」

「圭ちゃんが静さんを好きやって話ですか?
見てたら分かりますわぁ〜そんなん♪」

イッチーの笑顔がいつもに増して輝いて見える。
[・・・読めへん奴や・・・]

⏰:08/06/12 08:49 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#624 [東脂ヤ転
「でもまぁ・・・俺が静を好きやったんは昔の話やで」

俺はイッチーが持ってきてくれたクッキーを頬張りながらそう言った。

「でも今でも、いつかは"手に入れたい"って思ってはりますよね?」

コーヒーの代わりに水を口にしたイッチーは、また何気なく鋭い事を訊いてくる。しかし、

「いや・・・もうそれは無いわ」

俺はその問いに対してハッキリとそう返した。
その声は自分でも驚く程酷く、冷たく聞こえた。

⏰:08/06/12 22:07 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#625 [東脂ヤ転
俺が静を好きになったのは高校の時。
もともと美形で有名だった静は、男子からも女子からも人気があって、孤独には無縁な奴のように見えた。

その事を今の静に言ったら「お前の目は節穴だ」って呆れられたけど。

とにかく一目惚れだった。あの黒髪も細みの身体も、一度聴いたら忘れられない、よく透るあの声も。
全てが羨ましくて愛おしくて、手に入れたくて仕方なかった。

でもそんな僅かな願いさえ、いつだって叶わない。
静の隣にはいつも誰かが居て、俺の入る隙間なんか少しも残っていないんだ。

寂しがり屋な俺には静が必要なのに。

⏰:08/06/13 09:04 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#626 [東脂ヤ転
「それは・・・もう諦めたってことですか?」

俺の応えを促すように、イッチーはゆっくりと尋ねる。
その表情は何とも複雑そうで、嘘のつけないイッチーらしい反応だ。

「諦めたっていうより・・・観念したって感じやなぁ。今の静の恋人にはかなう気せぇへんし、多分静の最後の子になると思うしな。」

俺はイッチーに言いながら、自分自身に確認しているようだった。

「"最後の子"?」

イッチーは不思議そうに俺の言葉を復唱する。

「・・・"最後の恋人"って、意味な」

俺はそう言うと思わず苦笑いした。
自分で言った台詞で傷付いてる自分が、妙に情けなくて。

⏰:08/06/13 09:23 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#627 [東脂ヤ転
[ほんま・・・こればっかはしゃあないやろ・・・]

俺の頭には鳴ちゃんの顔が浮かぶ。

初めて鳴ちゃんに会った時、その口から"静兄"って呼ぶのを聞いてショックだったのと同時に何故か安心した。

「あぁ、紫穂の"穴埋め"になる子が、静にも出来たんやな」
そんな風に思っていた。

でも実際に2人の様子を見てたらすぐ気付いた。鳴ちゃんは紫穂の代わりじゃなかった。

静は鳴ちゃんだから、好きになったんだ。

それに気付いた時俺は思った。
静から卒業する日が来ちゃったなぁ、って。

⏰:08/06/13 16:09 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#628 [東脂ヤ転
「・・・俺もなぁちょっとは抵抗してみたんよ?認めたくなくてなぁ」

コーヒーカップを眺めながら俺は小さく話す。
店内には眩し過ぎる程の日差しが入り込んで来ている。

「静とその子の間に入って、少〜し仲を引っ掻き回してみたワケ」

「え"ー!?圭ちゃん悪趣味やなぁ〜」

あまりにも正直なその言葉に俺はまた吹き出してしまう。
"悪趣味"か・・・。
確かにそうかもな。

静に対する嫌がらせのつもりで鳴ちゃんに近付いたのに、最後はほんまに鳴ちゃんの可愛さに惹かれて抱こうとしてたんやから・・・。

⏰:08/06/15 07:49 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#629 [東脂ヤ転
「で?圭ちゃん、静さんの彼氏・・・ってか恋人に手ぇ出したんですか?」

イッチーはいつになく目を光らせて俺に凄い勢いで尋ねる。

「手ぇ出したっつーか・・・ちょこ〜っとキスして・・・」

「キス!!??」

「あ!あと媚薬もほんまちょこ〜っとだけ・・・」

「媚薬!!??」

まるで漫才のようなやりとりが可笑しくて俺はイッチーを見ると、イッチーの方は結構真剣に不満気な顔をしていた。

2人の間に何となく気まずい空気が流れる。

⏰:08/06/16 08:48 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#630 [東脂ヤ転
「っていうか明さんが怒ってる理由、それやないですか」

イッチーはため息の交じりの声で呆れたように言う。

「"それ"ってどれのこと?」

明が今現在俺に怒ってるってよく分かったなぁ〜なんて思いながら、俺はイッチーにそう訊いた。
「だからぁ、その静さんの恋人に圭ちゃんが手ぇ出したってことですよ!」

もともと明のことも慕っていたから感情移入してしまったのか、イッチーは身を乗り出すようにして喋り出す。

⏰:08/06/18 08:49 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#631 [東脂ヤ転
「・・・静が怒るんやったら分かるけど、何で明が怒る必要が有るん?」

熱くなるイッチーをよそに俺はますます混乱していく。

そうだ、前からそれは疑問だった。
俺が何をしようが誰と寝ようが、正直明には関係の無いことだし、迷惑をかけているつもりも無い。
それなのに明は必要以上に俺に絡んでは、いつも傷付いたような表情(カオ)をしている。

[そんなに腹立つなら関わらんかったらえぇのに・・・俺みたいな奴に]

明が俺を哀しい眼で見る度、俺はそんなことを思っていた。

⏰:08/06/18 11:06 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#632 [東脂ヤ転
「自分のことになるとほんま鈍感ですねぇ・・・圭ちゃんは」

イッチーは空いた皿を引きながら呟く。

「俺が鈍感〜??」

その言葉に俺がイマイチピンと来ていないのに気付いたのか、イッチーは俺の前に座り直して苦笑する。

「だって圭ちゃん気付いてはらへんでしょ?
明さんが圭ちゃんを好きやってコト」

「・・・・・・・・・は?」

一瞬、イッチーが何て言ったのか理解出来なかった。っていうか何語を喋ったのかも理解出来なかった。

それ位俺の頭の中は大混乱していた。

あの明が・・・

俺の事を・・・・・・


「・・・・・・好き!?」

⏰:08/06/19 19:13 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#633 [東脂ヤ転
「いーや・・・いやいやいやいやいや!!!!絶っっ対無いやろ!!有り得へん!!」


「有り得へんって何が?
明さんが圭ちゃんを好きやってことがですか?」

イッチーがサラッと言ってのけたその言葉に俺は何度も大きく頷いた。

混乱中の大混乱に陥っている俺を横目に、イッチーはまた席を立って厨房に戻る。

そんなイッチーを逃がさんばかりと俺はカウンター席に勢い良く座り直す。

⏰:08/06/21 21:47 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#634 [さき]
更新されてる

頑張ってくださぃね?

⏰:08/06/21 21:50 📱:SH902iS 🆔:0sktQpJ.


#635 [東脂ヤ転
さきサンへ(^^)★
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3324/
★*☆*★*☆*★*☆「じゃあ逆に、何で有り得へんって思うんですか?」
使い終わった皿やらコップやらを洗い始めながらイッチーは俺に尋ねる。
「何で・・・って理由はなんぼでもあるやん!
例えばやなぁ明は俺のこと毛嫌いしとるし、俺の前で笑ったことなんかないし・・・」

いくら思い返してみても明が俺のことを好きだなんて、思い当たる節もない。そりゃそうだ。
俺はずっと、明に嫌われてると思ってたから。

⏰:08/06/23 08:53 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#636 [東脂ヤ転
「・・・っていうか!お前は明からいつそんな話を聞いたんや!?」

未だ動揺しながらそう言うと、涼しい顔でイッチーは笑う。

「明さんは何にも言ってませんよ?
まぁ・・・見てたら誰でも気付くと思いますけど」

出たよ、イッチーの"見てたら分かりますよ"発言。

[見てて気付けたら苦労せぇへんわ!!!!]

腹立つほど爽やかな笑顔のイッチーを見ながら、俺は思わずそう叫びたくなった。

それと同時に俺の頭の中はぐるぐると色んな思想が駆け巡る。

次に明と会う時、俺はどんな顔すれば良いんだ・・・!?

⏰:08/06/25 09:16 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#637 [東脂ヤ転
「それより圭ちゃん、これから静さんの家行くって言ってませんでした?」

「あ、ほんまや忘れとった」

昨日はあんな形でクビを言い渡されてしまったから、俺はこれから静の家に謝りに行こうと思っていたのだ。

時計を見ると11時半過ぎ。出発するには丁度良い時間だ。

「ハァーー・・・ほなそろそろ行くわぁ〜・・・コーヒーご馳走さぁん」

俺はそう言うと重い腰を上げてイスを引く。

「ちょ・・・ッ!!めちゃくちゃテンション低いじゃないっすか!
僕のせいちゃいますよね!?」

イッチーは心配しているような口ぶりの割に、思いっきり笑いながら俺の肩を叩く。

⏰:08/06/25 11:24 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#638 [我輩は匿名である]
>>1-50
>>51-100
>>100-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350

⏰:08/06/26 23:53 📱:P703i 🆔:o3hhYymM


#639 [東脂ヤ転
[のん気やなぁ〜誰のせいでテンションだだ下がりやと思ってんねん!]

そんな事を思いながら、俺はまたひとつ溜め息をついてテーブルに目をやると、携帯に着信があったことに気付く。

不信に思い携帯を開くと、着信の欄に何度か同じ名前が表示されていた。
"ナオ"

昨日店でヤろうとしていた子の名前だ。

⏰:08/06/27 10:30 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#640 [東脂ヤ転
「もしかして明さんからメールですか?」

イッチーが嬉しそうに携帯を覗き込むので、それを避けるように俺は素早く携帯を閉じた。

「いや、おかんからやったわ!」

「・・・・・・圭ちゃんのお母さんって今どこにおるんやったっけ?」

「・・・フランス」

墓穴掘ったぁぁぁぁ!!!!
俺のおかんは仕事でフランスと日本を行き来する生活を送っている。

おかんとも仲が良いイッチーも、もちろんそのことは知っていた。

とっさについた嘘は・・・大失敗である。

⏰:08/07/02 08:46 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#641 [東脂ヤ転
「そんな嘘つくってことは・・・圭ちゃんまだ色んな男と付き合ってるんですね?」

「・・・・・・はい」

こういう時のイッチーは本気で怖い。
下手したら多分俺のおかんより怖いんちゃうかって思う。

「もー・・・ほんまに知りませんよ!?」

シュンとしている俺を見かねたのか、イッチーはそれ以上強くは言わず、ドアを開けながらそう言った。

開いたドアからは少しキツめの風が流れ込む。

⏰:08/07/03 17:35 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#642 [東脂ヤ転
「イッチー堪忍(カンニン)な。俺って寂しがり屋やから、誰かが側に居てくれなアカンのよ。」

ドアを押さえながら目をしかめているイッチーに俺は笑いかけて、力なくそう言う。

生ぬるい風邪が、俺の長い髪をからかうように掠めていく。

⏰:08/07/10 08:35 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#643 [東脂ヤ転
「圭ちゃん」

手を振ってその場を立ち去ろうとしたその時、イッチーが小さな声で俺を呼び止めた。

「その"誰か"を・・・圭ちゃん、間違えてはりますよ。」

「・・・・・・え?」

瞬間、今日一番の風邪が吹き、イッチーの帽子を攫っていく。

静とは違う真っ直ぐな黒髪が風に揺れ、静とは違う瞳が俺を刺す。

「またのお越しを、お待ちしてます」

何か言わなきゃいけなかったのに加えて先に、イッチーに笑顔でそう言われてしまった。

俺が何も言えなかったのはきっと、俺が見て見ぬフリをし続けてきた事を・・・完全に見抜かれていたからだ。

⏰:08/07/10 08:59 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#644 [我輩は匿名である]
頑張って

⏰:08/07/10 11:51 📱:F703i 🆔:CIWBCzZ.


#645 [東脂ヤ転
>>644
ありがとうございます!
***********






「何か暑い・・・」

もう梅雨だと言っても、この暑さは例年に無い暑さじゃねーか、と思ったのがつい、いつもの癖で大きな独り言を言ってしまった。

通り過ぎて行く人々は皆、休日らしく楽しそうに笑っている。

そこに一人不似合いな俺。

[っていうかこんな時に笑えるワケねぇよ。]

どんな景色や物を見ていても、圭吾のことばかり思い出してしまう。
"明"って、俺を呼ぶ圭吾のことを。

しかもその度に自分の甘さに嫌気がさして、自己嫌悪に陥って・・・最近その繰り返しばっかだ。

⏰:08/07/10 12:19 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#646 [東脂ヤ転
とりあえず外へ飛び出した俺は昔の知り合い、早乙女 壱(サオトメイチ)の店に向かっていた。

静の店に居た頃から壱は、頭の回転の早い、俺をイラつかせない奴だった。
それ以来、壱が静の店を辞めた後も、圭吾のことで気持ちが不安定な時とかはよく壱の店に行っている。

しかも大概、切羽詰まった時にしか行かないようにしているんだけど・・・


[俺やっぱダメかも・・・]

眩し過ぎる太陽にまでイラついている俺は、一体いつになったらこんな気持ちから解放されるんだろう。

⏰:08/07/10 18:10 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#647 [はな]
>>1-300
>>301-600

⏰:08/07/13 00:13 📱:SH905i 🆔:AZV/eNqc


#648 [東脂ヤ転
>>647
アンカーありがとうございます!
***********「あれ・・・明さんじゃないですか?」

「・・・は?」

突然誰かに声を掛けられ、思わず変な声を上げてしまった。

「やっぱり、明さんだ」

その声に振り返って見た時、改めて変な声を出しそうになる。

「や・・・大和?」

「久しぶりっすね明さん」

⏰:08/07/13 23:17 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#649 [東脂ヤ転
少し長めの茶髪に、長い手足と赤いフレームの眼鏡。
間違いなく高校時代の後輩、三輪大和(ミワヤマト)だ。

高校卒業以来の約2年振りの再会にしては余りに突然で、俺は驚きを隠せずにいた。

「お前・・・全然変わってないな」

あの頃と少しも変わっていない大和に、俺は少し頬がゆるむ。

「先輩こそ相変わらず可愛いっすね」

にっこり笑ってそう言う大和を前にして思い出す。

そう言えば・・・コイツはこうやって調子を狂わす奴だった。

⏰:08/07/14 09:08 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#650 [東脂ヤ転
「それよりこんな所で何やってんの?」

大和のタラシ発言はスルーしといて、俺は無難な質問を投げかける。
ただ話しかけるだけでも、俺は大和を見上げるカタチになってしまう。

「いや、ちょっと買い物があってそのついでにぶらついてたんすよ。
明さんは?」

「俺は知り合いのカフェに(圭吾のことを相談しに)行こうとしてたとこ」

たわいない会話なのに節々で圭吾を想う俺がいる。原因はきっと、大和がちょっと圭吾に似ているから。

⏰:08/07/14 11:07 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#651 [東脂ヤ転
「カフェ!?良い響きー!一緒に行っても良いっすか!?」

「え!?」

カフェという単語のどこにテンションが上がったのか、大和は嬉しそうに目を輝かせる。

「まぁ・・・別に良いけど」

[壱も変に深読みする奴じゃないし・・・大丈夫だよな]

