浮 き 世 の 諸 事 情 。
最新 最初 🆕
#601 []
 
「もぉ‥わかんないよぉ」

前のめりに突っ伏して
頭を掻きむしる


木の独特の慣れない香りに
顔をしかめ
恋しくなるは貴方の香り


‥こんな気持ち初めて

⏰:10/02/14 23:00 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#602 []
 
「‥香夜さん?」



名前を呼ばれて
慌てて顔を上げると


「も‥茂七さん?!」

⏰:10/02/14 23:00 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#603 []



茂七さんには失礼だけど
‥正直がっかり

その上なんとなく気まずい


「どうぞ」

ぎこちなく茶を差し出す

あー‥そろそろ壱助さん
お茶飲み切っちゃうかも

⏰:10/02/14 23:01 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#604 []
 
「何でまたこんな所で?」

茂七さんは目を丸くして
湯飲みに手を添えた


何で‥何ででしょう
もう自分でもよくわからない

「ほら、あたしも
稼がなきゃなぁー‥なんて」

思いっきり顔を釣り上げて
作り上げた笑顔を向け
変におどけて見せた

⏰:10/02/14 23:01 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#605 []
 
「偉いなぁ香夜さんは!!」

またがははと笑う
何て呑気なのかしら‥


気付けば、ほら
道行く人に目を凝らして
探してしまっているじゃない

一発で見つける自信はあるのに‥

⏰:10/02/14 23:02 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#606 []
 
「そういえば‥
お兄‥じゃない、旦那は?」


お兄様でもいい
旦那様ならどれだけいいことか


あたしと壱助さんには
何の繋がりもない

⏰:10/02/14 23:02 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#607 []
 
「あぁ‥えっと
本当は、旦那じゃないんです」

「え?!」

茂七さんの表情は
面白いほどにころころ変わる


「あたしはただ
あの方にお世話になってた‥」

⏰:10/02/14 23:03 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#608 []
 

‥お世話になってた

「だけ、なんです」


こんなに薄っぺらかったのか
言葉にしてやっと気づく


何もなかった
壱助さんとの間には、何も

⏰:10/02/14 23:03 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#609 []
 
「そうかそうか!!
と、言うことは‥やっぱり」


お世話になっただけじゃない

その上
縛られたり叩かれたり蹴られたり
酷い扱いだったじゃない

⏰:10/02/14 23:04 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#610 []
 


「俺と恋仲になると言うことか!!」


「‥え?」


茂七さん‥あんたって人は

⏰:10/02/14 23:05 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#611 []
 
とんだ‥


「‥勘違い野郎です、ね」


はっきりとあたしの目は
目の前に現れた
貴方の姿を捕らえました。

⏰:10/02/14 23:06 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#612 [笹]
第十七章 【待ちわびて】

*。*。*。*。*
茂七さん再びw

そして壱助さんきたーっ!!←
一言だけですが(´-ω-`)

離れてわかる大切さ
香夜ちゃん‥
きっともう気付いているはず
でもそれが何なのか
鈍いからわかっていない
悲惨だw(゚o゚)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/14 23:09 📱:D905i 🆔:AHFqEp8k


#613 []



来てくれた‥壱助さん

もう何年も何十年も
会ってなかったような気がする


壱助さんは何一つ変わらず‥

表情さえも変えずに
入り口の柱に寄りかかり
横目で此方を睨みつけた

⏰:10/02/15 16:51 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#614 []
 
「壱す‥」

「おいこら!!
お前‥香夜さんの
旦那じゃないんだって?」


茂七さんがすかさず責め立て
つかつかと詰め寄った


本当に命知らず‥

⏰:10/02/15 16:52 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#615 []
 
「俺は嘘をつく奴が
大嫌いなんだぁよ!!」

と茂七さんが言い終わる前に
壱助さんは
するりと目の前に立ちはだかる
茂七さんをかわし‥


「‥帰ります、よ」

「へ?」

⏰:10/02/15 16:52 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#616 []
 
あたしの手首を捕らえた
あの美しくて冷たい手


「でも‥あたし」

いつもより少し
壱助さんが情で動いてる気がする

気のせいかな?

