人生の案内板
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#350 [幸]
『そんな、平気だよ』


私はそうノートに書いたが
押しに弱い私はかけるに
送ってもらうことになった。




内心、嬉しかったかも。

⏰:09/01/18 18:27 📱:W53H 🆔:D39xBK4k


#351 [幸]
2人だけでいると
周りの雑音が大きく聞こえる。



“なんで泣いてたの?”

かけるは自分の携帯で
そう打ち、私に見せた。

私は言いたくなかったので
下を向いた。

⏰:09/01/19 12:48 📱:W53H 🆔:stkJuNbg


#352 [幸]
“言いたくない?”



本当にかけるはずるい。
そんな顔で聞かれると
言うしかない。


『13才の少年が障害の弟を
殺害した事件を知ってる?』


と聞いた。

⏰:09/01/19 12:51 📱:W53H 🆔:stkJuNbg


#353 [幸]
“ああ〜あの事件がどうかしたの?”


私は少年のことを話した。

かけるは私が打った文字を
黙って読んだ。

⏰:09/01/19 12:54 📱:W53H 🆔:stkJuNbg


#354 [幸]
“君が泣く必要ないよ
君のせいじゃないから

君は自分がやりたい事をすればいいんだ。”



とても嬉しかったが
私は納得できなかった。

『私ね、夢とかないんだ。
だから人のためになる仕事をしたい…

でもこんな私でも心理学
に興味を持ったの
だから心理学に関わる仕事をしたいんだ。』

⏰:09/01/20 12:54 📱:W53H 🆔:k.nwwmC2


#355 [幸]
するとかけるは私の前に立った。

いつもの優しい顔ではなかった。
見下ろして私を見てたから
余計怖かった。




“かなちゃんは人のために
生きてるの?
違うだろ。”


胸がズ―ン…と鳴ったみたいだった。

⏰:09/01/20 12:59 📱:W53H 🆔:k.nwwmC2


#356 [幸]
図星だったからだ。



かけるは私の本当の気持ちを
察してくれた。

⏰:09/01/20 13:03 📱:W53H 🆔:k.nwwmC2


#357 [幸]
自分も認めたくはないが
そうだと思った。



でも知られたら無性に
腹が立ってきた。
私の何を知ってるの?

何も知らないくせに…

⏰:09/01/21 17:33 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#358 [幸]
『私の勝手でしょ…
これは私の勝手な生き方なの!!』



知ったような口調で言わないで…


“俺は思ったことをただ…”



かけるは驚いてた。
そりゃそうだよね。

⏰:09/01/21 17:35 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#359 [幸]
『…ごめんなさい。
ここでいいよ。
家近いし。
じゃあ、ありがとう。』


そう言って私は走った。

母さんのため…
私は母さんのためにT大
に行こうとした。

自分の人生なのに…。

⏰:09/01/21 17:38 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#360 [幸]
“人ために生きてるの?”


その言葉が邪魔で仕方なかった。




私のこと何も知らないくせに…

私は暫くそう頭で言い続けてた。



すると、あの少年が脳裏に浮かんだ。

⏰:09/01/21 17:40 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#361 [幸]
あっ…
あの少年も私に言われた時
そう思ったのか…。


何も知らないくせに…



今の私と同じ気持ちだったのね。

⏰:09/01/21 17:42 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#362 [幸]
家に帰っても誰もいない。


ついこの前は母さんが
笑ってたのに。




RRR…
突然、電話が鳴りだした。

その音で、母さんの笑顔が
私の頭から消えた。

⏰:09/01/21 17:45 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#363 [幸]
『もしもし?』
『おう、鮎川か!?』


この声は……


『高城先生?
どうしたんですか?』

『L大に行きたいんだろ?
あそこはお前の嫌いな
生物重視だから勉強しときなさい!!』

⏰:09/01/21 17:47 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#364 [幸]
『高城先生……』
『私もね、鮎川と同じ
夢がなかった。

でも、名の知られてる大学さえ卒業すれば
就職するとき、
就職する範囲が広くなるだろ?

でも、鮎川は夢ができた…。
その夢に向かって頑張りなさい。』



…先生……。

⏰:09/01/21 17:50 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#365 [幸]
『はい、ありがとうございます!!』



私は思わず体を深々と下げた。


『諦めるなよ?』
『はい!おやすみなさい』



生物かぁ〜
頑張ろう!!

⏰:09/01/21 17:52 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#366 [幸]
電話を切って、
早速生物を勉強しようとした。



『かな、電話で頭下げても
相手には見えないよ。』
いきなり父さんが現れた。

⏰:09/01/21 17:53 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#367 [幸]
『いつからいたの?』

『今さっき。
ご飯は?』



あっ……
『ごめん、作ってない。』

『え〜』

⏰:09/01/21 17:55 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#368 [幸]
翌日。

『え〜次の模試のため
この時間に志望校を
記入して。』



HRの時、先生にそう言われ
私は第一志望校をL大にした。

⏰:09/01/21 17:58 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#369 [幸]
『おい鮎川。』


休み時間、担任の先生に呼ばれ
相談室に入った。



『お前の頭ならT大に行ける。
なぜL大なんだ?』

こいつは高城先生みたいに
理解してくれなさそう…。

⏰:09/01/21 18:01 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#370 [幸]
『心理学を学びたいんです。』


でも、一応説明をした。


『心理学ぅ!?
まぁ、あそこは有名だからな。
でも心理学ならT大にもあんだろ。
T大じゃダメなの?』

⏰:09/01/21 18:03 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#371 [幸]
『だってL大の方が有名だもん。』


『あのな!!もし論文で
聞かれたらそう答えるのか?』



『論文?』
『あそこは国語がない
代わりに論文なんだよ。』



えええ!?

⏰:09/01/21 18:05 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#372 [幸]
『調べとけよ。
狙ってんだろ?』


『はい!!』



結構理解してくれるじゃん!!

うれしくなった。

⏰:09/01/21 18:07 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#373 [幸]
放課後だった。
ちえみがいつもと違う
雰囲気で私に話しかけたのは…。



『なに?』

私は屋上に呼ばれ
重たい足で登ってきた。

⏰:09/01/21 18:13 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#374 [幸]
『かな…T大に行かないの?
なんで!?あんなに行きたがってたじゃん!?』



『T大より、行きたいと
思った大学があったから…。』


ちえみは何かを言いたさげな表情だった。

⏰:09/01/21 18:15 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#375 [幸]
『ちえみ……?』


『私、かなは羨ましいと思ってた。
いや、嫉妬してた…。

頭いいし、家族仲いいし、運動凄いし…

だから勉強だけは負けたくなかった。
でも、私がどんなに努力しても
かなにはかなわなかった。』


嫉妬………
そんなこと思ってたの?

⏰:09/01/21 18:19 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#376 [幸]
『かなを目標として
今まで勉強してたのに
そのかながランク下げてL大…?
なめてんの?


L大はT大と違って
倍率が低いから入りやすいんだよ。
だからかなならすぐ受かるわ。』



『ちえみはいいよね…。』


言われっぱなしの私じゃない。
言い返してやった。

⏰:09/01/21 18:24 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#377 [幸]
『ちえみは夢があって、
自分の夢のためにT大
を目指して…
でも私は違った。

自分のためにT大を目指してた
わけじゃないの。

でも、ようやく夢見つかったの。
私はその夢のために
L大に行くの。
別に逃げ出したわけじゃないから!!』



ちえみはさらに怒り出した。

⏰:09/01/21 18:28 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#378 [幸]
『私も看護という夢があるわ!!
でもT大を受験する…

私はね、かなと違って
小、中、高ってスライドだったの。

だからT大に入らなきゃいけないの!!』



『でも大学を選ぶにも
最優先したのは小さい頃からの
スライドでしょ?』


外は日が暮れてて
鳥が1羽、速く飛んでいた。

⏰:09/01/21 23:19 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#379 [幸]
『なっ……』
『ちえみはそこまで
看護婦にはなりたいとは
思ってないんじゃないの?』




ここで、こんなところで
友情ってなくなってしまうもんなのかな?

⏰:09/01/21 23:24 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#380 [幸]
かと言って、
ここで私が謝ったら
さっき言ったことが
説得力ないって思われそうだったから

何も言わず去った。




……意見が違うって
大変なんだなぁ。

⏰:09/01/21 23:25 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#381 [幸]
もし、この出来事で
前みたいに話せなくなったら
どうしよう。。。
でもちえみはそんな奴じゃないと思うけど。




かけるも、小早川君も…
なんか最近、ケンカばかりだなぁ。

⏰:09/01/21 23:27 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#382 [幸]
そんなことを考えながら
図書館に行った。



1時間勉強したが、
いつもより集中できなかった。

気晴らしに本を読もうとした。

⏰:09/01/21 23:32 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#383 [幸]
すると“手話”という
文字が見えた。


手話……
手話をできるようになったら
かけると話せる…。



私が振った話のせいで
ケンカになったんだから
私から謝らなきゃ。

⏰:09/01/21 23:33 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#384 [幸]
さっそく席に着き、
やってみた。



おはようございます
こんにちは
さようなら


日常会話をまず覚えよう。

⏰:09/01/21 23:35 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#385 [幸]
私は手話に没頭してしまい、
どんどんページをめくった。



すると、“好き”という文字が目に入った。



こうやって告白するんだなぁ…
と、改めて理解できた。

⏰:09/01/21 23:37 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#386 [幸]
“好き”という言葉は
〜したいという言葉と
同じ動作をする。



へぇ〜…
じゃあもし私がかけるに
告白するとき………


って、私何考えてんだっ!?

⏰:09/01/21 23:38 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#387 [幸]
とりあえず、この本を
借りようと思い、
席を立ったとき

小早川君が私の後ろにいたことに気づいた。




『あっ…鮎川…』
『へっ?』

⏰:09/01/21 23:40 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#388 [幸]
『何してんの?』
『えっ……あっ、そ…』


どうやら私は変な行動をしてたらしい。


私はその本を借り、
小早川君と一緒に帰った。

⏰:09/01/21 23:41 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#389 [幸]
『鮎川!!』


沈黙の中、切り出したのは
小早川君だった。



『この前はごめん!!
俺……』

『違うの…私の方こそ
ごめんなさい…。』

⏰:09/01/21 23:43 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#390 [幸]
『人の意見を勝手に
拒否って…
私の意見が正しいわけじゃないのに。』



そう言って私は歩き出した。

すると小早川君は笑顔で

『これで仲直りだな』


と答えた。
私も笑顔で返事した。

⏰:09/01/21 23:45 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#391 [幸]
『あのさぁ、手話の本を借りて
習得したいの?』



小早川君の突然の質問に驚いた。
でも、なんとか答えた。

『うん、勉強の気晴らしに
手話の本を読んで
日常会話くらいは覚えたいの。』


『なんで?』
『手話で話したいから!!』

⏰:09/01/21 23:48 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#392 [幸]
私は笑顔で言った。


『……誰と?』




小早川君は足を止めて聞いた。


『ん〜私が怪我をした時
ハンカチをくれた人と。』



さすがに本当のことは
言えなかった。

⏰:09/01/21 23:50 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#393 [幸]
『そっかぁ。』


小早川君は再び歩き始めた。



そして、そのまま別れた。

ふと携帯を見てみると、
メールが来ていた。

⏰:09/01/21 23:52 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#394 [幸]
相手はかけるだった。



“今すぐあのレストランに恋。”



うれしかったが
なぜ来いっていう字が恋なんだか。

私は急いでレストランに向かった。

⏰:09/01/21 23:55 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#395 [幸]
『はぁはぁはぁ…。』



レストランの看板には
“準備中”と書いてあった。


私は気にせずに入った。


『やぁ、かなさん。
いらっしゃーい!!』

と、またあの男性がいた。

⏰:09/01/21 23:56 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#396 [幸]
『かけるに呼ばれたんですけど…』


『かけるが聞いてほしいって。』




奥を見ると、かけると
目があった。

その途端、ピアノの演奏が始まった。

⏰:09/01/21 23:59 📱:W53H 🆔:M3EENPQc


#397 [幸]
とても綺麗だった…
イライラしてた気分が
一気に忘れさせてくれる。


かけるのピアノ好きだなぁ。




かけるのピアノは
どこまでも続いていた。

⏰:09/01/22 00:00 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#398 [幸]
かけるは弾き終わると
私に手話で話しかけてきた。



『‘昨日わごめん!!
このピアノで許して?’だって。』

男性が手話を通訳してくれた。



『平気だよ。
素敵な音楽、ありがと』

かけるは私の口で読んだのか、
ゆっくり笑顔を見せた。

⏰:09/01/22 00:04 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#399 [幸]
そしてまた手話をした。


『‘家まで送る’だって』


『えっ?いいよ。』

『‘少しぐらい格好つけさせろ’だって。』


『じゃあ、お言葉に甘えて。』

⏰:09/01/22 00:06 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#400 [幸]
2人でずうっと笑いあってた。
この時間がとても愛しく思えた。



『ごめんね〜。
今日は定休日だったし
かけるがいきなりピアノ
貸してって言うからさ―
ご飯ないの。』



と、男性が言った。

『いいえ、ピアノを
聞くために来たんですから。』


本当はかけると話したかっただけだけど。

⏰:09/01/22 00:11 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#401 [幸]
『ならよかったぁ。
気をつけてね。』


『はい!!』
『あれ?かなさん、
少し顔、赤くない?』


『そうですか?
走ってきたからだと
思いますよ。』



多分……。

⏰:09/01/22 00:13 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#402 [幸]
そういえば、あの人も
私のこと名前で呼んでるんだから
私も名前で呼ばないと。


『すみません、名前
なんて言うんですか?』
『ああ―源蔵。
変な名前でしょ?
だからかけるみたいに
“じじさん”って呼んで?』


『…じじさん…』

私は口にだした。

⏰:09/01/22 00:16 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#403 [幸]
『いやだ…?』

『いえ、店の主人と
こういうあだ名で呼び合う
って凄いうれしいっていうか…』


『そうかい、じゃあね。』



じじさん……
本当にいい人だなぁ。
改めて思った。

⏰:09/01/22 00:18 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#404 [幸]
私は歩きながら携帯で
文字を打って、
かけると話した。



じじさんとの関係など
色んな話をした。

“両親が亡くなったらしく、
俺の育ての親なんだ。
でもじじいみたいだから
俺がじじさんってあだ名考えたんだ。”



かけるはじじさんの話をするとき
子供のようにはしゃいでいた。

⏰:09/01/22 00:22 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#405 [幸]
…それにしても暑い。
まだ秋だからかな?
今は温暖化だし。

さっき走って、今歩いてるせいか…?




