†horror†
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#501 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『響歌…響歌…響歌…響歌』

夢の中で誰かが響歌の名前を連呼している。


この夢を見る度に、目の前に立つ見えない人物は必死に何かを訴えているようにも思えた。


それがなんなのか、わかるはずもなかった。


ただ一つわかる事は、この声を響歌は聞き覚えがあるという事だけだ―


響歌『中野くん…?』

ここで目が覚めた。


辺りは暗い。


時計の音がコチコチと聞こえる中、響歌は寝汗をびっしょりとかいていた。

⏰:11/08/07 01:35 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#502 [輪廻◆j6ceQ96kak]
最終話【終幕なる連鎖】


あまりの息苦しさにハアハアと大きく息をしていると、隣に寝ている麗奈が起き上がった。


麗奈『響歌ちゃん…大丈夫?』


響歌『すみません、変な夢を見ちゃって…』


麗奈『水持ってくるよ』

そう言って立ち上がり、部屋の電気をつけた。


ふと時計に目をやると針は午前4時50分を指している。

⏰:11/08/07 01:43 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#503 [輪廻◆j6ceQ96kak]
明け方近くだというのにやけに薄暗い外。


しばらくしてコップ一杯の水を麗奈から貰い、それを一気飲みした。


麗奈『ねえ、どんな夢見てたの?』


響歌『説明しずらいんですけど、暗闇で誰かが私を呼んでるんです。私自身は身体が動かなくて…』


麗奈『その誰かに心当たりはないの?』


響歌『声は男の人で…どこかで聞いたような声なんです』

夢ではその人物を把握できそうになるも、現実に戻ると記憶がリセットされるように思い出せなくなった。

⏰:11/08/07 01:52 📱:T004 🆔:lEByWk0Q


#504 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『そういうのって何か暗示してたりするんだよね』

あの日から見るようになった夢。

近づいてくる人物は何を訴えようとしているのか…考えれば考えるほど頭が混乱していく。


麗奈『まあ、あまり気にしない方がいいよ。夢はただの夢じゃん?』

彼女が微笑みながら言う。


麗奈『じゃあウチそろそろ起きるから。響歌ちゃんはまだ寝てなよ』

そう言って服を着替えた。

⏰:11/08/08 07:54 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#505 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『あの、私…今日帰るので送ってもらえませんか?』


麗奈『ん、了解』

すっかり眠気がなくなった響歌も麗奈と一緒に一階に下りる事にした。


リビングに行くと、ソファに蓮の姿があった。


麗奈『あれ蓮ちゃん…早くない?』


蓮『なんか寝れなかった』

心配した麗奈がそばに行く。

その姿は、まるで本当の姉弟のようだった。

⏰:11/08/08 08:00 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#506 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈『とにかく身体には気をつけなよ?』

念を押して朝食作りにキッチンに向かう。


響歌もソファに座った。


蓮『村井…。俺、今日もう一回警察行ってくる』

麗奈に聞こえないように小さく言った。


響歌『えっ!?』

思わず大きな声で反応するも、麗奈には気がつかなかった。

⏰:11/08/08 08:18 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#507 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『前に奴に面会行った時は動機について問い詰めたんだけど、あいつずっとニヤニヤ笑ってて何も喋らなくてさ』


響歌『……』


蓮『だから今度こそ聞くつもり。で、絶対に有罪に追い込んでやる』

蓮の目は真っ直ぐで本気だった。


響歌『私も行っていい?』


蓮『よし、行くか。麗奈も父さんも午前から仕事だし』

麗奈達には言わないという事を約束した。

⏰:11/08/08 08:27 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#508 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>2-64 1話
>>65-261 2話
>>262-361 3話
>>362-500 4話

⏰:11/08/08 10:23 📱:T004 🆔:jFWiLo7I


#509 [輪廻◆j6ceQ96kak]
数時間後―


蓮の父親が会社へ向かい、続いて麗奈がアルバイトへと向かった。


蓮『じゃあ行くか』


響歌『歩きだよね? ここから何分くらいだっけ?』


蓮『30分くらい歩くかも。かったるいなら俺一人で行くけど?』

響歌は首を横に大きく振った。

⏰:11/08/09 01:46 📱:T004 🆔:2k340WRo


#510 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『じゃあ行くぞ』

こうして二人はあの男に会う為、警察署へ向かって歩いた。



蓮『麗奈が言ってたけどさ…兄ちゃんを殺したあの男、そのデスネットとかいうサイトの会員なのかな』


響歌『わからない…。あの山で初めて会った時は、ただの登山が趣味の人なのかなって思ってたし…』


蓮『人を見た目で判断しちゃ駄目って事だな』

そんな会話を交わしながら街中を歩いていく。

⏰:11/08/09 01:51 📱:T004 🆔:2k340WRo


#511 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから30分ほど歩いた所で、昨日の警察署が見えてきた。


蓮『ちょっと待ってて』

そう言って署の前に立っている警官の元へ向かい、何かを話している。


蓮『村井』

そしてすぐに手招きをして響歌を呼んだ。


蓮『面会OKだってさ』


響歌『なんか緊張してきた…』

響歌にとっては最悪な思い出しかない、あの男との再会。

⏰:11/08/16 01:37 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#512 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『村井、大丈夫? 顔色よくないけど』


響歌『だ、大丈夫』

警官に案内され、3階にある留置場の面会室へと通された。


『只今連れてきますので、しばらくお待ちください』

警官がそう言って面会室を去り、二人は用意された椅子に座ると、響歌は落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回した。


響歌『私、警察署なんて初めてきた…』


蓮『そんな簡単に来れるような所じゃないからな』

⏰:11/08/16 01:53 📱:T004 🆔:hJAl410Q


#513 [我輩は匿名である]
あげ!

