浮 き 世 の 諸 事 情 。
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#601 [笹]
「もぉ‥わかんないよぉ」
前のめりに突っ伏して
頭を掻きむしる
木の独特の慣れない香りに
顔をしかめ
恋しくなるは貴方の香り
‥こんな気持ち初めて
:10/02/14 23:00 :D905i :AHFqEp8k
#602 [笹]
「‥香夜さん?」
名前を呼ばれて
慌てて顔を上げると
「も‥茂七さん?!」
:10/02/14 23:00 :D905i :AHFqEp8k
#603 [笹]
:
:
茂七さんには失礼だけど
‥正直がっかり
その上なんとなく気まずい
「どうぞ」
ぎこちなく茶を差し出す
あー‥そろそろ壱助さん
お茶飲み切っちゃうかも
:10/02/14 23:01 :D905i :AHFqEp8k
#604 [笹]
「何でまたこんな所で?」
茂七さんは目を丸くして
湯飲みに手を添えた
何で‥何ででしょう
もう自分でもよくわからない
「ほら、あたしも
稼がなきゃなぁー‥なんて」
思いっきり顔を釣り上げて
作り上げた笑顔を向け
変におどけて見せた
:10/02/14 23:01 :D905i :AHFqEp8k
#605 [笹]
「偉いなぁ香夜さんは!!」
またがははと笑う
何て呑気なのかしら‥
気付けば、ほら
道行く人に目を凝らして
探してしまっているじゃない
一発で見つける自信はあるのに‥
:10/02/14 23:02 :D905i :AHFqEp8k
#606 [笹]
「そういえば‥
お兄‥じゃない、旦那は?」
お兄様でもいい
旦那様ならどれだけいいことか
あたしと壱助さんには
何の繋がりもない
:10/02/14 23:02 :D905i :AHFqEp8k
#607 [笹]
「あぁ‥えっと
本当は、旦那じゃないんです」
「え?!」
茂七さんの表情は
面白いほどにころころ変わる
「あたしはただ
あの方にお世話になってた‥」
:10/02/14 23:03 :D905i :AHFqEp8k
#608 [笹]
‥お世話になってた
「だけ、なんです」
こんなに薄っぺらかったのか
言葉にしてやっと気づく
何もなかった
壱助さんとの間には、何も
:10/02/14 23:03 :D905i :AHFqEp8k
#609 [笹]
「そうかそうか!!
と、言うことは‥やっぱり」
お世話になっただけじゃない
その上
縛られたり叩かれたり蹴られたり
酷い扱いだったじゃない
:10/02/14 23:04 :D905i :AHFqEp8k
#610 [笹]
「俺と恋仲になると言うことか!!」
「‥え?」
茂七さん‥あんたって人は
:10/02/14 23:05 :D905i :AHFqEp8k
#611 [笹]
とんだ‥
「‥勘違い野郎です、ね」
はっきりとあたしの目は
目の前に現れた
貴方の姿を捕らえました。
:10/02/14 23:06 :D905i :AHFqEp8k
#612 [笹]
:10/02/14 23:09 :D905i :AHFqEp8k
#613 [笹]
:
:
来てくれた‥壱助さん
もう何年も何十年も
会ってなかったような気がする
壱助さんは何一つ変わらず‥
表情さえも変えずに
入り口の柱に寄りかかり
横目で此方を睨みつけた
:10/02/15 16:51 :D905i :4vzAUNjI
#614 [笹]
「壱す‥」
「おいこら!!
お前‥香夜さんの
旦那じゃないんだって?」
茂七さんがすかさず責め立て
つかつかと詰め寄った
本当に命知らず‥
:10/02/15 16:52 :D905i :4vzAUNjI
#615 [笹]
「俺は嘘をつく奴が
大嫌いなんだぁよ!!」
と茂七さんが言い終わる前に
壱助さんは
するりと目の前に立ちはだかる
茂七さんをかわし‥
「‥帰ります、よ」
「へ?」
:10/02/15 16:52 :D905i :4vzAUNjI
#616 [笹]
あたしの手首を捕らえた
あの美しくて冷たい手
「でも‥あたし」
いつもより少し
壱助さんが情で動いてる気がする
気のせいかな?
