【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#101 [紫陽花[手紙(1/1)]]
拝啓 母上様
お母さん元気?
私はもちろん元気だよ!!
仕事も一段落したし先週の金曜日には先輩達に歓迎会を開いてもらったの。先輩達はみんないい人だよ。
そうそう!!焼き鳥のおいしい店を紹介してもらったし、夜景の綺麗な場所も教えてもらったから今度こっちに来たら一緒に食べようね。
最近気付いたんだけど、こっちではあんまり星が見えないみたいなの。漫画みたいに高くそびえ立ったビルが綺麗な星達を隠しちゃってる。やっぱり都会は違うみたい。なんかちょっと悲しくなっちゃった。
あっ!!
私がホームシックになってると思ったでしょ!!もう子供じゃないんだからホームシックなんかならないよ!!
まぁ…
たまにお母さんのご飯が食べたくなるけどね。
では体に気をつけてね。
お母さん、すぐに無理するから娘は心配だよ!!
またメールじゃなくて手紙書くから。楽しみにしてて!!
ちょっと
ホームシックな娘より
:08/03/05 23:49 :F905i :☆☆☆
#102 [[電車(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
朝一番、切符売り場で路線図とにらめっこしながら悩む。
行き先は自由だ。途中下車も乗り換えも、し放題。
まず僕は、ローカル線十駅分の切符を買って、いろいろな路線が集まっている主要駅へと向かう。
これで、選択肢は何倍にも広がった。
だが、良いことばかりではない。
切符売り場を目指すものの、駅校内はかなり混雑していて、目が回りそうだ。
ようやく路線図が見えた。
線や点が交わりあってとてもややこしい。
人の波から逃れたくて、急いで券売機のボタンを押す。
しかし慌てすぎて、目的地とは逆方向の切符を買ってしまった。
仕方なく電車に乗り込む。
人が多い。さっきの駅よりも混雑している。
周囲の乗客と自分の間に隙間がない。身動きが取れない。
電車の揺れに合わせて、車両ごとに何十人という人間が一つの塊になって揺れる。
だんだんと息苦しくなってきた。もう無理だ!
:08/03/06 00:30 :SH903i :IsrrLMx6
#103 [[電車(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
直後に停まった駅で、人をかきわけ無理矢理降りる。
購入した切符を半分程無駄にしたが、しょうがない。我慢出来なかった。
高く昇った太陽の光が射すプラットフォームで、ベンチに座って少し休憩すると呼吸も整った。
再び切符売り場に行き、路線図を見上げる。
もう混雑はこりごりだ、人が少ないところにしよう。遠回りになっても良い。
また新しい切符を手に入れる。
電車に乗り込むと、その車内にはほとんど乗客がいない。
一番ゆっくり出来そうな場所の座席を選んで、腰を降ろす。
ぎゅうぎゅう詰めの電車では押し潰されないように必死で、周りを気にする余裕など無かった。
だがここでは、斜め前に座っている若い男性の腕に目がいった。
有名な高級腕時計をつけている。こんなに若いのに……。
羨ましく思ったが、乗り過ごしてはいけないので到着するまで切符を見つめていた。
:08/03/06 00:32 :SH903i :IsrrLMx6
#104 [[電車(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
電車を降りて、その切符を自動改札機に通す。
と、異常を知らせるチャイムが鳴り、駅員が駆けつけた。
切符に不備は無い。改札機の不調のようだ。たまにはこんなこともある。
気を取り直して切符売り場へ。
今回はかなり悩む。路線図を目で辿り続ける。
長時間悩んだ末に、ボタンを押す。駅の入口から見える遠くの空は、もうオレンジだ。
車内に入ると、座席が全て埋まっている。しかし、目的地はもうすぐそこだ。座れなくても構わない。音を立てて閉じたドアに背を預ける。
だが、ふと思い付いて振り返る。
この車両は今、山に囲まれた町の中を走っている。
夕暮れの町並みや山々は、暮れかけの太陽のせいで真っ赤に染められていて、息を飲む程美しい。
この景色は、夕暮れの限られた時間しか見ることができないのに、偶然見られた僕はとてつもなく幸運だ。
そして、僕を乗せた電車は目的地へと近づく。
駅の名前は「天国」。
……そう、これは僕の人生。
本当の人生は敷かれたレールの上を辿るのでは無く、縦横無尽に繋がっているたくさんのレールの中から、一つの道のりを選び取るということだ。
:08/03/06 00:35 :SH903i :IsrrLMx6
#105 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/06 01:54 :P903i :5soVjE/o
#106 [蜜月◆oycAM.aIfI]
>>105 ◆vzApYZDoz6さん
駄作を呼んでいただいて…ありがとうございます(´∀`)
正直、終わり方わかんなくなっちゃったんで無理矢理しめましたw
褒めていただけてすごく嬉しいです!
:08/03/06 02:15 :SH903i :IsrrLMx6
#107 [◆vzApYZDoz6]
>>106こういう短編を読みたくてスレを立てましたから(´∀`)
これぞフリーダム!
俺は投下しすぎな気がしますからwガンガン投下してくだされ
:08/03/06 02:58 :P903i :5soVjE/o
#108 [蜜月◆oycAM.aIfI]
>>107 ◆vzApYZDoz6さん
フリーダム万歳!
逆にあたしは、◆vzApYZDoz6さんのSSSすごく勉強になるので、もっと読みたいです(・∀・)
また書いたら投下させていただきますのでよろしくです!
:08/03/06 03:15 :SH903i :IsrrLMx6
#109 [◆vzApYZDoz6]
>>108勉強になりますかwまぁネタ思い付いたら投下しますw
どうぞー
連続投下もおkですよ
:08/03/06 09:46 :P903i :5soVjE/o
#110 [[手紙]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
朝の眩しい陽射しを浴びて俺は玄関から外に出た。
冷たく清々しい空気を肺いっぱいに吸い込む。
サンダルの隙間から刺さるような冷たささえ、早朝を感じさせる。
俺は門にある郵便受けの前に立った。
白い郵便受けも陽射しを浴びて反射しながら朝を楽しんでいる。
自然と緊張で顔が強張る。
俺は今にも早くなりそうな鼓動を抑えた。
ゆっくり深呼吸をして、冷たい空気が肺に流れ込めば、早くなりつつある脈拍を緩くしていった。
意を決して郵便受けに手を伸ばす。
微かな金属の摩擦音を立てて開かれた蓋の中には、いくつかの郵便物があった。
俺の視線はそれらを一切捉えず、ある一つの郵便物にだけ目を奪われていた。
黒い、無地の便箋。
切手や宛先主の名がない事から、直接郵便受けに入れられた事がわかる。
中身を確認しなくても内容はわかった。
……殺人予告だ。
すでに二週間近く続いているこの脅迫状。
中には恐らく今までと同じように「今日、貴方を外出中に殺します」と書かれているのだろう。
今日も暗い部屋でびくびくと怯える一日が始まると思うと、自然と表情も曇る。
:08/03/06 12:26 :SH905i :☆☆☆
#111 [[手紙]ふむ(2/3)◆s8/1o/v/Vc]
犯人を突き止めようと、徹夜で窓から見張ったこともあった。
しかしどういうことか、脅迫状は何故か朝には郵便受けに収まっているのである。
その後も見張ったが、結局わからず仕舞いで、三日で諦めた。
警察には言えなかった。
理由はない。俺の本能が嫌っているのだ。
同時に、本能は警察に言えば手紙は止まるとも言っている。
しかし止まるといっても、それを確信している本能自身が警察に行くなと言うのだから仕方がない。
俺は郵便物を引っ張り出すと黒い便箋を片手に家に戻った。
カーテンが締め切られた薄暗い部屋に入ると、真っ先に机に向かう。
途中ベッドを横切る時に、他の郵便物を投げ捨てた。
机に辿り着くと引き出しを開ける。
中には手に持っているのと同じ黒い便箋が十何通も入っていた。
無造作に手に持っていたそれも、引き出しに放る。
ぱさり、と軽い音を立てて黒い便箋は中に収まった。
引き出しを戻すと、俺は気分が悪くなってきた。
毎日のように来る脅迫状に、精神的に舞ってきたのだ。
力無くベッドに倒れ込む。
目を閉じればすぐに睡魔はやって来た。
俺は糸が切れたように眠りに着いた。
:08/03/06 12:27 :SH905i :☆☆☆
#112 [[手紙]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
ひやりとした寒さを感じて、俺は目を覚ました。
カーテンに光はなく、すでに夜だということがわかった。
俺は起き上がると、机に付いている照明の電源を入れた。
明日の支度をしなければ…。
白い紙を出して、ボールペンで文字を綴る。
書き終えると机の隅に置いてある封筒から、黒い便箋を取り出した。
紙を中に入れると、俺は黒い便箋を片手にふらふらと部屋に出ていった。
しばらくすると、部屋の扉が開かれる。
帰ってきた俺の手にはすでに手紙はなく、外に行ってたのか身体が更に冷えて小刻みに震えていた。
再びベッドに崩れ落ちる。
黒い便箋は明日も送られて来るだろう。
俺に恐怖を運ぶために…。
:08/03/06 12:29 :SH905i :☆☆☆
#113 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/06 12:30 :SH905i :☆☆☆
#114 [リナ]
>>96-99作品リスト
>>77vzApYZDoz6サン
>>78ふむサン
初めまして
死にたがりのリナです。
あれホラーでしたか?