⏰:11/08/18 23:06 📱:SH01B 🆔:/OHOFH66


#514 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>513さん
ありがとうございます(^^)

――――――――――



『お待たせしました』

数分後、警官がそう言って男を連れてきた。


響歌は男の動きを目で追い、男が椅子に座った所で視線をそらした。


『会田久志さんです。面会時間は15分間のみと決まっておりますので、厳守ください』

この男の名前を知るのは響歌にとって初めてである。


響歌が視線を合わせないようにしている中、一方の蓮はものすごい形相で会田を睨みつけていた。

⏰:11/08/23 10:57 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#515 [輪廻◆j6ceQ96kak]
少しの沈黙の後、最初に口を開いたのは会田だ。


『今日もまた来るなんて、物好きもいるもんだなぁ』

会田は余裕のある表情で、ヘラヘラと笑いながら言った。


それを見た蓮の顔が更に強張る。


『何ヘラヘラ笑ってんだよ…。アンタ、自分のした事わかってんのか?』


『これはまた随分な挨拶だねぇ…』

蓮を挑発するかのような言葉に、響歌もついに頭にきた。

⏰:11/08/23 11:06 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#516 [輪廻◆j6ceQ96kak]
アンカー
>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:11/08/23 11:17 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#517 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『アンタ、いい加減にしてよ! どういうつもりだよ!』

怒りと同時に悲しみもこみ上げてくる。


しかし会田の表情からは全く反省の色は見られない。


会田『あ、響歌ちゃんじゃない。久しぶりだねぇ』

今、響歌の存在に気づいたそぶりを見せ、ニヤニヤ笑いながら言う。


響歌『なんで私の名前…』


会田『あの時、私が殺した男が君の名前呼んでたじゃない。それに…』

会田がここまで言うと、蓮が突然椅子から立ち上がった。

⏰:11/08/23 11:26 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#518 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『ふざけんな! テメェのせいで俺のたった一人の兄ちゃんが…』

拳をぶるぶると震わせて叫ぶように言う蓮は、今まで溜めていた深い悲しみを今、爆発させたようだった。


『君! 落ち着くように!』

会田の後ろにいる、響歌達に背を向けてパソコン画面を見ていた警官が異変に気がついて振り返り、蓮をなだめるように注意する。

⏰:11/08/23 11:37 📱:T005 🆔:qOK7xnyA


#519 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『…………』

かける言葉が見つからない響歌は、ただ蓮の悔しそうな横顔を見つめる。


会田『まあまあ、落ち着きなさいよ。どんなに取り乱した所で君のお兄さんはもうこの世にはいないんだからさぁ』


蓮『絶対テメェのした事は一生許さねぇ…帰るぞ村井』


響歌『え…ちょ…』

響歌が返事する前に蓮は乱暴に椅子から立ちがって面会室を出ていった。

すぐにその後を追うとした時、会田と目が合い、彼は言った。


会田『デスネットの局員はまだ来てないのかなぁ?』

そうニヤけて言った一言に響歌は確信を持った。

⏰:11/08/27 23:00 📱:T005 🆔:KnYTPhDU


#520 [輪廻◆j6ceQ96kak]
麗奈が言っていた通り、この男もデスネットの会員であると。


帰り道で異様な雰囲気の中、蓮は一言も喋る事なく響歌の一歩先を歩く。


蓮のあそこまで感情的な姿を見たのは初めてだった。


だが唯一の兄を殺されたのだから無理もないと思い何も言わずに蓮の後ろを歩く。



蓮『ジュースでも買ってくる』

途端に後ろを振り返る事なく言い、近くにある自動販売機に駆け寄った。

⏰:11/08/27 23:13 📱:T005 🆔:KnYTPhDU


#521 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『はいよ…』

戻って買った缶コーラの一つを響歌に手渡しタブを開ける。


『あ、ありが…』


『村井、後で話ある』

響歌のお礼の言葉を遮るように言い、背を向けて蓮は歩き出しす。


その態度と後ろ姿は、またしても響歌の知る蓮ではなかった。


家に着いてリビングのソファに二人、無言のまま腰かける。

⏰:11/08/29 08:13 📱:T005 🆔:BR564fFM


#522 [輪廻◆j6ceQ96kak]
沈黙の中、時計の針の音だけがカチカチと時を刻む。


ソファにうつむきながら座る二人はまるで病院の手術室の前で手術が終わるのをそわそわしながら待っているようだ。


蓮『あ、あのさ…村井』


響歌『…な、なに?』

柄にもなく少し口ごもった様子で話しかける蓮に、響歌は戸惑いを隠せないでいた。

⏰:11/09/10 22:11 📱:S004 🆔:w1pFl2Mw


#523 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『俺、アイツに復讐するわ…』


響歌『…復…讐…?』

聞き間違いでありたかった。


蓮『アイツ…自分のした事ただの軽いゲームとしか思ってないんだよ!』

そう声を荒げて頭を抱える蓮を見た響歌は、無言でそっと彼を抱きしめた。

⏰:11/09/11 09:10 📱:S004 🆔:ihm0PsH6


#524 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『蓮…』

しばらくその状態を続けていると、蓮の感情が響歌の中に痛いほど染み込んでくる。


復讐したいと気持ちはこんなにも人の心を冷たくさせ、やがて闇へと変わる。


蓮『村井…』


響歌『何も言わないで蓮…』

彼の心を変えられるのは自分しかいないと思った。


それを噛みしめながら精一杯抱きしめ続けた。

⏰:11/09/13 17:20 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#525 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『…テレビでもつけるか』

少しだけ落ち着いた蓮はリモコンを手にしてテレビの電源をつける。


蓮『あれ、これって…』

テレビの画面を凝視しながら言う蓮に、響歌も自然に視線を画面にやった。


丁度何かのニュース報道をしているようだ。


そして、画面にはどこか見覚えのある場所が映し出されている。

⏰:11/09/13 19:42 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#526 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ここ…私のアパートだ…』