ああ…かけるが一生懸命
携帯打ってる。
まだ話したいことがあるんだ…。

でも………

⏰:09/01/22 00:24 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#406 [幸]
そう―。
かけるは耳が聞こえないんだ。


だから私が倒れてた音が聞こえなかった。

おまけに携帯打ってる のに集中してるから、
なおさら――。

⏰:09/01/22 00:25 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#407 [幸]
隣で歩く気配がない…。
あれ?
かな……?



ようやくかなが倒れてることに気づいたかけるは、

慌てて来た道を戻った。

⏰:09/01/22 11:48 📱:W53H 🆔:ORnfeSKs


#408 [幸]
かな!!
かな!!

心の中で叫んでも
誰も気づかないし、
返事も聞こえないこの世界。



かけるはこんな自分を
どう思ったのだろうか?

⏰:09/01/23 19:59 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#409 [幸]
一方、私は頭はボ―っとしていて
体も熱かった。



か…かける…。

世の中は酷いなぁ。
人が倒れてるのに
知らんふりかよ。

⏰:09/01/23 20:01 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#410 [幸]
誰もタスケテクレナイ…


自分しか、守れないんだ。
自分で立ち上がらなきゃ…。



ザザっと音がした。
誰かが私の前に立っていた。

⏰:09/01/23 20:04 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#411 [幸]
顔を踏ん張ってあげてみる。



かける……?
かけるだ…

息が荒い、かけるの吐息が
頬に当たる。



必死に人差し指を左右に振っている。

⏰:09/01/23 20:06 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#412 [幸]
たしか…その手話は…



私は少し上半身をあげ
左右の胸の少し上を
片手でタッチした。


‘大丈夫だよ……’




その後のことは覚えてない。

⏰:09/01/23 20:10 📱:W53H 🆔:ORM6OE96


#413 [幸]
柔らかい匂い。
ああ、私この匂い好き。


なんだろ?
なぜこんなに癒されるんだろ?



母さん…?

⏰:09/01/24 00:50 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#414 [幸]
母さんがスタスタと歩いてる。
私は必死に追いかけた。


『母さん!!』

やっと追いつき、
母さんの腕を掴んだ。


『…かな。』


母さんは少し悲しい顔で振り向いた。

⏰:09/01/24 00:51 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#415 [幸]
『どうしたの?』


私がそう聞くと、母さんは
さらに悲しい顔をした。


『あんた……L大に行くんでしょ?』

『えっ……?』



母さん………?

⏰:09/01/24 00:53 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#416 [幸]
『私が死んだ日、
誓ってくれたわよね?
絶対T大に行くって…』

『ごめん……
でも私、L大に行きたい…。
約束破っちゃうけど、

違う……母さんとの約束を破ってまで
L大に行きたい…。』



こんなに自分の意見を主張したことがなかった。

⏰:09/01/24 00:55 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#417 [幸]
母さんはどう思ってるのかな?


少し心配になったので
母さんの顔をよく見ようとした。


すると母さんは

『そう…。ならなんで
母に言わなかったの?

最近、私寂しいの。
あなたが仏壇に来てくれなくて。』

⏰:09/01/24 00:58 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#418 [幸]
と、また悲しい顔をした。


『春の頃はよく仏壇に
来て、話しかけてくれたのに。


私との約束を破ってまで
行きたい大学ならそれてよい。

しかし、私にちゃんと
言ってほしかった…。
あなたは私の子どもなんだから。。。』



そう言いながら抱きしめてくれた。

『母さん……。
ごめんね。これからは
ちゃんと話しかけるから…。』

そう言った。

⏰:09/01/24 01:01 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#419 [幸]
『かな。
人の心のわかる人になってね…。』


そう母さんが言うと
私から離れようとした。

『待って!!
なるから行かないで!!
私を置いてかないで!!』


とっさにそう叫んだが
母さんは消えてしまった。

⏰:09/01/24 01:03 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#420 [幸]
『母さん!!』


そこで目覚めた私。



夢……。
んだよ、夢かよ…
てか、ここは…?


見覚えのない風景。
私は記憶を遡ってみる。

⏰:09/01/24 01:05 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#421 [幸]
時計は…!?


携帯で時間を見てみると
7時を回っていた。




『しっ…7時!?』


私は起き上がろうとしたが
体がふらついてしまって、そのままベッドに倒れた。

⏰:09/01/24 01:32 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#422 [幸]
‘こら〜ちゃんと寝なきゃ。’



この文字がいきなり現れた。
かけるの字だ。


かけるが私の顔に近づいてきた。



な…なになになに〜?
心臓が速く動いているのがはっきりわかる。

⏰:09/01/24 01:34 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#423 [幸]
『も、もう大丈夫ですカっっラ…。』



そんなに顔を近づけられると
何を話せばいいのか解らなくなってくる。


かけるは急いでノ―ト
に何かを書き出した。

⏰:09/01/24 01:36 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#424 [幸]
‘熱を計らせて頂いたよ’


『えっ…?』

‘8度もあれば倒れる
てか、俺がもう少し早く
気づいてやれば…’



かけるは悲しい顔をしていた。
その顔が夢の中で出てきた
母さんととてもかぶった。

⏰:09/01/24 01:38 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#425 [幸]
『ううん……
てか、私の話してる事
わかるの?』



今まで普通に話してきたのに…。
そう疑問を持った。

本当はこの話しを反らしたかっただけだが。



‘今、補聴器をつけてるからね
多少聞こえる。’

⏰:09/01/24 01:40 📱:W53H 🆔:x4n0L59A


#426 [幸]
『そうなんだぁ。』



すると、お粥が出された。

『作ったの?』


‘当たり前だろ
食べないと元気でないからな’



私は一口一口、味わいながら食べた。

⏰:09/01/25 23:49 📱:W53H 🆔:9aEmbiE.


#427 [幸]
『おいしい…』
‘誰が作ってもそんな味だよ’



かけるはそうノ―トに書くと
薬の水を出した。


ううん…
かけるが作ったと
わかっているから余計
嬉しくて元気がでるんだよ。


そう心の中で言った。

⏰:09/01/25 23:52 📱:W53H 🆔:9aEmbiE.


#428 [幸]
‘明日も学校だよな?
休んだ方がいいよ’

明日は土曜日。
いつも通り学校はある。
しかし、私はL大合格
を目指している。
時間を無駄にしたくない。

⏰:09/01/25 23:56 📱:W53H 🆔:9aEmbiE.


#429 [幸]
『嫌…。私、一応受験生だし。』


‘風邪治してからの方が
頭に入るよ?’


『嫌。』




かけるは顔で会話してるかのように
表情が豊かだった。

話さなくても、
かけるの言いたいことが分かる。

⏰:09/01/26 14:44 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#430 [幸]
かけるは悲しそうな顔をした。
なぜか私がイジメてるみたいだ。


『わかったよ!!
学校には行かないから
私ん家まで送ってほしいんだけど…。』


‘いいよ。
車に乗れよ’



車!?
えっ…まじ!?

⏰:09/01/26 14:48 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#431 [幸]
かけるはすぐさま、
車の鍵を持って行ってしまったので

私はしぶしぶかけるの車に乗った。



ふと、車の横の建物を見た。
大きな綺麗なアパートがある。

⏰:09/01/26 14:52 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#432 [幸]
ここの二階の一番左に
かけるの部屋があった。

私はかけるがいつも寝ているベッドで…
キャ―と叫びたくなった。
かけるの匂いが体にしみてるかのように
覚えてる。



今乗っている車も
少しだけかけるの匂いがする。

⏰:09/01/26 14:54 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#433 [幸]
そう思ってる時、
かけるが運転席に乗り
隣にいる私に携帯で文字を打ち、
聞いた。


‘かなさんの家の近くに何がある?’

私も携帯で文字を打ち


『〇〇ラ―メン屋がある』
と言った。

⏰:09/01/26 14:57 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#434 [幸]
‘了解’
かけるはそう手話でし、
カ―ナビで〇〇ラ―メン屋を調べ、
そこに向かってアクセルを踏んだ。




運転中の時は話せない。
ちょっと寂しかったが
信号で止まるたびに、
かけるがその時にしか
見せない笑顔で私に微笑みかけてくれた。



その瞬間が無性にかわいくて
頭が重いはずなのに、
忘れてしいそう。

⏰:09/01/26 15:01 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#435 [幸]
そして私の家に到着。



さきほどよりフラフラ
しなくなったが
頭がまだ痛い。


かけるは私の部屋まで
寄り添いながら私を運んでくれた。

さっきはそんなこと
しなかったくせに。

⏰:09/01/26 17:04 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#436 [幸]
‘おれん家にあった風邪薬
ここに置いとく。’



かけるはそうノ―トに書き
私の机の上に薬を置いた。


『ありがと…。』

確か、ありがとの手話は…。


よく思い出しながら
私はお礼の手話をした。

⏰:09/01/26 17:07 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#437 [幸]
するとかけるはとても
嬉しそうに笑った。

‘手話できるの?’



『ううん。挨拶しか…』

‘でも上手だよ
〈大丈夫〉も上手だった’

⏰:09/01/26 17:11 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#438 [幸]
『えっ…えへっ』


‘なに照れてんの?’


『べっ、別に照れてないし。』


‘はいはい。
でもなんで手話を?’



言えるか―!!?

⏰:09/01/26 17:15 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#439 [幸]
絶対言いたくない。
言ったら調子こくもん。
私はしばらく黙っているとかけるは


‘まぁ、別にいいけど’
そうノ―トに書いた。


なぜか寂しかった。


するとかけるは私の机
にあったL大の赤本を取った。

⏰:09/01/26 17:19 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#440 [幸]
‘かなさん、L大目指しているの?’


『うん…
心理学を学びたくて。』

‘ふ〜ん。推薦で?’



…推薦。

⏰:09/01/26 17:21 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#441 [幸]
‘でも心理学部の推薦
はむずいよ
全部論文だし。’




『私はセンターで受験するつもりだけど…』

‘あっ、そうなんだ。’


一般入試の論文をさけるためにね。

⏰:09/01/26 17:23 📱:W53H 🆔:yU/awDHY


#442 [幸]
‘そなんだ。
じゃあ、頑張れよ
待ってっから。’



自分の顔が熱くなってるのが
よくわかった。


『早くかえれ!!』

と叫び、布団にもぐった。

⏰:09/01/28 11:26 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#443 [幸]
ツンツンと、綺麗な指で
つつるかける。



『なに?』

‘熱あがったんじゃん?
さっき顔が赤かった。’


『いいから早くかえれ!!』


と、叫びながら玄関まで
かけるの背中を押した。

⏰:09/01/28 11:29 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#444 [幸]
ガチャ―

玄関の開ける音。



『かな?』
『父さん!?』


父さんがこちらをびっくりした顔でみていた。



『だっ……だっ…』

顔をピクピクさせながら
そうきいた。

⏰:09/01/28 11:31 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#445 [幸]
『父さんこの人は…『お前は黙ってろ!!』



私が言おうとした瞬間、
父さんが怒鳴った。



‘娘さんの友達です。
娘さん、風邪気味だったので
家まで送りました。

では失礼します。’



かけるはそうノ―トに書くと、
私に会釈して帰った。

⏰:09/01/28 12:06 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#446 [幸]
『なんだよ。ノ―トに
こまこま書きやがって。
そんで俺が来た途端に
逃げやがって。
情けない男。』



私は父のその一言がすごく傷ついた。

それと同時に憤りを覚えた。


『そんなこと言わないで!!
彼は耳が聞こえないの
話さないんじゃない!!
話せないの!!

