よすが
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>>420-450
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#841 [○&◆oe/DCsIuaw]
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#842 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>870-900

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#843 [○&◆oe/DCsIuaw]
 Dear my dear.
 and
 I love you.

 -------------------------

 夜景の綺麗なホテル。最上階とまでは行かないが、そこそこ高い位置の部屋のベランダに、男と女が一人ずつ。

「夜景、綺麗」
「そう言ってもらえたら、嬉しいな」

⏰:22/10/25 21:24 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#844 [○&◆oe/DCsIuaw]
「色々誤解しててごめんなさい、最高の誕生日プレゼント有難う」
「ふふ、誤解してたのはお互い様だよ。それより今日は、三日月だね」

「あ、本当だ。クス、真ん中で割れたように、綺麗な三日月」


「.......見て。ほら、これ」

そう言って男は、ポケットから指輪を一つ取り出した。指輪には三日月形の宝石。

⏰:22/10/25 21:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#845 [○&◆oe/DCsIuaw]
「取ってきちゃった、月のカケラ」
「あら、ロマンチック」

男が自分の指につける。


「どう、似合う?」
「.......似合わない、」
「え、なんで?」


「似合う、似合わないの前に、ありえない。だってみんなの月なのに、貴方がそれを付けてしまったら、ずっとずっと月は三日月のままじゃない。満月を楽しみにしてる人はたくさんいるのに」

⏰:22/10/25 21:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#846 [○&◆oe/DCsIuaw]
「なに拗ねてんの?」
「拗ねてなんかないわ」

「あれ、もしかしてこの指輪、自分が貰えると思った?」
「思ってない!!」
「ふふっ、でも、俺自己中だから。本当はあの月全部、俺のもの」

 風が吹く。男がポケットから小さな箱を取り出した。吹きやまない風は雲を流し、月が完全に闇に消える。


「.......残りの半分も、取ってきちゃった」

 箱の中には、男のそれより少し小さめな指輪。もちろん、三日月形の宝石付きの。風がまた雲を流し、月明かりに照らされた女の顔が火照る。

⏰:22/10/25 21:25 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#847 [○&◆oe/DCsIuaw]
『誕生日おめでとう、いつか本物の指輪あげるから。それまでずっと傍にいろよ、ハニー?』

- end -

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#848 [○&◆oe/DCsIuaw]
『ねぇ、わたしを殺してみて』


 その日。
 ぼくは、彼女を殺した。

------------------------

『すき』

 彼女のくちびるから零れ落ちる言葉は、いつだってぼくだけの鼓膜を揺らす。

『あなたが、すき。例えあなたの気持ちがわたしになくても』

『目も、耳も、鼻も指も、ひとつ残らず愛おしい、』

⏰:22/10/25 21:26 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#849 [○&◆oe/DCsIuaw]
『だけど、一番愛おしいのは、その、くちびる。わたしのそれと触れたとき、わたしはきっと死んでしまうでしょうね』

 何故だい?薄く微笑み、彼女に問うた。

『幸福死。信じられないけれど、本当にあるみたいよ。夢のような、現実では有り得ないような、けれど、こころのどこかでそれを待ち望んでいる.......』

 彼女の瞳が、熱を持ち始める。

⏰:22/10/25 21:26 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#850 [○&◆oe/DCsIuaw]
『そして。それが現実に起こったとき、わたしは死ぬの。そう例えば、あなたのくちびるの熱を、わたしのここで感じることができる、とかね』

 そう言って彼女は微笑み、人差し指で自分のくちびるに触れた。

『ねぇ、わたしを殺してみて?』


 五秒後、ぼくはきみを殺した。

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#851 [○&◆oe/DCsIuaw]
まだ息をしているきみのくちびるが、柔らかく、柔らかく微笑んだ。

fin

⏰:22/10/25 21:27 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#852 [○&◆oe/DCsIuaw]
 愛しているんだ、
 例え誰が死んだって。