蓮『やっぱり? 昨日の強盗の事やってるんじゃない?』

現場には男性レポーターがカメラに向かって中継していた。


そして何気なく視線をやった画面右上の文字を見て響歌は愕然する。


“強盗殺人事件の犯人は現場アパート住人の女性か?警察が行方を捜索中”


蓮もすぐその文字に気が付いた。

⏰:11/09/13 20:16 📱:S004 🆔:x0bAJc16


#527 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『この女性って村井…お前の事じゃないよな…?』


響歌『やめてよ! 大体、管理人さんが殺された時間は私達、麗奈さんの車に乗ってたじゃん!』

必死に否定する響歌を見て蓮は小さく笑った。


蓮『…冗談だって。お前がそんな事するわけないってのは俺がよく知ってる』

そんな蓮の言葉に響歌は心が救われた気がした。

⏰:11/09/15 11:52 📱:S004 🆔:t5z3siic


#528 [輪廻◆j6ceQ96kak]
再び、テレビのニュース報道を画面を食い入るように見つめる。


『ここで新たな情報が入ってきました。
殺害された管理人の部屋から、アパートの住人の部屋の合鍵が全て無くなっていたという事です。
犯人は一体何が目的で部屋の合鍵を盗んだのでしょうか』

レポーターが目を光らせて情報を伝える。


この情報を聞いて、とある言葉が響歌の頭に浮かんだ。


響歌『デスネット…局員…』

嫌な胸騒ぎがして、途端に息が苦しくなってきた。

⏰:11/09/15 12:05 📱:S004 🆔:t5z3siic


#529 [輪廻◆j6ceQ96kak]
テレビ画面を見ていた蓮が響歌の異変に気付く。


蓮『村井? 大丈夫?』


響歌『だ、大丈夫…』

心配かけたくない一心で平静を装った。


だが、蓮はそれを見透かしたように


蓮『麗奈の部屋で少し寝なよ』

と優しい言葉をかけた。

⏰:11/09/15 12:16 📱:S004 🆔:t5z3siic


#530 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『ありがと…でも大丈夫だから…』

寝たら、またあの夢を見てしまうかもしれない。


それに、いつデスネットの局員が響歌の前に現れるかわからない。


そんな2つの恐怖が交錯している。


蓮『そっか、でも無理はすんなよ』


響歌『うん』

そう返事したのとほぼ同時だった。


『ピンポーン』

…家のインターホンが鳴らされたのは。

⏰:11/09/15 12:27 📱:S004 🆔:t5z3siic


#531 [輪廻◆j6ceQ96kak]
蓮『…誰だろな』

そう言って蓮がソファから立ち上がった。


響歌『待って! もしデスネットの局員だったら…』


蓮『まさか…。ここに村井がいるって知ってるはずはないだろ?』

心配そうな響歌に背を向けて玄関の方に向かう蓮。


しばらくして、ドアを何度もガチャガチャ開けようとする音がした。

⏰:11/09/16 00:16 📱:S004 🆔:v7UPVMbU


#532 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして廊下をバタバタと走って、青ざめた表情の蓮が響歌の元に戻ってきた。


響歌『蓮、どうしたの? 誰…?』


蓮『ド、ドア開けようとしたらいきなり引っ張られて…』

とにかく蓮を落ち着かせようとソファに誘導し座らせる。


響歌『…誰だったの?』


蓮『わかんねえよ…。でもすごい力だったから男だとは思うけど…』

玄関の方からはまだドアを必死に開けようとするガチャガチャという音が響いている。

⏰:11/09/16 00:28 📱:S004 🆔:v7UPVMbU


#533 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『蓮! どうするの!』

あたふたしながらポケットから携帯電話を取り出す。


今にもドアを壊して入ってきそうな勢いに怖くなり、警察に電話をしようと110番を押した。


蓮『待て村井!』

最後に通話ボタンを押そうとした響歌を止めた。


響歌『何!? 入ってきちゃうよ!』


蓮『いいから落ち着けって!』

大きな声を張り上げる蓮に驚いた響歌はハッとして我に帰る。

⏰:11/09/17 14:26 📱:S004 🆔:q6vwXN2E


#534 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ドアの音は、諦めたのだろうかしなくなっていた。


ホッと胸を撫で下ろして残った缶コーラの中身を一気に飲み干す。


蓮『しばらく家にいなよ』


響歌『そういうわけにもいかないよ…。今日で帰る』


蓮『そっか…。でも何かあったらすぐ連絡しろよ?』


響歌『うん…』

そして再びの沈黙から数分後、テレビから思わぬニュースが飛び込んだ。

⏰:11/09/20 10:21 📱:S004 🆔:1jjLJZ2o


#535 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『先ほど11時20分頃、3番地の廃工場となっていた場所で女性の変死体が発見されました。
死後数時間は経過していて、死亡推定時刻は今日午前8時から9時の間という事と、遺体には背中から刃物で刺された跡がある事から、警察は殺人事件と断定し捜査を進める方針。
現場付近には女性が乗ってきたと思われる白いワゴン車を発見。
また車内から見つかったバッグの中に免許証も発見。
遺体の顔は免許証の顔と一致したという事で、この白ワゴン車は被害者の女性のものでまず間違いはない模様』