なんで気づかないの?』

⏰:09/01/28 19:05 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#447 [幸]
怒鳴り声をあげた私と裏腹に
父は静かな声で言った。


『世の中にはな、かな
みたいな人ばかりじゃないんだよ。

俺みたいに鈍感なやつもいるんだよ。』



そして父は速やかにテレビのスイッチを押した。

⏰:09/01/28 19:07 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#448 [幸]
一言、謝ればいいのに。
そう思いながら布団に入った。




翌日。
熱もすっかり下がったので
学校に行った。

⏰:09/01/28 19:12 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#449 [幸]
『かな!!』


ちえみの声に反応してしまった。



いつもなら喜ぶのに。


『ちえみ……』
『私はT大を目指す。
だから…お互い頑張ろ。
あなたは私の友達。
そしてライバル。
私はずうっとこの関係でいたいんよ。』

⏰:09/01/28 19:18 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#450 [幸]
私はちえみの言葉を決して
忘れないだろう。

こんな友達、初めて。




『私も……。』


私がちえみの立場だったら
こんなことが言えるのか?


いや、ちえみの性格だからこそ
言えるのだ。


そういう所が尊敬してしまう。

⏰:09/01/28 19:21 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#451 [幸]
もうこの時期になると
休み時間の時でもみんな
勉強している。

勿論、私も。そしてちえみも。





しかし私は休み時間に
なった時必ず携帯をチェックする。

⏰:09/01/28 19:24 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#452 [幸]
メール……来てません。

一応かけるに謝罪のメールをしたが
返ってきません。

怒ってるのかな…。




ああ〜…
かけるのばか!!
返事よこせ!!

⏰:09/01/28 19:30 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#453 [幸]
弁当の時、
ちえみが話しかけてきた。



『さっき落ち込んだ顔してたでしょ?
どうしたの?』


弁当の時しか、こういう話をすることができないので、
私は一気に話した。

⏰:09/01/28 19:31 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#454 [幸]
『向こうはね、大学生よ。
そんな早く来るかな?』


『だって!!』
『かな〜。
あなたって、かける君
がいなきゃだめなのね!』

『んなことない!!』



ちえみは卵焼きを、
私は梅干しを食べていた。

⏰:09/01/28 19:34 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#455 [幸]
『鮎川!!
何ボ―っとしてる!?』



授業中、数学の先生に怒られた。


『一応、問題解いてますから。』


『その顔でか!?』



カチンときたので、
今まで解いてたノートを見せた。

⏰:09/01/28 19:37 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#456 [幸]
『いや〜失敬。
鮎川は顔に似合わずやってるんだなぁ。』



クラスがざわっと笑いだした。



弁当の時、
ちえみは卵焼きを一口
くちに入れて聞いた。

⏰:09/01/28 19:40 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#457 [幸]
『どうしたの?
本当に数学の先生時、
変な顔してたよ。』


『だって…
あれから一週間もメール来てないんだよ!?

絶対嫌われた…。』



…………。
かける……。

⏰:09/01/28 19:43 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#458 [幸]
『男はメール嫌いじゃん』

『私とのメールに飽きたの?』


『いや、…てか付き合ってないじゃん
かなたち。』


『だって、かけるは電話
できないんだよ?
メールしか連絡取れないんだよ?』


『うん…そだけど…』 『てことは…私と連絡取りたくないんだぁ!!』

⏰:09/01/28 19:50 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#459 [幸]
『わ…私だって陸から
メールこないときあるよ!』



と、ちえみは言った。


『でも一週間はないでしょ!?』

『あのね―!一応私たちは
つき合ってるからね。』


テンションが低いこの頃。

⏰:09/01/28 19:55 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#460 [幸]
そして帰りのHRに模試の結果が配られた。



お……L大A判定だ!!
さすが私。(笑)


『T大もAだし。
この調子で頑張れ!!』

担任にそう言われ、
ますます気合いがわいてきた。

⏰:09/01/28 20:58 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#461 [幸]
今日は父さんはご飯いらないってメールきたし、
あのレストランに行くぞ!


そう思い、急いで学校をでた。

⏰:09/01/28 21:00 📱:W53H 🆔:vvhWMjeI


#462 [幸]
一週間ぶりにきたあのレストラン。


思い切って中に入った。

『やぁ、かなさん。』 じじさんが優しい声で
迎えてくれた。

⏰:09/01/29 10:55 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#463 [幸]
『じじさん、かけるって
生きてるの?』


『いきなり凄いこと聞くね。
生きてるよ。』




そう話してると、ピアノの音が聞こえた。


私はかけるだと思い
見てみたが、違う人だった。

⏰:09/01/29 10:57 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#464 [幸]
『かけるがどうかしたの?』


『…メールが来ないんです。』



私はじじさんに話すと
じじさんは腹を抱えて笑っていた。


そんなに笑うことかな?


『んでここに来たと。
でもかなさん、今日は
かける、バイトじゃないんだよ。』

⏰:09/01/29 11:01 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#465 [幸]
『そうですか…』


私は失礼しましたと言い
レストランをでた。



レストランを出て、
暫く歩いて気づいた。

ご飯食べるんだった…と。

⏰:09/01/29 11:03 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#466 [幸]
『鮎川!!』


振り向くと、小早川君がいた。


『小早川君…。』
『鮎川!!
国語教えて!!』


私は正直、小早川君と
勉強をしたくなかった。

⏰:09/01/29 11:07 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#467 [幸]
『なっなんで?』
『俺、今日返ってきた模試
悪くて……。

だからお願い!!』




家に帰ってもかけるから
メール来ないし、
別にいいか。


そう思い、小早川君の頼みを承諾し、
小早川君の後を歩いた。

⏰:09/01/29 11:13 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#468 [幸]
私は今まで1人で家に
いたことがない。

1人になると、勉強も
スムーズにできないからだ。

1人になると、必ず図書館などで勉強をする。



でもかけると知り合って、
家でも勉強をできるようになった。

勉強すれば、かけるからメールが来るからだ。



なんて単純な理由…。

⏰:09/01/29 11:16 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#469 [幸]
『鮎川…?』

小早川君がいつもより
低い声で私の名前を呼んだ。


『なあに?』
『図書館、この時間帯
開いてないから
俺んち、来ないか?』



『…いい……。』

⏰:09/01/29 11:19 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#470 [幸]
なんか…嫌だった…。


『頼むよ…。
俺、国語さえよければ
いいんだよ…。
鮎川っ!!手伝ってくれよ。』


小早川君はだんだんと
大きい声をあげ、
私の肩に手をかけた。




『T大に行きてぇんだよ!!』


小早川君が大声で叫んだ。

⏰:09/01/29 11:24 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#471 [幸]
『わかったよ…。』
『鮎川っ!!ありがと!』



承諾しちゃった…。
大丈夫だよね…
小早川君は勉強のことしか
頭にないよね……?


私はそう言い聞かせながら
小早川君の家へ向かった。

⏰:09/01/29 11:26 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#472 [幸]
『大きい…。』
小早川君の家に到着。


にしても、大きい…。




『俺の部屋。』

そう小早川君に誘導され入った。


参考書でいっぱいの部屋だった。

⏰:09/01/29 11:29 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#473 [幸]
『模試の見直しやろう!』

小早川君はそう言って
準備をし始めた。




…私、なに勘違いしてたんだ…
ちょ―恥ずかしい…。

そう思いながら私も
準備を始めた。

⏰:09/01/29 11:31 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#474 [幸]
『これさぁ、なんでこうなるの?』



小早川君の質問に私は
丁寧に答えた。

また、私は政治経済が
わからなかったので
お互いに質問し、答えてた。


2時間、模試の見直しをした。

⏰:09/01/29 11:33 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#475 [幸]
『じゃあ、私そろそろ…』


気づけば8時。
お腹すいたし、帰りたかった。


私が帰ろうとした時
小早川君が私の腕を掴んだ。



『鮎川……』
小早川君の顔がゆっくりと
近づいてくる。

⏰:09/01/29 11:36 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#476 [幸]
『こっ小早川君…。』

『鮎川って、好きな人いるの?』



その質問に戸惑った。
暫く何も言わなかった。

『いるんだ…。』

⏰:09/01/29 11:38 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#477 [幸]
『かっ帰るね…。』



私は小早川君の腕を振り払った。
そして逃げるように去った。



『よう、今暇なの―?』

見知らぬ男にからまれた。

⏰:09/01/29 11:43 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#478 [幸]
時計は8時半を指していた。

私は今までこんな夜に、
1人で出歩いたことがなかった。



だからこんな経験も初めて。


『すみません…。』


そう言って逃げようとしたが
囲まれていた。

⏰:09/01/29 11:45 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#479 [幸]
何か話しているが、
全く耳に入らなかった。

怖い……
怖い。。

嫌…

『かける―!』


思わず、叫んでしまった。

⏰:09/01/29 11:49 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#480 [幸]
『かっ…かけるだとぉ!?』

『やべーよ、この女。』
『逃げるぞ。』



と、逃げていった…。



………?
なぜに?

⏰:09/01/29 11:51 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#481 [幸]
私はなるべく大通りを
通って帰った。




玄関に誰かがいた。

『かける……?』


かけるがこっちを振り返った。

⏰:09/01/29 12:02 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#482 [幸]
‘今日、じじさんの所
に行ったらかなさんが
来たって言われて…’



携帯でそう打たれていた。

私も携帯で打った。

『私の父さんがご迷惑
をおかけしました。』

⏰:09/01/29 12:04 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#483 [幸]
‘娘思いのいい父親だよ’


『そうかな?』
‘ああ。’



なぜか、かけるといると
自然に笑いがこみ上げてくる。

⏰:09/01/29 12:06 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#484 [幸]
‘テストだったからメール
できなかった。
ごめんな。’


『大丈夫だよ。』
‘本当に?’
『本当だよ!!』



なんだ…テストだったのか。
今までの私、なんだったんだ…。

⏰:09/01/29 12:08 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#485 [幸]
『と、言うわけなんです。』



翌日、学校でさっそく
ちえみに話した。
小早川君のことを除いて。


『あんたも早とちりなんだから。』

ちえみは笑いながらそう言った。

⏰:09/01/29 12:10 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#486 [幸]
『てか、文化祭来るの?』


ちえみがワクワクしながら聞いてきた。

文化祭……。
ここの文化祭は主に
2年生がメインだ。

3年生は受験なので…
だからカップルはよく
一緒に回っていた。

⏰:09/01/29 12:14 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#487 [幸]
『ちえみは?』
『陸が来てくれるんだぁ!!』



幸せそうに笑うちえみ。
私もかけるに聞いてみよう!!

⏰:09/01/29 12:15 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#488 [幸]
私はその夜、メールで
かけるに文化祭のことを言った。



‘いいよ。
高校の文化祭懐かしいな。’


と来た。
いやっったぁぁ!


私は今まで勉強と両立して手話も勉強してた。

文化祭の日までなるべく
携帯を使わないでかけると話せるようになる!!

と決めた。

⏰:09/01/29 12:39 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#489 [幸]
文化祭当日。


『陸くん、いる!?』



私はちえみに聞いた。

『ちえみ!!』


その時、金髪の男がそう叫んで
こっちに来た。

⏰:09/01/29 15:01 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#490 [幸]
『陸…』

ちえみは恥ずかしがっていたが
嬉しそうだった。



『あなたがかなさん?
ちえみがいつもお世話に
なってます。』


外見怖いのに、すごく
礼儀のある人でした。

⏰:09/01/29 15:02 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#491 [幸]
『いえ…こちらこそ。』

私も挨拶をした。




『かな!!かけるさんが
来たらメールしてね!!』

ちえみはこう言うと
陸くんと一緒に回った。

⏰:09/01/29 15:05 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#492 [幸]
予定より5分遅れている。

暫く待つことにした。




突然ツンツンと突かれた。

この匂い…かけるだっ!!

振り向くとかけるが笑っていた。

⏰:09/01/29 15:07 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#493 [幸]
『遅い〜!』
‘悪い悪い…’



私たちも歩き始めた。


‘手話うまくなったね’

『だって頭いいから』


‘言ったよ〜この子。’

⏰:09/01/29 15:09 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#494 [幸]
かけるとの会話が楽しかった。


私が手話を勉強したので
さらに楽しいと感じた。



‘クレ―プ食べたい’

『じゃあ並んでるね』

⏰:09/01/29 15:13 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#495 [幸]
かけるって甘いもの好きなんだ!


するとかけるが千円を私にくれた。



『えっいいよ。』
‘いいから。’



まだ曖昧な手話なのに
かけるは嬉しそうに手話で話してくれた。



会話することがこんなにも
楽しいことがわかった。

⏰:09/01/29 15:17 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#496 [幸]
あっ…
『かける!何がいい?』

と手話で聞いた。


‘チョコで’
『わかった』


かけるは本当に表情が豊か。


でもかけるの心の中までは
わからなかった。

⏰:09/01/29 15:20 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#497 [幸]
『おいし〜』

‘食べすぎると太るよ’

『太らないよ。』




何かの視線に気づいた。
ふと周りを見てみると
みんな私たちのことを見ていた。

⏰:09/01/29 15:24 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#498 [幸]
もしかして…私たちの
手話を見て―?



私はかけるの顔を見た。
かけるはその視線に最初から気づいていたのか
寂しく笑っていた。



『無理に手話をしなくても…』


私は小さい声で話した。

⏰:09/01/29 15:27 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#499 [幸]
‘別にいいさ。
俺は。慣れてる。
こういう目で見られてるの。’



かけるは携帯でこう打った。


どうすればいいかわからなかった。

今まで私に見せた笑顔は
偽りの笑顔だったのか?
それさえ疑問を持つようになった。

⏰:09/01/29 15:32 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#500 [幸]
『本当に?』

私は手話で聞いた。



‘かなさんは人目を
気にするの?’