 -------------------------

 何日もかけて選んだ婚約指輪。君は気にいってくれるかな?君が琥珀色を好きだというのは知っていたけど、なかなかいい物が見つからなかった。

だけどこの水色も綺麗だろう?
君がよくしてる、ネックレスに似ている。どんな顔をするだろう。
笑って、笑って、笑うだろう。キスをして、抱きしめて。それからやっぱり、琥珀色が良かったわ、なんて言うのかな。

⏰:22/10/25 21:27 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#853 [○&◆oe/DCsIuaw]
想像の中の君は少しふてくされて、だけどとても満ち足りた笑顔で。そして僕は言うんだ。


『結婚指輪は、琥珀色にしよう。』

女性はロマンチックが好きだろう?夜景なんかどうだろう?今日のために洗車もしてきた。そんなことは、言わないけどね。さぁ乗って、未来の話をしよう。予想通り君は少しふてくされて、だけど幸せそうだった。

幸せにするからね。

⏰:22/10/25 21:27 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#854 [○&◆oe/DCsIuaw]
そういう僕の言葉に重なるように、白い光と車のブレーキ音が僕たちを包んだ。明るすぎるその光に、助手席に座る彼女の顔が白くなる。明るすぎるよ、彼女の顔が見えないじゃないか。


 気がつくと目の前には、見慣れた人の顔。白くはなかった、赤かった。彼女の目は閉じられていた。嘘だろう。

⏰:22/10/25 21:28 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#855 [○&◆oe/DCsIuaw]
この、赤は、なんだ。嘘だろう。ねぇ起きて。彼女の体を揺さぶろうにも、僕の体も動かない。いくら大声で名前を叫んでも、彼女はぴくりとも動かない。それはまるで、僕の声なんかこの世界に響いていないような、そんな気がして。


動かない、意識だけ。
動けよ僕の躯、動け。

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#856 [○&◆oe/DCsIuaw]
救急車を呼ぶんだ、彼女を助けて。まだ生きてるかもしれない。呼吸の音が聞こえない?僕の耳がおかしいんだ。名前を呼んでも届かない?僕の声が、枯れてるんだ。どうして僕が生きてるんだ。生きるべきは、彼女だろう。お願い神様、僕はどうなってもかまわないから。

ほら左手の薬指。僕が買った指輪はそんな色じゃない

抱きしめて、キスしたい。
指輪に関する話を聞いてほしい。結婚指輪は、きっと琥珀色にするから。

⏰:22/10/25 21:28 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#857 [○&◆oe/DCsIuaw]
彼女の目が、開いた。
生きて、いる。


ありがとう神様、ありがとう。本当にありがとう。これから何があっても僕が彼女を幸せにする。さぁ、元気になって、未来の話をしよう。僕たちこれから、幸せになるんだ。彼女の目が完全に開く。ただ僕だけを映してくれる瞳は、あの日からずっと、変わらないね。良かった、もう大丈夫。体は動くかい?

⏰:22/10/25 21:29 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#858 [○&◆oe/DCsIuaw]
悪いけど、救急車を呼んでもらえる?僕はさっきから、何故だか体が動かない。彼女の目に涙がたまる。嗚呼、心配しないで。意識ははっきりしてるから。君のことずっと、考えられるくらいには。彼女は何か叫びながら、僕の体を揺さぶった。揺れる視界に、君の泣き顔だけが映る。綺麗な瞳だ、泣かないで。覗きこんだその瞳に映るは、僕。真っ赤な色をした、僕。

⏰:22/10/25 21:29 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#859 [○&◆oe/DCsIuaw]
ああ、死んだのは僕か。
どうりでさっきから、呼吸をしていないと思った。良かった。死んだのが僕で良かった。さぁ降りて、僕という船から。未来の話をしよう。君が幸せになるための話だ。指輪は捨ててくれ。君はやっぱり、琥珀色が似合うと思う。いつか誰かに貰ってくれ。僕以外の、誰かに。神様、神様、ありがとう。


嗚呼、死んだのは僕か。


- end -

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#860 [○&◆oe/DCsIuaw]
わたしはテレビの電源を付ける父を見ながら、ちょっと前までは自分もこの輪の中にいたんだなあと頬を緩めた。ふとテレビの上にある電子時計が目に入れば、今日は日曜日だと認識する。休日にも仕事があったなんて、お父さんは大変だな。労いの言葉を考えていたら、突然携帯電話が鳴った。この曲は私の携帯だ。父は「何の音だ?」と立ち上がり音源を探し始めた。