ニュースキャスターからそう伝えられ、数秒間そのワゴン車が映し出されると、蓮が突然ソファから立ち上がった。

⏰:11/09/20 18:04 📱:S004 🆔:1jjLJZ2o


#536 [輪廻◆j6ceQ96kak]
響歌『蓮、いきなりどうしたの?』

蓮はじっと画面を穴の空くほど見つめた後、衝撃的な一言を呟いた。


蓮『この車…麗奈の…』


響歌『えっ!?』

視線を蓮からテレビ画面に戻すも、そのニュースは終わっていた。


『ピンポーン』

そんな時、再び鳴らされたインターホン―


その音はいつもより大きく聞こえ、呆然とした響歌の鼓膜を揺らした―

⏰:11/09/20 18:14 📱:S004 🆔:1jjLJZ2o


#537 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『コンコン』

玄関の外にいる者はインターホンを鳴らしてノック、これを繰り返す。


蓮がテレビの電源を消して黙っていると、やがて声がした。


『桐谷さん! いらっしゃいますか? 警察です!』

男性の声、そして警察という言葉がハッキリと聞こえ、響歌と蓮はすぐに玄関に向かう。

⏰:11/09/21 00:11 📱:S004 🆔:Rl1V8ouE


#538 [輪廻◆j6ceQ96kak]
鍵を開けてチェーンを外しドアを開けると、2人の男性の警察官が真顔で立っていた。


一人は小太りの中年警察官。


そしてもう一人は若い警察官。


警官2人は無言で警察手帳を響歌達に提示してから、中年の警官が手に持っていた黒いバッグを差し出してきた。


蓮『こ、これ…』

そのバッグを見た蓮の顔色が一瞬にして変わる。

⏰:11/09/21 00:23 📱:S004 🆔:Rl1V8ouE


#539 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『こちらは杉本麗奈さんが住んでいる宅で間違いはありませんか?』

中年警官が蓮にバッグを渡してから問う。


蓮『じゃ、じゃあやっぱり…さっきのニュース…』

蓮は警官の目ではなく、どこか遠くを見ながら言った。


『お察しの通り、遺体となって発見されました。バッグの中に免許証が入っていたのですぐ身元が特定できました』

警官の言葉で響歌は状況を完全に理解した。

⏰:11/09/21 00:35 📱:S004 🆔:Rl1V8ouE


#540 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だが理解したと同時に悲しみと絶望感が突如襲いかかり、その場にペタリと座り込んだ。


響歌『麗奈…さんが…?』

不思議な事に涙は出てこなかった。


悲しいはずなのに、響歌にとっては頼れるお姉さん的存在の麗奈がこの世から去ったというのに。


蓮『オッサン! なんで…なんで麗奈は廃工場なんかにいたんだよ!』

一方の蓮は涙を流しながら中年警官の胸ぐらに掴みかかる。


若い警官がすぐ止めに入るが、中年警官は『いいから』という合図を目でする。

⏰:11/09/21 00:48 📱:S004 🆔:Rl1V8ouE


#541 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そして話を続けた。


『それでまず被害者のご家族に遺留品を渡そうと思って来たんだけど、どうして表札の名字と被害者の名字が違うのか教えてくれる?』

警官の質問に、蓮は腕で涙を拭いながら答える。


蓮『ここは麗奈の実家ではないです。俺の兄ちゃんと結婚を決めててここに同居する事になって…』

そう説明すると警官は『なるほど』と納得するように頷いた。

⏰:11/09/22 13:55 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#542 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ杉本麗奈さんの実家の住所を教えてくれるかな?』

そう言ってメモ用紙とボールペンを渡す警官。


だが蓮はそれを受け取る事なく首を横に振った。


蓮『俺は知りません』

キッパリ言い放つと、警官2人は困惑した表情を見せる。

⏰:11/09/22 14:02 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#543 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『どうしてわからないのかな?』

中年警官の目は疑いの目つきへと変わる。


蓮『俺の父さ…いや…その…』

いやに口ごもる蓮に我慢できなくなったのか、若い警官が拳を震わせながら前に出た。


『これは重要な事なんですよ! なぜわからないんだ!』

今にも蓮に飛びかかっていきそうな警官を中年警官が『まあまあ』と抑える。

⏰:11/09/22 14:12 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#544 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前は下がっていろ』


『いやしかし…』


『…下がっていろ』

中年警官の威圧に負けた若い警官は、言われた通り一歩下がる。


そして再び蓮の顔を見て言った。


『この家に他のご家族の方はいるの? その、さっき言ってた君のお兄さんとか』

そう聞かれた瞬間、蓮の肩がピクリと動いたのを響歌は見逃さなかった。

⏰:11/09/22 14:34 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#545 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

響歌『あ、あの! 蓮のお父さんなら住所わかると思います…』

立ち上がって言うと、3人の視線が一斉に響歌に集中した。


『なるほど…。じゃあその、お父さんは今いらっしゃる?』

響歌と蓮は顔を見合わせ、やがて警官らに視線を戻す。


蓮『今いねえよ…』

そして、そう不機嫌そうに一言答えると今度は警官2人が顔を見合わせた。

⏰:11/09/22 17:51 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#546 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
そして何やら小さい声で話し合い、中年警官の言葉に対しうんうん頷く若い警官。


『…ではまた来ます』

帽子を取って軽く頭を下げ、再び被り2人は出ていった。


響歌と蓮はほぼ同時といっていいくらいに小さな溜め息をついてからリビングに戻る。

⏰:11/09/22 18:03 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#547 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

ソファに座った蓮は警官から渡された麗奈のバッグの中を見る。


響歌は下を向いて麗奈の事を考えた。


一体、誰が麗奈を殺したのだろうか?


犯人の動機は?