⏰:10/02/15 16:53 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#617 []
 
そのままぐいっと引っ張られ
前のめりになる

忙しなく下駄に足を突っ込み
わけがわからぬままに
体を預けてみた


「壱助さん‥ちょっと待って‥」

「‥その勘違い野郎に
ついて行く、とでも?」

⏰:10/02/15 16:53 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#618 []
 
急に足を止めて
前に放った言葉なのに
威圧感はいつも以上


「その通りだ!
香夜さんと俺は恋仲に‥」


「格下げです、よ」

少しくらい茂七さんの話を
最後まで聞いてあげてほしい
そう思うくらい

⏰:10/02/15 16:54 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#619 []
 
壱助さんはぶった斬るように
次々に言葉を並べる

怒ってるかな‥


「格下げ‥?」

「"所有物"に格下げ、ですよ」

⏰:10/02/15 16:55 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#620 []
 
―‥、

「‥もう、嫌なんです」

思わず零れた言葉に
反応するように振り向いた


‥顔も見たくない
辛くて苦しくて仕方がないの

⏰:10/02/15 16:55 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#621 []
 
「‥嫌、とは」

白々しい視線が
上から惜しげもなく降り注ぐ


「もう迷惑かけたくない‥
宿代も食事代も
壱助さんに任せっきりで、
あたし‥赤の他人ですよ?」

親切にされるのが
もう怖くなってしまったの

⏰:10/02/15 16:57 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#622 []
 
‥会えて嬉しいのに


「ほぉう‥それで?」

相変わらず冷静で
熱くなってる自分が
馬鹿馬鹿しく思えてしまうほど

しっかりと掴んで離さない
その繋がりを見つめて
その繋がりを妬んだ

⏰:10/02/15 16:57 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#623 []
 
「それで‥それで、
最近おかしいんです。
壱助さんといると
辛くて‥苦しくて‥もう、」


‥また泣いてしまった

乱暴に涙を左手で拭っても
それを無駄にしてしまうほど
溢れかえって止まらない

⏰:10/02/15 16:58 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#624 []
 
「‥」

声のない返事に
余計に胸を痛ませて

「胸の奥がずきずき痛んで‥
この気持ち‥」


「それ以上‥
言わないで、もらえやせんか」

_

⏰:10/02/15 16:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#625 []
 
ぎゅっと繋がりが力強く‥
ぽつり呟くような声と共に

傷つけてしまったかな‥
一番大切にしなきゃ
いけない人なのに


「許しません、ぜ」

見上げて、ほら
この程度じゃ傷つかない?
それとも無理してる?

⏰:10/02/15 16:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#626 []
 
まだまだあたしは
‥貴方を何も知らないの


「"所有物"ですから‥」


だけど変なんです
あたしなんかの言葉に
酷く傷付いてほしいなんて

考えてしまうんですから

⏰:10/02/15 17:00 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#627 []
 


「勝手に‥
私の傍を離れるなど、ね」


もっと貴方を知りたくて

_

⏰:10/02/15 17:01 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#628 []
 
【 お ま け / 茂七さんの行方】

香夜ちゃんが泣き出して

「男が女性を泣かせるなど
言語道断だ‥!!」

(って言ってたんですが
邪魔なので省略しました←)

「茂七さんじゃないかぁ!!
今団子焼けるから
さぁさ!入っとくれよぉ」

丁度帰ってきて
気を利かせた伊代さんが
団子食わせて
黙らせてましたとさ

め で た し め で た し ←

⏰:10/02/15 17:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#629 [笹]
第十八章 【迎えに来て】