⏰:22/10/25 21:29 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#861 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>860-890

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#862 [○&◆oe/DCsIuaw]
「良枝、携帯が鳴っているみたいだけど、おまえのじゃないのか?」
「携帯?いいえ、私のじゃないみたい。この曲、千恵のじゃない?」

キッチンから帰ってきた返事に「千恵の?」と呟いた父は何かを思い出したように母の鞄を漁り始めた。

「あったあった」

上半身を上げた父の手には私の携帯電話が握られていた。私の携帯電話はどうやらあの事故から無傷だったようだ。

⏰:22/10/25 21:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#863 [○&◆oe/DCsIuaw]
「千恵の携帯に電話がきてるぞ」

着信音が消えると当然のように携帯を開く父に「勝手に見たら千恵が怒りますよ」と母が訝しいげな顔を覗かせた。ごもっともだ。いくら死んだとはいえ、娘の携帯を見るのは失礼だろう。

「それもそうだな…と、おや?」

⏰:22/10/25 21:30 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#864 [○&◆oe/DCsIuaw]
これは…、と父が眉をしかめた。私は不審に思い、父の凝視する携帯を覗き込んだ。

「良枝、確か孝君って男の子が千恵の友達にいたよな?」

そう言う父の横で驚く私。着信履歴のディスプレイに映し出されていたのは、孝の名前だった。

「ええ、いますけど.......」

それが?と疑問を含ませた母の声。

「どうやら、その彼からだ」

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#865 [○&◆oe/DCsIuaw]
ちょうど料理を終えた母は炒飯を両手に抱えてリビングに姿を現した。皿をテーブルに並べ終わると母も父の横から携帯を覗く。

「孝君から?あら本当。珍しいわね。千恵の口から孝の名前を聞いたのは小学校以来だから、何だか久しぶりね」

エプロンで手を拭いながら懐かしそうに目を細める母に、父は小さく笑いを落とす。

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#866 [○&◆oe/DCsIuaw]
「そういえば、そんな悪ガキもいたな。何だ良枝、ダメとか言いながら結局おまえも千恵の携帯を見てるじゃないか」

依然として笑いながら言う父に、母はむっとしながら眉を潜めた。

「私はいいんですよ。千恵とはとても仲が良かったですもの。そんなことより、ご飯出来ましたよ。早くテーブルについてください」

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#867 [○&◆oe/DCsIuaw]
はいはい、と苦笑しながら携帯電話をソファに置くと、父はテーブルに歩いて行った。わたしの脳裏に孝の姿が過ぎった。どうしたんだろう。私の葬式があった日から、孝のことばかりだ。柄にもなく昔のことを思い出すときも、孝とのことばかり。走馬灯にしては長すぎるし、内容が孝中心すぎる。私は自分に苛々してきた。

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#868 [○&◆oe/DCsIuaw]
死んだ時にひどく頭でも打ったのだろうか。人のことでこんな風に悩むなんてこれまでになかった。ましてや相手はあの孝ときた。生前は無視を決め込んでいたような孝に何故今頃?そもそも何に悩んでいるのかすら明確でない。何故か孝中心に物事を考え、ようやく忘れたと思ったらすぐに孝が頭に浮かぶ。この繰り返しだ。

⏰:22/10/25 21:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#869 [○&◆oe/DCsIuaw]
原因不明のもどかしさは私の苛々を募らせるばかりだった。どうにも気が治まらない私は、外に出た。孝に直接会うためだ。会って原因を確かめる。聞くことは叶わなくても、糸口くらいはわかるかもしれないと考えたのだ。しかし、何故孝は電話をしてきたのだろうか。私の携帯電話に掛けても誰も出ないのはわかっているだろうに。

⏰:22/10/25 21:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#870 [○&◆oe/DCsIuaw]
間違い電話?いや…間違いだったらあんなに長くコールしていないだろうし、さすがに間違いに気付くだろう。では何故?何の目的で?