全く見当もつかなかった。


蓮『あれ…麗奈の携帯がない…』


響歌『…警察が調べてるんじゃないかな』


蓮『ああ、そうだな』

それからしばらくなんの会話もないまま時間は過ぎ去った―

⏰:11/09/22 18:14 📱:S004 🆔:9TodJUh2


#548 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

『ただいま』

夕方5時をさした時、その一言と共に蓮の父が帰宅した。


『ん? 部屋の電気消したままでどうしたんだ?』

リビングのソファに座り込む2人の元に駆け寄り声をかける。


その声に反応した響歌は、反射的に蓮の父の方を見て挨拶をした。


響歌『あ…どうも』

暗い態度の響歌に首を傾げながらも部屋の電気をつける。

⏰:11/09/23 11:56 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#549 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

『蓮。麗奈はまだ帰ってないのか…?』

部屋をざっと見回しながら聞く。


蓮『…ニュース見てないのかよ?』

父に背を向けたままそう答えると、驚いた表情で隣のソファに座った。


『蓮、どういう事なんだ? 麗奈に何かあったのか!?』

響歌と蓮は昼のニュースの事や警官の事を全て話した。

⏰:11/09/23 12:07 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#550 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

『剛史の次は…麗奈が…』

さすがにショックが大きすぎたのか、放心状態になりつつあった。


蓮『村井、ちょっといい?』


響歌『あ、うん…』

蓮は立ち上がって、響歌もその後に続く。


2階へ上がって蓮の部屋に入る。


蓮『村井、もしかして…麗奈にもデスネットからメールが来てたんじゃない?』


響歌『れ、麗奈さんにも? でもそんな事言ってなかったような…』


蓮『俺や村井に心配かけたくなくて黙ってたのかもしれない。それ以外に麗奈が殺される理由なんてないだろ…』

響歌にとっては納得できる話ではあった。

⏰:11/09/23 12:22 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#551 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

蓮『それに麗奈は3番地の廃工場で殺されたんだろ? 麗奈はなんでそんな所にいたんだ?』


響歌『そ、それは…』

もちろん答えようがなかった。


蓮『とにかく俺、明日またあの男の面会に行ってくる。デスネットの仕組みを全て聞き出してやる』


響歌『じゃあ私も…』

だが蓮は首を横に振った。

⏰:11/09/23 12:37 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#552 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

蓮『お前はしばらくここにいろ。何か嫌な予感がするんだよ…』


響歌『嫌な予感…って?』


蓮『とにかく、アパートには帰るな。着替えも麗奈の服使っとけ』

蓮はそれ以上何も言わなかった。


2人は再びリビングに戻る。


蓮の父はソファに座って麗奈の遺留品のバッグの中を見ていた。

⏰:11/09/23 12:44 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#553 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 

蓮『何やってんだよ?』

蓮の声に気が付くと、手を止めた。


『ああ…何か手がかりになるようなものがないか探してたんだ』


蓮『…麗奈の事には必死になれるんだな。兄ちゃんの時とは違って』

そうポツリとヒヤヒヤするような言葉を投げ掛けると、父は駆け寄る事も殴りかかってくる事もなく、再びバッグの中を探る。

⏰:11/09/23 12:56 📱:S004 🆔:LffOtOgg


#554 [我輩は匿名である]
更新待ってます(^O^)/

⏰:11/09/29 00:25 📱:SH01B 🆔:s1zt/l4g


#555 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>554さん
前にあげてくれた方ですかね?(違ったらごめんなさい)

ありがとうございます。

仕事が忙しくなってきたのでしばらくは不定期亀更新になりますが、どうか最後までお付き合いください(^^)

アンカー
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550

⏰:11/09/29 13:12 📱:S004 🆔:3UOUz5M2


#556 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
蓮『チッ』

父親に聞こえるように大きく舌打ちをしてから、キッチン側のテーブルの椅子に座る。


響歌『わ、私ちょっと外の空気吸ってくるね』

この重い空気に今にも押し潰されそうな響歌は下を向く蓮に言って玄関に向かった。


外へ出ると冷たい風が襲い、それが夏の終わり、そして秋の始まりを示している。

⏰:11/09/29 13:26 📱:S004 🆔:3UOUz5M2


#557 [我輩は匿名である]
>>555
そうです(^O^)/
気長に待ってます★

他の読者様達に悪いのでsageにしときます。

⏰:11/09/29 21:35 📱:SH01B 🆔:s1zt/l4g


#558 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>557さん
そう言って頂けると力が湧きます。
ありがとうございます(^^)
――――――――――


何かに導かれるように、すっかり日が落ちた住宅街を歩く。


見慣れない風景に新鮮さを感じつつ麗奈の事を思い出しながら。


響歌『…………』

初めて出会った時の事や、自分の事をまるで身内のように扱ってくれた事を思うと、やがて涙が溢れ出しこぼれ落ちていった。


自分は麗奈に何もしてあげられなかった。


ただ隣にいて話を聞く事しかできなかった自分を呪いたい気分だった。

⏰:11/09/30 00:41 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#559 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
麗奈の代わりに自分が死ねばよかったんだとさえ思う。


自分の無力さをつくづく思い知り、人目を阻からずその場で泣きじゃくった。


まるで小さな子供のように―

⏰:11/09/30 13:23 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#560 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
どれくらいの時間泣いただろうか。


辺りはすっかり暗く、人の姿が見当たらない。


そんな中、響歌の背後から足音が聞こえてきた。


それは段々とこっちに近づいてくるようだ。


なぜか後ろを振り返ってはいけない気がし、響歌はその場で固まっていた。


響歌『(こ、この感じ…)』

この気配には覚えがあった。

⏰:11/09/30 13:31 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#561 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
数週間前に山で起こった出来事。


背後から近づいて襲いかかってきた、とある旅館のこの世に存在しないはずの女将。


あの体験と同じ感じがした。


響歌『(逃げなきゃ…)』

雪乃や麗奈の顔を思い浮かべた途端、さっきまで動かなかった足が動き、考えるより先に走っていた。


“あの時”と同じく―

⏰:11/09/30 18:44 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#562 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
以前は雪乃、そして今回は麗奈と導かれるように走った末、足を止めて上を見上げると蓮の家にたどり着いていた。


ここらへんの道は全くわからないというのに迷いもせず、そして背後から近づいてきた人物と鉢合わせする事もなく家に戻ってきた事を不思議に思った。


今度は麗奈が助けてくれたのかもしれないと思うと再び涙が溢れてくる。


蓮『村井?』

響歌の泣き声を聞きつけたのか、蓮が家のドアを開けて駆け寄る。

⏰:11/09/30 18:57 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#563 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
その後に続くように中から1人の警官と、蓮の父親も出てきた。


『大丈夫かい?』

警官がそう言って響歌の肩をトンと叩く。


響歌『……!!』

その時、何かゾクっとするような寒気を感じて警官の方に目をやると、そこには響歌の見覚えのある顔があった。

⏰:11/09/30 19:19 📱:S004 🆔:hh6EMtw6


#564 [我輩は匿名である]
めちゃくちゃ面白いです!
一気に読んでしまいましたw
続きが気になるけど終わってほしくない…そんな気持ちです。
本当におもしろいです!
今後の更新楽しみにしていますので、無理をなさらず頑張ってくださいね\(^-^)/

⏰:11/10/02 04:52 📱:Android 🆔:eCyYU7o.