めちゃほのぼの書いてたんでホラー部門に驚きました(ノ∀`*)アリガトーゴザイマス
皆さんのように巧く書けませんが、また参加させて貰います
:08/03/06 14:33 :N905i :☆☆☆
#115 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
>>114恐らくオカルトホラーの部類かと…;
間違っていたら申し訳ありません!
私なんて全然ですよ!
もっと上手くなりたいものです
:08/03/06 14:59 :SH905i :☆☆☆
#116 [リナ]
>>115ふむサン
あれは少しマザーグースを意識して書きました。
全然でしたが((´∀`))
あたしふむサンの『空』好きです。
最後の花は勝手に信長イメージで読みました(ノ∀`*)
:08/03/06 16:08 :N905i :☆☆☆
#117 [「偽物家族」(1/2)リナ]
窓から冷たい風が吹き込む夕飯時。
大声で私を呼ぶ声で目が覚めた。
気持ち良く寝てたのになんだってのよ?
ベッドから抜け出て部屋のドアを開けた。
「なぁに?博人(ヒロト)」
「なんで姉ちゃん寝てんだよ……。
あー!一緒にこの興奮を分け合いたい!」
キモッ。
いいや、もー一眠りしよ。
「ちょっ!
なんでドア閉めんのさ?
き、い、て!!」
仕方ないなぁ
「なぁぁぁぁぁぁに?」
いやいや聞いた。
「俺また見たんだよ!
未確認飛行物体!
すごくね?
これで連続5回は見てる!」
興奮冷め止まぬようで声がでかい。
「…………で?」
博人は一瞬シュンとした表情を浮かべ
「あいつら絶対侵略しにきてんだ!
今はきっと偵察期間だな」
言って一人で納得した。
「そんなことよりあんた明日試験でしょ?
勉強しなさいよ」
「俺には勉強の方が『そんなこと』だよ。
どーしよー?
俺の前にこんな頻繁に現われるって事は、俺連れ去られてチップとか埋め込まれんのかな?こえぇー」
顔がこんなだよ(*´∀`*)生き生きしてんじゃん。
弟よ、あんた今凄くめんどくさいよ。
:08/03/06 16:13 :N905i :☆☆☆
#118 [「偽物家族」(2/2)リナ]
「はいはい。
連れてかれないから大丈夫」
「姉ちゃん夢がねぇなぁ。
目が冷たい、とことん冷たいっつの!
もーいぃよ。
はぁ……勉強しよ……」
自分の部屋に迎う弟の背中を見ながら、爬虫類のように長い舌をチロチロ出し思う。
だってもー連れて来られてるもん。
END
:08/03/06 16:14 :N905i :☆☆☆
#119 [[誘拐事件(1/2)]蜜月◆oycAM.aIfI]
6年前、私は誘拐された。
パパとママと、3人で普通の生活を送っていたのに、ある日突然学校の帰り道で見知らぬ車に連れ込まれた。
それから6年間、私は誘拐犯の隠れ家らしき場所に監禁されている。
誘拐犯はどうして私を選んだのか。
たまたま私が目に付いたから?
それとも初めから私を狙っていたの?
6年間、あたしはずっと考えている。他にすることがないから。
でも、答えは見つからない。
パパとママはどうしているんだろう。
まだ私を探してくれている?
それとも私のことなんか忘れて、楽しく過ごしてる?
考える度に涙が溢れてくる。普通の生活がどんなに幸せなことか、終わってから気付くって本当だ。でも、いつか涙が枯れるっていうのは嘘だった。
監禁が始まってからずっと、逃げる方法を無限に考えているけれど、どれもうまくいかない。
誘拐犯は慎重なやつだ。
私が閉じ込められている部屋には、生活に必要なものはほとんど揃えられている。
なのにその中には、犯人を襲うための武器になるようなものは一つも無い。
そして、私が自分の命を絶つための道具になるものも無い。
:08/03/06 17:59 :SH903i :IsrrLMx6
#120 [[誘拐事件(2/2)]蜜月◆oycAM.aIfI]
そうして絶望した私は、現実から目を背け、昼も夜も夢の世界に逃げ込んだ。
けれどいつからか、目を覚ますと違和感を感じるようになっていた。
何がおかしいのか解らない、でも何かがおかしい。
そしてある日、ユウという少女と出会った。
彼女は私の中に存在していた。
誘拐犯は、私が眠りユウが現れると、ひどい暴行を働いたようだった。
しかしユウは私が作り出したあやふやな存在。私が私の都合の良いように記憶を消してしまうから、次の日には覚えていなかった。
犯人からの屈辱を受け、ユウはそれを忘れる。私は辱められたという事実だけを受け止める。
いつしかこの方程式によって、私の精神はギリギリで均衡を保っていた。
そして今日、ユウと私はこの均衡をぶち壊す。
私たち自身の均衡を守るために。
ユウが痛みを感じ忘れる。私は事実だけを受け止める。
ベランダの窓を突き破り、そのまま空中へ――。
“死”という事実だけを。
:08/03/06 18:05 :SH903i :IsrrLMx6
#121 [◆vzApYZDoz6]
俺が二日酔いで潰れてた間に皆様かなり書いてますねw
今から読ませていただきます
>>114あれほのぼのですかw
言われてみれば、ほのぼのダークな感じかもですねw
ガンガン投下しちゃって下さいね
:08/03/06 22:36 :P903i :5soVjE/o
#122 [我輩は匿名である]
?「ふふふふふふ
あのこ絶対あたしが好きなのよ
うふふふふふふ」
電車の中で鏡を見ながら呟く女
その名は『済須 未来-サイス ミライ-』
成績優秀
顔上の中
なんでもできる優等生。
しかし、済須未来は少し違う。
人と目が合えば呟き
人に話しかけられればにやける
そいつについた
あだなは…
ー妄女ーモウジョ
聞いてたらわかるだろうがこいつは、顔を汚すかのような
妄想女
恋するのは自分じゃなくて相手
そんな妄女の1日の妄想を見てみようではないか
:08/03/06 22:56 :W43H :LHm6bI72
#123 [我輩は匿名である]
(告白ってヤッパリ卒業式の後だよね)
何を考えているかはわからないが不気味な笑みとともに、こいつの1日は始まった
:08/03/06 23:00 :W43H :LHm6bI72
#124 [「夕日」向日葵(1/2)]
疲れた体を、壁に預ける。
電車にゴトゴトと揺れながら、今日も1日終えたと安堵のため息を静かに吐いた。
毎日すぎる当たり前の時間。
自分はこんな時間を過ごしていて本当にいいのだろうか。
自問自答する。
何かしなくちゃならないのではないか?