「.......駄目だ」

いくら考えても答えは出て来なかった。久しぶりの孝の家に緊張しているのだろうか。

⏰:22/10/25 21:31 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#871 [○&◆oe/DCsIuaw]
割と近所にあるため、家の位置は忘れていない。不思議な感覚だ。九年ぶりの孝の家。あの頃はよく遊びに行ったものだ。今では曖昧な古い記憶でしかない。

「わ、懐かしい」

私は思わず立ち止まってしまう。白い壁に茶色の屋根。二階建ての西山家は孝と弟、そして両親の四人家族だ。緊張感が沸いて来るのがわかる。玄関をくぐれば記憶にある廊下や家具が迎えていた。

⏰:22/10/25 21:32 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#872 [○&◆oe/DCsIuaw]
お邪魔します、と土足のまま室内へ上がる。全然変わっていない。九年ぶりの孝の家はあまり覚えておらず、玄関から二階の孝の部屋までだけが特に鮮明だった。二階に上がって見覚えのある部屋の前に立つ。懐かしさからか、家にお邪魔してから終始私の頬は緩んでいた。ノックも出来ない私は、するりと部屋に入った。

⏰:22/10/25 21:32 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#873 [○&◆oe/DCsIuaw]
「いないじゃん」

誰もいない小綺麗な部屋を見渡して溜め息を吐いた。テレビが置かれたせいか、記憶にある部屋より狭く見える。

「暇だし、捜そうかな」

背伸びをしながら呟くと、私は部屋を後にした。.......とは言ったものの、手掛かり無しでこの広い街から孝を見付けるのは至難の技だ。携帯電話も使えなければ、人に尋ねることも出来ない。

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#874 [○&◆oe/DCsIuaw]
孝を避けて九年間も過ごしていたため、習慣も知らないし、居そうな場所など見当も付かない。更に今日は日曜日だから学校は休み。さながら探偵気分の私は現状を悟れば悟るほど、気分は落ち込んでいく。まさに手掛かりゼロだ。とりあえず当てもなく路上を歩きながら、しらみ潰しに捜すことにした。そして、日が暮れたら孝の家で待ち伏せという作戦だ。

⏰:22/10/25 21:32 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#875 [○&◆oe/DCsIuaw]
こんな真面目に策を練ってまで孝を捜してる自分の姿に自嘲気味に笑う。しかし、この探偵ごっこは早くも終わってしまった。孝を捜し始めて十五分。孝の家の近くの公園で目標を発見。私はすたすたと孝に近付いた。

「やっと見付けた」

無反応の孝は悩ましげな固い表情でベンチに座っている。とりあえず私も隣に腰を降ろした。しばしの沈黙。

⏰:22/10/25 21:33 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#876 [○&◆oe/DCsIuaw]
「暇だなぁ。何か喋ってよ」

もう五分はこの調子だ。
会話すら出来ないんだから、せめて何か行動してくれないと来た意味がない。


「.......はぁ」

「どうしたの?溜め息なんか付いちゃって」
「.......」
「ま〜た、だんまり?」

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#877 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>880-910

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#878 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>910-940

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#879 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>940-970

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#880 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>970-999

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#881 [○&◆oe/DCsIuaw]
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#882 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>300-500

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#883 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>600-700

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#884 [○&◆oe/DCsIuaw]
>>850-999

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#885 [○&◆t4uM8upmGg]
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

⏰:22/10/25 21:36 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#886 [ん◇]
ん◆◆◆◆◆

⏰:22/10/25 21:37 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#887 [ん◇◇]
◆◆◆◆◆◆◆

⏰:22/10/25 21:38 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#888 [ん◇◇]
>>890-820

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#889 [ん◇◇]
>>890-999

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#890 [ん◇◇]
Bluebird


 わたしは。なぜ本を買いに行ったのか?

 わたしの通う樫ノ宮(かしのみや)中学校では毎朝、読書時間というものが十五分間設けられている。その時に読む本を買いに行ったのだ。なぜ、この本を選んだのか?