壱の店に"誰か"を連れて行くのは正直気が引けたけど、大和に断る理由も無かったので俺は渋々頷いた。

「じゃあ早く行きましょ!俺喉乾いちゃってて」


ほぼ強引に俺の手を引く大和を見ながら、昔のことを俺は思い出していた。

⏰:08/07/14 11:53 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#652 [東脂ヤ転
大和はもともと同じ部活の後輩だった。
他人に優しくしたりするのが苦手だった俺は、特定の奴としか関わろうとしなかった。
そんな中、

『明さん!一緒に練習行きましょうよ』

懲りもせず、毎回毎回俺に声を掛けて来た唯一の後輩、それが三輪大和だ。
"お調子者の憎めない後輩"

大和に抱いていた感情はただそれだけだった。
それは昔も今も変わらない。

でも、

大和は違っていた。

⏰:08/07/14 12:15 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#653 [東脂ヤ転
「いらっしゃいま・・・あれ珍しい」

ウチからそう遠くない郊外にある洒落たカフェ。その店の若きオーナー、早乙女壱は俺を見た瞬間とびきりの笑顔を見せる。

「久しぶり、壱」

「今日は珍しいお客さんが多いなぁ」

さっきまで読んでいたと思われる料理本を片付けながら、壱は嬉しそうに言う。

⏰:08/07/14 16:07 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#654 [我輩は匿名である]
>>1-100
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>>700-800
>>800-900
>>900-1000

⏰:08/07/14 16:28 📱:SH904i 🆔:VeOTkTrI


#655 [東脂ヤ転
「"多い"って、さっき誰か居たのか?」

俺は意味深な壱の言い方が引っかかって少し強めに尋ねた。

「いや別にちょっと懐かし・・・」

そこまで言うと壱は突然顔を上げる。
その目線はしっかりと大和を捉えていた。

「・・・友達、ですか?」

壱は俺と大和を交互に見ながら尋ねる。
いつもとは違う壱の目つきに、俺は何故か変に戸惑う。

⏰:08/07/14 21:36 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#656 [東脂ヤ転
「あ、挨拶遅れました!
俺は明さんの高校の後輩で、三輪大和って言います。」

この微妙な空気を感じ取ったのか、大和はいつもの爽やかな笑顔で壱に軽く頭を下げた。

「あぁいや、俺も明さんの後輩で今はこの店のオーナーやってます、早乙女です。
まぁ俺はバイトの後輩ですけど。」

壱の方もいつもと変わらない爽やかな笑顔で大和に挨拶する。

[何だ・・・俺の勘違いか]

そう思って軽く胸を撫で下ろした瞬間、壱としっかり目が合ってしまった。

その目は、まるで「あとで話がある」と言わんばかりの鋭い目つきだ。

⏰:08/07/14 21:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#657 [東脂ヤ転
ーピルルルル・・・ッ

「あ、ちょっとすみません・・・」

壱にカウンター席を案内されたのとほぼ同時に、大和との携帯が鳴り席を立つ。

「大和もコーヒーで良い?」

ドアに向かって歩き出した大和にそう訊くと、大和は笑顔で頷いた。

「良い後輩ですね〜」

大和が外に出たのを見届けてから、茶化すように壱は言った。

「・・・アイスコーヒー2つな」

俺は何となく気まずくて壱の言葉を聞き流す。
壱なら大和のことも気にしないだろうと思っていたんだけど・・・ どうやらそうもいかないらしい。

⏰:08/07/15 11:11 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#658 [東脂ヤ転
「っていうか前に明さんが言ってた、"唯一俺に告白してきた変わり者"って・・・」

その言葉を聞いた瞬間、飲んでいた水を吹き出しそうになる。
俺の反応を見て壱は更に俺に近付く。

「やっぱり〜!あの子なんですね!?」

・・・何でこんなにコイツは鋭いんだろう・・・。
ムカつく程に!!

「あ"ー!!だから困ってんだよ!!」

俺は思わず声を張り上げてしまった。
さすがの壱も驚いて目を丸くしている。

⏰:08/07/15 11:37 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#659 [東脂ヤ転
「・・・高校の時大和に告られて、俺は断ったんだよ。"他に好き奴が居るから"って」

外から大和の声が微かに聞こえる。
あんなに良い奴なのに今も昔も、俺は好きになれずにいた。

「そしたらその時大和がさ言ったんだよ」

『じゃあ・・・次に俺と会う時に紹介して下さいよ、明さんが好きなその人を。』


凄く真っ直ぐな瞳だった。何で俺はコイツを好きになれないんだろう、って自分にイラついた。

でも本当はもう遅かった。

その時既に俺は、圭吾と出逢ってしまっていたんだ。

⏰:08/07/15 11:52 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#660 [東脂ヤ転
「じゃあ紹介すれば良いじゃないですか。圭ちゃんを。」

しゃあしゃあと言ってのける壱に、俺は思わず蹴りを入れたくなった。

「出来るワケねぇだろ!!
そんなことしたら圭吾に俺の気持ちがバレ・・・」

「バレたって良いじゃないですか」

その時突然、壱の声色が変わった。
普段は俺にたてついて来ない壱なだけに、壱の様子がいつもと違うことに気付く。

⏰:08/07/15 11:59 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#661 [東脂ヤ転
「いつまで明さんはそうやって悩み続けるんですか?」

壱の黒い瞳から目が離せない。

「早くしないと圭吾さん捕られちゃいますよ?」

壱は静かにそう言った。俺はその言葉の意味が読み取れず、怪訝な表情をする。

「でもアイツは静が好きなんだよ!
そんな奴に、打ち明けたところで何も変わんねぇよ」

吐き捨てるようにそう言うと、自分の台詞に傷ついている自分が居た。

[俺って・・・マジで勝手だな]

また嫌な感情が湧き上がってくる。

⏰:08/07/15 12:10 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#662 [東脂ヤ転
「圭ちゃんはもう静さんのこと好きちゃいますよ?」

俺が俯いたその時、壱は俺の前にアイスコーヒーを置きながら言った。

「・・・・・・はぁ!?何で!?」

俺は余りに突然のことに驚いて勢い良く顔を上げる。
そんな俺の様子を見て、壱は少し可笑しそうに笑った。

⏰:08/07/15 21:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#663 [東脂ヤ転
「確か・・・静さんの今の恋人に全くかなう気がしないから、って言ってはりました」

大和の分のアイスコーヒーを作りながら、壱は微かに笑って言う。

「恋・・・人って・・・」

あの義弟のことか。
確かに、自分のことを"静兄"って呼ばせるくらいだ。
"紫穂"と同じか、それ以上に大事にしてるっていう証拠だよな。

[でもそれって・・・]

『フラれたぁ・・・』

突然、昨日の圭吾を思い出す。

⏰:08/07/16 08:53 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#664 [我輩は匿名である]
がんばって

>>1-100
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>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:08/07/16 09:02 📱:F903i 🆔:n4s5HYss


#665 [東脂ヤ転
リビングで大の字になって弱音を吐いていた圭吾。いつもに増して空元気だった圭吾。

アイツ・・・もしかして、

「圭ちゃん傷付いてるんちゃいます?」

その時また、俺の心を見透かすように壱が口を開いた。
そんな壱を俺は驚いたような表情(カオ)で見つめる。

「自分で静さんに対して"諦める"やなんて言葉を言った圭ちゃん、初めて見ましたもん」

壱の入れてくれたコーヒーの良い香りが店中に広がる。
それと同時に、俺の胸には違う感情が芽生える。
何で・・・気付いてやれなかったんだ・・・!

⏰:08/07/16 12:06 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#666 [東脂ヤ転
「俺・・・ちょっと出てくる・・・ッ」

考え出したら止まらなくなって俺は勢い良く席を立った。

「明さん」

2人分のコーヒー代を置いて店を出ようとした時、壱が俺を呼び止めた。

「圭ちゃんは"俺は寂しがり屋やから、誰かが側に居てくれなアカンのや"って言ってました」

カウンター越しに壱の声が俺のところまで響く。
「でも圭ちゃんは今、その"誰か"を見失ってて、間違った温もりを求めてるんです」

俺は黙って壱の言葉を噛み締める。

「明さん・・・圭ちゃんの側に居てあげて下さい」

壱は苦笑して俺に軽く頭を下げた。
本当、お節介焼きなところが圭吾にそっくりだ。

⏰:08/07/16 12:16 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#667 [東脂ヤ転
「・・・また来るな」

俺はそれだけ言うと壱に軽く手を振ってドアを開けた。
中とは違って生暖かい風が俺の頬を掠める。

[言葉にしなきゃわかんねぇよあの馬鹿・・・!!]

思い返せば返す程、圭吾がどれだけ落ち込んでいるのかが痛い程良くわかる。

高校生の時から静だけを見てきて、紫穂が離れていった時も言えば静を支えていたのは圭吾だった。

それなのにいつも静の中には圭吾じゃない"誰か"が居て。

[叶わない想いなんて、持ってるだけ不便だよな]

俺が圭吾を想っても叶わないように、圭吾は静への想いを叶わないのに捨てられないで居る。

何で俺達って、こんなに不器用なんだろう。

⏰:08/07/16 12:29 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#668 [東脂ヤ転
「先輩・・・ッ!?」

「!?」

突然袖を強く引かれ、俺は驚いて振り返る。
そこには息を切らして俺を見つめる大和が居た。
「どこ・・・ハァッ・・・行くんですか!?」

その瞳はあの日と同じ、逸らしたくなる程真っ直ぐな瞳だ。

「どこ・・・って・・・」

俺はそこまで言うと言葉に詰まる。
逃げ出したくなる程の日差しが射している。

「・・・明さんが好きな人の所ですか?」

先に沈黙を破ったのは、大和だった。
俺は何も応えられず大和を見つめる。

⏰:08/07/17 08:32 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#669 [東脂ヤ転
「俺は・・・今でも明さんが好きです」

大和は乱れた息を整えながらきっぱりそう言う。人生二度目に受ける告白はやっぱり慣れなくて、思わず顔が火照る。

でも、

「大和・・・俺は・・・」

「知ってます。明さんは俺を好きじゃないって。」

俺が言おうとした言葉を、遮るように大和は続ける。
無理矢理つくった大和の笑顔は、見ているこっちが悲しくなりそうなものだった。

⏰:08/07/17 17:57 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#670 [東脂ヤ転
「それでも良いんです。
それでも、俺が明さんを好きなことは変わらないんで。」

多くの通行人が通る、大通りの真ん中で受ける告白は、思わず心揺れるものだ。

[何で・・・こんな・・・]

何でこんな俺をそんなに好きだと言ってくれるんだろう。
こんなに優しい大和の側に居れば、もう辛くないだろうか。

圭吾を好きでたまらないこんな気持ちを忘れられるだろうか。

また生暖かい風が俺の頬を掠めた、その時。

「明・・・?」

聞き覚えのある声が後ろから俺を引き止める。


「・・・・・・圭吾・・・」

⏰:08/07/17 18:25 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#671 [東脂ヤ転
「こんなとこで何してんねん・・・ってアレ・・・お連れさん?」

何も知らない圭吾はいつもの脳天気な顔で近付いて来る。
あまりにタイミング良く本人が登場したせいで、俺は動揺を隠せない。

しかも大和はそんな俺をしっかりと見つめていた。

「聞いとる?明・・・」

「俺は明さんの後輩なんです、高校の。」

圭吾が俺の顔を覗き込もうとしたその時、大和が笑顔で間に入った。

⏰:08/07/17 18:54 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#672 [東脂ヤ転
「後輩!?なんやぁ〜俺はてっきり明の彼氏さんか何かかと思ったわぁ!!」

「!?」

ー・・どういう意味だ?

俺の中の何かが曇る。

「いやな、いっつも俺のことばっか構ってくれるんは有り難いけどな、明もそろそろ良い人見つけぇや〜?」

圭吾の様子が少しいつもと違うのに、今の俺にはそれを気にかける余裕がない。

そんな様子を大和はただ黙って見つめている。

⏰:08/07/18 09:33 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#673 [東脂ヤ転
「何が・・・言いたいんだよ?」

込み上がってくる感情を必死で抑えながら、俺は圭吾を睨む。

「だからぁ、明も俺なんかのことはほっといてえぇから、その後輩君みたいな可愛い彼氏さんをつくりぃな!
俺もそうするし」

いつになく饒舌な圭吾は次から次によく喋る。
それも、俺を傷付けるような言葉ばかりを選んでいるように。

「・・・・・・黙・・・れ」

早く彼氏をつくれだと?大和みたいな?
俺が・・・

俺が大和の告白をどんな気持ちで・・・・・・



どんな気持ちで受け止めていたかも知らないで。

⏰:08/07/18 09:55 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#674 [東脂ヤ転
どんなに想っても届かない想いがあるんだって、こんなカタチで知りたくなかった。

言いようのないこの感情は、俺の口から誤った言葉を紡ぐ。

「そうだよ・・・俺達付き合うんだ」

俺は大和の袖を掴んで圭吾に向き直る。

「・・・・・・・・・え?」

さすがの圭吾もこの言葉には驚きを隠せないようだ。

[そんなに俺から離れたいなら・・・お望み通りにしてやるよ、圭吾]

悲しさを通り越して、何故か酷く冷たい気持ちに俺は浸っていく。

⏰:08/07/18 10:59 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#675 [サクラ]
失礼します

>>1-200
>>201-400
>>401-600
>>601-800
>>801-1000

⏰:08/07/18 14:02 📱:F704i 🆔:EtTR0d1Q


#676 [東脂ヤ転
「・・・大和」

「ん?」

俺は大和の方を見ずに呼びかけた。

「さっきの告白、了承した。俺達付き合おう。」

いつもの倍以上、自分の声が冷たく響く。
俺の言葉を聞いた圭吾はさっきの倍以上、驚いた顔をする。

「・・・行きましょう、先輩」

その時突然、大和が俺の手を引いて歩きだした。
「・・・ッ!!明・・・ッ」

圭吾が俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
それでも俺は足を止めない。
大和の歩幅に添うように歩き続ける。

[これで・・・終わり・・・か]

そう思ったら突然頬が濡れた。
雨なんか降っていない晴天なのに、何故かどんどん頬は湿っていく。


雨じゃなく、涙のせいで。

⏰:08/07/19 21:45 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#677 [我輩は匿名である]
明のばかあぁぁ

⏰:08/07/19 23:12 📱:D705i 🆔:ud7pQXas


#678 []
同感

⏰:08/07/19 23:54 📱:F704i 🆔:NaboNxzc


#679 [東脂ヤ転
我が輩サン・サクラサンへ(^^)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3324/
***********





何かがおかしい。



俺が望んで、明を手放したハズなのに。


何でこんなにも胸が痛むんだ?