でもそれが何かは分からない。
分からないから、無駄な時間を使っている気がしてならない。
このままの毎日が過ぎる事の方が、友達と合わせて笑ったり、溜った課題を済ませるよりしんどく感じた。
:08/03/07 22:26 :SO903i :Ii/OqDZE
#125 [「夕日」向日葵(2/2)]
そんな時、外から眩しい光が差し込んだ。
それは今にも海に隠れそうなオレンジ色の夕日だった。
誰もが口々に綺麗だと言う。
私もその1人。
でもまた、明日から頑張れる気がした。
がむしゃらにでも、何かをやりとげれる気がした。
そう思うと、急に切なくなって、胸がいっぱいになった。
そこでようやく心身共に疲れきっていた自分に気づく。
夕日の光が、自分の心にも差し込んできたように感じたのだった……。
:08/03/07 22:29 :SO903i :Ii/OqDZE
#126 [[手紙(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
“今日は同室のやつが持ってたトランプで遊んだよ。
トランプなんか二人とも久しぶりで、ババ抜きしか覚えてなくてさ。
二人じゃどっちがババ持ってるかすぐわかってしまうから、すぐ終わったけどね。
また明日手紙送るよ。”
俺は毎日手紙を書く。この部屋に来てから、この作業を欠かした日は一日も無い。
“今日は仕事がいつもより多くて、すごく疲れた。
でも心配しなくていいから。
毎日くたくたになるまで真面目に働いてるんだからさ。
また明日手紙送るよ。”
手紙の最後はいつも同じ。返事がなくても、この一文を書くことで、俺は書き続けていられるような気がする。
“今日、同室のやつがここを出たよ。またいつか会おうなんて言ったけど、あいつは忘れてしまうんだろうな。
良いやつだったんだ、すごく。
ちょっと淋しいよ。
また明日手紙送る。”
俺の母は、とても悲しいひとだった。
毎日毎日、旦那――つまり俺の父親だが――からひどい暴力を振るわれていた。
俺が生まれる前は、優しくて良い夫だったが、出産してから豹変したんだと、母の姉の伯母から聞いた。
母は、父を愛していたからなのか、警察に行く訳でもなく、ただ毎日怯えていた。母の傷やあざを見て、伯母が気付くまで何年間も一人で耐えていた。
俺は、父が母に対してそうなってしまったのは自分のせいだと思っていた。理由は解らないが、俺が産まれたせいで、父にとって何か気に入らないことが生じたのだろう。
:08/03/08 01:18 :SH903i :7AUminCk
#127 [[手紙(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
“母さん今日も元気? 体の調子はどう? 俺は今日も元気に働いているよ。
今日、陶芸をしたんだ。俺が作った皿、宅急便で送るから見てくれよ。うまく造れなかったけど。
また明日手紙送るよ。”
俺はずっと、母に対して申し訳ないという気持ちで生きてきた。
そして、ここに来た。
母は俺がここに来たと知って、とても悲しんだようだった。精神的に弱ってしまって、今は入院している。
伯母が母の世話をしてくれていて、たまにここにも来てくれる。
伯母にも迷惑をかけてしまった。ここを出たら一生かけて恩返しをするつもりだ。
“俺の部屋に新しいやつが来た。
前のやつとは違って、あまり良いやつじゃなさそうだ。問題起こさなきゃいいんだけど。
また明日手紙送るよ。”
俺がここに来てもう八年経った。母ももう良い年だが、あと七年は会えない。心配だった。
親孝行出来る内に母のもとに戻りたいと思っていたら、嬉しい知らせが来た。
“母さん、俺、模範囚になれたよ。あと二年で出所できるらしいんだ。
母さん、もう少し待っててくれよな。外に出たら、働いて稼いで、おいしいものいっぱい食べに連れていくから。
じゃあ、また明日手紙送るよ。”
:08/03/08 01:20 :SH903i :7AUminCk
#128 [[手紙(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
次の日、伯母さんが面会に来た。
昨日の手紙を読んで、入院中の母が初めて反応したというのだ。
母は今ほとんど話すこともなく、一日中寝て過ごすことが多いと聞いていたから、俺は母が俺の出所を喜んでくれたのだと思った。
そして伯母は、母からの返事を代筆したものを持ってきてくれた。
“どうしてあと二年で出所できるの? 懲役十五年でしょ? それでも足りないのに!
あなたは私の大切な人を奪ったのよ……
なのにトランプやら仕事やら毎日楽しそうに元気に過ごすなんて許せない。
出所しても私のところへは来ないでちょうだい。息子とも思ってませんから”
――これは……誰だ?
まさか、そんな。
俺は、父が母を苦しめているのを幼い頃から目の当たりにしていた。
母が毎日怯えているのを見て、だんだんと父に憎しみを抱くようになっていた。
そして、殺した。
母を助けたい一心で、母に新しい人生を歩んで欲しくて、殺した。
――なのに……なのにどうして!
母が悲しんだのは俺が逮捕されたからではなく、父が死んだからだ、とだけ告げ、伯母は帰っていった。
そして俺は決意した。今度は他人の為ではなく、自分の為に……と。
:08/03/08 01:28 :SH903i :7AUminCk
#129 [ずっと大好き]
あれからもう一カ月がたつよ…
タクは天国へ逝った
アタシとタクはお互い大好きだったのに一緒にはなれなかった
ただ…教師と生徒なだけなのに…
誰一人として祝福してくれる人はいなかった
ただ生きててくれればアタシ頑張る事出来るのに…
アナタがいなきゃだめなのに…
アタシの心は止まったまま無情に時間だけが過ぎてゆく
そして2ヶ月がたった
最近身体がだるい…
微熱も続く…
アタシどうしたんだろ
不安に思いアタシは病院に行った
:08/03/08 12:25 :V803T :OM4BGBho
#130 [ずっと大好き]
医者「妊娠してますね」
「え…妊娠…」
アタシは即座に産むと決めた
アタシは空を見上げた
タク…アタシ妊娠してたょ
頑張って産むからタク見守っててね
その日アタシは夢をみた
タク「アミ俺ずっとお前が好きだし
生まれ変わってもお前をまた見つけてやる自信がある
俺はずっとかわんねぇからな」
アタシは目が覚めた
アタシは大声で泣いた
「タク…ヴッヒック…アタシもずっと好きなの変わらないよ…ヒック…今までもこれからもタクだけだょ…」
完
:08/03/08 12:26 :V803T :OM4BGBho
#131 [梓【決意】(1/2)]
ベッドの中で彼にしがみつきながら、朦朧とした意識の中で私は考えた。
―今日、言おう。
きっかけを待っていたらいつまで経っても切り出せない。
彼と私は求めるものが違いすぎる。
「ん…あっ…!」
彼を強く感じ、私の思考はそこで途切れた。
:08/03/08 17:29 :SO703i :☆☆☆
#132 [梓【決意】(2/2)]
下着を着けながらどう切り出そうか考えていると、3年間の彼との思い出がぼんやりと浮かんできた。
温かく、そして切なくなった。
でも、これでいい。彼との今までの生活は、決して悲しいものじゃない。愛しているからこそ、大切に思うからこそ、お互いのために離れよう。
「悠介…」
瞬間、後ろから彼に抱きすくめられた。と同時に左手に無機質な冷たさを感じた。
指輪だった。
「お前は俺と一緒にいればいいんだよ。」
私の決意は、柔らかく崩れていった。
*End*
:08/03/08 17:43 :SO703i :☆☆☆
#133 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/08 18:12 :SH905i :☆☆☆
#134 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/08 18:15 :SH905i :☆☆☆
#135 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/08 18:15 :SH905i :☆☆☆
#136 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/08 18:16 :SH905i :☆☆☆
#137 [紫陽花]
:08/03/08 19:24 :F905i :☆☆☆
#138 [紫陽花[卒業(1/2)]]
もうこの学校に先輩はいない。