かけるも手話でこう聞いた。

⏰:09/01/29 15:34 📱:W53H 🆔:WAe8sHqk


#501 [幸]
『…時と場合によるかな…?

でも、かけるがいいなら
よかった。』




もし、私がかけると出会う前に
手話しているカップルがいたら
どんな目で見ていただろうか?

⏰:09/01/30 14:19 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#502 [幸]
おかしいの?
なぜみんな笑ってるの?



ただ話してるだけじゃん!?
それを笑ってるの!?


トントンとかけるに叩かれ
我に返った。

⏰:09/01/30 14:21 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#503 [幸]
‘場所を変えよう’


そう言われ、あまり人がいない
図書室へ行った。




すごく静かだった。
外にはありの集団のような人ごみ。

⏰:09/01/30 17:07 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#504 [幸]
『次どこに行く?』


私はワザと明るいふりをした。



‘なぁ、俺と一緒にいて
楽しい?’




かけるからそんなことを聞かれ
とてもショックを受けた。

⏰:09/01/30 17:09 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#505 [幸]
『楽しくなきゃ一緒に
回ろうなんて誘わないから。』



‘なんか…今のその顔
つまらなさそう。’


『なんで!?』
‘俺は耳が悪い分、
人の顔を人一倍よく見る。

かなさんの顔、つまらなさそう。’

⏰:09/01/30 17:12 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#506 [幸]
『そんなことない!!
それは被害妄想じゃないの!?』



私が言った途端、かけるは
とても怖い顔をした。

‘かなさんは分からないんだよ!!
俺の気持ちが。

被害妄想してしまうほど
しょっちゅう笑われてたんだよ!!’

⏰:09/01/30 17:16 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#507 [幸]
やっぱり…無理なのかな?


健常者と障害者が仲良くなるって。




自然に涙が出てきた…


かけるは私の涙をみて
ぎょっとした顔をしてた。

⏰:09/01/30 17:17 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#508 [幸]
『トイレに行ってくる』

と手話で言い、私は
トイレで大粒の涙を流した。




『はぁ〜』
鏡を見てみると目が赤かった。

⏰:09/01/30 17:21 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#509 [幸]
『あれ?ここの高校だったの!?』



トイレから出てみると
あのチンピラのグループがいた。



なんでこんな所にいるんだぁ!?
普通いなくね?

泣いてた顔が一気に青白い顔になった。

⏰:09/01/30 17:23 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#510 [幸]
『お前、かけるって叫んだろ?
叫んでも来るわけね―だろ!』

『本当だよ。
かけるは耳聞こえなくなったんだからなぁ』




今度はチンピラの言葉が
しっかりと聞こえた。

⏰:09/01/30 17:25 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#511 [幸]
『脅かしやがって…』



よく私の顔覚えてるな…



そう思い、逃げようとした時、
誰かにぶつかった。

⏰:09/01/30 17:27 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#512 [幸]
『なに逃げようとしてんだよ!!』


そう1人が叫び、
近くにあったゴミ箱を蹴った。




『かける…』

私がそうつぶやいた。

⏰:09/01/30 17:28 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#513 [あすか]
がんばってください

この小説大好きです!

⏰:09/01/30 18:22 📱:P703i 🆔:iv0qlvd.


#514 [幸]
>>513
ありがとうございます


かなり励みになります~

⏰:09/01/30 20:13 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#515 [幸]
>>512から


そう呟いた時、見覚え
のある人差し指が現れた。


‘どうした?’


顔をあげてみる。


かける……なんで?

⏰:09/01/30 20:16 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#516 [幸]
『うっ……かける兄…』

1人の男がそう呟いた。


かける…兄!?

…兄!?


『かっ…風見先輩っっ』

他の人たちもみな、言葉を失った。

⏰:09/01/30 20:19 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#517 [幸]
『知り合いなの?』


私は手話で聞いてみる。しかしかけるは黙っていた。




『姉ちゃん!!通訳してくれ。』

チンピラの1人がこう頼んだ。
私は黙ってうなずいた。

⏰:09/01/30 20:22 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#518 [幸]
かけるはチンピラたちを
見ながら手話を始めた。


『‘もうお前らと話すことはない。
早く俺の前から消えろ。’と…。』


『かける兄!!
俺ら…あんたに謝りたくて…』


私は一生懸命通訳をする。

⏰:09/01/30 20:27 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#519 [幸]
『‘嫌、あの時は俺の
方が悪かった。
すまなかった…。
だから早く俺の前から
消えろ。

さもないと、俺の体が
耳がてめえらを許さない。’と…。』




『すみませんでした!!』

と、チンピラは大きな声をあげながら
消えて行った。

⏰:09/01/30 20:30 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#520 [幸]
かけるはゆっくり歩き始めた。


『かけるっ!!』



私は必死にかけるの腕を
掴もうとした。

しかし、かけるはくるっと振り返った。



そして手話をし始めた。

⏰:09/01/30 20:33 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#521 [幸]
‘さっきはごめん…
八つ当たりしてた。

やっぱ羨ましかった。
かなさんが。’



『ううん…私の方こそ
ごめん…。
かけるさんの気持ち
わからなくて。』



その時あの匂いがした。
柔らかい、私の大好きな匂いが…。

⏰:09/01/30 20:37 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#522 [幸]
文化祭も終わり、
かけると一緒にレストランへ向かった。



私はそこで勉強をし、
かけるはピアノを弾いていた。



じじさんが私の方に来て
『今日は何かあったの?』

と聞いてきた。

⏰:09/01/30 20:39 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#523 [幸]
『今日は私の高校の
文化祭だったので一緒に
回ったんです!!』


私はウキウキして答えた。



『楽しかったのかい!?』

じじさんが優しく聞いた。


『はいっ!』


私は笑顔で答えた。

⏰:09/01/30 20:42 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#524 [幸]
『ちょっと話して大丈夫かね?』


『大丈夫ですよ。
休憩しようと思ったんで。』



するとじじさんが
コ―ヒ―を一口飲み、
ゆっくりと語り始めた。

⏰:09/01/30 20:44 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#525 [幸]
かけるはY高校の
不良……だったんだ。
この辺でも有名でね。

あっ、不良っていっても
いきがってる程度でね。


いつも通り、喧嘩をしてたんだって。

でもその喧嘩は激しくて…
そこでかけるは聴力をなくしたんだ。

⏰:09/01/30 20:49 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#526 [幸]
「聞こえねー聞こえねー!!
なんでだ!?
なぜ音が聞こえねーんだぁぁ!?」


裏の倉庫で叫びながら泣いてた。
私はかけるとそこで初めて出会った。


私はかけるをこの店に呼んで
しばらく話たの。

⏰:09/01/30 20:54 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#527 [幸]
話したっていっても筆記でね。


「病院に行こう?
私が連れて行くから。
親は?」


「知らない。」

「なんで?」


「親は金だけ置いて行く。」




なんかね…ショック受けたね。
あの時は。

⏰:09/01/30 20:58 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#528 [幸]
それでね一旦かけるの家に戻って
お金と保険証を取りに来たんだ。


いや―封筒の中に20万あったのは
びっくりしたね。




それで病院に行った…。

⏰:09/01/30 23:05 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#529 [幸]
私もかけるも、喧嘩で
鼓膜が切れただけかと思った。

でも違った…。



神経に障害があったんだ。
その障害のせいで
かけるの耳は奪われたんだ。


手術しても治らない…。

⏰:09/01/30 23:16 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#530 [幸]
『今まで、聞こえてたんだ…。』



自分がいつ、不自由になるかわからない。


五体満足の人たちは
その有り難さがわからないだろう。

自分が、あるいは周りにいる人たちが
五体不満足になったら
初めて実感する……。



私はそうだった。

⏰:09/01/30 23:19 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#531 [幸]
『私がなぜかなさんに
この事を話したかというとね、

……かけるが笑ったんだ。』



『えっ?』


かけるのピアノが静かに
流れていた。

⏰:09/01/30 23:34 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#532 [幸]
『かなさんから文化祭
一緒に回ろうって誘われた!

耳が聞こえなくなってから
初めて女に誘われたって
喜んで私の所に来たよ。』



じじさんも、まるで
かけるを息子のように
可愛がっているせいか、
嬉しそうに話していた。


…そうか……。
だからここはこんなにも
暖かいんだぁ。

⏰:09/01/30 23:37 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#533 [幸]
『なんでもじじさんに
話すんですね。』


私はそう言い、水を一気飲みした。



『そりゃ、かけるは私の子。
…だと思って育ててるもん!』

じじさんは少し強調して言った。

⏰:09/01/30 23:43 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#534 [幸]
『じじさん!!
私今ね、手話覚えてる
最中なの!

じじさん、私と会話してる時も
なるべく手話で話してくれませんか?』




じじさんが羨ましかった。
かけるは私には何も話してくれないし。



って……嫉妬!?

まさかね。相手は男なんだから……。

⏰:09/01/30 23:46 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#535 [幸]
『いいよ。じゃあ今から
始めよう!』



にもかかわらず、じじさんは
笑って答えてくれた。

⏰:09/01/30 23:48 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#536 [幸]
月日は流れ、12月。


クラスメートはみな、
模試の結果で大学を決めてるので、
前よりさらにカリカリしてた。


一方私は1、2年生より
勉強してない。

でも、本当に行きたい
大学が決まったせいか、
家事をしながらの勉強の方が
頭に入る。

⏰:09/01/30 23:52 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#537 [幸]
『かな!』
『ちえみ!!』


今年最後の模試の結果が
配られた。



『A判定だった!!』
『私も!!』


ちえみと一緒にA判定が取れて
嬉しかったというより
ホッとした。

⏰:09/01/30 23:55 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#538 [幸]
『かなはセンターでL大でしょ〜?
頑張ってよ!!』


『オッス!!』



私はセンターのみで受験する。
ちえみはセンターの8割
を取らないと一般を受験
させてもらえないらしい。


でも、お互い頑張らなきゃ!!

⏰:09/01/30 23:57 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#539 [幸]
『かなは〜まだかけるさんと
付き合わないの〜?』


『ブッ!!』



私がパンを食べてる時に
ちえみがそんなことを
言うから、びっくり
して吐いてしまった。


『うわ―!汚い!!』

『ちょ…ちえみのせいでしょ!!』

⏰:09/01/30 23:59 📱:W53H 🆔:Pzd97v82


#540 [幸]
『かなから先に告白
した方がいいと思うけどなぁ。』


『ゴホッ…なんで?』

『障害がある人って
なかなか自分に素直になれないと思う。

もしかなが本当に好きなら
告白したら〜?』



ちえみの言うとおりかも…。

⏰:09/01/31 00:02 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#541 [幸]
『いいこと言うね!!』

『ちえみ様だから!』



ちえみはこうなんだから…。
でも、それがちえみのいいところ……。


告白…かぁ。。。

⏰:09/01/31 00:04 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#542 [幸]
告白……。

しばらく考えこんだ。


『むっ…無理!!』



ガタンと音をたてながら
座っていたイスから立ち上がった。


ちえみも、クラスメートも
驚いた顔で私を見た。

⏰:09/01/31 00:25 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#543 [ぽぽ]
この小説、一番好き
頑張って下さいね

⏰:09/01/31 01:17 📱:F01A 🆔:5XQ2sksE


#544 [幸]
>>543
本当にありがとうございます



頑張らさせていただきます

⏰:09/01/31 01:41 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#545 [幸]
ここ最近、
私はかけるがピアノを弾く日は
必ず私も勉強をしながら
演奏を聞いていた。



そして終わった後、
私を家まで送ってくれる。

それが当たり前のようになっていた。
でも、その当たり前があって
本当に嬉しかった。

⏰:09/01/31 01:44 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#546 [幸]
かけるがピアノを弾いている日は
月、水、金曜日。

火、土曜日は普通にあそこで
バイトをしてる。



私は正直、かけるの過去も今も知りたい…。

でも、この前、じじさんから聞いた
かけるの過去。

⏰:09/01/31 01:46 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#547 [幸]
私には両親亡くなったって
言ったくせに……。



この疑問が今になっても消えない。

…私もまだ聞きたくないのかもしれないが……。

⏰:09/01/31 01:47 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#548 [幸]
『明日から冬休みだ!!

いいなっ!!受験生の
クリスマスとお正月は
3月だっ!!

3月にクリスマスツリーや
鏡餅を飾りなさい!!』




『んな奴いねーよ。』

伊勢のいい声をあげる先生と
どっと笑うクラス。


あと少しでセンター試験。

⏰:09/01/31 01:51 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#549 [幸]
やはり、かけるに告白なんてできない。


だって、今センター試験の勉強なんだもん!!