小さくなっていく明達を見つめながら、俺は此処から動けずにいる。


『大事なヤツなら、尚更手放すなよ』


その時ふ、とさっき静に言われた事を思い出す。

⏰:08/07/20 12:19 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#680 [東脂ヤ転
「・・・え?」

丁度たい焼きも食べ終わって、そろそろ静の家から帰ろうとしていた時、静が言った言葉だった。
「いつまでもフラフラしてると、後で後悔するって言ってるんだ」

珍しく俺に真面目に話しかけて来る静が何を言いたいのか、今の俺にはよく分かった。

「・・・明のことやろ?」

俺はため息混じりの声で静に訊く。

「珍しい・・・偉く今日は勘が鋭いな」

静は少し感心した様子で俺を見る。

⏰:08/07/20 12:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#681 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:08/07/20 16:06 📱:W54T 🆔:aiEF7rf2


#682 [東脂ヤ転
「嫌でも気付くわ!
イッチーにも同じようなこと言われたし・・・」

「イッチー?・・・って壱のことか?」

静は不思議そうに俺に訊き返し、俺はそれに大きく頷いた。

「珍しい奴と会ったんだな。その名前を聞くの久々だよ。」

静はそう言うと懐かしそうに微笑した。

そんな静に俺は一瞬見とれてしまう。
こういう時、不意に見せる静の笑顔は反則級に綺麗なんだ。

「で?壱に何て言われたんだよ?」

「え!?あぁ、そうやったな・・・」

静の声で俺は一気に現実に引き戻される。

⏰:08/07/20 21:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#683 [東脂ヤ転
「何か・・・今の俺は間違ってる・・・みたいな・・・っていうか明が・・・俺を好きや・・・みたいな?ハハッ!!そんなんガセやんなぁ!?」


俺はイッチーに言われたことを、飛び飛びではあるけれど何とか静に話した。
その間静は顔をしかめている。

「・・・え?お前は今頃、明の気持ちに気付いたのか?」

「・・・・・・やっぱほんまの話なんやぁぁぁぁ・・・」

静の反応を見て、俺の淡い期待が完全に消え去った。

⏰:08/07/20 23:35 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#684 [東脂ヤ転
「明に好かれるのがそんなに嫌なのか?」

俺のすぐ側に立つ静は不思議そうに尋ねる。
俺は軽く息をつくと、飲みかけのお茶を口に含む。

「いや・・・嫌とかじゃなくて、初耳だったから・・・驚いたというか・・・何と言うか・・・」

思うように言いたいことが整理出来ず、口を開くと途切れ途切れにしか言葉にならない。

そんな俺を見て静は苦笑する。

「明はお前が思っているよりもずっと前から、お前のことが好きだったんだよ」

静の言葉は一つ一つ胸に響く。その言葉の意味はよく分かるけれど、俺はまだ納得出来ずにいる。

[明・・・何で俺なんや?]

⏰:08/07/21 22:09 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#685 [東脂ヤ転
昔から静のことが好きだと口では言いながら、その欲を手頃な他人で晴らしていた。
自分でも時々こんな汚い"俺"が嫌になる。

それなのに俺の一番近くに居て、その汚れた部分も見飽きているハズの明が何で俺を好きになれるんだ?

「俺なんかを好きでいるやなんて・・・」

[お前は絶対、間違ってるわ]

俺は明を想い強くそう思った。

⏰:08/07/22 00:04 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#686 [東脂ヤ転
「・・・俺そろそろ帰るわ!」
残りのお茶を飲み干して俺は勢い良く席を立つ。これ以上明のことを咎められたら身が持たない。
「圭吾・・・」

玄関で靴ひもを結び直していると、静が壁に持たれながら俺に呼びかけた。

「ん?何〜?」

俺は静の方を見ずに返事を返す。

⏰:08/07/22 09:41 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#687 [東脂ヤ転
「昨日お前がさ俺に言った言葉・・・」

『そんなに大事なんやったら、もっとちゃんと捕まえとけや。泣かすなや』

一途に静を想う鳴ちゃんが余りに可愛くて、その想いに応え切れていない静が凄い無責任に見えた時、思わず口にした言葉だった。

長い間静を好きだった俺には、鳴ちゃんの気持ちが痛い程良く分かったから。

「あの言葉で、結構目が覚めた」

静は昨日のことを思い出しているのか、少し苦しそうに呟く。

⏰:08/07/23 08:48 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#688 [東脂ヤ転
「そりゃ良かったなぁ」

俺は初めて静に向かってそう言えた。
静が誰かを愛し、誰かに愛されてさえいれば今の俺には十分なように思えた。

「だからさ、圭吾」

そう言うと静は俺より先にドアを開ける。
生暖かい風と日差しが俺を討つ。

「お前は、お前の大事な奴を泣かすなよ」

静は俺の目を真っ直ぐ捉えて言う。

怒鳴るわけでも、攻めるわけでもない言葉だったけれど同時に、胸に響いて止まない言葉でもあった。

⏰:08/07/23 21:44 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#689 [東脂ヤ転
[それでも・・・・・・]




俺はまだ分からずにいる。


俺にとって"大事な奴"が明なのかどうか。


だから敢えて突き放してしまった。
今みたいに。



それなのに、明達の姿がどんどん小さくなっていくにつれ、俺の胸は締め付けられる。



ずっと見て見ぬ振りをしてきた想いを心は叫ぶ。



俺にとって・・・明はなんだ?

⏰:08/07/24 08:30 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#690 [東脂ヤ転
最初はしっかり者のルームシェアだとしか思ってなかった。
どんなに俺が無茶苦茶なことをしても、何だかんだ言って最後まで付き合ってくれる奴。

そんな明に俺はいつも甘えていた。
どんな時もコイツだけは側に居てくれるハズだって、変な思い込みがあった。

なのに、


明は今俺の側から離れて行こうとしている。

俺はまた、一人になるのか?

俺はまた、

大事な奴を手放そうとしているのか?

そう思ったのとほぼ同時に俺の足は動き始める。徐々に速度を上げ、必死に追いつこうと走り出す。


今どこに居るのか見当もつかない、明のもとへ。

⏰:08/07/25 08:21 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#691 [東脂ヤ転
「ー・・・先輩?」

大和に呼びかけられ、俺は初めて我に返る。
顔を上げると、隣に座る大和がいつもと変わらぬ笑顔で俺を見ていた。

「大丈夫だよ・・・大丈夫」

俺はそう言うとぎこちなく笑ってみせた。
目では大和を見ているのに、頭では圭吾のことをまだ想っている。

[懲りねぇ奴だな、俺も]

あんな言い方をされて、突き放されたのに相変わらず俺は圭吾のことが好きなんだと、嫌でも気付かされる。

⏰:08/07/25 08:29 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#692 [東脂ヤ転
圭吾の側から大和に手を引かれるまま離れ、俺達は今近くの公園に来ていた。

暫く気持ちの整理がつかずにいた俺の側に、黙っていてくれた大和はどれだけ俺に甘いんだ、と少し胸が軋んだ。

「先輩・・・俺は本当に明さんが好きですよ」

大和は静かにそれでもハッキリと俺を見て言う。
「こんな状況でこんなこと言うの、自分でも卑怯だと思います・・・でも!」

大和はそこまで言うと話すのを途中で止めた。
というより俺が大和の頬に触れ、話すのを止めさせた。

大和の気持ちはずっと前から十分知っていた。

俺はそれからいつも逃げていたんだ。

⏰:08/07/25 08:47 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#693 [東脂ヤ転
「俺も・・・お前が好きだよ」

「・・・・・・え!?」

突然の俺の返事に大和は驚いたのか変な声を上げる。
2人の間に生暖かい風が再び吹き始める。

「冗談とかは・・・ナシですよ?」

大和の頬に触れていた俺の手を、大和はそっと握った。
俺はこんな純粋な後輩に嘘を付こうとしている。
「冗談なんかじゃねぇよ。これでも真面目に言って・・・ッ」

そこまで言うと大和は俺を強く抱き締めた。

⏰:08/07/25 20:36 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#694 [東脂ヤ転
「嬉しい・・・ッ明さん・・・」

大和の肩は少し震えていて、その胸の鼓動は俺にまで伝わっていた。

[これで・・・良いんだよな]

大和のこの温かさは本物だ。俺はコイツを選んで良かったんだよ。

何度も何度もそんなことを自分に言いかけながら、俺は目を閉じた。


大和が俺の唇に触れる。

⏰:08/07/25 22:04 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#695 [るか]
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>701-800

⏰:08/07/25 23:47 📱:SH705i 🆔:tcXiwiqY


#696 [るか]
>>601-700

⏰:08/07/26 09:07 📱:SH705i 🆔:k4IRwc4I


#697 [東脂ヤ転
「ー・・・ッ・・・明!!」

その時、誰かが俺の名を呼び、凄い力で俺を引き上げた。
突然腕を引かれたせいで、俺は一瞬その場によろめく。

「好きでも無いヤツと・・・ッハァ・・・ッキスなんかすんな!!このどアホ!!」

聞き覚えのある声に怒鳴られて、俺は思わず泣きそうになる。

「圭・・・吾・・・?」

俺の腕を掴んで乱れる息を整えているのは、確かに圭吾だった。

⏰:08/07/26 12:24 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#698 [東脂ヤ転
「ハァッ・・・ほな・・・帰るで」

「・・・は!?」

まだ状況が掴めていない俺を差し置いて、圭吾は俺の手を引き歩き出す。
「ちょ・・・ッ・・・圭吾!!」

俺の言葉に反応する様子も無い圭吾はどんどん速度を上げていく。

横目で大和に目をやると酷く寂し気に、でも何故か呆れたように笑っているのが分かった。

そのうち公園からも離れて行き、黙々と歩き続ける圭吾に俺は引っ張られるカタチで歩いている。
その間俺は気が気じゃなかった。

[何で・・・追いかけて来たんだよ圭吾・・・]

⏰:08/07/26 12:36 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#699 [我輩は匿名である]
圭吾かっこよす

⏰:08/07/26 13:48 📱:D705i 🆔:jiq/OXbw


#700 [東脂ヤ転
>>583

「邪魔するで」

散々歩いてたどり着いた所はマンションではなく壱の店だった。

中に居た何人かの客は驚いて俺達を見る。
それに対して壱は何故か嬉しそうに笑っている。

「はいはい、奥の部屋をお使い下さい」

ワザとらしく改まった言い方をすると、壱は奥の部屋へと俺達を促した。

「イッチー・・・ありがとな」

圭吾が小さくそう壱に呟くと、壱は今までで一番の笑顔を俺達に向けた。
「明、こっち・・・

圭吾に軽く背を押された俺は、重い足を動かし部屋に入る。

⏰:08/07/27 12:29 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#701 [我輩は匿名である]
>>400-1000

すいません(^-^;

⏰:08/07/30 02:32 📱:P905i 🆔:☆☆☆


#702 [東脂ヤ転
「どういうつもりだよ!?」

部屋に入るなりそう言うと俺は乱暴にソファーに腰掛ける。
中途半端な優しさなんか望んじゃいない俺にとって、圭吾の行動は納得いかず俺は最高潮に苛立っていた。

「今更俺に構うな・・・ッん・・・ッ!!」

俺が圭吾を罵る言葉を続けようとしたその時、突然その口を圭吾は塞いだ。

「・・・ちょっと黙っとけ」

圭吾はいつになく鋭い目つきで俺を見つめる。
こんな状況でも俺の胸は高鳴っていた。

⏰:08/07/30 15:53 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#703 [東脂ヤ転
その勢いでソファーに押し倒されるカタチになり、俺は思わず圭吾から顔を背ける。

「好きでも無い奴とキスするなって言ったのはお前だろ・・・」

ガラにもなく泣きそうになっている自分を必死で抑えながら、俺は圭吾を睨む。

「俺はお前のことなんか好きじゃねぇぞ?」

「嘘つけ」

「本当だよ!!」

俺は身体を少し起こして圭吾にそう叫んだ。

何だか酷く腹が立つ。
俺ばっかコイツに調子狂わされて、俺ばっか声張り上げて。

何でいつも俺ばっか・・・こんな・・・。

「何でこんな好きなんやろな」

そう言って先に口を開いたのは俺ではなく、圭吾の方だった。

⏰:08/07/30 21:40 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#704 [東脂ヤ転
「・・・・・・は?」

俺の聞き違いかもしれない。今確かに圭吾が・・・

「せやから、俺はいつからこんなにお前が好きなんやろかって聞いてんの」

圭吾はもう一度俺を見つめながら呟く。
こんな近くで見つめられるのが初めてで、俺の顔が火照ってくるのが分かる。

「じょ・・・冗談言ってんじゃねぇぞ!!いつもいつもからかいやがって・・・」

そう言いながら俺は自分で涙目になっているのに気付いていた。

「冗談ちゃうわ」

圭吾はそんな俺の頬にそっと触れる。

「俺は・・・お前が好きや」

⏰:08/07/30 21:49 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#705 [我輩は匿名である]
失礼
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-600
>>601-850
>>851-1000

⏰:08/08/01 22:02 📱:D903i 🆔:☆☆☆


#706 [東脂ヤ転
>>704
「嘘・・・だ」

俺は頭の中が混乱しきっていて、何から訊けば良いのかわからずにいる。
「だって・・・お前は静が好きなんだろ・・・?」

目が霞んでいて圭吾を思うように捉えられない。
「静のことはもう関係ないで。俺にとってアイツはいつの間にか、良い友達になっとったんや。」

小さくそう尋ねた俺に圭吾はいつもの笑顔を向けると、優しく俺の髪を撫でた。

それだけでも泣き出しそうなのに、圭吾が俺を好きになる日が来たなんて。
まだ信じれなくて、俺の心はざわつく。

⏰:08/08/02 16:39 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#707 [東脂ヤ転
「っていうかなぁ・・・」

圭吾は溜め息混じりに呟くと、俺の腕を掴み体を引き上げた。

「俺は明が俺を好きやと思ってたから、お前に告ったんやで!?
じゃなきゃ、こんなハズいことやらへんわ!」

相変わらずバカ丸出しなことを大真面目に言う圭吾に、いつもはムカつくところなんだけど、今は全てが愛おしく思える。

[これだから恋愛は嫌なんだ・・・]

そんなことを考えながら俺は、圭吾にいちいち振り回される俺自身が物凄く嫌でもあり、同時に物凄く幸せだとも感じていた。

⏰:08/08/04 01:43 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#708 [東脂ヤ転
「俺のこと好きなんだったら・・・」

まだまともに圭吾の顔が見れない俺は、少し俯き加減で口を開く。

「もっとちゃんと・・・キスしろ」

思い切って言った言葉だった。

とんでもなく恥ずかしいことを自分で言っていることは分かっていた。
ただそれだけ俺は言葉だけじゃ不安なんだ。

[何でも良いからカタチで俺を安心させて・・・]

そう強く思った瞬間、圭吾が俺の顎を軽く持ち上げその唇を塞いだ。

⏰:08/08/04 14:02 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#709 [我輩は匿名である]
見てます
頑張って下さいっ 

⏰:08/08/04 16:06 📱:PC 🆔:☆☆☆


#710 [東脂ヤ転
>>583
「んん・・・ッ・・・ふ・・・ぅッ・・・ハァ・・・ッ!!」

さっきより深く互いの唇が重なり合い、慣れない俺は上手く呼吸が出来ないのと、激し過ぎる圭吾のキスに身体が熱くなる。

「ッあ・・・ッ・・・け・・・ご・・・んぁ・・・ッ!!」

そんな中必死で途切れ途切れに圭吾の名前を呼ぶと、ようやく少し唇が離された。

「クスッ・・・お前のリクエストに応えだけやのに、もう真っ赤になってるやん」

肩で息をする俺を愉しそうに見つめながら、圭吾はまた軽くキスをした。
「長いのと軽いキスいっぱいするの、どっちがえぇ?」

イタズラっぽく笑う圭吾のその余裕にムカついて俺は頭を叩いてやった。

⏰:08/08/05 00:33 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#711 [東脂ヤ転
「照れてる明もなかなかやなぁ〜♪」