:10/02/15 16:53 :D905i :4vzAUNjI
#617 [笹]
そのままぐいっと引っ張られ
前のめりになる
忙しなく下駄に足を突っ込み
わけがわからぬままに
体を預けてみた
「壱助さん‥ちょっと待って‥」
「‥その勘違い野郎に
ついて行く、とでも?」
:10/02/15 16:53 :D905i :4vzAUNjI
#618 [笹]
急に足を止めて
前に放った言葉なのに
威圧感はいつも以上
「その通りだ!
香夜さんと俺は恋仲に‥」
「格下げです、よ」
少しくらい茂七さんの話を
最後まで聞いてあげてほしい
そう思うくらい
:10/02/15 16:54 :D905i :4vzAUNjI
#619 [笹]
壱助さんはぶった斬るように
次々に言葉を並べる
怒ってるかな‥
「格下げ‥?」
「"所有物"に格下げ、ですよ」
:10/02/15 16:55 :D905i :4vzAUNjI
#620 [笹]
―‥、
「‥もう、嫌なんです」
思わず零れた言葉に
反応するように振り向いた
‥顔も見たくない
辛くて苦しくて仕方がないの
:10/02/15 16:55 :D905i :4vzAUNjI
#621 [笹]
「‥嫌、とは」
白々しい視線が
上から惜しげもなく降り注ぐ
「もう迷惑かけたくない‥
宿代も食事代も
壱助さんに任せっきりで、
あたし‥赤の他人ですよ?」
親切にされるのが
もう怖くなってしまったの
:10/02/15 16:57 :D905i :4vzAUNjI
#622 [笹]
‥会えて嬉しいのに
「ほぉう‥それで?」
相変わらず冷静で
熱くなってる自分が
馬鹿馬鹿しく思えてしまうほど
しっかりと掴んで離さない
その繋がりを見つめて
その繋がりを妬んだ
:10/02/15 16:57 :D905i :4vzAUNjI
#623 [笹]
「それで‥それで、
最近おかしいんです。
壱助さんといると
辛くて‥苦しくて‥もう、」
‥また泣いてしまった
乱暴に涙を左手で拭っても
それを無駄にしてしまうほど
溢れかえって止まらない
:10/02/15 16:58 :D905i :4vzAUNjI
#624 [笹]
「‥」
声のない返事に
余計に胸を痛ませて
「胸の奥がずきずき痛んで‥
この気持ち‥」
「それ以上‥
言わないで、もらえやせんか」
_
:10/02/15 16:59 :D905i :4vzAUNjI
#625 [笹]
ぎゅっと繋がりが力強く‥
ぽつり呟くような声と共に
傷つけてしまったかな‥
一番大切にしなきゃ
いけない人なのに
「許しません、ぜ」
見上げて、ほら
この程度じゃ傷つかない?
それとも無理してる?
:10/02/15 16:59 :D905i :4vzAUNjI
#626 [笹]
まだまだあたしは
‥貴方を何も知らないの
「"所有物"ですから‥」
だけど変なんです
あたしなんかの言葉に
酷く傷付いてほしいなんて
考えてしまうんですから
:10/02/15 17:00 :D905i :4vzAUNjI
#627 [笹]
「勝手に‥
私の傍を離れるなど、ね」
もっと貴方を知りたくて
_
:10/02/15 17:01 :D905i :4vzAUNjI
#628 [笹]
【 お ま け / 茂七さんの行方】
香夜ちゃんが泣き出して
「男が女性を泣かせるなど
言語道断だ‥!!」
(って言ってたんですが
邪魔なので省略しました←)
「茂七さんじゃないかぁ!!
今団子焼けるから
さぁさ!入っとくれよぉ」
丁度帰ってきて
気を利かせた伊代さんが
団子食わせて
黙らせてましたとさ
め で た し め で た し ←
:10/02/15 17:02 :D905i :4vzAUNjI
#629 [笹]
第十八章 【迎えに来て】
*。*。*。*。*
個人的に
壱助さんと茂七さんの
温度差が好きですwww
とりあえず
香夜ちゃん!!