今日は金曜日。
私は6時まで学校で勉強し、
かけるのレストランへ行った。

⏰:09/01/31 01:53 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#550 [幸]
『やあ、かなさん。』
『じじさん、こんちは。』


私はいつもの席に座った。

『クリスマス、かけると過ごすの?』

じじさんにいきなりそう聞かれ、
驚く私。

⏰:09/01/31 01:55 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#551 [幸]
『な…なぜですか?
そんなこと、言われませんよ。』


『そ―かい。ん〜…』


じじさんはしばらく考えこんでいた。


『どうしたんですか?』


と、聞いてみた

⏰:09/01/31 17:46 📱:W53H 🆔:93T71IzM


#552 [幸]
『いや、聞いてみただけ。
センター、頑張ってな!!』



じじさんはそう言うと、
仕事を始めた。


クリスマスね…
そりゃ、かけると過ごしたい…。

でも無理だよね。

⏰:09/02/01 12:35 📱:W53H 🆔:M8rkFUEs


#553 [幸]
私はいつも通り、
かけるの綺麗なピアノを聞きながら
勉強をした。





‘帰ろう’

かけるにそう言われ
いつも通り一緒に帰った。

しかし、いつもとは違う雰囲気だった。

⏰:09/02/01 12:38 📱:W53H 🆔:M8rkFUEs


#554 [幸]
いつもならくだらない会話で盛り上がるのに、

今日は会話など全くしない。




『どうしたの?』

聞いてみた。
するとかけるは頭をかいて
ゆっくり手話を始めた。

⏰:09/02/01 12:40 📱:W53H 🆔:M8rkFUEs


#555 [幸]
‘明日も勉強するの?’

『うん…。』



心臓の音が五月蝿い。
なんでかけるだと
こんなにも心臓が騒ぎだすのか?

⏰:09/02/01 12:42 📱:W53H 🆔:M8rkFUEs


#556 [幸]
‘夜ご飯だけ…時間とれる?’




いつもとは遅いペースで
手話をした。



きた―!
よしっっ!!

『うん!!』


と、返事をした。
今、私はどんな顔をしてるのかな?

かわいい顔ならいいんだけどなぁ。

⏰:09/02/02 00:15 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#557 [幸]
‘まじで!?’

かけるの手話がいつもより
早くなった。


『まじで。』


この会話が筆記だったら
ハ―トをつけたい気分だった。

⏰:09/02/02 00:17 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#558 [幸]
クリスマス当日。
私は朝早く起きて勉強をした。


そして、家事をし
父さんの夜ご飯を作った。




慣れない化粧のせいか、
予想以上に時間がかかった。


集合は6時。
初めて出逢った所に。。

⏰:09/02/02 00:20 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#559 [幸]
私は早めに家を出た。
ゆっくりと歩き出す。



10分前に到着してしまった。

ここで、初めて出逢ったことを思い出した。



私が泣いてて…
いきなりハンカチだしてきて…。

⏰:09/02/02 00:22 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#560 [幸]
私からアドレスを聞いて…。


…あの少年と出逢ったからだ。
そして自分の愚かに呆れて
泣いたんだ。


あの少年に出逢ってなかったら
かけるに会うことはなかったんだ…。



あの少年は元気なのかな…?
うまくやってるのかな?

⏰:09/02/02 00:24 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#561 [幸]
あの少年のおかげで
心理学を学ぼうと思った。


今の私がいるのは…
あの少年のおかげ……。

そ―いやなんで私はあの時
おにぎりをあげたのかな?

⏰:09/02/02 00:26 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#562 [幸]
ツンツンと優しくつつかれた。


後ろにかけるがいた。
私は現実に戻り、
今ここにある幸せを感じた。



‘待った?’
『大丈夫だよ。』

⏰:09/02/02 00:28 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#563 [幸]
するとかけるはいきなり
私の右手をとった。
そして優しく繋いだ。




ドキッと心臓が大きく動いた。
そして小さくドキドキと
リズムに合わせて動き始めた。


‘だいぶ待っただろ?
手冷たいよ!’

⏰:09/02/02 00:31 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#564 [幸]
『じゅっ…10分くらいだけだよ』


急に恥ずかしくなり
手を離してしまった。



なにやってんだよ!?
私………
馬鹿か!?
こんないいチャンスを。

‘場所はどこがいい?’

⏰:09/02/02 00:34 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#565 [幸]
『かけるのピアノが聞きたい!』


私は慌てながら言った。

‘いつも聞いてるだろ’
『“耳なしほういち”
を聞きたいの!』




するとかけるは怒った顔で

‘ダメだっっ!!’


と手話をした。

⏰:09/02/02 00:37 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#566 [幸]
『…かける…?』


なんでそんなに怒るの?


かけるは少し慌てた様子で

‘俺ん家で聞かせるから’

と手話をした。

⏰:09/02/02 16:38 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#567 [幸]
『場所なんかどこでもいいから…』


‘そうか。’



なんであんなに慌てるのかな?



私たちはかけるの家へ目指した。

⏰:09/02/02 16:40 📱:W53H 🆔:ksjK79ro


#568 [幸]
かけるの家で“耳なしほういち”
を聞いた。


この曲を聞くと、本当に
他のことがどうでもよくなってくる。

⏰:09/02/03 11:04 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#569 [幸]
弾き終わった時
かけるが話をかけてきた。


‘耳なしほういちっていう話
しってるだろ?’

『確か、師匠さんが
とりつかれている坊主に
呪文を書いたが
耳だけ書かなかったから
耳だけ取られた…』



‘ああ’

⏰:09/02/03 11:07 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#570 [幸]
かけるは私の側に来て
また話し始めた。



‘俺もそんな気分だったよ
…あの時。

普通に生活してある日
突然……。’



なぜ人はみな普通の、
健康な体にはならないのか?

なにかしら障害があるのか?

⏰:09/02/03 11:11 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#571 [幸]
‘文化祭のとき変な奴ら
いたろ?

あいつらと昔連んでたんだ。


んでその中の1人な、
障害者の金を取ったんだ。
俺らみんなでそいつを
殴った。
弱い者から金とっても
うれしくね―って感じで。

そのケンカで耳が聞こえなくなった…’

⏰:09/02/03 11:18 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#572 [幸]
‘俺、最初パニクって
半殺し程度に棒でそいつを
殴っちゃって…。


それから学校も辞めて
通信に通ったんだ…。’


かけるが全部話した後
私を見た。
私はかけるの話の内容が
グロすぎて青くなっていた。

⏰:09/02/03 11:21 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#573 [幸]
‘だっ…大丈夫か?’


『かけるって…凄い
高校生活だったんだね。』



しばらく見つめ合った。
どんなに変な話の内容でも
かけるがいれば笑いたくなる。

しばらく見つめ合った後
笑いあった。

⏰:09/02/03 11:26 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#574 [幸]
夜ご飯はかけるが作った
パスタを食べた。



誰にでも作れるような
パスタだったが
頬が落ちる程おいしかった。


食後にケ―キも食べた。

⏰:09/02/03 11:29 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#575 [幸]
ケ―キもおいしかった。

かけると一緒に食べると
なんでもおいしいと感じるのはなぜ?



なんて幸せ。
この幸せがこの先ずうっと続いたら……。

⏰:09/02/03 11:32 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#576 [幸]
翌日。
クリスマスも終わったから
今日からはずうっと勉強だっ!!



そう気合いを入れ
机に向かった。



12時に昼ご飯を作って食べて
また勉強を再開した。

⏰:09/02/03 11:35 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#577 [幸]
7時頃。
私が夜ご飯の最中に
かけるからメールが来た。

メールを開いてみた。

‘勉強お疲れ様。
元旦、一緒に初詣に行かないか?’

⏰:09/02/03 11:39 📱:W53H 🆔:J3LKlyhs


#578 [幸]
が…元旦!?
うわっ……
ちょ―嬉しい!

好きな人と初詣なんて。。。
来年は絶対いい年になるっっ!!



‘はいっ!’


送信……。

⏰:09/02/05 23:48 📱:W53H 🆔:QrNZpdn.


#579 [幸]
元旦まであと5日!!
真面目に頑張るっ!!

私は朝ご飯も食べずに
勉強を始めた。



恋をすると人は異常に
頑張れる気になる。

最近の中高生は恋愛に
はまっている。
彼氏がいないと馬鹿にされる。
私はそうだった。

だから勉強ばかりな私には
恋なんて馬鹿みたいだと思ってた。

⏰:09/02/05 23:53 📱:W53H 🆔:QrNZpdn.


#580 [幸]
でも違うんだね。
やっぱり恋はいいと思う。


特に勉強ばかりしていた私にとって。

⏰:09/02/05 23:59 📱:W53H 🆔:QrNZpdn.


#581 [幸]
元旦―。



‘9時に神社で待ち合わせ’

と、メールが来たので
行ってみる。

初詣は今まで友達と
行ったことがあったので
そのたびに母さんが
着付けをしてくれた。


でも今年は無理だ。

⏰:09/02/06 00:02 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#582 [幸]
「悪いな、着付けできなくて…」


そう謝ってくれた父さんが
とても愛くるしかった。


私は私服で電車に乗った。
みんな可愛らしい着物を着ていた。
羨ましかったけど、
私は我慢しなきゃ。

父さんに悪いから…。
ガキじゃないし…。

⏰:09/02/06 00:04 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#583 [幸]
‘やぁ!!’
『かける!!』


かけるは私より先に神社に来ていた。
かけるも私服だった。



‘さぁ、お祈りに行きましょう’
『うん!!』


それにしても凄い人だ。

⏰:09/02/06 00:08 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#584 [幸]
当たり前か。
みんな考えてることは
私と一緒だもん。




いざ、お祈りへ。
かけるは自分の財布から
5円玉を投げ、手を2回
誰よりも大きく叩いて
祈った。



とても真剣に…。

⏰:09/02/06 00:10 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#585 [幸]
私は100円を投げようとしたが、
それを見たかけるに止められた。


‘100円も?’
『え…駄目?』
‘別にいいけど。’


私は100円を投げ
手を2回叩いて祈った

⏰:09/02/06 00:13 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#586 [幸]
私たちは神社の周りを
散歩した。
そしてかけるに

‘手話上手くなったね’
と、誉められた。


『勉強したもん!!』
私は鼻を高くして言った。

『ねえ、なんでさっきは100円投げようとしたら、止めたの?』

ついでたからそう聞いた

⏰:09/02/06 00:17 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#587 [幸]
‘いや…俺は神様とか
信じないから…かな?

金やればいいことするのかよ
って思って、
神様は賄賂してんのかよ
って感じてたからさぁ。’


かけるはちょっと照れくさそうに話した。

私は思わず笑ってしまった。

⏰:09/02/06 00:19 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#588 [幸]
『あはっ!賄賂って…』
‘だってそうじゃん?’


『でも、そのわりには
真剣に祈ってたじゃん?
手もあんなに大きく叩いて。』


‘じゃあ、神様ってどこにいると思う?’


突然の質問に私は口止まってしまった。

⏰:09/02/06 00:23 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#589 [幸]
『ん〜天の上…?』


‘神社の中の神様は
後ろを向いてるんだ。
しかも戸も閉まってる。
だから人と同じような
音の大きさで叩いても
神様だって気づかないだろ?
だから人よりも目立つことをして
神様にわからせてあげなきゃ’



『へぇ〜』

知らなかった…

⏰:09/02/06 00:27 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#590 [幸]
『なんでそんなに詳しいの?』

‘一応大学生だからね。
文学部に入れば教えて貰えるよ。’




やはり、大学はそんな
細かい所も勉強して
凄いと感じた。

⏰:09/02/06 00:29 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#591 [幸]
『ん…?
てことは、やっぱりかけるだって
神様信じてるの?』

‘信じてねーよ。
俺から誘ったんだから
祈らなきゃじゃん!?’


『じゃあ神社に行こう
なんて誘わなきゃよかったじゃん?』



するとかけるは、
私の肩を両手で掴み…

⏰:09/02/06 00:33 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#592 [幸]
‘そんなの、お前と会うための
口実だよ’

と話した。



ドキッと大きく心臓が動いた。

私の手話の読みとり方
間違ってないよね?

そう自分に説いきかせながら
真剣な目のかけるを見続けた。

⏰:09/02/06 00:35 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#593 [幸]
‘かな…’


かけるはおそらく
指文字で手話をしたのか、
私には分からなかった。

ただかけるの後ろから
自転車のベルが鳴っていた。

⏰:09/02/06 00:38 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#594 [幸]
私はとっさに
『危ない!』

と言い、かけるの二の腕を取り
精一杯の力で私の方に
引っ張った。


なんとか自転車と
ぶつからずにすんだが、
私とかけるとの距離が短くなった。

⏰:09/02/06 00:41 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#595 [幸]
‘ありがと’


かけるは一歩後ろに下がり
礼を言った。
その顔はとても悲しそうだった。



‘そろそろ帰ろうか?
勉強頑張らなきゃだし。’

かけるはそう話すと歩き出した。

⏰:09/02/06 00:43 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#596 [幸]
やめてよ。
そんな顔、嫌い…。
私の前では笑ってよ。
私の大好きなあなたの笑顔を見たい。



しかし、そんな私の願いは叶わず
かけるは私の家に送るまで
ずうっと、所々暗い顔をしていた。


もしかしたら、この一年、
最悪な一年になるのかもしれない…

⏰:09/02/06 00:48 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#597 [幸]
『聞いたよ。
かけると一緒に初詣に
行ったんだって?』



私はじじさんの所で
勉強をしていたらそう聞かれた。


『はい…
でもその前に、
明けましておめでとうございます。』

『あっ、おめでとうございます』


新年の挨拶をした。

⏰:09/02/06 00:53 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#598 [幸]
『どうだった?』

じじさんは興味津々に
聞いてきた。


『別に…。
てか!今気づいた!!』

私は思わず立ち上がってしまった。

『なにを?』
じじさんは驚いてた。

⏰:09/02/06 00:55 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#599 [幸]
『かけるって、ある日
突然耳が聞こえなくなった…
てことは、しゃべれるじゃん!?』



するとじじさんは
“それか…”と呟き
アイスティ―を飲んだ。

聞いちゃいけなかったかな?