先輩は少しだけ春の木漏れ日が差し込んだ先週の金曜日私の通う高校を卒業した。
もうこの学校に先輩はいない。
朝わざとぎりぎりに学校に登校しても、昼休みに売店に行っても、移動教室の時友達に無理を言って遠回りしてみても、もう先輩を見つけることはできない。
あと二年早く生まれたかった。
なんどその言葉を口にしただろう。所詮私は後輩……。たまに挨拶をするのが私の精一杯の自己表現。
だけど先輩は、少しだけめんどくさそうな顔をして頭を下げてくれる。それだけで一日中幸せになれた。名前を呼んでくれた日など一生忘れないと思った。もちろん今でも覚えている。
:08/03/08 19:25 :F905i :☆☆☆
#139 [紫陽花[卒業(2/2)]]
だけどそんな先輩はこの学校を卒業してしまった。
今でも、朝学校に来ればまず先輩の姿を探してしまう。売店へ行くと先輩はいないと頭では分かっているのに目が勝手に先輩を探してしまう。心が勝手に今日もパンを買ってるんじゃないかと期待してしまう。廊下ですれ違うことは二度とないのに先輩を一目見ようと遠回りしてしまう。
先輩とは一年しか同じ学校に通っていないけど、その学校の至る所に先輩の思い出が隠れている。
それでも私はこの恋を終わらせるつもりはない。
確かに想いは届かないだろう。だけど私が先輩に恋した時間は永久に私の心の中に残るから。短い期間だったけど私の心は先輩でいっぱいになったから。
だから私は先輩を忘れない。
卒業おめでとうございます。
ーーーendーーー
:08/03/08 19:26 :F905i :☆☆☆
#140 [◆vzApYZDoz6]
おお、いつの間にかものすごい量の投下がw
そろそろ俺も投下しよw
:08/03/08 21:29 :P903i :dQoHT8FQ
#141 [朝海『初恋』(1/3)]
アタシは今日も病院のベッドの上
今まで恋なんかした事がないアタシはこれからそんなモノは無縁だど思っていた
アイツに会うまでは…
看護師「秋サン今日天気良いから散歩行きましょうか」
秋「はい…」
アタシは看護師サンに中庭に連れてこられた
看護師「秋サン飲み物買って来ますね」
そう言うと看護師サンは行ってしまった
アタシは空を見上げて溜め息を着いた…
「こんな青空の日に溜め息なんか吐くんじゃねぇょ」
アタシは隣に居た男を見た
秋「アナタ誰?」
「俺?宙(ソラ)お前は?」
宙は無邪気に笑った
宙―‐アンタはアタシの光だったよ
:08/03/08 21:57 :V803T :OM4BGBho
#142 [朝海『初恋』(2/3)]
秋「アタシ秋」
アタシは宙を見た
宙「そんな暗い顔してっと幸せになれねぇぞ」
宙はまた無邪気に笑った
秋「笑い方なんか忘れたよ…」
すると看護師サンが戻ってきた
看護師「秋サンお待たせ」
看護師サンはアタシにココアを渡した
看護師「あら―‐宙君じゃない検査は終わったの?」
宙「終わりましたハハ」
秋「宙どっか悪いの?」
宙「ただの骨折(笑)」
宙とアタシは仲良くなり宙が退院してもアタシのお見舞いに毎日来てくれた
そんな生活が半年経った
今日もアタシは中庭に居る
宙もアタシを見つけるとこっちにきた
:08/03/08 22:10 :V803T :OM4BGBho
#143 [朝海『初恋』(3/3)]
宙「よッ!」
宙はアタシの隣に座った
秋「よッ」
アタシも同じく返した
するといきなり宙は
宙「俺―‐秋が大好き」
宙は空を見上げ照れながら言った
秋「アタシも宙が大好き」
ホントの恋をした少女は白血病と言う難病にたたかう強さも知った
1年後―‐
秋はベッドから起き上がる事ができなくなっていた
宙「秋…俺のそばから居なくならないでな…」
秋「宙…アタシ離れたくないょ…ヒック…」
秋は天国へ逝った
宙は看護師から秋からの手紙をもらった
秋「アタシの初恋の相手が宙でよかった―‐大好き」
宙「秋…俺もお前が大好きだ」
:08/03/08 22:27 :V803T :OM4BGBho
#144 [恋文(1/1)◆vzApYZDoz6]
先程から便箋を汚しては消して、汚しては消しての繰り返しで、なかなか筆が進まない。
恋文なんていうのは、自分の『好き』という心中を伝えれればそれだけで役割が果たされた事になるのだが、それが難しい。
そうしている内に、だんだん嫌になってきてしまった。
悩めば悩むほど小難しい文章になるんだから、どうせなら今思っている事をありのままに書いてやろう。
そう考えると、ペンを握る手に自然と力が入った。
「えーっと、お前はクラスのマドンナとか言われてるけど太ももが太いから俺はそうは思わない。というかお前なんて好きじゃない。ちょっとぐらい容姿がいいからって調子に乗るなよバーカ。結局、一番いいのは幼女なんだよバーカ」
書き上げた便箋を三つ折りにして封筒に入れる。
ペンを置き、座っている椅子の背凭れに盛大に寄りかかって、天井を見つめながら大きく溜め息をついた。
「…ったくあの野郎、俺にラブレターの代筆なんか頼みやがって」
この内容のままであいつの想う人に渡せば、間違いなくあいつは振られる。
だが別に構わない。むしろ、振られた方があいつのためになるだろう。
天井を見つめたまま、再度溜め息をついた。
そして再び机に向かい、新しい便箋を取り出す。
ペンを握り、振られて泣くあいつへの慰めの言葉と、失敗したラブレターの言い訳を、吟味しはじめた。
:08/03/09 00:41 :P903i :IRJGZ9R2
#145 [[邪魔モノ(1/1)]蜜月◆oycAM.aIfI]
私は標的を真っすぐに見つめながら、そろりそろりと近づく。
――あなたには悪いけど、こうするしかないのよ。
心の中で呟いたつもりだったが、聞こえてしまったのだろうか、標的が私に気付いたような気がした。
どうせ、何度同じことを繰り返すのだ、などと思われているのだろう。
だが、私はこうやって生きてきたのだ。今さらどうしようもない。
あの人と結ばれるため、邪魔モノがあらわれる度に私は排除してきた。何度も何度も。
罪悪感が無いわけではない。けれど、あの人のためと思えば少しぐらいの痛みなど無いに等しい。
私の中に残っていく悲しい傷痕。しかし、それさえもあの人への愛情からのものと思えば、愛しい。
そして私は、この愚かな行為を今日も繰り返す。
自らの右頬を両手で挟み込む。嫌な音がして潰れるニキビ。
「あ〜また跡残っちゃうな、コレ」
:08/03/09 02:07 :SH903i :J0vT8dP.
#146 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/09 14:28 :P903i :IRJGZ9R2
#147 [ふむ]
:08/03/09 14:33 :SH905i :☆☆☆
#148 [蜜月◆oycAM.aIfI]
:08/03/09 17:46 :SH903i :J0vT8dP.
#149 [きゆん]
<1>
「…好きよ」
そう言えば君は
どんな顔をするの?
このまま友達でも
いい、そう思ってた。
けどやっぱり
ずっとずっと
大好きだった
私の気持ちを伝えたい。
:08/03/09 17:53 :W52SA :8lv7aSTk
#150 [きゆん]
<2>
「…好きだ」
そう言えば君は
どんな顔をする?
このままいい奴として
君の隣にいられるなら
それでもいいと思ってた。
けど、すげぇ大好きな
気持ち…やっぱり伝えたい。
:08/03/09 17:55 :W52SA :8lv7aSTk
#151 [きゆん]
<3>
こっちを見て。
こっちを見ろ。
私に微笑んで。
俺に微笑えめ。
愛してるって言って。
愛してるって言ってくれ。
今君に
全てを告げる。
-END-
:08/03/09 17:58 :W52SA :8lv7aSTk
#152 [きゆん]
「告白」>>1-3
:08/03/09 17:59 :W52SA :8lv7aSTk
#153 [「君と魔法」向日葵(1/2)]
上を向けば涙は流れない。
そう言った筈なのに涙が流れていく。
そう言った君は、ここにはもういない。
夜中の突然の知らせ。
君の事だった。
必死に病魔と言う敵と戦ってた君は、最後の最後まで力一杯抵抗したけど……負けてしまったんだね。
空を見上げれば、君が見えると思ったけど、煙しか見えない。
あんなに温かかった君は、もう今じゃ白い塊。
:08/03/09 23:03 :SO903i :HufwFHOk
#154 [「君と魔法」向日葵(2/2)]
病室は狭かったけど、今の部屋の方がよっぽと狭いよね。
あちらへ行けば、一面お花畑なのかな?