*。*。*。*。*
個人的に
壱助さんと茂七さんの
温度差が好きですwww

とりあえず
香夜ちゃん!!
その胸の痛みはko‥じゃないのか
って言いたいです ^ω^ え

壱助さんは何故最後まで
言わせなかったのでしょーか
そこ大事です\(^O^)/うふ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/15 17:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#630 [笹]
>>629
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

貼れてませんでしたw

⏰:10/02/15 17:07 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#631 []
 
やっと心配事も
‥無くなりました、ね

"愁眉を開く"とでも言いましょう

心配事‥と言うほどの物でも
ないような気もしますが


分かりやすい上に
‥鈍い、ときた

今後が最大の心配事です、ね

⏰:10/02/15 20:59 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#632 []



久しぶりの宿
畳の匂いに囲炉裏の暖かさ
壱助さんがお茶を啜る音

何だか妙に嬉しくて
落ち着いていられない

「今後とも‥
よろしくお願いいたします」

額を畳にこすりつけ
深く頭を下げた

⏰:10/02/15 21:00 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#633 []
 
「‥自分のした事を
お分かりでお出でで?」

湯飲みを置き
こちらに近付く着物が擦れる音


お仕置き‥か

まぁ仕方ないよね
これだけお世話になった人に
置き手紙だけ残して
姿を消したんだもの

⏰:10/02/15 21:01 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#634 []
 

「頭を‥上げて下さい、よ」


どんな形相をしてるのか‥

目があった瞬間
その目力だけで殺されそうだ

⏰:10/02/15 21:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#635 []



ごくりと唾を飲み
恐る恐る顔をあげれば
思いの外、穏やかな‥

と言うか
いつもと変わらぬ仏頂面


「あの‥えーっと‥」

目が泳ぐとはこのことですね

⏰:10/02/15 21:02 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#636 []
 
お顔を直視できませぬ
いや、でも
美しいお顔‥拝見したいかも

あれやこれやと
頭の中を駆け巡り
一週間の距離に戸惑う


「‥香夜さん」

⏰:10/02/15 21:03 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#637 []
 
首筋を這う冷たい手

お仕置き‥
コッチのお仕置きですか?

それとも
首をちょいと‥のアレですか?


「こ‥心の準備が‥」

⏰:10/02/15 21:03 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#638 []
 
何時だって壱助さんは
あたしの予想通りには行かない

‥期待には応えてくれるけど


するりとソレは首筋を通り抜け

「壱助‥さん?」

ぎゅうっと抱き寄せられた

⏰:10/02/15 21:04 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#639 []
 
不安定になり
壱助さんに体を預ける

この胸板、薄く見せておいて
包み込むように広い

あったかい‥


壱助さんの傍は
本当に落ち着くのだ

⏰:10/02/15 21:05 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#640 []
 
「香夜さん‥あんただけだ」

「へ‥?」

顔を首元に埋め
低い声が体に響いた

ぎゅうっと力を込めて
少し苦しいくらいに
強く抱きしめられて

今までにないくらい
こんなに誰かに求められたのは
初めてなのかもしれない

⏰:10/02/15 21:05 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#641 []
 
目の奥が熱くなる


この言葉の意味が
あたしの思う意味じゃなくても
がっかりしない

むしろ気にならない

言葉以上に伝わる温もりを
あたしは信じたいです

⏰:10/02/15 21:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#642 []



しばらく動かず何も言わず
聞こえるのは
整った壱助さんの呼吸と
自分の忙しない鼓動

どうしたらその呼吸が
乱れるますか?
どうしたら頬を赤く染めますか?