叩いたその手を掴むと、圭吾は俺の身体を引き寄せそのまま強く抱き締められる。

初めてこんな近くで圭吾の体温を感じ、俺の鼓動は速度を増す。

「明・・・」

その時突然小さく名前を呼ばれ、思わず圭吾を掴む手に力が入る。

「俺まだお前から気持ち聞けてないんやけど・・・お前はほんまに、俺が好きなんか・・・?」

さっきより何故か不安気に聞こえる圭吾の声は、酷く優しくて俺の脳まで刺激する。

⏰:08/08/05 12:41 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#712 [東脂ヤ転
「当たり前だろ・・・」

圭吾の胸の音を聞きながら俺は少し笑って口を開く。

「どれだけお前に片思いしてたと思ってんだ?」

この時初めて俺は顔を上げ、圭吾を真っ直ぐ見つめた。

「圭吾が俺を想うよりずっと、俺の方が圭吾を好きだっていう自信があるんだよ、バーカ」

そこまで言うと俺は何故か嬉しくて、自然と笑顔がこぼれた。

「・・・初めて・・・笑った」

そんな俺を前に圭吾もまた幸せそうに笑う。

⏰:08/08/05 21:40 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#713 [東脂ヤ転
「何か・・・好きな人が俺を好きで居てくれるって、こんなに嬉しいんやな」

圭吾は俺の頬に優しく触れながらそう言う。
俺にとって圭吾がどれだけ大切な存在か、この手の温もりがその答えをくれたような気がした。

「俺を散々振り回しやがって・・・これから覚悟しとけよ?」

俺は気が抜けたように圭吾にもたれかかると、また少し素直じゃない言葉を口にする。

「明はほんま素直ちゃうなぁ」

そんな俺をゆっくり押し倒しながら圭吾が笑う。

⏰:08/08/05 21:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#714 [東脂ヤ転
「素直に"一緒におって♪"って言ったらえぇのに」
圭吾はまたからかうように言うと俺に優しく口づけた。

「・・・死んでも言わねぇ」

俺は小さく呟いて圭吾の首元に腕を回す。
飽きぬ程互いの唇を確かめ合いながら、飽きぬ程互いの想いを重ねていく。

そして声に出せない想いを胸で強く思う。

"一生一緒にいて欲しい"

声に出して言える日がいつ来るのかは分からないけれど、いつか必ず君に伝えたい。

こんなにも君を愛していると。
こんなにも君を愛していられる俺は誰よりも、誰よりも幸せだと。


いつか伝えられたら良いのに・・・。

⏰:08/08/05 21:57 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#715 [東脂ヤ転
第D話無事終了致しました!!今回は明×圭吾編☆というコトもあって、混乱させてしまった部分もあったことと思いますッ!

そんな中毎回コメントを残していって下さる皆様には本当に感謝Aです!!(泣)ありがとうございます!!

感想版では引き続き、
こんなキャラを出して!&こんな話を書いて!と言ったリクエストがありましたら随時受け付けておりまッす☆(^O^)/

また本編に作者はコメントはせず小説の更新のみ行いますので、コメントは感想版にお願いします♪

引き続き本編を末永くよろしくお願いします!!!!

⏰:08/08/05 22:06 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#716 [智魅]
 
あげます∩^ω^∩
 

⏰:08/08/07 00:55 📱:W47T 🆔:avKymb/w


#717 [東脂ヤ転
智魅サン★

アゲありがとうございますッ☆(・∀・)ノシ

⏰:08/08/07 08:01 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#718 [東脂ヤ転
大切なモノは

無くしてから気付くことが多いって、よく言うけれど

大切なモノであればある程

無くしてしまう前に

大切だ、と気付きたいんだ


:)危ナイ兄弟愛ノカタチーE

⏰:08/08/07 08:08 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#719 [東脂ヤ転
「いらっしゃいませ!」

ドアのベルが鳴るのと同時に俺は笑顔で声をかける。見るとお客は2人組のようだ。

「予約とかしてないんですけど・・・」

1人の女性が不安げに尋ねてきた。俺は更に笑顔で中へと案内する。

「カウンター席でもよろしければ空いておりますが、よろしいですか?」

その言葉を聞いた途端、2人共嬉しそうに頷いた。

そりゃあそうだ。
カウンター席なら知る人ぞ知る、この店で1番人気の静兄の真ん前に座ることが出来るのだ。

それを承知で案内出来たってことは、何だか妙にこの仕事に慣れてきた証拠でもあった。

⏰:08/08/07 08:21 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#720 [東脂ヤ転
「2名様カウンター席へ」

俺は瞬さんに声を掛けそのまま案内して貰う。
その間に2人分の水と、メニューを取りに行く為だ。

「良いテンポで働いとるなぁ♪」

コップを手に取った時、違うお客の注文を通しに来ていた圭吾さんが、笑顔で話し掛けてくれた。
「全然ダメですよ!
まだまだ出来ないことだらけですし」

俺は勢い良く首を振るとお盆に水の入ったコップを乗せていく。

「いやほんまに!
その笑顔なんか無愛想な明と比べたらめっちゃ可愛・・・イタッ!?」

いつものノリで圭吾さんが笑って言ったその時、何かが凄いスピードで圭吾さんの額に直撃した。

⏰:08/08/09 14:33 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#721 [東脂ヤ転
「誰が無愛想だって?」

見るとさっきまでパスタを作っていたはずの明さんが、凄い形相(ギョウソウ)でこっちを見ている。

どうやら圭吾さんの額を直撃したのは、明さんが使っていた人参の残りらしい。

「おーい、食べ物と圭吾は粗末にしたらアカンって習わんかったんかぁ〜?」

「お前のそのテンションは深夜に不向きなんだよ・・・って!抱きつくな!」

明さんは顔を真っ赤にさせて圭吾さんの腕から逃げようとしている。

俺の気のせいでなければ、最近2人の雰囲気がずいぶん穏やかになった気がする。

何というか・・・まるで恋人同士のようなじゃれあい方をしているのだ。

⏰:08/08/09 16:31 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#722 [匿名さん]
月花さん
第5話の安価お願いします

⏰:08/08/09 20:14 📱:D704i 🆔:4UUqsA/g


#723 [東脂ヤ転
我が輩サン★
どうぞ♪(^^)

第D話☆彡
>>585-655
>>656-714

第E話もよろしくお願いします!!m(u_u)m
あと出来ればコメントは感想版にお願いします(・ω・)

⏰:08/08/09 22:28 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#724 [東脂ヤ転
>>721
「おい義弟!」

「・・・へ?あぁはいッ!!」

考え事をしていたせいか突然明さんに呼ばれ、変な声をあげてしまった。

「その水とメニュー、早く運んで来いよ。いつまで客を待たせる気だ?」

「・・・スミマセン・・・」

相変わらず俺には厳しい明さんに軽く叱られた俺は、少しヘコミつつゆっくりお盆を持ち上げる。

「遅かったな」

カウンター越しに水とメニューをお客の前に置いていると、静兄が小さく俺に耳打ちした。

「ちょっと明さんに叱られてただけです〜」

俺はすねたような顔をすると嫌みっぽくそう言った。

⏰:08/08/10 12:30 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#725 [東脂ヤ転
「クスッ・・・やっぱりお前疲れてるんだよ。明日のこともあるし、今日は先に帰って良いよ。」

そう言うと、静兄は俺の背中を軽くさする。
静兄に触れられると何故か凄く安心する。
でも・・・。

「・・・・・・明日なんか、来なかったら良いのに」

俺は溜め息混じりに呟く。端(ハタ)から見たら俺の言葉の意味が分からないだろうが、静兄は困ったように笑うと俺の頭を優しく撫でた。

「鳴なら大丈夫だよ」

顔を上げると静兄はいつもの優しい笑顔を俺に向けてくれた。
俺はぎこちなく笑うと、静兄の手を小さく握ってその場を後にした。

⏰:08/08/10 21:57 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#726 [我輩は匿名である]
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-600
>>601-750
>>751-900
>>901-1000

⏰:08/08/10 23:18 📱:D903iTV 🆔:☆☆☆


#727 [東脂ヤ転
一週間前。
俺はある事を決意した。

「彩華ちゃんと・・・別れる?」

さすがの静兄も驚いたようにそう聞き返した。
俺は黙って頷く。

「このままズルズル付き合ってても、俺はもう彩華を友達としてしか見れないし・・・」

口に出してみて改めて実感する。俺はもう彩華を前のように見れていないんだ。
この現実はいつかきっと、

「一緒に居ても、彩華を傷付けるだけだから」

俺はそういうと少し俯いた。ずっと考えていたことだったとは言え、何度考え直しても答えは同じだった。

その度自分が酷く鬱陶しくて、何て俺は勝手なんだろうって自分を責めた。

⏰:08/08/11 12:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#728 [東脂ヤ転
そんな俺を黙って見つめながら静兄は俺の隣に腰を下ろす。
静兄のベッドは俺のよりもずっと大きくて、2人が腰かけてもまだ広く感じた。

「何でそのことを・・・わざわざ俺に言ったんだ?」


そう言われて突然俺は不安になり、チラッと静兄の表情(カオ)を見た。

静兄はいつもと変わらない微笑みを浮かべている。

⏰:08/08/11 17:09 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#729 [東脂ヤ転
「彩華と別れようとちゃんと考え出したのは、静兄の側にちゃんと居たいって思ったからで・・・だから、その・・・報告っていうか・・・」

言いたいことが上手くまとまらなくて、俺は途切れ途切れに想いを伝えようとする。

その間ずっと間近で静兄に見つめられているせいで、俺の顔はだんだん赤くなっていく。

「クスッ・・・鳴、赤くなり過ぎ」

「・・・ッ!!うるさ・・・んぁ・・・ッ!」

静兄に冗談っぽくそう言われて振り向いた瞬間、唐突に唇を重ねられた。

相変わらず奪うような静兄のキスは、俺の思考回路を惑わす甘さだ。

⏰:08/08/12 21:43 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#730 [智魅]
 
あげます(・∀・)!!
 

⏰:08/08/15 15:31 📱:W47T 🆔:9NqmIH5s


#731 [なみ]
あげテ

⏰:08/08/16 01:18 📱:W61T 🆔:6Z/nZa9U


#732 [なみ]
またまたあげエ

⏰:08/08/16 09:07 📱:W61T 🆔:6Z/nZa9U


#733 [東脂ヤ転
>>730-732
アゲありがとうございます!
***********>>729
「鳴・・・ごめんな?」

突然のキスを終えゆっくりと唇を離した静兄の口から出た言葉は、俺からしたら意外な言葉だった。


「何で静兄が謝るんだよ?」

俺は不思議そうに静兄の顔を覗き込む。
そんな俺を見て静兄はまた苦笑する。

「普通だったお前をおかしくさせたのは、俺だからだよ」

少し苦し気にそう言うと静兄は俺の手を握った。

⏰:08/08/17 00:44 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#734 [東脂ヤ転
「鳴は俺と違って、彩華ちゃんと普通に付き合ってたのにな」

手から伝わる静兄の体温が妙に切なくて、俺は思わず静兄を抱き締めた。

「俺は・・・静兄を好きになれて嬉しいんだよ・・・!!
それを"オカシイ"なんて言葉で片付けないで・・・」

俺から静兄を抱き締めるなんて、何かいつもと逆で不思議な感じがした。

それでも今はこうしないといけない気がしたんだ。

俺は静兄を好きになったことを後悔なんかしてないって、ちゃんと伝えなきゃだめだって身体が叫んだから。

⏰:08/08/17 10:43 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#735 [東脂ヤ転
「・・・クスッ・・・随分大胆な告白だな?」

静兄は小さく笑うとその腕を俺の腰に絡める。
見ると既にいつもの静兄に戻っていた。

「もしかして・・・またからかった?」

「おかげで、また可愛い鳴が見れたよ」

その台詞を聞くのと同時に俺は静兄に向かって、近くにあった枕を投げつけた。

「今どき枕投げか?」

「・・・〜ッ!!ウルサぁぁあい!!!!」

恥ずかしいやら何やら、グチャグチャの感情でいっぱいになった俺は無意味に枕を投げ続けた。

⏰:08/08/17 11:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#736 [まむ]
一話カラ…読まして、
もらぃましたァァ
頑張って、続けて下さい。

あげ
楽しみです。

⏰:08/08/17 19:47 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#737 [東脂ヤ転
>>まむサン(>ω<)ノシ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3324/
***********「あれ・・・鳴さんもう上がり?」

突然後ろから声をかけられ俺は驚いて振り向く。見ると私服姿の瞬さんが立っていた。

どうやら俺は、更衣室で着替えながら考えごとにふけっていたらしい。

「うん、今日はもう帰る・・・って瞬さんは今から!?」

「"さん"付けじゃなくて良いって言ってるのに〜鳴さんの方が年上なんだからさぁ」

瞬さんは可笑しそうにそう言うとロッカーの鍵を開ける。
黒を基調とした私服の瞬さんは、男の俺でも見とれてしまう程綺麗だった。

⏰:08/08/17 21:36 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#738 [東脂ヤ転
>>まむサン(>ω<)ノシ

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3324/
***********
「あれ・・・鳴さんもう上がり?」

突然後ろから声をかけられ俺は驚いて振り向く。見ると私服姿の瞬さんが立っていた。
どうやら俺は、更衣室で着替えながら考えごとにふけっていたらしい。

「うん、今日はもう帰る・・・って瞬さんは今から!?」

「"さん"付けじゃなくて良いって言ってるのに〜鳴さんの方が年上なんだからさぁ」

瞬さんは可笑しそうにそう言うとロッカーの鍵を開ける。

⏰:08/08/17 21:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#739 [なみ]
あげテ

⏰:08/08/18 13:41 📱:W61T 🆔:5qiqjRHE


#740 [あい]
一気に読みました
めちゃおもろいっ
頑張ってください

⏰:08/08/19 11:23 📱:SH903iTV 🆔:rL7gXcKc


#741 [東脂ヤ転
>>なみサン&あいサン(>ω<)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3324/
***********「じゃあ瞬さんも俺のこと呼び捨てで良いよ!
バイト上では俺の方が後輩だし」

俺は何気なくそう言うとすごい視線を感じて顔を上げる。
見ると瞬さんが何故か嬉しそうに俺を見つめていた。

「なんか呼び捨てで呼び合うのって・・・トモダチみたいで良いね」

瞬さんのその何とも言えない微笑みを見た瞬間、俺は何故か胸が軋んだ。

⏰:08/08/19 12:29 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#742 [東脂ヤ転
「じゃあこれからは"鳴"って呼ぶね」

瞬さんはそう言いながら着ていたシャツを脱ぎとる。俺はそれを何気なく見ていると、瞬さんの身体にいくつかの赤い痕があるのが見えた。

[もしかして・・・キスマーク!?]