どうしよう。
君の魔法、効かないよ。
ずっとずっと効いてたのに、効かないよ。
急に降ってきた雨みたいに、山奥にある滝のように、滴が頬に流れていく。
喉の奥が苦しい。息が出来ない。
君と笑い合った日々が、何故か次々に溢れてくるんだ。
いつか、そんな事あったなって、君の魔法が効く日がやってくるのかな。
それはそれで、寂しいな……。
:08/03/09 23:08 :SO903i :HufwFHOk
#155 [夕闇と少年(1/3)天音]
「ぼくはこの世界に絶望したよ。もう本当に、何もかもが疎ましくて無意味に思えてくる。今すぐに空を自由に飛び回る鳥を撃ち落としてやりたいよドチクショウ」
気づくと、ぼくは河川敷で夕日に向かいそう叫んでいた。叫ぶ前に何をしていたかは覚えていない。
ジョギングをしていた中年男性は驚いて振り返り、痛々しいものを見る目でぼくを見たあと足早に去っていった。
:08/03/10 00:38 :L704i :2fderNsg
#156 [夕闇と少年(2/3)天音]
ぼくは無意識のうちにごめんなさいごめんなさいと泣きながら謝っていた。
何故なら中年男性のぼくを見る目はぼくに折檻をする父にそっくりだったからである。
他人にみた父の面影に怯えるなんて。ぼくはぼくがますます嫌いになった。
:08/03/10 00:45 :L704i :2fderNsg
#157 [夕闇と少年(2/3)天音]
絶望しているうちに、ぼくはじわじわと夕闇に飲み込まれていった。怖くはなかった。闇にすっぽりと包まれると、安堵にも似た感覚に侵された。そのいいしれぬ安堵感に、ぼくはまだ見ぬ母の姿と永遠の眠りを垣間見た気がした。
そんな、夢をみた。
:08/03/10 00:55 :L704i :2fderNsg
#158 [我輩は匿名である]
ついてない。
あたしの今日一日は、その一言で表される。
朝から寝坊はするし、電車は混んでるし、上司には叱られるし、一人で残業させられるし……
そして極めつけが、これだ。
あたしは、会社の窓から雨が降りしきる町を見て溜め息をついた。
:08/03/10 01:19 :P702iD :jviBZqKc
#159 [我輩は匿名である]
……カサ、持ってきてたっけ?
持ってきてる訳がない。朝から忙しかったんだから。
何度目かの馬鹿らしい自問自答。繰り返すほど憂鬱になっていく。
……もう嫌だ。
残業なんてどうでもいい。上司にどう思われようと知ったことじゃない。
:08/03/10 01:20 :P702iD :jviBZqKc
#160 [我輩は匿名である]
帰ろう。
そう思い立って席を立とうとした時、
「三井?残業?」
って後ろから若い男の声が聞こえた。
……ああ、この声はよく知ってる。
同期で入社した男、大野の声だ。
3レスじゃこれが限界ですたww
:08/03/10 01:21 :P702iD :jviBZqKc
#161 [◆vzApYZDoz6]
>>158-160おkw
参加者&投下が増えてくれて主としては嬉しいが、読む暇がないorz
今から読みます
:08/03/10 03:52 :P903i :tHds.fh2
#162 [お題を全部使って(1/3)◆vzApYZDoz6]
都心部の駅から降りてすぐのところにある、スクランブル交差点。
人でごった返す横断歩道を渡った先に、私の勤めるオフィスがある。
今日も私は電車に揺られた後、その横断歩道を渡って仕事へ行く。
でも、あまり仕事に乗り気がしないのは、私が疲れてるからだろうか。
降り頻る雨。信号待ちの人混みの中で佇む私の体は連日の残業が祟ってひたすら重く、気分はあまり弾まない。
傘を差しながら憂鬱に青信号を待つ私の視線は、自然と地面を向く。
その時に初めて、足下に1匹の猫が居たことに気が付いた。
茶色と黒の駁模様が、コンクリートで固められた地面によく映える。
都会のど真ん中にも野良猫がいるのか、等と薄く考えていると、猫の首輪に目が止まった。
白い首輪。それが首輪ではなく首輪に結ばれた手紙である事に気付くのに、たいした時間は要らなかった。
ちょうど神社の木にくくりつけられてるおみくじのように、両端が結ばれている。
私の視線に気付いたのか、猫は私を一瞥して横断歩道へ踏み出した。
「あっ、まだ赤…」
私の不明瞭な呟きを掻き消すように、周りの人も歩き出す。
どうやら、たった今信号が青に変わったらしい。
人混みを掻き分けて歩く私は、気が付くと視線が数メートル先の猫を向いて、足は歩く猫を追っていた。
:08/03/10 15:36 :P903i :tHds.fh2
#163 [お題を全部使って(2/3)◆vzApYZDoz6]
どれくらい歩いただろうか。
同僚に会社を休む旨を伝えて、ずっと猫の後を追い続けている。
そこまでして私の体を動かすものは、好奇心に他ならない。
あの猫は一体どこへ行くのか。あの手紙を一体誰へ届けるのか。
そんな事を考えながら、時には狭い路地裏を通り抜け、時には電車にただ乗りしようとする猫を追って切符を買い、いつの間にか見知らぬ町に来ていた。
雨は、いつの間にかあがっていた。
周りを田圃や畑に囲まれた、舗装されてないために雨でぬかるんだ田舎道を、猫の後を追い続けて歩いていく。
やがて猫は道なき道へ。雑木林に入り、私の腰あたりまでの高さがある草むらを掻き分け、尚も進んでいく。
疲れは不思議と感じないが、そろそろ陽が傾きかけている。
早くしてくれないと終電に間に合わない、と現実的な事を考えている最中に、とうとう終着点に辿り着いた。
高い草むらを抜け出た先に広がるのは、綺麗な砂浜。丸まって座る駁猫が、地平線まで続く海を眺めている。
時刻はちょうど夕暮れ時。夕日が半分顔を出して、小さく揺れる水面にオレンジの光の道を作っていた。
「ここって…」
その静観な光景は過去に幾度か見たことがある。
遠距離恋愛中だった彼氏とは、お互いの家の中間に位置するこの海岸で会っていた。
肩を並べて静かに夕日を見ているだけで、堪らなく幸せだった。
彼氏は外国に留学して、今では殆んど連絡も取れていない。
たまに電話したりするけれど、どちらかが夜中になったりして手早く会話が途絶えてしまったり。
:08/03/10 15:36 :P903i :tHds.fh2
#164 [お題を全部使って(3/3)◆vzApYZDoz6]
あの頃の懐かしい思い出に浸っていると、いつの間にか隣にいた猫が喉を鳴らした。
そう言えば、首輪にくくりつけられた手紙は一体誰へ宛てたものなのか。
そう思い、私が手紙を読もうと首輪に手を伸ばしてみても猫が嫌がらないあたり、私宛の手紙らしい。
それをこの海岸に連れてきて読ませる人なんて、数少ない。
高揚する気分を抑えて、手紙を首輪から外した。
『元気にしてますか?俺はこっちで元気にやってます。
最近こっちで、その海岸とそっくりな場所を見つけたんだ。たまに足を運んで君を思い出すのが、ささやかな幸せだった。でもそうしてると会いたくなってきちゃったから、1か月後の卒業式の後に、君が今居るであろうその海岸へ行きます。待っててね』
細い綺麗な字で書かれた文。
数年前に外国へ行った彼が、もうすぐ帰ってくる。私は自然と顔を綻ばせていた。
「…追伸?」
『P.S.その駁猫はこっちの海岸に住んでいた野良猫なんだ。すごく頭が良いから、きっと行って帰ってこれるはず。』
「へー、この猫が…ってあれ?」
隣には既に猫はいない。辺りを見回してみても、やっぱりいなかった。
役目を果たし、彼の居る海岸へ帰っていったのだろうか。
もしかして飛行機にもただ乗りしてたのかな、と考えながら、手紙をしまう。
いつの間にか陽は完全に暮れていたので、私は終電を気にして帰った。
それからはあの猫は見ていない。
でも、毎日カレンダーの日付に×印をつけるのが、私のささやかな幸せになっていた。