#565 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>564さん
そんなお言葉…私にはもったいないです。

でも嬉しいです(^^)
ありがとうございます!

これから過去篇など入る予定なのでお話はまだまだ続きます!

どうか最後までお付き合いください(^^)

⏰:11/10/02 21:44 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#566 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『…あ、あの時の…』

震えた手で警官を指さしながら言うと、彼はニヤリと微笑んだ。


蓮『村井、この人の事知ってんの?』

響歌と警官の顔を交互に見ながら聞く。


響歌『こ、この人…』


『とにかく、またお話を伺う事になるかと思うので、その時はご協力よろしくお願いします』

警官は響歌の言葉を遮り、蓮の父に向かってそう言うと、早々とその場を後にしていった。

⏰:11/10/02 21:46 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#567 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
『村井さん、寒いから家に入りなさい』

蓮の父に言われ、蓮と一緒に家に入った。


リビングのソファに3人座り、少しの沈黙の後、最初に口を開いたのは蓮だった。


蓮『村井、さっきの警官知り合い?』


響歌『…あの時の…』

数年前の記憶が今、蘇ろうとしていた。


5年前…


響歌が高校生だった頃の記憶が今―

⏰:11/10/02 21:49 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#568 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
 
 
 
追憶〜村井 響歌 16才〜
 
 
 
 
 
 

⏰:11/10/02 21:51 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#569 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
中学校3年間の内の2年を共に過ごしてきた桐谷蓮が中学卒業を機に遠くに引越し、小学校の頃から親友だった井本七瀬とは中学卒業後、それぞれ別の高校へ。


新しい高校生活のスタートは、響歌にとっては魔のスタートとなった。


全てのはじまりは、当時ほとんどの学校で話題になっていた


『出会い系殺人ネット』


先ほど見た警官の顔が響歌を過去へと誘った―

⏰:11/10/02 22:39 📱:S004 🆔:LMa5fxW2


#570 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
生徒A『ねえ、昨日のニュース見た?』


生徒B『見た見た! 女子高生が出会い系で会った男達に殺されたんだよね』


生徒C『やっぱ出会い系殺人ネットじゃない?』

…まただ。

デスカメラの時と同じ。


“デスカメラで撮影された者は1週間以内に必ず死ぬ”


普通の人にしてみればそんなのはただの迷信、実にくだらないと思うかもしれない。


私も最初はその一人だった。

⏰:11/10/03 00:57 📱:S004 🆔:2Pxn6/H.


#571 [我輩は匿名である]
全然怖くない。

内容がよくわからない。


=面白くない。

⏰:11/10/04 19:31 📱:W62P 🆔:.ni/x2UA


#572 [りん]
めっちゃ面白いし
話しわかりやすい

↑の人が理解出来てないだけ(笑)

⏰:11/10/05 00:05 📱:P08A3 🆔:8YJtt5.A


#573 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>571さん
はい、自分が一番わかっておりますm(_ _)m

意見などは以後どうかこちらでお願いします。

感想板
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4968/


>>572さん
ありがとうございます。

もっとわかりやすいように書いていきますので、最後までお付き合いくださいm(_ _)m

⏰:11/10/06 12:51 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#574 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
でも今の私はデスカメラの効果を信じざるを得なくなっている。


中学の時、私の親友がそのカメラで学校の担任を写した。


その担任は数日後、交通事故で亡くなった。


また、中学卒業を機に引っ越していった同級生の蓮のお兄さんもそのカメラを購入し、自分を撮影。


死にはしなかったものの、数日後に交通事故で脚を怪我し入院。


その夜、なぜか弟の蓮も原因不明の高熱で学校をしばらく休む事になった。

⏰:11/10/06 12:56 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#575 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
これだけ不幸が続くのはただの偶然だとは思えなくなった私は、ここへきてデスカメラの効果に半信半疑になった。


熱が治まって学校に復帰した蓮から見せられた写真。


そこにはデスカメラで撮られたであろう、暗い部屋で寝ている蓮が写っていた。


それでデスカメラの効果に半信半疑だったのが確信へと変わりつつあった。


でも連鎖はまだ終わらなかった…。

⏰:11/10/06 12:57 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#576 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
ある休日の夜、買い物の帰りに信号待ちをしていた私の身体を一台の車がはねた。


信号が青に変わり、渡ろうと足を一歩車道に踏み出したその一瞬に起きた出来事。


ボンネットにはね上げられた私の身体は軽く宙を舞い、やがて地面に思いきり叩きつけられた。


下半身に今まで経験した事のない激痛が走って、私はその場で意識を失った。

⏰:11/10/06 12:58 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#577 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
目を覚ますと病院にいて、生きている事を実感した。


これもデスカメラの効果かもしれないと思ったけど、私はそのカメラで撮られた覚えはない。


よって、ただの偶然だと思う事にした。


それからデスカメラの話題はピタリと止み、身近で誰かが事故に巻き込まれたり死亡したという話は聞かないまま中学を卒業し、高校へ入った。


でも高校ではまたしても別の『出会い系殺人ネット』という噂が広まりつつある。

⏰:11/10/06 13:00 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#578 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
この高校に入って数週間。