そう思ったら急に顔が熱くなってきて思わず顔を逸らした。

瞬さんの白い肌にその赤い痕はとても目立って見えるのに、それをあまり隠そうともしない瞬さんが、俺には不思議に思えた。

⏰:08/08/19 12:56 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#743 [東脂ヤ転
「あ・・・」

「・・・へ!?」

その時突然、瞬さんが俺の方に振り返る。
一方の俺は、ジロジロ見ていたことを何か言われるのではないかと、ソワソワする。

「やっぱ・・・"鳴ちゃん"って呼ぶことにするよ」

瞬さんは俺をジッと見つめると、真剣な表情でそう言った。

「・・・・・・は?」

正直どっちでも良いことを大真面目に言う瞬さんを前に、俺は急に気が抜ける。

⏰:08/08/20 18:35 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#744 [なみ]
更新待ってます

⏰:08/08/21 09:42 📱:W61T 🆔:GBzFHeGY


#745 [我輩は匿名である]
頑張ってね

⏰:08/08/21 23:56 📱:P905i 🆔:☆☆☆


#746 [東脂ヤ転
>>743
「だって呼び捨てなんかにしたら、多分静さんに怒られるもんね〜」

瞬さんは少し口を尖らしてそう言うとまた無邪気に笑った。

こんなに近くで話してみて気付いたけれど、瞬さんはやっぱりかなりの美人さんだ。
黒毛交じりの金髪も白い肌も黒い瞳も、何故か一度見ると強烈な印象を与える。

[こんな人が近くに居て、よく静兄は欲情しないな…]

しなやかな瞬さんの手足を見ながら、俺はしみじみとそんな事を思った。

⏰:08/08/23 12:24 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#747 [東脂ヤ転
「鳴ちゃんは良いよなぁ
静さんに愛されてて」

その時、唐突過ぎる瞬さんの言葉に俺は不信な表情を浮かべた。
その俺を見つめる瞬さんの瞳は暗く、読み取ることが出来ない。

「俺もさ、誰かにちゃんと愛されてみたいな」

瞬さんはそう言うとロッカーの扉をそっと閉める。

「まぁその為には俺がまず、誰かをちゃんと愛さなきゃダメだよね…ッ!それじゃ、お疲れ様ぁ」

颯爽と部屋を出て行く瞬さんを俺はただ見つめることしか出来なかった。

瞬さんが抱えている"何か"が、俺にはまだ掴みきれていなくて。

⏰:08/08/23 21:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#748 [ゆぅ]
下がってたのであげときますッヾ(。・ω・。)ノ

⏰:08/08/26 12:32 📱:D705i 🆔:89ZRpxko


#749 [東脂ヤ転
>>747
「………身体、重…」

眠気を振り払うよう、だるさの残る身体を無理矢理起こした俺は、近くのカーテンをサッと引いた。

天気は曇り。今にも大雨が降ってきそうな空模様だ。

そんな空を見ながらふ、と初めて彩華を家に入れた日を思い出す。
その日も丁度こんな曇り空で、突然の雨に慌ててこの家に入れたんだった。

そしてその日は、俺が静兄を"好きだ"と気付いた日でもあった。

⏰:08/08/27 21:43 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#750 [東脂ヤ転
昨日はあれから瞬さんのことも気になったけれど、静兄に促されるまま俺は家に帰った。

久々に頑張って働いたせいか部屋に入った途端力が抜けて来て、そのまま倒れ込むように寝てしまったらしい。
目が覚めた時には日付が変わっていて、今に至る。

「ハァ…」

俺は窓を開けて小さな溜め息をついた。
生暖かい風が俺の頬を撫でる。

こんな時俺は時間の流れの速さを痛感する。
彩華に本当の気持ちを伝えよう、と決めたのは随分前のことなのにそれから流れた時間は驚く程、残酷な程速かった。

⏰:08/08/28 10:27 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#751 [かえで]
 
あげます∩^ω^∩
 

⏰:08/08/30 16:27 📱:W47T 🆔:SJQ60GDg


#752 [東脂ヤ転
かえでサン★(^ω^)ノシ☆
***********「……鳴?」

窓縁にもたれかかっていると、小さなノック音と一緒に静兄の呼ぶ声がした。

「はーい、どうぞ」

俺はその声に応えるとまた空を見上げる。
ガチャッという音と共に、静兄が部屋に入る音が聞こえた。

「空に…」

静兄が小さく呟きながら後ろから俺を引き寄せる。

「何か見えるの?」

耳元で囁かれただけなのに俺の胸は早鐘を打ち始める。

「こんな曇り空じゃさ、何にも見えないよ」

首元の静兄の腕を掴みながら俺は溜め息をつく。

⏰:08/08/30 20:30 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#753 [東脂ヤ転
ふと時計に目をやるとまだ朝の7時。

静兄は部屋着に着替えているものの、まだ一睡もしていないように見える。

「静兄…寝なくて良いの?」

俺は上を見上げるようなカタチで、静兄を見つめる。

「鳴が学校に行くまで、起きてるから」

俺の頬にかかった髪を払いながら静兄は笑った。どこから見ても綺麗なその面立ちは、俺をいつも不安にさせる。

「眠くないの?」

少し視線を逸らしてそう言うと、静兄はごく自然に上から軽くキスをした。

「…一緒に、寝てくれるの?」

意地悪っぽく笑う静兄はそう言うと、俺の額に口づける。

⏰:08/09/02 00:24 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#754 [ひこ]
メッチャ面白い(´∀`)
主サンファイトです!

⏰:08/09/02 07:38 📱:SO903iTV 🆔:☆☆☆


#755 [東脂ヤ転
ひこCサン★(o>v<)ノシ☆
***********「…ッ!!
ぜってぇー寝ない!!」

またからかわれたのが恥ずかしかったのと、突然のキスに戸惑って俺は頬を紅潮させる。

そんな俺を見ながら静兄はまた楽し気に微笑む。

「クスッ…朝食出来てるから一緒に食べよ」

静兄は俺の髪をなでると先に部屋を出た。
俺はこの笑顔に弱い。
静兄の笑顔を見ると何でも許してしまいそうになる。

これがきっと本当に好きだってことなんだろう。

⏰:08/09/02 08:46 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#756 [東脂ヤ転
階段を降りるとコーヒーの良い香りがする。

この家に来る前まで朝食は和食派だったのだが、毎朝静兄が煎れてくれるコーヒーが病みつきになり、今では俺も朝は洋食派になった。

「あ、またコーヒー豆変えた?」

何となくそんな気がした俺が呟いたのに対し、静兄は嬉しそうに頷いた。

「気に入ってる店の店長がさ、新しく入った豆をよく分けてくれるんだよ」

静兄はそう言うと慣れた手つきで俺のカップにコーヒーを煎れる。
煎れた後はいつも何も言って無いのに、砂糖とミルクを俺の好みの量に調節してくれる。

こんなたわいもない、静兄と一緒に過ごす朝が俺は大好きだ。

⏰:08/09/05 01:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#757 [東脂ヤ転
「今度その店に連れて行ってやるよ。俺の後輩が経営しているカフェなんだ。」

「…へぇ」

静兄の煎れたコーヒーを飲みながら、俺は違うことを考えていた。

[今日…何て言って彩華に切り出そう…]

お気に入りのカップをなぞりながら、俺は様々な言葉を考える。

受験勉強が忙しくて。
バイトが楽しくて。
やるべきことが出来て。他に……


他に、好きな人が出来て。

本当の理由はこれだけど、言えるはずが無い。
彩華に向かって、「俺は静兄を好きになったんだ」なんて言える自信が全く無いんだ。

だんだん身体が重くなってきた俺は、思わず溜め息をついた。

⏰:08/09/05 13:12 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#758 [東脂ヤ転
「…そんなに心配?」

その時静兄の声で我に返った俺は顔を上げる。

「俺の話聞いてなかったろ?」

静兄はそう言って意地悪く笑う。
俺はその時初めて、静兄の話をちっとも聞いていなかったことに気付く。
「ごめん…静兄」

「そんなことで謝らなくて良いよ」

話を聞いてなかったことだけではなく、彩華に静兄を好きだと言う勇気が無いことに俺は凄く謝りたかった。

きっと静兄が逆の立場だったら、静兄は俺を好きだと言ってくれると思うから。

⏰:08/09/06 12:44 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#759 [東脂ヤ転
「…じゃあ行ってきます」

制靴に履き替えた俺は、玄関まで見送りに来てくれた静兄の方へ向き直る。

「気をつけてな」

静兄はそう言って微笑むと俺の額に軽くキスをした。

「新婚気分だろ?」

静兄の不意打ちのキスにまだ慣れなくて、顔を赤くしてる俺を見ながら静兄は笑う。

「だから…からかうなっての!!」

静兄のその余裕に腹が立ったけど、気を和らげようと静兄がしてくれているのがよく分かった。

「行ってきます」

俺は笑顔でそう言うと、優しい静兄に手を振って家を出た。

⏰:08/09/07 12:39 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#760 [東脂ヤ転
「めーいー!!」

学校に着いてすぐ、大声で名前を呼ばれた俺は立ち止まって振り返る。

「おはよ!今日はヤケに早いじゃん!!」

声を掛けてきたのは幼なじみの北原直樹だ。
まぁ振り返らなくても、俺のことを下の名前で呼ぶ奴はコイツ以外居ないから、すぐ気付いたんだけど。

⏰:08/09/07 17:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#761 [東脂ヤ転
「いや、今日はちょっと彩華に用事があってさ…」

「ふぅん…彼女が居る人は朝から忙しいんだねぇ〜羨まし!!」

北原はそう言って俺の肩を叩くと先に教室へ入って行った。

彩華の教室は俺等の隣。呼び出して"振る"なんて、本当だったら絶対やりたくない程気が重い。

しかも北原は彩華とも仲が良いので必ずいつかはこの事がバレてしまう。

もともと彩華の肩を持っていた北原がその事を知った時、どんな反応をするか…。
そんなことを考えたら益々胃が痛んだ。

⏰:08/09/07 21:46 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#762 [東脂ヤ転
「あのさ、林彩華居る?」

何とか教室の前まで足を動かした俺は、入り口の1番近くに居た女子に声を掛けた。

「ちょっと待ってね…
彩華ー!彼氏さんだよ!」

そんな大声で呼ばなくても良いのにそんな呼び出し方をしたもんだから、彩華は嬉しそうに教室の奥から走って来る。

「珍しいね!こんな朝早くから呼び出しなんて」


嬉しそうに笑ってそう言う彩華を見て俺の胸は更に軋んだ。

⏰:08/09/07 22:56 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#763 [東脂ヤ転
「ちょっと彩華に話があってさ…今大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!あ、大事な話だったら屋上行かない?ここじゃ何だし」

俺の真剣な表情が伝わったのか珍しく気を利かせた彩華は、俺の手を引いて屋上につながる階段へと向かう。

こういうことは早く伝えなくちゃいけない、そう考えた俺はあえて朝一に言おうと決めていた。

その割に未だ何て言うかも決めていないんだけど、俺の中ではとにかく早く伝えることが先決だった。

階段を上る彩華の足は軽く、俺の考えていることなど微塵(ミジン)も気が付いていないようだ。

⏰:08/09/08 10:05 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#764 [東脂ヤ転
「ふわぁ…っ風が気持ち良いね鳴ちゃん!」

屋上に着くと夏の朝に相応しい涼し気な風が吹いていた。
それに合わせて彩華の茶がかかった髪が揺れる。
「で?話って何?」

彩華は楽し気に訊く。
きっと良いことを聞かされる、と思っているんだろう。

[彩華…ごめんな]

俺は小さく胸でそう呟くとゆっくりと口を開いた。

「彩華……俺達、別れよう」

「………え…?」

2人の間にさっきとは違う、裂くような強い風が吹き始める。

⏰:08/09/08 12:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#765 [東脂ヤ転
「……何で?」

少しの沈黙の後、彩華は俯いて言った。
さっきまであんなに笑顔だったのが嘘のように、その笑みが強張ってゆく。

「ごめん彩華…俺はもうお前を友達としてしか見れないんだ」

そんな彩華を前に、何とか俺の口から出た言葉は酷く冷たい台詞だった。
「何で…何でそんなこと急に言うの!?意味分かんないよ…!」

彩華の声が少しずつ震え出す。顔を上げた彩華の頬には、何度も涙が零れ落ちる。

⏰:08/09/08 17:42 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#766 [東脂ヤ転
[俺は…こんなにも彩華を傷付けてる…]

何度も何度も涙をこぼす彩華を見て、俺は改めて自身に問いかける。

こんなにも誰かを傷付けてまで、俺は静兄と一緒になって良いのか…?

"誰かの不幸の上に幸せなど築くことは出来ない"
良く耳にする言葉だけど、俺は昔誰かからこの言葉を聞かされたんだ。

そして今実際に俺は彩華を苦しめていて、彩華を不幸にしようとしている。

そこまでして、俺が静兄と一緒になる意味は…意味は在るんだろうか?

何も言えずただ立ち尽くしている俺を、彩華は静かに見ていた。

⏰:08/09/13 00:56 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#767 [東脂ヤ転
「…鳴ちゃん…さぁ」

暫く続いた沈黙の後、先に口を開いたのは彩華の方だった。
不意に名前を呼ばれ、俺はまた視線を彩華に戻す。

「他に好きな人が出来たんでしょ?」

「………え?」

さっき泣いていた時のような表情とは打って変わって、彩華のは眼は真っ直ぐ俺を捉えている。

それとは逆に俺は眼を反らしたくて仕様がなかった。

「そうなんでしょ?」

少しずつ追いつめるように彩華は俺に近付く。
それでも俺は応えられない。頷いたら彩華はきっと、それが誰なのかを知りたがるだろう。

その名を俺が口にするワケにはいかないんだ。

⏰:08/09/15 16:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#768 [東脂ヤ転
ー…キーンコーンカーン…

「!!」

その時、タイミングを見計らったかのように始業ベルが鳴り響いた。

俺はその音を聞きながら内心ホッとしていた。
これで何とか時間稼ぎに出来そうだ。

「チャイム鳴ったしさ…話はまた放課後にしない?その時全部話すから」

「……分かった」

さすがの彩華も授業をサボってまで問い詰めようとは思っていないようで、俺の言葉を聞くとすぐにドアの方へと駆けだした。

⏰:08/09/15 23:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#769 [東脂ヤ転
ドアノブに手を掛けた彩華はドアを開けたかと思うと、くるっとこっちを振り返った。

「鳴ちゃん…正直な理由を聞かせてくれないならあたし、別れる気は無いからね」

もう一度俺の眼をしっかり見つめそう断言すると、彩華は急ぎ足で階段を下りて行った。

「正直な理由…か」

俺は小さく呟くと溜め息をついた。
彩華には悪いがそれだけは絶対に出来ない。
それっぽい理由を造り上げるしか方法は無さそうだ。

空を見上げると相変わらずの曇り空。
いっそのこと大雨でも降ってくれれば良いのに、なんて思いながら俺も屋上を後にする。

⏰:08/09/15 23:25 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#770 [東脂ヤ転
男同士の恋愛が世間でどういう目で見られているのか、どういう風に思われているのか、俺は充分分かっているつもりだ。

だからこそ彩華に本当の事なんか言わない。事実を伝えることこそ酷な話だと思う。

だってそうだろ?
「俺は兄貴を好きになったんだ、お前以上に。
だから別れてくれ。」
なんて言って、すんなり受け入れられる女子高生が居るか?