その胸の痛みはko‥じゃないのか
って言いたいです ^ω^ え
壱助さんは何故最後まで
言わせなかったのでしょーか
そこ大事です\(^O^)/うふ
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/
:10/02/15 17:06 :D905i :4vzAUNjI
#630 [笹]
:10/02/15 17:07 :D905i :4vzAUNjI
#631 [笹]
やっと心配事も
‥無くなりました、ね
"愁眉を開く"とでも言いましょう
心配事‥と言うほどの物でも
ないような気もしますが
分かりやすい上に
‥鈍い、ときた
今後が最大の心配事です、ね
:10/02/15 20:59 :D905i :4vzAUNjI
#632 [笹]
:
:
久しぶりの宿
畳の匂いに囲炉裏の暖かさ
壱助さんがお茶を啜る音
何だか妙に嬉しくて
落ち着いていられない
「今後とも‥
よろしくお願いいたします」
額を畳にこすりつけ
深く頭を下げた
:10/02/15 21:00 :D905i :4vzAUNjI
#633 [笹]
「‥自分のした事を
お分かりでお出でで?」
湯飲みを置き
こちらに近付く着物が擦れる音
お仕置き‥か
まぁ仕方ないよね
これだけお世話になった人に
置き手紙だけ残して
姿を消したんだもの
:10/02/15 21:01 :D905i :4vzAUNjI
#634 [笹]
「頭を‥上げて下さい、よ」
どんな形相をしてるのか‥
目があった瞬間
その目力だけで殺されそうだ
:10/02/15 21:02 :D905i :4vzAUNjI
#635 [笹]
:
:
ごくりと唾を飲み
恐る恐る顔をあげれば
思いの外、穏やかな‥
と言うか
いつもと変わらぬ仏頂面
「あの‥えーっと‥」
目が泳ぐとはこのことですね
:10/02/15 21:02 :D905i :4vzAUNjI
#636 [笹]
お顔を直視できませぬ
いや、でも
美しいお顔‥拝見したいかも
あれやこれやと
頭の中を駆け巡り
一週間の距離に戸惑う
「‥香夜さん」
:10/02/15 21:03 :D905i :4vzAUNjI
#637 [笹]
首筋を這う冷たい手
お仕置き‥
コッチのお仕置きですか?
それとも
首をちょいと‥のアレですか?
「こ‥心の準備が‥」
:10/02/15 21:03 :D905i :4vzAUNjI
#638 [笹]
何時だって壱助さんは
あたしの予想通りには行かない
‥期待には応えてくれるけど
するりとソレは首筋を通り抜け
「壱助‥さん?」
ぎゅうっと抱き寄せられた
:10/02/15 21:04 :D905i :4vzAUNjI
#639 [笹]
不安定になり
壱助さんに体を預ける
この胸板、薄く見せておいて
包み込むように広い
あったかい‥
壱助さんの傍は
本当に落ち着くのだ
:10/02/15 21:05 :D905i :4vzAUNjI
#640 [笹]
「香夜さん‥あんただけだ」
「へ‥?」
顔を首元に埋め
低い声が体に響いた
ぎゅうっと力を込めて
少し苦しいくらいに
強く抱きしめられて
今までにないくらい
こんなに誰かに求められたのは
初めてなのかもしれない
:10/02/15 21:05 :D905i :4vzAUNjI
#641 [笹]
目の奥が熱くなる
この言葉の意味が
あたしの思う意味じゃなくても
がっかりしない
むしろ気にならない
言葉以上に伝わる温もりを
あたしは信じたいです
:10/02/15 21:06 :D905i :4vzAUNjI
#642 [笹]
:
:
しばらく動かず何も言わず
聞こえるのは
整った壱助さんの呼吸と
自分の忙しない鼓動
どうしたらその呼吸が
乱れるますか?
どうしたら頬を赤く染めますか?