:08/03/10 15:38 :P903i :tHds.fh2
#165 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/10 16:28 :P903i :tHds.fh2
#166 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/10 16:29 :P903i :tHds.fh2
#167 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/10 16:30 :P903i :tHds.fh2
#168 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/10 16:30 :P903i :tHds.fh2
#169 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/10 16:32 :P903i :tHds.fh2
#170 [◆vzApYZDoz6]
作品数集計
1レス短編:17
2レス短編:22
3レス短編:15
総作品数:54
現在のお題
@雨
Aあの頃の思い出
B電話
C卒業
D電車
Eささやかな幸せ
F手紙
G都会
まとめ&作品数集計&お題
>>165-170:08/03/10 16:34 :P903i :tHds.fh2
#171 [◆vzApYZDoz6]
あとふむさんか、もしくは他のまとめ人さん
次からまとめるときは
今までの作品
>>165-169新たな作品
〜さんの作品
○○○(1/1)
……
って感じにしてくれw
でないとレス数がえらい事にw
:08/03/10 16:42 :P903i :tHds.fh2
#172 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/10 17:03 :P903i :tHds.fh2
#173 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
は毎日変わるので匿名さんは匿名さんで一つに総合しちゃった方が良いかも知れませんね
:08/03/10 17:29 :SH905i :☆☆☆
#174 [◆vzApYZDoz6]
>>173うーん
まぁそのへんは適当にしちゃってくだされw
:08/03/10 17:55 :P903i :tHds.fh2
#175 [朝海]
:08/03/10 21:12 :V803T :iiQvJMNA
#176 [朝海「笑顔」(3/3)]
アタシ…この生活いつまで続くんだろ…
今日もまたアタシはイジメにあっている
「マジきも〜アハハ(笑)」
「ねぇシカト?聞いてる〜」
そういいながらアタシはトイレに連れてかれホースで水をバシャバシャかけられた
アカリ「やめ…ゲホッ」
水が鼻に入った
「なんか言った?(笑)」
「男にチヤホヤされてっからってマジウザィから〜アカリチャン(笑)」
アカリ「やめてよ」
アタシは女タチをみた
バシッ―‐
「みんじゃねぇよ」
「アハハ〜じゃあねアカリチャン」
アカリ「今日は帰ろ…はぁ」
もぅ死にたい…
アタシはトイレを出た
:08/03/11 02:24 :V803T :2cMrU/Rg
#177 [朝海「笑顔」(2/3)]
屋上でも行くか…
アタシは服を乾かすため屋上に行くことにした
ガチャ―-
アカリ「はぁ…」
アタシはフェンスに寄り掛かり座った
アカリ「ヒック…クッ…ヴゥ…ッ」
アタシは空を見上げた
その時
「オイ」
隣から呼び掛けられた
アカリ「レイ君…」
いつから居たの…
レイ「お前ビショビショだけどどうしたんだよ」
アタシは言いたくなかった
アカリ「…暑いから水浴び(苦笑);ハハ」
レイ「そっか(笑)暑ちぃからいいかもな」
:08/03/11 02:36 :V803T :2cMrU/Rg
#178 [朝海「笑顔」(3/3)]
するとレイは近くにある蛇口に指をつけて水をだしアタシにも自分にもかけた
アカリ「プァッ―-レイ君ちょっ〜ハハ」
レイ「きもちぃ〜」
レイは頭を振って水滴を落とした
アカリ「レイ君ビショビショ(笑)アハハ」
レイ「お前の笑ったトコ初めてみた(笑)その方が可愛いじゃん」
レイ君はアタシの頭をなでた
アカリ「ありがと」
アタシは小さい声でレイに言った
レイ「なんか言った?」
アカリ「ううん」
アタシ―-頑張れるょ
レイ―-ありがとう
アタシはレイの言葉で救われた
レイ「アカリ笑顔が一番だぞ(笑)」
―完―
初めの3/3間違いでした
1/3でした
:08/03/11 02:49 :V803T :2cMrU/Rg
#179 [服屋クエストなシュール(1/2)◆vzApYZDoz6]
脱ヲタが出現した!
脱ヲタはキョロキョロと辺りを見回している!
店員の攻撃!
「いらっしゃいませ!何かお探しですか〜?」
脱ヲタは戸惑いあたふたしている!
店員は殺し文句を唱えた!
「こちらの商品がお客様にすごくお似合いですよ〜!」
脱ヲタは満更でもなさそうにしている!
:08/03/12 03:39 :P903i :6TMeeUAU
#180 [服屋クエストなシュール(2/2)◆vzApYZDoz6]
店員の攻撃!会心の一撃!
「こちら凄く人気で、なんとこれが最後の1品なんですよ〜!」
「じゃあ買います!」
「ありがとうございま〜す♪」
「ではお会計¥398,000になりま〜す!」
「……!!」
効果は抜群だ!
脱ヲタは倒れた!
店員は398,000G手に入れた!
なんと、脱ヲタが起き上がり返品したそうにこちらを見ている!
返品させますか?
はい
ニア
脱ヲタは悲しそうに店を去っていった!
完…?
:08/03/12 03:40 :P903i :6TMeeUAU
#181 [紫陽花]
:08/03/13 20:23 :F905i :☆☆☆
#182 [紫陽花[高嶺の花1/1]]
またあの子だ――…。
毎朝7時きっかりの電車に乗って通学してる子。満員電車の中1人だけ背筋を真っ直ぐに伸ばし、分厚い単語帳と毎朝にらめっこしている。その姿はまるで一輪の百合のようで僕はいつも見とれてしまうんだ。
「なんだなんだ。もしかして一目惚れしちゃったの〜?」
一緒に通学している友達は毎日そうやって僕のことを冷やかすけど、僕は決まってこう答える。
「そんなんじゃない!!ただ…」
ただ…あまりにも綺麗だから、とても儚く見えるから、ずっと見てたいって思っちゃうだけなんだ……。
「でもそれが恋ってもんだろ?」
…――分かってる。
心の中ではこれが恋なんだって叫んでる自分がいることぐらい分かってるんだ。
「しゃべりかけろよ」
「好きだって認めちゃえよ」
「もっと近づけよ」
分かってる。
でも……怖いんだ。
毎日見てたなんて知られたらきっとどん引きされる。いきなり話しかけられたらきっと拒絶される。
怖いんだ。
今のこの心地よい距離を保ちたい。今のこの見つめるだけの存在でいいんだ。
そうやって僕は毎日
百合のような君を
見つめてるだけ――…。
ーーーendーーー
:08/03/13 20:24 :F905i :☆☆☆
#183 [「僕らの未来」向日葵(1/1)]
ビルがひしめく。
最早空が隠れてしまうぐらい。
ビルの森が、僕を囲む。
車の大群が、周りを駆け抜ける。
何もかもが、失われていく時代に僕達は生まれた。
そして育っていく。
無機質な創造物達と共に。
このままでいいのかと、無表情で通り過ぎる人混みに問う。
返事はいつも「どうでもいい。」しか返ってこなかった。
僕達は未来に何を望む?
何を伝える?
何を残す?
何を作る?
希望ある未来は、本当に待っているのだろうか。
ねぇ、君は今、何を思う?