⏰:22/10/25 21:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#891 [ん◇◇]
これといって欲しい本があったわけではない。わたしは漫画は読んでも、小説のように文字だけで紡がれた物語を読むのは苦手だった。文字の列だけが数百頁にもわたり延々と続いてるだけだなんて考えただけでも瞼が重くなってくる。.......正直、本ならなんでも良かった。そしてこの本に出会ったのは単なる偶然である。

⏰:22/10/25 21:43 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#892 [ん◇◇]
店に入るとすぐ、レジの横に新作の本が何種類か並べられていて、なかでも、一際目を引く一冊があった。綺麗なコバルトブルーのカバーには金色の文字で【bluebird】と書かれており、真ん中には翼を広げて今にも飛び立ちそうな鳥の絵が描かれていた。いわば、一目惚れだった。

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#893 [ん◇◇]
本当は適当に安い文庫本なんかを買って、お釣りで漫画本を買おうなどと考えていたのだがそんなことはもう頭になかった。母は小学校の教師をしている。わたしが買ってきた本をみせると「梨菜が漫画以外の本を買うなんて!」と、びっくりしていた。

「に、さん、ページよんで飽きたなんてことにならないといいけどね」と、母は笑ったけれど、そんなことにはならなかった。

⏰:22/10/25 21:44 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#894 [ん◇◇]
読みはじめると、止まらなかった。続きが気になって仕方がなかったのだ。朝の読書時間だけにとどまらず、休み時間にも読み、授業中にも読み、放課後も残って読んだ。わたしはどの部活動にも属しておらず、いつもなら真っ直ぐ家に帰っている時間だったが、その日は誰もいない教室で一人静かに読書に耽(ふけ)った。

⏰:22/10/25 21:44 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#895 [ん◇◇]
グラウンドで活動するサッカー部と野球部、陸上部の声が教室にまで届いている。同じ階にある音楽室からは吹奏楽部による演奏がきこえてきた。しかしひとたび本に集中すると、まわりの雑音は全て消えさり、無音の空間になるだ。そのせいだろう。話し掛けられていることに全く気付かなかった。

⏰:22/10/25 21:44 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#896 [ん◇◇]
「.......大高!」

 ハッとして顔をあげると目の前に同じクラスの奥村くんが立っていた。奥村くんはクラスでもかなり目立つほうで、明るく茶目っ気があり、みんなに好かれていた。当然友人も多く、誰とでもすぐにうちとける。わたしみたいに異性と話すときに緊張して口ごもってしまうということがない。

⏰:22/10/25 21:44 📱:Android 🆔:zH8LnywQ


#897 [ん◇◇]
彼みたいな人を世渡り上手、というのだろうなと思った。

「あ、やっと気付いた。さっきから何回も呼んでたんだけどさ、シカトされてるのかと思ったよ」

突然話し掛けられ口ごもっているわたしを無視して、奥村くんは近くにあった椅子に腰掛けた。

「その本、今日ずっと読んでるね」
「あ、これ、面白いんです」
「だよね、俺も読んだことあるんだ」

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#898 [ん◇◇]
「え?」

意外だ、と思った。

「俺、その著者好きなんだよね。知ってる?その人、この樫ノ宮町出身なんだぜ」

読み途中のページに指をはさみ、本を閉じて表紙をみた。金色の文字で【永原 愛(ながはらあい)】と印刷されている。奥村くんは【永原愛】について色々な話を聞かせてくれた。

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#899 [ん◇◇]
「すごく詳しいんだね。ストーカーみたい」

決してほめたわけではないのだけれど、奥村くんは得意げにふふん、と鼻を鳴らした。家に帰ると、母が調度夕飯の支度を終えたところだった。テーブルの上には父と母とわたしの三人分のサバの味噌煮が並べられていた。サバの味噌煮は父の大好物である。

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#900 [ん◇◇]
「あ、梨菜お帰り。ご飯できたからお父さん呼んできて」
「.......わたし、あんまりサバってすきじゃないんだよね」
「いいから早く呼んできなさい!」

渋々階段を上がり、父の部屋のドアをドンドン、と叩いた。

「お父さん、ご飯だよ!」

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