仕様もないことばかり
最近では考えてしまうの

⏰:10/02/15 21:06 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#643 []
 
「壱助さん‥?」

もしかしたら
寝ているのかもしれない

‥それくらい静かで

「あの、
壱助さん‥あたしの事‥」

「香夜さん‥」

「は‥はい」

⏰:10/02/15 21:07 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#644 []
 
さっきから
まともに会話ができていない

全てが何処かぎこちないの


「あんただけだ‥」

「壱助さん‥それは‥」

「こんなに、
子供じみた事をするのは‥」

「子供っ‥?」

⏰:10/02/15 21:08 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#645 []
 
やっぱり
あたしの予想通りにはいかない

ぐいぐいと力が強まれば
いつの間にか
呼吸を乱す原因になり


「壱助さ‥くる、苦ひいっ」

「本当に貴女と言う人は‥」

⏰:10/02/15 21:08 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#646 []
 
その内背骨が
粉々になりそうなほど

「痛い‥いたっ‥
今ぼきって!ぼきっていった!!」

「"所有物"と言う分際で‥
此方が緩く扱いだしたのを
良いことに‥ねぇ」

「壱助さん!!ぐぇっ
本当に‥本当に砕け‥っう」

⏰:10/02/15 21:09 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#647 []
 
めりめりと
背中からひしめく音

今回ばかりは
やっぱり一本くらい犠牲に‥


「随分と、度胸がお有りで‥」


それなのに
耳元で囁く色っぽい声に
全身が熱を帯びてしまう

⏰:10/02/15 21:09 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#648 []
 
「本当に‥ごめんなさ‥うぃ
もう‥こんなっ‥んぐ!!」

この勢いに乗って
内蔵が破裂しそうな気もしてくる

「それとも何ですか‥
余程、自虐行為がお好みで?」

何故でしょう壱助さん
人を戒めてる時でさえ
冷静さは保ちつつ
それでいて色めいて

⏰:10/02/15 21:10 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#649 []
 
もはやその冷静さは‥冷酷。


「もう二度と‥離れませんーっ!!
だから許してくだ‥」


すると呆気ないほどに
するりと手放され
みっともなくそのまま
倒れ込んだ

多少背中が痛むものの
‥背骨さん健在です!!

⏰:10/02/15 21:10 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#650 []
 
「言いました、ね?」

「‥え?」


呼吸を整え少し帯を緩めつつ
体を無理やり起こせば

何事もなかったかのように
綺麗に正座している壱助さん

⏰:10/02/15 21:11 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#651 []
 
「二度と離れない、と」

にやりとつり上がった
艶容な口元

「‥言いましたけど」

だから何ですかと言う話である


不思議そうに見つめれば
満足そうに茶を啜った

⏰:10/02/15 21:11 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#652 []
 

そしてまた貴方は呟いた


"あんただけだ。"‥と


_

⏰:10/02/15 21:12 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#653 [笹]
第十九章 【約束、交わして】

*。*。*。*。*。*
本日二度目の更新
早く二人を絡めたくて
書いてしまいましたw
どうやら皆様のおかげで
スランプ抜け出しました ^ω^

えーっと
もどかしいですねw
直接的な言葉は避け続けます←
もどかしいのが好きなんです//
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/15 21:15 📱:D905i 🆔:4vzAUNjI


#654 []
 
壱助さんと居ると
何だかんだ、落ち着くの

嫌な過去も忘れられて
今の時に満足できる


思わず"会心の笑みを漏らす"もの

⏰:10/02/16 22:38 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#655 []



「壱助さん!!」

「何、か」

―‥ある日の午後

「裾!!」

「‥」

⏰:10/02/16 22:39 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#656 []
 
出掛けようと腰を上げた
壱助さんの着物の裾を
引っ張った

眉間にしわを寄せて
それを見下げる壱助さん


「解れてますよ!!」

裾から垂れた細い糸が
畳の上を這っていたのだ

⏰:10/02/16 22:39 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#657 []
 
「おや、おや」


それは驚いているのか‥


声の調子からは
全く読みとれないのが
壱助さん独特なのです

⏰:10/02/16 22:40 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#658 []