せっかく気持ちを切り替えて高校生活を過ごしていこうと思ったのに、こうもまた嫌な話が広まると正直嫌になる。


昨日、初めて噂になっている『出会い系殺人ネット』が関係した事件が起こったらしい。


でも私は出会い系サイトを通じた事件なんて珍しくはないだろうと特に気には止めていなかった。



『村井さん』

帰りの号令が終わり、教室を出ようとした私を誰かが呼び止めた。

⏰:11/10/06 13:02 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#579 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『…黒川さん』

黒川さん…黒川奈穂さんは、高校受験の時に受験会場でふとしたきっかけで知り合った子だ。


このクラスで一緒になってからは休み時間に喋ったり、お昼に一緒にお弁当を食べたりと、仲良くしている。


響歌『どうかしたんですか?』

向こうから『タメ口でいいよ』と言われないとタメ口になれない私は未だに敬語を使う。


黒川さんも、逆に私からそう言われるのを待っているかもしれない。

⏰:11/10/06 13:05 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#580 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
奈穂『村井さん…今日一緒に…帰れる…かな』

何やら困った様子で口ごもりながら聞いてくる。


響歌『いいですよ』

私が即答すると黒川さんはいつもの笑顔を見せた。


いつも通る河原を2人並んで歩く。


黒川さんに話しかけようと顔を見ると、なぜか辺りを警戒するように落ち着きなく左右を交互に見ている。

⏰:11/10/06 13:06 📱:S004 🆔:BJ2RkxJg


#581 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『…黒川さん?』


奈穂『…あっ! な、なんでしょう?』

私の声に必要以上に驚く黒川さんを見て、いつもの彼女じゃないとすぐ感じる事ができた。


響歌『どうかしたんですか?』


奈穂『い、いや…なんでもないの…』

手を小さく振り苦笑いしながら言う。


黒川さんの態度に違和感を感じつつも、追求する事なく別れ際まで歩いた。

⏰:11/10/08 16:45 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#582 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
河原を過ぎると、私の家がある住宅街が見えてくる。


響歌『じゃあ、私こっちなので』


奈穂『一緒に帰ってくれてありがとうございます』


響歌『あの…そろそろ敬語やめませんか? タメ口で!』

流れ的にチャンスだと思い、言いたかった事を思いきって吐き出した。

⏰:11/10/08 16:46 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#583 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
奈穂『あ、うん、そうですね…。じゃあ…改めてよろしくね』


響歌『…こちらこそ』

吐き出した途端、肩の力が抜けていくのがわかった。


それから黒川さんを姿が見えなくなるまで手を振りながら見送った。


高校に入って初めてできた友達。


これから彼女との友情を大事にしていこうと心に誓い、家に帰った。

⏰:11/10/08 16:50 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#584 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
その夜、お風呂からあがって部屋でぐうたらしていると、久しぶりにナナからの電話があった。


お互いの高校生活について語り明かし、気が付くと髪が自然に半乾きになるまで話し込んでいた。


響歌『…じゃあね』

通話を切って中途半端に湿った髪をドライヤーで乾かし、その日は眠りについた。

⏰:11/10/08 16:52 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#585 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
次の日学校に来ると、いつも早く来ているはずの黒川さんが登校していない。


昨日はなんともなかったような気がしたけど、今日になって風邪でもひいたのかと思い席に座って携帯電話を取り出し、前に交換した黒川さんの携帯番号に電話をかけた。


「おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか…」

どうやら電源を切っているようだ。


なぜだか胸騒ぎがした。

⏰:11/10/08 16:55 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#586 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
“黒川さんに何かあったのではないか?”

不安が募る。


その時、あの名前が脳裏をよぎった。


“出会い系殺人ネット”


まさか次の被害者に黒川さんが…?


いや、単なる私の考え過ぎかもしれない。

⏰:11/10/08 17:00 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#587 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
でも昨日、下校途中の黒川さんの態度には終始違和感を感じていた。


黒川さんが私に一緒に帰ろうと言ってきたのは昨日が初めての事であることから、一人では帰りたくない理由が何かあったのだろうか。


それから休み時間やお昼の時間に彼女の携帯電話にかけたが、ずっと電源を切っているようで一向に繋がらない。


ここまでくると、ますます不安が高まる。


胸騒ぎが収まらず、真意を確かめたくなった私は休み時間、学校に黒川さんから連絡が来てるか確認する為に担任がいる職員室へ向かった。

⏰:11/10/08 17:02 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#588 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『失礼します…川島先生はいますか?』

ノックして入り担任の名前を呼ぶと、背を向けていた先生がすぐに振り向いた。


『村井…どうかしたか?』

私はすぐに先生の元に駆け寄って単刀直入に聞いた。


響歌『あの、黒川さんって今日はどうして欠席なんですか?』


『ああ、黒川か? 実は今、連絡が取れない状態なんだ。家にかけても誰も出ない』

それを聞いて、やっぱり黒川さんの身に何かあったんだと確信する。

⏰:11/10/08 17:04 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#589 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『あの、黒川さんの家の住所教えてください。帰りに行ってみます』


『おお、頼めるか。ちょっと待っててくれ』

先生は自分のデスクに行き調べものをした後、紙に何かを書いてそれを私に手渡した。


『ほい、ここな』

渡された紙には黒川さんの家の住所がボールペンで走り書きされている。

⏰:11/10/08 17:05 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#590 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
紙を制服のポケットにそっとしまって教室に戻った。


放課後、私は学校を出てすぐに住所が書かれた紙と携帯電話のナビを見ながら黒川さんの家へ向かう。


響歌『ここかな?』

どこにでもある木造二階建ての一軒家の前で足を止めて表札を見る。


“佐伯”

名字が“黒川”ではない事から家を間違えたのかと思ったが、携帯電話のナビは間違いなくこの場所を示していた。

⏰:11/10/08 17:07 📱:S004 🆔:vN/kwjkY


#591 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
インターホンを押して、もしも違ったらどうしようかと思いつつも、その佐伯と書かれた表札の家のインターホンを押した。