仕様もないことばかり
最近では考えてしまうの
:10/02/15 21:06 :D905i :4vzAUNjI
#643 [笹]
「壱助さん‥?」
もしかしたら
寝ているのかもしれない
‥それくらい静かで
「あの、
壱助さん‥あたしの事‥」
「香夜さん‥」
「は‥はい」
:10/02/15 21:07 :D905i :4vzAUNjI
#644 [笹]
さっきから
まともに会話ができていない
全てが何処かぎこちないの
「あんただけだ‥」
「壱助さん‥それは‥」
「こんなに、
子供じみた事をするのは‥」
「子供っ‥?」
:10/02/15 21:08 :D905i :4vzAUNjI
#645 [笹]
やっぱり
あたしの予想通りにはいかない
ぐいぐいと力が強まれば
いつの間にか
呼吸を乱す原因になり
「壱助さ‥くる、苦ひいっ」
「本当に貴女と言う人は‥」
:10/02/15 21:08 :D905i :4vzAUNjI
#646 [笹]
その内背骨が
粉々になりそうなほど
「痛い‥いたっ‥
今ぼきって!ぼきっていった!!」
「"所有物"と言う分際で‥
此方が緩く扱いだしたのを
良いことに‥ねぇ」
「壱助さん!!ぐぇっ
本当に‥本当に砕け‥っう」
:10/02/15 21:09 :D905i :4vzAUNjI
#647 [笹]
めりめりと
背中からひしめく音
今回ばかりは
やっぱり一本くらい犠牲に‥
「随分と、度胸がお有りで‥」
それなのに
耳元で囁く色っぽい声に
全身が熱を帯びてしまう
:10/02/15 21:09 :D905i :4vzAUNjI
#648 [笹]
「本当に‥ごめんなさ‥うぃ
もう‥こんなっ‥んぐ!!」
この勢いに乗って
内蔵が破裂しそうな気もしてくる
「それとも何ですか‥
余程、自虐行為がお好みで?」
何故でしょう壱助さん
人を戒めてる時でさえ
冷静さは保ちつつ
それでいて色めいて
:10/02/15 21:10 :D905i :4vzAUNjI
#649 [笹]
もはやその冷静さは‥冷酷。
「もう二度と‥離れませんーっ!!
だから許してくだ‥」
すると呆気ないほどに
するりと手放され
みっともなくそのまま
倒れ込んだ
多少背中が痛むものの
‥背骨さん健在です!!
:10/02/15 21:10 :D905i :4vzAUNjI
#650 [笹]
「言いました、ね?」
「‥え?」
呼吸を整え少し帯を緩めつつ
体を無理やり起こせば
何事もなかったかのように
綺麗に正座している壱助さん
:10/02/15 21:11 :D905i :4vzAUNjI
#651 [笹]
「二度と離れない、と」
にやりとつり上がった
艶容な口元
「‥言いましたけど」
だから何ですかと言う話である
不思議そうに見つめれば
満足そうに茶を啜った
:10/02/15 21:11 :D905i :4vzAUNjI
#652 [笹]
そしてまた貴方は呟いた
"あんただけだ。"‥と
_
:10/02/15 21:12 :D905i :4vzAUNjI
#653 [笹]
第十九章 【約束、交わして】
*。*。*。*。*。*
本日二度目の更新
早く二人を絡めたくて
書いてしまいましたw
どうやら皆様のおかげで
スランプ抜け出しました ^ω^
えーっと
もどかしいですねw
直接的な言葉は避け続けます←
もどかしいのが好きなんです//
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/4676/:10/02/15 21:15 :D905i :4vzAUNjI
#654 [笹]
壱助さんと居ると
何だかんだ、落ち着くの
嫌な過去も忘れられて
今の時に満足できる
思わず"会心の笑みを漏らす"もの