そんな雰囲気がした。

⏰:09/02/06 00:58 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#600 [幸]
『自分の話してる声が
聞こえないから
どのくらいの音量で話せばいいか
わからないんだよ。

それでもかけるは試そうとしたけど
余計にだめで…
さらには精神的な問題で
話せなくなったんだ…。』



風が強い日だった。
窓がその強い風のせいで泣いていた。

⏰:09/02/06 01:01 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#601 [幸]
>>592
すみませんホホ

手話の読みとり方

ではなく、

口パクの読みとり方でしたm(_ _)m

⏰:09/02/06 01:05 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#602 [幸]
あと2日でセンター試験に迫った。



私はそれまで、一生懸命勉強した。



かけるは初詣の日以来
どこか私には不自然な態度をとっていた。

メールでは普通なのに…。

でも、だからといって
落ち込んでる暇はない。
と、いうより私は
その悲しみを勉強にぶつけていた。

⏰:09/02/06 01:23 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#603 [幸]
学校は、もう1月の始業式から
家庭研修で休みだ。


私は週に2、3回は
じじさんの所で勉強をしていた。



かけるの綺麗な音楽を聞くために。
しかし本当はかけるに会うために…。

⏰:09/02/06 01:25 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#604 [幸]
今日は家で勉強。
明日じじさんの所に行って
本番を迎えよう!!

そう思い、勉強に励んだ。





翌日。

⏰:09/02/06 01:27 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#605 [幸]
『おっ?頑張ってますね〜』

と、じじさん。



『明日なんで。』


辺りを見回すがかけるの姿は
見えなかった。


『あの、かけるは?』

恐る恐る聞いてみた。

⏰:09/02/06 01:29 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#606 [幸]
『なんか、大学の教授と
面談だから来れないって。』


『えっ…そうですか…。』



まじ‥‥
かなりショック。

⏰:09/02/06 01:31 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#607 [幸]
私はその夜、早めに寝ようと思い、
いつもより早くベッドに行った。


〜♪〜♪
メール着信音。
この着信音はかけるからだ…。


私は急いでメールを見た。



動画つきだった。

⏰:09/02/06 01:52 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#608 [幸]
再生……。

かけるが手話で話してる動画だった。




‘ちゃんと勉強しとるか?
本当は今日渡したかったけど
教授に呼ばれて渡せなかった。

明日、早起きしたら渡すから。


じゃあ、明日は頑張れよ!
おやすみ’

⏰:09/02/06 01:56 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#609 [幸]
……『ありがとう…』

嬉しい…なんでこんなにも
嬉しいのだろう。


かける、本当にありがとう。


‘動画ありがとう!
まじ頑張る!
だから明日早起きしてほしいな〜’



そう送信して、眠った。

⏰:09/02/06 01:59 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#610 [幸]
翌朝、玄関の所に行くと
ス―パ―の袋がぶら下がっていた。



袋の中身はキットカットと
ホッカイロと手紙だった。

感謝しろよ


手紙の内容はそれだけだった。

⏰:09/02/06 02:01 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#611 [幸]
2日間の試験を終え、
次の日学校で自己採点をした。



『かな〜!』
『ちえみ!!』
『かな、大丈夫?
かなの場合、センターだめだったら…』


ちえみは聞きずらそうに聞いてきた。

⏰:09/02/06 02:04 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#612 [幸]
『大丈夫!!』

私はそう断定した。
だって、父さんの手作り弁当と
兄さんのポッキーと
かけるのキットカットが
あったからだもん!!



先生と面談をし、
センターの点数を大学に
速達した。

⏰:09/02/06 02:07 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#613 [幸]
『お疲れ様』

早速、じじさんの所へ行った。
そこに、かけるもいた。



『ありがとうございます!!』

私はそう答えた。

⏰:09/02/06 02:09 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#614 [幸]
‘結果はいつ?’
『まだ先だよ』


‘輸送?’
『電話だよ。』



かけるはソワソワしていた。
そのせいでじじさんに怒られていた。


‘なんでお前はそんなに
冷静なんだ?
俺は一般だったけど
そんな冷静じゃなかったぞ’

⏰:09/02/06 02:12 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#615 [幸]
かけるはそう聞いた。

『自信あるから。』
私は自信満々に答えた。



そして結果発表の日がきた。

家には誰もいない。
1人で見る。
自信満々とは言え、
やはり緊張はするもんだ。

⏰:09/02/06 02:14 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#616 [幸]
私は深呼吸をすると
一気に開けた。









合格

の字が見えた。

⏰:09/02/06 02:15 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#617 [幸]
いやったぁぁぁ!!
私は早速、父さんに電話、
兄さんにメールを送った。



そしてじじさんとかけるには
この紙を見せに行った。

⏰:09/02/06 02:16 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#618 [幸]
『よかったね!』
『おめでとう』


この言葉が返ってきた。




学校にも報告し、父さんと一緒に
手続きをした。

⏰:09/02/06 02:18 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#619 [幸]
ここまで、順調だったのに…。




不幸は突然訪れる。

人は誰だって、人生最後まで
幸せなはずがない。

それはそうだ…。

でも、納得できない!
私たち人間はどうしても
他人との幸せを比べてしまう生き物だからだ。

知能があるだけ、そうしてしまうのだ。

⏰:09/02/06 02:21 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#620 [幸]
>>614
すみませんホホ


『電話だよ』

ではなく

『そうだよ』

ですm(_ _)m

⏰:09/02/06 09:41 📱:W53H 🆔:Li7Rh2v.


#621 [幸]
2月の中旬だった。
とある、普通のニュースを見ていた。


学校はもう休み。
受験には無事合格したので
朝はゴロゴロしていた。



「昨年の7月。
障害を持っていた弟を
殺害容疑で兄が逮捕されたんですが
精神的ショックを受け、
記憶を失っていた母親が
昨晩、自白したということが
明らかになりました。…」

⏰:09/02/07 00:28 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#622 [幸]
えっ……?



私はある程度家事をしてから
警察署に向かった。

警察署の前は報道陣でいっぱいだった。

⏰:09/02/07 00:30 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#623 [幸]
私はどうしていいか分からず
その場にずうっと立っていた。




『鮎川さん…?』

私の名が呼ばれたので
振り返ってみた。
そこには、あの時の
雰囲気のいい警察官がいた。

⏰:09/02/07 00:33 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#624 [幸]
『あの少年は!?』

私はすぐに聞いてみた。

『あの少年の母親が…
あなたと話したいそうだ。。。

いいかね?』

『なっ…なぜ?』

『それは…話したときに
聞いてみるがいい。』


そう言い残し、私の前から消えた。

⏰:09/02/07 00:36 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#625 [幸]
おそらく…あの時のお礼かな?

私はあまり深く考えなかった。



私はあまりにもの、
かけるへの思いに
あの少年のことを助けたいという気持ちを
忘れていたことに気づいた。

⏰:09/02/07 00:38 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#626 [幸]
私って、口だけの女だ……。



その日の夜、
かけるからあの少年の話しを切り出した。


メールだと話しが長くなるので
次の日に会うことになった。

⏰:09/02/07 00:40 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#627 [幸]
翌日。
会う場所は……
初めて出会った場所だった。




『かける!』
‘やぁ。’


かけるはどう思ったのかな?
そしてこれからも……

⏰:09/02/07 00:43 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#628 [幸]
しばらく沈黙が続いた。
『警察の人にね…
今度、少年の母親に会ってほしいって。』



私はいきなり話しを切り出した。

‘そうか…’

かけるは素っ気ない返事をした。

⏰:09/02/07 00:45 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#629 [幸]
また沈黙が続いた。
いつもと違う空気が流れた。


‘会うの?’



今度はかけるから切り出した。



『そう頼まれたからね。』


するとかけるは一気に話し出した。

⏰:09/02/07 00:47 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#630 [幸]
‘中途半端な優しさ
やらねー方がいい。

もし本当にその少年たちを
救いたいならよく考えてから
行動しろよ。’


『なんで…?』

‘障害を持っていた子どもの
家族だからだ。’

⏰:09/02/07 00:50 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#631 [幸]
『そんなの関係ない!!』

私はそう言ったが
かけるは怖い顔で手話ひし始めた。



‘障害を持ってる人や
その周りの人は
人の優しさに惚れてしまうんだよ
そしてやがてはその
優しい人に頼ってしまう…’


『それは別にいいじゃない!!
人はお互いに支えあいながら
生きてくんだから…』

⏰:09/02/07 00:54 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#632 [幸]
‘あなたは何もわかっていない!!
支えあうなんて無理だ!!
いづれ健常者は障害者に
嫌気をさしてしまう!!
それが当たり前なんだ。
健常者なんだから…。
だから障害者の気持ちなどわからない!!


あの家族は今まで助けてくれる
人がいなかった…
だから殺害をしたんだ

ところがあなたが出てきた
とても嬉しかったと思う。

でも、だからこそ…’



『言ってる意味がわからない!!』

⏰:09/02/07 00:58 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#633 [幸]
かけるは困った顔をしていた。
その顔がさらに私を苦しめる。



‘……あなたは本当に
あの少年を助けたいの?’

『…私はあの少年のおかげで
心理学に興味を持った。
心理学に関わる仕事をしたいと思った。

でも何よりも……
あの少年のようなことを
繰り返しに起こしたくない。』

⏰:09/02/07 01:07 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#634 [幸]
かけるは黙って聞いてくれた。

『私は何のために勉強
していたのか分からなかった。

でも、あの少年のように
苦しんでる人がいるなら
その人たちのために
私はなにをできるか?

そのために勉強したい…
だから心理学の有名な
L大学に受験した…。』

⏰:09/02/07 01:10 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#635 [幸]
‘夢…あったんだね……。’


かけるの顔がいつの間にか
優しい顔になっていた。

『でも、これってさぁ
どういう職業なの?』

‘カウンセラー…かな?’

⏰:09/02/07 01:12 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#636 [幸]
カウンセラー…


‘話ができてよかったよ’

かけるは笑顔で話した。


『なんで?』
‘絶対悩んでるって思ったから。


実は俺、あなたに話したいことがある…。’


かけるの顔が真剣な顔になった。

⏰:09/02/07 01:15 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#637 [幸]
『なあに?』

とは聞いたのも、実際は
聞きたくなかった。


なぜか、嫌だったからだ。



‘俺………、



アメリカに行く……。’

⏰:09/02/07 01:16 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#638 [幸]
えっ……?
今、 何て言った?



‘じじさんの所で
ピアノ弾いてたら、
偶然そこにいた客が
アメリカで修行しないかって
誘ってきて。

小説の夢は諦めてない
でも俺、ピアノ弾きたいんだ…。

そして……歌いたい……。’

⏰:09/02/07 01:20 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#639 [幸]
涙が出てきた。
かけると もう会えないの?



‘初めてあなたの前で
ピアノを弾いたとき
気持ちよかった…

耳を傾けてくれる。
俺の音楽…思いを聞いてくれるって思うと、
ワクワクして…’


なんでそんなに嬉しそうなの?

⏰:09/02/07 01:29 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#640 [幸]
かけるにとって私は
何だったの?



‘…どうした?’

私が泣いてることを
ようやく気づいたかける。



何も話したくなかった

かけるは私のことなど
どうでもいいのね。


私はかけるに背中を向いて去った。

⏰:09/02/07 01:32 📱:W53H 🆔:jdZX7Qp2


#641 [我輩は匿名である]
頑張ってください

⏰:09/02/07 15:49 📱:P703i 🆔:FsufpeMA


#642 [幸]
>>641
ぁりがとうございますx
頑張りますメ

⏰:09/02/08 12:43 📱:W53H 🆔:rl7D203I


#643 [幸]
がしっと、掴まれた私の左手。


‘どうした?’



…どうした?じゃねぇ〜!
その気持ちもあったが
悲しみの方が上回ったみたいだ。


涙がどんどんでてくる。

⏰:09/02/09 00:20 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#644 [幸]
気がついたら私はかけるの腕の中。



されるがままの私。
涙はまだ流れていたが
大好きなかけるの匂いに
酔ってしまいそうだった。



なぜこんなにも落ち着くのか?

⏰:09/02/09 00:23 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#645 [幸]
そしてかけるは私をゆっくり離し
私の流れた涙を親指で
拭いた。



‘本当は行きたくなかった…
でも、耳が聞こえなくなる前からの夢だったんだ。

俺の音楽をみんなに聞かせることが…’



私は黙ってかけるの手話を見つめた。

⏰:09/02/09 00:27 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#646 [幸]
『小説は耳が聞こえなくなってから…?』


‘そうだよ’




……本当に?
かけるは表情が豊か。
なぜか本当のことを言ってないような
気がする。


私の、いや!女の感。

⏰:09/02/09 00:29 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#647 [幸]
『…いつアメリカに
行っちゃうの?』



‘2月の最後の日。’


もうすぐじゃん…
なんで私はドラマのような
素敵な恋ができないの?
なんでこんな困難が訪れるの?