:08/03/13 20:53 :SO903i :BAj4akaA
#184 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/13 21:39 :P903i :O1YrPz6M
#185 [変わらぬ気持ち(1/3)◆vzApYZDoz6]
昭和の時代を生きてきた俺にとって、文明の進化には驚かされる。
まさかテレビがあんなに薄くなるとは思っていなかったし、インターネットで世界中の人々と交流できるようになるなんて想像もしていなかった。
今だってそうだ。
「なぁ、これはメールはどうやるんだ?」
「またー?本当にアナログな人間なんだから」
「へいへい。悪かったな、昭和時代の人間で」
「そんな事言って。いい?メールはね……」
最近娘にプレゼントされた、嫁とペアルックの携帯電話に悪戦苦闘している。
老眼には小さな文字は耐えられないし、記憶力の衰えも著しいせいでどのボタンを押せばいいのかもすぐには覚えられない。
(電話も随分変わったな…)
俺が学生時代の頃は、まだ黒電話が主流だった。
数字に合わせてダイヤルをジコジコ回し、掛かってきたらリンリンうるさく鳴る、真っ黒な電話。今では見掛けることは無くなったが。
あの頃は待ち合わせして遅刻しそうになっても、相手にそれを伝える手段がまったく無かった。
今では携帯電話1つあれば問題ない。
文明が進化する、ということは、人間にとっとよい事なのだろうか。
:08/03/13 21:50 :P903i :O1YrPz6M
#186 [変わらぬ気持ち(2/3)◆vzApYZDoz6]
「あっ、ちょっと友達に電話しないと。じゃあお父さん、あとは1人で頑張ってね」
「分かったよ」
娘は白い手に小さな携帯電話を握りしめて、足早に自室へ向かった。
なーにが、『友達』だ。あんなに頬を赤く染めやがって、嘘がバレバレだ。
(まぁでも…俺も若い頃は、好きな人に電話を掛けるのは緊張したなぁ)
学生服に学生帽、坊主頭が主流の時代に、1人文学少年を気取って髪を伸ばしていた。
いつも1人で図書館に篭って、本を読む日々を送っていた。彼女に初めて出会ったのはその頃だ。
いつしか互いに惹かれあい、恋仲になっていった。
相手の父親がなかなかの頑固者で、デートなど大っぴらにできなかった。
(電話を掛けるのにも苦労したなぁ)
いつも父親がいない時間を見計らって電話をしていた。
間違って父親がいる時間にでも掛けようものなら、怒鳴られて切られる事間違いなし。
『あの…山下ですけど』
初めて電話を掛けたとき、唇を震わせながらそう言ったのを、今でもはっきりと憶えている。
黒電話のダイヤルに手を掛けるときは、いつも心臓が強く脈をうってどきどきしていた。
父親が恐いからではなく、好きな人と話せて嬉しくて恥ずかしかったんだろう。
:08/03/13 21:50 :P903i :O1YrPz6M
#187 [変わらぬ気持ち(3/3)◆vzApYZDoz6]
(あ…そうか)
文明の進歩や利便性。そんなものは、多分関係ない。
携帯電話だろうが黒電話だろうが、好きな人に電話を掛けるときは、心臓が大きく跳ねて気分が高揚するもの。
かつて、俺が好きな人に電話する時にそうだったように。
そして今は、俺の娘が同じように頬を染めて電話をしている。
文明がどんなに進化しようと、時代がどんなに移り変わろうと、人の心がそれに左右されることはきっとないんだろう。
「よし。使い方もなんとなく分かったし、初電話でもしてみるか」
あの頃のようなダイヤルではなく、大きくなプッシュホン。
俺は1つずつ、ゆっくりと番号を押していく。電話相手は、俺が学生時代に何度も電話したあの彼女。
受話口の向こうで着信音が鳴り始める。やがて、相手が電話に出た。
「あの…山下ですけど」
「掛けてくるのが遅いわよ。ずっと待ってたんだから」
電話に出たのは、俺の嫁だ。
俺達は歳月や年齢など気にせず、互いに見つめあって頬を染めながら話した。
あの頃の会話を、あの頃の気持ちを、ゆっくりと思い出しながら。
:08/03/13 21:52 :P903i :O1YrPz6M
#188 [[すれ違い(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
昨日、嫌なことがあった。
いや、嫌なことなんて毎日ある。
なぜなら、僕はいじめられているから。
良いことなんて、ここ数年あったことがない。
でも、昨日は特別に嫌なことがあった。
帰り道にいつも通り、僕の好きなひとみちゃんの後をつけていたら、彼女は他校の男子と待ち合わせしていた。
僕は、ひとみちゃんと付き合えるなんて勘違いするほど馬鹿じゃないから、彼女が他の男と待ち合わせしてデートするのは仕方ない。
僕にはどうしようもないことだ。
しばらくひとみちゃんと男の後をつけて、日が暮れだした頃、二人は公園に入っていった。
ベンチに座って楽しそうに話す二人を、僕は隠れて見ていた。
男がうらやましかった。あれが僕だったら……
そう思っていたら、男がひとみちゃんにキスをした。
僕の大好きなひとみちゃんに!
ひとみちゃんにキスの経験が無いのを知っていた僕は、彼女が嫌がる、助けなきゃ、とその場に飛び出そうとした。
が、僕の考えとは逆に、彼女は自分から舌を入れたり、男の背中を撫で回したり……。
なんて淫乱なんだ!
騙された……あんな女だったなんて!
僕は彼女に幻滅した。
そして今日、ここに来た。
僕はいつも、嫌なことがあると近くの山に登る。
山と言っても、頂上まで30分もかからない小さな山だ。
僕は、頂上に続く獣道を慣れた足取りで歩いていた。
10分ほど歩くと、茂みの中に見覚えのあるものを発見した。
:08/03/15 01:47 :SH903i :8XG7PsGk
#189 [[すれ違い(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
あの淫乱女、ひとみがいつも首に巻いているマフラーだ。
なぜこんなところに? 誰か他の人の……?
いや、毎日後をつけている僕が見間違うはずはない。
僕は地面に落ちていたマフラーを拾って匂いを嗅いでみた。
間違いない、何日か前に嗅いだ体操服と同じ匂いだ。
ひとみが近くにいるんだと思い、僕は茂みの奥へと入り込んでいった。
5分ほど茂みの中を突き進んだ僕は、再びひとみの落とし物を見つけた。彼女が肌身離さず持っている白い携帯電話だ。
僕は素早く拾いあげると、携帯電話のボタンを操作する。
この作業は、僕が夢にまで見ていたものだった。今まで一度もチャンスが無かったのだが、僕の気持ちが変化してからこんなことがあるなんて、皮肉なものだ。
次々と画面に表れるのは、ひとみと友達のツーショット写真や、男と交わしたメール……だが、あるメール画面が表示された時、僕の手は止まった。
『××山のコテージで待ってる』
送信メールの中で見つけたものだが、宛先の名前には見覚えがない。どうせあの他校生か誰かだろう。
この山の頂上の少し手前には、なぜか一つだけポツリと建てられた小さなコテージがある。そこで彼女が誰かを待っているようだ。
僕は迷わずその場所に向かった。
茂みを掻き分けてどのくらい進んだだろうか、コテージが見えてきた。だが、周囲に人影らしきものはない。
あの中で、あいつはまた淫らなことをしているんじゃないだろうか。見たくない。はずなのに、僕の体は意識を無視して行動していた。
:08/03/15 02:02 :SH903i :8XG7PsGk
#190 [[すれ違い(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
僕は建物の裏側から、周囲の様子を伺いながら慎重に近づいた。そしてコテージの壁にはりついて、窓からこっそりと内部を覗く。
緊張しながらも、僕はひとみの姿を探した。
だが、ひとみどころか中には誰の姿も無かった。
ほっとしたのと同時に、期待を裏切られたような気分だった。もう帰った後だったのだろうか。
僕は、表に回ってコテージのドアを開けた。やはり中には誰もいない。
だが、テーブルの上に置かれた赤い布が僕の目に映った。あれは……制服のスカーフだ。
近づこうとしてコテージの中に一歩足を踏み入れた瞬間、頭に衝撃が走って僕は崩れ落ちた。
痛みに顔を歪めている僕の耳に、男の声が聞こえた。
「こいつ、やっちゃっていいの?」
「うん。いいよ」
それに答えたのは……間違いない、ひとみだ!
どういうことだ? なぜひとみが僕を?
「ずっと付きまとわれててさ。キモいんだよね」
僕はもうお前に付きまとうつもりは無い!