:10/02/16 22:38 :D905i :H0XuP1PQ
#655 [笹]
:
:
「壱助さん!!」
「何、か」
―‥ある日の午後
「裾!!」
「‥」
:10/02/16 22:39 :D905i :H0XuP1PQ
#656 [笹]
出掛けようと腰を上げた
壱助さんの着物の裾を
引っ張った
眉間にしわを寄せて
それを見下げる壱助さん
「解れてますよ!!」
裾から垂れた細い糸が
畳の上を這っていたのだ
:10/02/16 22:39 :D905i :H0XuP1PQ
#657 [笹]
「おや、おや」
それは驚いているのか‥
声の調子からは
全く読みとれないのが
壱助さん独特なのです
:10/02/16 22:40 :D905i :H0XuP1PQ
#658 [笹]
:
:
「あたしが直しますから‥
脱いで下さい!!」
よく言えたものだ
あたしみたいな生娘が
色男に脱げなんて‥
「こりゃぁ、随分と積極的‥」
「ち‥違いますぅ!!」
:10/02/16 22:41 :D905i :H0XuP1PQ
#659 [笹]
くすっと鼻で笑い
するりと帯を解く
顔を覗かせた真っ白な肌に
目を奪われて‥
「って、
目の前で脱がないでください!!」
:10/02/16 22:41 :D905i :H0XuP1PQ
#660 [笹]
気付けば
してやられているのです
「注文が多いです、ね」
いちいち顔を熱くして
何時か慣れる時が来るだろうか
:10/02/16 22:42 :D905i :H0XuP1PQ
#661 [笹]
:
:
「ほぉう‥」
解れた裾に針を通し
ちくちくと縫い上げる手を
物珍しそうに見つめていた
‥なんか、可愛い
いや、壱助さんに可愛いなんて
‥あたしは何を考えてるんだ
:10/02/16 22:42 :D905i :H0XuP1PQ
#662 [笹]
最近何かと愛着がわいて
時々そんな事を考える
だけどこの人には
美しいという言葉が
一番似合うわけですが‥
「随分と‥器用なものです、ね」
「お裁縫は得意なんですよっ!」
と得意げに
にいっと笑ってみせれば
:10/02/16 22:43 :D905i :H0XuP1PQ
#663 [笹]
「"だけ"」
と痛いところを突いてくる
だけど最近
壱助さんがよく笑う気がする
此は笑う‥って言うのか
よくわからないけど
含み笑い?‥そんなの。
:10/02/16 22:43 :D905i :H0XuP1PQ
#664 [笹]
「何処で‥
引っ掛けてきたんですか?」
「さぁ、ね」
わざとはぐらかしているのか
本当にわからないのか
睫を伏せて腕を組み直す
:10/02/16 22:44 :D905i :H0XuP1PQ
#665 [笹]
「‥」
ちくちくちくちく
「‥」
ちくちくちくちく
‥見すぎ!!
ちょっとやりにくいし
何か近いんですけど!!
:10/02/16 22:44 :D905i :H0XuP1PQ
#666 [笹]
あっちこっちに角度を変えて
針を目で追っている
本当にもう少しで
その綺麗な顔まで縫いそうなほど
「あの‥やりにくいんですけど」
その手を止めれば
「いいじゃあ、ないですか」
いつもの調子
そんなに面白いだろうか
:10/02/16 22:45 :D905i :H0XuP1PQ
#667 [笹]
代わりに羽織っただけの浴衣
きちんと着ていないのは
初めてだから‥なんか新鮮で
それでいて今日は
やっぱり何処か‥うん
珍しく壱助さんから
寄ってきたからかな?
「‥ちょっと
あっち行ってて下さい」
:10/02/16 22:46 :D905i :H0XuP1PQ
#668 [笹]
「‥」
‥どうしてそんな
不機嫌になるんですか!!