⏰:09/02/09 00:38 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#648 [幸]
‘14日、暇?’


かけるがいきなり聞いてきた。



『…わかんない。』
‘会えない?
てか、会おう!?’



本当にかけるがアメリカに行ってしまいそうで
悲しかった。

⏰:09/02/09 00:40 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#649 [幸]
14日。


結局会うことになった私たち。
最初は2人で散歩をした。
そして写真をたくさん撮った。

この時間と感情は決して
忘れてはいけない。

⏰:09/02/09 00:43 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#650 [幸]
ポツンと雨が降り出した。


『うわ〜最悪…。』

‘風邪ひくぞ。一旦
雨宿りしよ’



私たちは近くにあった
神社に行った。

⏰:09/02/09 00:45 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#651 [幸]
‘結構雨凄いな…。’

『…うん…』



しかし、この雨は私の
今の本当の気持ちを表してくれている。


止みそうにない、この雨が。

⏰:09/02/09 00:47 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#652 [幸]
‘らちあかねぇ!
俺ん家行こう!?
タオルでちゃんと拭いた方がいい’



『大丈夫なの?』
‘風邪ひかれたら困るからな’



私は別にこのなみだなら
濡れてもいい…。


そう思ったが、くしゃみが出たので
かけるの家に行くことになった。

⏰:09/02/09 00:50 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#653 [幸]
『お邪魔します…』


私はかけるの部屋を見渡した。
この光景が2週間後には
なくなると思うと胸が
キシキシと痛くなる。



‘風呂先入れ。
着替えは置いとくから’

かけるにいきなり言われ
戸惑う私。


『でも…』

⏰:09/02/09 00:53 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#654 [幸]
‘下着は濡れてないだろ?’


『うん…』
弱々しく答えた。

かけるの聞き方がいつもより
あまりにもキツかったから
少し怖かった。



私は黙ってお風呂に入った。

⏰:09/02/09 00:55 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#655 [幸]
ザ―っと聞こえる雨。
どうやら私はまだ泣いているようだ。
しかも大量に、声をあげて。




風呂から出ると、着替えがあった。

着てはみたが、ブカブカ。
鏡に映った私を見て
思わず笑ってしまった。

雨はさっきより弱くなっていた。

⏰:09/02/09 00:58 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#656 [幸]
‘何笑ってんだ?’

かけるが鏡の中に現れた。


『いつからいたの?』
私は驚きながら後ろを向き、聞いた。


‘今さっきだよ’
『だって私、着替えてた!!』

⏰:09/02/09 01:00 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#657 [幸]
‘俺が覗いたとでも言いたいの?’


『別にそんなんじゃ…』



するとかけるは近寄ってきた。

無性に恥ずかしくなって
思わず下を向いてしまった。



‘次は俺が風呂入るから
どいて。’

⏰:09/02/09 01:03 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#658 [幸]
そう話すと洋服を脱ぎだした。

その時ぐぅ〜っと、
かけるのお腹が泣き出した。



かけるは恥ずかしそうに
私を見た。

私は思わず笑ってしまった。
するとかけるもつられて笑ってしまった。

⏰:09/02/09 01:05 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#659 [幸]
『しょ―がないから
なんか作るよ。』

‘作れるの?’


『一応ね。』




かけるは風呂に、
私は台所へ向かった。

⏰:09/02/09 01:06 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#660 [幸]
冷蔵庫の中を見た。
焼きそばがあったので
焼きそばを作った。



テ―ブルに運ぶとき
ズボンのすそが長かったので
ぐいっと折り曲げた。


トントンと肩を叩かれた。


‘うまそうじゃん’
かけるは笑いながら話した。

⏰:09/02/09 01:10 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#661 [幸]
『じゃあ、食べようか。』


いただきます

と言い食べ始めた。


食べ終わった時
かけるがあまりにも
かわいい顔で
‘うまかった’

って話すから思わず涙が出てしまった。

⏰:09/02/09 01:12 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#662 [幸]
かけるは呆れながらも
私の隣に来て、涙を拭いてくれた。


しばらく見つめ合った。



そして優しくキスをした。

初めてのキスは焼きそばの味。



顔を離すとかけるも泣いていた。

⏰:09/02/09 01:15 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#663 [幸]
‘かな……’


初めて…私の名前を手話で
呼んでくれた。


しかし、私の名前を呼んだかけるの顔を見て
なんだか切ない気分になったので
あまり嬉しくなかった。

かけるは手話を続けた。

⏰:09/02/09 01:18 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#664 [幸]
‘悪い…勝手にキスしちゃって…’


かけるはそう話すと
2人分の食器を台所に運んだ。




かける……

その時、ちえみが話した事を思い出した。


「障害者ってなかなか自分に
素直になれないと思う」

⏰:09/02/09 01:21 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#665 [幸]
かけるは私にキスをしてくれた。

じゃあ私は……。



私はかけるの方へ行き
後ろから抱きついた。


するとかけるはばっと
私の方を向いてもう一度
抱きしめた。

⏰:09/02/09 01:23 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#666 [幸]
優しい匂い。
大きな手。
茶髪の綺麗な髪。
優しい目。
広い背中。


全てが私を狂わしてく…。




私は一度、かけるを離してから
手話で話した。



『好き』


と。

⏰:09/02/09 01:26 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#667 [幸]
かけるはしばらく黙っていた。
私と目も合わせなかった。



私は心配になって

『かける…?』

と聞いてみた。



かけるはため息をつき
話した。

⏰:09/02/09 01:28 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#668 [幸]
‘俺みたいな男を?
他にいっぱい男がいるだろ!?

かなも見る目なさすぎだよ!!

俺なんて…
例えば車が後ろからきた時
気づかなくて事故る
しょぼい奴だし。

後は…’



また見つめ合った。

⏰:09/02/09 01:32 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#669 [幸]
『かけるといると
まるで、自分が酔ってるみたいに
癒されるの……。

全てが…好きなの。


アメリカに行くって言われて
会えなくなって、
……辛いよ。

毎回会うだけですごく嬉しがる
自分がいる……

それなのに……。』



今の感情を全て言葉に表した。

⏰:09/02/09 01:36 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#670 [幸]
するとかけるはまた私を抱きしめた。

抱きしめられると
かけるの匂いがもっと
嗅ぐことができる。
もっと一緒にいたいって
いう気持ちになる…。




‘もう…我慢できない…’


かけるは一旦、私を離し、手話で話した。

⏰:09/02/09 01:39 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#671 [幸]
『えっ……?』

かけるは私をお姫様だっこをし、
ベッドまで運んだ。



すると、かけるは私に
近寄ってきた。

『こっ、怖い…』

思わず言ってしまった。

‘……ごめん…頭冷やしてくる’

⏰:09/02/09 01:42 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#672 [幸]
…かける……
なにやってんだよ私!!
もう会えなくなるのに…

でもやっぱり怖い!!
でもこのまま帰りたくない!!





かける…

⏰:09/02/09 01:44 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#673 [幸]
ねぇ、もしかけるが
耳聞こえてたら普通に
好きって言えたのかな?

誰だって恋はするのに
自分の気持ちを伝えられないのは
悲しいね……。






むくっと起きた。
時計を見ると4時になっていた。

⏰:09/02/09 01:48 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#674 [幸]
はっ……?
寝てた?


‘やっと起きたかよ’

かけるは引っ越しの準備をしてたのか
ダンボールがいくつかあった。




『ごめんなさい…』

⏰:09/02/09 01:50 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#675 [幸]
‘本当だよ…’


私は思い切って大胆な
行動をとった。

自分からかけるにキスを
した。



かけるは最初、戸惑っていたが
だんだんと深くなってきた。


‘いいの?’

かけるに聞かれ
こくっと頷いた。

⏰:09/02/09 01:53 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#676 [幸]
かける……


かける……




あなたに出会えて良かった。
こんなに嬉しいことを
味わうことができた。

他の男じゃ、かけるの代わりにならないんだよ。

かけるじゃないと私が
嫌なんだよ…。

⏰:09/02/09 01:56 📱:W53H 🆔:jQ/U2XNo


#677 [幸]
‘平気か…?’


かけるは私を腕まくらをし
右手で私の髪を撫でながら聞いた。



『……うん』

幸せ……。

⏰:09/02/11 00:10 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#678 [幸]
次の日の夕方。
じじさんの所へ行き
チョコを渡した。



『いや〜初めてもらった』

じじさんはとても嬉しそうだった。


初めてだったんだ…

じじさんは確かにおじさんみたいな顔立ちだが
目が女みたいにくりっとしている。

だからチョコぐらい一回は
もらってると思ってた。

⏰:09/02/11 00:16 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#679 [幸]
そこへかけるが来た。


『昨日、渡すの忘れてた。』


と言い、かけるに渡した。

‘大事なこと忘れるな’

『うるさいな〜』




こんな日が続いたらいいのに。

⏰:09/02/11 00:18 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#680 [幸]
いつも通りかけるに家まで送ってもらった。

そして別れる時は…
おやすみのキス。




受験が終わっても、
勉強は続けている。

勉強しなきゃ一般を受験
する人たちとの差が開くからだ。


私は勉強をし、深い眠りに落ちた。

⏰:09/02/11 00:21 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#681 [幸]
刻々と、かけると別れる日が近づいてくる。

でも私たちは、1日1日を
大切に過ごしてきた。



21日。



一本の電話がかかってきた。

⏰:09/02/11 00:23 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#682 [幸]
『もしもし!?』
『鮎川かなさんですか?』


あの警察官からだった。

『あなたにお会いしたいって
前に話してたことを
覚えてる?』

『はい……』

『28日でお願いします
って言われたんだけど…。』



えっ………? 28日………。

⏰:09/02/11 00:26 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#683 [幸]
『その日じゃないと
ダメなんですか?』


『ええ、どうしてもって…。』





神様………
あなたはどうしてこんなにも
意地悪なのか?

⏰:09/02/11 00:28 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#684 [幸]
『その日は無理です!!
日にちを変えることは
できないんですか!?』

私はそう強く聞いたが
答えはNOだった。



『…考えさせて下さい…』

私はそう言い、電話を切った。

⏰:09/02/11 00:30 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#685 [幸]
私はじじさんの所へ
走って行った。


バンっと乱暴に開け
私は涙目でじじさんの腕を掴んだ。




『かける、今日の午後
暇だから大学に行ってみな!?』


じじさんにそう言われたので
L大に行った。

⏰:09/02/11 00:33 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#686 [幸]
私はメールで
“そっちに行くから待ってて”

と送信し、門に行った。


門にはかけるがボ〜っと
立っていた。



‘勝手に来てどうした!?’

かけるは私に気づき、
そう聞いた。

⏰:09/02/11 00:36 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#687 [幸]
『…ねぇ、どうしよ……』



私は警察官からの電話の事を話した。

するとかけるは真剣な顔で
手話をし始めた。


‘俺の見送りなどいい!!
そっちの方へ行け…’


『……やだ』

⏰:09/02/11 00:38 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#688 [幸]
‘かな!!’
『やだよ!!ちゃんと
かけるを見送りたい…』

‘あの少年を救いたいんじゃないのか!?
救いたいんだろ?

中途半端な覚悟じゃないんだろ?’



『……でも…でも』

涙が私の頬に流れてきた。

⏰:09/02/11 00:41 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#689 [幸]
『かけるが……好きなの!!』

私は大声で言った。
周りのL大の生徒たちに
聞かれたのか、こっちを
何人か見ていた。



‘かな…

男を追いかける女になるな!!
かなは、夢に向かって
走れ!!’

⏰:09/02/11 00:44 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#690 [幸]
『かける……』


泣いてるせいで
うまく話せなかった。



‘俺も夢に向かって
アメリカへ行く…。

かなもそうしろ…。
夢に向かって生きろ。
そこで恋愛をするんだ!!


…俺より素敵な人と。’

⏰:09/02/11 00:48 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#691 [幸]
『かける!?』
‘やっぱ無理だ…。

俺たちは障害者と健常者。
つりあえなってない…。
俺……が……
かなに支えられると
惨めな気持ちになるんだ。
どうしても。’


かけるの顔も悲しい顔をしていた。

⏰:09/02/11 00:53 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#692 [幸]
‘かなは、ただ耳が聞こえないだけと
思ってるだろ!?