俺の思う"一般的な女子高生"はきっと理解出来ないだろう。
そして彩華は、その"一般的な女子高生"だ。

⏰:08/09/15 23:29 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#771 [東脂ヤ転
本当の理由なんて…伝えたところできっと、今以上に傷付けるだけだ。

それなら嘘の理由でも彩華を傷付けずに別れるのが一番良いに決まっている。それに今の俺には、最後にそれ位しかしてやれない。

そう自分自身に言い聞かせながら、俺はゆっくりと階段を下りて行く。

[もうホームルーム始まってるよなぁ…]

そんなことをぼんやり考えながら廊下を歩いていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「おーい!めーいーっ」

俺の名前を呼び捨てにする奴はこの学校で一人しか居ない。

⏰:08/09/15 23:39 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#772 [東脂ヤ転
「もうホームルーム始まってんじゃないの?北原」

俺は振り返って立ち止まると、走って来る北原に向かって尋ねた。
北原は上がる息を少し整えてニッと笑って見せる。

「多分な。でも鳴も一緒ならお叱りも受けずに済むし!担任、鳴には甘いからなぁ〜」

北原のいつもの脳天気な明るさが今日はヤケに堪える。
きっと互いに温度差があるからだろう。

俺は彩華とのことで頭が一杯で北原の話が何一つ入って来なかった。

⏰:08/09/16 16:50 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#773 [東脂ヤ転
「っていうかお前さぁ、林と別れたんじゃないよな?」

「……は!?」

話の流れから聞き流そうとした時、突然北原は思いがけない事を訊いて来た。
あまりに直球の質問に、は動揺を隠しきれずに居た。

「やっぱ図星かよ〜。
さっき林とすれ違った時目が赤かったから、もしかしてとは思ったんだけどな」

それだけで別れ話をしていたと判るなんて、意外と北原は勘が鋭かったんだと驚かされる。

[絶対反対されるだろうな…]

俺は次に北原からどんな罵声が飛ぶのか少し身を構えた。

⏰:08/09/16 22:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#774 [東脂ヤ転
しかし北原は意外にも晴れ晴れとした表情(カオ)で「そっか」とだけ呟くと黙って歩き出した。

「そっか…って、お前が言いたいのそれだけ?」

彩華と俺の仲をあれだけ取り持っていた北原だ。相談も無しに別れようとしている事を怒るなり、反対するなりあっても良いと思うんだけど…。

俺の方はそんな思いを巡らせて北原に訊いたのに、当の本人はあっけらかんとした様子で逆に訊き返して来た。

「え、何?俺に何か言って欲しいの?」

⏰:08/09/16 22:25 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#775 [東脂ヤ転
「…いや、別にそういうワケじゃないけど…」

北原はいつも通り笑っているのだが、何故か俺には北原の行動が腑に落ちないでいた。
そうこうしている間に教室が見えて来て、担任の声も徐々に聞こえて来る。

「あ、そうだ鳴」

教室までもうすぐそこという所まで来た時、突然北原が思い出したように声を上げた。

「林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?」

北原はそれだけ言うとまたニッと笑って、いつものノリで教室へと入って行った。

⏰:08/09/16 22:28 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#776 [東脂ヤ転
「何とかしてやる…?」

俺は北原の言葉の意味がよく分からず、その意図を読み取ろうと教室の前で立ち止まった。

しかしそれも次の瞬間、無駄な足掻(アガ)きになってしまう。

「日下部君!とっくにホームルーム始まってるわよ!!」

…担任の俺を呼ぶ馬鹿デカい声のせいで。

⏰:08/09/16 22:31 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#777 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー

「えー…だから、この否定構文の訳はここで意味を持つのであって…」

この日最後の授業の英語は、未だかつて無い程頭に入ってこないでいた。シャープペンシルの音と教師の声が教室内に響く中、俺は一人退屈そうに窓の外を見つめる。

あと数十分もすれば彩華とまた屋上で話し合わなければならないのに、上手い言い訳が全く思い浮かばない。

空は朝と変わらず灰色で俺の気分を益々落ち込ませる。

⏰:08/09/18 09:25 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#778 [東脂ヤ転
[こんな時…静兄だったらどうするだろ…]

目を瞑ると静兄の笑顔が浮かんだ。
きっと静兄だったら何の迷いもなく彩華に言うだろう。
「俺は鳴が好きなんだ」って。

実際に言われたワケでもないのに俺は何故か、顔が熱くなるのを感じた。

[静兄に会いたいなぁ…]

家に帰ればいつでも会えるのに、不思議ともう何日も会っていないような気持ちだ。

本当なら今すぐにでもこの場を逃げ出して真っ直ぐ家まで走って行きたいけれど、そういうワケにもいかないだろう。

時計に目をやると授業終了まであと十分。
変な緊張が俺を襲う。

⏰:08/09/18 09:26 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#779 [東脂ヤ転
…ドクンー…ッ

何か変だ。急に胸の鼓動が大きく聞こえる。
俺の中の何かが異様に不安を訴える。

『林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?』

その時突然さっきの北原の言葉が頭をよぎった。

そうだ、この言葉がずっと引っかかっていたんだ。それに言葉だけじゃない、あの時の北原の妙な笑みが気になっていて。

北原とは長い付き合いだが、あんな表情(カオ)を俺は初めて見たような気がする。
何というか…何かを内に秘めた笑み。

上手く表現出来ない不安が募るのに、時は進むのを止めない。

⏰:08/09/18 09:40 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#780 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー

「日下部ーッ」

帰りのホームルーム終了とほぼ同時のタイミングで後ろから大声で名前を呼ばれる。

「来た」と俺は心の中で呟いた。
振り返ると案の定、クラスメートの隣には彩華の姿があった。

教室内は掃除の為に机を動かしたり掃除道具を出したりで皆忙しく動き回っていて、俺達の様子が違うことなんてちっとも気が付いていないようだ。

「…行こっか」

彩華が小さくそう言ったのを合図に俺達は教室を出て、その足で屋上へと向かう。

しかしその時は気付いていなかった。
彩華と北原がアイコンタクトを取っていたなんて。

⏰:08/09/19 15:49 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#781 [東脂ヤ転
キィー…ッ

屋上の扉が軋む音を立てながらゆっくりと開く。今朝来た時よりも風は無く、代わりに雲の隙間から少し光が刺していた。
「もう晴れても良いのにね…」

そんな空を見ながら彩華は呟いた。
俺は彩華の言葉に返事も返さず、未だ言い訳の言葉を探している。
だが、探すには時間が経ち過ぎていた。

「鳴ちゃん…」

彩華が俺の名を呼ぶ。
それが合図のように俺の胸は早鐘を打ち始める。
[こうなったら…]

もう適当に何か言っておくしかない、そう心に決めた時、

「北原君に聞いたよ。
それならあたしも…納得出来たから」

次に彩華の口から発せられた言葉は予想外のものだった。

⏰:08/09/19 16:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#782 [東脂ヤ転
「…え?」

彩華の言っている意味が全く分からない。
北原が…何だって?

しかし彩華は俺の動揺した様子を違う意味に捉えたのだろう。
俺に柔らかく微笑んだ。

「始めから正直に言ってくれたら、あんな責めるような言い方しなかったのに。
本当、鳴ちゃんは優しいね」

"正直に言う"?
北原は彩華に何を言ったんだ?
彩華の穏やかな表情とは逆に俺は混乱していた。

どうやら北原が言っていた通り"何とかしてくれた"みたいだ。
普通ならここで喜ぶべきなのかもしれない。自分じゃ何とも出来なかった問題を、北原が手助けしてくれたんだから。

⏰:08/09/20 10:57 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#783 [東脂ヤ転
[だけど…]

それでも俺の胸はざわついて止まない。
言いようの無い不安が込み上げる。

「それじゃあ…あたしこれから部活だし、行くね」

沈黙に耐えかねたのか、突然彩華はいつも以上に明るい声で言った。
「行くね」この言葉が俺には「さよなら」にも聞こえた。

彩華の声に俺は顔を上げると、今朝とは違い彩華は何故か諦めたような笑顔を浮かべていた。

長いようで短かった彩華との付き合いが、こんなにもあっけなく終わろうとしている。

⏰:08/09/20 11:00 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#784 [東脂ヤ転
「…今までありがとな」

俺は何とかそれだけ言うとぎこちなく笑った。
それにつられるように彩華も微笑むと、小さく頷く。その目はまた涙が込み上げているように潤んでいた。

彩華は俺の視線に気付いたのか慌てて目をこすると、照れくさそうに笑って小走りで屋上を後にした。

「…終わっ…た」

誰も居なくなった屋上で一人、俺は溜め息をつく。ある意味解放感と罪悪感の入り混じった溜め息。

最後の彩華の笑顔があまりに真っ直ぐで、俺の胸は罪悪感でいっぱいだった。

⏰:08/09/20 11:09 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#785 [東脂ヤ転
「鳴、別れられたんだ?」

その時だった。
突然背後から名を呼ばれ俺は身を強ばらせる。
振り返らなくても、声の主が誰かは見当がついた。
俺の名前を唯一、この学校で呼び捨てにする奴。

「…北原」

俺はゆっくりと振り返りながら言った。
名前を呼ばれた本人は何故か嬉しそうに微笑むと、俺の方に近付いて来る。

それと同時に、止み始めていた筈の風が屋上に再び吹き始める。

⏰:08/09/20 11:53 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#786 [東脂ヤ転
「良かったじゃん上手く別れられて。俺の言った通りになったろ?」

風に揺れる髪型を気にしながら北原は俺にそう訊いた。
妙に愉し気な北原の態度が気になったものの、俺は北原の方に向き直る。

「お前さ…彩華に何て言ったの?」

「まぁまぁ〜良いじゃんそんな話は後で!
それより大事な話が有るんだよ、俺は!」

北原は俺の言葉を遮るように声を上げる。
俺はそんな北原を怪訝な顔で見つめる。

「大事な話?何だよ?」

今の俺にとっては彩華についての話が最も重要な話なのだが、一応北原の話を聞こうと応えを促した。

⏰:08/09/20 15:41 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#787 [東脂ヤ転
「林とちゃんと別れられたことだし」

「…?あぁ…」

「鳴、俺と付き合わない?」

「………は?」

一瞬の沈黙の後、俺は思わず耳を疑った。
誰が誰と付き合いたい…って?

「気付かなかった?
俺はずっとお前が好きだったんだよ」

北原は至って冷静に話を続ける。

どうやら冗談でもふざけているワケでも無いようだ。
北原の目から本気だといことが分かる。

「そんなこと…突然言われて…も」

何かの罰ゲームかとも思える状況が俺を襲う。
しかし、罰ゲームはそれだけではなかった。

⏰:08/09/20 16:10 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#788 [東脂ヤ転
「まさか断ったりしないよな?
兄貴とは平気でキスとか出来るお前がよ」

北原の一言で俺は全身が凍りつくような感じを覚えた。
今までの混乱とは比にならない程のパニックに陥りそうになる。
僅か一瞬の間に。

「何…意味分かんないこと言うなよ、北原」

やっとのことで出て来た言葉は酷く弱々しい反論の言葉だった。

「今更隠すなって。ほら」

俺とは逆に驚く程冷静な北原は、俺に自分の携帯を差し出した。

⏰:08/09/20 16:23 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#789 [東脂ヤ転
。+★アンカー

>>1-45
>>46-90
>>91-135
>>136-180
>>181-225
>>226-270
>>271-315
>>316-360
>>361-405
>>406-450
>>451-495
>>496-540
>>541-585
>>586-630
>>631-675
>>676-720
>>721-765
>>766-788

⏰:08/09/20 18:34 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#790 [東脂ヤ転
携帯に映し出しされていたのは携帯で撮影された画像だった。
目を凝らして見るとそこには、二人の男がトイレの手洗い場でキスしている画像だというのが分かった。

"二人の男"、それがまさしく俺と静兄だ。

俺は自分の目を疑った。だが良く撮れている写真にはハッキリと俺達が写っている。

「これ…参観日…の」

「そうだよ、あの日に俺が隠し撮った写メ。
ただ鳴の後を追ってトイレに入ろうとしただけだったのに、まさかこんな写メが撮れるなんてな」


北原の声は何故か愉し気に聞こえる。
俺が今まで見たことの無い程妖しく笑う北原。

⏰:08/09/21 12:35 📱:W52P 🆔:hUTP8CHk


#791 [東脂ヤ転
「…何が目的だよ?」

胸の焦りを抑え俺は静かに訊く。
そんな俺を横目に北原は携帯を仕舞うと、俺の方に向き直った。

「だから目的はお前だよ、鳴。この写メが回されたくなかったら、俺と付き合うしか選択肢は無いよ」

至って淡々と話を続ける北原が、俺には未だ理解出来ずに居る。
幼なじみで1番の友達だと思っていた北原が、俺と付き合いたい?
絶対…何かの間違いだ。
「鳴…お前は俺を買いかぶり過ぎなんだよ」

その時まるで俺の考えを読んだかのように、北原は首を振りながらそう言った。

⏰:08/09/22 08:36 📱:W52P 🆔:ww5c..s6


#792 [東脂ヤ転
「俺はお前を友達だと思ったことなんて一度も無かった。ずっとお前が好きだったんだ」

そこまで言うと北原は初めて辛そうに目を細めた。

北原が俺に見せるどの一面も、今までに見たことの無い部分ばかりで、俺は正直戸惑いを隠せずに居る。

「自分がおかしいんじゃないかって…すっげー悩んで、こんなにもお前のことだけを好きでいたのに…なのに…」

北原はそこで顔を上げると真っ直ぐ俺を見つめた。その瞳は一瞬身の毛もよだつ程怒りの込められた瞳だ。

ゆっくりと口を開く北原。

「お前は俺を裏切った」

⏰:08/09/22 21:37 📱:W52P 🆔:ww5c..s6


#793 [東脂ヤ転
けして大きな声では無いが北原はハッキリとそう言った。

「…裏切る…?」

その言葉の意味が判らず俺は北原の言葉をオウム返ししてしまう。
すると北原はそんな俺を見ながら呆れたように笑った。

「お前はずっと俺に"女が好きだ"と言ってたよな?今までも普通に林みたいな女と付き合って来ただろ?」

徐々に北原の声の強さが増していく。

「だから俺は諦めてたんだよ。"鳴は普通の男だなんだからしょうがない"ってな。
ずっと好きだって気持ちを押し殺してきた…!」


次々に明かされる北原の想いを、俺はただただ聞くことしか出来ない。

⏰:08/09/23 21:26 📱:W52P 🆔:rkWU9ISw


#794 [東脂ヤ転
「それなのにお前はある日突然、あっさり"普通"じゃなくなった…!!
突然現れた"静人"とかいう義兄にヤられてな!」
北原は吐き出すように声を上げた。
その言葉に俺は様々な意味で衝撃を受ける。

「…ッ!?…何で名前…」

何とか絞り出すように北原にそう訊くと、北原は鼻で笑って俺に言った。

「お前の義父がどれだけ有名人か知ってるだろ?その息子の名前なんか、簡単に調べられるよ。
ましてやあんな美形なら尚更な」

その言い方は全てを知り尽くしたかのような口振りで、俺は益々逃げ出したい程の焦燥感に襲われる。

⏰:08/09/23 21:38 📱:W52P 🆔:rkWU9ISw


#795 [東脂ヤ転
[静兄……ッ!!]