切れ長の目で一度睨み付けて
仕方なさそうに腰を上げた
ひらり翻った浴衣から香る
壱助さんの匂いが鼻をくすぐる
:10/02/16 22:46 :D905i :H0XuP1PQ
#669 [笹]
胡座をかいて茶を啜り
外の世界に目を向けて
だらしなく下がった襟元の色気
ただの浴衣さえ
貴方が着れば一級品
‥あたしもあれくらい
美しく生まれたかったもんだ
:10/02/16 22:47 :D905i :H0XuP1PQ
#670 [笹]
:
:
「でーきたっ!!」
我ながら完璧
着物を宙に広げて
満足そうに微笑んだ
「壱助さーん、できましたよーっ」
「はい、はい」
返事をするものの
動こうとしないもんだから
自ら近寄った
:10/02/16 22:48 :D905i :H0XuP1PQ
#671 [笹]
「はいっどーそ!」
着物を差し出せば
"有り難い"とぽつり呟き
するりと袖を通した
今日の壱助さんは
とても穏やかな気がします
それから‥素直。
:10/02/16 22:49 :D905i :H0XuP1PQ
#672 [笹]
「ちょいと手が‥
冷えちまったもんで、ね」
袖に閉まっていた両手を
此方に差し出しながら言った
いつも冷たい気もするけど‥
脱いだ浴衣をあたしの肩にかけ
にやり口角をあげる
:10/02/16 22:49 :D905i :H0XuP1PQ
#673 [笹]
「暖めてくれや‥しやせん、か」
浴衣ごと包み込むように
抱き寄せて
胸の中に押し込められた
少し冷えた体と暖かな鼓動
何故だかこの上ない
幸せを感じて‥
:10/02/16 22:50 :D905i :H0XuP1PQ
#674 [笹]
最初から
こうしたかったのかな、なんて
仕様もなく良いように考える
やっと貴方に
‥追いつけた気がします。
_
:10/02/16 22:51 :D905i :H0XuP1PQ
#675 [笹]
:10/02/16 22:54 :D905i :H0XuP1PQ
#676 [笹]
少しの人情
少しの気の迷い
たった其れだけでも
"月夜に釜を抜かれる"事がある
いつ何時も
油断しては成らぬと言うのに‥
ねぇ、香夜さん‥
:10/02/17 23:52 :D905i :fmvw49TU
#677 [笹]
:
:
誘拐されました。
自分でも
よくまだ理解できてません
とりあえず
暗いっ!怖いっ!!
壱助さぁぁあんっ!!
:10/02/17 23:53 :D905i :fmvw49TU
#678 [笹]
:
:
ついさっきのこと。
壱助さんのお茶を買うため
いつも通り街に出ました
「あーあ‥
本当に毎回毎回
なくなるのが早くなる
もう一週間で飲み切って‥
ありえない、あの人」
ぶつぶつ言いながら
大量に買った
お茶の袋を抱えて帰る途中
:10/02/17 23:53 :D905i :fmvw49TU
#679 [笹]
目の前にうずくまった女の人
「大丈夫ですか?」
声をかけて顔を覗き込めば
それはそれは美しい方で
「少々‥立ち眩みがして」
頭を抑えて眉間に皺を寄せていた
:10/02/17 23:54 :D905i :fmvw49TU
#680 [笹]
あまりに辛そうで
放っておけるわけもなく
‥普通は放っておかないか
「あの‥立てますか?
此処じゃ危ないので何処か‥」
誰だって油断するでしょう
誰だって心配するでしょう
:10/02/17 23:54 :D905i :fmvw49TU
#681 [笹]
肩を貸して立たせてあげた瞬間
「‥?!」
腹部に走った激痛
よく覚えてないけど
多分殴られたんだと思います
:10/02/17 23:55 :D905i :fmvw49TU
#682 [笹]
:
:
そこから全く記憶がなく
気付いたら真っ暗闇で
しかも
手足縛られ‥口塞がれ
‥此処どこなのよぉーっ!!
って叫びたくても叫べない
‥辛いです
:10/02/17 23:56 :D905i :fmvw49TU
#683 [笹]
「お律様、
あの男がもうそろそろ此方へ‥」
微かに男の低い声が
向こう側から聞こえた
「そうかい‥
相当此の娘気に入ってるのかい」
次に聞こえたのは女の‥
ん‥?
:10/02/17 23:56 :D905i :fmvw49TU
#684 [笹]
―‥もしかして
『少々‥立ち眩みが』
‥あぁあああ!!
さっきの女の人の声だ
「‥憎たらしい娘だねぇ」
チッと舌打ちが聞こえた
さっきの雰囲気とは大違い
:10/02/17 23:57 :D905i :fmvw49TU
#685 [笹]
話の内容的には
憎たらしい娘があたしで
あの男が壱助さん‥かな?