でも、こっちは大きな問題なんだ。
障害者はこの問題を
一生背負って生きてく。
この気持ちと覚悟、
健常者じゃ決して分からない。


障害者と恋愛をするって
こういうことなんだよ。
普通に恋愛すると…
普通になりたいって思ってきて
惨めになってくるんだ’

⏰:09/02/11 00:59 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#693 [幸]
『……なんで!?』


時間が止まったように
感じた。



‘健常者は偏見な目で
障害者…俺を見てるから。

例えば、駅の切符売り場で点字を
読んでる人を偏見な目で
見下してる。

知的障害者がいれば
その人をからかう子供や大人。

俺は耳が聞こえなくなって
気づいたんだ……。’

⏰:09/02/11 01:04 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#694 [幸]
『…私を…信じてなかったの?』


‘かなみたいな人、
めったにいないよ…。

かなはカウンセラーの
仕事をしてみたいんだろ?
このチャンスを生かして
健常者に障害者のことを伝えてほしい’

⏰:09/02/11 01:08 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#695 [幸]
『…え?』
‘伝えてほしい…
少しでもいいから、
障害者のことを理解してほしい。’


かけるは空を見上げた。


‘助けてあげてとは言わないけど
偏見はしない…
そんな都合のいい世界には
なれないと思うけど

理解してほしいんだ。
俺たちはただ、それを
願ってる。’

⏰:09/02/11 01:17 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#696 [幸]
‘かなには、そういう人
になってほしい。

いや、別にならなくてもいいけど…



とにかく、俺のために
自分の夢が遠ざかる事は
よしてくれ’



私は手で自分の顔を覆った。
そして14日の雨のように泣いた。

⏰:09/02/11 01:20 📱:W53H 🆔:nFnq5eKM


#697 [幸]
かけるは私のその姿を
黙って見ていた。




何もしてこないかけるを見て
私はもう無理なんだと思い
かけるの横を通って
ふらふらと歩いた。

⏰:09/02/14 01:11 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#698 [幸]
私……
もう一度聞いてみるよ…
そして、なんとかかけるの見送りに
行くよ………。



そう何度も思った。


しかし、電話で聞いてみたが
母親は精神的な病気
なので無理だった。

⏰:09/02/14 01:14 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#699 [幸]
私は自分の部屋に着き
ベッドに寝転んだ。





2月最後の日。
28日が刻一刻と迫ってくる。

⏰:09/02/14 01:18 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#700 [幸]
‘27日。会いたい’


私は思い切ってかけるに
メールをした。





…これでかけると会うのは
これで最後だ。


そう自分に言い聞かせた。

⏰:09/02/14 01:20 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#701 [幸]
27日。
私がかけるの家に行くことになった。



これで最後……。


これで最後。。。


私はなるべく笑顔で
かけると話した。
かけるは静かに笑っていた。

⏰:09/02/14 01:22 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#702 [幸]
『知ってる?
ゴリラは大人になると
笑わなくなるんだって!!』


‘それCMのやつだろ?’


他愛もないこの時間が
愛しく思えた。

こんな会話をしてる時
かけるが急に私を抱き寄せた。

⏰:09/02/14 01:24 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#703 [幸]
あぁ…この匂いだ。
私は一番最初にこの匂いに惚れた。




もう明日になったら
かげなくなるの?


するとかけるが一旦
私を離し手話を始めた。

⏰:09/02/14 01:27 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#704 [幸]
‘かな……
今、この世界は障害者と
健常者は共存できてないと思う。

それは昔も今もそうだと思うけど、
なかなかこの差別を乗り越えて
生きていけないと思う。

かなみたいな頭がいい人もいれば
俺みたいに…自分が障害者
になって初めて気づく
馬鹿な人もいる’

⏰:09/02/14 01:30 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#705 [幸]
私はかけるのこの姿を
目に焼き付けた。


‘だから……
かなはその差別を少しでも
なくなるような世界にしてほしい。

カウンセラーとして
あの少年みたいな子を
救ってほしい……。

そしていつか、障害者と
健常者が共存できるように
してほしい……。’

⏰:09/02/14 01:34 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#706 [幸]
…かけるがなぜアメリカへ行くのか
なんとなくわかったような気がした。


でも私はあえてかけるに聞かず
かけるに抱きしめた。




深く…身も心も絡み合った。

⏰:09/02/14 01:38 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#707 [幸]
終わった後、
ベッドでかけるとたくさん話した。



‘二年で戻ってくるから
大学で会えるよ。’

『うん…』



‘本当はアメリカに行きたくない…’

⏰:09/02/14 01:45 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#708 [幸]
口パクでかけるがそう言ったのを
私はわかった。


『なんで?』



そう聞いてもかけるは
優しく私の髪を撫でるだけだった。


‘今のはうそ。’

と手話で話して……。

⏰:09/02/14 01:47 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#709 [幸]
28日。

私は病院へ行った。




『鮎川さん、どうぞ』

看護婦さんに案内され
個室に入った。

そこにはやつれた、
白髪ばかりで、
しわの多い女性がいた。

⏰:09/02/14 01:53 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#710 [幸]
『あなたが…鮎川さんですか?』


かすれた声で聞いてきた。
また警察官の人に支えられながら
一歩ずつ私に近よった。


『はい……』

私は静かに答えた。

⏰:09/02/14 01:55 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#711 [幸]
『あの事件の真相を
話してください。』
警察官がそう言うと、
その女性が呟いた。



『私には、2人の…
息子がいました。
一番上が心の優しい子
でして、いつも障害者を
持ってた弟のことを
優先に考えてくれました。』

⏰:09/02/14 01:57 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#712 [幸]
『私は二番目が障害者だなんて
初めは信じられませんでした。
でも上の子とは違う。

そうわかってきました。

しかし親戚からも親からも…
しまいには夫からも
私のしつけが悪いと言われ続けてきました。

違う……この子は障害者なの…
しつけで治らないの…



あっ、失礼しました、
弟の方は自閉症という
障害で、見た目は普通ですが
おかしな行動をとる障害なんです。』

⏰:09/02/14 02:02 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#713 [幸]
かすれた声をだしながら
話しは続いた。



『事件当日。私は相談をする
相手もいなくて……
二番目を殺そうと思ったの。

例え、育ててもこの子は
幸せにはなれない、
1人では生きていられない…。

そう思って………。』



やつれた女性は涙を流してた。

⏰:09/02/14 02:06 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#714 [幸]
『二番目を殺害した時の
あの驚きの顔……

「どうして……?」

っていう顔をしてて……
最後に「お母さん」って
言うんですのも…。

私も死ななきゃと思った……


でも上の子に止められ…
上の子は火を放したの。』

⏰:09/02/14 02:10 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#715 [幸]
…これが現実なの……?

‘障害者のことを何もわかってない!!’

かけるにそう言われたことが
脳裏に浮かんだ。



『上の子が火を放した時
私はまだこの子がいる。
育てなきゃ……
そう思って2人で逃げたんだけど

あの子…気づいたらいなくなってて。


それで私はおかしくなって
病院でずうっと入院してたの。』

⏰:09/02/14 02:14 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#716 [幸]
『そうだったんですか…』

私はそう言った。
涙が出てきた。



『あなたが、上の子に
食べ物をあげたと聞いたので
一度お礼をしたくて…
それにね、あの子、
本当のことを警察に言うなって……

でも私がやっと普通になれたから
私から本当のことを言っちゃった。』

⏰:09/02/14 02:21 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#717 [幸]
『息子さんは…
本当にお母さんのこと
好きだったんです…。
だから……』


『それじゃあ駄目。』



私はなんとかフォローを
しようとしたが
お母さんの一言で、できなかった。

⏰:09/02/14 02:24 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#718 [幸]
『私は二番目の息子を
殺してしまったわ。
だからその罪を背負って
償わなきゃいけない…。』



『…あなたがいなくては
息子さん、どうするんですか?』

私は思わず叫んでしまった。

これは周りにいた人たち
みんな驚いていた。

⏰:09/02/14 02:27 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#719 [幸]
『気持ちは嬉しいけど…
私はちゃんと罪を償わなうわ。』



『近所の人たち、みんな
知ってたんですよね?
あなたの息子さんが
障害を持ってることを。
なのに…なぜ誰も助けてくれなかったの…?

あなた1人のせいでは
ありません!!』



私はそう言った。
言ってしまった。

⏰:09/02/14 02:32 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#720 [幸]
『鮎川さん!!』

警察官にそう言われたが
私は引き下がらなかった。



『だって可笑しいでしょ!?
周りにいた人たちだって
この親子に対して差別を
してたんですよ!?


聞いたんだから…
あの少年に…。』

⏰:09/02/14 02:34 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#721 [幸]
『鮎川さん……』


お母さんが泣きながら呼んだ。

するとバッグから本を
取り出した。



『この本、知ってる?』

見たことがない本だったが
作者の名前には見たことがある名前があった。

⏰:09/02/14 02:38 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#722 [幸]
そこには、
風見かける


と書かれてあった。



かける……?
いつ本なんて……



『この本、どうしたんですか!?』

思わず聞いてしまった。

⏰:09/02/14 02:41 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#723 [幸]
『この本ね、実は
販売されてないの。』



目の前が真っ暗になった。


『この小説ね、障害者の
苦悩の話しなの。
でも…内容が国民的に
良くなかったのかもね…
“障害者独立支援法”反対!!
っていう内容だったの。』

⏰:09/02/14 02:45 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#724 [幸]
『ちょっ……ちょっと待って下さい!!
なんで!?
それじゃあ表現の自由に反してますよ!?』


私の声は震えていた。
自分でもよくわかった。


『ましてや、難聴だったからね。
この作者。
だから余計潰せやすかったのよ。

聞いた話し、この作者は
ピアノは上手いらしいけど
プロ並みではない。』

⏰:09/02/14 02:50 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#725 [幸]
ちょっと腹がたったが
黙って聞いた。


『それなのに、ピアノの推薦で
アメリカで修行してこいと
大学側からも言われ
多額のお金をあげたの。
この作者のご両親、
つい最近営業に失敗して
お金に困ってたからね…。』



…かける…
私はその場で暴れたかった。

⏰:09/02/14 02:53 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#726 [幸]
『んで、私は知り合いに
内緒で本を印刷してって
頼んだの。』




“……馬鹿らしい…”


思わず呟いた。

⏰:09/02/14 02:55 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#727 [幸]
『えっ……?』


『上の連中が違法してるのに、
国民には法律を守れってか…
上の連中が守らないのも
国民が守るかって…』

⏰:09/02/14 02:58 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#728 [幸]
『最近の子どもは…って
よく大人は言うけど
違う……

大人がそういう汚いことをするから
子どもだって…

…悔しい…』



私はそう言いながら
何度も心の中で
かける
と叫んだ。

⏰:09/02/14 03:01 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#729 [幸]
『あなたが…子どもたちに
教えればいいじゃない。』


『えっ?』



『あなたが、子どもに
大人は汚い。でも
あなたたちはそういう
大人になるなって…』


私はしばらく黙り込んだ。
そして、あることを決心し、
こう話した。

⏰:09/02/14 03:03 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#730 [幸]
『そうします…
私、カウンセラーになって
相談に来た人たち、子どもに
このことを教えます!!


そして人生に迷った人たちの…
案内板になってあげたい…

こういう道がありますって。
でも最終的に決めるのは自分。


そしてあなたの息子さんのような
子どもをもうだしたくない!!

だから案内板になります…



人生の案内板に……』


END

⏰:09/02/14 03:08 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#731 [幸]
完結しますたぁホホ


誤字が結構ありましたことを
お詫びしますホ

すみませんホ


最後まで読んでくれた方
ありがとうございました。

⏰:09/02/14 03:10 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#732 [我輩は匿名である]
お疲れさまです
それぞれの"その後"も気になるので.書いて欲しいです

⏰:09/02/14 09:48 📱:SH906i 🆔:GaH4wDHg


#733 [我輩は匿名である]
続き気になります!

⏰:09/02/14 13:47 📱:W51S 🆔:znqH8BVI


#734 [幸]
>>732
>>733

コメントありがとうございましたx


では、リクエストにお答えしますN

次の作品もよろしくお願いしますm(_ _)m

⏰:09/02/14 14:30 📱:W53H 🆔:v0nXhjkM


#735 [我輩は匿名である]
主さんありがとうございます楽しみにしてます

⏰:09/02/14 15:47 📱:SH906i 🆔:GaH4wDHg


#736 [ちぃ]
>>1ー200
>>201ー400
>>401ー600
>>601ー800

⏰:09/02/18 20:43 📱:D705i 🆔:/RyWQVQE


#737 [ちぃ]
>>1ー200
>>201ー400
>>401ー600
>>601ー800

ごめんなさい

⏰:09/02/18 20:45 📱:D705i 🆔:/RyWQVQE


#738 [翼]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:09/02/18 22:05 📱:SO706i 🆔:BEthy1Jo


#739 [我輩は匿名である]
>>501-600
>>601-700
>>701-800

⏰:09/03/13 09:23 📱:SH905i 🆔:XdT7dI4s


#740 [我輩は匿名である]
>>2->>50
>>51->>100
>>101->>150

⏰:09/09/21 17:35 📱:auKC3O 🆔:lhhQffoc


#741 [我輩は匿名である]
>>2-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750

⏰:09/09/21 17:40 📱:auKC3O 🆔:lhhQffoc


#742 [ん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/27 04:57 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#743 [ん◇◇]
>>1-40

⏰:22/10/27 05:42 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#744 [ん◇◇]
>>710-740

⏰:22/10/27 05:58 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#745 [ん◇◇]
>>1-350

⏰:22/10/27 06:05 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#746 [ん◇◇]
>>350-750

⏰:22/10/27 06:06 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#747 [ん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/27 06:27 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#748 [ん◇◇]
考えさせられました。

⏰:22/10/27 06:42 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#749 [ん◇◇]
>>760-800

⏰:22/10/27 06:50 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


#750 [ん◇◇]
>>800-900

⏰:22/10/27 06:50 📱:Android 🆔:DE5DdzBs


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