だが、男の足が倒れている僕のみぞおちを強打したため、声にはならなかった。
痛みをこらえて目を開けると、視線の先には嫌悪感に満ちたひとみの顔があった。
視界の端を棒のようなものが通りすぎると、すぐに頭に痛みを感じた。
何かが弾けるような感覚の後、僕は意識を失った。
現実を遮断する直前に聞いたのは、ひとみの声だった。
「ストーカーだったなんて、幻滅した……
好きだったのに」
:08/03/15 02:06 :SH903i :8XG7PsGk
#191 [あなーる]
:08/03/15 03:44 :D903i :fT7xAXGE
#192 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/15 09:46 :P903i :bj6p3a.g
#193 [ピスタチオのお誘い(1/2)◆vzApYZDoz6]
普段なら週末にしか足を運ばないショットバーに、平日に顔を出した。
特に何かある訳じゃない、ただのお盆休みの振替休日だ。営業マンにお盆休みなんて存在しない。
氷の入ったグラスを回していると、1人の女が店に入ってきた。
24、5歳ぐらいだろうか。薄化粧だが端麗な顔立ちをしている。
女は殆んど迷うことなく俺の横にやってきた。
「隣、座ってもいいかしら?」
「構わないよ。…席は他にも空いてるみたいだけどね」
「いつもの席に先客がいるみたいで」
「そう。あ、ミックスナッツ良かったらどうぞ」
「ありがとう、戴くわ」
女はジンバックを注文し、ミックスナッツの中からピスタチオを探して手に取った。
「ピスタチオが好きなのか?」
「ええ、とても。2番目にアーモンドかしらね」
「知ってるかい?イタリア人はピスタチオを殻ごと食べるんだよ」
「知ってるわ。私の父も殻ごと食べるし、もちろん私もそう」
そう言うと、女はピスタチオを殻ごとボリボリと食べ始めた。
「そう言うあなたは?」
「…殻ごと食べる日本人が他にもいたとは驚いたよ。どうやらこの店には2人のイタリアンがいるようだ」
俺は無くなったマティーニのおかわりを頼んで、ピスタチオを殻ごと食べた。
当たり前だがとても硬い。だが無理矢理飲み込んだ。
:08/03/15 14:15 :P903i :bj6p3a.g
#194 [ピスタチオのお誘い(2/2)◆vzApYZDoz6]
「…ふふっ」
その様子を見ていた女が小さく笑い、口から殻だけを丁寧に吐き出した。
「チンパンジーだってバナナの皮を剥くわよ」
「なぜ嘘だと分かったんだ?」
「だってあなた、灰皿に殻が残ってるじゃない」
「騙されたな。いや、騙そうとしたのは俺が先か」
「指定席を取られちゃったからね、悪く思わないで」
「まぁそれはそうと、よく口の中で殻を開けられるな?」
「得意なのよ、そういうの。試してみる?」
「…ふっ、いいだろう。次はちゃんと殻を剥くことにするよ」
「あら、上手に言うわね。でも私の殻は硬くてよ」
俺と女は、チェックを済まして店を後にした。
今夜は退屈しなさそうだ。
:08/03/15 14:16 :P903i :bj6p3a.g
#195 [おかしな本屋さん(1/1)◆vzApYZDoz6]
街角の薄暗い道を歩いていると、雑居ビルの1階に見るからに怪しい小汚い店を発見した。
こんな所に店なんかあったっけ、と考えながら、俺はいつの間にか好奇心に駆られて扉に手を掛けていた。
色褪せた木でできた両開きの古い扉を、蝶番が軋む耳障りな音と共に開く。
むせかえりそうになる埃に口と鼻を抑えながら、店内を見渡した。
視界に入るのは、棚にぎゅうぎゅうに詰め込まれた大量の本。それでも棚に入りきらず、傍の床に積み重ねられた本の山。
すし詰め状態にされた圧倒的な量の本に、口をだらしなく開けたまま固まってしまった。
「何か、お探しかな?」
急に後ろから声を掛けられ驚いて振り向くと、男が扉の前に立っていた。
見た感じでは初老の、店主と思しき男。穏やかに目を細めてこちらを見ていた。
「普通の本をお探しなら、残念だけどここには存在しない」
「ここにある本は、奇妙・奇怪・超常・摩訶・怪奇…不思議な本しかございません」
言いながら俺の横を通り過ぎ、狭い棚の間にある梯子を昇って、1冊の本を手に取った。
「この本を、あなたに」
渡されたその本を咄嗟に受け取る。
かなり古い本らしく、受け取った瞬間に埃が舞った。
「では、またのご来店を」
気が付くと、本屋は無くなっていた。
ビルはある。だが、中の本屋がごっそり消えていた。
元から存在しなかったのか、という考えが脳裏をよぎる。
だがそれでは服に付いた大量の埃と、右手に持っている1冊の本の説明がつかない。
とりあえず、自分の名前がタイトルになっているこの本をどうするべきか。
:08/03/15 14:54 :P903i :bj6p3a.g
#196 [◆vzApYZDoz6]
上げときまーす
>>165-169に>>164までの作品まとめ
>>170に作品数集計とお題まとめ
お題は使わなくてもおkよん
俺はそろそろネタが思い付かないんで、みんなもっとガッツリ参加しとくれw
名無しさんや、新たな書き手さんの参戦もまだまだ大歓迎!
読み手さんも参戦おk!w
つうか誰だって参戦おkですwww
ふむさん、テスト終わったんでしょ?待ってますよw
:08/03/15 18:56 :P903i :bj6p3a.g
#197 [ふむ◆s8/1o/v/Vc]
何ですかそれはw
何で私だけ強制参加じみた…
私には拒否権というものが存在しないのでしょうか?w
わかりましたよ、SSS考えておきますw
:08/03/15 19:04 :SH905i :☆☆☆
#198 [朝海『ageha』(1/3)]
アタシは超が着く程の地味っ子;
化粧もしない、髪も真っ黒、スカート膝下―-と、まぁ昭和の香りプンプンの高校2年生の心歌(ミカ)です
学校に着くと
「心歌〜おはぁ」
心歌「おはょ真姫(マキ)」
真姫はアタシとは真逆;派手ですごく今風
何故一緒に居るかはアタシが真姫を助けたから、いろんな意味で―-
真姫「心歌〜彼氏にフラレタァ;」
心歌「またぁ;なんで?」
これで何度目だろぅ;
真姫がフられてるのは〜
真姫「二股バレた」
なんじゃそりぁ;
心歌「二股はダメだょ;」
真姫「だって男は必要でしょ?」
シラっと真姫は言ってのけた
真姫「心歌も彼氏つくりなぁ」
心歌「アタシには無理だょブスだし」
真姫「それはこの格好と美意識が足りないからでしょ?女は磨けば磨く程輝くもんなの!」
:08/03/16 14:08 :V803T :pvMNgyPI
#199 [朝海『ageha』(2/3)]
真姫はビシッと言った
心歌「は…はぃ;」
真姫「今どきスッピンは居ないよ」
アタシタチは教室に着いた
心歌「じゃあどうすれば…」
真姫「ここ座って」
真姫は自分の席に心歌を座らせた
真姫「この前髪は有り得ない;眼鏡も外すょ」
アタシの前髪は目が隠れている;プラス眼鏡
すると真姫はハサミを取り出した
心歌「ちょッ!ま…」
すると
「おぃ真姫何やってんだょ;」
男の人が来たけどアタシはぼやけて見えなぃ
真姫「ユージじゃんはょ」
ユージ「おぅ-ってか心歌…だっけたしか;」
地味過ぎてアタシ存在ないのね;同じクラスなのに…
真姫「そッ!心歌切るよ」
真姫はチョキ2切っていった
真姫「わぁアンタホント心歌?」
真姫は驚いていた
ユージ「…マジ」
心歌「変…でしょブスでしょ」
アタシは顔を隠した
:08/03/16 14:21 :V803T :pvMNgyPI
#200 [朝海『ageha』(3/3)]
真姫「むしろ可愛ぃ…化粧もするょ」
真姫は前髪をピンで止めて化粧をし始めた
真姫「…」
ユージ「惚れた;」
心歌「えッ!」
アタシはユージ君をマジマジ見た
ユージ「あんま見んな///」
心歌「ごめん;」
真姫「なんで今まで気付かなかったの〜!こんな可愛かったのに心歌のバカ」
心歌「ブスだょ;アタシ」
アタシは今だに自分の顔を見ていない;
真姫「はぃ見て」
真姫は鏡を見せた
えッ!これ…アタシ;
えぇ〜;
アタシは発見した
女は磨けば磨く程美しくなる
ブスは輝くんだ
それからアタシは真姫に化粧を教えてもらいコンタクトにして格好も変えた
一番嬉しかったのは彼氏が出来た事///
ユージです
アタシはすごく幸せです
真姫ありがとう
ユージ「心歌〜帰んぞ」
心歌「まってぇ」
〜完〜
:08/03/16 14:33 :V803T :pvMNgyPI
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