俺は思わず心の中で静兄の名を叫ぶ。
今の俺には北原に反論出来る程の余裕さえ無い。

これは今まで静兄の優しさに甘えて来た罰だろうか?
彩華を傷付け、自分が躊躇いも無く静兄の側に居る方法を選んだ報い?
考えれば考える程、俺には選択の余地がないことを思い知らされる。

「鳴…」

途方に暮れて足元から崩れ落ちそうになったその時、俺は名を呼ばれ突然抱き締められた。

静兄ではなく、俺が友達だと思っていた北原に。

⏰:08/09/23 21:48 📱:W52P 🆔:rkWU9ISw


#796 [東脂ヤ転
「もし俺と付き合うなら、この写真だって悪いようには使わねぇよ…?」

北原は耳元で小さくそう呟いた。
その言葉を聞き、初めて俺は北原に脅されているのだと解る。

俺は何も言えず立ち尽くし、北原はそんな俺を更に強く抱きしめ囁いた。

「よく考えてみろよ…この写真が公になった時、静人の仕事には支障が出るんじゃないか?」

そう大きくは無い北原の声が俺の胸には大音量で響き渡る。
"静兄の仕事に支障が出る"
今まで考えもしなかった話だ。

⏰:08/09/27 16:56 📱:W52P 🆔:XQyDmcc2


#797 [東脂ヤ転
こんな写真が、例えばインターネット上等に流出したりしたら…静兄の店はどうなる?
考えなくても答えは明らかだ。

写真のせいで自分が何か言われるのは仕方ない、自業自得なんだから。
でも、そのせいで静兄に迷惑をかけることは…絶対に出来ない。

俺に残された選択肢はたった一つ。

「俺が…俺がお前と付き合えば、静兄には迷惑かけないんだよな…?」

ゆっくりと身体を離しながら俺は確かめるように北原に訊く。

「当たり前だろ。俺はお前さえ手に入れば、それで十分なんだから」

そう言って北原は笑った。
こんな時でさえ北原は、いつもと変わらない笑顔を俺に向ける。

⏰:08/09/27 21:40 📱:W52P 🆔:XQyDmcc2


#798 [東脂ヤ転
――――――――

「…ただいま」

ようやくたどり着いた我が家に入ると俺は、消え入りそうな声でそう言った。
しかしいつもはすぐに返って来るはずの応えが、いくら待ってみても返って来ない。

[あ…そっか…]

玄関に並べられている靴の数を見て思い出した。
今は夜の7時前、静兄はとっくに仕事へ行っている時間だ。

平日の夜に静兄が居ないのはいつものことなのに何故か今日に限って、静兄に凄く早く会いたい自分が居る。

⏰:08/09/28 19:02 📱:W52P 🆔:O7XJlKTs


#799 [東脂ヤ転
「…プッ…子供じゃあるまいし」

そんな自分の子供じみた我が儘に嫌気がさして、俺は思わず苦笑する。

とりあえず玄関を上がり、渇いた喉を潤すためキッチンへと足を運ぶ。
するとテーブルの上にメモが置いてあることに気が付いた。

静兄からかも、と少し期待して俺はメモを取り上げる。

「…何だ、母さんかよ」

しかしそこに書かれていたのは母さんからの期待外れなメッセージだった。

《久々に帰って来たのにまたすれ違いだね〜
残念!お土産を冷蔵庫に入れておくので、晩にでも食べてね☆ 母より》

⏰:08/09/28 19:06 📱:W52P 🆔:O7XJlKTs


#800 [東脂ヤ転
「母さんは元気だなぁ」

相変わらず元気にしているのだと、手紙からその様子が伝わって来て自然と頬がゆるむ。

親父と離婚したのは俺がまだ小学生だった頃。
母さんはその頃からデザイナーとしてあちこちを飛び回っていて、忙しい中俺を女一人で育ててくれた。

そんな母さんだから、突然再婚を決めた時も反対はしなかったんだ。

今まで俺の為に生きてきた母さんだから、今度は母さんの人生を歩んで欲しくて。

⏰:08/10/05 10:05 📱:W52P 🆔:3IIvUxCU


#801 [東脂ヤ転
『よく考えてみろよ…この写真が公になった時、静人の仕事には支障が出るんじゃないか?』

その時ふ、と北原の言葉を思い出し俺の顔からは笑みが引いていく。
そしてその言葉が、母さんにも当てはまることに気付く。

[もしも…あの写真が母さんの目に入ったら…]

それだけじゃない。
母さんの会社に出回ったりしたら多大な迷惑をかけることになるだろう。

「やっぱ…北原と付き合うしか方法は無いんだよな…」

溜め息混じりにそう呟くと寂しさと不安で急に押し潰されそうになり、俺は足早に階段を駆け上がった。

⏰:08/10/05 20:03 📱:W52P 🆔:3IIvUxCU


#802 [東脂ヤ転
ーガチャ…ッ

嫌な不安を取り払うように俺は一番近くの部屋のドアノブを回し、飛び込むように中へ入った。

「…あ」

すると、妙に気持ちが落ち着く香りがすると思ったら間違えて静兄の部屋に入ってしまったことに気が付く。

「ハッ…疲れてんのかな…俺」

そう自分自身に苦笑すると向きを変え、部屋を出ようと再びドアノブに手をかけた。

しかし不思議なことに、この部屋ではさっきまで自分の中にあった変な緊張感が少し和らいだように思えた。

[これって…静兄パワー!?]

なんてふざけたことを考えて小さく笑うと俺は静兄のベッドに飛び込んだ。

⏰:08/10/06 08:48 📱:W52P 🆔:7OV0eUGI


#803 [東脂ヤ転
俺のよりも遥かに広いベッドは、一番静兄の香りが強くて俺の心を落ち着かせてくれる。

「これってちょっと変態チックだよな…」

ベッドにうつ伏せたまま俺は一人呟いてはまた小さく笑い、そんなことをずっと続けていた。

その内静兄の香りの中に居るにつれ、目に見えない静兄に抱きしめられているような思いに駆られる。

心地良いまどろみの中、目を閉じていると突然睡魔が襲ってきた。

俺はそれに逆らうつもりも無く、ゆっくりと眠りに落ちていく。

⏰:08/10/07 08:20 📱:W52P 🆔:1nGIacXs


#804 [東脂ヤ転
暫く目を閉じていると静兄の姿が浮かんできた。
少しくせのかかった黒髪に黒い瞳、スラッと長い手足に高そうなスーツ。
俺の中の静兄はいつも決まってそのスタイルだった。

カッコ良くて優しくていつも側に居てくれる静兄。
そんな静兄は今や俺にとって、男としても理想の人となっていた。

それなのに…

『当たり前だろ。俺はお前さえ手に入れば、それで十分なんだから』

北原の言葉が再び俺に襲いかかる。
俺はそんな優しい静兄を裏切ろうとしているんだ。

⏰:08/10/12 00:28 📱:W52P 🆔:VW4YMCrU


#805 [東脂ヤ転
俺が北原と付き合う、と言ったら静兄は何と言うだろう。
多分俺に理由を問いただして、北原を殴りに行くに違いない。

いや、それよりも先に失望されるかもしれないな。
静兄に何の相談もせず、勝手に決めてしまったことだ。
「本当に俺のことを好きなのか?」と疑われたっておかしくない。

でも…本当は分かって欲しい。
静兄のことが大切だからこそ、守りたいって思うんだ。邪魔をしちゃいけない、迷惑をかけちゃいけないって思うから…。

こんな不器用なやり方でしか静兄を好きな気持ちを表現出来ない俺は、何て情けないんだろう。

眠りと思いの狭間で俺はまた苦しくなって涙が溢れた。

⏰:08/10/13 00:11 📱:W52P 🆔:WavzRs0Q


#806 [東脂ヤ転
その時だった。

「……ッ!…んん…ッハァ…ッ!!」

俺は突然息苦しくなり身体を捩(よじ)らせた。
しかし上から何かの重みがかかり、思うように身体が動か無い。

寝ぼけまなこな俺も流石に変だと思い恐る恐る瞳を開けてみる。
するとそこには、俺が今会いたくてたまらなかった人が妖しい笑みを浮かべていた。

「……静…兄」

俺はゆっくりと口を開いた。
その名前を呼ぶだけで何故か胸が酷く締めつけられる。

⏰:08/10/13 08:16 📱:W52P 🆔:WavzRs0Q


#807 [東脂ヤ転
「クスッ…全然抵抗しないなんて、よっぽど疲れてたんだな」

そう言って笑った静兄はゆっくりと俺から身体を離す。

その言葉の意味も分からず俺がまだ茫然としていると、静兄は自分の唇を舌で舐めた。

「……あ!!」

何となく自分の唇に触れてみるとうっすら湿っているのが分かり、その時初めて静兄にキスされていたことに気付く。

同時にとてつもなく恥ずかしくなって顔が熱くなるのを感じる。

「顔、赤いぞ?」

静兄は締めていたネクタイを緩めながら目を細める。
俺はその余裕の態度に腹が立ち、近くにあった枕を静兄目掛けて投げつけた。

⏰:08/10/13 12:43 📱:W52P 🆔:WavzRs0Q


#808 [東脂ヤ転
「あれか…鳴は照れると枕を投げるんだな」

「うるさい!!
人の寝込みを襲うとか卑怯だぞ!!」

「卑怯って…クスクスッ」

「笑うなぁーーーッ!!!!」

俺はベッドの上にあるだけの枕を投げつけた。
でも効果は全く無くて、むしろ静兄は楽しそうに俺を見つめていた。

その後もありとあらゆる、静兄に対する不満を抗議したんだけれど、静兄はただ微笑みながら着々と着替えをしていた。

そんな静兄の様子から本当は目を離すことが出来ない俺は、照れ隠しにくだらない話を続ける。

⏰:08/10/13 17:15 📱:W52P 🆔:WavzRs0Q


#809 [東脂ヤ転
「大体、静兄はいつもさぁ…」

そこまで言うと俺は言葉を飲み込む。ちょうど静兄がシャツを脱ぎ、その肌が露わになった時だった。

男の俺が見ても思わず「綺麗だ」と言ってしまいそうになる程、静兄の身体は美しい。
同じ男なのに俺とは全く違う造りをしているようだ。

「いつも…さ…」

頭では話を続けようとしているのに目が静兄から離せない。

そんな俺の異変に気付いたのか、いつの間にか静兄は俺の方に向き直って居た。

「何?見とれてるの?」

静兄は俺の心を見透かすような笑みでそう言う。

⏰:08/10/13 21:40 📱:W52P 🆔:WavzRs0Q


#810 [東脂ヤ転
「バ…ッ…だから…!」

静兄のその言葉で一気に現実に戻った俺は、再び近くにあった物を投げようと手を振り上げる。

しかし今度はさっきと違って、その腕をしっかりと静兄に掴まれてしまった。
更に勢い余って俺は静兄に押し倒されたような体制になってしまう。

「…鳴」

さっきまでの余裕しゃくしゃくな静兄から一転して、静兄は真剣な表情で俺を見つめる。
突然の静兄の変化に俺は急に不安になる。

「鳴…お前何かあったのか?
さっきお前、泣いてただろ…?」

静兄は真剣な眼差しで俺に訊く。
いきなり率直な質問に俺は言葉が出ず応えられない。
頭では北原のことが浮かんでいるのに。

⏰:08/10/13 21:50 📱:W52P 🆔:WavzRs0Q


#811 [東脂ヤ転
「別に…ちょっと嫌な夢見てただけだから…」

静兄の真っ直ぐな瞳から逃げるように目をそらすと、俺はとっさに嘘をついた。
今ここで北原のことを打ち明けるわけにはいかない。北原のことだ。そんなことをしたら、本気であの写真を流出しかねない。

俺は必死でいつも通り笑ってみせて静兄から身体をのける。

「っていうか…制服のまま勝手に寝ちゃっててごめん!部屋にもどるよ」

この空気に耐えられなかった俺は適当に言葉を濁し、ベッドから降りようと立ち上がった。

これ以上静兄に追究されたら隠し通せる自信が俺には無い。

⏰:08/10/14 08:30 📱:W52P 🆔:Un.tnOc6


#812 [東脂ヤ転
「じゃ…ってうわぁ…ッ!?」

部屋を出ようと足を前に踏み出したその時、突然後ろ向きに強く引っ張られ俺は再びベッドに倒れ込む。

ゆっくり顔を上げると、真顔の静兄がすぐ近くに居た。
今度は本当に押し倒されたようだ。

「着替えならここでしていけば良いよ」

静兄はそう言うと俺のシャツのボタンに手をかける。

⏰:08/10/14 09:21 📱:W52P 🆔:Un.tnOc6


#813 [東脂ヤ転
「ちょ…ダメだっ…んぁ…ッ!」

俺は静兄の手を振り払おうともがいたが、いとも簡単にその手を交わすと静兄は俺のシャツを剥ぎ取り、首もとに吸い付く。

覆い被さるようにして静兄は俺の首筋から鎖骨へ舌を這わし、その度俺の口からは情けない声が上がる。

このままじゃまた静兄のペースに飲まれる、と頭では警告しているのに身体が思うように動かない。
まるで全神経を静兄に捕らえられたようだ。

そして静兄の舌は更に下へと進み、俺が弱い部分まで到達する。

「静兄…ッほんとダメだ…って…!んあ…ッ!!」

今の静兄が止めてくれないのを知っているクセに無駄な抵抗を続ける俺。

⏰:08/10/15 08:42 📱:W52P 🆔:etgL//ik


#814 [東脂ヤ転
そんな俺のことを知り尽くしているかのような笑みを静兄は浮かべ、そのまま乳首を甘噛みしては舌で転がすように舐め上げる。

「ダメじゃなくて、気持ち良いんだろ?」

すすり泣くように喘ぐ俺を見ながら静兄は笑う。
そんな余裕の態度がいつもは嫌なのに今はそれが逆に俺を熱くさせる。

いつだってそうだ。
静兄にはかなわないと見せつけられる度、静兄のことを好きになっている自分が居る。

だから静兄は嫌なんだ。
俺がそうやって悩んでいる姿をいつも愉しそうにからかって来る。

俺はこんなに好き過ぎて辛いのに。

⏰:08/10/15 11:54 📱:W52P 🆔:etgL//ik


#815 [東脂ヤ転
「も…ヤダ…ッ…あ…ッ」

しかし、こんな時でさえ身体は正直に感じてしまう。
俺は自分のイヤらしさに情けなくて涙が滲んだ。

するとさっきまで肌を舌で弄っていた静兄は、徐に顔を上げて動きを止める。
俺は上がる息を抑えながら両腕で顔を隠した。

泣いていることを静兄に悟られたら絶対に怪しまれるだろう。
俺はあくまでもいつも通りで居なくちゃいけないんだ。いつも通り普通に、静兄の側に…。

ひたすらそんなことを考えていた俺は、その間ずっと俺を見つめる静兄に気付いて居なかった。

⏰:08/10/17 10:28 📱:W52P 🆔:GaCgF0OM


#816 [東脂ヤ転
「鳴…」

「…ッ…!!」

静兄の手が俺の腕に触れる。それだけのことなのに身体は酷く過剰に反応する。

「鳴…腕どけて」

そんな俺の心境を知ってのことなのか、静兄は俺の腕をなぞるように触れる。

「……何で…?」

俺はゆっくりそう尋ねると、よりいっそう腕に力を入れる。
その間も腕越しに静兄の視線を痛い程感じる。

⏰:08/10/27 08:55 📱:W52P 🆔:d2OJxAbY


#817 [東脂ヤ転
「こんなんじゃあ、鳴の顔がよく見えないだろ?」

静兄はそう言うと俺の髪を優しく撫でた。
そんな静兄の優しさが嬉しくて悲しくて余計に涙が溢れる。
その瞬間俺の力も抜けて、静兄にゆっくりと腕をどけさせられる。

蛍光灯の灯りに目が眩みながらも俺は焦点を静兄に合わせると、そこにはいつもと変わらぬ笑顔の静兄が居た。

静兄は俺を真っ直ぐ見つめながらその手で俺の頬に流れる涙をすくう。

「ほら…俺って泣き虫だからさ…!」

何をごまかしたいのかは分からないけれど俺は慌ててそう言い、慣れない嘘を並べた。

⏰:08/10/27 09:20 📱:W52P 🆔:d2OJxAbY


#818 [東脂ヤ転
「確かに」

小さく呟いた静兄は、無理な笑顔を作るその頬に軽くキスをした。

「鳴は本当、泣き虫だよな」

静兄の唇が触れた場所が少しずつ熱くなり、俺の胸も同時に熱くなる。
その唇も瞳も髪も全てが愛おしくて、だから守りたくて大切にしたくて。

俺は静兄の首元に手を回すと身体を起こし、自分からキスをした。

「止めないで…静兄」

俺はそれだけ言うと静兄の胸にもたれかかる。

⏰:08/10/28 09:18 📱:W52P 🆔:J0EVNoXE


#819 [東脂ヤ転
「鳴がそう言うなら…」

静兄はそう言うと俺を再びベッドに押し倒す。少し驚いてその表情(カオ)を見ると、何故か微かに哀し気な表情に見えた。

「その希望に応えなくちゃな?」

俺はその表情の意味を読み取ろうとしたが、その前に静兄はいつもの奪うようなキスを俺に施した。
こういう時の静兄に俺は特に弱い。

上に静兄の身体の重みを感じながら、俺はゆっくりと瞳を閉じる。

同時に息も絶え絶えに、静兄の唇に応えようと必死によがって見せた。

「…鳴」

静兄の甘い声が脳内に響き俺の身体は熱を増していく。

⏰:08/11/23 17:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#820 [東脂ヤ転
「静…兄…ッんぁ…ッ!」