「あたしが直しますから‥
脱いで下さい!!」

よく言えたものだ
あたしみたいな生娘が
色男に脱げなんて‥

「こりゃぁ、随分と積極的‥」

「ち‥違いますぅ!!」

⏰:10/02/16 22:41 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#659 []
 
くすっと鼻で笑い
するりと帯を解く


顔を覗かせた真っ白な肌に
目を奪われて‥

「って、
目の前で脱がないでください!!」

⏰:10/02/16 22:41 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#660 []
 
気付けば
してやられているのです


「注文が多いです、ね」


いちいち顔を熱くして
何時か慣れる時が来るだろうか

⏰:10/02/16 22:42 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#661 []



「ほぉう‥」


解れた裾に針を通し
ちくちくと縫い上げる手を
物珍しそうに見つめていた


‥なんか、可愛い

いや、壱助さんに可愛いなんて
‥あたしは何を考えてるんだ

⏰:10/02/16 22:42 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#662 []
 
最近何かと愛着がわいて
時々そんな事を考える

だけどこの人には
美しいという言葉が
一番似合うわけですが‥

「随分と‥器用なものです、ね」

「お裁縫は得意なんですよっ!」

と得意げに
にいっと笑ってみせれば

⏰:10/02/16 22:43 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#663 []
 
「"だけ"」

と痛いところを突いてくる


だけど最近
壱助さんがよく笑う気がする

此は笑う‥って言うのか
よくわからないけど
含み笑い?‥そんなの。

⏰:10/02/16 22:43 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#664 []
 
「何処で‥
引っ掛けてきたんですか?」

「さぁ、ね」


わざとはぐらかしているのか
本当にわからないのか

睫を伏せて腕を組み直す

⏰:10/02/16 22:44 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#665 []
 
「‥」

ちくちくちくちく

「‥」

ちくちくちくちく


‥見すぎ!!
ちょっとやりにくいし
何か近いんですけど!!

⏰:10/02/16 22:44 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#666 []
 
あっちこっちに角度を変えて
針を目で追っている

本当にもう少しで
その綺麗な顔まで縫いそうなほど

「あの‥やりにくいんですけど」

その手を止めれば

「いいじゃあ、ないですか」

いつもの調子
そんなに面白いだろうか

⏰:10/02/16 22:45 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#667 []
 
代わりに羽織っただけの浴衣
きちんと着ていないのは
初めてだから‥なんか新鮮で

それでいて今日は
やっぱり何処か‥うん
珍しく壱助さんから
寄ってきたからかな?


「‥ちょっと
あっち行ってて下さい」

⏰:10/02/16 22:46 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#668 []
 
「‥」


‥どうしてそんな
不機嫌になるんですか!!

切れ長の目で一度睨み付けて
仕方なさそうに腰を上げた


ひらり翻った浴衣から香る
壱助さんの匂いが鼻をくすぐる

⏰:10/02/16 22:46 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#669 []
 
胡座をかいて茶を啜り
外の世界に目を向けて


だらしなく下がった襟元の色気
ただの浴衣さえ
貴方が着れば一級品


‥あたしもあれくらい
美しく生まれたかったもんだ

⏰:10/02/16 22:47 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#670 []



「でーきたっ!!」

我ながら完璧
着物を宙に広げて
満足そうに微笑んだ

「壱助さーん、できましたよーっ」

「はい、はい」

返事をするものの
動こうとしないもんだから
自ら近寄った

⏰:10/02/16 22:48 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#671 []
 
「はいっどーそ!」

着物を差し出せば
"有り難い"とぽつり呟き
するりと袖を通した


今日の壱助さんは
とても穏やかな気がします

それから‥素直。

⏰:10/02/16 22:49 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#672 []
 
「ちょいと手が‥
冷えちまったもんで、ね」

袖に閉まっていた両手を
此方に差し出しながら言った


いつも冷たい気もするけど‥

脱いだ浴衣をあたしの肩にかけ
にやり口角をあげる

⏰:10/02/16 22:49 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#673 []
 