しかし数分たっても誰かが出てくる様子はない。


やはり留守なのだろうか。


仕方なく、先生から渡すように頼まれていたプリントを郵便受けにいれて回れ右をして帰ろうとした時、通行人のおじさんと目が合ってしまった。

⏰:11/10/09 12:31 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#592 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
怪しい人に見られたかもしれないという不安にかられる。


5秒くらい時が止まったようにおじさんと目を合わせた後、そのおじさんは私の元に歩み寄り一言切り出した。


『ここの人に何か用なのかい?』


響歌『え、えっと…』

やはり家を間違ったのかもしれない。

⏰:11/10/09 12:32 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#593 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
でもこのおじさんはここらへんに住んでる人っぽいので、もしかしたら黒川さんの事を知っているかもしれない。


響歌『あ、あの…ここらへんに黒川さんという人の家はありませんか?』


『黒川? それならそこでいいんだよ』


響歌『あ…そうなんですか』

おじさんの言葉を聞いた限り、黒川さんの家はここで間違いはないらしい。


ホッと胸を撫で下ろしてから、私は更に話を聞く事にした。

⏰:11/10/09 12:34 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#594 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
響歌『あの、黒川奈穂さんはここに一緒に住んでるんですか?』


『そーだよ。ばあさんとお母さんと3人で暮らしてるよ。奈穂ちゃんの兄ちゃんもいるけど、かなり前に家を出ていってもういないみたいだよ。どこで何をしてるんだかね』

お父さんがいないのが気になるけど、何か事情があるのかもしれないと深くまで聞かなかった。


『お母さんはいつも朝から仕事で家を空けてるよ。だから奈穂ちゃんも寂しいだろうさ』


響歌『でもおばあちゃんもいるんですよね?』

私がそう言うとおじさんはかゆそうな顔をし案の定、首筋をポリポリとかいた。

⏰:11/10/09 12:36 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#595 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
『ここだけの話、ここのばあさんはちょっとおかしいんだよね。たまに朝散歩してるの見かけるけど、近所の人と会っても挨拶もしない。それになんか魚が死んだような目でぼーっとしながら歩いてるんだよ。あれは完全にイっちゃってるだろうね』

嬉しそうに話すおじさんに少し腹が立ってきたが、なんとか抑えた。


響歌『そうなんですか…。ところで奈穂さんってどこにいるか知りませんか? 今日学校に来てなかったんで…』


『あれ、おかしいね。奈穂ちゃんとなら今日の朝会ったよ。制服もちゃんと着ていたし、ワタシにもちゃんと挨拶していったし』


黒川さんを見たのは朝。

制服は着ていたものの学校へは登校していない。

⏰:11/10/09 12:38 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#596 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
家の人に、学校へ行ってくると嘘をついてまでどこか行く所があったのか、それとも学校へ向かう途中で彼女の身に何かが起きたのか…。


電話が繋がらないのも、もしかしたら家や学校から黒川さんの携帯電話に連絡が来るのを断つため?


それとも、何者かに襲われて携帯電話を手にして警察へ電話しようとした所で犯人に取られて電源を切られてしまったのか…?


いや、嫌な方向へ想像を膨らませても仕方がない。


響歌『あの! 奈穂さんが行きそうな場所とか…心当たりとかありませんか?』


『…さあね。でも奈穂ちゃんが学校を休むなんて珍しいな。何か事情があるんじゃないかい?』

おじさんに聞けるのはこれくらいだろう。


私は軽く礼をし、黒川さんを探す為、その場から走り出した。

⏰:11/10/09 12:40 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#597 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
電話を何度もかけながら探した結果、結局黒川さんを見つける事はできないまま夜を迎えた。


響歌『はあはあ…』

こんなに走ったのは、小学校の時のマラソン以来だ。


あの河原に座り込んで呼吸を落ち着かせる。


なんとか落ち着いてきたと思っていた時、後ろから『ガシャン』と自転車を止める音がして誰かが私に近づいてくるのを感じた。

⏰:11/10/09 12:41 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#598 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
その気配に私は反射的に後ろを振り返る。


もしかしたら黒川さん?という期待を膨らましたが、そこにいたのは中年の男の警察官だった。


『こんな所で何をしてるの? 制服着たままだけど、どこの学校?』

警官の職務質問は厄介だが、答えなければすんなりと帰れそうにもないので、生徒手帳を提示してから警官の出す質問に全て答えた。

⏰:11/10/09 12:42 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#599 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
『…ふうん、なるほどね。で…そのいなくなった友達は名前なんていうの?』


響歌『はい、黒川奈穂さんといいます』


『黒川奈穂ね…。わかった。警察の方でも調べてみるから、君はもう帰りなさい』

10分ほどの職務質問を終えた後、私は解放された。

⏰:11/10/09 12:43 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#600 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
家に着いてからも、黒川さんの事が頭から離れない。


女子高生が1日中ずっと携帯電話の電源を切っているなんてあり得るのだろうか。


ただの電池切れという可能性はあるが、今はもう夜9時で普通ならば家に帰っているはずだ。


その日は当然、眠れるはずもなかった。


ベッドの傍で体育座りになり携帯電話を片手に黒川さんから連絡がくるのをずっと待っていたんだ―

⏰:11/10/09 12:44 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


#601 [輪廻◆j6ceQ96kak]
 
 
午前6時―


結局、黒川さんから連絡が来ないまま朝になった。


一睡もしていないせいで私の目はうつろだ。


ふらふらと立ち上がり、おぼつかない足で階段を下りて真っ先に洗面所へ向かう。


眠気はないが、頭がぼーっとする。


ずっと起きているなんて初めての体験で慣れていないせいかもしれない。

⏰:11/10/09 13:11 📱:S004 🆔:mzPsbm9g


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