その名を呼ぼうと口を開いた途端、大人しかった筈の静兄の手が俺のズボンを下着ごと引き剥がした。

急に空気に触れたソレは異様に熱を帯びていて、さらに大きさを増したような気がする。

突然のことに俺は凄まじく恥ずかしくて赤くなる顔をまた隠した。

「クスッ…聞き分けのないヤツだな」

そんな俺の反応を愉しむように静兄は笑うと俺のモノに口付ける。

⏰:08/11/23 23:19 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#821 [東脂ヤ転
「静兄ぃ…ッ…ダメだ…って!」

突然襲う快感に俺は戸惑い、気持ちとは逆の言葉を口にする。
しかし静兄はそんな俺の想いを見透かすように目を細めると、ねっとりとしたその舌と唇で執拗に俺のモノに吸い付く。

「もっとシテって言ってみたり、ダメだって言ってみたり…」

静兄は小さく呟きながらも舌の動きを止めない。

「忙しい奴だな…鳴は…クスッ」

静兄の口が動く度、俺は思わず腰を少し浮かしてしまう。
いっぱいいっぱいの俺に対し、静兄は相変わらず余裕の笑顔で愉しそうに俺に話し掛ける。

「静…兄…ッ…あぁ…ッ!!」

そして静兄が口の中で激しく吸い上げた瞬間、頭の中が弾けるような感覚と共に快楽の波が俺を襲った。

⏰:09/02/04 12:49 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#822 [東脂ヤ転
.

>>821

すみませんm(__)m

⏰:09/02/04 12:50 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#823 [東脂ヤ転
「静…兄…ッ…ハァッ」

乱れる息を整えながら、俺は静兄に向けて両手を広げる。
少し驚いた表情を見せたものの、静兄はそれに応えるように俺の身体をしっかりと抱き締めてくれる。
「クスッ…次は甘えん坊か?」

「そ…ッそんなんじゃないよ…ッ!」

照れたようにそう言うと、静兄はまた小さく笑った。
静兄の身体は俺より広くてシッカリしている。俺は静兄の体温に抱かれるというより、その大きな優しさに包まれているような感覚を覚えた。

「…鳴」

抱きあったまま静兄が耳元で俺の名を呼ぶ。

⏰:09/02/05 00:13 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#824 [東脂ヤ転
「何か俺に隠し事してないか?」
その時だった。耳元に響く声がさっきまでの甘い声とは一変、鋭く探るような声で静兄は俺に訊ねた。

「え…なんで?」

俺はなるべく悟られぬよう、平然を装って訊き返す。いたって冷静に言ったつもりだったのに、静兄の目にはそう写っていなかったのを俺は気付いていなかった。

「いや、無いなら別に良いんだけど」

そう言って静兄は俺の耳に軽く口付ける。同時に、落ち着いていた筈の身体が再び熱くなる。

「何かあるなら…必ず俺に言えよ?」

「…ッ…ハァ…ッ」

静兄の手が器用に俺の下腹部をまさぐる。心の動きが静兄にバレないよう、俺は目を瞑って熱っぽい声を上げる。

⏰:09/02/07 12:24 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#825 [東脂ヤ転
「何があっても俺は、鳴の見方だから」

けして大きくない静兄の声がやけに胸に響いて、俺はまた泣きそうになる。何で静兄はこんなに真っ直ぐで居られるんだろう。静兄を好きだと彩華にさえ正直に伝えられなかった俺に、何でこんな優しいんだろう。

[静兄…ごめん…]

また零れそうな涙を堪えながら、俺は小さく呟く。心の中で。

「静兄…ありがとう」

でもその代わり静兄の腕の中で俺は小さくそう言った。
静兄が俺の中へ入ってゆくのを感じながら。

⏰:09/02/07 12:43 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#826 [東脂ヤ転
×見方

○味方

すみませんm(__)m

⏰:09/02/07 12:56 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#827 [東脂ヤ転
―――――――――――――

― ピピピ…ッ ピピピ…ッ

「…ん…?」

枕元で鳴り響く機械音に気付いた俺は、無意識に携帯へと手を伸ばす。適当なボタンを何度か押すと耳障りな音が止んだ。

徐々にハッキリしてくる意識の中で何となく、俺は時計に目をやると一気に現実へと引き戻される。時計は既に8時を過ぎていた。

「…っ!ヤバい…遅刻…!!」

⏰:09/02/07 17:19 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#828 [東脂ヤ転
「─…ッい!?」

慌てて勢い良くベッドから飛び降りた瞬間、腰に激痛が走り不自然な声を出してしまった。
情けないことに目に涙まで少し浮かべながら腰に手をやる。

[そっか…昨日静兄に…]

そこまで考えると急に顔が火照るのを感じた。昨日は嫌な不安を消し去りたくて、夢中で静兄に抱かれたんだった。でもまさかその代償がこんなカタチで来るとは…。

俺は腰に負担が掛からぬようゆっくりと立ち上がった。
ふ、と隣に寝ていた静兄を見ると穏やかな表情で熟睡しているようだった。

⏰:09/02/07 21:04 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#829 [東脂ヤ転
黒く長いまつ毛とその端正な顔に思わず見とれてしまった俺は、ハッと気が付くと静かに静兄の部屋を出た。本当はいつまでもあの寝顔の隣で一緒に寝ていたかったけど、そんな余裕が今の俺には無いことを時計が示していた。

俺は大きく溜め息をつくと急いで自分の部屋へと戻った。とりあえず新しいシャツに着替えようとクローゼットに手をかけたその時、机の上に置き直した携帯がチカチカと光っていることに気付く。

どうやらメールを受信していたようで、俺は乱暴に携帯を手に取った。

⏰:09/02/08 21:20 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#830 [東脂ヤ転
しかし次の瞬間、思考回路が一瞬停止するのを感じた。
そこに表示されていた受信メールの送り主は、

「…北…原」

出来れば今最も会いたくない相手だ。その名前を見た途端昨日遭った様々なことが蘇り、再びとてつもない不安を身体が覚える。俺は微かに震える指先でボタンを押し、恐る恐る受信メールを開いた。

― 鳴、おはよう。 まだ家?

メールの内容はたったこれだけだった。しかしその1行のメールの返事に俺は戸惑う。そして少し考えた後、当たり障りの無い返事を返した。

⏰:09/02/09 21:11 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#831 [東脂ヤ転
― おはよう。俺今日寝坊したから先行っといて!

送信完了の表示を見て、何故か安堵の溜め息をついた俺は新しく出したシャツに腕を通す。
この家からそう遠くない所に住んでいる北原とは、ここに越して来てから時間が合えば一緒に登校していた。

[でも…さすがに今日は…]

昨日の今日では気持ちの整理がつく筈もなく、今日は出来るなら学校も休みたい程気分は憂鬱だった。
まぁ小学生じゃあるまいし、そんなワガママが通るわけないことを分かっていた俺はなるべく急いで教科書をカバンに詰め込む。

⏰:09/02/10 12:31 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#832 [東脂ヤ転
― ピピピ…ッ

「…っ!?」

突然の着信音に俺は驚き、思わず手に持っていた教科書を落としてしまった。
この音はメールの受信音。

[またメール…?]

何となく嫌な予感がしながらも、再び携帯を手に取り開くと案の定送り主は北原だ。さらにメールの内容はさっきと同じように1行だけ書かれていた。

― 今お前んちの前だから、待ってるよ。

「俺の…家の前…!?」

⏰:09/02/10 17:20 📱:auSN3G 🆔:☆☆☆


#833 [東脂ヤ転
[……なんで…]

俺の頬を嫌な汗が伝う。
恐る恐る、閉めっぱなしだったカーテンに手を掛けそっと開いてみると、丁度向かいの自販機の前に見覚えのある学生服を来た男が立っている。

「北原…」

俺はその姿に小さく呟く。
北原は下を向いたまま携帯をいじっていてこちらには気付いていない様子だ。

― ビビピ…ッ

その時、手に持っていた携帯が再び鳴り始める。
目で北原を見ながら携帯を開くと受信メールが1件。

― 早く出てこないと、インターホン鳴らすよ?

⏰:09/07/30 18:24 📱:W64S 🆔:ZTYjh7sc


#834 [東脂ヤ転
その文面にドキッとして外を見ると、さっきまで携帯を見ていた北原は真っ直ぐ俺の方を見ていた。
その笑顔から微塵も悪意は感じられず、逆に変な胸騒ぎを覚える。

― すぐ行くからそこで待ってて
素早くそれだけ打ち込んで送信ボタンを押す。
「送信しました」の画面を確認した後、急いで制服のズボンを手に取った。

インターホンなんか押されたら静兄は絶対起きてしまう。今の俺にとって、静兄に気付かれないように家をでることが重要なのだ。

⏰:09/07/30 20:55 📱:W64S 🆔:ZTYjh7sc


#835 [東脂ヤ転
「よし…っ」

簡単に制服に着替えると制カバンを手に取る。
教科書や辞書なんかは全部学校に置いてあるので、持って行く荷物など僅かなものだ。

忘れ物がもしあったとしてもそんなこと大したことじゃない。どうせ遅刻なのだ。それなら1秒でも早くこの家を出なければ。

慌て過ぎて思わず転びそうになりながらも俺はドアを開けた。
すると、

「あ…おはよ、鳴」

何も知らない笑顔の静兄がそこに居た。

⏰:09/07/31 21:40 📱:W64S 🆔:Q0uThy8w


#836 [東脂ヤ転
「静…兄」

「…ん?どうかした?」

あまりに驚いてしまったせいで声も出ず一瞬、思考回路まで止まってしまったかのように思えた。

油断してた。
寝てる、と思っていたのに。

それでも意外と早くに頭の中は動き始め、どんどん冷静になっていく自分が居た。


「ゴメン…ちょっと急いでるから」

⏰:10/07/14 01:30 📱:W64S 🆔:mhPY5WmM


#837 [東脂ヤ転
家を出なくちゃならない。
そればかりが頭の中にあったせいか、静兄が怪訝な表情で俺を見ていたことに気付かぬまま、部屋を飛び出す。

階段を駆け降りて、玄関まで後ろも振り返らずに走り出した俺の頭には北原の顔しかなかった。

焦る気持ちに比例するように心臓の音が早くなる。急いで皮靴に足を入れ、玄関の扉を開けた。その時、


「───鳴…っ!」


カバンを持つ左手がギュッと強く握られかと思うと、開けた扉をそのまま静兄によって再び閉められてしまう。
しかし、バタン、という音を立てて閉じられた扉を前にしても、俺の焦る気持ちは鎮まらない。

⏰:12/01/06 18:39 📱:W64S 🆔:qAq1Kv9g


#838 [東脂ヤ転
「静兄…離して…」


握られた左手が熱くて、痛い。
掌から伝わる温もりから静兄が俺のことを本気で心配してくれていることが伝わってくる。
いつもならこんなに嬉しいことなんて無いのに…。


「…鳴」


今はその優しさが俺を苦しめる。


「ホントに遅刻しそうなんだって…!」


何とか力を振り絞って言い訳じみたことを口にしてみたけれど、静兄の前では何の意味も果たせずに言葉だけが宙に舞って消え入ったようだった。

⏰:12/01/10 17:25 📱:W64S 🆔:p.4EmC32


#839 [東脂ヤ転
 

「鳴、ちゃんと俺を見て」
 

何も言えなくて俯く俺に、静兄は穏やかな声で話し掛ける。この声に俺が逆らえないのを知っているからだろう。あまりに優しい声色だから思わず泣きついてしまいたい衝動に駆られそうだった。


「静兄…俺……」


でも、




「鳴、何してんの?」





出来るわけなかった。

⏰:12/01/10 17:36 📱:W64S 🆔:p.4EmC32


#840 [東脂ヤ転
 
「メールの返事はくれたのにさぁ…出てくるの遅いっての」

後ろから聞こえているのは聞き慣れた声なのに、自分の身体が言うことを利かなくて怖い。まるで身体中の血の気が引いていくような感覚に苦しくなる。

せっかく静兄が閉めてくれたドアに鍵は掛かっていなかったのだろう。さっきまで俺が握っていたドアノブに、今は北原の手が重ねられていた。


「……君は…確か、」


張り詰めた空気の中で先に口を開いたのは、静兄。
 

「“初めまして”じゃないですよ?」


そして、静兄の言葉に返答したのは、何故か可笑し気に笑っている北原だった。

⏰:12/01/17 16:35 📱:W64S 🆔:/P8FFxcc


#841 [東脂ヤ転
 
「北原直樹って言います。鳴と同じクラスなんで、参観日の時に俺のこと見ませんでした?」

淡々と、不自然な程落ち着いた声で話す北原の方を見ると、何を思っているのか読み取れないような笑みを浮かべている。


「……あぁ、思い出したよ。北原っていう名前だったんだね」

そんな北原とは反対に静兄の声は俺でも分かるくらい、静かな怒りに満ちていた。
1番怒らせたくない人を怒らせてしまった。小さな罪悪感は徐々に膨らんで、俺の全てを呑み込んでいくような感覚になる。

そして右手は北原に、左手は静兄に握られた状態のまま俺はどうすることも出来なくて、ただただ床を見つめていた。

⏰:12/01/17 17:13 📱:W64S 🆔:/P8FFxcc


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