「暖めてくれや‥しやせん、か」


浴衣ごと包み込むように
抱き寄せて
胸の中に押し込められた

少し冷えた体と暖かな鼓動
何故だかこの上ない
幸せを感じて‥

⏰:10/02/16 22:50 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#674 []
 

最初から
こうしたかったのかな、なんて
仕様もなく良いように考える


やっと貴方に
‥追いつけた気がします。

_

⏰:10/02/16 22:51 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#675 [笹]
第二十章 【抱き寄せて】

*。*。*。*。*
甘めです(´゚ω゚`)

壱助さんって
意外と寂しがり屋w?
香夜ちゃんに
構ってほしいんだと思う←
香夜ちゃんを抱きしめたくて
たまらないんだと思う←

壱助さんの意外性を
表現したかったですw
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/16 22:54 📱:D905i 🆔:H0XuP1PQ


#676 []
 
少しの人情
少しの気の迷い

たった其れだけでも
"月夜に釜を抜かれる"事がある


いつ何時も
油断しては成らぬと言うのに‥

ねぇ、香夜さん‥

⏰:10/02/17 23:52 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#677 []



誘拐されました。


自分でも
よくまだ理解できてません

とりあえず
暗いっ!怖いっ!!

壱助さぁぁあんっ!!

⏰:10/02/17 23:53 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#678 []



ついさっきのこと。

壱助さんのお茶を買うため
いつも通り街に出ました

「あーあ‥
本当に毎回毎回
なくなるのが早くなる
もう一週間で飲み切って‥
ありえない、あの人」

ぶつぶつ言いながら
大量に買った
お茶の袋を抱えて帰る途中

⏰:10/02/17 23:53 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#679 []
 
目の前にうずくまった女の人

「大丈夫ですか?」


声をかけて顔を覗き込めば
それはそれは美しい方で

「少々‥立ち眩みがして」

頭を抑えて眉間に皺を寄せていた

⏰:10/02/17 23:54 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#680 []
 
あまりに辛そうで
放っておけるわけもなく
‥普通は放っておかないか


「あの‥立てますか?
此処じゃ危ないので何処か‥」


誰だって油断するでしょう
誰だって心配するでしょう

⏰:10/02/17 23:54 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#681 []
 
肩を貸して立たせてあげた瞬間


「‥?!」


腹部に走った激痛
よく覚えてないけど
多分殴られたんだと思います

⏰:10/02/17 23:55 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#682 []



そこから全く記憶がなく
気付いたら真っ暗闇で

しかも
手足縛られ‥口塞がれ

‥此処どこなのよぉーっ!!

って叫びたくても叫べない
‥辛いです

⏰:10/02/17 23:56 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#683 []
 
「お律様、
あの男がもうそろそろ此方へ‥」

微かに男の低い声が
向こう側から聞こえた


「そうかい‥
相当此の娘気に入ってるのかい」

次に聞こえたのは女の‥
ん‥?

⏰:10/02/17 23:56 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#684 []
 
―‥もしかして
『少々‥立ち眩みが』


‥あぁあああ!!
さっきの女の人の声だ


「‥憎たらしい娘だねぇ」

チッと舌打ちが聞こえた
さっきの雰囲気とは大違い

⏰:10/02/17 23:57 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#685 []
 
話の内容的には
憎たらしい娘があたしで
あの男が壱助さん‥かな?


ってことは
壱助さんが助けに来てくれるっ!!

その瞬間
一気に体の力が抜けて
楽になった

なぁーんだ
すぐ帰れるじゃなぁい!

⏰:10/02/17 23:57 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#686 []
 
何て‥調子に乗れば


「それで、あの娘は?」

「へいっ」


‥ろくなは事ない

⏰:10/02/17 23:58 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#687 []
 
―‥バン!!