ってことは
壱助さんが助けに来てくれるっ!!
その瞬間
一気に体の力が抜けて
楽になった
なぁーんだ
すぐ帰れるじゃなぁい!
:10/02/17 23:57 :D905i :fmvw49TU
#686 [笹]
何て‥調子に乗れば
「それで、あの娘は?」
「へいっ」
‥ろくなは事ない
:10/02/17 23:58 :D905i :fmvw49TU
#687 [笹]
―‥バン!!
一瞬で光が差し込み
真っ白になった世界に目を細めた
びくんと心臓が飛び跳ね
目の前に急に現れた
柄の悪い男に驚く
「おいお前!!」
:10/02/17 23:58 :D905i :fmvw49TU
#688 [笹]
塞がれた口を
塞がれてるなりに
ぱくぱくと開け
最早‥涙目
こんなごっつい男の人
久しぶりに見たよ‥
壱助さんしか見てないから
余計に驚いた
「暴れたら‥
只じゃ、おかねぇからな!!!」
「‥んっ、んぐ」
:10/02/17 23:59 :D905i :fmvw49TU
#689 [笹]
これ以上はないと言うくらいに
思い切り縦に首を振った
‥これは本当に殺される。
_
:10/02/18 00:00 :D905i :4LI2ZH.E
#690 [笹]
バン!!
その男は思い切り襖を閉め
また一人暗闇に放り出された
もう怖すぎて‥
体の震えが止まらないよ
壱助さん早く助けてぇ‥
:10/02/18 00:00 :D905i :4LI2ZH.E
#691 [笹]
:
:
「あら、いらっしゃい」
「ご無沙汰しておりました、ね
‥お姉様」
‥!!
壱助さんだっ!
その声を聞いて
ほっと胸をなで下ろした
:10/02/18 00:01 :D905i :4LI2ZH.E
#692 [笹]
「‥此処へは、あれから
来てないそうじゃない?」
「えぇ‥まぁ」
男が思い切り閉めた弾みで
少しだけ出来た隙間に
思い切り目を押し当てた
派手な着物を着崩したあの女の人
その傍にお猪口を手にした
壱助さん
:10/02/18 00:01 :D905i :4LI2ZH.E
#693 [笹]
その横に大きめの布団
この独特の香り
もしかして此処‥遊女屋?
「相変わらず‥お綺麗で」
艶容な唇をうっすら釣り上げて
あたしには見せない優しい笑み
:10/02/18 00:02 :D905i :4LI2ZH.E
#694 [笹]
「まぁ‥
あの子と重ねてるのかい?」
あの子‥?
それにさっき壱助さん
"お姉様"って‥
やっぱり常連なのかな
信じたくないけど
考え出したら止まらないたち
‥何だか悔しいよ。
:10/02/18 00:02 :D905i :4LI2ZH.E
#695 [笹]
「いえ、いえ
‥確かにそっくりですが、ね」
「双子だもの、当たり前さ」
女の人の赤く染まった爪が
壱助さんの真っ白な頬を撫でた
それに応えるように
壱助さんが片方の手を握った
:10/02/18 00:04 :D905i :4LI2ZH.E
#696 [笹]
‥やだ。
あたしの前で?
壱助さん、
あたしに気付かないの?
暴れてみても
余計に縄が食い込み痛むだけ
声を上げても
周りの色がましい声に消される
:10/02/18 00:04 :D905i :4LI2ZH.E
#697 [笹]
ねぇ‥やめて
壱助さんに触らないでよ‥
壱助さん‥壱助さんっ!!
_
:10/02/18 00:05 :D905i :4LI2ZH.E
#698 [笹]
:10/02/18 00:10 :D905i :4LI2ZH.E
#699 [笹]
:10/02/18 00:27 :D905i :4LI2ZH.E
#700 [笹]
:10/02/18 00:30 :D905i :4LI2ZH.E
#701 [笹]
:10/02/18 00:32 :D905i :4LI2ZH.E
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