一瞬で光が差し込み
真っ白になった世界に目を細めた

びくんと心臓が飛び跳ね
目の前に急に現れた
柄の悪い男に驚く


「おいお前!!」

⏰:10/02/17 23:58 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#688 []
 
塞がれた口を
塞がれてるなりに
ぱくぱくと開け
最早‥涙目

こんなごっつい男の人
久しぶりに見たよ‥
壱助さんしか見てないから
余計に驚いた


「暴れたら‥
只じゃ、おかねぇからな!!!」

「‥んっ、んぐ」

⏰:10/02/17 23:59 📱:D905i 🆔:fmvw49TU


#689 []
 
これ以上はないと言うくらいに
思い切り縦に首を振った



‥これは本当に殺される。


_

⏰:10/02/18 00:00 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#690 []
 
バン!!


その男は思い切り襖を閉め
また一人暗闇に放り出された


もう怖すぎて‥
体の震えが止まらないよ

壱助さん早く助けてぇ‥

⏰:10/02/18 00:00 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#691 []



「あら、いらっしゃい」

「ご無沙汰しておりました、ね
‥お姉様」


‥!!
壱助さんだっ!

その声を聞いて
ほっと胸をなで下ろした

⏰:10/02/18 00:01 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#692 []
 
「‥此処へは、あれから
来てないそうじゃない?」

「えぇ‥まぁ」


男が思い切り閉めた弾みで
少しだけ出来た隙間に
思い切り目を押し当てた

派手な着物を着崩したあの女の人
その傍にお猪口を手にした
壱助さん

⏰:10/02/18 00:01 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#693 []
 
その横に大きめの布団
この独特の香り


もしかして此処‥遊女屋?


「相変わらず‥お綺麗で」

艶容な唇をうっすら釣り上げて
あたしには見せない優しい笑み

⏰:10/02/18 00:02 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#694 []
 
「まぁ‥
あの子と重ねてるのかい?」


あの子‥?
それにさっき壱助さん
"お姉様"って‥

やっぱり常連なのかな
信じたくないけど
考え出したら止まらないたち

‥何だか悔しいよ。

⏰:10/02/18 00:02 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#695 []
 
「いえ、いえ
‥確かにそっくりですが、ね」

「双子だもの、当たり前さ」


女の人の赤く染まった爪が
壱助さんの真っ白な頬を撫でた

それに応えるように
壱助さんが片方の手を握った

⏰:10/02/18 00:04 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#696 []
 
‥やだ。

あたしの前で?
壱助さん、
あたしに気付かないの?


暴れてみても
余計に縄が食い込み痛むだけ
声を上げても
周りの色がましい声に消される

⏰:10/02/18 00:04 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#697 []
 

ねぇ‥やめて
壱助さんに触らないでよ‥



壱助さん‥壱助さんっ!!

_

⏰:10/02/18 00:05 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#698 [笹]
第二一章 【血の涙、滲んで/前】
>>676-697
*。*。*。*。*
また急展開w
甘甘から一転(´・ω・`)

壱助さん
まさかの公開プレイ?w←
そしてこの女性の正体は‥?

どっかしらの番外編と
実は繋がってる‥かも ^p^
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/

⏰:10/02/18 00:10 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#699 [笹]
【本編アンカー/1〜10】
>>1-44
>>46-78
>>80-116
>>118-127
>>129-144
>>147-171
>>173-193
>>197-227
>>230-257
>>260-294

⏰:10/02/18 00:27 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#700 [笹]
【本編アンカー/11〜20】
>>318-339
>>342-363
>>396-420
>>423-445
>>472-498
>>550-535
>>559-576
>>578-593
>>595-611
>>613-628

⏰:10/02/18 00:30 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


#701 [笹]
【本編アンカー/21〜】
>>631-652
>>654-674
>>676-697

だいぶ章がずれてましたw
気にしないでください
(´;ω;`)

⏰:10/02/18 00:32 📱:D905i 🆔:4LI2ZH.E


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